説明

鉄骨階段用踏み板養生材

【課題】踏み板の段鼻部に設けられた立上り部の寸法に拘わらず、立上り部を作らないように養生が可能であるとともに、廃材を無くしかつ他の建設現場でも再利用が可能な鉄骨階段の踏み板養生材を得る。
【解決手段】踏み板3の少なくとも段鼻部に長手方向に沿って上方側に起立する立上り部6が設けられ、蹴込み板5、踏み面4及び前記立上り部6によって構成される凹部3a内にコンクリート又はモルタルが打設されることにより仕上げられる鉄骨階段1のための踏み板養生材7であって、前記踏み板養生材7は、前記踏み板3を覆う踏み板カバー部8と、前記立上り部6に対応して前記踏み板カバー部8の段鼻側縁部に設けられるとともに、対峙する2つの垂下片9a、9bからなる前記立上り部6の係合挿入部9と、前記踏み板カバー部8の蹴込み側縁部に設けられた脚用垂下片部10とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の建設中に、鉄骨階段の踏み板部分を養生するための踏み板養生材に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建設工事においては、鉄骨階段が作業員の出入りや建築資材の搬入用として利用される。そのため、建設中は、作業員が躓いたり、泥等により踏み板面が汚れないように養生材によって養生が行われる。
【0003】
前記鉄骨階段30は、図6に示されるように、側桁31,31間に一定間隔で踏み板32,32…を横架することにより組み立てられている。前記踏み板32は、図7に示されるように、踏み面33と、この踏み面33の奥側縁部に上方側に起立するように連続して設けられる蹴込み板34と、前記踏み面33の段鼻部に連続して設けられる立上り部35とから構成されており、蹴込み板34、踏み面33及び前記立上り部35によって構成される凹部内に、メッシュ筋を敷設した後、コンクリート又はモルタルが打設されることにより仕上げられる。
【0004】
従って、前記鉄骨階段の養生材としては、前記立上り部35で作業員が躓かないようにするため、前記立上り部35の起立寸法に相当する厚みを有するコンパネや桟木などの木材を敷設して養生を行っていた。
【0005】
しかし、単に木材を敷設するのみでは、滑りやぐらつきが生じて危険である、騒音が発生するなどの問題があったため、下記特許文献1では、養生板を固定するための取付金具として、図8に示されるように、階段踏面部に敷き込まれる養生板Pの裏面に沿いかつ板幅方向に指向して固着される主板部37と、主板部37の前端部に立設され、前記立上り部に係合して主板部37を鉄骨踏板上に間隔を置き保持し固定するフック部38と、主板部37の後端部に垂設されて主板部37を踏板上に間隔を置き保持する間隔保持部39を具備した取付金具36が提案されている。
【特許文献1】実開平5−83212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、前記特許文献1記載の養生板取付金具を使用することにより、養生板を動かないように固定することが可能となるが、踏み板32の立上り部35の起立寸法は、一応の規格はあるものの、階段毎に寸法差があるため、立上り部を残さないようにするには、立上り寸法に合わせた養生板の手配が必要となるため、その手配が非常に煩雑であるなどの問題があるとともに、養生板は工事完了後には廃材処理されるため、その処理にコストが掛かるようになるなどの問題が依然としてあった。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、踏み板の段鼻部に設けられた立上り部の寸法に拘わらず、立上り部を作らないように養生が可能であるとともに、廃材を無くしかつ他の建設現場でも再利用が可能な鉄骨階段の踏み板養生材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、踏み面の少なくとも段鼻部に長手方向に沿って上方側に起立する立上り部が設けられ、蹴込み板、踏み面及び前記立上り部によって構成される凹部内にコンクリート又はモルタルが打設されることにより仕上げられる鉄骨階段のための踏み板養生材であって、
前記踏み板養生材は、前記踏み板を覆う踏み板カバー部と、前記立上り部に対応して前記踏み板カバー部の段鼻側縁部に設けられるとともに、対峙する2つの垂下片からなる前記立上り部の係合挿入部と、前記踏み板カバー部の蹴込み側縁部に設けられた脚用垂下片部とからなることを特徴とする鉄骨階段用踏み板養生材が提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明においては、前記構造の鉄骨階段のための踏み板養生材として、前記踏み板を覆う踏み板カバー部と、前記立上り部に対応して前記踏み板カバー部の段鼻側縁部に設けられるとともに、対峙する2つの垂下片からなる前記立上り部の係合挿入部と、前記踏み板カバー部の蹴込み側縁部に設けられた脚用垂下片部とからなる構造の養生材とするものである。
