鉄道車両用送風システム
【課題】鉄道車両内の局所的な温度変化を充分に抑制することができる鉄道車両用送風システムを提供する。
【解決手段】鉄道車両用送風システム1は、鉄道車両T内において側部に配設されたロングシート10の座部12と床面13との間に設けられ、車両中央側又は車両側面11側に向けて空気を送風するように構成された送風ファンユニット2と、鉄道車両Tの状況に関する車両状況情報に基づいて鉄道車両T内の局所的な温度変化を抑制するよう送風ファンユニット2の動作を制御するコントローラ5と、を備えている。この鉄道車両用送風システム1においては、例えば車内の温度や混雑率等に応じて送風ファンユニット2の動作がコントローラ5で制御され、鉄道車両T内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風ファンユニット2から空気が送風されることとなる。
【解決手段】鉄道車両用送風システム1は、鉄道車両T内において側部に配設されたロングシート10の座部12と床面13との間に設けられ、車両中央側又は車両側面11側に向けて空気を送風するように構成された送風ファンユニット2と、鉄道車両Tの状況に関する車両状況情報に基づいて鉄道車両T内の局所的な温度変化を抑制するよう送風ファンユニット2の動作を制御するコントローラ5と、を備えている。この鉄道車両用送風システム1においては、例えば車内の温度や混雑率等に応じて送風ファンユニット2の動作がコントローラ5で制御され、鉄道車両T内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風ファンユニット2から空気が送風されることとなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通勤形車両等の鉄道車両内において空気を循環させる鉄道車両用送風システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両用送風システムとしては、例えば特許文献1記載のものが知られている。この鉄道車両用送風システムは、鉄道車両内の天井面に沿わせて調和空気を吹き出す第1の吹出口と、鉄道車両内の側面に沿わせて調和空気を吹き出す第2の吹出口と、を備えている。これにより、この鉄道車両用送風システムでは、座席部付近における温度分布を均一化し、暖房効率を高めることが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−95093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の鉄道車両用送風システムでは、前述したように、座席部付近における温度分布の均一化が図られているものの、例えば鉄道車両内(以下、単に「車内」ともいう)の側部にロングシート(縦座席)が配設された通勤形車両等の鉄道車両の場合には、未だ以下のおそれがある。
【0005】
すなわち、例えば夏季の冷房時においては、車内上部中央に設けられた空調装置からの冷気が車内下部に滞留し易いことから、車内温度が局所的に高くなったり低くなったりすることがあり、冷房効果が充分に得られないおそれがある。また、例えば冬季の暖房時においては、ロングシートの座部内に設けられた暖房用ヒータからの熱がそのまま車内上部に逃げ易いことから、車内床面付近が温まり難く、暖房効果が充分に得られないおそれがある。さらに、車内温度は、乗務員によって調整されているものの、例えば車内の混雑率(乗車率)の偏り等によっては局所的に変化してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、鉄道車両内の局所的な温度変化を充分に抑制することができる鉄道車両用送風システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明に係る鉄道車両用送風システムは、鉄道車両内にて空気を循環させる鉄道車両用送風システムであって、鉄道車両内において側部に配設されたロングシートの座部と床面との間に設けられ、車両中央側又は車両側面側に向けて空気を送風するように構成された送風ファンユニットと、鉄道車両の状況に関する車両状況情報に基づいて鉄道車両内の局所的な温度変化を抑制するよう送風ファンユニットの動作を制御するコントローラと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この鉄道車両用送風システムでは、例えば車内の温度や混雑率等に応じて送風ファンユニットの動作がコントローラで制御され、車両内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風ファンユニットから空気が送風されることとなる。よって、車内の空気を好適に循環させ、車内の局所的な温度変化を充分に抑制することが可能となる。その結果、車内温度を適切にして快適な車内空間を乗客に提供することができる。
【0009】
また、送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成されていることが好ましい。この場合、例えば送風ファンにおける回転数、位置及び移動速度、移動パターン等がコントローラで制御され、車内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風が行われる。
【0010】
或いは、送風ファンユニットは、ロングシートの各着席位置に対応する位置に並設された複数の送風ファンを含んで構成されていることが好ましい。この場合、例えば各送風ファンにおける回転数、各送風ファンの作動及び非作動等がコントローラで制御され、車内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風が行われる。
【0011】
ここで、車両状況情報は、鉄道車両内の混雑率、鉄道車両内の温度、鉄道車両外の温度、空調装置の作動状況、及び暖房用ヒータの作動状況の少なくとも1つに関する情報である場合がある。
【0012】
また、ロングシートの各着席位置の温度を車両状況情報として検出するための複数の温度センサをさらに備え、コントローラは、複数の温度センサの検出温度に基づいて送風ファンユニットの動作を制御することが好ましい。この場合、着座乗客の存在に起因した車両内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができる。
【0013】
また、ロングシートの各着席位置の温度を車両状況情報として検出するための複数の温度センサをさらに備え、送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、コントローラは、複数の温度センサのうち少なくとも1つの検出温度が所定温度以上の場合、所定温度以上の検出温度の着席位置に対応する位置にて送風ファンの回転数が上がるように送風ファンを制御する、又は、所定温度以上の検出温度の着席位置に対応する位置にて送風ファンが停止するように移動手段を制御することが好ましい。この場合、着座乗客の存在に起因した車両内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができるという上記作用効果が好適に発揮される。
【0014】
また、送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、コントローラは、鉄道車両内の混雑率が閾値以上の場合、所定回転数で回転するように送風ファンを制御しながら、ガイドレールの一端から他端まで送風ファンが往復移動するように移動手段を制御することが好ましい。この場合、鉄道車両内の混雑率に起因した局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができる。
【0015】
また、送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、コントローラは、鉄道車両内の暖房用ヒータが作動されている場合、所定回転数で回転するように送風ファンを制御しながら、ガイドレールの一端から他端まで送風ファンが往復移動するように移動手段を制御することが好ましい。この場合、暖房用ヒータの作動状況に起因した局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができる。
【0016】
また、送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、コントローラは、鉄道車両内の空調装置が作動されている場合、間欠作動するように送風ファンを制御しながら、ガイドレールの一端から他端まで送風ファンが往復移動するように移動手段を制御することが好ましい。この場合、鉄道車両内の空調装置の作動状況に起因した局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができると共に、空調装置の稼動負荷が小さくできるため、省エネ化及びコスト節約を実現できる。
【0017】
ここで、ロングシートは、鉄道車両内において車両右方向側部に配設された右側ロングシートと、鉄道車両内において車両左方向側部に配設され右側ロングシートに対向する左側ロングシートと、を含むものであって、送風ファンユニットとして、右側ロングシートの座部と床面との間に設けられた右側送風ファンユニットと、左側ロングシートの座部と床面との間に設けられた左側送風ファンユニットと、を備えたことが好ましい。このように、車両右方向側部及び車両左方向側部のそれぞれに右側送風ファンユニット及び左側送風ファンユニットをそれぞれ設けることで、車内の空気を一層好適に循環させ、車内の局所的な温度変化を一層充分に抑制することができる。
【0018】
このとき、右側ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在する右側ガイドレールと、右側ガイドレールに沿って移動可能な右側送風ファンと、右側送風ファンを移動させる右側移動手段と、をそれぞれ含んで構成され、左側送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在する左側ガイドレールと、左側ガイドレールに沿って移動可能な左側送風ファンと、左側送風ファンを移動させる左側移動手段と、をそれぞれ含んで構成されている場合がある。
