説明

鉱滓綿用のポリイソシアネートベースのバインダー

有機ポリイソシアネートとアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを含む鉱物繊維用バインダーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱物繊維、すなわち人造ガラス質繊維(MMVF)[例えば、ガラススラグやストーン・ウール(stone wool)(すなわち鉱滓綿)]用のバインダーとして使用するのに適した組成物、このような組成物を供給するための方法、このようなバインダーを組み込んだ鉱滓綿物品、および、前記組成物を鉱物繊維のバインダーとして使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
鉱滓綿物品は通常、キュアーされた熱硬化ポリマー材料によって結合された鉱物繊維を含んでなる。溶融ガラス、スラグ、またはストーン・ウールの1つ以上の流れを延伸して繊維とし、これをフォーミング・チャンバー(forming chamber)中に吹き込み、そこで移動コンベヤー上にウェブとしてデポジットさせる。フォーミング・チャンバー中に浮遊していて、まだ高温状態にある繊維にバインダーを噴霧する。次いで、被覆された繊維ウェブをチャンバーから硬化炉に移し、そこでマットを通して熱風を吹き込んでバインダーを硬化させ、鉱滓綿繊維を強く結合させる。
【0003】
フェノール・ホルムアルデヒドバインダーは、未硬化の状態における粘度が低く、しかも硬化すると鉱物繊維に対して堅固な熱硬化ポリマーマトリックスを形成するので、鉱滓綿工業において広く使用されている。しかしながら、フェノール−ホルムアルデヒドバインダーの使用は、プロセス時において、環境上好ましくない化学物質を使用すること、そしてこうした化学物質が放出されることから、ますます望ましくない状況になっている。
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的は、優れた結合特性と耐火特性を有していて、使用衛生や労働衛生の観点から許容できるバインダー組成物を提供することにある。重要な利点は、本発明のバインダーが、環境に対して過剰な生態学的負荷を引き起こさない、ということである。
【0005】
したがって本発明は、有機ポリイソシアネート組成物とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを含む鉱滓綿用バインダーを提供する。
本発明にしたがってバインダーを施して硬化させると、環境中に過剰な毒性物質が放出されない。さらに、本発明のバインダーは復元性に優れている。
【0006】
アルカリ金属ケイ酸塩は、安価な希釈剤として、およびバインダーそのものとして機能する。アルカリ金属ケイ酸塩はさらに、ポリウレア反応の触媒として作用し、繊維に対するポリイソシアネート・水ガラス混合物の接着性を向上させる。アルカリ金属ケイ酸塩はさらに、バインダーの易燃性を低下させ、このことは、最終的な鉱物繊維マットに優れた防火性能をもたらすのに有効である。
【0007】
本発明において使用されるポリイソシアネートは、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)タイプのイソシアネート、およびこれらイソシアネートのプレポリマー(これらに限定されない)を含めた、任意の数のポリイソシアネートを含んでよい。ポリイソシアネートは、その構造中に少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの芳香環を有していて、液体物品であるのが好ましい。2より大きい官能価を有する高分子ポリイソシアネートが好ましい。
【0008】
本発明において使用されるジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)は、2,4’−異性体、2,2’−異性体、4,4’−異性体、これらの混合物、2より大きいイソシアネート官能価を有する、ジフェニルメタンジイソシアネート類(MDI)とそれらのオリゴマーとの混合物[当業界においては、”クルード”MDIまたはポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)として知られている]、あるいは、ウレタン基、イソシアヌレート基、アロファネート基、ビウレット基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基、および/またはイミノオキサジアジンジオン基、ならびにこれら基の混合物を有する、ジフェニルメタンジイソシアネート類の誘導体のいずれかの形態であってよい。
【0009】
