説明

鉄道車両

【課題】駅構内を効率良く冷却することができる鉄道車両を提供することを目的とする。
【解決手段】鉄道車両Tでは、自車両が駅構内に位置しているか否かを判断し、駅構内に位置している場合に、駅構内の温度に基づいて駅のプラットホームPに向けてミスト状の水Mを自動で噴射する。このミスト状の水Mは、気化熱によって、噴射された周囲の温度を低下させる。従って、空調装置等を使用せずとも駅構内を冷却することができる。また、この鉄道車両では、自車両が駅構内に位置している場合にのみ水噴射部9による水の噴射を行うので、ランニングコストが良好な冷却を実現することができる。なお、ミスト状の水Mは微細な粒子であり、乗客が不快な感覚を覚えることもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駅構内の温度を調節する空調装置として、例えば特許文献1に記載の空気調和システムがある。この従来の空気調和システムでは、駅構内に調温空気を吐出する空調機を配置すると共に、プラットホームの端部に沿って上下に送風機を設けている。この空気調和システムでは、上側の送風機から吐出された空気を下側の送風機が吸入することで、プラットホームの端部に沿ってエアカーテンが形成されている。これにより、駅構内の調和空気の流出を抑え、駅構内の効率的な冷却を図っている。
【特許文献1】特開平8−42896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、一般に、鉄道車両が駅構内に接近した際には、例えば鉄道車両の運転時に発生する熱、乗客による熱、及び鉄道車両の空調装置の室外機が放出する熱等によって、鉄道車両自体が熱源となり、一時的に駅構内の温度が上昇する傾向にある。しかしながら、上述した従来の空気調和システムにおいては、鉄道車両がプラットホームに到着した場合には、乗客の乗り降りのしやすさ等を考慮して、送風機の風速を弱くしている。そのため、停車中の鉄道車両から放たれる熱が駅構内に入り易くなり、駅構内の冷却効率が低下するという問題があった。また、上述の空気調和システムでは、送風機を終日作動させなければならないので、多大なランニングコストを要するといった問題があり、環境に優しいものではなかった。
【0004】
本発明は、上記課題解決のためになされたものであり、駅構内を効率良く冷却することができる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題解決のため、本発明に係る鉄道車両は、自車両が駅構内に位置しているか否かを判断する位置判断手段と、位置判断手段によって自車両が駅構内に位置していると判断された場合に、駅のホームに向けてミスト状の水を噴射する水噴射手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
この鉄道車両では、自車両が駅構内に位置しているか否かを判断し、駅構内に位置している場合に、駅のホームに向けてミスト状の水を噴射する。このミスト状の水は、気化熱によって、噴射された周囲の温度を低下させる。従って、空調装置等を使用せずとも駅構内を冷却することができる。また、この鉄道車両では、自車両が駅構内に位置している場合にのみ水噴射手段による水の噴射を行うので、ランニングコストが良好な冷却を実現することができる。なお、ミスト状の水は微細な粒子であり、乗客が不快な感覚を覚えることもない。
【0007】
また、自車両の各停車駅における開閉側扉に関する扉情報を取得する扉情報取得手段と、扉情報に基づいて、水噴射手段から噴射されるミスト状の水の方向を制御する方向制御手段とを更に備えたことが好ましい。こうすると、開閉側扉の方向に合わせて水の噴射方向が設定されるので、プラットホーム側に向けて確実にミスト状の水を噴射できる。
【0008】
また、自車両に設けられ、駅構内の温度を取得する温度取得手段と、温度取得手段によって取得された温度が予め定められた所定の閾値以上であるか否かに基づいて、水噴射手段による水の噴射のオン・オフを制御する水噴射制御手段とを更に備えたことが好ましい。こうすると、駅の温度に基づいて、必要に応じて水の噴射のオン・オフが自動で制御されるので、ランニングコストを一層抑えることができる。
【0009】
また、駅構内の温度情報を、駅構内に設けられた温度取得手段から受信する温度情報受信手段と、温度情報受信手段によって受信された温度が予め定められた所定の閾値以上であるか否かに基づいて、水噴射手段による水の噴射のオン・オフを制御する水噴射制御手段とを更に備えたことが好ましい。このような構成においても、駅の温度に基づいて、必要に応じて水の噴射のオン・オフが自動で制御されるので、ランニングコストを一層抑えることができる。
【0010】
また、温度取得手段及び水噴射手段は、各車両にそれぞれ設けられており、各温度検出手段によって取得された駅の温度のプロファイルに基づいて、各水噴射手段から噴射される水の噴射量を制御する噴射量制御手段とを更に備えたことが好ましい。駅構内の温度は、プラットホームの中央部や端部などで異なる場合が多い。従って、各車両の位置毎に検出された温度のプロファイルに基づいて水の噴射を制御することにより、一層効率的に駅構内を冷却できる。