【0019】
また、コントローラは、右側及び左側送風ファンが互いに異なる方向又は共に同じ方向に移動するように、右側及び左側移動手段のそれぞれを制御することが好ましい。また、コントローラは、右側及び左側送風ファンが共に車両中央側又は車両側面側に向けて空気を送風するように、右側及び左側送風ファンを制御することが好ましい。また、コントローラは、右側送風ファンが車両中央側に向けて空気を送風し且つ左側送風ファンが車両側面側に向けて空気を送風する、又は、右側送風ファンが車両側面側に向けて空気を送風し且つ左側送風ファンが車両中央側に向けて空気を送風するように、右側及び左側送風ファンを制御することが好ましい。このような動作モードで右側送風ファンユニット及び左側送風ファンユニットを動作することで、車内の空気をより一層好適に循環させ、車内の局所的な温度変化をより一層充分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鉄道車両内の局所的な温度変化を充分に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用送風システムを示すブロック図である。
【図2】図1の鉄道車両用送風システムが搭載された鉄道車両内を側方から見た概略断面図である。
【図3】図1の鉄道車両用送風システムの動作を説明するための図2に対応する概略断面図である。
【図4】図1の鉄道車両用送風システムの動作を説明するための図2に対応する他の概略断面図である。
【図5】図1の鉄道車両用送風システムの動作を説明するための鉄道車両内を前方から見た概略断面図である。
【図6】図1の鉄道車両用送風システムの動作を説明するための図2に対応するさらに他の概略断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る鉄道車両用送風システムを示すブロック図である。
【図8】図7の鉄道車両用送風システムが搭載された鉄道車両内を示す図5に対応する概略断面図である。
【図9】図7の鉄道車両用送風システムの動作を説明するための鉄道車両内を上方から見た概略断面図である。
【図10】図7の鉄道車両用送風システムの動作を説明するための鉄道車両内を上方から見た他の概略断面図である。
【図11】図7の鉄道車両用送風システムの他の例を示す図5に対応する概略断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る鉄道車両用送風システムを示す図2に対応する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用送風システムを示すブロック図であり、図2は図1の鉄道車両用送風システムが搭載された鉄道車両内を側方から見た断面図である。図1,2に示すように、本実施形態の鉄道車両用送風システム1は、鉄道車両Tに搭載され、鉄道車両T内にて空気を強制的に循環させるものである。
【0024】
この鉄道車両Tは、例えば通勤者や通学者を主な乗客とし、近距離電車のうち大量輸送に最適化された通勤形車両とされている。また、鉄道車両T内には、図2に示すように、その側部にロングシート10が配設されている。ロングシート10は、側面(側壁)11を背にするようにして鉄道車両Tの前後方向(長手方向)に並んで座るベンチ様の座席である(図5参照)。ここでのロングシート10は、7人掛けシートとされ、座部12と床面13との間に空間が形成されるよう設けられた片持ち式支持構造とされている。
【0025】
この鉄道車両用送風システム1は、送風ファンユニット2、温度センサ3、位置センサ4及びコントローラ5を備えている。送風ファンユニット2は、ロングシート10の下部の空間に配置されている。具体的には、送風ファンユニット2は、鉄道車両T内においてロングシート10の座部12と床面13との間に設けられ、中央側又は側面11側に向けて空気を送風するように構成されている。この送風ファンユニット2は、送風ファン6及び移動ユニット7を有している。
【0026】
送風ファン6は、鉄道車両T内で空気を送風するものである。ここでは、送風ファン6として、車両左右方向(車両幅方向)を軸線方向とする軸流ファンが用いられ、車両左右方向に沿って車内空気の吸込み及び吹出しが行われる。この送風ファン6は、後述のガイドレール8と係合しており、該ガイドレール8に沿って移動可能になっている。この送風ファン6の吸込み面側及び吹出し面側には、安全のために金網等の保護具(不図示)が取り付けられている。
【0027】
移動ユニット7は、ロングシート10の下部において送風ファン6を車両前後方向に沿って移動させるためのものであり、ガイドレール8とモータ(移動手段)9とを含んで構成されている。ガイドレール8は、車両前後方向に沿って延在しており、送風ファン6に係合して該送風ファン6の移動をガイドする。また、ガイドレール8は、送風ファン6に係合することで、送風ファン6へ電力(例えばDC12V〜24V程度)を給電する。モータ9は、ギアや車輪等を介して送風ファン6を駆動し、送風ファン6をガイドレール8に沿って移動させる。
【0028】
温度センサ3は、ロングシート10の各着席位置の温度を検出するものであり、ガイドレール8の周辺位置において着席位置に対応する位置に並設されている。位置センサ4は、送風ファン6のガイドレール8上の位置を検出するものである。なお、本実施形態のセンサ3,4としては、種々の一般的なセンサを適用することが可能である。
【0029】
図1に戻り、コントローラ5は、例えばCPU、ROM、及びRAM等から構成され、ロングシート10の下部に配置されている。コントローラ5は、センサ3,4と接続されており、これらセンサ3,4での検出値(すなわち、温度センサ3による検出温度及び位置センサ4による検出位置)が入力される。また、コントローラ5は、モニタ装置14と接続されており、モニタ装置14で監視する情報が入力される。
【0030】
モニタ装置14は、例えば車掌室内に配置され、鉄道車両Tを監視するものである。このモニタ装置14は、例えば鉄道車両T内における天井の中央位置に設けられたエアコン等の空調装置15、及びロングシート10の座部12下側に埋め込まれるように設けられた熱線ヒータ等の暖房用ヒータ16(図2参照)に接続されており、これら空調装置15及び暖房用ヒータ16の作動状況(作動モード)を監視している。また、モニタ装置14は、例えば温度センサ(不図示)によって車内温度及び車外温度を監視すると共に、例えば車内カメラ(不図示)によって鉄道車両T内の混雑率を監視している。
【0031】
これにより、コントローラ5は、センサ3,4での検出値、空調装置15及び暖房用ヒータ16の作動状況、車内温度及び車外温度、並びに、鉄道車両T内の混雑率を少なくとも含む情報が、鉄道車両Tの状況に関する車両状況情報として入力されることになる。そして、このコントローラ5にあっては、車両状況情報に基づいて(つまり、車両状況情報に応じたロジックに従って)、鉄道車両T内の局所的な温度変化を抑制するよう送風ファン6の回転数、回転方向、移動速度(移動に要する時間)、ガイドレール8上の位置(移動パターン)等を制御する(詳しくは、後述)。
【0032】
次に、上述した鉄道車両用送風システム1の動作について、図2〜6を参照して説明する。なお、本実施形態の説明においては、コントローラ5によって制御される送風ファンユニット2の動作モード(動作形態)ごとに説明する。
【0033】
[動作モード1(通常時)]
図2に示すように、空調装置15及び暖房用ヒータ16が非作動であり、且つ、混雑率が閾値よりも小さいときのような通常時の場合、コントローラ5によって送風ファンユニット2が非作動とされ、送風ファン6が非運転とされる。
【0034】
[動作モード2(混雑時)]
図3に示すように、空調装置15が作動され、且つ、混雑率が閾値以上のときのような混雑時の場合、コントローラ5によって次の制御が実行される。すなわち、鉄道車両T内において側面11側から中央側へと送風するよう送風ファン6が制御されるのに併せて、ガイドレール8の一端から他端まで送風ファン6が往復移動するようモータ9が制御される。さらにこのとき、車内温度に応じた所定回転数で送風ファン6が回転されると共に、車内温度に応じた移動速度で送風ファン6が移動するようモータ9が駆動される。
【0035】
これにより、鉄道車両T内においては、ロングシート10下部の滞留空気(冷気・暖気)が車両中央へ誘導され、混雑による上部と下部との温度差が無くなるよう空気が循環されて、鉄道車両T内の局所的な温度変化が抑制されることになる。つまり、動作モード2では、鉄道車両T内の混雑率に起因した局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができる。また、着座する乗客Mにとっては、送風ファン6からの送風が連続して足元に直接吹き付けられないため、不快感が低減されることにもなる。
【0036】
[動作モード3(局所動作)]
図4に示すように、温度センサ3による検出温度において一の温度センサ(任意のいずれか1つの温度センサ)3aによる検出温度が所定温度以上の場合、その温度センサ3aが検出する着席位置Paに乗客Mが座っていると判断され、コントローラ5によって次の制御が実行される。すなわち、まず、鉄道車両T内において側面11側から中央側へと送風するよう送風ファン6が制御されるのに併せて、ガイドレール8に沿って送風ファン6が移動するようモータ9が制御される。このとき、車両状況情報に応じた所定回転数で送風ファン6が回転されると共に、車両状況情報に応じた移動速度で送風ファン6が移動するようモータ9が駆動される。
【0037】