他の適切なポリイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ブチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジ(イソシアナートシクロヘキシル)メタン、イソシアナートメチル−1,8−オクタンジイソシアネート、およびテトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)などがある。
【0010】
本発明のための好ましいポリイソシアネートは、イソシアネート反応性水素原子を含有する化合物とポリイソシアネートとを反応させることによって得ることができるセミプレポリマーとプレポリマーである。イソシアネート反応性水素原子を含有する化合物の例としては、アルコール、グリコールもしくは比較的高分子量のポリエーテルポリオールとポリエステルポリオール、メルカプタン、カルボン酸、アミン、尿素、およびアミドなどが挙げられる。特に適切なプレポリマーは、ポリイソシアネートと一価もしくは多価アルコールとの反応生成物である。本発明のプレポリマーは、従来の方法によって[例えば、400〜5000の分子量を有するポリヒドロキシル化合物(特に、モノヒドロキシルポリエーテルまたはポリヒドロキシルポリエーテル、必要に応じて400未満の分子量を有する多価アルコールと混合)と過剰量のポリイソシアネート(例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、アリール脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、または複素環式ポリイソシアネート)とを反応させることによって]製造される。ポリエーテルポリオールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール・エチレングリコールコポリマー、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール、およびアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド)と2〜8の官能価を有するイソシアネート反応性開始剤との開環共重合によって得られるポリエーテルポリオールなどが挙げられる。多価アルコールと多塩基酸とを反応させることによって得られるポリエステルジオールも例として挙げることができる。多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、および2−メチル−1,8−オクタンジオールなどを挙げることができる。多塩基酸の例としては、フタル酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、およびセバシン酸などを挙げることができる。
【0011】
本発明の特に好ましい実施態様においては、プレポリマーは、2〜2.9(好ましくは2.1〜2.7)の平均官能価、6000mPasの最大粘度、および6〜31.5重量%のイソシアネート含量を有するポリイソシアネート成分として使用される。
【0012】
少量の樹脂を大きな表面積上に均一に分散させなければならないので、樹脂を水(水はさらに、新たに紡糸した繊維を冷却するのに役立つ)中に希釈するのが好ましい。したがって、ポリイソシアネートを変性して乳化可能にするのが好ましい。ポリイソシアネートの微細で均一な分散が、水中にて機械的手段によってなされるならば、乳化不能なポリイソシアネートも使用することができる。このような乳化可能なポリイソシアネートの例が、EP18061、EP516361、GB1523601、GB1444933、およびGB2018796(これら全ての特許を参照により本明細書に含める)の特許公告公報中に記載されている。このような乳化可能なポリイソシアネートは、ハンツマン社からスプラセク(Suprasec)1042、スプラセク2405、スプラセク2408、およびスプラセク2419の商品名で市販されている(スプラセクは、ハンツマンLLCの商標である)。
【0013】
本発明において使用すべき好ましいポリイソシアネートは、ウレトンイミン変性MDIやMDIプレポリマー等のMDI誘導体(特に乳化可能なMDI)を含めてMDIをベースとしている。これらのポリイソシアネートは一般に、5〜33.6重量%(好ましくは10〜31.5重量%)のNCO含量、および50〜5000mPas(好ましくは150〜2000mPas)の粘度を有する。
【0014】
市販されているアルカリ金属ケイ酸塩水溶液(一般には「水ガラス」として知られている)が、本発明のバインダー組成物において満足できる結果をもたらすことが見出されている。このようなケイ酸塩はMO・SiO(式中、Mはアルカリ金属の原子である)として表わすことができ、MO:SiOの比が種々異なる。
【0015】
