説明

銀行券鑑査装置及び鑑査方法

【課題】規定した損券の排出量を確保して、オペレータによる損券レベルの変更操作を低減することのできる銀行券鑑査装置及び鑑査方法を提供する。
【解決手段】一括供給された銀行券を1枚ずつ機内に供給し、供給される銀行券の汚損状態を検知し、検知結果に対応して、銀行券の再流通可否を判断し、検知結果に基づいて、実際の損券率に関する情報を提供し、流通可否を判断する際の基準である損券レベルと、目標の損券率とを指定し、目標損券率と実際の損券率とを比較して、許容された範囲において損券レベルを補正して実際の損券率が目標損券率になるように制御する銀行券鑑査方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定した損券の排出量を確保して、オペレータによる損券レベルの変更を低減することのできる銀行券鑑査装置及び鑑査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行券鑑査装置は、銀行券の種類、汚れ、真偽などを鑑査し、鑑査結果に基づき複数の集積部にそれぞれの銀行券を搬送して、分類、施封、裁断等を行う(例えば、特許文献1参照)。
銀行券鑑査装置は、銀行券の券面の汚れを検知して再利用可能な銀行券(正券)と破棄する銀行券(損券)を峻別する機能を持つ。また、正券と損券の境目である「汚れの度合い」を変更する機能、即ち、損券レベルを調整する機能を持っている。オペレータはこの損券レベルを自由に変更することができる。
【特許文献1】特開2003−109068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、鑑査業務では、上述の銀行券鑑査装置の機能を用いて、基準以上に汚れた銀行券を破棄し、逆に基準以上に綺麗な銀行券を再流通させるという命題がある。一方、発行高管理の観点から、発行する銀行券と廃棄する銀行券を管理して所望の量の銀行券を再流通させる、逆に所望の量の銀行券を廃棄する、という命題も存在する。
【0004】
これらの2つの命題は背反する部分を有している。従来は、オペレータが各自の判断により損券レベルを変更することで両命題の達成を図っていたが、場合により適切な調整が行われないことが問題となっていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、規定した損券の排出量を確保して、オペレータによる損券レベルの変更操作を低減することのできる銀行券鑑査装置及び鑑査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係る銀行券鑑査装置は、一括供給された銀行券を1枚ずつ機内に供給する供給部と、供給される銀行券の汚損状態を検知する検知部と、検知結果に対応して、前記銀行券の再流通可否を判断する判断部と、検知結果に基づいて、実際の損券率に関する情報を提供する情報提供部と、前記判断部が判断する際の基準である損券レベルと、目標の損券率とを指定する操作部と、前記目標損券率と実際の損券率とを比較して、許容された範囲において前記損券レベルを補正して実際の損券率が目標損券率になるように制御する制御部とを備えた。
【0007】
また本発明に係る銀行券鑑査方法は、一括供給された銀行券を1枚ずつ機内に供給し、供給される銀行券の汚損状態を検知し、検知結果に対応して、前記銀行券の再流通可否を判断し、検知結果に基づいて、実際の損券率に関する情報を提供し、流通可否を判断する際の基準である損券レベルと、目標の損券率とを指定し、前記目標損券率と実際の損券率とを比較して、許容された範囲において前記損券レベルを補正して実際の損券率が目標損券率になるように制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の銀行券鑑査装置及び方法によれば、規定した損券の排出量を確保して、オペレータによる損券レベルの変更操作を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る銀行券鑑査装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態である銀行券鑑査装置1の全体的な構成を示す外観図である。銀行券鑑査装置1は、銀行券供給部10、排除集積部19、表示部25、操作部27及び扉29を備えている。
【0011】
オペレータは、扉29を開いて、外部から大量に持ち込まれた銀行券を銀行券供給部10にセットする。そして鑑査の条件を操作部27から入力した後に鑑査を開始させる。
銀行券鑑査装置1は、銀行券を鑑査して指定された条件に従って分類し所定の集積部に搬送する。集積部は、搬送された銀行券を集積すると共に、例えば100枚単位に施封する。排除集積部19は、搬送された排除対象の銀行券を集積する。
