説明

鋳型クランプ治具

【課題】上鋳型の浮き上がりを防止するとともに、鋳型へのクランプ作業の効率を向上させることができる鋳型クランプ治具を提供する。
【解決手段】鋳型造型設備において、上鋳型と下鋳型を型合せした鋳型のキャビティーに注湯するときに、下鋳型に対して上鋳型の浮き上がりを防止する鋳型クランプ治具であって、前記上鋳型の上部に載置される上鋳型押さえフレーム部材と、該上鋳型押さえフレーム部材の両端部に前記鋳型の側部側に向かって回動自在に連結するとともに、自由先端部に係合部が形成されるクランプ部材とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋳型クランプ治具に関する。さらに詳しくは、鋳型造型設備において、上鋳型と下鋳型を型合せした鋳型のキャビティーに注湯するときに、下鋳型に対して上鋳型の浮き上がりを防止する鋳型クランプ治具に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳型造型設備、たとえば生砂枠付造型設備において、上下鋳型内に溶湯するときに発生する溶湯圧力や、溶湯凝固時の膨張、鋳型から発生するガスなどにより、上鋳型が浮き上がり、上下鋳型間より溶湯漏れが発生したり、正規の製品寸法が得られないという製品不良の発生がある。
従来、前記製品不良の発生原因を改善するために、図4〜6に示されるように、上鋳型101上に該上鋳型101が浮き上がらない程度の重量のある重り102を載せて、該上鋳型101の浮き上がりを防止したり、図7〜9に示されるように、上鋳型201の上金枠202に取り付けられるフック状のクランプ(金具)203を下鋳型204の下金枠205に突設されるピン206に機械的に連結し、前記上鋳型201の浮き上がりを防止していた。
【0003】
図4〜6に示される重り方式では、製品種類が変わっても最大の浮力が発生する製品に合わせ、上鋳型101が浮き上がらないために充分な重量がある重り102があれば、上鋳型そのものを押さえているため、溶湯漏れなどが発生しない。また、鋳型中央部も重り102により押さえているため、上鋳型そのものの強度が弱くても鋳型割れなどが発生しにくいなどの長所もあった。
【0004】
しかし、浮力が最大となる製品に合わせて重りの重量を決める必要があるため、大きな重量の重りとなり、その重りを移し替える装置や重りを載せた上下鋳型を搬送する装置に大きな力が必要となり、それに伴い装置も大きくなってしまう。また、新しく生産したい製品が現状最大の浮力が発生する製品より大きな浮力が必要となった場合には、重りの重量アップが必要となるとともに、重り移し替え装置および重りを載せたい鋳型の搬送装置まで出力アップする必要がある。さらに、上鋳型101上に重り102があり、該重り102にも湯口103用の孔104が必要であるため、該湯口103の位置が変更できないなどの短所がある。
【0005】
一方、図7〜9に示される金枠クランプ方式では、上下鋳型201、204の上下金枠202、205をクランプ203により機械的に連結するため、製品種類に関係なく、注湯時の浮力の変動に対応でき、またさらに大きな浮力が発生する製品でも、移し替え装置や搬送装置の変更および改良を必要としない。また、上鋳型201の上面は何もない状態であるため、湯口207の位置を自由に変更できるなどの長所もあった。
【0006】
しかし、鋳型中央部に押さえがなく、鋳型そのものの強度が注湯時の浮力に耐えられなければ鋳型の割れなどによる製品不良になるという短所がある。
【0007】
これに対し、窓枠状の型枠内に桟部材を固着して多数の空間を画成した格子状の型枠フレームと、該型枠フレームの対応両側部にその上端部を回転可能にして吊設したフック状の連結部材とからなる上下鋳型のクランプ装置がある(特許文献1参照)。また、前記型枠フレームには、前記連結部材の回転方向規制のためのストッパが設けられているとともに、下鋳型には、突起が設けられている。