鋼製スリットダム、これに用いられる礫体捕捉部材及びその取り付け方法
【課題】スリットダム本体に対して礫体捕捉部材を取り付ける場合において、無駄な部材の使用を極力低減することができ、これに伴い材料コストの低減を図ることが可能であるとともに、礫体捕捉部材をスリットダム本体に取り付けるための現場での作業数を低減させることのできる鋼製スリットダムを提供する。
【解決手段】川幅方向に間隔を空けて傾斜して立設された複数の支柱11と、複数の支柱11の互いに対向する側部11aにおいて、当該支柱11の軸方向に沿うとともに河川7の流れ方向に間隔を空けて略平行に配置された二枚のガイドプレート21、23と、川幅方向両側の二枚のガイドプレート21、23間に両端部31aが配置された礫体捕捉部材31とを備える。礫体捕捉部材31は、その上側又は下側の少なくとも何れかに配置された間隔保持部材41を介して上下方向に間隔を空けて複数積み重ねられている。
【解決手段】川幅方向に間隔を空けて傾斜して立設された複数の支柱11と、複数の支柱11の互いに対向する側部11aにおいて、当該支柱11の軸方向に沿うとともに河川7の流れ方向に間隔を空けて略平行に配置された二枚のガイドプレート21、23と、川幅方向両側の二枚のガイドプレート21、23間に両端部31aが配置された礫体捕捉部材31とを備える。礫体捕捉部材31は、その上側又は下側の少なくとも何れかに配置された間隔保持部材41を介して上下方向に間隔を空けて複数積み重ねられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の土石流、流木対策用等として好適に用いられる鋼製スリットダム、これに用いられる礫体捕捉部材及びその取り付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、土石流発生時に河川を流れる巨礫、流木等の礫体が河川下流側へ流出するのを防止するため、図12に示すような鋼製スリットダム101が提案されている。この鋼製スリットダム101は、複数の鋼管部材を組み合わせて形成される骨組構造体としてのスリットダム本体110から構成されている。
【0003】
このスリットダム本体110は、河川107の川幅方向に間隔を空けて構築される堤体103間に配置されるもので、川幅方向に間隔を空けて立設された複数の支柱111と、支柱111に接続された横梁113とを備えている。河川107の上流側から下流側にかけて流れてくる比較的粒径の大きな礫体や流木等は、このスリットダム本体110に衝突することによって捕捉されることになる。
【0004】
ところで、近年においては、家屋等が周囲に多く存在する河川の上流側においてこのような鋼製スリットダムが配置されるケースが増加してきている。このため、保全対象となる下流側の家屋等の安全性を確保する観点から、土石流中に含まれる粒径の小さい中小礫も捕捉可能となるよう礫体捕捉性能を向上させた構造の鋼製スリットダムの提案が望まれている。
【0005】
このような構造の鋼製スリットダムとしては、例えば、特許文献1、2に開示のようなものが提案されている。特許文献1において提案されている鋼製スリットダムは、リングネット、エキスパンドメタル、H形鋼等によって構成される礫捕捉用部材をスリットダム本体に上流側から取り付けることを特徴としている。特許文献2において提案されている鋼製スリットダムは、複数本の縦桟、横桟を格子状に組んで構成される中小礫捕捉部材をスリットダム本体に上流側から取り付けることを特徴としている。
【0006】
何れの文献においても、スリットダム本体に対して礫体捕捉用の部材を取り付けることによって、川幅方向に間隔を空けて立設されている複数の支柱間を通過しようとする礫体をその礫体捕捉用の部材によって捕捉する構造の鋼製スリットダムが開示されており、これによって、鋼製スリットダムの礫体捕捉性能の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−201019号公報
【特許文献2】特開2007−191936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示のH形鋼からなる礫捕捉用部材や特許文献2に開示のような中小礫捕捉部材のような礫体捕捉部材は、何れもスリットダム本体を構成する鋼管部材を上流側から交差して覆うような構造とされている。これは、礫体を捕捉する機能を有する部材がその交差部で二重に用いられていることを意味しており、その分、同機能を有する部材のために無駄な材料が用いられ、材料コストの高騰を招くこととなる。
【0009】