そして、着席位置Paの下部(着席位置Paの対応位置)にまで送風ファン6が移動したことを位置センサ4によって検出したとき、送風ファン6が所定時間停止するようモータ9が制御される。或いは、着席位置Paの下部にまで送風ファン6が移動したことを位置センサ4によって検出したとき、回転数が増大するよう送風ファン6が制御される。
【0038】
これにより、例えば、運動後で体温が高い乗客Mがロングシート10の着席位置Paに着席し、鉄道車両T内における着席位置Paの周辺温度が局所的に高くなったとき、かかる局所的な温度上昇が抑制されるように空気が循環されることになる。つまり、動作モード3では、乗客Mの存在に起因した鉄道車両T内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができる。
【0039】
[動作モード4(温風動作)]
図5に示すように、暖房用ヒータ16が作動される場合、コントローラ5によって次の制御が実行される。すなわち、鉄道車両T内において側面11側から中央側へと送風するよう送風ファン6が制御されるのに併せて、ガイドレール8の一端から他端まで送風ファン6が往復移動するようモータ9が制御される。このとき、車両状況情報に応じた所定回転数で送風ファン6が回転されると共に、車両状況情報に応じた移動速度で送風ファン6が移動するようモータ9が駆動される。
【0040】
これにより、鉄道車両T内においては、暖房用ヒータ16からの熱Oを車両中央へと積極的に誘導されるように空気が循環され、局所的な温度上昇が抑制される。つまり、動作モード4では、暖房用ヒータ16の作動状況に起因した鉄道車両T内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができる。その結果、床面13周辺の暖房効果向上ひいては快適性向上が実現されることとなる。また、この場合、暖房用ヒータ16の稼動負荷を小さくできるため、省エネ化及びコスト節約を実現でき、ひいては環境保全対策をも実現することができる。
【0041】
[動作モード5(冷房連携)]
図6に示すように、空調装置15が作動される場合、コントローラ5によって次の制御が実行される。すなわち、鉄道車両T内において側面11側から中央側へと送風し、且つ間欠的に動作する(ONとOFFとを繰り返す)よう送風ファン6が制御される。これに併せて、ガイドレール8の一端から他端まで送風ファン6が往復移動するようモータ9が制御される。このとき、車両状況情報に応じた所定回転数で送風ファン6が回転されると共に、車両状況情報に応じた移動速度で送風ファン6が移動するようモータ9が駆動される。
【0042】
これにより、鉄道車両T内においては、空調装置15からの調和空気Kが強制的に循環され、例えば調和空気Kが床面13付近に滞留するのが抑制され、局所的な温度変化が抑制される。つまり、動作モード5では、空調装置15の作動状況に起因した鉄道車両T内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができる。また、この場合、空調装置15の稼動負荷が小さくできるため、省エネ化及びコスト節約を実現でき、ひいては環境保全対策を実現できると共に、空調装置15からの調和空気Kに乗客Mが直接当たって熱さや冷たさを感じ過ぎるということを抑制できる。
【0043】
なお、この動作モード5においては、空調装置15の作動開始から所定時間経過するまで送風ファンユニット2を非作動とした後に上記の作動を実行させてもよい。
【0044】
以上、本実施形態の鉄道車両用送風システム1では、車両状況情報に基づき送風ファンユニット2の動作がコントローラ5によって制御され、鉄道車両T内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風ファンユニット2から空気が送風される。これにより、鉄道車両T内の空気を強制的且つ好適に循環させ、鉄道車両T内の局所的な温度変化を充分に抑制することができ、車内温度を適切にして快適な車内空間を乗客Mに提供することが可能となる。
【0045】
その結果、本実施形態では、鉄道車両T内の必要なところへ必要なだけの送風を行うことができ、車両状況情報に応じて鉄道車両T内の温度を暑過ぎず寒過ぎない状態とすることができ、且つ足元を快適な状態とすることが可能となる。また、空調装置15及び暖房用ヒータ16の無駄な運転を低減することができ、省エネルギー化及び低コスト化が可能となる。
【0046】
加えて、本実施形態は、ロングシート10の下部の空間に設置されるだけであるため、大掛かりな鉄道車両Tの改造が不要であり、よって、既存の鉄道車両にも容易に搭載することができる。また、ロングシート10の下部の空間は、元来デッドスペースとされているため、鉄道車両T内の空間を好適に利用できるものといえる。また、本実施形態では、空調装置15及び暖房用ヒータ16が作動される場合、かかる作動に連動して空気が循環されることから、空調装置15及び暖房用ヒータ16の補助的役割を担うことができる。
【0047】
ところで、従来、空調装置15の吹出口を工夫することで鉄道車両T内の空気を循環させる場合がある。しかし、この場合、鉄道車両T内に局所的な温度変化を改善するには不充分であり、特に、鉄道車両Tが満員状態のときには、かかる問題は顕著となる。この点において、本実施形態では、上述したように、車両状況情報に応じて鉄道車両T内の局所的温度変化が抑制されるよう鉄道車両T内の空気を強制的に循環できるため、本実施形態は、特に効果的である。
【0048】
また、鉄道車両Tにダクトを予め取り付けて鉄道車両T内の空気を強制的に循環させることも考えられる。しかし、これでは、鉄道車両Tの大掛かりな改造が必要であり、既存の鉄道車両Tにダクトを取り付けることは非常に困難である。これに対し、本実施形態では、上述したように、ロングシート10の下部の空間に設置することで搭載されるため、本実施形態は、例えば既存の鉄道車両Tにとって特に有効である。
【0049】
なお、本実施形態では、コントローラ5によって送風ファン6の回転方向を変えることにより、鉄道車両T内において側面11側から中央側へ向かう方向に送風ファン6で送風したり、中央側から側面11側へ向かう方向に送風ファン6で送風したり(送風方向を変化)させることも勿論可能である。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態に係る鉄道車両用送風システムについて説明する。なお、本実施形態の説明においては、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。図7は本発明の第2実施形態に係る鉄道車両用送風システムを示すブロック図であり、図8は、図7の鉄道車両用送風システムが搭載された鉄道車両内を示す図5に対応する断面図である。
【0051】
図8に示すように、本実施形態の鉄道車両用送風システム20は、上記送風ファンユニット2が、右側及び左側ロングシート10R,10Lの下部にそれぞれ設置されている。右側及び左側ロングシート10R,10Lは、上記ロングシート10と同様に構成されており、具体的には、右側ロングシート10Rは、鉄道車両T内において車両右方向側部に配設される一方、左側ロングシートは、右側ロングシート10Rに対向するように鉄道車両T内において車両左方向側部に配設されている。
【0052】
右側送風ファンユニット2Rは、右側ロングシート10Rの座部12Rと床面13との間に設けられている。左側送風ファンユニット2Lは、左側ロングシート10Lの座部12Lと床面13との間に設けられている。右側及び左側送風ファンユニット2R,2Lのそれぞれは、上記送風ファン6と同様な右側及び左側送風ファン6R,6Lをそれぞれ有すると共に、上記移動ユニット7と同様な右側及び左側移動ユニット7R,7Lをそれぞれ有している。また、右側及び左側移動ユニット7R,7Lのそれぞれは、上記ガイドレール8と同様な右側及び左側ガイドレール8R,8Lをそれぞれ含むと共に、上記モータ9と同様な右側及び左側モータ(移動手段)9R,9Lをそれぞれ含んでいる。
【0053】
また、図7に示すように、鉄道車両用送風システム20は、温度センサ3として、右側ロングシート10Rの各着席位置の温度を検出する右側温度センサ3Rと、左側ロングシート10Lの各着席位置の温度を検出する左側温度センサ3Lと、を備えている。さらにまた、位置センサ4として、右側送風ファン6Rの右側ガイドレール8R上の位置を検出する右側位置センサ4Rと、左側送風ファン6Lの左側ガイドレール8L上の位置を検出する左側位置センサ4Lと、を備えている。
【0054】
このように構成された鉄道車両用送風システム20では、コントローラ5によって次の制御が実行される。すなわち、図9(a)に示すように、鉄道車両T内において側面11側から中央側へと送風するよう送風ファン6R,6Lが共に制御される。或いは、図9(b)に示すように、鉄道車両T内において中央側から側面11側へと送風するよう送風ファン6R,6Lが共に制御される。なお、図10(a)に示すように、鉄道車両T内において、側面11側から中央側へと送風するよう右側送風ファン6Rが制御されると共に、中央側から側面11側へと送風するよう左側送風ファン6Lが制御される場合や、この逆の場合もある。
【0055】
そして、ガイドレール8R,8Lの一端から他端まで各送風ファン6R,6Lが共に同じ方向に往復移動するようモータ9R,9Lが制御される。或いは、図10(b)に示すように、ガイドレール8R,8Lの一端から他端まで各送風ファン6R,6Lが互いに異なる方向に往復移動するようモータ9R,9Lが制御される。このとき、車両状況情報に応じた所定回転数で送風ファン6R,6Lがそれぞれ回転されると共に、車両状況情報に応じた移動速度で送風ファン6R,6Lが移動するようモータ9R,9Lがそれぞれ駆動される。
【0056】
以上、本実施形態においても、鉄道車両T内の局所的な温度変化を充分に抑制するという上記効果が奏される。さらに、本実施形態では、鉄道車両T内において、上方視にて空気が渦巻くように(うねるように)撹拌され、空気がより一層積極的に循環される。従って、鉄道車両T内の局所的な温度変化をより一層充分に抑制することが可能となる。
【0057】