【0012】
図2は、銀行券鑑査装置1の操作部27の外観図である。
同図において、銀行券供給部10には扉29が設けられ、この扉29は取手30によって手動で開閉することができる。
操作部27には、数字などを入力するテンキー33、銀行券鑑査装置1の操作を指示する各種操作ボタン34〜38、および銀行券の処理枚数を表示するカウンタ39が設けられ、さらに図示しないキーボードやマウスなどの接続が可能とされている。
【0013】
また、銀行券供給部10、表示部25、及び操作部27はオペレータがアクセスしやすいように一箇所に集めて配置されている。オペレータはその場で排除集積部19から排除券を取り出してその内容を確認することができる。さらに、排除集積部19の上方には表示部25が配置されており、その表示内容と排除券との照合確認などを効率良く行うことができる。
【0014】
図3は、銀行券鑑査装置1の内部構成を示す図である。
銀行券鑑査装置1の内部には、取り出し部11、搬送路13、検知部23、集積部15、施封部17、コンベア18、把集積部20、裁断部21及びAudit集積部22が設けられている。
【0015】
取り出し部11は、銀行券供給部10から銀行券を1枚ずつ取出して、搬送路13に送り込む。搬送路13は、送り込まれた銀行券を検知部23へ供給する。検知部23は、搬送路13によって搬送されてくる銀行券に対して必要な検知を行う。また搬送路13は、検知部23の検知結果に基づいて銀行券を集積部15、施封部17、排除集積部19または裁断部21の何れかに搬送する。
【0016】
集積部15は、搬送路13によって搬送されてきた銀行券を集積し、施封部17は集積された銀行券を100枚単位で帯により施封する。集積部15と施封部17は、一つの集積施封ユニットとして構成され、2つの集積施封ユニットが交互に集積・施封動作を実行する。すなわち、一方の集積施封ユニットは100枚の銀行券が集積されると施封動作に移り、その間搬送されてきた銀行券は他方の集積施封ユニットに集積されるようになっている。施封された銀行券は、コンベア18によって把集積部20に搬送されて集積される。
【0017】
排除集積部19は、搬送路13によって搬送されてくる排除券(後で説明する)を集積する。裁断部21は、搬送路13によって搬送されてくる損券(後で説明する)を細片に裁断する。なお、Audit集積部22は、裁断部21に送られる銀行券の内、所定の割合の銀行券を調査のためにサンプリングして集積する。
【0018】
次に、検知結果による銀行券の分類について説明する。
検知部23によって、銀行券の券種(額面)、真偽、正損等の判別が行われ、銀行券は「正券」、「損券」、「偽券」、「検知不能券」に分類・判別される。
【0019】
「正券」とは、検知の結果正規でかつ有効な券、即ち、再利用可能であると判定された券である。「損券」とは、正規の券であるとは認められたが無効な券、即ち、汚損などにより再利用不可能であると判定された券である。「偽券」とは、正規のものと認められなかった券である。「検知不能券」とは、例えば重ね取り、スキュー(券の斜行)、ショートピッチ(搬送経路中において前の券との間隔が短すぎて後段の処理が困難となるもの)等の理由により検知が正しく行えなかった券である。「偽券」と「検知不能券」を併せて「排除券」と呼ぶ。
【0020】
図4は、銀行券鑑査装置1の制御系統をブロック化して示す図である。
銀行券鑑査装置1の制御系統は、メインコントローラ61を中心として構成されている。メインコントローラ61には、入出力装置としてデータ蓄積装置60、帳票出力プリンタ62、表示部25、操作部27、及びキーボード・マウス63が接続されている。
【0021】
また、メインコントローラ61には、USB(Universal Serial Bus)ハブ64などのインターフェースを通じて銀行券鑑査装置1内の各部を制御するコントローラであるトランスポートコントローラ65、バンダーコントローラ66、検知コントローラ67が接続されている。
【0022】
トランスポートコントローラ65は、メインコントローラ61による管理のもと、銀行券供給部10、取り出し部11、搬送路13、コンベア18、排除集積部19、把集積部20、裁断部21、Audit集積部22、及びジャーナルプリンタ68などを制御する。
なお、ジャーナルプリンタ68は、データを随時出力するためのプリンタであり、必要に応じて接続される。
【0023】
バンダーコントローラ66は、メインコントローラ61による管理のもと、複数の集積部15および施封部17を制御する。
検知コントローラ67は、メインコントローラ61による管理のもと、検知部23の制御および検知部23で得られた検知データの処理を行う。
さらに、メインコントローラ61はLANを通じて不図示のネットワークサーバ41と接続される。