ケイ酸ナトリウムは極めて満足できる結果をもたらし、他のアルカリ金属ケイ酸塩(例えば、ケイ酸カリウムやケイ酸リチウム)も使用することができるが、これらのアルカリ金属ケイ酸塩は、経済的な理由および性能上の理由からあまり好ましいとは言えない。ケイ酸ナトリウムとケイ酸カリウムの混合物も使用することができ、この場合、NaO/KO比は99.5:0.5〜25:75であるのが好ましい。MO対SiOのモル比は重要なことではなく、通常の範囲内で変動してよく、4〜0.2である。SiO:MOの好ましいモル比は1.6〜3.5であり、最も好ましいモル比は2〜3である。好ましいケイ酸ナトリウムを使用する場合、SiO:NaOの重量比は、例えば1.6:1から3.3:1まで変わってよい。しかしながら、前記比が2:1〜3.3:1の範囲内であるケイ酸塩を使用するのが好ましいことが見出されている。
【0016】
アルカリ金属ケイ酸塩は、繊維上に水溶液として噴霧するのが好ましい。したがって水溶液は、固体アルカリ金属ケイ酸塩から調製することもできるし、あるいは市販のアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を希釈することによって調製することもできる。後者のアルカリ金属ケイ酸塩水溶液は、約28〜約55重量%の固形分を有するか、あるいは3000mPas未満の粘度を有することが好ましく、これは、一般には、取り扱いを容易にするために求められる。最終的な溶液の濃度は、繊維の充分な湿潤と冷却に対して必要とされる量に応じて調整することができる。この濃度は、一般には固形分5〜15重量%である。
【0017】
適切な市販水ガラスの例としては、INEOSシリケート社から市販のクリスタル(Crystal)0072、クリスタル0079、クリスタル0100、およびクリスタル0100S(これらは全てNaをベースとする)、ならびにINEOS社から市販のメッツォ(Metso)400(Kをベースとする)が挙げられる。
【0018】
アルカリ金属ケイ酸塩とポリイソシアネートの相対的な割合は、バインダーが、経済的に採算が合いつつ適切な性能もたらすように調整しなければならない。一般には、ポリイソシアネートとアルカリ金属ケイ酸塩との重量比は95:5〜20:80であり、最も好ましくは85:15〜50:50である。ポリイソシアネートと水ガラスとの重量比に関して言えば、80:20〜20:80に対応し、好ましくは70:30〜50:50に対応する。後者の比(特に、約2:1の比)が特に有利である、ということが見出された。
【0019】
ポリオールやアミン等のイソシアネート反応性化学種を本発明のバインダー組成物に加えることができる。これらの化合物は、エマルジョンや溶液の形でアルカリ金属ケイ酸塩と一緒に加えることもできるし、別々に加えることもできるし、あるいは繊維上にバインダーを噴霧する直前に混合することもできる。
【0020】
反応混合物の活性は、イソシアネート−ケイ酸塩の比を変えることによって、および触媒を使用することによって調整することができる。適切な触媒の例としては、それ自体が公知の物質であって例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、2−メチルイミダゾール、ピリミジン、ジメチルアニリン、およびトリエチレンジアミン等の第三アミンがある。イソシアネート反応性水素原子を含有する第三アミン例としては、トリエタノールアミンやN,N−ジメチルエタノールアミンがある。他の適切な触媒は、炭素−ケイ素結合を有するシラアミン、窒素含有塩基(例えば水酸化テトラアルキルアンモニウム)、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属フェノラート、およびアルカリ金属アルコラートである。本発明によれば、有機金属化合物(特に有機スズ化合物)も触媒として使用することができる。触媒は一般に、バインダー配合物の総重量を基準として0.001〜10重量%の量にて使用される。
【0021】
反応混合物の活性を調節するための他の方法は、アルカリ金属ケイ酸塩を硬化させることができる成分を使用することによる方法である。これらの化合物はさらに、二次的触媒または促進剤としても役立つことがある。硬化剤は、有機物質であっても、あるいは無機物質であってもよい。無機硬化剤としては、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、重炭酸塩、二酸化炭素、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、リン酸塩、マイクロファインセメント(microfine cements)、ポルトランドセメント、鉱酸、炭酸カルシウム、ポゾラン、およびアルミン酸塩などがあるが、これらに限定されない。pHを変化させ、二価もしくは多価の金属カチオンの供給源となる成分も、硬化剤として機能する。有機硬化剤とケイ酸塩とが反応し、pHの変化によってシリカゲルが形成される。有機硬化剤としては、酢酸エチル、二塩基性エステル、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、有機リン酸塩、およびアルキレンカーボネートなどがあるが、これらに限定されない。