【0011】
また、水噴射手段から噴射される水は、自車両に備えられた空調装置からの排水であることが好ましい。空調装置からの排水を利用することで、水の節約が図られる。
【0012】
また、水噴射手段から噴射される水は、雨水であることが好ましい。雨水を利用することで、水の節約が図られる。
【0013】
また、水噴射手段に用いられる水を浄化する浄化手段を備えたことが好ましい。この場合、乗客等への水による影響をより抑えることができる。
【0014】
また、自車両の速度を取得する速度取得手段を更に備え、速度取得手段によって取得された速度が予め定められた所定の閾値以下である場合に、位置判断手段は、自車両が駅構内に位置していると判断することが好ましい。これにより、駅構内において確実に水の噴射を行うことが可能となる。
【0015】
また、自車両の停車駅における停車位置からの距離を取得する距離取得手段を更に備え、距離取得手段によって取得された距離が予め定められた所定の閾値以下である場合に、位置判断手段は、自車両が駅構内に位置していると判断することが好ましい。これにより、駅構内において確実に水の噴射を行うことが可能となる。
【0016】
なお、本発明において、「駅構内に位置している」とは、鉄道車両が駅構内において停車駅に近づいている場合や、停車位置から発車して加速している場合も含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、駅構内を効率良く冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る鉄道車両の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る鉄道車両を示す図である。また、図2は、鉄道車両Tの構成要素を示す図である。図1に示す鉄道車両Tは、プラットホームPに停車している状態を示すものである。鉄道車両Tは、予め定められた運行ダイヤに基づいて各駅に停車しながら運行される。鉄道車両Tは、各駅に停車する際に、駅構内の温度に基づいてミスト状の水MをプラットホームPに向けて噴射する機能を有している。このような鉄道車両Tは、車両空調装置2と、車両モニタ装置3と、水噴射装置4とを備えて構成されている。以下、図1及び図2を参照しながら、各構成要素について詳細に説明する。
【0020】
車両空調装置2は、鉄道車両Tの天井部分に設けられ、車内の空調を管理する装置である。車両空調装置2の室外機5は、車両の屋根部10に設けられている。車両空調装置2は、自車両の室外及び室内の温度を検知する温度検知部201を備えている(図2参照)。温度検知部201は、車両モニタ装置3から温度情報を要求する温度情報要求情報を受信する。そして、温度検知部201は、温度情報要求情報に応じて、検知した温度を温度情報として車両モニタ装置3に送信する。
【0021】
車両モニタ装置3は、鉄道車両Tの運行に関わる情報をモニタリングする装置である。車両モニタ装置3は、物理的には、例えばCPU(中央処理装置)、通信装置、メモリ、ディスプレイ等を備えたコンピュータである。また、車両モニタ装置3は、図2に示すように、機能的な構成要素として、運行情報格納部301と、速度取得部(速度取得手段)302と、距離取得部(距離取得手段)303と、扉情報取得部(扉情報取得手段)304と、位置判断部(位置判断手段)305と、温度情報取得部(温度取得手段)306とを有している。車両モニタ装置3は、例えば鉄道車両Tの運転室に設置されている。
【0022】
運行情報格納部301は、各鉄道車両Tの運行情報を格納する部分である。図3に、運行情報格納部301に格納されている情報の一例を示す。図3に示す例では、停車駅を識別する停車駅識別情報と、その停車駅での開閉側扉の向きと、次の停車駅における停車位置からの距離とが関連付けられて格納されている。より具体的には、停車駅「AAA駅/開閉方向右/3km」、「BBB駅/開閉方向左/5km」、「CCC駅/開閉方向右/4km」、…となっている。
【0023】
速度取得部302は、自車両の速度を取得する部分である。速度取得部302は、取得した速度を速度情報として位置判断部305に出力する。
【0024】
距離取得部303は、自車両の停車駅における停車位置からの距離を取得する部分である。距離取得部303は、運行情報格納部301に格納されている各停車駅間の距離に基づいて、停車位置からの距離を取得する。距離取得部303は、取得した停車位置からの距離を距離情報として位置判断部305に出力する。
【0025】
扉情報取得部304は、停車駅における開閉側扉に関する扉情報を取得する部分である。扉情報取得部304は、水噴射装置4から扉情報を要求する扉情報要求情報を受信する。扉情報取得部304は、受け取った扉情報要求情報に応じて運行情報格納部301を参照し、停車駅における開閉側扉に関する扉情報を水噴射装置4に送信する。
