説明

鋼材端面の位置決め方法およびストッパー設備

【課題】鋼材の端面をストッパーに当接させて位置決めするに際し、鋼材がストッパーに実際に当接している状態を確実に、しかも耐久性を有して安定的に検知できる方法と、それに使用するストッパー設備を提供する。
【解決手段】搬送されてくる鋼材の端面をストッパーに当接させて位置決めするに際し、鋼材の端面が実際にストッパーに当接したことを電気的に検出することにより、鋼材の位置決めを行う鋼材端面の位置決め方法。および、鋼材の端面が当接する部位に周囲と電気的に絶縁した電極子を設け、鋼材の端面が前記電極子に当接したときに、鋼材と該電極子との間が通電状態であることを検出する装置を設けたストッパー設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材端面の位置決め方法と、それに使用するストッパー設備に関わり、例えば棒鋼の長さを定尺に切断するときの棒鋼先端のストッパーへの当接状態を確実に検知する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、製造工程から搬送されてくる棒鋼の長さを定尺に切断するときには、移動する棒鋼先端を定位置に設置したストッパーに当接させて停止させ、剪断機や鋸断機等の切断機により切断するのが一般的である。この場合、精度良く定尺に切断するには、切断時に棒鋼先端がストッパーに確実に当接している必要があるが、棒鋼を搬送設備によりストッパーに当接させる際、搬送作業の不具合により棒鋼端面がストッパーに到達していなかったり、到達したとしても衝突力の反動による跳ね返りにより当接状態を維持できず、切断時に実際には当接していないことがある。
【0003】
このような非当接状態を防止する対策として、例えば特許文献1には、ストッパーに振動計を設け、この振動計が振動を検知したときに条材がストッパーに当接したことを検知する技術が開示されている。しかし、この技術では、条材がストッパーに衝突した瞬間は検知できるものの、現に当接している状態を検知できない問題がある。
他の技術として、例えば特許文献2には、ストッパーの当接部に突出したストライカーを設け、材料が当接することによってストライカーを移動させ、この移動を近接スイッチにより検出する技術が開示されている。しかし、この技術では、材料端面の形状によっては、ストライカーに当接しないという問題があると共に、材料が繰り返し衝突するストッパーに可動部たるストライカーと、電子部品たる近接スイッチが設けられているために、耐久性に劣る問題がある。
以上のとおり、従来の技術では、鋼材がストッパーに実際に当接している状態を確実に、しかも耐久性を有して安定的に検知するには不十分であり、鋼材の高精度の定尺切断を実現する上で重要な問題となっていた。
【特許文献1】特開2001−259926号公報
【特許文献2】実開平6−41904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の実情に鑑み、本発明は、鋼材の端面をストッパーに当接させて位置決めするに際し、鋼材がストッパーに実際に当接している状態を確実に、しかも耐久性を有して安定的に検知できる方法と、この方法を効果的に実施するためのストッパー設備を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、搬送されてくる鋼材端面がストッパーに実際に当接している状態を検知する手段として、前掲した従来技術の振動計方式やストライカー方式に代えて、鋼材端面とストッパー間の電気的接続状態を検知することが、確実かつ安定した鋼材の位置決めを実現し得たことを知見し、本発明を完成したものである。
【0006】
すなわち、上記課題を達成するための本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)搬送されてくる鋼材の端面をストッパーに当接させて位置決めするに際し、鋼材の端面が実際にストッパーに当接したことを電気的に検出することにより、鋼材の位置決めを行うことを特徴とする鋼材端面の位置決め方法。
(2)鋼材の端面がストッパーに当接したことを電気的に検出する手段は、ストッパーの
被当接部に周囲と電気的に絶縁した電極子を設け、鋼材の端面が前記電極子に当接したときに、鋼材の端面と該電極子との間が通電状態であることを検知するものであることを特徴とする(1)記載の鋼材端面の位置決め方法。
(3)複数の鋼材の端面を同期して一つのストッパーに当接させて位置決めするものであって、個々の鋼材の端面が各々個別にストッパーに実際に当接したことを電気的に検出するものであることを特徴とする(1)または(2)記載の鋼材端面の位置決め方法。
(4)請求項1乃至3のいずれかに記載の鋼材端面の位置決め方法により位置決めされた鋼材を、定尺に切断することを特徴とする鋼材の定尺切断方法。
