説明

鋼管立設用架台及びそれを用いた鋼管立設構造

【課題】鋼管の据付安定性を低下させることなく、該鋼管の鉛直精度や水平2方向に沿った位置決め精度を十分に確保しかつ鋼管の下端を十分な強度で架台に仮固定する。
【解決手段】本発明に係る鋼管立設構造1を構成する鋼管立設用架台3は、深礎杭2を構築する際の打継ぎコンクリート表面6に立設される計4つの束材22と、該束材に架け渡される架台本体21とで構成してある。架台本体21は、H形鋼27の中央近傍を接合領域として該接合領域の各側方にH形鋼28とH形鋼29をそれぞれ直交方向から溶接して構成してあり、上記接合領域を除くH形鋼27の一方の端部領域30、他方の端部領域31、H形鋼28及びH形鋼29は、材軸が互いに直交するようにかつ該材軸が架台中心から放射方向に延びるように配置された4つの鋼管載置部をそれぞれ構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として鋼管・コンクリート複合構造橋脚を構成する鋼管の立設時に適用される鋼管立設用架台及びそれを用いた鋼管立設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
橋脚を構築する際、通常の鉄筋コンクリート(以下、RC)構造では、その高さが高くなればなるほど、配筋作業や型枠の組立及び解体に時間や手間がかかるため、RC構造に代えて、鋼管・コンクリート複合構造が採用されることも少なくない。
【0003】
かかる鋼管・コンクリート複合構造を構築するにあたっては、まず、鋼管を先行して立設し、次いで、該鋼管の周囲において鉄筋の組立やPCストランドの巻付けを行うとともに型枠を建て込み、しかる後、型枠と鋼管との間にコンクリートを打設する。
【0004】
このような鋼管・コンクリート複合構造によれば、急速施工が可能でしかも鋼管による耐震性の向上を図ることが可能となる。
【0005】
鋼管を立設するにあたっては、その鉛直精度を十分に確保しながら、該鋼管の下端をしっかりと固定しなければならないが、地盤の支持層が浅いときには、該支持層を露出させた上、その上にベタ基礎を構築して該ベタ基礎に所要の埋込み深さで鋼管の下端を固定する方法や、地盤の支持層が深いために杭が必要な場合、例えば深礎杭を構築して該深礎杭に所要の埋込み深さで鋼管の下端を固定する方法がある。
【0006】
ベタ基礎や深礎杭といったRC基礎に鋼管の下端を固定するには、鉄骨部材からなる架台をRC基礎の構築予定領域に予め設置し、次いで、該架台の上に鋼管を立設するとともに該鋼管の水平2方向に沿った据付精度と鉛直精度が十分に確保されるように調整を行い、しかる後、コンクリートを打設してRC基礎を構築する。
【0007】
このようにすれば、鋼管の下端を所望の埋込み深さだけRC基礎に埋設された状態で鋼管を立設することが可能となり、鋼管基部における固定強度と設置精度の両方を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2591422号公報
【特許文献2】特許第2536395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、従来においては図4に示すように、2本の架台101,101をそれらが互いに平行になるように敷き並べた後、鋼管102の下方端面のうち、互いに反対側に位置する2ヶ所を支持部位とし該支持部位が各架台101の上にそれぞれ載るように該鋼管を架台101,101の上に立設するとともに、上述した2つの支持部位と各架台101の上面との間にキャンバーと呼ばれる楔状部材を必要に応じて適宜打ち込むことにより、鋼管102の鉛直精度、いわゆる建ちの精度調整を図っていた。
【0010】
ここで、2本の架台101,101の離間距離L(外寸法)は、鋼管102の据付安定性という観点では、該鋼管の外径寸法Dと概ね等しくとるのが望ましい。
【0011】
しかしながら、そのことによって、2本の架台101,101に対する鋼管102の支持部位が互いに反対側に位置する2ヶ所、円筒断面であれば0゜と180゜の角度に位置する2ヶ所となり、その結果、架台101,101の敷設方向に直交する方向(以下、Y′方向)では、比較的容易に鉛直精度を調整することができるものの、架台の敷設方向(以下、X′方向)においては、鉛直精度の調整が難しいという問題を生じていた。
