説明

鋳型の基準位置の測定方法およびその装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋳型の基準位置の測定方法およびその装置に係り、より詳しくは鋳枠あるいは鋳型の表面の所定位置に刻設された目印であって横断面がV字型状を成すとともに中心線が相互に直角を成して突合わさって全体として平面図で見て十字状を成す4個の溝が形成するものの中心部である基準位置を測定する方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】鋳物を鋳造する手段の一つとして、砂型鋳型を内蔵した上・下鋳枠を型合わせして所定の製品キャビティを形成し、そのキャビィ内に注湯するようにしたものがある。これら上・下鋳枠の相互の位置決めは、上・下鋳枠のいずれか一方に取り付けられたブッシュと、他方の鋳枠に取り付けられた合わせピンとの嵌合により行われている。そして、砂型鋳型の造型における鋳枠の模型板に対する位置決めは、模型板あるいは鋳型造型機に突設された基準ピンを前記ブッシュに嵌入させる方法によって行われている。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】しかし、上記のような従来の上・下鋳枠の合わせ方法においては、前記ブッシュが摩耗したり合わせピンが変形した場合には、形成される製品キャビティにおける上・下砂型鋳型間にずれが生じて不良鋳物を誘発するなどの問題があった。そのため、鋳枠あるいは鋳型に目印を設け、この目印の中心部を基準位置として測定して上鋳枠または下鋳枠を移動させ、上・下鋳枠を型合わせする方法も提案されているが、その目印の基準位置を正確に測定する方法がまだなかった。本発明は上記の事情に鑑みて為なされたもので、その目的は、鋳枠あるいは鋳型の表面の所定位置に刻設された目印であって横断面がV字型状を成すとともに中心線が相互に直角を成して突合わさって全体として平面図で見て十字状を成す4個の溝が形成するものの中心部である基準位置を容易かつ確実に測定することができる方法およびその装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明における鋳型の基準位置の測定方法は、鋳枠あるいは鋳型の表面の所定位置に刻設された目印であって横断面がV字型状を成すとともに中心線が相互に直角を成して突合わさって全体として平面図で見て十字状を成す4個の溝が形成するものの中心部である基準位置を測定する方法であって、前記目印における1個のV字型溝の上方位置を非接触反射型光学変位センサを横断させて非接触反射型光学変位センサと前記V字型溝の表面との距離を測定する工程と、こうして得られた測定値のうち前記V字型溝の一方の斜面における任意の2つの測定値間に係る関係式を、これら2つの測定値を結ぶ式または最小2乗法等の回帰式により1本の回帰線として導き、同様にして前記V字型溝の他方の斜面における2つの測定値間に係る関係式を最小2乗法等の回帰式により1本の回帰線として導き、これら2本の回帰線の交点から、前記V字型溝の最深部に係る1点の座標を割り出す工程と、同様にして、前記目印における残り3個のV字型溝の最深部に係る3点の座標をそれぞれ割り出す工程と、これら割り出されたV字型溝最深部に係る4点のうち相互に対向する2点を結ぶ2本の線分の交点Oを求める工程と、を有することを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の一実施例の形態について図1〜図4に基づき詳細に説明する。図1に示するように、図示しない鋳型造型機から送り出された鋳枠1付き砂型鋳型2の上方位置には、非接触反射型光学変位センサとしてのレーザビーム測長器14をXYZ座標で表示可能な三次元に移動させる装置が設けてある。そして、前記鋳枠1の上面の左右両側部には、図2に示すように、上・下鋳枠の相互の位置決めのためのブッシュ19が装着してあり、ブッシュ19には目印20が刻設してある。この目印20は、図2に示すように、中心線が相互に直角を成して突合わさって全体として平面図で見て十字状を成す4個の溝で形成されており、この溝は図3および図4に示すように、横断面がV字型状を成している。また、図2に示すように、前記ブッシュ19の中央部に上下に貫通するピン孔が透設してある。
