鋳型の造型方法及び装置
【課題】上方からの背面スクイズだけでは、十分な均一鋳型充填密度を得ることができず、特に模型の上面部分と側面部分とにおいて密度差が生じ易く、鋳型の側壁が厚くなるとともに必要な強度を得られにくい。
【解決手段】鋳物砂が充填される鋳物砂容器と、流動体を内包可能でかつ膨張可能な流動体内包手段と、流動体内包手段に流動体を注入する流動体注入手段とを設け、前記鋳物砂容器内に鋳物砂を充填するとともに前記流動体内包手段を鋳物砂内に配設し、前記流動体注入手段により流動体を流動体内包手段に注入することにより流動体内包手段を膨張させて鋳物砂をスクイズする。
【解決手段】鋳物砂が充填される鋳物砂容器と、流動体を内包可能でかつ膨張可能な流動体内包手段と、流動体内包手段に流動体を注入する流動体注入手段とを設け、前記鋳物砂容器内に鋳物砂を充填するとともに前記流動体内包手段を鋳物砂内に配設し、前記流動体注入手段により流動体を流動体内包手段に注入することにより流動体内包手段を膨張させて鋳物砂をスクイズする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一な充填密度の鋳型を製造する鋳型の造型方法及びその方法を実施するための造型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳枠内に投入された鋳物砂の層の厚さは、模型定盤上の模型の凹凸に応じて変化する。このような鋳物砂を一様に平坦な端面を有するスクイズヘッドでスクイズすると鋳物砂の層の厚い箇所と薄い箇所とで鋳型の硬度のばらつきが大きくなり過ぎる。この対策のためにスクイズヘッドに多数のスクイズフートを装架し、鋳物砂の層が厚くなる鋳枠内周壁部分と層が薄くなる中央部分とに対応するスクイズフートを各々複数に組分けし、組分けしたスクイズフートの駆動速度、加圧力を変更してスクイズを行い、鋳型の硬度を均等にする鋳型造型装置が、実公平6−5001号公報に記載されている。
【特許文献1】実公平6−5001号公報(第4頁、図1,図3、第5頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来装置では、多数のスクイズフートで加圧力等を変更してスクイズするが、上方(鋳物砂層の外側)からの背面スクイズのみであるから、鋳物砂の層の深い位置や、模型の影となる砂の回りにくいところまではスクイズの効果が生じにくい。そのため十分な均一鋳型充填密度を得ることができず、特に模型の上面部分と側面部分とにおいて密度差が生じ易い。また、模型の側面部分により形成される鋳型の側壁が厚くなることにより、ガス抜き不良を生じたり必要な強度が得られにくいという問題があった。
【0004】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、鋳物砂内に配設された袋部材(流動体内包手段)に、流動体を注入することにより袋部材を膨張させて鋳物砂を鋳物砂層の内側からスクイズすることにより、スクイズの効果が生じにくい、例えば模型の側面部分に対して垂直にスクイズすることを可能にし、鋳型全体として十分な均一鋳型充填密度を得ることができ、鋳型シェルが十分な強度を保持しつつ、最低限の厚みに形成することができ、ガス抜きも良好な鋳型の造型方法及び装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、鋳物砂が充填される鋳物砂容器と、流動体を内包可能でかつ膨張可能な流動体内包手段と、流動体内包手段に流動体を注入する流動体注入手段とを設け、前記鋳物砂容器内に鋳物砂を充填するとともに前記流動体内包手段を鋳物砂内に配設し、前記流動体注入手段により流動体を流動体内包手段に注入することにより流動体内包手段を膨張させて鋳物砂をスクイズすることである。
【0006】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、鋳物砂が充填される鋳枠と、前記鋳枠の下方に鋳枠に対して上下に相対移動可能に配置されるとともに上面に模型が取付けられた模型定盤と、鋳枠の上部に前記模型定盤に対して相対的に接近可能に装架されるスクイズ定盤とを設け、前記鋳枠の内側面と模型定盤の上面とによって形成された空間内に鋳物砂を充填し、前記スクイズ定盤の下面に設けられたものであって、初期形状保持手段を内包した伸縮可能な袋部材を、前記スクイズ定盤を模型定盤に対して相対的に接近させることにより鋳物砂に圧入して予備スクイズし、流動体注入手段により流動体を前記袋部材に注入することにより袋部材を膨張させて鋳物砂をスクイズすることである。
【0007】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、前記予備スクイズの後であって、前記袋部材を膨張させて鋳物砂をスクイズする前において、前記模型定盤を模型定盤の下方に設けられた加圧ヘッドの上昇により上昇させて、前記鋳物砂を模型定盤側からスクイズすることである。
【0008】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、前記初期形状保持手段は通気孔を有した固体物であり、該固体物を内包した袋部材を模型の側面近傍まで圧入したことである。
【0009】
請求5に係る発明の構成上の特徴は、鋳物砂をスクイズすることにより鋳型を造型する鋳型の造型装置において、鋳物砂が充填される鋳物砂容器と、流動体を内包可能でかつ膨張可能であって、鋳物砂内に入れられる流動体内包手段と、前記流動体内包手段に流動体を注入することにより流動体内包手段を膨張させて鋳物砂をスクイズする流動体注入手段とを備えたことである。なお、鋳物砂内に入れられる流動体内包手段とあるは、鋳物砂内に後から流動体内包手段が圧入等される場合及び鋳物砂が後から供給されて結果として流動体注入手段が鋳物砂の中に入った状態となる場合の両方を含むものである。
【0010】
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、鋳物砂が充填される鋳枠と、前記鋳枠の下方に鋳枠に対して上下に相対移動可能に配置されるとともに上面に模型が取付けられた模型定盤と、鋳枠の上部に前記模型定盤に対して相対的に接近可能に装架されるスクイズ定盤とを有する鋳型の造型装置において、前記スクイズ定盤の下面に設けられ、伸縮可能に形成された袋部材と、前記袋部材に内包され、袋部材を一定の形状で保持する初期形状保持手段と、流動体を前記袋部材に注入することにより袋部材を膨張させて鋳物砂をスクイズする流動体注入手段とを備えたことである。
【0011】
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項6において、前記初期形状保持手段は通気孔を有した棒状固体物であり、スクイズ定盤の下面に突設されたことである。
【0012】
請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項6において、前記袋部材はスクイズ定盤の下面に設けられたマット状部材であり、前記初期形状保持手段は弾性部材と開閉弁とを備え、前記弾性部材は前記マット状部材内部に複数個配設されてマット状部材の厚さ方向に伸縮してマット状部材の下面を保持するとともに前記開閉弁はマット状部材に注入された流動体を封入してマット状部材の形状を保持することである。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、鋳物砂が充填された鋳物砂容器の中で、流動体注入手段により流動体を流動体内包手段に注入することにより流動体内包手段を膨張させて鋳物砂をスクイズする。鋳物砂内の所望の位置に流動体内包手段を配置することにより、鋳物砂の外側からのスクイズでは効果が生じにくい所を、鋳物砂の内側からスクイズすることにより、全体として均一な充填密度の鋳型を得ることができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。さらに、流動体は等しい圧力で流動体内包手段を押し広げるので、鋳物砂はむらなく均等に押圧されて均一な充填密度の鋳型が得やすくなる。
【0014】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、予備スクイズをおこなうために鋳物砂の中へ圧入された袋部材は、流動体を注入されることにより、鋳物砂の中で膨張し、難充填箇所や模型の側面部分の鋳物砂をスクイズすることができる。そのため、全体として十分な均一鋳型充填密度を得ることができ、鋳型強度の均一化を図ることができるので、鋳型が十分な強度を保持しつつ、最低限の厚みに形成することができ、ガス抜きも良好となる。