(5)搬送されてくる鋼材の端面を位置決めするストッパー設備であって、鋼材の端面が当接する部位に周囲と電気的に絶縁した電極子をストッパーに設け、鋼材の端面が前記電極子に当接したときに、鋼材と該電極子との間が通電状態であることを検出する装置を設けたことを特徴とするストッパー設備。
(6)電極子は、電流検出器を介して電源の一極と接続し、鋼材は、鋼材の搬送設備、およびアースを介して前記電源の他極と電気的に接続したことを特徴とする(5)記載のストッパー設備。
(7)一つのストッパーに複数個の電極子を設け、個々の電極子が各々個別に電流検出器を介して電源の一極と接続し、鋼材は、鋼材の搬送設備、およびアースを介して前記電源の他極と電気的に接続したことを特徴とする(5)または(6)記載のストッパー設備。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る位置決め方法によれば、鋼材がストッパーに実際に当接している状態を継続的に、しかも耐久性を有して安定的に検知できるから、例えば棒鋼の長さを常に安定して精度よく定尺に切断できる効果を奏する。また、本発明のストッパー設備によれば、前記方法を最も有効に実施することができ、鋼材の高精度の定尺切断作業を行うことを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、鋼材端面とストッパーとが電気的に接続状態にあることを検知することによって、両者が当接状態にあることを検知することを基本技術とするものであり、ストッパーにおける被当接部を周囲と電気的に絶縁することにより、一ストッパーに複数の被当接部を設けて、それぞれの被当接部に鋼材端面が同時に当接しても個別に電気的に接続状態にあることを検知可能とするものである。
【0009】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態例として、条鋼材の当接の検知方法を説明する図である。
例えば、製造工程から切断工程へ送られてくる条鋼材1は、導電体である棒鋼や形鋼等であり、搬送ローラー2により軸方向に搬送される。切断工程においては、予め設定された位置にストッパー3が設けられており、条鋼材1の先端面が該ストッパー3の正面に設けた電極子4に当接するように構成されている。ストッパー3は搬送ライン上に昇降自在に設けられ、必要時のみ上昇(又は下降)すればよく、また切断長さの変更・調整のためその位置を移動可能とすることができる。電極子4は導電体であり、絶縁体5により周囲と電気的に絶縁されており、電源6の一極に接続されている。電源の前記一極とは別の極は電流検出器7を介してアースに接続されている。また、搬送ローラー2は、軸受け箱等を介して電気的にアースに接続されている。
【0010】
図1において、条鋼材1の先端がストッパー3の電極子4に当接すると、電源6〜電極子4〜条鋼材1〜搬送ローラー2〜アース〜電流検出器7〜電源6の電流回路が成立することから、その電流を電流検出器7にて検出することにより、条鋼材端面とストッパー3の電極子4が当接していることが検知できる。
ストッパー3の電極子4は、導電体であることは勿論であるが、耐衝撃性、耐摩耗性、耐熱性を有している材質とするのが好ましく、例えば素材は一般構造用鋼とし耐摩耗性向上のため表面を硬化肉盛したものが採用される。絶縁体5は非導電体であることは勿論であるが、これも耐衝撃性を有している材質とするのが好ましく、例えばエンジニアリングプラスチックが採用される。
尚、図において、8は剪断装置、10は剪断開始前の条鋼材1の先端位置を正確にトラッキングするため適宜の搬送ローラー2に取り付けたロータリーエンコーダ、11は剪断装置8、ロータリーエンコーダ10および前記電流検出器7にそれぞれ接続したコントローラーであり、ロータリーエンコーダ10および電流検出器7からの入力信号により、搬送ローラー2の速度制御と、その駆動停止・開始および剪断開始の指示を出力する。
【0011】
図2は、他の一実施形態例として、複数の条鋼材(図では棒鋼を示す)1を並列させて搬送し、全棒鋼の先端を一つのストッパー3に当接させて同時に定尺の長さに切断する場合を示している。
切断機として剪断機8が設置してある。搬送ローラー2は、軸方向に一定のピッチで複数の溝を設けた溝付きローラーである。ストッパー3の当接面には、各棒鋼が当接する溝付きローラーの溝ピッチと同一間隔の部位に、個別に図1に示す電極子4および絶縁体5が配設してあり、それぞれの電極子毎に図1に示すように電源6と電流検出器7が接続されている。このように構成することにより、複数の棒鋼を同時に切断する場合でも、各々の棒鋼の端面が個別にストッパーの電極子に当接していることが検知され、全棒鋼がストッパーの電極子に当接していることを検知した状態で、同時に切断することにより、全棒鋼を精度良く定尺に切断することができる。なお、9は材料検出センサーであり、剪断エリアに入ってきた条鋼材の先端を検出し、ストッパーに当接する前の条鋼材の搬送速度を減速制御するための開始信号を出力する。
【0012】
図1および図2により、本発明による条鋼材の位置決めと切断作業について詳述する。