なお、本実施形態では、1つのコントローラ5をロングシート10Rの下部に配置し(図8参照)、このコントローラ5によって送風ファンユニット2R,2Lを共に制御したが、コントローラ5の構成はこれに限定されるものではない。例えば、図11に示すように、ロングシート10R,10Lそれぞれの下部に配置された2つのコントローラ5R,5Lでコントローラ5を構成し、コントローラ5Rが右側送風ファンユニット2Rを制御すると共に、コントローラ5Lが右側送風ファンユニット2Lを制御してもよい。ちなみに、この場合、コントローラ5R,5Lは、互いに通信(無線通信及び有線通信を含む)しながら送風ファンユニット2R,2Lを制御しても勿論よい。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る鉄道車両用送風システムは実施形態に係る上記鉄道車両用送風システム1,20に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0059】
例えば、図12に示すように、送風ファンユニット2が、ロングシート10の各着席位置に対応する位置に並設された複数の送風ファン61〜67を含んで構成されていてもよい。このような他の例に係る鉄道車両用送風システム30の場合、コントローラ5は、車両状況情報に基づいて、送風ファン61〜67の回転数、回転方向、各送風ファン61〜67の作動・非作動等を制御することになる。なお、この場合、移動ユニット7及び位置センサ4は不要となる。
【0060】
また、送風ファンユニット2が、1つの送風ファン6と、送風ファン6に接続されロングシート10の座部12と床面13との間において各着席位置に対応する複数位置に開口部が形成されてなるダクトと、これらダクトの開口部を開閉する複数の弁と、を含んで構成されていてもよい。この場合、コントローラ5は、車両状況情報に基づいて、送風ファン6の回転数、回転方向、弁の開閉状態等を制御することになる。なお、この場合にも、移動ユニット7及び位置センサ4は不要となる。
【0061】
また、上記実施形態のコントローラ5は、モニタ装置14に接続され、該モニタ装置14を介して空調装置15及び暖房用ヒータ16の作動状況に関する情報を取得しているが、空調装置15及び暖房用ヒータ16にそれぞれ直接接続され、これらの作動状況に関する情報を直接取得してもよい。また、コントローラ5,5R,5Lのそれぞれは、送風ファン6,6R,6Lのそれぞれと一体となるように取り付けられていてもよい。また、送風ファン6,61〜67,6R,6Lは、上記のものに限定されず、種々のファンを採用してもよい。
【0062】
また、送風ファン6に接続されロングシート10の前後端部に開口部が形成されてなるダクトを備えていてもよい。この場合、ロングシート10の前後端部のそれぞれから、まとめて空気が吸い込まれる又は吹き出されることになる。
【符号の説明】
【0063】
1,20,30…鉄道車両用送風システム、2…送風ファンユニット、2R…右側送風ファンユニット(送風ファンユニット)、2L…左側送風ファンユニット(送風ファンユニット)、3,3a…温度センサ、5,5R,5L…コントローラ、6,61〜67…送風ファン、6R…右側送風ファン(送風ファン)、6L…左側送風ファン(送風ファン)、8…ガイドレール、8R…右側ガイドレール(ガイドレール)、8R…左側ガイドレール(ガイドレール)、9…モータ(移動手段)、9R…右側モータ(左側移動手段)、9L…左側モータ(左側移動手段)、10…ロングシート、10R…右側ロングシート(ロングシート)、10L…左側ロングシート(ロングシート)、11…車両側面、12…座部、13…床面、T…鉄道車両。
【技術分野】
【0001】
本発明は、通勤形車両等の鉄道車両内において空気を循環させる鉄道車両用送風システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両用送風システムとしては、例えば特許文献1記載のものが知られている。この鉄道車両用送風システムは、鉄道車両内の天井面に沿わせて調和空気を吹き出す第1の吹出口と、鉄道車両内の側面に沿わせて調和空気を吹き出す第2の吹出口と、を備えている。これにより、この鉄道車両用送風システムでは、座席部付近における温度分布を均一化し、暖房効率を高めることが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−95093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の鉄道車両用送風システムでは、前述したように、座席部付近における温度分布の均一化が図られているものの、例えば鉄道車両内(以下、単に「車内」ともいう)の側部にロングシート(縦座席)が配設された通勤形車両等の鉄道車両の場合には、未だ以下のおそれがある。
【0005】
すなわち、例えば夏季の冷房時においては、車内上部中央に設けられた空調装置からの冷気が車内下部に滞留し易いことから、車内温度が局所的に高くなったり低くなったりすることがあり、冷房効果が充分に得られないおそれがある。また、例えば冬季の暖房時においては、ロングシートの座部内に設けられた暖房用ヒータからの熱がそのまま車内上部に逃げ易いことから、車内床面付近が温まり難く、暖房効果が充分に得られないおそれがある。さらに、車内温度は、乗務員によって調整されているものの、例えば車内の混雑率(乗車率)の偏り等によっては局所的に変化してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、鉄道車両内の局所的な温度変化を充分に抑制することができる鉄道車両用送風システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明に係る鉄道車両用送風システムは、鉄道車両内にて空気を循環させる鉄道車両用送風システムであって、鉄道車両内において側部に配設されたロングシートの座部と床面との間に設けられ、車両中央側又は車両側面側に向けて空気を送風するように構成された送風ファンユニットと、鉄道車両の状況に関する車両状況情報に基づいて鉄道車両内の局所的な温度変化を抑制するよう送風ファンユニットの動作を制御するコントローラと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この鉄道車両用送風システムでは、例えば車内の温度や混雑率等に応じて送風ファンユニットの動作がコントローラで制御され、車両内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風ファンユニットから空気が送風されることとなる。よって、車内の空気を好適に循環させ、車内の局所的な温度変化を充分に抑制することが可能となる。その結果、車内温度を適切にして快適な車内空間を乗客に提供することができる。
【0009】
また、送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成されていることが好ましい。この場合、例えば送風ファンにおける回転数、位置及び移動速度、移動パターン等がコントローラで制御され、車内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風が行われる。
【0010】
或いは、送風ファンユニットは、ロングシートの各着席位置に対応する位置に並設された複数の送風ファンを含んで構成されていることが好ましい。この場合、例えば各送風ファンにおける回転数、各送風ファンの作動及び非作動等がコントローラで制御され、車内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風が行われる。
【0011】
ここで、車両状況情報は、鉄道車両内の混雑率、鉄道車両内の温度、鉄道車両外の温度、空調装置の作動状況、及び暖房用ヒータの作動状況の少なくとも1つに関する情報である場合がある。
【0012】
また、ロングシートの各着席位置の温度を車両状況情報として検出するための複数の温度センサをさらに備え、コントローラは、複数の温度センサの検出温度に基づいて送風ファンユニットの動作を制御することが好ましい。この場合、着座乗客の存在に起因した車両内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができる。
【0013】
また、ロングシートの各着席位置の温度を車両状況情報として検出するための複数の温度センサをさらに備え、送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、コントローラは、複数の温度センサのうち少なくとも1つの検出温度が所定温度以上の場合、所定温度以上の検出温度の着席位置に対応する位置にて送風ファンの回転数が上がるように送風ファンを制御する、又は、所定温度以上の検出温度の着席位置に対応する位置にて送風ファンが停止するように移動手段を制御することが好ましい。この場合、着座乗客の存在に起因した車両内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができるという上記作用効果が好適に発揮される。
【0014】
また、送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、コントローラは、鉄道車両内の混雑率が閾値以上の場合、所定回転数で回転するように送風ファンを制御しながら、ガイドレールの一端から他端まで送風ファンが往復移動するように移動手段を制御することが好ましい。この場合、鉄道車両内の混雑率に起因した局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができる。
【0015】
また、送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、コントローラは、鉄道車両内の暖房用ヒータが作動されている場合、所定回転数で回転するように送風ファンを制御しながら、ガイドレールの一端から他端まで送風ファンが往復移動するように移動手段を制御することが好ましい。この場合、暖房用ヒータの作動状況に起因した局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができる。