【0015】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、請求項2に係る鋳型の造型方法の効果に加えて、模型定盤側からスクイズ(模型面側スクイズ)することにより特に充分なスクイズが要求される模型面付近の強度を得ることができる。そして、この模型面側(下方向)からのスクイズと、背面側(上方向)からのスクイズと、袋部材側(左右方向)からのスクイズとを合わせると全方向からのスクイズが可能となり全体として非常に高い均一鋳型充填密度を得ることができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。
【0016】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、請求項2に係る鋳型の造型方法の効果に加えて、初期形状保持手段を通気性のある固体物とすることで、袋部材で該固体物を密着させた状態で包むことができ、鋳物砂中の模型の側面近傍まで容易に圧入することができる。これにより、背面や模型定盤側からでは模型面に対して垂直にスクイズすることができない模型の側面部分に対し、垂直にスクイズすることができる。
【0017】
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、鋳物砂が充填された鋳物砂容器の中で、流動体注入手段により流動体を流動体内包手段に注入することにより流動体内包手段を膨張させて鋳物砂をスクイズする。鋳物砂内の所望の位置に流動体内包手段を配置することにより、鋳物砂の外側からのスクイズでは効果が生じにくい所を、鋳物砂の内側からスクイズすることにより、全体として均一な充填密度の鋳型を得ることができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。さらに、流動体は等しい圧力で流動体内包手段を押し広げるので、鋳物砂はむらなく均等に押圧されて均一な充填密度の鋳型が得やすくなるという鋳型の造型装置を提供することができる。
【0018】
上記のように構成した請求項6に係る発明においては、鋳物砂の中へ圧入された袋部材は流動体を注入されることにより、鋳物砂の中の所望の位置で膨張し、模型の側面部分その他難充填箇所の鋳物砂をスクイズすることができる。
【0019】
上記のように構成した請求項7に係る発明においては、請求項6にかかる鋳型の造型装置の効果に加えて、初期形状保持手段を通気性のある棒状固体とすることで、袋部材を同初期形状保持手段に密着させた状態で包むことができ、模型の側面近傍まで鋳物砂に容易に圧入することができる。これにより、模型の側面に対して垂直にスクイズすることができる。
【0020】
上記のように構成した請求項8に係る発明においては、開閉弁を開いた状態で流動体注入手段より流動体をマット状部材に注入して一定のマット形状に形成する。このとき、複数個配設された弾性部材は形状に偏りが生じないようマット状部材の下面を保持している。開閉弁を閉じると、流動体はマット状部材の中に封入された状態となる。次に、スクイズ定盤と模型定盤とを相対的に接近させることにより、鋳枠に充填された鋳物砂に前記マット状部材を圧入する。マット状部材は抵抗の少ない鋳物砂の層が厚い場所では、深く圧入され、圧入抵抗が大きい鋳物砂の層の薄い場所では浅く圧入される。このような鋳物砂の層の厚い薄いは鋳物砂中に埋設された模型の形状や模型の有無によるものである。したがって、このように模型形状等に応じて深く或いは浅く圧入された位置において、前記開閉弁を開いてさらに高圧の流動体を注入することにより、均等な圧力でスクイズできるので、模型形状に対応して均一充填密度に造型することができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る鋳型の造型方法及び装置の第1実施形態を図面に基づいて以下説明する。図1は鋳型の製造装置の概略図、図2は部分拡大図、図3乃至図8は鋳型の製造工程を示す図である。
【0022】
図1において、上が開放した断面略コ字形のパターンキャリア1が、加圧ヘッドとしてのシリンダ装置3によって上下の造型経路方向に進退移動されるようになっている。パターンキャリア1の上面には模型定盤5が固定され、模型定盤5の上面には模型7が取付けられている。模型7は略円柱状に形成され、上部にはやや小径となった段部が形成されるとともに下部にはフランジ部が形成されている。
【0023】
模型定盤5の外周には下盛枠9が外嵌され、下盛枠9の上には鋳枠11が重合して載置されている。この模型定盤5は下盛枠9及び鋳枠11に対し上下に相対移動可能になっている。下盛枠9及び鋳枠11の上方にはシャトル13の下面に取付けられた鋳物砂供給装置15とスクイズ定盤19とが並設されている。シャトル13が往復シリンダ装置10によってスクイズ位置に割り出されるとスクイズ定盤19が模型定盤5と対向し、鋳物砂供給位置に割り出されると鋳物砂供給装置15が模型定盤5と対向するようになっている。これらの模型定盤5、鋳枠11及びスクイズ定盤19により鋳物砂容器を構成する。
【0024】
スクイズ定盤19の下面には初期形状保持手段としての棒状固体物21が複数突設されている。この棒状固体物21は、後述するスクイズにおいて鋳物砂17の中に圧入された際、前記模型7の側面に対応するよう水平位置が考慮されて配設されている。図2に示すように、棒状固体物21は、例えば木製で上端面に設けられた出入口21aから棒状固体物21の側面及び下端面に開口する複数の通気孔21bが穿設されている。スクイズ定盤19には上面から貫通する通気穴19aが設けられ、該通気穴19aの下部には該通気穴19aより少し大径に固体物取付穴19bが同心に設けられている。この固定物取付穴19bには前記棒状固体物21が上部において嵌挿され、通気穴19aと出入口21aとが連続して通気可能になっている。棒状固体物21は鋳物砂17に圧入されたとき、前記模型7の側面近傍に至るよう長さが設定されている。
【0025】
流動体内包手段としての袋部材23は例えば柔軟性のある薄いゴム製(二トリルゴム)で、上端開口部を前記取付穴19bと棒状固体物21の上部フランジ部と間に挟着されて固定され、前記棒状固体物21の下先端部からスクイズ定盤19への取付部分までを密封するようになっている。後述する流動体(圧縮空気)が注入されない状態においては、棒状固体物21の表面に密着し、同流動体が注入されると周囲方向に膨張するようになっている。
【0026】
スクイズ定盤19の下面には流動体内包手段としてのマット状部材25が、後述するスクイズの際に、模型7の上面上方に対応するように配設されている。マット状部材25は、上端部及び周囲側壁が硬質ゴム製の係合部25aと下面全体が延び縮み可能な押圧作用部25bとを有している。係合部25aは、図2に示すように、スクイズ定盤19の下面に設けられた取付溝19dに嵌合され、図示しないシール剤によりシールされてスクイズ定盤19とマット状部材25との間の気密性を保持するようになっている。
【0027】
スクイズ定盤19にはスクイズ定盤19の上面よりマット状部材25の内部に開口する貫通孔19cが複数設けられている。マット状部材25は後述する流動体の注入前においては、スクイズ定盤19の下面に縮んだ状態となっており、該流動体が注入されると模型7に向かって膨張するようになっている。
【0028】
スクイズ定盤19の前記通気穴19a,貫通孔19cにはホース18が接続され、これらの通気穴19a,貫通孔19cは夫々共通圧通路18aを介して流動体注入手段としての空気圧ポンプ20に接続されている。共通圧通路18aと空気圧ポンプ20の間には、空気の供給を制御する開閉弁としての電磁切替弁22が設けられている。
【0029】
スクイズ定盤19の四隅にはシリンダ16が垂直に設けられ、シリンダ16にはピストン16aが上下方向に摺動可能に嵌合され、ピストン16aのピストンロッド16bが前記棒状固体物21の下方に突出し鋳枠11の4隅に係脱可能に当接するようになっている。
【0030】
シリンダ16は図示しない気圧ホースの端部が接続され、該気圧ホースの他端部は図示しない気圧ポンプに接続されている。シリンダ16と気圧ポンプの間には図示しない開閉弁が設けられ、該開閉弁を開閉することによりピストンの動きを制御するようになっている。
【0031】
上記のように構成した実施形態の作動とともに、該実施形態に係る鋳型造型装置を使用した造型方法について説明する。
【0032】
まず、パターンキャリア1の上面に固定した模型定盤5とそれに外嵌された下盛枠9に鋳枠11が重ねて載置され、シャトル13が鋳物砂供給位置に割出されて定量した鋳物砂17が下盛枠9及び鋳枠11内に投入される。続いて、シャトル13がスクイズ位置に割出され、スクイズ定盤19が模型定盤5と対向される。
【0033】
このとき、前記気圧ポンプから圧縮空気が開閉弁を通ってスクイズ定盤19の四隅のシリンダ16に供給され、ピストンロッド16bが下方に向かって突出される。
【0034】