【0024】
検知部23には、各種の検出機能を備えた装置が設けられ、検知コントローラ67を介してメインコントローラ61との間で検知した情報の授受を行うことで所望の鑑査が実行される。検知部23には鑑査機能として、銀行券の汚損状態を検知する機能、銀行券の券種を判定する機能、銀行券の真偽を判定する機能などが備えられている。
【0025】
図5、図6は、損券レベルを操作する手順を示すフロー図である。メインコントローラ61が銀行券鑑査装置1内の各部との間で情報の授受を行ってこの手順を実行する。
【0026】
ステップS01において、オペレータは、操作部27から初期条件として、希望損券率kr、初期損券レベルsl、許容レベル上限lmax、許容レベル下限lminを設定する。
損券率は、銀行券鑑査装置1に投入された銀行券枚数の内、損券となった枚数の割合(%)である。損券レベルは、正券と損券を判別する基準レベルである。損券レベルが高いと損券と判断されて裁断される銀行券の枚数が増加する。許容レベルは、変更を認める場合の損券レベルの上限値と下限値を表している。
【0027】
オペレータが上述の初期条件を設定すると、ステップS02において、メインコントローラ61は、処理のための変数パラメータに初期値を設定する。
損券レベルlには、設定された初期損券レベルslを代入する。合計投入枚数gtには0を代入する。合計損券枚数gsには0を代入する。
【0028】
続いて、オペレータが銀行券を銀行券供給部10にセットして銀行券鑑査装置1を動作させると、バッチ単位毎にステップS03からステップS16の処理を繰り返して実行する。
ここでバッチ単位とは、オペレータが1回の鑑査で照合する銀行券の枚数のことで、不図示の設定画面から設定する。例えば、1000枚と設定すると、銀行券を1000枚鑑査したときにメインコントローラ61に対して鑑査結果が入力される。バッチ単位の鑑査結果を受信したメインコントローラ61は、ステップS03を実行する。
【0029】
ステップS03において、メインコントローラ61は、投入枚数tと損券枚数sを受け取る。ステップS04において、初期設定時からの累計投入枚数gtと累計損券枚数gsに投入枚数tと損券枚数sとを加算する。ステップS05において、式(1)の損券率rを計算する。
損券率r=累計損券枚数gs/累計投入枚数gt*100 ・・・式(1)
ステップS10において、損券率rと希望損券率krとが等しいかどうかを比較する。ここで、損券率rと希望損券率krとの差が所定の範囲内にあれば等しいとしても良い。
ステップS10でYesの場合、即ち、損券率rと希望損券率krとが等しい場合は、損券レベルを変更する必要がないため、ステップS16において、次のバッチ処理の入力を待機する。
ステップS10でNOの場合、即ち、損券率rと希望損券率krとが等しくない場合は、ステップS11において、損券率rが希望損券率krより小さいかどうかを調べる。
【0030】
ステップS11でYesの場合、即ち損券率rが希望損券率krより小さい場合は、以降の鑑査において、損券の発生枚数を増加させる。そこで、ステップS15において、損券レベルを1単位少なく設定する。設定された損券レベルは、検知コントローラ67を介して検知部23の汚損判定レベルに反映される。
しかし、ステップS14でYesの場合、即ち、既に損券レベルが下限値以下になっている場合は、これ以上損券レベルを下げることは認められないので、そのままとする。
そして、ステップS16において、次のバッチ処理の入力を待機する。
【0031】
ステップS11でNOの場合、即ち損券率rが希望損券率krより大きい場合は、以降の鑑査において、損券の発生枚数を減少させる。そこで、ステップS13において、損券レベルを1単位大きく設定する。設定された損券レベルは、検知コントローラ67を介して検知部23の汚損判定レベルに反映される。
しかし、ステップS12でYesの場合、即ち、既に損券レベルが上限値以上になっている場合は、これ以上損券レベルを上げることは認められないので、そのままとする。
そして、ステップS16において、次のバッチ処理の入力を待機する。
【0032】
ステップS16においてYesの場合、即ち、次のバッチ処理が入力されたときは、ステップS03から上述の処理を繰り返して実行する。
ステップS16においてNOの場合、即ち、鑑査の終了がオペレータによって指示されたときは、この損券レベル制御処理を終了する。
【0033】
この実施形態によれば、鑑査の処理単位であるバッチ単位で損券率を管理しその結果に応じて所望の損券率になる様に制御が行われる。従って、オペレータの鑑査作業に併せて損券率をコントロールすることができ、結果もバッチ処理の都度、例えば表示部25またはプリンタ62の出力から確認することができる。従って、オペレータが損券レベルを操作する頻度を低減することができる。