【0016】
また、送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、コントローラは、鉄道車両内の空調装置が作動されている場合、間欠作動するように送風ファンを制御しながら、ガイドレールの一端から他端まで送風ファンが往復移動するように移動手段を制御することが好ましい。この場合、鉄道車両内の空調装置の作動状況に起因した局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができると共に、空調装置の稼動負荷が小さくできるため、省エネ化及びコスト節約を実現できる。
【0017】
ここで、ロングシートは、鉄道車両内において車両右方向側部に配設された右側ロングシートと、鉄道車両内において車両左方向側部に配設され右側ロングシートに対向する左側ロングシートと、を含むものであって、送風ファンユニットとして、右側ロングシートの座部と床面との間に設けられた右側送風ファンユニットと、左側ロングシートの座部と床面との間に設けられた左側送風ファンユニットと、を備えたことが好ましい。このように、車両右方向側部及び車両左方向側部のそれぞれに右側送風ファンユニット及び左側送風ファンユニットをそれぞれ設けることで、車内の空気を一層好適に循環させ、車内の局所的な温度変化を一層充分に抑制することができる。
【0018】
このとき、右側ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在する右側ガイドレールと、右側ガイドレールに沿って移動可能な右側送風ファンと、右側送風ファンを移動させる右側移動手段と、をそれぞれ含んで構成され、左側送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在する左側ガイドレールと、左側ガイドレールに沿って移動可能な左側送風ファンと、左側送風ファンを移動させる左側移動手段と、をそれぞれ含んで構成されている場合がある。
【0019】
また、コントローラは、右側及び左側送風ファンが互いに異なる方向又は共に同じ方向に移動するように、右側及び左側移動手段のそれぞれを制御することが好ましい。また、コントローラは、右側及び左側送風ファンが共に車両中央側又は車両側面側に向けて空気を送風するように、右側及び左側送風ファンを制御することが好ましい。また、コントローラは、右側送風ファンが車両中央側に向けて空気を送風し且つ左側送風ファンが車両側面側に向けて空気を送風する、又は、右側送風ファンが車両側面側に向けて空気を送風し且つ左側送風ファンが車両中央側に向けて空気を送風するように、右側及び左側送風ファンを制御することが好ましい。このような動作モードで右側送風ファンユニット及び左側送風ファンユニットを動作することで、車内の空気をより一層好適に循環させ、車内の局所的な温度変化をより一層充分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鉄道車両内の局所的な温度変化を充分に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用送風システムを示すブロック図である。
【図2】図1の鉄道車両用送風システムが搭載された鉄道車両内を側方から見た概略断面図である。
【図3】図1の鉄道車両用送風システムの動作を説明するための図2に対応する概略断面図である。
【図4】図1の鉄道車両用送風システムの動作を説明するための図2に対応する他の概略断面図である。
【図5】図1の鉄道車両用送風システムの動作を説明するための鉄道車両内を前方から見た概略断面図である。
【図6】図1の鉄道車両用送風システムの動作を説明するための図2に対応するさらに他の概略断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る鉄道車両用送風システムを示すブロック図である。
【図8】図7の鉄道車両用送風システムが搭載された鉄道車両内を示す図5に対応する概略断面図である。
【図9】図7の鉄道車両用送風システムの動作を説明するための鉄道車両内を上方から見た概略断面図である。
【図10】図7の鉄道車両用送風システムの動作を説明するための鉄道車両内を上方から見た他の概略断面図である。
【図11】図7の鉄道車両用送風システムの他の例を示す図5に対応する概略断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る鉄道車両用送風システムを示す図2に対応する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用送風システムを示すブロック図であり、図2は図1の鉄道車両用送風システムが搭載された鉄道車両内を側方から見た断面図である。図1,2に示すように、本実施形態の鉄道車両用送風システム1は、鉄道車両Tに搭載され、鉄道車両T内にて空気を強制的に循環させるものである。
【0024】
この鉄道車両Tは、例えば通勤者や通学者を主な乗客とし、近距離電車のうち大量輸送に最適化された通勤形車両とされている。また、鉄道車両T内には、図2に示すように、その側部にロングシート10が配設されている。ロングシート10は、側面(側壁)11を背にするようにして鉄道車両Tの前後方向(長手方向)に並んで座るベンチ様の座席である(図5参照)。ここでのロングシート10は、7人掛けシートとされ、座部12と床面13との間に空間が形成されるよう設けられた片持ち式支持構造とされている。
【0025】
この鉄道車両用送風システム1は、送風ファンユニット2、温度センサ3、位置センサ4及びコントローラ5を備えている。送風ファンユニット2は、ロングシート10の下部の空間に配置されている。具体的には、送風ファンユニット2は、鉄道車両T内においてロングシート10の座部12と床面13との間に設けられ、中央側又は側面11側に向けて空気を送風するように構成されている。この送風ファンユニット2は、送風ファン6及び移動ユニット7を有している。
【0026】
送風ファン6は、鉄道車両T内で空気を送風するものである。ここでは、送風ファン6として、車両左右方向(車両幅方向)を軸線方向とする軸流ファンが用いられ、車両左右方向に沿って車内空気の吸込み及び吹出しが行われる。この送風ファン6は、後述のガイドレール8と係合しており、該ガイドレール8に沿って移動可能になっている。この送風ファン6の吸込み面側及び吹出し面側には、安全のために金網等の保護具(不図示)が取り付けられている。
【0027】
移動ユニット7は、ロングシート10の下部において送風ファン6を車両前後方向に沿って移動させるためのものであり、ガイドレール8とモータ(移動手段)9とを含んで構成されている。ガイドレール8は、車両前後方向に沿って延在しており、送風ファン6に係合して該送風ファン6の移動をガイドする。また、ガイドレール8は、送風ファン6に係合することで、送風ファン6へ電力(例えばDC12V〜24V程度)を給電する。モータ9は、ギアや車輪等を介して送風ファン6を駆動し、送風ファン6をガイドレール8に沿って移動させる。
【0028】
温度センサ3は、ロングシート10の各着席位置の温度を検出するものであり、ガイドレール8の周辺位置において着席位置に対応する位置に並設されている。位置センサ4は、送風ファン6のガイドレール8上の位置を検出するものである。なお、本実施形態のセンサ3,4としては、種々の一般的なセンサを適用することが可能である。
【0029】
図1に戻り、コントローラ5は、例えばCPU、ROM、及びRAM等から構成され、ロングシート10の下部に配置されている。コントローラ5は、センサ3,4と接続されており、これらセンサ3,4での検出値(すなわち、温度センサ3による検出温度及び位置センサ4による検出位置)が入力される。また、コントローラ5は、モニタ装置14と接続されており、モニタ装置14で監視する情報が入力される。
【0030】
モニタ装置14は、例えば車掌室内に配置され、鉄道車両Tを監視するものである。このモニタ装置14は、例えば鉄道車両T内における天井の中央位置に設けられたエアコン等の空調装置15、及びロングシート10の座部12下側に埋め込まれるように設けられた熱線ヒータ等の暖房用ヒータ16(図2参照)に接続されており、これら空調装置15及び暖房用ヒータ16の作動状況(作動モード)を監視している。また、モニタ装置14は、例えば温度センサ(不図示)によって車内温度及び車外温度を監視すると共に、例えば車内カメラ(不図示)によって鉄道車両T内の混雑率を監視している。
【0031】
これにより、コントローラ5は、センサ3,4での検出値、空調装置15及び暖房用ヒータ16の作動状況、車内温度及び車外温度、並びに、鉄道車両T内の混雑率を少なくとも含む情報が、鉄道車両Tの状況に関する車両状況情報として入力されることになる。そして、このコントローラ5にあっては、車両状況情報に基づいて(つまり、車両状況情報に応じたロジックに従って)、鉄道車両T内の局所的な温度変化を抑制するよう送風ファン6の回転数、回転方向、移動速度(移動に要する時間)、ガイドレール8上の位置(移動パターン)等を制御する(詳しくは、後述)。
【0032】
次に、上述した鉄道車両用送風システム1の動作について、図2〜6を参照して説明する。なお、本実施形態の説明においては、コントローラ5によって制御される送風ファンユニット2の動作モード(動作形態)ごとに説明する。
【0033】
[動作モード1(通常時)]
図2に示すように、空調装置15及び暖房用ヒータ16が非作動であり、且つ、混雑率が閾値よりも小さいときのような通常時の場合、コントローラ5によって送風ファンユニット2が非作動とされ、送風ファン6が非運転とされる。
【0034】
[動作モード2(混雑時)]