次に、図3、図4及び図9に示すように、この状態でパターンキャリア1及び模型定盤5が加圧ヘッドとしてのシリンダ装置3によってスクイズ定盤19に向かって上昇させられ、鋳物砂17には袋部材23に内包されている棒状固体物21が圧入されていく。このとき前記ピストンロッド16bの先端が鋳枠11の四隅に当接し、ピストンロッド16bの後退を規制することにより前記棒状固体物21が鋳物砂17に圧入していくのに伴って鋳枠11が浮き上がるのを規制している。また、図10に示すように、棒状固体物21は袋部材23で棒状固体物21の表面に密着させた状態で包まれているので、鋳物砂17に容易に圧入することができる。この模型定盤5とスクイズ定盤19の相対的な接近により、鋳枠11内に投入された鋳物砂17は複数の棒状固体物21により背面側予備スクイズされる。
【0035】
次に、図5及び図11に示すように、シリンダ装置3をさらに上昇させると、鋳枠11及び下盛枠9は前記ピストンロッド16bにより上昇を規制されるので、相対的に後退する。これによって、模型定盤5側から鋳物砂17をスクイズ(模型面側スクイズ)することとなり、スクイズ定盤19側からのスクイズ(背面側スクイズ)ではスクイズの効果が生じにくい模型7面付近のスクイズを重点的におこなうことができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。
【0036】
次に、図6及び図12に示すように、空気圧ポンプ20を駆動させるとともに電磁切替弁22を圧縮空気24が袋部材23及びマット状部材25に流入する方向に切替える。袋部材23及びマット状部材25内に高圧の圧縮空気24を瞬間的に注入することにより、同袋部材23及びマット状部材25を爆発的に膨張させる。例えば0.5MPa〜1.0MPaの圧力をかけるものとする。
【0037】
図13に示すように、前記袋部材23は棒状固体物21の周方向及び下方に膨張し、模型7の側面部分に垂直に鋳物砂17をスクイズする。これによって、スクイズしにくい模型7の側面付近をスクイズできる。
【0038】
マット状部材25も膨張するが、膨張したマット状部材25は抵抗の少ない鋳物砂17の層が厚い場所では、深い位置まで圧入され、圧入抵抗が大きい鋳物砂17の層の薄い場所では浅い位置まで圧入される。図6において、模型7の上面に対する位置では浅く、そうでないところは深く圧入されている。したがって、このような模型形状等に応じて均等な圧力でスクイズできるので、模型形状に対応して、全体として均一充填密度に鋳型を造型することができる。そして、この袋部材側(左右方向)からのスクイズと、模型面側(下方向)からのスクイズと、背面側(上方向)からのスクイズとを合わせると全方向からのスクイズをおこなっていることとなり、全体として非常に高い均一鋳型充填密度を得ることができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。そして、得られる鋳型は、鋳型が十分な強度を保持しつつ、最低限の厚みに形成することができ、ガス抜きも良好となる。
【0039】
次に、図7及び図13に示すように、電磁切替弁22を空気が袋部材23及びマット状部材25から流出する方向に切替え、空気圧ポンプ20を作動させて袋部材23及びマット状部材25の内部の圧縮空気を抜く。袋部材23及びマット状部材25は縮んで元の寸法形状に戻ることとなる。そのため、袋部材23及びマット状部材25は、それらと前記膨張により押圧された鋳物砂17の壁面との間に空隙27を生じさせる。
【0040】
次に、図8に示すように、シリンダ装置3を下降させると、スクイズ定盤19が鋳枠11から離れ、棒状固体物21、袋部材23及びマット状部材25が鋳枠11内に形成された鋳型29から抜出される。この場合、前記空隙27によりスムーズに抜出すことができる。このように離型の際の抜き勾配を考慮する必要がない。
【0041】
次に、図示しない鋳枠支持装置により鋳枠11の上下方向の移動を規制するとともに前記シリンダ装置3をさらに下降させる。これにより、模型7、模型定盤5及び下盛枠9は鋳枠11及び鋳型29より離れることとなる。
【0042】
次に、鋳枠11及び鋳型29は図示しないローラコンベアにより注湯ステーションに搬送される。
【0043】
次に第2実施形態について図14乃至図17によって説明する。
【0044】
図14はスクイズ定盤31の下面にはマット状部材33が、スクイズ定盤31の下面全体にわたって下方より覆設されている。マット状部材31はスクイズ定盤31の下面に複数の固定板35によって係脱可能に固定されている。これらの固定板35は例えばアンカーボルト、リベット等の各種取付具によりスクイズ定盤31に固定される。また、スクイズ定盤31にはスクイズ定盤31の上面よりマット状部材33の内部に開口する通油孔31aが複数設けられている。マット状部材33の内部にはスクイズ定盤31の下面から垂下してマット状部材33の下面形状を保持するバネ部材38が複数吊設されている。スクイズ定盤31の前記通油孔31aには夫々油圧ホース37が接続され、これらの通油孔31aは夫々共通圧油路37aを介して流動体注入手段としての油圧ポンプ39に接続されている。共通圧油路37aと油圧ポンプ39の間には、油の供給を制御する開閉弁としての電磁切替弁41が設けられている。
【0045】
このマット状部材33は、図14に示すように油圧ポンプ39から流動体としての圧油43が給油され、電磁切替弁41が閉じられて圧油43がマット状部材33内に封入された状態で、前記バネ部材38による上方への吊上力と圧油43及びマット部材33の自重、さらに圧油43の内圧とのバランスにおいて、マット状部材33の初期形状が保持されるようになっている。
【0046】
その他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0047】
上記のように構成した第2実施形態の作動とともに、該実施形態に係る鋳型造型装置を使用した造型方法について説明する。
【0048】
先ず、油圧ポンプ39を作動させ、電磁切替弁41を圧油43がマット状部材33に流入する方向に切替え、マット状部材33がマット状になるよう圧油43を所定量流入する。
【0049】
次に、図14及び図15に示すように、電磁切替弁41を閉じて前記圧油43をマット状部材33に封じた状態で、前記シリンダ装置3を駆動させて鋳枠11、模型定盤5、模型7及び下盛枠9を上昇させる。マット状部材33は、鋳物砂17に圧入されるが、鋳物砂17の反力によりいくらか圧縮される。鋳物砂17の層が薄いところでは抵抗が大きいため鋳物砂17の反力が大きく、逆に同層の厚いところでは反力が小さい。そのため、マット状部材33は、模型7の高さの高いところに対応する部分程強く圧縮される。
【0050】
次に、図16に示すように、第1実施形態と同様にシリンダ装置をさらに上昇させる。鋳枠11及び下盛枠9は図示しないピストンロッドにより上昇を規制されるので、相対的に後退する。これによって、模型定盤5側から鋳物砂17をスクイズ(模型面側スクイズ)することとなり、スクイズ定盤31側からのスクイズ(背面側スクイズ)ではスクイズの効果が生じにくい模型7面付近のスクイズを重点的におこなうことができ、充分な鋳型の強度を得ることができる。
【0051】
次に、図17に示すように、油圧ポンプ39を駆動させるとともに電磁切替弁41を圧油43がマット状部材33に流入する方向に切替える。マット状部材33内に高圧の圧油43を瞬間的に注入することにより、マット状部材33を爆発的に膨張させる。例えば、0.5MPa〜1.0MPaの圧力をかけるものとする。
【0052】
図17に示すように、マット状部材33は抵抗の少ない鋳物砂17の層が厚い場所では、深い位置まで圧油43の圧力により圧入され、圧入抵抗が大きい鋳物砂17の層の薄い場所では浅い位置まで圧入される。このように鋳物砂17の中に配置される模型形状に応じて均等な圧力でスクイズできるので、全体として均一充填密度に鋳型を造型することができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。
【0053】
そして、圧油は液体であり、気体である圧縮空気よりそれ自体が圧縮されにくいため、圧力が直接的に伝わり、スクイズの際、強い力が容易に得られ易い。
【0054】
以降の工程は、第1実施形態と同様である。
【0055】
次に、中子を造型する第3実施形態について図18乃至図23にもとづいて説明する。
【0056】
中子下金型45には互いに分離可能な中子側金型47が係脱可能に載置され、中子側金型47の内壁面には中子の外形を形成する凸条47aと凹溝47bが設けられている。同中子側金型47の上面には中子上金型49が係脱可能に載置され、中子上金型49の下面には初期形状保持手段としての棒状固体物51が突設されている。これらの中子下金型45、中子側金型47及び中子上金型49により鋳物砂容器を構成する。
【0057】