【0026】
位置判断部305は、自車両が駅構内に位置しているか否かを判断する部分である。位置判断部305は、速度取得部302から受け取った速度情報に基づいて、速度が低速(例えば、20km/h)になったときに、自車両が駅構内に位置していると判断する。位置判断部305は、自車両が駅構内に位置していると判断された場合には、動作実施情報を生成し、水噴射装置4に送信する。
【0027】
温度情報取得部306は、温度検知部201が検知した自車両の室外及び室内の温度情報を取得する部分である。温度情報取得部306は、水噴射装置4から温度情報を要求する温度情報要求情報を受信する。そして、温度情報取得部306は、温度情報要求情報に応じて、温度検知部201から温度情報を取得し、その取得された温度情報を水噴射装置4に送信する。
【0028】
水噴射装置4は、ミスト状の水Mの噴射を制御及び実施する装置である。水噴射装置4は、貯水装置6と、浄化部7と、動作制御装置8と、水噴射部9とを備えている。
【0029】
貯水装置6は、水を貯水する装置である。貯水装置6は、例えば鉄道車両の妻部に設けられる貯水タンクである。図1を参照して、貯水装置6の取り付け位置の一例を説明する。図1に示すように、貯水装置6は、鉄道車両Tが屋根部10に備える雨樋部11よりも下側に位置し、各車両の妻部12において、中央の通路13よりも上側に設けられている。貯水装置6に貯められる水は、雨水、車両空調装置2の室外機5からの排水、及び水道水等である。雨水及び排水は、雨樋部11によって貯水装置6に誘導され貯水される。
【0030】
浄化部7(図4参照)は、貯水装置6の水を浄化する部分である。浄化部7は、例えばフィルターを通したろ過処理、オゾン処理、又は活性炭処理することによって貯水装置6の水を浄化する。浄化部7は、例えば雨樋部11と貯水装置6との間に設けられる。
【0031】
図4に、排水が雨樋部11を通って貯水装置6に貯水される一例を示す。図4は、鉄道車両Tの屋根部10を上からみた図である。屋根部10には、中央に車両空調装置2の室外機5が配置されており、その室外機5の両側に長手方向に沿って雨樋部11が設けられている。鉄道車両Tの妻部12には、貯水装置6がそれぞれ設けられている。室外機5から排出された排水は、雨樋部11により図中の矢印方向に誘導され、浄化部7を介して妻部12に設けられた貯水装置6に貯水される。
【0032】
動作制御装置8は、水噴射部9の操作を制御する装置である。動作制御装置8は、物理的には、CPU、通信装置、メモリ、ディスプレイ等を備えたコンピュータシステムである。動作制御装置8は、噴射指示受信部801と、貯水量取得部802と、噴射量制御部(噴射量制御手段)803と、方向制御部(方向制御手段)804と、水噴射制御部(水噴射制御手段)805とを有している。動作制御装置8は、車両空調装置2及び車両モニタ装置3と互いに情報通信可能に電気的に接続されている。
【0033】
噴射指示受信部801は、位置判断部305から送信された動作実施情報を受信する部分である。噴射指示受信部801は、動作実施情報を受信すると、噴射量制御部803、方向制御部804、及び水噴射制御部805に動作指示情報を出力する。
【0034】
貯水量取得部802は、貯水装置6に貯水されている貯水量を取得する部分である。貯水量取得部802は、貯水装置6の貯水量を取得し、貯水量が予め定められた所定量以下であれば、その旨を示す貯水量低下情報を噴射量制御部803及び警告装置(図示しない)等に出力する。
【0035】
噴射量制御部803は、各水噴射部9から噴射される水の噴射量を制御する部分である。噴射量制御部803は、噴射指示受信部801から動作指示情報を受け取ると、温度情報取得部306に駅構内の温度に関する温度情報を要求する温度情報要求情報を送信する。そして、噴射量制御部803は、温度情報取得部306から受信した駅構内の温度情報に基づいて、水噴射部9から噴射される水の噴射量を設定して制御する。また、噴射量制御部803は、貯水量取得部802から貯水量低下情報を受け取ると、噴射される水の噴射量を減らす、若しくは噴射を停止できるように制御する。
【0036】
図5に、温度情報に基づく噴射量制御の一例を示す。図5は、水噴射部9からミスト状の水Mが噴射されている様子を示した図である。図5に示す例では、駅構内の中央部分に階段が設けられている。階段付近では、乗客が集中し易く、駅構内の温度が30℃〜32℃と高くなっている。また、駅の端部では、乗客がまばらになり易く、中央部分に比べて28℃と温度が低くなっている。噴射量制御部803は、このような駅構内の温度のプロファイルに基づいて、階段付近に位置する2号車、3号車、5号車、及び6号車における水の噴射量を60cc、70ccとし、端部付近に位置する1号車及び7号車における水の噴射量を50ccとしている。また、噴射量制御部803は、駅構内の中央付近(階段と階段との間)に位置する4号車における水の噴射量を55ccとしている。
【0037】