図3に示すように、空調装置15が作動され、且つ、混雑率が閾値以上のときのような混雑時の場合、コントローラ5によって次の制御が実行される。すなわち、鉄道車両T内において側面11側から中央側へと送風するよう送風ファン6が制御されるのに併せて、ガイドレール8の一端から他端まで送風ファン6が往復移動するようモータ9が制御される。さらにこのとき、車内温度に応じた所定回転数で送風ファン6が回転されると共に、車内温度に応じた移動速度で送風ファン6が移動するようモータ9が駆動される。
【0035】
これにより、鉄道車両T内においては、ロングシート10下部の滞留空気(冷気・暖気)が車両中央へ誘導され、混雑による上部と下部との温度差が無くなるよう空気が循環されて、鉄道車両T内の局所的な温度変化が抑制されることになる。つまり、動作モード2では、鉄道車両T内の混雑率に起因した局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができる。また、着座する乗客Mにとっては、送風ファン6からの送風が連続して足元に直接吹き付けられないため、不快感が低減されることにもなる。
【0036】
[動作モード3(局所動作)]
図4に示すように、温度センサ3による検出温度において一の温度センサ(任意のいずれか1つの温度センサ)3aによる検出温度が所定温度以上の場合、その温度センサ3aが検出する着席位置Paに乗客Mが座っていると判断され、コントローラ5によって次の制御が実行される。すなわち、まず、鉄道車両T内において側面11側から中央側へと送風するよう送風ファン6が制御されるのに併せて、ガイドレール8に沿って送風ファン6が移動するようモータ9が制御される。このとき、車両状況情報に応じた所定回転数で送風ファン6が回転されると共に、車両状況情報に応じた移動速度で送風ファン6が移動するようモータ9が駆動される。
【0037】
そして、着席位置Paの下部(着席位置Paの対応位置)にまで送風ファン6が移動したことを位置センサ4によって検出したとき、送風ファン6が所定時間停止するようモータ9が制御される。或いは、着席位置Paの下部にまで送風ファン6が移動したことを位置センサ4によって検出したとき、回転数が増大するよう送風ファン6が制御される。
【0038】
これにより、例えば、運動後で体温が高い乗客Mがロングシート10の着席位置Paに着席し、鉄道車両T内における着席位置Paの周辺温度が局所的に高くなったとき、かかる局所的な温度上昇が抑制されるように空気が循環されることになる。つまり、動作モード3では、乗客Mの存在に起因した鉄道車両T内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができる。
【0039】
[動作モード4(温風動作)]
図5に示すように、暖房用ヒータ16が作動される場合、コントローラ5によって次の制御が実行される。すなわち、鉄道車両T内において側面11側から中央側へと送風するよう送風ファン6が制御されるのに併せて、ガイドレール8の一端から他端まで送風ファン6が往復移動するようモータ9が制御される。このとき、車両状況情報に応じた所定回転数で送風ファン6が回転されると共に、車両状況情報に応じた移動速度で送風ファン6が移動するようモータ9が駆動される。
【0040】
これにより、鉄道車両T内においては、暖房用ヒータ16からの熱Oを車両中央へと積極的に誘導されるように空気が循環され、局所的な温度上昇が抑制される。つまり、動作モード4では、暖房用ヒータ16の作動状況に起因した鉄道車両T内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができる。その結果、床面13周辺の暖房効果向上ひいては快適性向上が実現されることとなる。また、この場合、暖房用ヒータ16の稼動負荷を小さくできるため、省エネ化及びコスト節約を実現でき、ひいては環境保全対策をも実現することができる。
【0041】
[動作モード5(冷房連携)]
図6に示すように、空調装置15が作動される場合、コントローラ5によって次の制御が実行される。すなわち、鉄道車両T内において側面11側から中央側へと送風し、且つ間欠的に動作する(ONとOFFとを繰り返す)よう送風ファン6が制御される。これに併せて、ガイドレール8の一端から他端まで送風ファン6が往復移動するようモータ9が制御される。このとき、車両状況情報に応じた所定回転数で送風ファン6が回転されると共に、車両状況情報に応じた移動速度で送風ファン6が移動するようモータ9が駆動される。
【0042】
これにより、鉄道車両T内においては、空調装置15からの調和空気Kが強制的に循環され、例えば調和空気Kが床面13付近に滞留するのが抑制され、局所的な温度変化が抑制される。つまり、動作モード5では、空調装置15の作動状況に起因した鉄道車両T内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風を行うことができる。また、この場合、空調装置15の稼動負荷が小さくできるため、省エネ化及びコスト節約を実現でき、ひいては環境保全対策を実現できると共に、空調装置15からの調和空気Kに乗客Mが直接当たって熱さや冷たさを感じ過ぎるということを抑制できる。
【0043】
なお、この動作モード5においては、空調装置15の作動開始から所定時間経過するまで送風ファンユニット2を非作動とした後に上記の作動を実行させてもよい。
【0044】
以上、本実施形態の鉄道車両用送風システム1では、車両状況情報に基づき送風ファンユニット2の動作がコントローラ5によって制御され、鉄道車両T内の局所的な温度変化が抑制されるよう送風ファンユニット2から空気が送風される。これにより、鉄道車両T内の空気を強制的且つ好適に循環させ、鉄道車両T内の局所的な温度変化を充分に抑制することができ、車内温度を適切にして快適な車内空間を乗客Mに提供することが可能となる。
【0045】
その結果、本実施形態では、鉄道車両T内の必要なところへ必要なだけの送風を行うことができ、車両状況情報に応じて鉄道車両T内の温度を暑過ぎず寒過ぎない状態とすることができ、且つ足元を快適な状態とすることが可能となる。また、空調装置15及び暖房用ヒータ16の無駄な運転を低減することができ、省エネルギー化及び低コスト化が可能となる。
【0046】
加えて、本実施形態は、ロングシート10の下部の空間に設置されるだけであるため、大掛かりな鉄道車両Tの改造が不要であり、よって、既存の鉄道車両にも容易に搭載することができる。また、ロングシート10の下部の空間は、元来デッドスペースとされているため、鉄道車両T内の空間を好適に利用できるものといえる。また、本実施形態では、空調装置15及び暖房用ヒータ16が作動される場合、かかる作動に連動して空気が循環されることから、空調装置15及び暖房用ヒータ16の補助的役割を担うことができる。
【0047】
ところで、従来、空調装置15の吹出口を工夫することで鉄道車両T内の空気を循環させる場合がある。しかし、この場合、鉄道車両T内に局所的な温度変化を改善するには不充分であり、特に、鉄道車両Tが満員状態のときには、かかる問題は顕著となる。この点において、本実施形態では、上述したように、車両状況情報に応じて鉄道車両T内の局所的温度変化が抑制されるよう鉄道車両T内の空気を強制的に循環できるため、本実施形態は、特に効果的である。
【0048】
また、鉄道車両Tにダクトを予め取り付けて鉄道車両T内の空気を強制的に循環させることも考えられる。しかし、これでは、鉄道車両Tの大掛かりな改造が必要であり、既存の鉄道車両Tにダクトを取り付けることは非常に困難である。これに対し、本実施形態では、上述したように、ロングシート10の下部の空間に設置することで搭載されるため、本実施形態は、例えば既存の鉄道車両Tにとって特に有効である。
【0049】
なお、本実施形態では、コントローラ5によって送風ファン6の回転方向を変えることにより、鉄道車両T内において側面11側から中央側へ向かう方向に送風ファン6で送風したり、中央側から側面11側へ向かう方向に送風ファン6で送風したり(送風方向を変化)させることも勿論可能である。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態に係る鉄道車両用送風システムについて説明する。なお、本実施形態の説明においては、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。図7は本発明の第2実施形態に係る鉄道車両用送風システムを示すブロック図であり、図8は、図7の鉄道車両用送風システムが搭載された鉄道車両内を示す図5に対応する断面図である。
【0051】
図8に示すように、本実施形態の鉄道車両用送風システム20は、上記送風ファンユニット2が、右側及び左側ロングシート10R,10Lの下部にそれぞれ設置されている。右側及び左側ロングシート10R,10Lは、上記ロングシート10と同様に構成されており、具体的には、右側ロングシート10Rは、鉄道車両T内において車両右方向側部に配設される一方、左側ロングシートは、右側ロングシート10Rに対向するように鉄道車両T内において車両左方向側部に配設されている。
【0052】
右側送風ファンユニット2Rは、右側ロングシート10Rの座部12Rと床面13との間に設けられている。左側送風ファンユニット2Lは、左側ロングシート10Lの座部12Lと床面13との間に設けられている。右側及び左側送風ファンユニット2R,2Lのそれぞれは、上記送風ファン6と同様な右側及び左側送風ファン6R,6Lをそれぞれ有すると共に、上記移動ユニット7と同様な右側及び左側移動ユニット7R,7Lをそれぞれ有している。また、右側及び左側移動ユニット7R,7Lのそれぞれは、上記ガイドレール8と同様な右側及び左側ガイドレール8R,8Lをそれぞれ含むと共に、上記モータ9と同様な右側及び左側モータ(移動手段)9R,9Lをそれぞれ含んでいる。
【0053】
また、図7に示すように、鉄道車両用送風システム20は、温度センサ3として、右側ロングシート10Rの各着席位置の温度を検出する右側温度センサ3Rと、左側ロングシート10Lの各着席位置の温度を検出する左側温度センサ3Lと、を備えている。さらにまた、位置センサ4として、右側送風ファン6Rの右側ガイドレール8R上の位置を検出する右側位置センサ4Rと、左側送風ファン6Lの左側ガイドレール8L上の位置を検出する左側位置センサ4Lと、を備えている。