中子上金型49に突設された棒状固体物51は、例えば木製で上端面に設けられた出入口51aから連通し、該棒状固体物51の側面に開口する複数の通水孔51bが穿設されている。棒状固体物51の上端には小径に形成された取付部51cが設けられ、取付部51cは中子上金型49に穿設された取付穴49aに嵌挿されて固定されている。前記出入口51aには水圧ホース58の一端が接続され、該ホース58の他端は水圧ポンプ59に接続されている。該出入口51aと水圧ポンプ59の間には高圧水57の供給を制御する開閉弁としての電磁切替弁61が設けられている。中子上金型49の上方には鋳物砂供給タンク63が設けられ、中子上金型49に穿設された供給口49bを通じて中子下金型45、中子側金型47及び中子上金型49で囲まれた空間内に鋳物砂17を供給するようになっている。鋳物砂供給タンク63は図示しない制御装置により、適宜、鋳物砂17を供給するようになっている。袋部材65等その他の構成は第1実施例と同様である。
【0058】
上記のように構成した第3実施形態の作動とともに、該実施形態に係る鋳型造型装置を使用した造型方法について説明する。
【0059】
先ず、図18に示すように、中子下金型45、中子側金型47及び中子上金型49で囲まれた空間内には、棒状固体物51が配置されている。水圧ポンプ59は停止し、電磁切替弁61は、高圧水57の流入出が停止されるよう閉じられた状態となっている。鋳物砂供給タンク63には鋳物砂17が次工程で供給されるべく準備された状態となっている。
【0060】
次に、図19に示すように、鋳物砂供給タンク63より供給口49bを通じて、鋳物砂17を前記中子下金型45、中子側金型47及び中子上金型49で囲まれた空間内に供給する。鋳物砂17は同空間内に充填される。
【0061】
次に、図20に示すように、水圧ポンプ59を駆動させるとともに電磁切替弁61を高圧水57が袋部材65に流入する方向に切替える。袋部材65内に高圧水57を瞬間的に注入することにより、袋部材65を爆発的に膨張させる。例えば、0.5MPa〜1.0MPaの圧力をかけるものとする。袋部材65は高圧水57の圧力により、抵抗の少ない鋳物砂17の層が厚い場所では、深い位置まで膨張し、圧入抵抗が大きい鋳物砂17の層の薄い場所では浅い位置まで膨張する。これによって、中子側金型47の内側壁の形状に応じ、均等な圧力でスクイズできるので、全体として均一充填密度に鋳型を造型することができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。
【0062】
次に、図21に示すように、電磁切替弁61を水が袋部材65から流出する方向に切替え、水圧ポンプ59を作動させて袋部材65の内部を減圧して水を抜く。袋部材65は縮んで元の寸法形状に戻ることとなる。そのため、袋部材65は、それらと前記膨張により押圧された鋳物砂17の壁面との間に空隙67を生じさせる。
【0063】
次に、図22に示すように、中子下金型45と中子側金型47とを分離し、棒状固体物51、袋部材65が成型された中子69から抜出される。この場合、前記空隙67によりスムーズに抜出すことができる。このように抜き勾配を考慮することなく離型でき、図23に示すような中子69を得ることができる。
【0064】
ここで、この実施形態で使われた水は液体であり、気体である圧縮空気よりそれ自体が圧縮されにくいため、圧力が直接的に伝わり、スクイズの際、強い力が容易に得られ易い。さらに、取り扱いが容易であり低コストで使用することができる。
【0065】
なお、上記実施形態において、袋部材やマット状部材への空気,油及び水の供給を瞬間的に行い、同袋部材等を爆発的に膨張させるものとしたが、この方法に拘泥されるものでなく、例えば同空気等の供給を細かく制御して、高圧の空気等を波状的に繰返し供給してもよく、段階的に高圧になるよう複数回にわたって供給しても良い。
【0066】
袋部材やマット状部材をゴム製としたが、これに限定されるものではなく、気密性、水密性を有する膜状のものであればよく、例え伸縮性がないものであっても、折畳んで小さくした状態のものに圧縮空気等を注入することにより、膨張させてスクイズできるものであれば使用できる。
【0067】
流動体について上記実施形態では、空気、油及び水を使用したが、これら以外のガスや液体も使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る鋳型の造型装置を正面から見た図。
【図2】図1の部分拡大図。
【図3】スクイズの準備工程を示す図。
【図4】背面側予備スクイズを行っている状態を示す図。
【図5】模型面側スクイズを行っている状態を示す図。
【図6】袋部材及びマット状部材を膨張させてスクイズを行っている状態を示す図。
【図7】袋部材及びマット状部材を収縮させた状態を示す図。
【図8】離型状態を示す図。
【図9】スクイズの準備工程を示す部分拡大図。
【図10】背面側予備スクイズを行っている状態を示す部分拡大図。
【図11】模型面側スクイズを行っている状態を示す部分拡大図。
【図12】袋部材を膨張させてスクイズを行っている状態を示す部分拡大図。
【図13】袋部材を収縮させた状態を示す部分拡大図。
【図14】第2実施形態のスクイズの準備工程を示す図。
【図15】同背面側スクイズを行っている状態を示す図。
【図16】同模型面側スクイズを行っている状態を示す図。
【図17】同マット状部材を膨張させてスクイズを行っている状態を示す図。
【図18】第3実施形態のスクイズの準備工程を示す図。
【図19】同鋳物砂を充填した状態を示す図。
【図20】同袋部材を膨張させてスクイズを行っている状態を示す図。
【図21】同袋部材を収縮させた状態を示す図。
【図22】同離型状態を示す図。
【図23】成形された中子を示す図。
【符号の説明】
【0069】
3…加圧ヘッドとしてのシリンダ装置、5…模型定盤、7…模型、11…鋳枠、17…鋳物砂、19,31…スクイズ定盤、21…棒状固体物、23…袋部材、25,33…マット状部材、20…流動体注入手段としての空気圧ポンプ、38…弾性部材としてのバネ部材、22,41,61…開閉弁としての電磁切替弁、39…流動体注入手段としての油圧ポンプ、59…流動体注入手段としての水圧ポンプ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一な充填密度の鋳型を製造する鋳型の造型方法及びその方法を実施するための造型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳枠内に投入された鋳物砂の層の厚さは、模型定盤上の模型の凹凸に応じて変化する。このような鋳物砂を一様に平坦な端面を有するスクイズヘッドでスクイズすると鋳物砂の層の厚い箇所と薄い箇所とで鋳型の硬度のばらつきが大きくなり過ぎる。この対策のためにスクイズヘッドに多数のスクイズフートを装架し、鋳物砂の層が厚くなる鋳枠内周壁部分と層が薄くなる中央部分とに対応するスクイズフートを各々複数に組分けし、組分けしたスクイズフートの駆動速度、加圧力を変更してスクイズを行い、鋳型の硬度を均等にする鋳型造型装置が、実公平6−5001号公報に記載されている。
【特許文献1】実公平6−5001号公報(第4頁、図1,図3、第5頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来装置では、多数のスクイズフートで加圧力等を変更してスクイズするが、上方(鋳物砂層の外側)からの背面スクイズのみであるから、鋳物砂の層の深い位置や、模型の影となる砂の回りにくいところまではスクイズの効果が生じにくい。そのため十分な均一鋳型充填密度を得ることができず、特に模型の上面部分と側面部分とにおいて密度差が生じ易い。また、模型の側面部分により形成される鋳型の側壁が厚くなることにより、ガス抜き不良を生じたり必要な強度が得られにくいという問題があった。
【0004】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、鋳物砂内に配設された袋部材(流動体内包手段)に、流動体を注入することにより袋部材を膨張させて鋳物砂を鋳物砂層の内側からスクイズすることにより、スクイズの効果が生じにくい、例えば模型の側面部分に対して垂直にスクイズすることを可能にし、鋳型全体として十分な均一鋳型充填密度を得ることができ、鋳型シェルが十分な強度を保持しつつ、最低限の厚みに形成することができ、ガス抜きも良好な鋳型の造型方法及び装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、鋳物砂が充填される鋳物砂容器と、流動体を内包可能でかつ膨張可能な流動体内包手段と、流動体内包手段に流動体を注入する流動体注入手段とを設け、前記鋳物砂容器内に鋳物砂を充填するとともに前記流動体内包手段を鋳物砂内に配設し、前記流動体注入手段により流動体を流動体内包手段に注入することにより流動体内包手段を膨張させて鋳物砂をスクイズすることである。