【0022】
標準的な結合用添加剤を加えることでバインダーの性能が向上する。このような添加剤の例としては、ガラスに対する接着性を向上させるためのシラン、熱劣化や紫外線劣化を防止するための安定剤、および表面活性化合物などがある。フィラー(例えばクレイ、ケイ酸塩、硫酸マグネシウム)および顔料(例えば酸化チタン)も加えることができ、さらにシラン、フッ素化合物、オイル、無機質、およびシリコーン油(反応性であっても、非反応性であっても)等の疎水性付与剤(hydrophobising agents)も加えることができる。繊維に対するバインダーの接着性を向上させるのにシランを使用する必要はないけれども、ポリイソシアネートとアルカリ金属ケイ酸塩溶液との混和性を向上させるためにシランを添加剤として使用するが有利である、ということが見出された。アミノ含有シランを使用するのが好ましく、アルカリ金属ケイ酸塩に対して溶解性であるアミノシランを使用するのが最も好ましい。
【0023】
本発明のバインダー組成物はさらに、他のバインダー組成物(例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、澱粉、変性澱粉、多糖類、フルフラール、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース、およびカルボキシメチルセルロース)と組み合わせて施すことができる。
【0024】
本発明のバインダー組成物は、ガラスメルト(glass−melt)やストーンメルト(stone−melt)を紡糸した直後に、繊維上に噴霧するのが好ましい。繊維上にバインダーを分散させる代表的な方法は、紡糸繊維の束を取り囲むように配置された噴霧ノズルを使用して、1つ以上のリングを通すという方法である。バインダーシステムの2つの成分は、混ざり合うと反応するので、ゲル化反応や沈殿反応(precipitating reaction)を防止するために、2つの成分は、噴霧ノズルにて混合する、あるいは噴霧ノズルの直前にて混合しなければならない。ポリイソシアネートの水中エマルジョンは、2つの成分を混合する直前に調製することができる。他のイソシアネート非反応性添加剤は、この段階にてこのエマルジョン中に混合することができる。ポリイソシアネートエマルジョンの濃度と、アルカリ金属ケイ酸塩溶液の濃度は、噴霧ノズルの直前にて2つの成分を混合したときに、効率的なミキシングが得られるように選定することができる。追加する水の使用量は、水の蒸発によって繊維が所望の温度に冷却されるように調節することができる。
【0025】
ポリイソシアネートと水ガラスとの混合物から得られるエマルジョンは粘度が高いので、バインダー組成物の2つの成分(ポリイソシアネートとアルカリ金属ケイ酸塩水溶液)を別々に繊維上に施す(好ましくは別個の噴霧ノズルを使用して)のが好ましい。好ましい順序は、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液が先で、次いでポリイソシアネートであり、これによってより高い強度を有する鉱滓綿物品が得られる。噴霧したときに、繊維上へのポリイソシアネートの分散を最適化するために、ポリイソシアネートを水中に乳化するのが好ましい。他のイソシアネート非反応性添加剤をこのエマルジョン中に混合することができる。さらに、追加する水の少量は、水の蒸発によって繊維が所望の温度に冷却されるように調節することができる。
【0026】
鉱滓綿の製造において一般的に使用される他の添加剤(例えば、ダスティング抑制剤、着色剤、着臭剤、およびフィラー等)を、希釈されたバインダー流れの1つ以上に、別々に加えることもできるし、あるいは混合することによって加えることもできる。
【0027】
しかしながら、断熱材の製造の引き続いた工程において、バインダーエマルジョンを鉱滓綿に施す(例えば、コンベヤー上の一次ウェブ上に、あるいはより後の段階での一次ウェブ上に噴霧することによって)ことも可能である。さらに、このような別々の段階およびより後の段階において追加のバインダーを施すことも可能であり、これにより改良された耐久性および/または強度を有する材料が得られる。さらに可能なことは、乾燥した低温の繊維上にバインダーを分散させること(例えば、噴霧によって)である。
【0028】