【0012】
すなわち、Y′方向であれば、一方の架台101とそれに載せられている鋼管102の支持部位との間にキャンバーを打ち込むことで、2つの支持部位の離間距離、すなわち鋼管102の外径Dに対するキャンバーの厚みという形で傾斜角度を微調整することができるのに対し、X′方向については、架台101の上面に当接ないしは対向する支持部位の長さ範囲Hが短いため、わずかな厚みの変化であっても、傾斜角度が大きく変動してしまい、結果としてX′方向については鉛直精度の調整がきわめて難しくなる。
【0013】
また、X′方向に沿った位置決めは、2本の架台101,101と直交するように該架台に山形鋼等で構成された位置決め部材103を精度よく架け渡し、かかる位置決め部材103に鋼管102の周面をあてがうことで行っていたが、2本の架台101,101に架け渡してある関係上、位置決め部材103がX′方向に撓んで当接位置にずれが生じ、そのためにX′方向の据付け精度が悪くなるという問題も生じていた。
【0014】
また、Y′方向に沿った位置決めは、例えば山形鋼で構成した位置決め部材105を架台101の上面に設置して該位置決め部材に鋼管102の周面をあてがって行っていたが、上述したように2本の架台101,101の離間距離Lを鋼管の外径寸法Dと同程度に設定してある状況では、かかる位置決め部材105の設置スペースを架台101上に確保できない場合が生じる。
【0015】
さらに、X′方向及びY′方向の据付位置が決定した後、平面形状が直角三角形をなす仮固定部材104をその直角を挟む2つの縁部が架台101の上面と鋼管102の周面にそれぞれあてがわれるように配置し、かかる状態で該2つの縁部に沿って溶接を施すことにより、仮固定部材104を介して鋼管102の下端を架台101に仮固定していたが、位置決め部材105と同様な理由により、架台101上に十分な設置スペースを確保することが困難である。
【0016】
上述したさまざまな問題は、2本の架台101,101の離間距離Lを小さくすればある程度解決可能であるが、その分、鋼管102の据付安定性が低下するという別の問題を生じる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、鋼管の据付安定性を低下させることなく、該鋼管の鉛直精度や水平2方向に沿った位置決め精度を十分に確保しかつ鋼管の下端を十分な強度で架台に仮固定することが可能な鋼管立設用架台及びそれを用いた鋼管立設構造を提供することを目的とする。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明に係る鋼管立設用架台は請求項1に記載したように、RC基礎を構築する際の打継ぎコンクリート表面又はRC基礎を構築する前に該RC基礎と地盤との境界面に設けられる捨てコンクリート表面に立設される束材と、該束材に架け渡される架台本体とで構成され、該架台本体に、材軸が互いに直交するようにかつ該材軸が架台中心から放射方向に延びるように配置された4つの鋼管載置部を備えたものである。
【0019】
また、本発明に係る鋼管立設用架台は、第1のH形鋼の中央近傍を接合領域として該接合領域の各側方に第2のH形鋼と第3のH形鋼をそれぞれ直交方向から接合し、前記接合領域を除く前記第1のH形鋼の一方の端部領域を前記4つの鋼管載置部のうちの第1の鋼管載置部、他方の端部領域を第2の鋼管載置部とするとともに、前記第2のH形鋼を第3の鋼管載置部、前記第3のH形鋼を第4の鋼管載置部としたものである。
【0020】
また、本発明に係る鋼管立設構造は請求項3に記載したように、鋼管を所定の鋼管立設用架台に載置するとともに該鋼管立設用架台とともに前記鋼管の下端をRC基礎に埋設固定した鋼管立設構造において、
前記鋼管立設用架台を、前記RC基礎を構築する際の打継ぎコンクリート表面又は前記RC基礎を構築する前に該RC基礎と地盤との境界面に設けられる捨てコンクリート表面に立設される束材と、該束材に架け渡される架台本体とで構成するとともに、該架台本体に、材軸が互いに直交するようにかつ該材軸が架台中心から放射方向に延びるように配置された4つの鋼管載置部を備えたものである。
【0021】