【0006】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、鋳物砂が充填される鋳枠と、前記鋳枠の下方に鋳枠に対して上下に相対移動可能に配置されるとともに上面に模型が取付けられた模型定盤と、鋳枠の上部に前記模型定盤に対して相対的に接近可能に装架されるスクイズ定盤とを設け、前記鋳枠の内側面と模型定盤の上面とによって形成された空間内に鋳物砂を充填し、前記スクイズ定盤の下面に設けられたものであって、初期形状保持手段を内包した伸縮可能な袋部材を、前記スクイズ定盤を模型定盤に対して相対的に接近させることにより鋳物砂に圧入して予備スクイズし、流動体注入手段により流動体を前記袋部材に注入することにより袋部材を膨張させて鋳物砂をスクイズすることである。
【0007】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、前記予備スクイズの後であって、前記袋部材を膨張させて鋳物砂をスクイズする前において、前記模型定盤を模型定盤の下方に設けられた加圧ヘッドの上昇により上昇させて、前記鋳物砂を模型定盤側からスクイズすることである。
【0008】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、前記初期形状保持手段は通気孔を有した固体物であり、該固体物を内包した袋部材を模型の側面近傍まで圧入したことである。
【0009】
請求5に係る発明の構成上の特徴は、鋳物砂をスクイズすることにより鋳型を造型する鋳型の造型装置において、鋳物砂が充填される鋳物砂容器と、流動体を内包可能でかつ膨張可能であって、鋳物砂内に入れられる流動体内包手段と、前記流動体内包手段に流動体を注入することにより流動体内包手段を膨張させて鋳物砂をスクイズする流動体注入手段とを備えたことである。なお、鋳物砂内に入れられる流動体内包手段とあるは、鋳物砂内に後から流動体内包手段が圧入等される場合及び鋳物砂が後から供給されて結果として流動体注入手段が鋳物砂の中に入った状態となる場合の両方を含むものである。
【0010】
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、鋳物砂が充填される鋳枠と、前記鋳枠の下方に鋳枠に対して上下に相対移動可能に配置されるとともに上面に模型が取付けられた模型定盤と、鋳枠の上部に前記模型定盤に対して相対的に接近可能に装架されるスクイズ定盤とを有する鋳型の造型装置において、前記スクイズ定盤の下面に設けられ、伸縮可能に形成された袋部材と、前記袋部材に内包され、袋部材を一定の形状で保持する初期形状保持手段と、流動体を前記袋部材に注入することにより袋部材を膨張させて鋳物砂をスクイズする流動体注入手段とを備えたことである。
【0011】
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項6において、前記初期形状保持手段は通気孔を有した棒状固体物であり、スクイズ定盤の下面に突設されたことである。
【0012】
請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項6において、前記袋部材はスクイズ定盤の下面に設けられたマット状部材であり、前記初期形状保持手段は弾性部材と開閉弁とを備え、前記弾性部材は前記マット状部材内部に複数個配設されてマット状部材の厚さ方向に伸縮してマット状部材の下面を保持するとともに前記開閉弁はマット状部材に注入された流動体を封入してマット状部材の形状を保持することである。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、鋳物砂が充填された鋳物砂容器の中で、流動体注入手段により流動体を流動体内包手段に注入することにより流動体内包手段を膨張させて鋳物砂をスクイズする。鋳物砂内の所望の位置に流動体内包手段を配置することにより、鋳物砂の外側からのスクイズでは効果が生じにくい所を、鋳物砂の内側からスクイズすることにより、全体として均一な充填密度の鋳型を得ることができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。さらに、流動体は等しい圧力で流動体内包手段を押し広げるので、鋳物砂はむらなく均等に押圧されて均一な充填密度の鋳型が得やすくなる。
【0014】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、予備スクイズをおこなうために鋳物砂の中へ圧入された袋部材は、流動体を注入されることにより、鋳物砂の中で膨張し、難充填箇所や模型の側面部分の鋳物砂をスクイズすることができる。そのため、全体として十分な均一鋳型充填密度を得ることができ、鋳型強度の均一化を図ることができるので、鋳型が十分な強度を保持しつつ、最低限の厚みに形成することができ、ガス抜きも良好となる。
【0015】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、請求項2に係る鋳型の造型方法の効果に加えて、模型定盤側からスクイズ(模型面側スクイズ)することにより特に充分なスクイズが要求される模型面付近の強度を得ることができる。そして、この模型面側(下方向)からのスクイズと、背面側(上方向)からのスクイズと、袋部材側(左右方向)からのスクイズとを合わせると全方向からのスクイズが可能となり全体として非常に高い均一鋳型充填密度を得ることができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。
【0016】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、請求項2に係る鋳型の造型方法の効果に加えて、初期形状保持手段を通気性のある固体物とすることで、袋部材で該固体物を密着させた状態で包むことができ、鋳物砂中の模型の側面近傍まで容易に圧入することができる。これにより、背面や模型定盤側からでは模型面に対して垂直にスクイズすることができない模型の側面部分に対し、垂直にスクイズすることができる。
【0017】
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、鋳物砂が充填された鋳物砂容器の中で、流動体注入手段により流動体を流動体内包手段に注入することにより流動体内包手段を膨張させて鋳物砂をスクイズする。鋳物砂内の所望の位置に流動体内包手段を配置することにより、鋳物砂の外側からのスクイズでは効果が生じにくい所を、鋳物砂の内側からスクイズすることにより、全体として均一な充填密度の鋳型を得ることができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。さらに、流動体は等しい圧力で流動体内包手段を押し広げるので、鋳物砂はむらなく均等に押圧されて均一な充填密度の鋳型が得やすくなるという鋳型の造型装置を提供することができる。
【0018】
上記のように構成した請求項6に係る発明においては、鋳物砂の中へ圧入された袋部材は流動体を注入されることにより、鋳物砂の中の所望の位置で膨張し、模型の側面部分その他難充填箇所の鋳物砂をスクイズすることができる。
【0019】
上記のように構成した請求項7に係る発明においては、請求項6にかかる鋳型の造型装置の効果に加えて、初期形状保持手段を通気性のある棒状固体とすることで、袋部材を同初期形状保持手段に密着させた状態で包むことができ、模型の側面近傍まで鋳物砂に容易に圧入することができる。これにより、模型の側面に対して垂直にスクイズすることができる。
【0020】
上記のように構成した請求項8に係る発明においては、開閉弁を開いた状態で流動体注入手段より流動体をマット状部材に注入して一定のマット形状に形成する。このとき、複数個配設された弾性部材は形状に偏りが生じないようマット状部材の下面を保持している。開閉弁を閉じると、流動体はマット状部材の中に封入された状態となる。次に、スクイズ定盤と模型定盤とを相対的に接近させることにより、鋳枠に充填された鋳物砂に前記マット状部材を圧入する。マット状部材は抵抗の少ない鋳物砂の層が厚い場所では、深く圧入され、圧入抵抗が大きい鋳物砂の層の薄い場所では浅く圧入される。このような鋳物砂の層の厚い薄いは鋳物砂中に埋設された模型の形状や模型の有無によるものである。したがって、このように模型形状等に応じて深く或いは浅く圧入された位置において、前記開閉弁を開いてさらに高圧の流動体を注入することにより、均等な圧力でスクイズできるので、模型形状に対応して均一充填密度に造型することができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る鋳型の造型方法及び装置の第1実施形態を図面に基づいて以下説明する。図1は鋳型の製造装置の概略図、図2は部分拡大図、図3乃至図8は鋳型の製造工程を示す図である。
【0022】
図1において、上が開放した断面略コ字形のパターンキャリア1が、加圧ヘッドとしてのシリンダ装置3によって上下の造型経路方向に進退移動されるようになっている。パターンキャリア1の上面には模型定盤5が固定され、模型定盤5の上面には模型7が取付けられている。模型7は略円柱状に形成され、上部にはやや小径となった段部が形成されるとともに下部にはフランジ部が形成されている。