方向制御部804は、水噴射部9から噴射されるミスト状の水Mの方向を制御する部分である。方向制御部804は、噴射指示受信部801から動作指示情報を受け取ると、扉情報取得部304に停車駅における開閉側扉に関する扉情報を要求する扉情報要求情報を送信する。そして、方向制御部804は、扉情報取得部304から受信した扉情報に基づいて、水噴射部9の方向を設定して制御する。具体的には、停車駅における扉の開閉方向が右側である場合には、ミスト状の水Mが右側に向けて噴射されるように水噴射部9を制御する。
【0038】
水噴射制御部805は、温度情報取得部306によって取得された温度が予め定められた所定の閾値以上であるか否かに基づいて、水噴射部9による水の噴射のオン・オフを制御する部分である。水噴射制御部805は、噴射指示受信部801から動作指示情報を受け取ると、オン・オフの制御を開始する。水噴射制御部805は、例えば駅構内の温度が26℃以上である場合には、水噴射をオンにする。水噴射制御部805は、温度が閾値以上である場合には、水噴射部9に噴射指示情報を送信する。
【0039】
水噴射部9は、駅のホームに向けてミスト状の水Mを噴射する部分である。水噴射部9は、噴射指示情報を受信すると、噴射量制御部803において設定された噴射量の水を噴射する。水噴射部9は、図1に示した貯水装置6の両側に設けられている。水噴射部9は、例えば粒径が16μmのミスト状の水Mを発生させるノズルを有しており、図1に示すように、プラットホームPの上側に向けてミスト状の水Mを噴射する。
【0040】
続いて、上述した構成を有する鉄道車両Tの動作について、図6及び図7を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る鉄道車両Tの動作を示すシーケンス図であり、図7は、車両モニタ装置3の停車判断の処理を示すフローチャートである。以下の動作では、停車駅に停車している場合を駅構内に位置している状態として例示する。
【0041】
図6に示すように、まず、鉄道車両Tに設置された車両モニタ装置3によって自車両が駅構内に停車しているか判断される(ステップS01)。
【0042】
ここで、図7を参照し、自車両が停車しているか否かを判断する車両モニタ装置3の動作について説明する。同図に示すように、まず、速度取得部302において、自車両の速度情報が取得される(ステップS101)。自車両の速度情報が取得されると、速度情報が0km/hであるかを判断することによって、自車両が停車しているか否かが判断される(ステップS102)。自車両が駅構内に停車していると判断された場合には、動作実施情報が生成される(ステップS103)。一方、自車両が駅構内に停車していると判断されなかった場合には、ステップS102に戻って処理を繰り返す。なお、自車両が停車しているか否かの判断は、距離取得部303から受け取った距離情報に基づいて行われても良い。
【0043】
図6に戻って、自車両が停車しているかが判断された後、車両モニタ装置3から動作制御装置8へと動作実施情報が送信される(ステップS02)。そして、動作実施情報を受信した動作制御装置8では、車両モニタ装置3に扉情報要求情報が送信される(ステップS03)。
【0044】
次に、扉情報要求情報を受信した車両モニタ装置3では、停車時に開閉する開閉側扉の扉情報が取得され(ステップS04)、動作制御装置8へと扉情報が送信される(ステップS05)。また、動作制御装置8では、車両モニタ装置3へと温度情報要求情報が送信される(ステップS06)。そして、温度情報要求情報を受信した車両モニタ装置3では、車両空調装置2へと受信した温度情報要求情報が送信される(ステップS07)。なお、扉情報要求情報及び温度情報要求情報は、動作制御装置8から車両モニタ装置3へと同時に送信されても良い。
【0045】
温度情報要求情報を受信した車両空調装置2では、温度が検知され(ステップS08)、車両モニタ装置3へと温度情報が送信される(ステップS09)。温度情報を受信した車両モニタ装置3では、温度情報が取得され(ステップS10)、動作制御装置8へと温度情報が送信される(ステップS11)。
【0046】
続いて、扉情報及び温度情報を受信した動作制御装置8では、扉情報に基づいて、水の噴射方向が設定される(ステップS12)。また、温度情報に基づいて、水の噴射量が設定される(ステップS13)。そして、温度情報が所定の閾値以上であると判断された場合には、動作制御装置8から水噴射部9へと噴射指示情報が送信される(ステップS14)。水噴射部9は、動作制御装置8から噴射指示情報を受信すると、これらの情報に応じてミスト状の水Mを噴射する(ステップS15)。
【0047】
ここで、図8に、ミスト状の水Mを噴射した場合の効果の一例を示す。図8は、ミスト状の水Mが噴射される前と後との駅構内の温度を示したグラフである。横軸は各車両の位置であり、縦軸は各車両近辺の温度である。図8に示すように、ミスト状の水Mの噴射前後では、いずれの位置においても噴射後に温度が2〜3℃低下している。
【0048】