【0010】
したがって、以下の作用効果を奏することができる。
(1)前記踏み板養生材の係合挿入部に、踏み板の立上り部を挿入するようにして設置するだけで、踏み板養生材をガタツキ無く設置することができ、安全性を高めることができる。
(2)前記係合挿入部に踏み板の立上り部を挿入させるようにして取付けるため、立上り部の寸法に拘わらず、すべての鉄骨階段で立上り部を作らないように養生が可能である。
(3)構造的には、板材に2つの垂下片からなる前記係合挿入部と、脚用垂下片部とを設けるだけの単純な構造であるため製作が容易である。また、木材等の養生板も不要となる。
(4)使用後には他の建設現場への転用が可能であるとともに、廃材が出ないため経済的となる。
【0011】
請求項2に係る本発明として、前記踏み板養生材は、両側縁部に垂下片を有する断面コ字状の鋼板材とし、一方側の垂下片の内側に垂下片を追加し、前記係合挿入部を形成してある請求項1記載の鉄骨階段用踏み板養生材が提供される。
【0012】
請求項3に係る本発明として、前記係合挿入部の端部において、2つの垂下片の内の少なくとも一方側が挿入溝を拡大させる方向に折曲げられている請求項1,2いずれかに記載の鉄骨階段用踏み板養生材が提供される。
【0013】
上記請求項3記載の発明においては、係合挿入部の端部において、2つの垂下片の内の少なくとも一方側が挿入溝を拡大させる方向に折曲げられているため、係合挿入部の挿入溝に対する立上り部の挿入が行い易くなる。
【0014】
請求項4に係る本発明として、前記踏み板養生材の鋼板材として、縞鋼板又は床用鋼板を用いる請求項2記載の鉄骨階段用踏み板養生材が提供される。
【0015】
上記請求項4記載の発明においては、前記踏み板養生材の鋼板材として、縞鋼板又は床用鋼板を用いるため、滑りを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上詳説のとおり本発明によれば、踏み板の段鼻部に設けられた立上り部の寸法に拘わらず、立上り部を作らないように養生が可能であるとともに、廃材を無くしかつ他の建設現場でも再利用が可能である等の利点を備えた鉄骨階段の踏み板養生材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0018】
図1は本発明に係る踏み板養生材を設けた鉄骨階段1の全体斜視図であり、図2は踏み板3に踏み板養生材7を取り付けた状態を示す斜視図である。
【0019】
ビル等の建設工事において、昇降路として設けられる鉄骨階段1は、作業員の出入りや建築資材の搬入口として利用される。
【0020】
前記鉄骨階段1は、図1に示されるように、斜上方向に延びる側桁2,2間に一定間隔で複数の踏み板3、3…を横架させた構造のもので、前記踏み板3は、図2に示されるように、踏み面4と、この踏み面4の奥側縁部に長手方向に沿って上方側に起立して設けられた蹴込み板5と、前記踏み板3の段鼻部(先端部)に設けられた立上り部6とからなる断面略L字状の鋼部材からなるものである。なお、一般的には前記立上り部6の起立寸法は、前記蹴込み板5の起立寸法よりも小さく設定されている。
【0021】
前記踏み板3は、建設途中に、作業員が躓いたり、前記踏み面4が汚れるのを防止するために本発明に係る踏み板養生材7が設けられ、建設完了時には前記蹴込み板5,踏み面4及び前記立上り部6及び側桁2,2によって構成される凹部3a内に、コンクリート又はモルタルが前記立上り部6の天端まで打設されることにより仕上げられるようになっている。
【0022】
なお、前記側桁2,2には、手摺り(図示せず)が設けられ、落下防止が図られるようになっている。
【0023】
前記踏み板養生材7は、詳細には図2〜図4に示されるように、前記踏み面4の大部分又はほぼ全面を覆う踏み板カバー部8と、前記立上り部6に対応して踏み板カバー部8の段鼻側縁部に設けられるとともに、対峙する2つの第1垂下片9a、第2垂下片9bからなる前記立上り部6の係合挿入部9と、前記踏み板カバー部8の蹴込み側縁部に設けられた脚用垂下片部10とからなる部材である。
【0024】
図示される前記踏み板養生材7は、縞鋼板又は床用鋼板を基本部材として、この板材の長手方向縁部を夫々屈曲加工することにより、前記第1垂下片9aと、脚用垂下片部10とを形成し、前記第1垂下片9aの内側に、断面L字状部材(アングル)9Aをスポット溶接等により固設して第2垂下片9bを設けることにより、部材長手方向に沿ってスリット状の溝9cを形成し、前記係合挿入部9を構成するようにしたものである。
【0025】
なお、前記縞鋼板は、厚さ3.2〜14.0mmの鋼板の表面に菱形の縞の山7a又は溝を付けた鋼板であり、前記床用鋼板は高さ2mm程度、幅約9mm、長さ約30mmの小突起7aを規則的に形成した鋼板であり、いずれも床や階段踏み板などとして使用されるものである。