【0023】
模型定盤5の外周には下盛枠9が外嵌され、下盛枠9の上には鋳枠11が重合して載置されている。この模型定盤5は下盛枠9及び鋳枠11に対し上下に相対移動可能になっている。下盛枠9及び鋳枠11の上方にはシャトル13の下面に取付けられた鋳物砂供給装置15とスクイズ定盤19とが並設されている。シャトル13が往復シリンダ装置10によってスクイズ位置に割り出されるとスクイズ定盤19が模型定盤5と対向し、鋳物砂供給位置に割り出されると鋳物砂供給装置15が模型定盤5と対向するようになっている。これらの模型定盤5、鋳枠11及びスクイズ定盤19により鋳物砂容器を構成する。
【0024】
スクイズ定盤19の下面には初期形状保持手段としての棒状固体物21が複数突設されている。この棒状固体物21は、後述するスクイズにおいて鋳物砂17の中に圧入された際、前記模型7の側面に対応するよう水平位置が考慮されて配設されている。図2に示すように、棒状固体物21は、例えば木製で上端面に設けられた出入口21aから棒状固体物21の側面及び下端面に開口する複数の通気孔21bが穿設されている。スクイズ定盤19には上面から貫通する通気穴19aが設けられ、該通気穴19aの下部には該通気穴19aより少し大径に固体物取付穴19bが同心に設けられている。この固定物取付穴19bには前記棒状固体物21が上部において嵌挿され、通気穴19aと出入口21aとが連続して通気可能になっている。棒状固体物21は鋳物砂17に圧入されたとき、前記模型7の側面近傍に至るよう長さが設定されている。
【0025】
流動体内包手段としての袋部材23は例えば柔軟性のある薄いゴム製(二トリルゴム)で、上端開口部を前記取付穴19bと棒状固体物21の上部フランジ部と間に挟着されて固定され、前記棒状固体物21の下先端部からスクイズ定盤19への取付部分までを密封するようになっている。後述する流動体(圧縮空気)が注入されない状態においては、棒状固体物21の表面に密着し、同流動体が注入されると周囲方向に膨張するようになっている。
【0026】
スクイズ定盤19の下面には流動体内包手段としてのマット状部材25が、後述するスクイズの際に、模型7の上面上方に対応するように配設されている。マット状部材25は、上端部及び周囲側壁が硬質ゴム製の係合部25aと下面全体が延び縮み可能な押圧作用部25bとを有している。係合部25aは、図2に示すように、スクイズ定盤19の下面に設けられた取付溝19dに嵌合され、図示しないシール剤によりシールされてスクイズ定盤19とマット状部材25との間の気密性を保持するようになっている。
【0027】
スクイズ定盤19にはスクイズ定盤19の上面よりマット状部材25の内部に開口する貫通孔19cが複数設けられている。マット状部材25は後述する流動体の注入前においては、スクイズ定盤19の下面に縮んだ状態となっており、該流動体が注入されると模型7に向かって膨張するようになっている。
【0028】
スクイズ定盤19の前記通気穴19a,貫通孔19cにはホース18が接続され、これらの通気穴19a,貫通孔19cは夫々共通圧通路18aを介して流動体注入手段としての空気圧ポンプ20に接続されている。共通圧通路18aと空気圧ポンプ20の間には、空気の供給を制御する開閉弁としての電磁切替弁22が設けられている。
【0029】
スクイズ定盤19の四隅にはシリンダ16が垂直に設けられ、シリンダ16にはピストン16aが上下方向に摺動可能に嵌合され、ピストン16aのピストンロッド16bが前記棒状固体物21の下方に突出し鋳枠11の4隅に係脱可能に当接するようになっている。
【0030】
シリンダ16は図示しない気圧ホースの端部が接続され、該気圧ホースの他端部は図示しない気圧ポンプに接続されている。シリンダ16と気圧ポンプの間には図示しない開閉弁が設けられ、該開閉弁を開閉することによりピストンの動きを制御するようになっている。
【0031】
上記のように構成した実施形態の作動とともに、該実施形態に係る鋳型造型装置を使用した造型方法について説明する。
【0032】
まず、パターンキャリア1の上面に固定した模型定盤5とそれに外嵌された下盛枠9に鋳枠11が重ねて載置され、シャトル13が鋳物砂供給位置に割出されて定量した鋳物砂17が下盛枠9及び鋳枠11内に投入される。続いて、シャトル13がスクイズ位置に割出され、スクイズ定盤19が模型定盤5と対向される。
【0033】
このとき、前記気圧ポンプから圧縮空気が開閉弁を通ってスクイズ定盤19の四隅のシリンダ16に供給され、ピストンロッド16bが下方に向かって突出される。
【0034】
次に、図3、図4及び図9に示すように、この状態でパターンキャリア1及び模型定盤5が加圧ヘッドとしてのシリンダ装置3によってスクイズ定盤19に向かって上昇させられ、鋳物砂17には袋部材23に内包されている棒状固体物21が圧入されていく。このとき前記ピストンロッド16bの先端が鋳枠11の四隅に当接し、ピストンロッド16bの後退を規制することにより前記棒状固体物21が鋳物砂17に圧入していくのに伴って鋳枠11が浮き上がるのを規制している。また、図10に示すように、棒状固体物21は袋部材23で棒状固体物21の表面に密着させた状態で包まれているので、鋳物砂17に容易に圧入することができる。この模型定盤5とスクイズ定盤19の相対的な接近により、鋳枠11内に投入された鋳物砂17は複数の棒状固体物21により背面側予備スクイズされる。
【0035】
次に、図5及び図11に示すように、シリンダ装置3をさらに上昇させると、鋳枠11及び下盛枠9は前記ピストンロッド16bにより上昇を規制されるので、相対的に後退する。これによって、模型定盤5側から鋳物砂17をスクイズ(模型面側スクイズ)することとなり、スクイズ定盤19側からのスクイズ(背面側スクイズ)ではスクイズの効果が生じにくい模型7面付近のスクイズを重点的におこなうことができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。
【0036】
次に、図6及び図12に示すように、空気圧ポンプ20を駆動させるとともに電磁切替弁22を圧縮空気24が袋部材23及びマット状部材25に流入する方向に切替える。袋部材23及びマット状部材25内に高圧の圧縮空気24を瞬間的に注入することにより、同袋部材23及びマット状部材25を爆発的に膨張させる。例えば0.5MPa〜1.0MPaの圧力をかけるものとする。
【0037】
図13に示すように、前記袋部材23は棒状固体物21の周方向及び下方に膨張し、模型7の側面部分に垂直に鋳物砂17をスクイズする。これによって、スクイズしにくい模型7の側面付近をスクイズできる。
【0038】
マット状部材25も膨張するが、膨張したマット状部材25は抵抗の少ない鋳物砂17の層が厚い場所では、深い位置まで圧入され、圧入抵抗が大きい鋳物砂17の層の薄い場所では浅い位置まで圧入される。図6において、模型7の上面に対する位置では浅く、そうでないところは深く圧入されている。したがって、このような模型形状等に応じて均等な圧力でスクイズできるので、模型形状に対応して、全体として均一充填密度に鋳型を造型することができる。そして、この袋部材側(左右方向)からのスクイズと、模型面側(下方向)からのスクイズと、背面側(上方向)からのスクイズとを合わせると全方向からのスクイズをおこなっていることとなり、全体として非常に高い均一鋳型充填密度を得ることができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。そして、得られる鋳型は、鋳型が十分な強度を保持しつつ、最低限の厚みに形成することができ、ガス抜きも良好となる。
【0039】
次に、図7及び図13に示すように、電磁切替弁22を空気が袋部材23及びマット状部材25から流出する方向に切替え、空気圧ポンプ20を作動させて袋部材23及びマット状部材25の内部の圧縮空気を抜く。袋部材23及びマット状部材25は縮んで元の寸法形状に戻ることとなる。そのため、袋部材23及びマット状部材25は、それらと前記膨張により押圧された鋳物砂17の壁面との間に空隙27を生じさせる。
【0040】
次に、図8に示すように、シリンダ装置3を下降させると、スクイズ定盤19が鋳枠11から離れ、棒状固体物21、袋部材23及びマット状部材25が鋳枠11内に形成された鋳型29から抜出される。この場合、前記空隙27によりスムーズに抜出すことができる。このように離型の際の抜き勾配を考慮する必要がない。
【0041】
次に、図示しない鋳枠支持装置により鋳枠11の上下方向の移動を規制するとともに前記シリンダ装置3をさらに下降させる。これにより、模型7、模型定盤5及び下盛枠9は鋳枠11及び鋳型29より離れることとなる。
【0042】
次に、鋳枠11及び鋳型29は図示しないローラコンベアにより注湯ステーションに搬送される。
【0043】
次に第2実施形態について図14乃至図17によって説明する。
【0044】