また、本発明に係る鋼管立設構造は、第1のH形鋼の中央近傍を接合領域として該接合領域の各側方に第2のH形鋼と第3のH形鋼をそれぞれ直交方向から接合し、前記接合領域を除く前記第1のH形鋼の一方の端部領域を前記4つの鋼管載置部のうちの第1の鋼管載置部、他方の端部領域を第2の鋼管載置部とするとともに、前記第2のH形鋼を第3の鋼管載置部、前記第3のH形鋼を第4の鋼管載置部としたものである。
【0022】
本発明に係る鋼管立設用架台においては、コンクリート表面に束材を立設するとともに該束材に架台本体を架け渡し、しかる後、該架台本体に備えられた4つの鋼管載置部に鋼管を載置するが、かかる鋼管載置部は、それらの材軸が互いに直交するようにかつ該材軸が架台中心から放射方向に延びるように配置してある。
【0023】
そのため、鋼管の中心が架台中心に概ね一致するように該鋼管を鋼管載置部に載せると、鋼管の下端端面は、概ね90゜ごとに各鋼管載置部にそれぞれ載置されることとなり、かくして鋼管は、水平2方向のうち、いずれの方向においても、鋼管径を支点間距離として安定的に支持される。
【0024】
また、互いに直交する2本の水平軸線廻りの鉛直精度は、鋼管径を十分に利用しながら、互いに対向する2組の鋼管載置部でそれぞれ個別に調整することが可能となる。
【0025】
RC基礎としては、杭基礎とベタ基礎のいずれでもよいが、杭基礎の場合には、適当な打継ぎ高さにおいてその打継ぎコンクリート表面に束材を立設し、ベタ基礎の場合には、捨てコンクリートの上に束材を立設する。
【0026】
束材は、いわゆる、あと施工アンカーを適宜用いてコンクリート表面に固定すればよい。あと施工アンカーとしては、例えばケミカルアンカー(登録商標、以下省略)等の接着系アンカーを採用することができる。
【0027】
なお、束材は、山形鋼等の鋼材を適宜組み合わせて構成することが可能である。
【0028】
4つの鋼管載置部は、それらの材軸が互いに直交するようにかつ該材軸が架台中心から放射方向に延びるように配置される限り、その具体的構成は任意であるが、例えば、第1のH形鋼の中央近傍を接合領域として該接合領域の各側方に第2のH形鋼と第3のH形鋼をそれぞれ直交方向から接合し、前記接合領域を除く前記第1のH形鋼の一方の端部領域を前記4つの鋼管載置部のうちの第1の鋼管載置部、他方の端部領域を第2の鋼管載置部とするとともに、前記第2のH形鋼を第3の鋼管載置部、前記第3のH形鋼を第4の鋼管載置部とすることができる。
【0029】
かかる構成においては、4つの鋼管載置部は全体として平面形が十字状となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係る鋼管立設構造を示した図であり、(a)は全体正面図、(b)はA−A線方向から見た矢視図。
【図2】本実施形態に係る鋼管立設用架台を示した図であり、(a)は側面図、(b)はB−B線方向から見た矢視図。
【図3】変形例に係る鋼管立設構造を示した図であり、(a)は全体正面図、(b)はC−C線方向から見た矢視図。
【図4】従来技術を示した図であり、(a)は正面図、(b)はD−D線方向から見た矢視図、(c)はE−E線方向から見た矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る鋼管立設用架台及びそれを用いた鋼管立設構造の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0032】
図1は、本実施形態に係る鋼管立設構造を示した図である。同図でわかるように、本実施形態に係る鋼管立設構造1は、鋼管4を鋼管立設用架台3に載置するとともに、該鋼管立設用架台とともに鋼管4の下端をRC基礎である深礎杭2に埋設固定してあり、かかる鋼管4は、その周囲に構築されるコンクリート躯体とともに、鋼管・コンクリート複合構造橋脚5を形成する。
【0033】
ここで、鋼管4は計6本立設されており、それぞれが別々の鋼管立設用架台3に載置されている。
【0034】
鋼管立設用架台3は図2でよくわかるように、深礎杭2を構築する際の打継ぎコンクリート表面6に立設される計4つの束材22と、該束材に架け渡される架台本体21とで構成してある。
【0035】
各束材22は、打継ぎコンクリート表面6に載置されるベースプレート23,23と該ベースプレートにそれぞれ下端が溶接される2本の束材本体24,24と該束材本体の頂部に架け渡される架台受け25とから構成してある。
【0036】