バインダーを硬化させるべくマットを通して熱風が吹き込まれる硬化工程時に、鉱滓綿繊維内にて従来技術のバインダーが追い出されることがあり、この結果、バインダーの分配が不均一となり、鉱物繊維ブロックの上部よりも、その下部(すなわち、熱風が物品中に吹き込まれるブロックの側部)のほうが、バインダーが特異的に少なくなる。さらに、硬化工程時において、従来技術の樹脂が多量に失われることがあり、このため望ましくない程度に高い放出と相当量のバインダー損失を引き起こす。しかしながら、本発明のバインダーは自己硬化性であって、高いオーブン温度を必要としない。本発明の1つの実施態様によれば、鉱滓綿スラブを、追加の加熱を必要とせずに、要求される厚さと形状にプレスする。本発明によるさらなる利点は、スラブ中の繊維の分散がより均一であるだけでなく、バインダーの分散もより均一である。さらに、鉱滓綿スラブをオーブンに通して、残留している水を蒸発除去し、バインダーの硬化を促進させるのが有利である。
【0029】
繊維組成物用の原材料は、従来の方法で(例えば、ガス加熱炉中にて、あるいは電気炉中にて、あるいは高炉もしくは溶銑炉中にて)溶融体に転化させるこができる。この溶融体を、従来の方法で[例えば、スピニングカップ法(spinning cup process)によって、あるいはカスケードローター法(cascade rotor process)によって]繊維に転化させることができる。人造ガラス質繊維(MMVF)は、石材、スラグ、もしくはガラスなどのガラス質溶融体、または他の溶融体から製造される。この溶融体は、所望の分析組成を有する鉱物組成物を炉中にて溶融することによって作製される。この組成物は、一般には、所望の分析組成が得られるように岩石もしくは鉱物をブレンドすることによって作製される。
【0030】
繊維は、任意の適切な繊維径と繊維長を有してよい。一般には、平均繊維径は10μm未満(例えば5μm)である。鉱滓綿物品は通常、1〜20重量%(好ましくは1〜15重量%、最も好ましくは2〜10重量%)の乾燥バインダーを含有する。バインダーは通常、溶融体の繊維化の直後に繊維に加えられる。一般には、鉱滓綿物品は、スラブ、シート、または他の造形品の形態をとっている。
【0031】
本発明の物品は、従来の目的のMMV繊維(例えば、断熱材、耐火・防火材、または防音・騒音抑制材として、ならびに園芸用の成長培地として役立つスラブ、シート、パイプ、または他の造形品)のいずれに対しても配合することができる。
【0032】
本発明のバインダーは、繊維の表面、または鉱滓綿物品の表面の1つ以上を被覆するのに使用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の種々の態様を説明するが、本発明がこれらの実施例によって限定されることはない。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
63.6gの水、1gのケイ酸ナトリウム溶液(モル比2.5、固形分42.1%)(クリスタル0100Sとして市販)、および1gのスプラセク(SUPRASEC)2408(約15重量%のNCO値を有するMDIから誘導されるプレポリマー)からなるエマルジョンを20gのガラス繊維に含浸した。湿潤した繊維をアルミニウム製モールド中に配置し、これを220℃のオーブン中に20分置いた。次いで繊維をモールドから取り出し、オーブン中にてさらに15分乾燥した。圧縮後に繊維マットが得られた。回復試験は、2つのアルミニウムプレート間の5cm厚さのサンプルを、相対湿度80%にて50℃で16時間にわたって2.5cmの厚さに圧縮することによって行った。30分の回復後に厚さを測定した。サンプルは、その初期厚さのわずか1.3%だけを失った。
【0034】
(実施例2)
水ガラスに対するポリイソシアネート組成物の付加順序に関して驚くべき利点が見出された。水ガラスを別個の成分として、先ずガラスビーズに加えてから、乳化ポリイソシアネートを加えると、より優れた強度が得られる、ということが見出された。このことが、下記の表において示されている。
【0035】
鉱滓綿物品に対するバインダー強度を評価するための一般的な試験を行った。0.1〜0.2mmの直径を有するガラスビーズと3%樹脂とを混合した。バインダーを、樹脂の30%溶液として加えた。実際には、約582gのガラスビーズと約60gのバインダー溶液とを混合した。これらは、ビーズへの液体の良好な拡散が達成されるまで、キッチンブレンダーを使用して約1分間混合した。次いで湿潤ビーズを直方体形のモールド中に、スパチュラを使用して充填した。サンプルを200℃で7分キュアーした。冷却した後、サンプルを破断するための強度を、3点曲げ試験によって測定した。DIN EN63基準を使用した。最後に、湿潤老化(通常は、50℃および80%相対湿度にて16時間)後の強度も試験することができる。
【0036】
【表1】

【0037】
(実施例3)