【0006】また、前記鋳枠1の上方には、門型フレーム3の天井部が配設してあり、門型フレーム3の天井部にはX座標用の左右移動手段4が装着してある。左右移動手段4においては、門型フレーム3上に敷設されたレール5上に走行台6が走行可能に装架して配設してあり、走行台6には、門型フレーム3に装着された第1サーボモータ式シリンダ7のピストンロッドの先端が連結してあって、第1サーボモータ式シリンダ7の伸縮作動により、走行台6は門型フレーム3の長手方向へ往復移動するようになっている。
【0007】また、前記左右移動手段4の走行台6上にはY座標用の前後移動手段8が装着してあり、前後移動手段8においては、走行台6の移動方向と直交する方向へ延ばして走行台6に装着したリニアガイド機構9に、走行フレーム10が、走行可能に装着してあり、走行フレーム10には第2サーボモータ式シリンダ11のピストンロッドの先端が連結してあって、第2サーボモータ式シリンダ11の伸縮作動により、走行フレーム10は前記走行台6の走行方向と直交する方向へ往復移動するようになっている。
【0008】また、前記走行フレーム10にはZ座標用の昇降手段12としての第3サーボモータ式シリンダ13が装着してあり、第3サーボモータ式シリンダ13のピストンロッドの下端には前記レーザー測長器14が装着してある。レーザー測長器14にはコントローラ17が電気的に接続してあり、コントローラ17は、前記非接触反射型光学変位センサ14の測定結果に基づき、前記目印20における4個のV字型溝の最深部に係る4点の座標をそれぞれ割り出し、さらにこれら割り出されたV字型溝最深部に係る4点のうち相互に対向する2点を結ぶ2本の線分の交点Oを演算する演算手段としての機能を有している。また、前記第1〜第3サーボモータ式シリンダ7、11、13のサーボモータ7a、11a、13aには制御盤18が電気的に接続してあり、この制御盤18は前記コントローラ17に電気的に接続されている。
【0009】次に、このように構成した装置を用いて、ブッシュ19の目印20の中心部を測定する手順について説明する。まず、第1・第2・第3サーボモータ式シリンダ7、11、13を適宜伸縮作動してレーザー測長器14を砂型鋳型2の目印20の真上位置付近に移動させる。次いで、第3サーボモータ式シリンダ13を適宜伸縮作動してレーザー測長器14を所定の高さにし、続いて、第1サーボモータ式シリンダ7を伸長あるいは収縮作動して、レーザー測長器14を図2においてY座標の値をYaの一定にしてX座標の値を変化させ、Ya値におけるレーザー測長器14とV字型溝の表面との距離を連続的にして時々刻々と測定する。
【0010】この測定結果を図示しない記録器により記録してXZ座標で表示する。そして、図3に示すように、こうして得られた測定値のうち図3における任意の2つの測定値a1、a2間に係る関係式を、これら2つの測定値を結ぶ式または最小2乗法等の回帰式により1本の回帰線L1として導き、同様にして、図3における任意の2つの測定値a3、a4も、図3に示すように、XZ座標で表示し、この2つの測定値a3、a4間に係る関係式を最小2乗法等の回帰式により1本の回帰線L2として導き、これら2本の回帰線L1、L2の交点から、V字型溝の最深部に係るA点の座標(Xa,Ya)を割り出す。
【0011】上述したと同様にして、図2におけるV字型溝の最深部に係るC点の座標(Xc,Yc)を割り出す。また、前記回帰線L1、L2と同様にして、図4におけるL3、L4を導き、これら2本の回帰線L3、L4の交点から、V字型溝の最深部のB、Dの座標(Xb,Yb)、(Xd,Yd)を割り出す。次いで、図2に示すように、線分ACと線分BDとの交点Oを演算すると、この交点Oが求める基準位置となる。
【0012】上記の実施例では目印20はブッシュ19に設けてあるが、前記鋳枠1あるいは前記砂型鋳型2の表面の適宜の位置に設けるようにしてもよい。