ここで、鋼管4の外径を1,400mm程度とした場合、ベースプレート23は例えば150mm角程度の鋼板で、束材本体24は例えば断面がL−75×75×6の山形鋼で、架台受け25は断面がL−75×75×6で長さが50cm程度の山形鋼でそれぞれ構成することができる。束材本体24は、架台本体21と打継ぎコンクリート表面6との間にコンクリートがきちんと充填されるよう、例えばその長さを100mm程度に設定する。
【0037】
架台本体21は、第1のH形鋼であるH形鋼27の中央近傍を接合領域として該接合領域の各側方に第2のH形鋼としてのH形鋼28と第3のH形鋼としてのH形鋼29をそれぞれ直交方向から溶接して構成してあり、上記接合領域を除くH形鋼27の一方の端部領域30、他方の端部領域31、H形鋼28及びH形鋼29は、材軸が互いに直交するようにかつ該材軸が架台中心から放射方向に延びるように配置された4つの鋼管載置部をそれぞれ構成する。
【0038】
すなわち、図2(b)において水平右方向(以下、X方向)を基準として鋼管4の中心から角度をとった場合、H形鋼27の一方の端部領域30は、円筒状をなす鋼管4の下方端面のうち、0゜付近の下方端面を第1の鋼管載置部として支持し、他方の端部領域31は、同じく180゜付近の下方端面を第2の鋼管載置部として支持し、H形鋼28は、同じく90゜付近の下方端面を第3の鋼管載置部として支持し、H形鋼29は、同じく270゜付近の下方端面を第4の鋼管載置部として支持するようになっている。
【0039】
ここで、架台本体21は、H形鋼27の端部領域30,31、H形鋼28及びH形鋼29をそれらの先端近傍で束材22の架台受け25にそれぞれ載せることにより、該束材で支持されるようになっている。
【0040】
H形鋼27の一方の端部領域30には、山形鋼で構成された位置決め部材33を、その一方のフランジの外面が端部領域30の上面に当接されるように該上面に設置してあり、他方のフランジの外面に鋼管4の周面をあてがうことにより、X方向に沿った鋼管4の水平位置を定めることができるようになっている。
【0041】
同様に、H形鋼29には、山形鋼で構成された位置決め部材34を、その一方のフランジの外面がH形鋼29の上面に当接されるように該上面に設置してあり、他方のフランジの外面に鋼管4の周面をあてがうことにより、X方向に直交するY方向(図2(b)参照、以下、単にY方向)に沿った鋼管4の水平位置を定めることができるようになっている。
【0042】
また、平面形状が直角三角形をなす仮固定部材32を、その直角を挟む2つの縁部がH形鋼27の端部領域30,31、H形鋼28及びH形鋼29の各上面と鋼管4の周面にそれぞれあてがわれるように配置することができるようになっており、鋼管4の位置決め終了後、該2つの縁部に沿って溶接を施すことにより、仮固定部材32を介して鋼管4の下端を架台本体21に4ヶ所で仮固定できるようになっている。
【0043】
本実施形態に係る鋼管立設用架台3を用いて鋼管立設構造1を構築するには、まず、深礎杭2を構築する際の打継ぎコンクリート表面6に4つの束材22を立設する。
【0044】
束材22の立設にあたっては、打継ぎコンクリート表面6にベースプレート23を載置し、これをケミカルアンカー26で打継ぎコンクリート表面6に固定した後、ベースプレート23に束材本体24,24の下端をそれぞれ溶接してその上端に架台受け25を架け渡せばよい。
【0045】
次に、4ヶ所に設置された束材22の架台受け25にH形鋼27の端部領域30,31、H形鋼28及びH形鋼29を載せることにより、架台本体21を束材22に架け渡す。
【0046】
束材22及び架台本体21を設置するにあたっては、X,Y方向に沿って位置出しを行うとともに、レベルを用いて架台本体21の水平を出しつつ、作業を進めることになるが、既に硬化した打継ぎコンクリート表面6が設置面であるため、フレッシュコンクリートに束材の下端を予め埋設する場合に比べ、作業性が良好であるとともに、水平2方向に沿った位置出し精度や水平精度を十分に確保することができる。
【0047】
次に、鋼管4の中心が架台中心に概ね位置合わせされるように該鋼管を建て込み、次いで、鋼管4の下方端面をH形鋼27の端部領域30,31、H形鋼28及びH形鋼29の上面にそれぞれ載せることで、鋼管4を架台本体21の上に立設する。
【0048】
