説明

鉄道車両

【課題】ばね受け部材の取り付けを容易かつ確実に行うことができ、作業性の向上を図ることができる空気ばね取付構造を備えた鉄道車両を提供する。
【解決手段】空気ばね17の上面が当接するばね受け部材31の上面に複数の補強リブ33a,33bを設け、補強リブを上に向けた状態で台枠11の枕梁13の下面に設けた空気ばね受け取付凹部24内に挿入し、補強リブの上面を枕梁の上面側部材の下面に当接させた状態で補強リブの上面と上面側部材とを溶接してばね受け部材を凹部内に固着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、詳しくは、台車に設けられた空気ばねを台枠の枕梁下面で直接受ける構造とした鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両においても、バリアフリー対応のため、低床化した車両が求められている。一般の鉄道車両では、台枠の下方に台車を履く構成となるため、台枠の枕梁の下当て板に空気ばねの上部が通過可能な開口を形成するとともに、該開口の上部に円盤状の空気ばね受け及び円筒状の空気ばね案内を設けることによって空気ばねの上部を収容可能な凹部(掘り込み部)を形成し、この凹部内に空気ばねの上部を挿入する構成とすることにより、車体床面を凹部の高さ分だけ低くすることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−254786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、台枠の枕梁の下面に、前述のような凹部を形成して空気ばねを配設する場合、枕梁を構成する下当て板や上当て板とは別にばね受け部材やばね案内部材、腹板部材等を必要とし、凹部の内側にばね受け部材などを嵌め込んで空気ばね取付側から溶接していたため、凹部内における各部材の位置調整や溶接時の熱歪みで変形した部分の平滑仕上げなどの作業に多大な手間がかかっていた。
【0005】
そこで本発明は、凹部の内側に嵌め込まれるばね受け部材の取り付けを容易かつ確実に行うことができ、作業性の向上を図ることができる空気ばね取付構造を備えた鉄道車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の鉄道車両は、台枠の枕梁の下面に、台車に設けられた空気ばねの上部を挿入する凹部を設けるとともに、該凹部内に空気ばねの上面に当接するばね受け部材を設けた鉄道車両において、前記ばね受け部材の上面に複数の補強リブを設け、該補強リブを前記枕梁の上面側に向けた状態のばね受け部材を前記凹部内に挿入し、前記補強リブの上面を前記枕梁の上面側部材の下面に当接させた状態で補強リブの上面と上面側部材とを溶接してばね受け部材を凹部内に固着し、該凹部内に固着したばね受け部材の下面に前記空気ばねの上面を当接させたことを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の鉄道車両は、前記上面側部材における前記補強リブを溶接する位置に溶接用通孔が設けられていること、前記補強リブにおける上面の寸法が前記溶接用通孔の開口寸法より大きいこと、前記補強リブが前記枕梁の上面側部材の下方に突出する部分を避けた位置に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の鉄道車両によれば、ばね受け部材の上面に設けた補強リブの上面と枕梁の上面側部材とを溶接してばね受け部材を凹部内に固着しているので、溶接作業を枕梁の上方の周囲に障害物がない状態で行うことができるので、溶接時の作業性を大幅に向上できるとともに、空気ばねの上面に当接するばね受け部材の下面が溶接時の熱によって変形することがないので、溶接後の仕上げ作業を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図2のI−I断面図である。
【図2】本発明の鉄道車両の一形態例を示す台枠の枕梁の平面図である。
【図3】要部の平面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】図3のV−V断面図である。
【図6】図3のVI−VI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本形態例に示す鉄道車両における台枠11は、車体両側のレール方向に設けられる左右一対の側梁12と、該側梁12の前後両端に設けられる一対の端梁(図示せず)と、左右の側梁12間に車体幅方向に設けられる前後2箇所の枕梁13及び複数の横梁(図示せず)と、側梁12と平行な車体前後方向に設けられる複数の中梁14とで構成されており、台枠11の上面には床材15が取り付けられ、側梁12の外端上部には側構16の下端部が取り付けられる。このような台枠11と一体的に構成される車体は、枕梁13の車体幅方向両端部下方にそれぞれ配置される空気ばね17を介して台車上に支持される。