また、特許文献2においては、礫体捕捉用の部材をスリットダム本体に取り付ける構造として、スリットダム本体に取り付けられたブラケットに対して礫体捕捉用の部材をボルトナットにより連結して取り付ける構造や、スリットダム本体に対して直接ボルトナットにより連結して取り付ける構造が開示されている。しかしながら、このような構造の場合、礫体捕捉用の部材をスリットダム本体に取り付ける際に多くの箇所でボルトナットによる連結作業を行う必要があり、現場での作業数が増大してしまうという問題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、スリットダム本体に対して中小礫の捕捉を容易とする礫体捕捉部材を取り付ける場合において、無駄な部材の使用を極力低減することができ、これに伴い材料コストの低減を図ることが可能であるとともに、礫体捕捉部材をスリットダム本体に取り付けるための現場での作業数を低減させることのできる鋼製スリットダム、これに用いられる礫体捕捉部材及びその取り付け方法を提供することとにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上述した課題を解決するために、鋭意検討の末、下記の鋼製スリットダムを発明した。
【0012】
第1発明に係る鋼製スリットダムは、河川の川幅方向に間隔を空けて構築された堤体間に配置される鋼製スリットダムにおいて、前記川幅方向に間隔を空けて傾斜して立設された複数の支柱と、前記複数の支柱の互いに対向する側部において、当該支柱の軸方向に沿うとともに前記河川の流れ方向に間隔を空けて略平行に配置された二枚のガイドプレートと、前記川幅方向両側の前記二枚のガイドプレート間に両端部が配置された礫体捕捉部材とを備え、前記礫体捕捉部材は、その上側又は下側の少なくとも何れかに配置された間隔保持部材を介して上下方向に間隔を空けて複数積み重ねられていることを特徴とする。
【0013】
第2発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明において、前記間隔保持部材は、その上側又は下側の何れか一方の前記礫体捕捉部材にのみ固着されていることを特徴とする。
【0014】
第3発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明又は第2発明において、前記複数の礫体捕捉部材は、その上端側の礫体捕捉部材が下流側の前記ガイドプレートに連結されていることを特徴とする。
【0015】
第4発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明〜第3発明の何れか一つの発明において、前記礫体捕捉部材は、前記流れ方向の両側に前記二枚のガイドプレートと略平行なスライド面を有し、その軸方向回りの回動時において前記流れ方向の両側のスライド面が前記二枚のガイドプレートに同時に接触可能とされていることを特徴とする。
【0016】
第5発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明〜第3発明の何れか一つの発明において、前記礫体捕捉部材は、中空断面の円形管状に形成されるとともに、その両端部が角筒状の外装部材内に配置されて当該外装部材に固着されており、前記外装部材は、前記流れ方向の両側に前記二枚のガイドプレートと略平行なスライド面を有し、前記礫体捕捉部材の軸方向回りの回動時において前記流れ方向の両側のスライド面が前記二枚のガイドプレートに同時に接触可能とされていることを特徴とする。
【0017】
第6発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明〜第5発明の何れか一つの発明において、前記二枚のガイドプレートは、前記礫体捕捉部材の端部を当該二枚のガイドプレート間に上流側から挿入可能とするための挿入口がその上端側に形成されていることを特徴とする。
【0018】
第7発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明〜第6発明の何れか一つの発明において、前記二枚のガイドプレートの下端側において配置された支持部材を更に備え、前記複数の礫体捕捉部材は、その下端側の礫体捕捉部材の端部が前記支持部材により支持されていることを特徴とする。
【0019】
第8発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明〜第7発明の何れか一つの発明において、前記複数の支柱は、前記流れ方向に間隔を空けて列状に複数列立設されるとともに、最上流側のものが上端から下端に向かうにつれて上流側に傾斜して立設され、前記二枚のガイドプレート及び前記礫体捕捉部材は、前記最上流側の複数の支柱に設けられていることを特徴とする。
【0020】
第9発明に係る礫体捕捉部材は、第1発明〜第8発明の何れか一つの発明に係る鋼製スリットダムに用いられることを特徴とする。
【0021】