ここで、架台本体21は上述したように十分な水平精度で設置されているため、架台本体21に鋼管4を立設したとき、該鋼管の鉛直精度も十分に確保されるが、必要であれば、楔部材であるキャンバーやライナープレートを適宜打ち込む。
【0049】
例えば、Y方向軸線廻りの鉛直精度を調整するのであれば、H形鋼27の端部領域30と鋼管4との間、又はH形鋼27の端部領域31と鋼管4との間にキャンバーやライナープレートを打ち込み、X方向軸線廻りの鉛直精度を調整するのであれば、H形鋼28と鋼管4との間、又はH形鋼29と鋼管4との間にキャンバーやライナープレートを打ち込む。
【0050】
鋼管4の鉛直精度の調整は、鋼管4をトランシットで視準しながら、該鋼管の下方に設置したジャーナルジャッキを駆動して該鋼管の所望の側を持ち上げては、楔部材であるキャンバーやライナープレートを適宜打ち込むようにすればよい。
【0051】
かかる鉛直精度の調整と同時に又は相前後して、H形鋼27の端部領域30の上面とH形鋼29の上面に設置された位置決め部材33,34に鋼管4の周面をあてがい、X,Y2方向に沿った鋼管4の位置決めを行う。
【0052】
鋼管4の建ちの調整及び水平位置の調整が完了したならば、仮固定部材32を用いて鋼管4の下端周面4ヶ所をH形鋼27の端部領域30,31、H形鋼28及びH形鋼29の上面にそれぞれ仮固定する。
【0053】
このようにして鋼管4を立設したならば、その周囲における鉄筋組立作業や型枠建て込み作業の完了を待ってコンクリートを打設し、鋼管立設用架台3とともに鋼管4の下端をコンクリートに埋設する。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る鋼管立設用架台3及びそれを用いた鋼管立設構造1によれば、鋼管4が載置される架台本体21の4つの鋼管載置部、すなわちH形鋼27の端部領域30,31、H形鋼28及びH形鋼29を、それらの材軸が互いに直交するようにかつ該材軸が架台中心から放射方向に延びるように配置したので、鋼管4の下方端面は、概ね90゜ごとに各鋼管載置部にそれぞれ載置される。
【0055】
そのため、鋼管4を、X,Yいずれの方向においても、鋼管4の外径を支点間距離として安定的に支持することができるとともに、楔部材であるキャンバやライナープレートの厚み変化に対し、支点間距離が十分長いため、鉛直精度の微調整をX,Yいずれの方向においても容易に行うことが可能となる。
【0056】
また、本実施形態に係る鋼管立設用架台3及びそれを用いた鋼管立設構造1によれば、架台本体21の鋼管載置部であるH形鋼27の端部領域30,31、H形鋼28及びH形鋼29を上述したように配置したことにより、架台本体21に鋼管4を載置したとき、該鋼管の前方には十分な設置スペースが形成される。
【0057】
したがって、かかる設置スペースを位置決め部材の設置スペースとして活用することで、H形鋼27の一方の端部領域30の上面に位置決め部材33を突設することが可能になり、該位置決め部材に鋼管4の周面をあてがって、X方向に沿った鋼管4の水平位置を確実かつ正確に定めることができる。
【0058】
同様に、H形鋼29の上面に位置決め部材34を突設することが可能となり、該位置決め部材に鋼管4の周面をあてがって、Y方向に沿った鋼管4の水平位置を確実かつ正確に定めることが可能となる。
【0059】
ちなみに、従来においては、平行敷設された2本の架台101,101に長尺の位置決め部材103を架け渡し、該位置決め部材を鋼管102の周面に当接することで位置決めを行っていたところ、長尺であるがゆえに、位置決め部材103が撓みやすく、それが原因で位置決め精度が低下していたが、本実施形態によれば、位置決め部材33,34は、H形鋼27の端部領域30やH形鋼29の各上面に突設してあるため、撓み等に起因して位置出しの精度が低下するおそれがなくなる。
【0060】
また、上述した設置スペースを仮固定部材32の設置スペースとして活用することで、仮固定部材32を介して鋼管4の下端を、H形鋼27の端部領域30,31、H形鋼28及びH形鋼29の上面に溶接で固定することが可能となり、かくして鋼管4の下端を確実に架台本体21に仮固定することが可能となる。
【0061】
本実施形態では、RC基礎が深礎杭2である場合への適用について説明したが、これに代えて、RC基礎がベタ基礎である場合にも本発明を適用することが可能である。
【0062】