【0011】
台枠11における枕梁13は、所定間隔で車体幅方向に配置される2本の軽合金製の中空形材21,21と、両中空形材21,21の間に配置される上部連結板22及び下部連結板23とで形成されており、枕梁13の両端部下面には、台車に装着された空気ばね17の上部を受けるための空気ばね受け取付凹部24が設けられている。
【0012】
空気ばね受け取付凹部24は、空気ばね17の上部形状に対応した平面視円形に形成されており、この空気ばね受け取付凹部24の内部に、空気ばね17の上面に当接する円盤状のばね受け部材31が取り付けられる。このばね受け部材31の外周には、下方に突出して前記空気ばね17の上部外周を囲むリング状のばねガイド32と、ばね受け部材31の上面に設けられた複数の補強リブ33a,33bとを有している。
【0013】
空気ばね受け取付凹部24を設ける部分の枕梁13は、前記中空形材21,21の下面板21a及び前記下部連結板23が前記ばねガイド32の外周面に対応した位置で切除され、中空形材21,21の枕梁外側に位置する各外側側面板21bは、前記ばねガイド32と干渉する位置が切除されるとともに、中空形材21,21の枕梁内側に位置する内側側面板21cは、前記ばね受け部材31の上面と干渉する位置から下方の部分が切除されている。これにより、枕梁13の下面に、前記空気ばね受け31を下方の開口から上方に向けて挿入可能な円形の空気ばね受け取付凹部24が形成される。
【0014】
また、前記中空形材21,21の下面板21aの両端部及びばねガイド32の車体外側部分の下部外周と側梁12との間には、略三角形状に形成された補強板25がそれぞれ設けられ、該補強板25によって枕梁13と側梁12との取付強度及びばね受け部材31の取付強度をそれぞれ向上させている。さらに、前記ばね受け部材31の中心及びこれに対応する部分の上部連結板22には、空気ばね17の空気配管接続部17aを通すための円形の挿通孔31a,22aが設けられ、枕梁13の各部には、ネジ座26やヘリサート用雌ねじ孔27などがあらかじめ設定された位置にそれぞれ設けられている。
【0015】
前記複数の補強リブ33a,33bは、ばね受け部材31の上面において、ばね受け部材31の中心を通る車体幅方向の直線に対して平行な方向で、かつ、前記車体幅方向の直線に対して線対称の位置に設けられた各2個ずつの幅方向補強リブ33aと、ばね受け部材31の中心を通る車体前後方向の直線に対して平行な方向で、かつ、前記車体前後方向の直線に対して線対称の位置に設けられた各2個ずつの前後方向補強リブ33bとを有しており、各補強リブ33a,33bは、各中空形材21,21の側面板21cにおける切除後に残って下方に突出する部分21d及び前記挿通孔22aを避けた位置にそれぞれ配置されている。また、前記補強リブ33a,33bの上面が当接する枕梁上面側部材である各中空形材21,21の上面板21e及び上部連結板22には、あらかじめ設定された間隔及びあらかじめ設定された口径の溶接用通孔34が複数箇所にそれぞれ設けられている。
【0016】
ばね受け部材31は、上面に前記補強リブ33a,33bが取り付けられ、外周にばねガイド32が取り付けられた状態で、枕梁13の下面側から、幅方向補強リブ33aを車体幅方向に、前後方向補強リブ33bを前後方向にして空気ばね受け取付凹部24内に挿入され、空気ばね受け取付凹部24の底面となる上面板21e及び上部連結板22の下面に補強リブ33a,33bの上面を当接させた状態で、前記溶接用通孔34を介して上面板21e及び上部連結板22と補強リブ33a,33bとがそれぞれ溶接される。
【0017】