第10発明に係る礫体捕捉部材の取り付け方法は、第1発明〜第8発明の何れか一つの発明に係る複数の支柱を有するスリットダム本体に対して前記礫体捕捉部材を取り付ける方法であって、前記複数の支柱の互いに対向する側部に配置された二枚のガイドプレート間に前記礫体捕捉部材の両端部を上端側から挿入することを繰り返すことにより、当該礫体捕捉部材を前記間隔保持部材を介して上下方向に間隔を空けて複数積み重ねて配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
第1発明に係る鋼製スリットダムによれば、礫体捕捉部材が損傷した場合に、交換による補修が必要な一部の部材以外は交換することなく補修が完了するため、余計な補修コストの発生を抑えることが可能となる。また、礫体を捕捉する機能を有する部材の無駄な使用が抑えられ、その分、材料コストを抑えることが可能となる。また、複数の支柱を有するスリットダム本体に対する礫体捕捉部材の取り付け作業時において必要となる作業の大半が、礫体捕捉部材の端部を二枚のガイドプレートの上端側から挿入して落下させるといった簡単な作業となっており、礫体捕捉部材を取り付けるための現場での作業数を大幅に低減させることが可能となっている。また、礫体捕捉部材の取り付け作業時に比較的小サイズ、小重量の礫体捕捉部材を一つずつ持ち上げてこの配置作業を行うことになるので、大型、高性能の重機が不要となる。
【0023】
第3発明に係る鋼製スリットダムによれば、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート間に配置される総ての礫体捕捉部材がそのガイドプレートから抜け出るのを防止して安全性を高めることが可能となる。また、複数の礫体捕捉部材のうち、上端側の礫体捕捉部材のみを下流側のガイドプレートに連結するのみでよいため、礫体捕捉部材を取り付けるための現場での作業数を低減させることが可能となっている。
【0024】
第4発明に係る鋼製スリットダムによれば、礫体捕捉部材の端部を二枚のガイドプレート間に挿入して落下させる際に、礫体捕捉部材が回動するのを防止でき、その礫体捕捉部材の配置作業時における作業性を向上させることが可能となる。また、礫体捕捉部材に対して礫体が衝突した際に、その下流側のスライド面が下流側のガイドプレートに面タッチするので、衝撃荷重が局所的ではなく分散して伝達され、ガイドプレートの耐久性を向上させることができる。
【0025】
第5発明に係る鋼製スリットダムによれば、礫体捕捉部材として中空断面の円形管状のものを用いた場合でも、礫体捕捉部材の端部を二枚のガイドプレート間に挿入して落下させる際に、礫体捕捉部材が回動するのを防止でき、その礫体捕捉部材の配置作業時における作業性を向上させることが可能となる。また、礫体捕捉部材に対して礫体が衝突した際に、外装部材の下流側のスライド面が下流側のガイドプレートに面タッチするので、衝撃荷重が局所的ではなく分散して伝達され、ガイドプレートの耐久性を向上させることができる。
【0026】
第6発明に係る鋼製スリットダムによれば、支柱に接続された横梁が二枚のガイドプレートの上端に近接している場合でも、礫体捕捉部材の端部を二枚のガイドプレート間へ挿入する作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る鋼製スリットダムの構成の一例を上流側からみた状態を示す一部横断正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】川幅方向両側のガイドプレートとそのガイドプレート間に配置された礫体捕捉部材との構成を上流側からみた状態を示す正面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】(a)は間隔保持部材が固着されている礫体捕捉部材の構成を示す正面図であり、(b)はそのC−C線断面図である。
【図6】礫体捕捉部材の好ましい断面形状について説明するための側面断面図である。
【図7】礫体捕捉部材の他の断面形状を示す側面断面図である。
【図8】礫体捕捉部材をスリットダム本体に対して取り付ける方法について説明するための側面断面図である。
【図9】礫体捕捉部材をスリットダム本体に対して取り付ける方法について説明するための他の側面断面図である。
【図10】礫体捕捉部材の他の実施形態の構成を上流側からみた状態を示す正面図である。
【図11】図10のD−D線断面図である。
【図12】従来の鋼製スリットダムについて説明するための一部横断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を適用した鋼製スリットダムを実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る鋼製スリットダム1の構成の一例を上流側からみた状態を示す一部横断正面図を示しており、図2は、そのA−A線断面図を示している。