【0054】
このように構成された鉄道車両用送風システム20では、コントローラ5によって次の制御が実行される。すなわち、図9(a)に示すように、鉄道車両T内において側面11側から中央側へと送風するよう送風ファン6R,6Lが共に制御される。或いは、図9(b)に示すように、鉄道車両T内において中央側から側面11側へと送風するよう送風ファン6R,6Lが共に制御される。なお、図10(a)に示すように、鉄道車両T内において、側面11側から中央側へと送風するよう右側送風ファン6Rが制御されると共に、中央側から側面11側へと送風するよう左側送風ファン6Lが制御される場合や、この逆の場合もある。
【0055】
そして、ガイドレール8R,8Lの一端から他端まで各送風ファン6R,6Lが共に同じ方向に往復移動するようモータ9R,9Lが制御される。或いは、図10(b)に示すように、ガイドレール8R,8Lの一端から他端まで各送風ファン6R,6Lが互いに異なる方向に往復移動するようモータ9R,9Lが制御される。このとき、車両状況情報に応じた所定回転数で送風ファン6R,6Lがそれぞれ回転されると共に、車両状況情報に応じた移動速度で送風ファン6R,6Lが移動するようモータ9R,9Lがそれぞれ駆動される。
【0056】
以上、本実施形態においても、鉄道車両T内の局所的な温度変化を充分に抑制するという上記効果が奏される。さらに、本実施形態では、鉄道車両T内において、上方視にて空気が渦巻くように(うねるように)撹拌され、空気がより一層積極的に循環される。従って、鉄道車両T内の局所的な温度変化をより一層充分に抑制することが可能となる。
【0057】
なお、本実施形態では、1つのコントローラ5をロングシート10Rの下部に配置し(図8参照)、このコントローラ5によって送風ファンユニット2R,2Lを共に制御したが、コントローラ5の構成はこれに限定されるものではない。例えば、図11に示すように、ロングシート10R,10Lそれぞれの下部に配置された2つのコントローラ5R,5Lでコントローラ5を構成し、コントローラ5Rが右側送風ファンユニット2Rを制御すると共に、コントローラ5Lが右側送風ファンユニット2Lを制御してもよい。ちなみに、この場合、コントローラ5R,5Lは、互いに通信(無線通信及び有線通信を含む)しながら送風ファンユニット2R,2Lを制御しても勿論よい。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る鉄道車両用送風システムは実施形態に係る上記鉄道車両用送風システム1,20に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0059】
例えば、図12に示すように、送風ファンユニット2が、ロングシート10の各着席位置に対応する位置に並設された複数の送風ファン61〜67を含んで構成されていてもよい。このような他の例に係る鉄道車両用送風システム30の場合、コントローラ5は、車両状況情報に基づいて、送風ファン61〜67の回転数、回転方向、各送風ファン61〜67の作動・非作動等を制御することになる。なお、この場合、移動ユニット7及び位置センサ4は不要となる。
【0060】
また、送風ファンユニット2が、1つの送風ファン6と、送風ファン6に接続されロングシート10の座部12と床面13との間において各着席位置に対応する複数位置に開口部が形成されてなるダクトと、これらダクトの開口部を開閉する複数の弁と、を含んで構成されていてもよい。この場合、コントローラ5は、車両状況情報に基づいて、送風ファン6の回転数、回転方向、弁の開閉状態等を制御することになる。なお、この場合にも、移動ユニット7及び位置センサ4は不要となる。
【0061】
また、上記実施形態のコントローラ5は、モニタ装置14に接続され、該モニタ装置14を介して空調装置15及び暖房用ヒータ16の作動状況に関する情報を取得しているが、空調装置15及び暖房用ヒータ16にそれぞれ直接接続され、これらの作動状況に関する情報を直接取得してもよい。また、コントローラ5,5R,5Lのそれぞれは、送風ファン6,6R,6Lのそれぞれと一体となるように取り付けられていてもよい。また、送風ファン6,61〜67,6R,6Lは、上記のものに限定されず、種々のファンを採用してもよい。
【0062】
また、送風ファン6に接続されロングシート10の前後端部に開口部が形成されてなるダクトを備えていてもよい。この場合、ロングシート10の前後端部のそれぞれから、まとめて空気が吸い込まれる又は吹き出されることになる。
【符号の説明】
【0063】
1,20,30…鉄道車両用送風システム、2…送風ファンユニット、2R…右側送風ファンユニット(送風ファンユニット)、2L…左側送風ファンユニット(送風ファンユニット)、3,3a…温度センサ、5,5R,5L…コントローラ、6,61〜67…送風ファン、6R…右側送風ファン(送風ファン)、6L…左側送風ファン(送風ファン)、8…ガイドレール、8R…右側ガイドレール(ガイドレール)、8R…左側ガイドレール(ガイドレール)、9…モータ(移動手段)、9R…右側モータ(左側移動手段)、9L…左側モータ(左側移動手段)、10…ロングシート、10R…右側ロングシート(ロングシート)、10L…左側ロングシート(ロングシート)、11…車両側面、12…座部、13…床面、T…鉄道車両。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両内にて空気を循環させる鉄道車両用送風システムであって、
前記鉄道車両内において側部に配設されたロングシートの座部と床面との間に設けられ、車両中央側又は車両側面側に向けて空気を送風するように構成された送風ファンユニットと、
前記鉄道車両の状況に関する車両状況情報に基づいて前記鉄道車両内の局所的な温度変化を抑制するよう前記送風ファンユニットの動作を制御するコントローラと、を備えたことを特徴とする鉄道車両用送風システム。
【請求項2】
前記送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、前記送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項3】
前記送風ファンユニットは、前記ロングシートの各着席位置に対応する位置に並設された複数の送風ファンを含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項4】
前記車両状況情報は、前記鉄道車両内の混雑率、前記鉄道車両内の温度、前記鉄道車両外の温度、空調装置の作動状況、及び暖房用ヒータの作動状況の少なくとも1つに関する情報であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項5】
前記ロングシートの各着席位置の温度を前記車両状況情報として検出するための複数の温度センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記複数の温度センサの検出温度に基づいて前記送風ファンユニットの動作を制御することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項6】
前記ロングシートの各着席位置の温度を前記車両状況情報として検出するための複数の温度センサをさらに備え、
前記送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、前記送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、
前記コントローラは、前記複数の温度センサのうち少なくとも1つの検出温度が所定温度以上の場合、前記所定温度以上の検出温度の着席位置に対応する位置にて前記送風ファンの回転数が上がるように前記送風ファンを制御する、又は、前記所定温度以上の検出温度の着席位置に対応する位置にて前記送風ファンが停止するように前記移動手段を制御することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項7】
前記送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、前記送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、
前記コントローラは、前記鉄道車両内の混雑率が閾値以上の場合、所定回転数で回転するように前記送風ファンを制御しながら、前記ガイドレールの一端から他端まで前記送風ファンが往復移動するように前記移動手段を制御することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項8】
前記送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、前記送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、
前記コントローラは、前記鉄道車両内の暖房用ヒータが作動されている場合、所定回転数で回転するように前記送風ファンを制御しながら、前記ガイドレールの一端から他端まで前記送風ファンが往復移動するように前記移動手段を制御することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項9】
前記送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、前記送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、
前記コントローラは、前記鉄道車両内の空調装置が作動されている場合、間欠作動するように前記送風ファンを制御しながら、前記ガイドレールの一端から他端まで前記送風ファンが往復移動するように前記移動手段を制御することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項10】