【0026】
前記踏み板養生材7は、図3に示されるように、設置状態で踏み板3の長手寸法に対して、両側に夫々、S1:20〜30mm程度の余裕代を見込み、かつ踏み板3の踏み面寸法(短手寸法)に対して、S2:20〜30mmの余裕代を見込んだ平面寸法とするのが望ましい。周囲に20〜30mm程度の余裕を見込んだ寸法とすることにより、踏み板3に対する着脱が容易に行えるようになるとともに、数多くの階段寸法に対応可能とすることができる。
【0027】
前記踏み板養生材7を前記踏み板3に取り付けるには、図2に示されるように、係合挿入部9に踏み板3の立上り部6を挿入するようにしながら載置するだけで容易に設置することが可能である。
【0028】
ところで、設置状態では、図4に示されるように、脚用垂下片部10側が段鼻部よりも高くなるように各寸法を設定し、排水勾配iが形成されるようにするのが望ましい。排水勾配iにより養生材踏み面8上の雨水等が効果的に排水され、滑り等を防止できるようになる。
【0029】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例においては、係合挿入部9を構成する第1垂下片9aおよび第2垂下片9bはいずれも踏み板カバー部8から鉛直に垂下させているが、図5に示されるように、前記2つの垂下片9a、9bの内の少なくとも一方側の端部を、挿入溝9cの溝幅を拡大させる方向に折り曲げるように形成してもよい。このように係合挿入部9の端部の溝幅を拡大させることにより、踏み板3の立上り部6を挿入溝9cに挿入し易くなる。
(2)上記形態例においては、縞鋼板又は床用鋼板を用いて踏み板養生材7を製作したが、他の材料、例えば樹脂(プラスチック)等によって本発明に係る踏み板養生材7を製作するようにしてもよい。この場合は、踏み板カバー部8の上面には、小突起を多数設けるようにして滑り等が無くなるようにするのが望ましい。
(3)上記形態例では、踏み板カバー部8の蹴込み側縁部を屈曲加工することにより脚用垂下片部10を形成するようにしたが、例えば断面L字状部材(アングル)を溶接等に固設することにより、前記脚用垂下片部10を形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る踏み板養生材を設けた鉄骨階段1の全体斜視図である。
【図2】踏み板3に踏み板養生材7を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図3】その平面図である。
【図4】その縦断面図である。
【図5】踏み板養生材7の変形例を示す垂下片9a端部を示す要部斜視図である。
【図6】鉄骨階段30の斜視図である。
【図7】鉄骨階段30の踏み板32の縦断面図である。
【図8】従来例に係る養生板固定取付金具36を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1…鉄骨階段、2…側桁、3…踏み板、4…踏み面、5…蹴込み板、6…立上り部、7…踏み板養生材、8…踏み板カバー部、9…係合挿入部、9A…断面L字状部材(アングル)、9a…第1垂下片、9b…第2垂下片、9c…挿入溝、10…脚用垂下片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏み面の少なくとも段鼻部に長手方向に沿って上方側に起立する立上り部が設けられ、蹴込み板、踏み面及び前記立上り部によって構成される凹部内にコンクリート又はモルタルが打設されることにより仕上げられる鉄骨階段のための踏み板養生材であって、
前記踏み板養生材は、前記踏み板を覆う踏み板カバー部と、前記立上り部に対応して前記踏み板カバー部の段鼻側縁部に設けられるとともに、対峙する2つの垂下片からなる前記立上り部の係合挿入部と、前記踏み板カバー部の蹴込み側縁部に設けられた脚用垂下片部とからなることを特徴とする鉄骨階段用踏み板養生材。
【請求項2】
前記踏み板養生材は、両側縁部に垂下片を有する断面コ字状の鋼板材とし、一方側の垂下片の内側に垂下片を追加し、前記係合挿入部を形成してある請求項1記載の鉄骨階段用踏み板養生材。
【請求項3】
前記係合挿入部の端部において、2つの垂下片の内の少なくとも一方側が挿入溝を拡大させる方向に折曲げられている請求項1,2いずれかに記載の鉄骨階段用踏み板養生材。
【請求項4】
前記踏み板養生材の鋼板材として、縞鋼板又は床用鋼板を用いる請求項2記載の鉄骨階段用踏み板養生材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−63598(P2006−63598A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246112(P2004−246112)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(390018474)新日本空調株式会社 (88)