説明

鉄道車両及び鉄道車両軌道逸脱防止ガード

【課題】 部品点数を押さえつつも転倒及び軌道逸脱の防止を図る。
【解決手段】 この鉄道車両には、レール上で回転する一対の車輪と、一対の車輪を支持する車軸と、一対の車輪の内側で、一対の車輪のそれぞれに対して等間隔となるように車軸に取り付けられる一対のガイドディスクとが備えられている。一対のガイドディスクの直径は、一対の車輪がレールから脱線した際に当該レールとガイドディスクの端部とが接触する長さに設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両及び鉄道車両軌道逸脱防止ガードに係り、特に脱線時における軌道逸脱を防止する鉄道車両及び鉄道車両用軌道逸脱防止ガードに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両においては、脱線して転覆してしまうと多大な被害が生じてしまう。このため、万が一脱線したとしても転覆を極力防止するように、鉄道車両には転倒防止装置が搭載されている(例えば特許文献1参照)。この転倒防止装置には、車両の脱線時にレールに係合する爪部材が設けられていて、脱線時に爪部材がレールに係合すると、軌道から車両が車幅方向(左右方向)に一定距離以上変位しないようになっている。これにより、軌道上を走行する車両が脱線したとしても、軌道の道床上を走行させて強制的に案内し車両の転倒及び軌道逸脱を防止している。
【特許文献1】特開平10−250576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記の転倒防止装置であると左方向へのずれ、右方向へのずれの両方を防止するために、左車輪及び右車輪のそれぞれの外側に爪部材を設けなければならず、少なくとも爪部材は2個一組で用いられるものであった。特に爪部材は、台車の軸箱に取り付けられるものであるために軸箱に対しても加工が必要であり、車両部品加工や組立作業の工程が煩雑化されるおそれがあった。近年、鉄道車両においても製造コストを抑えることが要求されているため、従来の転倒防止装置よりも車両部品加工や組立作業の効率を高めながらも転倒及び軌道逸脱を防止することが望まれている。
【0004】
本発明の課題は、転倒及び軌道逸脱の防止を図りながらも車両部品加工及び組立作業の効率化を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明における鉄道車両は、
レール上で回転する一対の車輪と、
前記一対の車輪を支持する車軸と、
前記一対の車輪の内側で、前記一対の車輪のそれぞれに対して等間隔となるように前記車軸に取り付けられる一対のガイドディスクとを備え、
前記一対のガイドディスクの直径は、前記一対の車輪が前記レールから脱線した際に当該レールと前記ガイドディスクの端部とが接触する長さに設定されていることを特徴としている。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、一対の車輪がレールから脱線した際に当該レールに接触するガイドディスクが、一対の車輪のそれぞれに対して等間隔となるように車軸に取り付けられているので、万が一脱線したとしても、その逸脱長さを両側方ともに同等なものにすることができる。そして、ガイドディスクは台車の軸箱を加工せずとも車軸に取り付けるだけでよいので、従来の台車に爪部材を取り付けるものと比較すれば、車両部品加工及び組立作業も効率化されることになる。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の鉄道車両において、
前記一対のガイドディスクのうち、少なくとも1つはブレーキディスクであることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、一対のガイドディスクのうち少なくとも1つはブレーキディスクであるので、予め車軸にブレーキディスクが設けられている鉄道車両であれば、1つのガイドディスクを取り付けるだけで逸脱長さを両側方ともに同等にすることができる。このようにブレーキディスクをガイドディスクとして使用すれば部品点数を削減することができ、結果として組立作業を効率化することが可能となる。特に、車軸の種類によってはブレーキディスクを2枚取り付けられるようになっているものもあるが、この車軸の片方にしかブレーキディスクを取り付けない場合であっても、他方のブレーキディスク取付部分にガイドディスクを取り付ければ、ガイドディスク用の取付部分を新たに加工する必要もなく、車両部品加工を効率化することができる。
【0009】
請求項3記載の鉄道用軌道逸脱防止ガードは、
レール上で回転する一対の車輪が支持された車軸に取り付けられる鉄道車両用軌道逸脱防止ガードであって、
前記一対の車輪の内側で、前記一対の車輪のそれぞれに対して等間隔となるように前記車軸に取り付けられる一対のガイドディスクを備え、
前記一対のガイドディスクの直径は、前記一対の車輪が前記レールから脱線した際に当該レールと前記ガイドディスクの端部とが接触する長さに設定されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の鉄道車両用軌道逸脱防止ガードにおいて