【0013】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明は、目印における1個のV字型溝の上方位置を非接触反射型光学変位センサを横断させて非接触反射型光学変位センサと前記V字型溝の表面との距離を測定する工程と、こうして得られた測定値のうち前記V字型溝の一方の斜面における任意の2つの測定値間に係る関係式を、これら2つの測定値を結ぶ式または最小2乗法等の回帰式により1本の回帰線として導き、同様にして前記V字型溝の他方の斜面における2つの測定値間に係る関係式を最小2乗法等の回帰式により1本の回帰線として導き、これら2本の回帰線の交点から、前記V字型溝の最深部に係る1点の座標を割り出す工程と、同様にして、前記目印における残り3個のV字型溝の最深部に係る3点の座標をそれぞれ割り出す工程と、これら割り出されたV字型溝最深部に係る4点のうち相互に対向する2点を結ぶ2本の線分の交点Oを求める工程と、を有するから、鋳枠あるいは鋳型の表面の所定位置に刻設され横断面がV字型状を成すとともに中心線が相互に直角を成して突合わさって全体として平面図で見て十字状を成す4個の溝が形成する目印の中心部である基準位置を容易かつ確実に測定することができるなどの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の概略を示す斜視図である。
【図2】目印の平面図をXY座標を用いてい表した図である。
【図3】図2におけるX−X断面と、この断面の表面とレーザー測長器との間の距離をZX座標を用いて表した図である。
【図4】図2におけるY−Y断面と、この断面の表面とレーザー測長器との間の距離をZY座標を用いて表した図である。
【符号の説明】
4 左右移動手段
8 前後移動手段
12 昇降手段
14 レーザー測長器
17 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋳枠あるいは鋳型の表面の所定位置に刻設された目印であって横断面がV字型状を成すとともに中心線が相互に直角を成して突合わさって全体として平面図で見て十字状を成す4個の溝が形成するものの中心部である基準位置を測定する方法であって、前記目印における1個のV字型溝の上方位置を非接触反射型光学変位センサを横断させて非接触反射型光学変位センサと前記V字型溝の表面との距離を測定する工程と、こうして得られた測定値のうち前記V字型溝の一方の斜面における任意の2つの測定値間に係る関係式を、これら2つの測定値を結ぶ式または最小2乗法等の回帰式により1本の回帰線として導き、同様にして前記V字型溝の他方の斜面における2つの測定値間に係る関係式を最小2乗法等の回帰式により1本の回帰線として導き、これら2本の回帰線の交点から、前記V字型溝の最深部に係る1点の座標を割り出す工程と、同様にして、前記目印における残り3個のV字型溝の最深部に係る3点の座標をそれぞれ割り出す工程と、これら割り出されたV字型溝最深部に係る4点のうち相互に対向する2点を結ぶ2本の線分の交点Oを求める工程と、を有することを特徴とする鋳型の基準位置の測定方法。
【請求項2】 鋳枠あるいは鋳型の表面の所定位置に刻設された目印であって横断面がV字型状を成すとともに中心線が相互に直角を成して突合わさって全体として平面図で見て十字状を成す4個の溝が形成するものの中心部である基準位置を測定する装置であって、鋳枠あるいは鋳型の目印の表面までの距離を測定する非接触反射型光学変位センサ14と、この非接触反射型光学変位センサを昇降させる昇降手段12と、この昇降手段12および前記非接触反射型光学変位センサ14を前後方向へ移動させる前後移動手段8と、この前後移動手段8、前記昇降手段12および前記非接触反射型光学変位センサ14を左右方向へ移動させる左右移動手段4と、前記非接触反射型光学変位センサ14の測定結果に基づき、前記目印における4個のV字型溝の最深部に係る4点の座標をそれぞれ割り出し、さらに割り出されたV字型溝最深部に係る4点のうち相互に対向する2点を結ぶ2本の線分の交点Oを演算する演算手段17と、を備えたことを特徴とする鋳型の基準位置の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3011876号(P3011876)
【登録日】平成11年12月10日(1999.12.10)
【発行日】平成12年2月21日(2000.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−286854
【出願日】平成7年10月6日(1995.10.6)
【公開番号】特開平9−103840
【公開日】平成9年4月22日(1997.4.22)
【審査請求日】平成10年3月19日(1998.3.19)
【出願人】(591209763)中小企業事業団 (2)
【参考文献】
【文献】特開 平7−146117(JP,A)
【文献】特開 平7−146116(JP,A)
【文献】特開 平2−299765(JP,A)
【文献】特開 平7−232239(JP,A)