【0030】
鋼製スリットダム1は、河川7の川幅方向に間隔を空けて構築された堤体3間に配置されるものであり、その堤体3間の河床9上には基礎コンクリート5が打設されている。堤体3は、河床9上に構築された剛性に優れた構造体から構成されるものであり、例えば、コンクリート等から構築される。また、堤体3は、この他に、複数の鋼矢板や鋼製セグメント等を組み合わせて筒状構造体や二重壁構造を構築し、その内部に土砂等を充填して構成されていてもよい。また、いわゆるインセム工法のような、現地発生土にセメントを混合して得られるソイルセメントを用いて堤体3を構築してもよいし、堤体3の構造、構築方法は公知のものであれば特に限定するものではない。
【0031】
鋼製スリットダム1は、上下方向や水平方向等に延長されてなる複数の断面円形状の鋼管部材を組み合わせて形成される骨組構造体としてのスリットダム本体10を備えている。図示の例では、河川7の川幅方向に間隔を空けて二つのスリットダム本体10が配置されているが、スリットダム本体10の数については特に限定するものではない。また、スリットダム本体10を構成する鋼管部材は、断面角形状に形成されていてもよい。
【0032】
本実施形態におけるスリットダム本体10は、河川7の川幅方向や流れ方向に間隔を空けて基礎コンクリート5上に立設される複数の支柱11と、支柱11に接続された横梁13とを備えている。本実施形態における支柱11は、川幅方向に間隔を空けて立設されている複数の支柱11を一単位列として、河川7の流れ方向に間隔を空けて列状に複数列立設されている。横梁13は、本実施形態において、河川7の川幅方向や流れ方向に隣り合う支柱11に接続されることによって、それらの支柱11間に架設されている。
【0033】
河川7の上流側に立設された複数の支柱11は、その上端から下端に向かうにつれて河川7の上流側に傾斜するように設けられ、下流側に立設された複数の支柱11は、その上端から下端に向かうにつれて河川7の下流側に傾斜するよう設けられている。各支柱11は、その下端部が基礎コンクリート5内に埋め込み固定されている。
【0034】
支柱11は、その上端部や中間部から川幅方向や流れ方向に隣り合う支柱11に向けて、横梁13の一部を構成する水平部材14が突出されている。水平部材14の先端には環状のフランジ15が固着されている。略同一方向に直列に配置された複数の水平部材14は、互いにフランジ15を当接させたうえでこれらをボルトナット等により固定することによって連結されており、これら直列に配置された複数の水平部材14によって一つの横梁13が構成されている。
【0035】
ここで、本発明に係る鋼製スリットダム1は、複数の支柱11の互いに対向する側部11aにおいて、支柱11の軸方向に沿うとともに、河川7の流れ方向に間隔を空けて略平行に配置された二枚のガイドプレート21、23と、その川幅方向両側の二枚のガイドプレート21、23間に両端部31aが配置された礫体捕捉部材31とを備えている。本実施形態においては、これらの二枚のガイドプレート21、23及び礫体捕捉部材31が、河川7の上流側の複数の支柱11に設けられている。
【0036】
図3は、川幅方向両側のガイドプレート21、23とそのガイドプレート21、23間に配置された礫体捕捉部材31との構成を上流側からみた状態を示す正面図であり、図4は、図3のB−B線断面図である。
【0037】
ガイドプレート21、23は、複数の支柱11の互いに対向する側部11aのそれぞれにつき所定長さのものが二枚配置されており、その川幅方向両側の二枚ずつを合わせた計四枚を一組として配置されている。礫体捕捉部材31は、その川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間において、その上側又は下側の少なくとも何れかに配置されたL形鋼等からなる間隔保持部材41を介して上下方向に間隔を空けて複数積み重ねられている。
【0038】
これら四枚一組のガイドプレート21、23や複数の礫体捕捉部材31は、図1に示すように、一つのスリットダム本体10を構成する複数の支柱11間や、川幅方向に隣り合う複数のスリットダム本体10を構成する複数の支柱11間に配置されている。これによって、複数の礫体捕捉部材31が複数の支柱11間に架設された状態となり、複数の支柱11間を通過しようとする礫体を礫体捕捉部材31に衝突させることによって捕捉することが可能となっている。
【0039】
ガイドプレート21、23は、図3に示すように、その川幅方向の基端部24aが支柱11の側部11aに対して溶接等することによって固着されている。
【0040】