前記一対のガイドディスクのうち、少なくとも1つはブレーキディスクであることを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、請求項2記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガイドディスクが、一対の車輪のそれぞれに対して等間隔となるように車軸に取り付けられているので、万が一脱線したとしても、その逸脱長さを両側方ともに同等なものにすることができる。そして、ガイドディスクは車軸に取り付けるだけでよいので、従来の台車に爪部材を取り付けるものと比較すれば、車両部品加工及び組立作業も効率化されることになる。
特に、予め車軸にブレーキディスクが設けられている鉄道車両であれば、ブレーキディスクをガイドディスクとして使用することが可能となって、部品点数を削減して組立作業を効率化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本実施形態の車両車両について図を参照にして説明する。図1は、鉄道車両1に備わる台車2を示す上面図であり、図2は台車2の概略構成を表す断面図である。この図1及び図2に示すように、台車2には、揺れ枕装置3や枕ばね装置4等を介して車体を支える台車枠5が設けられている。
【0015】
台車枠5の前部及び後部には車軸6,7が配置されていて、各車軸6,7には、当該車軸6,7に連動してレールR上で回転する一対の車輪8,9が支持されている。この車軸6,7には、鉄道車両1の軌道逸脱を防止する鉄道車両用軌道逸脱防止ガード20が設けられている。鉄道車両用軌道逸脱防止ガード20にはブレーキディスク10,11とガイドディスク14,15とが設けられている。
【0016】
ブレーキディスク10,11は、一対の車輪8,9の内側に配置され、かつ当該一対の車輪8,9のうち一方の車輪8,9寄りとなるように車軸6,7に固定されている。具体的には、例えば台車枠5の前部に位置する車軸6には、図における右側の車輪8に寄るようにブレーキディスク10が固定されていて、台車枠5の後部に位置する車軸7には、図における左側の車輪9に寄るようにブレーキディスク11が固定されている。ここで、車輪8とブレーキディスク10との間隔L1及び車輪9とブレーキディスク11との間隔L2は同じ長さに設定されている。
【0017】
ブレーキディスク10,11は、台車枠5に支持されたブレーキ梃子12,13により挟まれることで車軸6,7の回転を制動させ、車輪8,9の回転を制動させるようになっている。ここで、ブレーキディスク10,11の直径は、車輪8,9の直径よりは小さいものの、車輪8,9がレールRから脱線した際にブレーキディスク10,11の端部がレールRに接触する長さに設定されている。詳細に説明すると、ブレーキディスク10,11の直径は、脱線時にレールRの頭部側面と、ブレーキディスク10,11の端部側面とが接触する長さで、かつ、車両限界内に収まる長さに設定されている。
【0018】
ガイドディスク14,15は、一対の車輪8,9の内側に配置され、かつ当該一対の車輪8,9のうち他方の車輪8,9寄りとなるように車軸6,7に取り付けられている。具体的には、例えば台車枠5の前部に位置する車軸6には、図における左側の車輪9に寄るようにガイドディスク14が固定されていて、台車枠5の後部に位置する車軸7には、図における右側の車輪8に寄るようにガイドディスク15が固定されている。つまり、ガイドディスク14,15とブレーキディスク10,11とは、互いに異なる車輪8,9に寄るように1つの車軸6,7に取り付けられていることになる。ここで、車輪8とガイドディスク15との間隔L3及び車輪9とガイドディスク14との間隔L4は、上記の間隔L1,L2と等間隔に設定されている。ここで、脱線時にレールRを間隔L1,L2,L3,L4内に介在させるために、間隔L1,L2,L3,L4はレールRの頭部の幅寸法H以上の間隔で等間隔に設定されている。そして、ガイドディスク14,15の直径は、ブレーキディスク10,11と同様に車輪8,9の直径よりは小さいものの、車輪8,9がレールRから脱線した際にガイドディスク14,15の端部がレールRに接触する長さに設定されている。
【0019】
次に本実施形態の作用について説明する。なお、以下の説明においては台車枠5の前部に位置する車軸6及び当該車軸6に設けられた車輪8,9、ブレーキディスク10、ガイドディスク14を例にして説明する。
【0020】
通常走行時には、図2に示すようにレールR上を車輪8,9が回転しているが、地震や事故等で脱線すると図3及び図4に示す状態となる。ここで図3はレールRの右側に脱線した場合を表す説明図であり、図4はレールRの左側に脱線した場合を表す説明図である。図3に示すように車輪8,9がレールRの右側に脱線すると、右側の車輪8はレールRの外側に位置して、左側の車輪9はレールRの内側に位置する。このとき、右側のレールRは右側の車輪8とブレーキディスク10とによって挟まれることになる。このような状態になれば、車両全体が左側にずれようとしたとしても、車輪8,9とレールRとが接触してそのずれが規制される。また、車両全体が右側にずれようとしたとしてもブレーキディスク10の端部がレールRに接触してそのずれが規制される。
【0021】