以上のように、鉄道車両Tでは、自車両が駅構内に位置しているか否かを判断し、駅構内に位置している場合に、駅構内の温度に基づいて駅のプラットホームPに向けてミスト状の水Mを自動で噴射する。このミスト状の水Mは、気化熱によって、噴射された周囲の温度を低下させる。従って、空調装置等を使用せずとも駅構内を冷却することができる。また、この鉄道車両では、自車両が駅構内に位置している場合にのみ水噴射部9による水の噴射を行うので、ランニングコストが良好な冷却を実現することができる。なお、ミスト状の水Mは微細な粒子であり、乗客が不快な感覚を覚えることもない。
【0049】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る鉄道車両について説明する。
【0050】
図9は、本発明の第2実施形態に係る鉄道車両の構成要素を示す図である。図9に示すように、第2実施形態に係る鉄道車両T1は、駅構内の温度を取得する温度取得装置14が駅構内に備えられている点で、第1実施形態と異なる。すなわち、第2実施形態に係る鉄道車両T1では、駅構内の温度が、車両空調装置2に代わって駅構内に備えられた温度取得装置14によって取得される。
【0051】
温度取得装置14は、駅の温度を取得して鉄道車両T1に送信する装置である。温度取得装置14は、物理的には、例えばCPU(中央処理装置)、通信装置、メモリ、ディスプレイ等を備えたコンピュータである。温度取得装置14は、温度取得部1401と、温度情報送信部1402とを有している。なお、温度取得装置14と動作制御装置8とは、例えば無線LAN等のネットワークNWを介して互いに情報通信可能に接続されている。
【0052】
温度取得部1401は、駅構内のプラットホームPの温度を取得する部分である。温度取得部1401は、プラットホームPの鉄道車両T1の停車する位置に対応して設けられ、プラットホームPの温度のプロファイルを取得する。温度取得部1401は、取得した温度を温度情報として温度情報送信部1402に出力する。
【0053】
温度情報送信部1402は、温度取得部1401が取得した温度情報を動作制御装置8へ送信する部分である。
【0054】
温度情報受信部(温度情報受信手段)806は、温度取得装置14から送信された温度情報を受信する部分である。温度情報受信部806は、受信した温度情報を噴射量制御部803及び水噴射制御部805に出力する。
【0055】
続いて、上述した構成を有する鉄道車両T1の動作について、図10を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一の動作(ステップS201〜203、ステップS205、ステップS206、ステップS209〜ステップS212)については説明を省略する。
【0056】
動作制御装置8は、温度情報要求情報を温度取得装置14に送信する(ステップS204)。温度情報要求情報を受信した温度取得装置14は、温度情報が取得され(ステップS207)、動作制御装置8へと温度情報が送信される(ステップS208)。
【0057】
このような構成を有する鉄道車両T1においても、第1の実施形態と同様に、自車両が駅構内に位置しているか否かを判断し、駅構内に位置している場合に、駅構内の温度に基づいて駅のプラットホームPに向けてミスト状の水Mを自動で噴射する。これにより、駅構内を効率良く冷却することができる。
【0058】
本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では停車位置に停車した際に水が噴射される構成としたが、停車位置に接近、或いは停車位置から離れていく場合に噴射されてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、水噴射部9を鉄道車両Tの妻部9に取り付ける構造として例示したが、例えば鉄道車両Tの側面の上部に取り付けられてもよい。また、ミスト状の水Mの噴射方向を開閉扉側として例示したが、熱を放出する車両空調装置2の室外機5に向けて噴射されるようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、駅構内の温度に基づいて自動で水が噴射される構成として例示したが、例えば位置判断部305によって自車両が駅構内に位置していると判断された場合に操作可能な噴射スイッチを更に備え、噴射スイッチが押されることによる手動操作で水が噴射されてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、停車駅における開閉扉側に関する扉情報を運行情報格納部301から取得する構成として例示したが、例えば乗務員の停車中における開閉側扉の操作スイッチの操作に応じて、扉情報を取得するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態に係る鉄道車両を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る鉄道車両の構成を示す図である。
【図3】運行情報格納部に格納されている情報の一例を示す図である。
【図4】排水が雨樋部を通って貯水装置に貯水される一例を示す図である。