前記ロングシートは、前記鉄道車両内において車両右方向側部に配設された右側ロングシートと、前記鉄道車両内において車両左方向側部に配設され前記右側ロングシートに対向する左側ロングシートと、を含むものであって、
前記送風ファンユニットとして、前記右側ロングシートの座部と前記床面との間に設けられた右側送風ファンユニットと、前記左側ロングシートの座部と前記床面との間に設けられた左側送風ファンユニットと、を備えたことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項11】
前記右側ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在する右側ガイドレールと、前記右側ガイドレールに沿って移動可能な右側送風ファンと、前記右側送風ファンを移動させる右側移動手段と、を含んで構成され、
前記左側送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在する左側ガイドレールと、前記左側ガイドレールに沿って移動可能な左側送風ファンと、前記左側送風ファンを移動させる左側移動手段と、を含んで構成されていることを特徴とする請求項10記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記右側及び左側送風ファンが互いに異なる方向又は共に同じ方向に移動するように、前記右側及び左側移動手段のそれぞれを制御することを特徴とする請求項11記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項13】
前記コントローラは、前記右側及び左側送風ファンが共に車両中央側又は共に車両側面側に向けて空気を送風するように、前記右側及び左側送風ファンを制御することを特徴とする請求項11又は12記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項14】
前記コントローラは、前記右側送風ファンが車両中央側に向けて空気を送風し且つ前記左側送風ファンが車両側面側に向けて空気を送風する、又は、前記右側送風ファンが車両側面側に向けて空気を送風し且つ前記左側送風ファンが車両中央側に向けて空気を送風するように、前記右側及び左側送風ファンを制御することを特徴とする請求項11又は12記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項1】
鉄道車両内にて空気を循環させる鉄道車両用送風システムであって、
前記鉄道車両内において側部に配設されたロングシートの座部と床面との間に設けられ、車両中央側又は車両側面側に向けて空気を送風するように構成された送風ファンユニットと、
前記鉄道車両の状況に関する車両状況情報に基づいて前記鉄道車両内の局所的な温度変化を抑制するよう前記送風ファンユニットの動作を制御するコントローラと、を備えたことを特徴とする鉄道車両用送風システム。
【請求項2】
前記送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、前記送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項3】
前記送風ファンユニットは、前記ロングシートの各着席位置に対応する位置に並設された複数の送風ファンを含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項4】
前記車両状況情報は、前記鉄道車両内の混雑率、前記鉄道車両内の温度、前記鉄道車両外の温度、空調装置の作動状況、及び暖房用ヒータの作動状況の少なくとも1つに関する情報であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項5】
前記ロングシートの各着席位置の温度を前記車両状況情報として検出するための複数の温度センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記複数の温度センサの検出温度に基づいて前記送風ファンユニットの動作を制御することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項6】
前記ロングシートの各着席位置の温度を前記車両状況情報として検出するための複数の温度センサをさらに備え、
前記送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、前記送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、
前記コントローラは、前記複数の温度センサのうち少なくとも1つの検出温度が所定温度以上の場合、前記所定温度以上の検出温度の着席位置に対応する位置にて前記送風ファンの回転数が上がるように前記送風ファンを制御する、又は、前記所定温度以上の検出温度の着席位置に対応する位置にて前記送風ファンが停止するように前記移動手段を制御することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項7】
前記送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、前記送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、
前記コントローラは、前記鉄道車両内の混雑率が閾値以上の場合、所定回転数で回転するように前記送風ファンを制御しながら、前記ガイドレールの一端から他端まで前記送風ファンが往復移動するように前記移動手段を制御することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項8】
前記送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、前記送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、
前記コントローラは、前記鉄道車両内の暖房用ヒータが作動されている場合、所定回転数で回転するように前記送風ファンを制御しながら、前記ガイドレールの一端から他端まで前記送風ファンが往復移動するように前記移動手段を制御することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項9】
前記送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在するガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能な送風ファンと、前記送風ファンを移動させる移動手段と、を含んで構成され、
前記コントローラは、前記鉄道車両内の空調装置が作動されている場合、間欠作動するように前記送風ファンを制御しながら、前記ガイドレールの一端から他端まで前記送風ファンが往復移動するように前記移動手段を制御することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項10】
前記ロングシートは、前記鉄道車両内において車両右方向側部に配設された右側ロングシートと、前記鉄道車両内において車両左方向側部に配設され前記右側ロングシートに対向する左側ロングシートと、を含むものであって、
前記送風ファンユニットとして、前記右側ロングシートの座部と前記床面との間に設けられた右側送風ファンユニットと、前記左側ロングシートの座部と前記床面との間に設けられた左側送風ファンユニットと、を備えたことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項11】
前記右側ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在する右側ガイドレールと、前記右側ガイドレールに沿って移動可能な右側送風ファンと、前記右側送風ファンを移動させる右側移動手段と、を含んで構成され、
前記左側送風ファンユニットは、車両前後方向に沿って延在する左側ガイドレールと、前記左側ガイドレールに沿って移動可能な左側送風ファンと、前記左側送風ファンを移動させる左側移動手段と、を含んで構成されていることを特徴とする請求項10記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記右側及び左側送風ファンが互いに異なる方向又は共に同じ方向に移動するように、前記右側及び左側移動手段のそれぞれを制御することを特徴とする請求項11記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項13】
前記コントローラは、前記右側及び左側送風ファンが共に車両中央側又は共に車両側面側に向けて空気を送風するように、前記右側及び左側送風ファンを制御することを特徴とする請求項11又は12記載の鉄道車両用送風システム。
【請求項14】
前記コントローラは、前記右側送風ファンが車両中央側に向けて空気を送風し且つ前記左側送風ファンが車両側面側に向けて空気を送風する、又は、前記右側送風ファンが車両側面側に向けて空気を送風し且つ前記左側送風ファンが車両中央側に向けて空気を送風するように、前記右側及び左側送風ファンを制御することを特徴とする請求項11又は12記載の鉄道車両用送風システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−208534(P2010−208534A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57771(P2009−57771)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
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