このように、空気ばね17の上面に下面が当接するばね受け部材31の上面に補強リブ33a,33bを設け、この補強リブ33a,33bの上面を溶接用通孔34を介して上面板21e及び上部連結板22に溶接することにより、溶接時の熱歪みでばね受け部材31が変形することがなくなり、ばね受け部材31を取り付けた後に空気ばね17に当接するばね受け部材31の下面を平滑に仕上げる作業を省略することができる。また、ばねガイド32に囲まれた空気ばね受け取付凹部24の中の狭い空間内で溶接を行う場合に比べて、枕梁13の上方で周囲に障害物がない状態で溶接を行えるので溶接作業性も向上し、空気ばね受け取付凹部24内でのばね受け部材31の仕上げ作業が不要なため、ばね受け部材31を空気ばね受け取付凹部24内に取り付けるための作業性を大幅に向上でき、作業時間の短縮が図れるとともに、品質の向上も図れる。さらに、補強リブ33a,33bの上面の溶接部の寸法、すなわち、本形態例では補強リブ33a,33bの上面の幅寸法を、上面板21eや上部連結板22に設けた溶接用通孔34の開口寸法より大きく形成しておくことにより、溶接用通孔34を介して補強リブ33a,33bと上面板21eや上部連結板22とを溶接する際に、補強リブ33a,33bの溶接部と溶接用通孔34との位置が多少ずれても溶接が可能であるから、ばね受け部材31の位置合わせを容易に行うことができる。
【0018】
さらに、適当な間隔を設けて配置した補強リブ33a,33bを介してばね受け部材31を空気ばね受け取付凹部24に挿入しているので、各中空形材21,21の内側側面板21cを全て切除したり、空気ばね受け取付凹部24の底面部分(上面板21e及び上部連結板22の下面)を平滑にしたりする必要がなく、空気ばね受け取付凹部24も容易に形成することができる。
【0019】
本形態例では、側梁12に近い補強リブ33bを上部連結板22の端部と溶接しているが、他の補強リブと同様に、溶接用通孔34を利用して溶接することもできる。また、ばね受け部材31の上面に補強リブ33a,33bを溶接して固着する場合、ばね受け部材31に熱歪みが発生することがあるが、枕梁13に取り付ける前であれば、ばね受け部材31の下面(空気ばね当接面)の切削などの平滑仕上げは、凹部内に挿入した状態で行う場合に比べて極めて容易かつ確実に行うことができる。
【0020】
このようにして枕梁13の両端部所定位置に設けられた空気ばね受け取付凹部24にばね受け部材31を取り付けた状態で、台車に設けられている空気ばね17の上部を挿入することにより、ばね受け部材31の下面と空気ばね17の上面とを確実に当接させることができ、鉄道車両の車体と台車とを確実に組み付けることができる。
【0021】
なお、補強リブの形状や位置は、枕梁の構造に応じて任意に設定することが可能であり、台枠や車体の構造、台車の構造も特に限定されるものではなく、一般的な構造を適宜採用することができる。
【符号の説明】
【0022】
11…台枠、12…側梁、13…枕梁、14…中梁、15…床材、16…側構、17…空気ばね、17a…空気配管接続部、21…中空形材、21a…下面板、21b…外側側面板、21c…内側側面板、21e…上面板、22…上部連結板、22a…挿通孔、23…下部連結板、24…空気ばね受け取付凹部、25…補強板、26…ネジ座、27…ヘリサート用雌ねじ孔、31…ばね受け部材、31a…挿通孔、32…ばねガイド、33a…幅方向補強リブ、33b…前後方向補強リブ、34…溶接用通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠の枕梁の下面に、台車に設けられた空気ばねの上部を挿入する凹部を設けるとともに、該凹部内に空気ばねの上面に当接するばね受け部材を設けた鉄道車両において、前記ばね受け部材の上面に複数の補強リブを設け、該補強リブを前記枕梁の上面側に向けた状態のばね受け部材を前記凹部内に挿入し、前記補強リブの上面を前記枕梁の上面側部材の下面に当接させた状態で補強リブの上面と上面側部材とを溶接してばね受け部材を凹部内に固着し、該凹部内に固着したばね受け部材の下面に前記空気ばねの上面を当接させたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記上面側部材は、前記補強リブを溶接する位置に溶接用通孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記補強リブは、上面の溶接部の寸法が前記溶接用通孔の開口寸法より大きいことを特徴とする請求項2記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記補強リブは、前記枕梁の上面側部材の下方に突出する部分を避けた位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の鉄道車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−240542(P2012−240542A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112007(P2011−112007)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)