【0034】
また上述の手順は、券種毎に実行することができる。従って、券種毎に損券率を設定し、券種毎に損券率をコントロールすることができる。
【0035】
なお、上述の実施形態では、銀行券を処理する装置について説明したが、本発明はこの例に限定されず、その他、種々の紙葉類の処理装置に適用できることは言うまでもない。
【0036】
なお、上述の実施の形態で説明した各機能は、ハードウエアを用いて構成しても良く、また、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現しても良い。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0037】
更に、各機能は図示しない記録媒体に格納したプログラムをコンピュータに読み込ませることで実現させることもできる。ここで本実施の形態における記録媒体は、プログラムを記録でき、かつコンピュータが読み取り可能な記録媒体であれば、その記録形式は何れの形態であってもよい。
【0038】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態である銀行券鑑査装置の全体的な構成を示す外観図。
【図2】銀行券鑑査装置の操作部の外観図。
【図3】銀行券鑑査装置の内部構成を示す図。
【図4】銀行券鑑査装置の制御系統をブロック化して示す図。
【図5】損券レベルを操作する手順を示すフロー図。
【図6】損券レベルを操作する手順を示すフロー図。
【符号の説明】
【0040】
10…銀行券供給部、11…取出部、13…搬送路、15…集積部、17…施封部、19…排除集積部、21…裁断部、22…Audit集積部、23…検知部、25…表示部、27…操作部、33…テンキー,34−38…各種操作ボタン、60…データ蓄積装置、61…メインコントローラ、65…トランスポートコントローラ、66…バンダーコントローラ、67…検知コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一括供給された銀行券を1枚ずつ機内に供給する供給部と、
供給される銀行券の汚損状態を検知する検知部と、
検知結果に対応して、前記銀行券の再流通可否を判断する判断部と、
検知結果に基づいて、実際の損券率に関する情報を提供する情報提供部と、
前記判断部が判断する際の基準である損券レベルと、目標の損券率とを指定する操作部と、
前記目標損券率と実際の損券率とを比較して、許容された範囲において前記損券レベルを補正して実際の損券率が目標損券率になるように制御する制御部と
を備えたことを特徴とする銀行券鑑査装置。
【請求項2】
前記情報提供部は、バッチ単位に前記実際の損券率に関する情報を提供することを特徴とする請求項1に記載の銀行券鑑査装置。
【請求項3】
前記操作部は、前記損券レベルと前記目標の損券率とを銀行券の券種ごとに指定するようになされ、
前記制御部は、券種毎に前記実際の損券率を制御すること
を特徴とする請求項1または2に記載の銀行券鑑査装置。
【請求項4】
前記実際の損券率は、初期状態からの前記情報提供部が提供する情報を累計して算出されることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の銀行券鑑査装置。
【請求項5】
一括供給された銀行券を1枚ずつ機内に供給し、
供給される銀行券の汚損状態を検知し、
検知結果に対応して、前記銀行券の再流通可否を判断し、
検知結果に基づいて、実際の損券率に関する情報を提供し、
流通可否を判断する際の基準である損券レベルと、目標の損券率とを指定し、
前記目標損券率と実際の損券率とを比較して、許容された範囲において前記損券レベルを補正して実際の損券率が目標損券率になるように制御すること
を特徴とする銀行券鑑査方法。
【請求項6】
前記実際の損券率に関する情報は、バッチ単位に提供されることを特徴とする請求項5に記載の銀行券鑑査方法。
【請求項7】
前記損券レベルと前記目標の損券率とは銀行券の券種ごとに指定され、
前記券種毎に前記実際の損券率を制御すること
を特徴とする請求項5または6に記載の銀行券鑑査方法。
【請求項8】
前記実際の損券率は、初期状態からの前記情報提供部が提供する情報を累計して算出されることを特徴とする請求項5乃至7の内いずれか1項に記載の銀行券鑑査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−250530(P2008−250530A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89459(P2007−89459)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】