この特許文献1記載のクランプ装置における連結部材は、前記ストッパにより、回転方向が規制されているため、クランプ装置を上鋳型の上から該上鋳型に載せると、該連結部材のフック部の下部面が突起に当接し、鋳型側面に沿って一旦非係合側に開いたのち、該突起側に回転して該突起にフック部が係合できるようにされている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−156487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献1記載のクランプ装置では、型枠フレームにストッパがあり、連結部材は、該連結部材のフック部の下部面が突起に当接したのち、鋳型側面に沿って開くようにされているため、クランプ装置を上鋳型に載せるときに、連結部材の下部面と突起との当接位置がずれないように注意して位置決めする必要がある。また、クランプ装置を上鋳型に載せるスピードが速すぎると、連結部材の下部面が突起に当接する衝撃は大きくなり、連結部材の回転部や突起を変形させるおそれがあるため、クランプ装置を載置するスピードを上げるのが難しい。このため、鋳型へのクランプ作業の効率を向上させるのが難しい。
【0010】
そこで、本発明は、叙上の事情に鑑み、上鋳型の浮き上がりを防止するとともに、鋳型へのクランプ作業の効率を向上させることができる鋳型クランプ治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の鋳型クランプ治具は、鋳型造型設備において、上鋳型と下鋳型を型合せした鋳型のキャビティーに注湯するときに、下鋳型に対して上鋳型の浮き上がりを防止する鋳型クランプ治具であって、前記上鋳型の上部に載置される上鋳型押さえフレーム部材と、該上鋳型押さえフレーム部材の両端部に前記鋳型の側部側に向かって回動自在に連結するとともに、自由先端部に係合部が形成されるクランプ部材とを具備してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上鋳型押さえフレーム部材を上鋳型の上部に載置させたのち、クランプ部材を鋳型(上下鋳型)の側部側に回動させて、そのまま係合部を下鋳枠に係合させることにより、重り方式のように上鋳型中央部を押さえ、かつ、金枠クランプ方式のように注湯時の浮力の変動に対応して、上鋳型の浮き上がりを防止することができる。また、鋳型へのクランプ作業に際し、クランプ部材を鋳型の側部側に向かって回動させるだけで良いので、クランプ作業の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて本発明の鋳型クランプ治具を説明する。本発明の鋳型クランプ治具は、鋳型造型設備において、上鋳型と下鋳型を型合せした鋳型のキャビティーに注湯するときに、下鋳型に対して上鋳型の浮き上がりを防止する鋳型クランプ治具であって、いわば鋳型を直接押さえる重錘としての機能と、上鋳枠と下鋳枠とを機械的に連結する機能を有しており、図1〜3に示されるように、本発明の一実施の形態にかかわる鋳型クランプ治具Aは、上鋳型F1の上部に載置される上鋳型押さえフレーム部材1と、該上鋳型押さえフレーム部材1の両端部1aに回動自在にされるとともに、下鋳型F2の下鋳枠F2aの側端部2に係合するクランプ部材3とを具備している。
【0014】
前記上鋳型押さえフレーム部材1とクランプ部材3との連結構造は、該クランプ部材3を回動可能にするものであれば、本発明において、とくに限定されるものではないが、本実施の形態では、該上鋳型押さえフレーム部材1の両端部1aに設けられる一対の軸受部4と、該軸受部4に軸支される軸5とからなる連結構造にされている。そして、本実施の形態では、該軸5に前記クランプ部材3の厚肉部にされた一端部3aに形成される円筒孔6を挿通して、一対のクランプ部材3は、それぞれ前記上鋳型押さえフレーム部材1の端部1aに回動自在にされている。
【0015】
前記クランプ部材3の自由先端部である他端部3bには係合部が形成されている。該係合部は、前記下鋳枠F2aの側端部2に係合する形状であれば、本発明において、とくに限定されるものではないが、本実施の形態では、フック形状の爪7にされている。
【0016】
なお、本実施の形態における上鋳型押さえフレーム部材1の形状は、平板にされているが、本発明において、とくに限定されるものではなく、たとえば所定の開口部を有する格子状の平板など適宜選定することができる。また、前記クランプ部材3の形状についても、自由先端部である他端部3bに形成される爪7の幅を広くしたり、本体部を逆T字状にして他端部3bに形成される爪7の個数を2個にする形状など適宜選定することができる。
【0017】