図14はスクイズ定盤31の下面にはマット状部材33が、スクイズ定盤31の下面全体にわたって下方より覆設されている。マット状部材31はスクイズ定盤31の下面に複数の固定板35によって係脱可能に固定されている。これらの固定板35は例えばアンカーボルト、リベット等の各種取付具によりスクイズ定盤31に固定される。また、スクイズ定盤31にはスクイズ定盤31の上面よりマット状部材33の内部に開口する通油孔31aが複数設けられている。マット状部材33の内部にはスクイズ定盤31の下面から垂下してマット状部材33の下面形状を保持するバネ部材38が複数吊設されている。スクイズ定盤31の前記通油孔31aには夫々油圧ホース37が接続され、これらの通油孔31aは夫々共通圧油路37aを介して流動体注入手段としての油圧ポンプ39に接続されている。共通圧油路37aと油圧ポンプ39の間には、油の供給を制御する開閉弁としての電磁切替弁41が設けられている。
【0045】
このマット状部材33は、図14に示すように油圧ポンプ39から流動体としての圧油43が給油され、電磁切替弁41が閉じられて圧油43がマット状部材33内に封入された状態で、前記バネ部材38による上方への吊上力と圧油43及びマット部材33の自重、さらに圧油43の内圧とのバランスにおいて、マット状部材33の初期形状が保持されるようになっている。
【0046】
その他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0047】
上記のように構成した第2実施形態の作動とともに、該実施形態に係る鋳型造型装置を使用した造型方法について説明する。
【0048】
先ず、油圧ポンプ39を作動させ、電磁切替弁41を圧油43がマット状部材33に流入する方向に切替え、マット状部材33がマット状になるよう圧油43を所定量流入する。
【0049】
次に、図14及び図15に示すように、電磁切替弁41を閉じて前記圧油43をマット状部材33に封じた状態で、前記シリンダ装置3を駆動させて鋳枠11、模型定盤5、模型7及び下盛枠9を上昇させる。マット状部材33は、鋳物砂17に圧入されるが、鋳物砂17の反力によりいくらか圧縮される。鋳物砂17の層が薄いところでは抵抗が大きいため鋳物砂17の反力が大きく、逆に同層の厚いところでは反力が小さい。そのため、マット状部材33は、模型7の高さの高いところに対応する部分程強く圧縮される。
【0050】
次に、図16に示すように、第1実施形態と同様にシリンダ装置をさらに上昇させる。鋳枠11及び下盛枠9は図示しないピストンロッドにより上昇を規制されるので、相対的に後退する。これによって、模型定盤5側から鋳物砂17をスクイズ(模型面側スクイズ)することとなり、スクイズ定盤31側からのスクイズ(背面側スクイズ)ではスクイズの効果が生じにくい模型7面付近のスクイズを重点的におこなうことができ、充分な鋳型の強度を得ることができる。
【0051】
次に、図17に示すように、油圧ポンプ39を駆動させるとともに電磁切替弁41を圧油43がマット状部材33に流入する方向に切替える。マット状部材33内に高圧の圧油43を瞬間的に注入することにより、マット状部材33を爆発的に膨張させる。例えば、0.5MPa〜1.0MPaの圧力をかけるものとする。
【0052】
図17に示すように、マット状部材33は抵抗の少ない鋳物砂17の層が厚い場所では、深い位置まで圧油43の圧力により圧入され、圧入抵抗が大きい鋳物砂17の層の薄い場所では浅い位置まで圧入される。このように鋳物砂17の中に配置される模型形状に応じて均等な圧力でスクイズできるので、全体として均一充填密度に鋳型を造型することができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。
【0053】
そして、圧油は液体であり、気体である圧縮空気よりそれ自体が圧縮されにくいため、圧力が直接的に伝わり、スクイズの際、強い力が容易に得られ易い。
【0054】
以降の工程は、第1実施形態と同様である。
【0055】
次に、中子を造型する第3実施形態について図18乃至図23にもとづいて説明する。
【0056】
中子下金型45には互いに分離可能な中子側金型47が係脱可能に載置され、中子側金型47の内壁面には中子の外形を形成する凸条47aと凹溝47bが設けられている。同中子側金型47の上面には中子上金型49が係脱可能に載置され、中子上金型49の下面には初期形状保持手段としての棒状固体物51が突設されている。これらの中子下金型45、中子側金型47及び中子上金型49により鋳物砂容器を構成する。
【0057】
中子上金型49に突設された棒状固体物51は、例えば木製で上端面に設けられた出入口51aから連通し、該棒状固体物51の側面に開口する複数の通水孔51bが穿設されている。棒状固体物51の上端には小径に形成された取付部51cが設けられ、取付部51cは中子上金型49に穿設された取付穴49aに嵌挿されて固定されている。前記出入口51aには水圧ホース58の一端が接続され、該ホース58の他端は水圧ポンプ59に接続されている。該出入口51aと水圧ポンプ59の間には高圧水57の供給を制御する開閉弁としての電磁切替弁61が設けられている。中子上金型49の上方には鋳物砂供給タンク63が設けられ、中子上金型49に穿設された供給口49bを通じて中子下金型45、中子側金型47及び中子上金型49で囲まれた空間内に鋳物砂17を供給するようになっている。鋳物砂供給タンク63は図示しない制御装置により、適宜、鋳物砂17を供給するようになっている。袋部材65等その他の構成は第1実施例と同様である。
【0058】
上記のように構成した第3実施形態の作動とともに、該実施形態に係る鋳型造型装置を使用した造型方法について説明する。
【0059】
先ず、図18に示すように、中子下金型45、中子側金型47及び中子上金型49で囲まれた空間内には、棒状固体物51が配置されている。水圧ポンプ59は停止し、電磁切替弁61は、高圧水57の流入出が停止されるよう閉じられた状態となっている。鋳物砂供給タンク63には鋳物砂17が次工程で供給されるべく準備された状態となっている。
【0060】
次に、図19に示すように、鋳物砂供給タンク63より供給口49bを通じて、鋳物砂17を前記中子下金型45、中子側金型47及び中子上金型49で囲まれた空間内に供給する。鋳物砂17は同空間内に充填される。
【0061】
次に、図20に示すように、水圧ポンプ59を駆動させるとともに電磁切替弁61を高圧水57が袋部材65に流入する方向に切替える。袋部材65内に高圧水57を瞬間的に注入することにより、袋部材65を爆発的に膨張させる。例えば、0.5MPa〜1.0MPaの圧力をかけるものとする。袋部材65は高圧水57の圧力により、抵抗の少ない鋳物砂17の層が厚い場所では、深い位置まで膨張し、圧入抵抗が大きい鋳物砂17の層の薄い場所では浅い位置まで膨張する。これによって、中子側金型47の内側壁の形状に応じ、均等な圧力でスクイズできるので、全体として均一充填密度に鋳型を造型することができ、鋳型強度の均一化を図ることができる。
【0062】
次に、図21に示すように、電磁切替弁61を水が袋部材65から流出する方向に切替え、水圧ポンプ59を作動させて袋部材65の内部を減圧して水を抜く。袋部材65は縮んで元の寸法形状に戻ることとなる。そのため、袋部材65は、それらと前記膨張により押圧された鋳物砂17の壁面との間に空隙67を生じさせる。
【0063】
次に、図22に示すように、中子下金型45と中子側金型47とを分離し、棒状固体物51、袋部材65が成型された中子69から抜出される。この場合、前記空隙67によりスムーズに抜出すことができる。このように抜き勾配を考慮することなく離型でき、図23に示すような中子69を得ることができる。
【0064】
ここで、この実施形態で使われた水は液体であり、気体である圧縮空気よりそれ自体が圧縮されにくいため、圧力が直接的に伝わり、スクイズの際、強い力が容易に得られ易い。さらに、取り扱いが容易であり低コストで使用することができる。
【0065】
なお、上記実施形態において、袋部材やマット状部材への空気,油及び水の供給を瞬間的に行い、同袋部材等を爆発的に膨張させるものとしたが、この方法に拘泥されるものでなく、例えば同空気等の供給を細かく制御して、高圧の空気等を波状的に繰返し供給してもよく、段階的に高圧になるよう複数回にわたって供給しても良い。
【0066】
袋部材やマット状部材をゴム製としたが、これに限定されるものではなく、気密性、水密性を有する膜状のものであればよく、例え伸縮性がないものであっても、折畳んで小さくした状態のものに圧縮空気等を注入することにより、膨張させてスクイズできるものであれば使用できる。
【0067】
流動体について上記実施形態では、空気、油及び水を使用したが、これら以外のガスや液体も使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る鋳型の造型装置を正面から見た図。
【図2】図1の部分拡大図。