搬送ローラー2により剪断装置8に進入してきた条鋼材1に対して、材料検出センサー9が条鋼材先端により遮られた信号により先端位置を認識し、その後搬送ローラー2の回転数を搬送ローラー軸に接続されたロータリーエンコーダ10により測定し、この回転数と搬送ローラー径および経過時間により現在の先端位置をコントローラー11によりトラッキングしながら、ストッパー3手前の任意の位置で低速度への減速を搬送ローラー2に対して指示する。
【0013】
低速で搬送されてくる条鋼材1がストッパー3の前面に設置されている電極子4に当接すると、電源6からの電流が、当接前は電流回路が成立せずに非通電であった状態から、電極子4から条鋼材1への流れることにより、電極子4と条鋼材1及び搬送ローラー2が連続しアースと繋がる事で1つの閉回路となり通電状態となる。このときの電流の流れを電流検出器7で検出してコントローラー11に出力し、この信号に基づきコントローラー11が1本又は全ての条鋼材が当接したかを判断して、その当接状態が一定時間経過後、搬送ローラー2に停止指示、及び剪断装置8へ剪断指示を出力する。尚、通電状態が非通電状態になったときは、当接状態が何らかの要因(跳ね返りなど)で非当接状態になったものと判断し、直ちに搬送ローラーを駆動し再度ストッパーに条鋼材を当接させて、上記と同様の操作を繰り返せばよい。
剪断完了後はストッパー3が昇降装置の動作により上昇退避し、再度搬送ローラー2を回転させることで条鋼材を次工程へ送出す。
上記の説明からもわかるように、条鋼材がストッパーに当接しないと電流回路が成立しないため、誤検出がなく正確かつ確実に位置決めができ、所定の長さに精度よく条鋼材を剪断することができる。
【0014】
尚、上記実施の形態では、棒鋼の剪断設備に本発明を適用した場合を例にとったが、電流が流れる回路が成立すれば当接状態を検出できるため、導電体であればいかなる先端形状の鋼材であっても、また、どのような搬送形態でも適用できる。例えば、棒鋼以外のビレットやH型鋼など他の条鋼材の切断設備に本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態例である条鋼材端面のストッパーへの当接検知方法の説明図である。
【図2】本発明の他の一実施形態例である複数の棒鋼の剪断方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0016】
1 条鋼材 2 搬送ローラー
3 ストッパー 4 電極子
5 絶縁体 6 電源
7 電流検出器 8 剪断装置
9 センサー 10 ロータリーエンコーダ
11 コントローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されてくる鋼材の端面をストッパーに当接させて位置決めするに際し、鋼材の端面が実際にストッパーに当接したことを電気的に検出することにより、鋼材の位置決めを行うことを特徴とする鋼材端面の位置決め方法。
【請求項2】
鋼材の端面がストッパーに当接したことを電気的に検出する手段は、ストッパーの被当接部に周囲と電気的に絶縁した電極子を設け、鋼材の端面が前記電極子に当接したときに、鋼材の端面と該電極子との間が通電状態であることを検知するものであることを特徴とする請求項1記載の鋼材端面の位置決め方法。
【請求項3】
複数の鋼材の端面を同期して一つのストッパーに当接させて位置決めするものであって、個々の鋼材の端面が各々個別にストッパーに実際に当接したことを電気的に検出することを特徴とする請求項1または2記載の鋼材端面の位置決め方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の鋼材端面の位置決め方法により位置決めされた鋼材を、定尺に切断することを特徴とする鋼材の定尺切断方法。
【請求項5】
搬送されてくる鋼材の端面を位置決めするストッパー設備であって、鋼材の端面が当接する部位に周囲と電気的に絶縁した電極子をストッパーに設け、鋼材の端面が前記電極子に当接したときに、鋼材と該電極子との間が通電状態であることを検出する装置を設けたことを特徴とするストッパー設備。
【請求項6】
電極子は、電流検出器を介して電源の一極と接続し、鋼材は、鋼材の搬送設備、およびアースを介して前記電源の他極と電気的に接続したことを特徴とする請求項5記載のストッパー設備。
【請求項7】
一つのストッパーに複数個の電極子を設け、個々の電極子が各々個別に電流検出器を介して電源の一極と接続し、鋼材は、鋼材の搬送設備、およびアースを介して前記電源の他極と電気的に接続したことを特徴とする請求項5または6記載のストッパー設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−149425(P2008−149425A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341258(P2006−341258)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】