図3は、本発明をベタ基礎42に適用した場合の実施形態であり、束材22は、ベタ基礎42と地盤との境界面に設けられる捨てコンクリート表面43に立設してある。
【0063】
本変形例においては、杭基礎2がベタ基礎42に代わる以外、上述の実施形態とほぼ同様の構成であるので、詳細な説明については省略するが、ベタ基礎42の場合、下端筋を配筋する関係上、束材22を長めに形成することにより、架台本体21と捨てコンクリート表面43との間に配筋スペースを確保する。
【0064】
なお、束材22を立設するには、ペースプレート23を捨てコンクリート表面43に固定した後、下端筋を配筋し、次いで、組み立てられた下端筋の隙間から束材本体24,24を挿入してそれらの下端をベースプレート23に溶接し、しかる後、束材本体24,24に架台受け25を架け渡せばよい。
【0065】
また、本実施形態では、楔部材であるキャンバやライナープレートを用いて鋼管4の建ちを調整するようにしたが、束材22は、既に硬化した打継ぎコンクリート表面6や捨てコンクリート表面43に立設されるため、架台本体21の水平精度を確保しやすい。したがって、未硬化のコンクリートに束材の下端を定着する場合に比べ、楔部材であるキャンバやライナープレートを用いる必要性は少なく、場合によっては、これらを用いた建ち調整を省略してもかまわない。
【符号の説明】
【0066】
1,41 鋼管立設構造
2 深礎杭(RC基礎)
3 鋼管立設用架台
4 鋼管
5 鋼管・コンクリート複合構造橋脚
6 打継ぎコンクリート表面
21 架台本体
22 束材
23 ベースプレート(束材)
24 束材本体(束材)
25 架台受け(束材)
27 H形鋼(第1のH形鋼)
28 H形鋼(第2のH形鋼、第3の鋼管載置部)
29 H形鋼(第3のH形鋼、第4の鋼管載置部)
30 H形鋼27の一方の端部領域(第1の鋼管載置部)
31 H形鋼27の他方の端部領域(第2の鋼管載置部)
42 ベタ基礎(RC基礎)
43 捨てコンクリート表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RC基礎を構築する際の打継ぎコンクリート表面又はRC基礎を構築する前に該RC基礎と地盤との境界面に設けられる捨てコンクリート表面に立設される束材と、該束材に架け渡される架台本体とで構成され、該架台本体に、材軸が互いに直交するようにかつ該材軸が架台中心から放射方向に延びるように配置された4つの鋼管載置部を備えたことを特徴とする鋼管立設用架台。
【請求項2】
第1のH形鋼の中央近傍を接合領域として該接合領域の各側方に第2のH形鋼と第3のH形鋼をそれぞれ直交方向から接合し、前記接合領域を除く前記第1のH形鋼の一方の端部領域を前記4つの鋼管載置部のうちの第1の鋼管載置部、他方の端部領域を第2の鋼管載置部とするとともに、前記第2のH形鋼を第3の鋼管載置部、前記第3のH形鋼を第4の鋼管載置部とした請求項1記載の鋼管立設用架台。
【請求項3】
鋼管を所定の鋼管立設用架台に載置するとともに該鋼管立設用架台とともに前記鋼管の下端をRC基礎に埋設固定した鋼管立設構造において、
前記鋼管立設用架台を、前記RC基礎を構築する際の打継ぎコンクリート表面又は前記RC基礎を構築する前に該RC基礎と地盤との境界面に設けられる捨てコンクリート表面に立設される束材と、該束材に架け渡される架台本体とで構成するとともに、該架台本体に、材軸が互いに直交するようにかつ該材軸が架台中心から放射方向に延びるように配置された4つの鋼管載置部を備えたことを特徴とする鋼管立設構造。
【請求項4】
第1のH形鋼の中央近傍を接合領域として該接合領域の各側方に第2のH形鋼と第3のH形鋼をそれぞれ直交方向から接合し、前記接合領域を除く前記第1のH形鋼の一方の端部領域を前記4つの鋼管載置部のうちの第1の鋼管載置部、他方の端部領域を第2の鋼管載置部とするとともに、前記第2のH形鋼を第3の鋼管載置部、前記第3のH形鋼を第4の鋼管載置部とした請求項3記載の鋼管立設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−32680(P2011−32680A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178107(P2009−178107)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】