【図3】スクイズの準備工程を示す図。
【図4】背面側予備スクイズを行っている状態を示す図。
【図5】模型面側スクイズを行っている状態を示す図。
【図6】袋部材及びマット状部材を膨張させてスクイズを行っている状態を示す図。
【図7】袋部材及びマット状部材を収縮させた状態を示す図。
【図8】離型状態を示す図。
【図9】スクイズの準備工程を示す部分拡大図。
【図10】背面側予備スクイズを行っている状態を示す部分拡大図。
【図11】模型面側スクイズを行っている状態を示す部分拡大図。
【図12】袋部材を膨張させてスクイズを行っている状態を示す部分拡大図。
【図13】袋部材を収縮させた状態を示す部分拡大図。
【図14】第2実施形態のスクイズの準備工程を示す図。
【図15】同背面側スクイズを行っている状態を示す図。
【図16】同模型面側スクイズを行っている状態を示す図。
【図17】同マット状部材を膨張させてスクイズを行っている状態を示す図。
【図18】第3実施形態のスクイズの準備工程を示す図。
【図19】同鋳物砂を充填した状態を示す図。
【図20】同袋部材を膨張させてスクイズを行っている状態を示す図。
【図21】同袋部材を収縮させた状態を示す図。
【図22】同離型状態を示す図。
【図23】成形された中子を示す図。
【符号の説明】
【0069】
3…加圧ヘッドとしてのシリンダ装置、5…模型定盤、7…模型、11…鋳枠、17…鋳物砂、19,31…スクイズ定盤、21…棒状固体物、23…袋部材、25,33…マット状部材、20…流動体注入手段としての空気圧ポンプ、38…弾性部材としてのバネ部材、22,41,61…開閉弁としての電磁切替弁、39…流動体注入手段としての油圧ポンプ、59…流動体注入手段としての水圧ポンプ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳物砂が充填される鋳物砂容器と、流動体を内包可能でかつ膨張可能な流動体内包手段と、流動体内包手段に流動体を注入する流動体注入手段とを設け、
前記鋳物砂容器内に鋳物砂を充填するとともに前記流動体内包手段を鋳物砂内に配設し、前記流動体注入手段により流動体を流動体内包手段に注入することにより流動体内包手段を膨張させて鋳物砂をスクイズすることを特徴とする鋳型の造型方法。
【請求項2】
鋳物砂が充填される鋳枠と、前記鋳枠の下方に鋳枠に対して上下に相対移動可能に配置されるとともに上面に模型が取付けられた模型定盤と、鋳枠の上部に前記模型定盤に対して相対的に接近可能に装架されるスクイズ定盤とを設け、
前記鋳枠の内側面と模型定盤の上面とによって形成された空間内に鋳物砂を充填し、
前記スクイズ定盤の下面に設けられたものであって、初期形状保持手段を内包した伸縮可能な袋部材を、前記スクイズ定盤を模型定盤に対して相対的に接近させることにより鋳物砂に圧入して予備スクイズし、
流動体注入手段により流動体を前記袋部材に注入することにより袋部材を膨張させて鋳物砂をスクイズすることを特徴とする鋳型の造型方法。
【請求項3】
請求項2において、前記予備スクイズの後であって、前記袋部材を膨張させて鋳物砂をスクイズする前において、前記模型定盤を模型定盤の下方に設けられた加圧ヘッドの上昇により上昇させて、前記鋳物砂を模型定盤側からスクイズすることを特徴とする鋳型の造型方法。
【請求項4】
請求項2において、前記初期形状保持手段は通気孔を有した固体物であり、該固体物を内包した袋部材を模型の側面近傍まで圧入したことを特徴とする鋳型の造型方法。
【請求項5】
鋳物砂をスクイズすることにより鋳型を造型する鋳型の造型装置において、
鋳物砂が充填される鋳物砂容器と、
流動体を内包可能でかつ膨張可能であって、鋳物砂内に入れられる流動体内包手段と、
前記流動体内包手段に流動体を注入することにより流動体内包手段を膨張させて鋳物砂をスクイズする流動体注入手段とを備えたことを特徴とする鋳型の造型装置。
【請求項6】
鋳物砂が充填される鋳枠と、前記鋳枠の下方に鋳枠に対して上下に相対移動可能に配置されるとともに上面に模型が取付けられた模型定盤と、鋳枠の上部に前記模型定盤に対して相対的に接近可能に装架されるスクイズ定盤とを有する鋳型の造型装置において、
前記スクイズ定盤の下面に設けられ、伸縮可能に形成された袋部材と、
前記袋部材に内包され、袋部材を一定の形状で保持する初期形状保持手段と、
流動体を前記袋部材に注入することにより袋部材を膨張させて鋳物砂をスクイズする流動体注入手段とを備えた鋳型の造型装置。
【請求項7】
請求項6において、前記初期形状保持手段は通気孔を有した棒状固体物であり、スクイズ定盤の下面に突設されたことを特徴とする鋳型の造型装置。
【請求項8】
請求項6において、前記袋部材はマット状部材であり、前記初期形状保持手段は弾性部材と開閉弁とを備え、前記弾性部材は前記マット状部材内部に複数個配設されてマット状部材の厚さ方向に伸縮してマット状部材の下面を保持するとともに前記開閉弁はマット状部材に注入された流動体を封入してマット状部材の形状を保持することを特徴とする鋳型の造型装置。
【請求項1】
鋳物砂が充填される鋳物砂容器と、流動体を内包可能でかつ膨張可能な流動体内包手段と、流動体内包手段に流動体を注入する流動体注入手段とを設け、
前記鋳物砂容器内に鋳物砂を充填するとともに前記流動体内包手段を鋳物砂内に配設し、前記流動体注入手段により流動体を流動体内包手段に注入することにより流動体内包手段を膨張させて鋳物砂をスクイズすることを特徴とする鋳型の造型方法。
【請求項2】
鋳物砂が充填される鋳枠と、前記鋳枠の下方に鋳枠に対して上下に相対移動可能に配置されるとともに上面に模型が取付けられた模型定盤と、鋳枠の上部に前記模型定盤に対して相対的に接近可能に装架されるスクイズ定盤とを設け、
前記鋳枠の内側面と模型定盤の上面とによって形成された空間内に鋳物砂を充填し、
前記スクイズ定盤の下面に設けられたものであって、初期形状保持手段を内包した伸縮可能な袋部材を、前記スクイズ定盤を模型定盤に対して相対的に接近させることにより鋳物砂に圧入して予備スクイズし、
流動体注入手段により流動体を前記袋部材に注入することにより袋部材を膨張させて鋳物砂をスクイズすることを特徴とする鋳型の造型方法。
【請求項3】
請求項2において、前記予備スクイズの後であって、前記袋部材を膨張させて鋳物砂をスクイズする前において、前記模型定盤を模型定盤の下方に設けられた加圧ヘッドの上昇により上昇させて、前記鋳物砂を模型定盤側からスクイズすることを特徴とする鋳型の造型方法。
【請求項4】
請求項2において、前記初期形状保持手段は通気孔を有した固体物であり、該固体物を内包した袋部材を模型の側面近傍まで圧入したことを特徴とする鋳型の造型方法。
【請求項5】
鋳物砂をスクイズすることにより鋳型を造型する鋳型の造型装置において、
鋳物砂が充填される鋳物砂容器と、
流動体を内包可能でかつ膨張可能であって、鋳物砂内に入れられる流動体内包手段と、
前記流動体内包手段に流動体を注入することにより流動体内包手段を膨張させて鋳物砂をスクイズする流動体注入手段とを備えたことを特徴とする鋳型の造型装置。
【請求項6】
鋳物砂が充填される鋳枠と、前記鋳枠の下方に鋳枠に対して上下に相対移動可能に配置されるとともに上面に模型が取付けられた模型定盤と、鋳枠の上部に前記模型定盤に対して相対的に接近可能に装架されるスクイズ定盤とを有する鋳型の造型装置において、
前記スクイズ定盤の下面に設けられ、伸縮可能に形成された袋部材と、
前記袋部材に内包され、袋部材を一定の形状で保持する初期形状保持手段と、
流動体を前記袋部材に注入することにより袋部材を膨張させて鋳物砂をスクイズする流動体注入手段とを備えた鋳型の造型装置。
【請求項7】
請求項6において、前記初期形状保持手段は通気孔を有した棒状固体物であり、スクイズ定盤の下面に突設されたことを特徴とする鋳型の造型装置。
【請求項8】
請求項6において、前記袋部材はマット状部材であり、前記初期形状保持手段は弾性部材と開閉弁とを備え、前記弾性部材は前記マット状部材内部に複数個配設されてマット状部材の厚さ方向に伸縮してマット状部材の下面を保持するとともに前記開閉弁はマット状部材に注入された流動体を封入してマット状部材の形状を保持することを特徴とする鋳型の造型装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2006−35252(P2006−35252A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217578(P2004−217578)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(592089799)メタルエンジニアリング株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(592089799)メタルエンジニアリング株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]