本実施の形態では、たとえば生砂枠付造型設備の造型機により、上鋳枠F1aと下鋳枠F2a内に造型された上鋳型F1と下鋳型F2を該設備の造型ラインの各種装置により、該上鋳枠F1aと下鋳枠F2aを合わせ、かつ一対のレール11上を走行する定盤台車12に載せて注湯を行う場所の手前まで搬送する。
【0018】
ついで、搬送されてきた上下鋳型F1、F2のうち、該上鋳型F1の上部に鋳型クランプ治具Aの上鋳型押さえフレーム部材1を載置したのち、クランプ部材3を鋳型(上鋳型F1と下鋳型F2)の側部側Hに回動して、爪7を下鋳枠F2aの側端部2に係合させる。
【0019】
ついで、前記鋳型クランプ治具Aをセット完了した鋳型を載せた定盤台車12を注湯機に搬送し、該鋳型に形成されるキャビティーへの注湯作業を行う。
【0020】
本実施の形態では、鋳型クランプ治具Aを鋳型に載せた状態で、可動式のクランプ部材3の爪7を下鋳枠F2aの側端部2に係合し、該下鋳枠F2を把持することにより、上鋳枠F1の浮き上がりを防止している。
【0021】
また、上鋳枠F1aと下鋳枠F2aを機械的に連結しているため、鋳造する製品が変わり、上鋳型F1を浮き上がらせる浮力が変わっても上鋳型F1の浮き上がりを防止することができる。また、上鋳型F1の中央部を押さえているため、鋳型そのものの強度が弱くても鋳型の割れなどの発生を防止することもできる。
【0022】
さらに、中央部以外においても上鋳型F1の上部を押さえる必要がある場合も、上鋳型F1の上部を押さえる上鋳型押さえフレーム部材1の形状を変更することで対応が可能である。また、上鋳型F1の上部を押さえる上鋳型押さえフレーム部材1の形状を変更することで、ある程度湯口21の位置を自由に変更することもできる。
【0023】
また、本実施の形態の鋳型クランプ治具Aを用いることにより、既に設置されている鋳型造型設備において、重り方式を採用している設備では、既存の重り移し替え装置の若干の改良を施して対応することができる。
【0024】
なお、本実施の形態は、生砂枠付造型設備に用いられる鋳型クランプ治具について説明したが、本発明の鋳型クランプ治具は、これに限定されるものではなく、無枠造型設備にも用いることができる。かかる無枠造型設備に用いる場合、たとえば前記鋳型を載せている定盤台車12の側端部12aに爪7を係合させる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態にかかわる鋳型クランプ治具の正面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】従来の重り方式による上鋳型の浮き上がり防止状態を示す正面図である。
【図5】図4の右側面図である。
【図6】図4の平面図である。
【図7】従来の金枠クランプ方式による上鋳型の浮き上がり防止状態を示す正面図である。
【図8】図7のI−I線断面図である。
【図9】図7の平面図である。
【符号の説明】
【0026】
A 鋳型クランプ治具
F1 上鋳型
F1a 上鋳枠
F2 下鋳型
F2a 下鋳枠
H 側部側
1 上鋳型押さえフレーム部材
1a 端部
2 側端部
3 クランプ部材
3a 一端部
3b 他端部
4 軸受部
5 軸
6 円筒孔
7 爪
11 レール
12 定盤台車
12a 側端部
21 湯口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型造型設備において、上鋳型と下鋳型を型合せした鋳型のキャビティーに注湯するときに、下鋳型に対して上鋳型の浮き上がりを防止する鋳型クランプ治具であって、
前記上鋳型の上部に載置される上鋳型押さえフレーム部材と、
該上鋳型押さえフレーム部材の両端部に前記鋳型の側部側に向かって回動自在に連結するとともに、自由先端部に係合部が形成されるクランプ部材
とを具備してなる鋳型クランプ治具。
【請求項2】
前記係合部が爪である請求項1記載の鋳型クランプ治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−313516(P2007−313516A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142850(P2006−142850)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】