【図5】温度情報に基づく噴射量制御の一例を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る鉄道車両の動作示すシーケンス図である。
【図7】車両モニタ装置の停車判断の処理を示すフローチャートである。
【図8】ミスト状の水を噴射した場合の効果の一例示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る鉄道車両の構成を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る鉄道車両の動作示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0063】
302…速度取得部(速度取得手段)、303…距離取得部(距離取得手段)、304…扉情報取得部(扉情報取得手段)、305…位置判断部(位置判断手段)、306…温度情報取得部(温度取得手段)、803…噴射量制御部(噴射量制御手段)、804…方向制御部(方向制御手段)、805…水噴射制御部(水噴射制御手段)、806…温度情報受信部(温度情報受信手段)、1401…温度取得部(温度取得手段)、T,T1…鉄道車両、M…ミスト状の水、P…プラットホーム(ホーム)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が駅構内に位置しているか否かを判断する位置判断手段と、
前記位置判断手段によって前記自車両が前記駅構内に位置していると判断された場合に、前記駅のホームに向けてミスト状の水を噴射する水噴射手段とを備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記自車両の各停車駅における開閉側扉に関する扉情報を取得する扉情報取得手段と、
前記扉情報に基づいて、前記水噴射手段から噴射される前記ミスト状の水の方向を制御する方向制御手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記自車両に設けられ、前記駅構内の温度を取得する温度取得手段と、
前記温度取得手段によって取得された前記温度が予め定められた所定の閾値以上であるか否かに基づいて、前記水噴射手段による前記水の噴射のオン・オフを制御する水噴射制御手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記駅構内の温度情報を、前記駅構内に設けられた温度取得手段から受信する温度情報受信手段と、
前記温度情報受信手段によって受信された前記温度が予め定められた所定の閾値以上であるか否かに基づいて、前記水噴射手段による前記水の噴射のオン・オフを制御する水噴射制御手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記温度取得手段及び前記水噴射手段は、各車両にそれぞれ設けられており、
前記各温度検出手段によって取得された前記駅の温度のプロファイルに基づいて、前記各水噴射手段から噴射される前記水の噴射量を制御する噴射量制御手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記水噴射手段から噴射される前記水は、前記自車両に備えられた空調装置からの排水であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の鉄道車両。
【請求項7】
前記水噴射手段から噴射される前記水は、雨水であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の鉄道車両。
【請求項8】
前記水噴射手段に用いられる水を浄化する浄化手段を備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の鉄道車両。
【請求項9】
前記自車両の速度を取得する速度取得手段を更に備え、
前記速度取得手段によって取得された速度が予め定められた所定の閾値以下である場合に、前記位置判断手段は、前記自車両が前記駅構内に位置していると判断することを特徴する請求項1〜8のいずれか一項記載の鉄道車両。
【請求項10】
前記自車両の停車駅における停車位置からの距離を取得する距離取得手段を更に備え、
前記距離取得手段によって取得された距離が予め定められた所定の閾値以下である場合に、前記位置判断手段は、前記自車両が前記駅構内に位置していると判断することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の鉄道車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−208489(P2009−208489A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50413(P2008−50413)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)