接着性促進剤であるアミノシランの付加順序に関して驚くべき利点が見出された。MDIを乳化する前に水中にシラン加えると、より良好な強度が、そして特に湿潤老化後のより良好な強度保持が得られる、ということが見出された。このことが下記の表に示されている。
【0038】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリイソシアネートとアルカリ金属ケイ酸塩を含む、鉱物繊維を結合するためのバインダー。
【請求項2】
アルカリ金属ケイ酸塩が、好ましくは1.6:1〜3.5:1のSiO:NaOモル比を有するケイ酸ナトリウムである、請求項1に記載のバインダー。
【請求項3】
アルカリ金属ケイ酸塩が水溶液の形態で使用される、請求項1または2に記載のバインダー。
【請求項4】
水溶液の固形分が5〜15重量%である、請求項3に記載のバインダー。
【請求項5】
ポリイソシアネートが水溶液の形態で使用される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のバインダー。
【請求項6】
ポリイソシアネートが液状芳香族ポリイソシアネートである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバインダー。
【請求項7】
ポリイソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその誘導体である、請求項6に記載のバインダー。
【請求項8】
ポリイソシアネートが、2〜2.9の、好ましくは2.1〜2.7の平均官能価、6000mPasの最大粘度、および6〜31.5重量%のイソシアネート含量を有するプレポリマーである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のバインダー。
【請求項9】
ポリイソシアネートが乳化可能である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のバインダー。
【請求項10】
ポリイソシアネートとアルカリ金属ケイ酸塩との重量比が95:5〜20:80、好ましくは85:15〜50:50である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のバインダー。
【請求項11】
シラン、好ましくはアミノ含有シランをさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のバインダー。
【請求項12】
アルカリ金属ケイ酸塩と有機ポリイソシアネートを含む請求項1〜11のいずれか一項に記載のバインダーを製造するための反応混合物。
【請求項13】
ポリイソシアネートの水性エマルジョンを作製する工程と、
それに対するアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を作製する工程と、
を含む、請求項12に記載の反応混合物の製造方法。
【請求項14】
最初にシランの水溶液を作製し、引き続きこの水溶液にポリイソシアネートを加える、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
鉱物繊維を結合するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載のバインダーの使用。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のバインダーを鉱物繊維に施す工程と、
前記バインダーを硬化させる工程と、
を含む、結合した鉱物繊維物品を供給する方法。
【請求項17】
ポリイソシアネートとアルカリ金属ケイ酸塩を別々に鉱物繊維に施す、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
最初にアルカリ金属ケイ酸塩を施し、次いでポリイソシアネートを施す、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
バインダーを硬化させるのに追加の加熱を行わない、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法によって得られる鉱物繊維物品。

【公表番号】特表2009−513467(P2009−513467A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537029(P2008−537029)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066688
【国際公開番号】WO2007/048667
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(500030150)ハンツマン・インターナショナル・エルエルシー (56)
【Fターム(参考)】