一方、図4に示すように車輪8,9がレールRの左側に脱線すると、右側の車輪8はレールRの内側に位置して、左側の車輪9はレールRの外側に位置する。このとき、左側のレールRは左側の車輪9とガイドディスク14とによって挟まれることになる。このような状態になれば、車両全体が右側にずれようとしたとしても、車輪8,9とレールRとが接触してそのずれが規制される。また、車両全体が左側にずれようとしたとしてもガイドディスク14の端部がレールRに接触してそのずれが規制される。
【0022】
以上のように、本実施形態によれば、ブレーキディスク10,11とガイドディスク14,15とによって鉄道車両1の転倒及び軌道逸脱の防止効果を高めることができる。そして、ブレーキディスク10,11をガイドディスクとして使用することで、従来の転倒防止装置よりも部品点数を削減して車両部品加工や組立作業を効率化することが可能となる。
【0023】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、ガイドディスク14,15は、列車を構成する全ての鉄道車両1に装着することも可能であるが、最も脱線の可能性の高い先頭車両と最後尾車両とだけにガイドディスク14,15を装着すればコスト面で好ましい。
【0024】
また、本実施形態では、ブレーキディスク10,11が本発明のガイドディスクとして機能する場合を例示して説明しているが、車軸にブレーキディスクが設けられていないものである場合には、図5に示す通り一対の車輪8,9それぞれに対して等間隔となるように車軸6,7に一対のガイドディスク14を取り付ける必要がある。この際、一対のガイドディスク14の直径は、脱線時にレールRとガイドディスク14の端部とが接触する長さに設定されることになる(図6参照)。ここで、ブレーキディスクが設けられていない車軸6,7とは、例えば気動車などの鉄道車両自体にブレーキディスクが搭載されていない鉄道車両の車軸や、鉄道車両自体にはブレーキディスクは設けられているものの、ブレーキディスクを設けることのできない、動力が伝達される車軸(動軸)などが挙げられる。
【0025】
そして、図7に示す通り一対の車輪8,9それぞれに対して等間隔となるように車軸6,7に一対のブレーキディスク10を固定してもよい。こうした場合、一対のブレーキディスク14の直径は、脱線時にレールRとブレーキディスク14の端部とが接触する長さに設定されることになる(図8参照)。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係る鉄道車両に備わる台車を示す上面図である。
【図2】図1の台車の概略構成を表す断面図である。
【図3】図2の台車がレールの右側に脱線した場合を表す説明図である。
【図4】図2の台車がレールの左側に脱線した場合を表す説明図である。
【図5】図2の台車の変形例を表す断面図である。
【図6】図5の台車がレールの右側に脱線した場合を表す説明図である。
【図7】図2の台車の変形例を表す断面図である。
【図8】図7の台車がレールの右側に脱線した場合を表す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 鉄道車両
2 台車
3 揺れ枕装置
4 枕ばね装置
5 台車枠
6,7 車軸
8,9 車輪
10,11 ブレーキディスク
12,13 ブレーキ梃子
14,15 ガイドディスク
20 鉄道車両用軌道逸脱防止ガード
R レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上で回転する一対の車輪と、
前記一対の車輪を支持する車軸と、
前記一対の車輪の内側で、前記一対の車輪のそれぞれに対して等間隔となるように前記車軸に取り付けられる一対のガイドディスクとを備え、
前記一対のガイドディスクの直径は、前記一対の車輪が前記レールから脱線した際に当該レールと前記ガイドディスクの端部とが接触する長さに設定されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1記載の鉄道車両において、
前記一対のガイドディスクのうち、少なくとも1つはブレーキディスクであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
レール上で回転する一対の車輪が支持された車軸に取り付けられる鉄道車両用軌道逸脱防止ガードであって、
前記一対の車輪の内側で、前記一対の車輪のそれぞれに対して等間隔となるように前記車軸に取り付けられる一対のガイドディスクを備え、
前記一対のガイドディスクの直径は、前記一対の車輪が前記レールから脱線した際に当該レールと前記ガイドディスクの端部とが接触する長さに設定されていることを特徴とする鉄道車両用軌道逸脱防止ガード。
【請求項4】
請求項3記載の鉄道車両用軌道逸脱防止ガードにおいて
前記一対のガイドディスクのうち、少なくとも1つはブレーキディスクであることを特徴とする鉄道車両用軌道逸脱防止ガード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−256498(P2006−256498A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77405(P2005−77405)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)