本実施形態に係る鋼製スリットダム1は、この二枚のガイドプレート21、23の下端側において配置された支持部材25を備えている。この支持部材25は、二枚のガイドプレート21、23間に配置される下端側の礫体捕捉部材31の端部31aを下側から支持するものである。本実施形態において支持部材25は、平板状の部材から構成されており、礫体捕捉部材31の端部31aを安定して支持できるようにその上面25aが支柱11の軸方向と直交する方向と略平行に設けられている。支持部材25は、図3に示すように、その川幅方向の基端部25bが支柱11の側部11aに対して溶接等することによって固着されている。
【0041】
礫体捕捉部材31は、本実施形態において、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される複数のもののうち、上端側に位置するものを除いたものが、その上側に配置される間隔保持部材41に対して溶接等により固着されている。また、上端側に位置する一つの礫体捕捉部材31のみが間隔保持部材41に対して溶接等により固着されていないものとされている。以下においては、間隔保持部材41が固着されていない礫体捕捉部材31については礫体捕捉部材31Aとし、間隔保持部材41が固着されている礫体捕捉部材31については礫体捕捉部材31Bとして説明する。
【0042】
図5(a)は、間隔保持部材41が固着されている礫体捕捉部材31Bの構成を示す正面図であり、(b)はそのC−C線断面図である。
【0043】
礫体捕捉部材31は、本実施形態においては、ウエブ部33とウエブ部33の両側に略平行に設けられたフランジ部34とを有する断面H型のH形鋼から構成されている。この礫体捕捉部材31は、図4等に示すように、その流れ方向の両側におけるフランジ部34の外側面であるスライド面36が二枚のガイドプレート21、23と略平行となるように配置される。この礫体捕捉部材31は、図6に示すように、その礫体捕捉部材31の軸方向回りの回動時において、その流れ方向の両側のスライド面36が二枚のガイドプレート21、23に同時に接触可能となるように、その断面形状や大きさが調整されて形成されている。
【0044】
礫体捕捉部材31は、流れ方向の両側にこのようなスライド面36を有する断面形状のものから形成されることが好ましい。これにより、後述のように、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に礫体捕捉部材31の両端部31aを挿入して落下させる際に、礫体捕捉部材31が回動するのを防止でき、その礫体捕捉部材31の配置作業時における作業性を向上させることができる。また、これにより、礫体捕捉部材31に対して礫体が上流側から衝突した際に、その下流側のスライド面36が下流側のガイドプレート23に面タッチするので、衝撃荷重が局所的ではなく分散して伝達され、ガイドプレート21、23の耐久性を向上させることができる。このようなスライド面36を有する断面形状としては、本実施形態のように断面H型のものの他に、図7(a)に示すような断面コ字状のもの、図7(b)に示すような角形管状のものが挙げられる。
【0045】
礫体捕捉部材31は、スリットダム本体10を構成する鋼管部材と異なり、礫体との衝突時において破断さえしなければ変形してもよいので、スリットダム本体10を構成する鋼管部材より小サイズ、薄肉の低強度の部材を用いてもよく、これによって材料コストの低減を図るようにしてもよい。また、礫体捕捉部材31は、図7(b)に示すような、中空断面の角形管状や後述のような円形管状に形成されていることが好ましく、これにより、礫体との衝突時において礫体捕捉部材31自体が大きく変形することによって礫体からの衝撃力を吸収しやすくなり、スリットダム本体10に過度の衝撃力が加わるのを抑えることができるというメリットがある。
【0046】
礫体捕捉部材31は、本実施形態において、ウエブ部33に複数の水抜き孔35が形成されており、これにより、ウエブ部33とフランジ部34との間に水が貯まって礫体捕捉部材31の腐食が進行するのを防止可能となっている。
【0047】
川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される複数の礫体捕捉部材31Bは、図4に示すように、支持部材25の上面25a、間隔保持部材41の上端面41aや下流側のガイドプレート23に対して非固定の状態で支持されており、これらによって支承された状態で配置されている。
【0048】
上端側の礫体捕捉部材31Aは、間隔保持部材41の上端面41aに対して非固定の状態で支持されている。また、この礫体捕捉部材31Aは、下流側のガイドプレート23に対して連結されている。具体的には、本実施形態では、下流側のガイドプレート23とそのフランジ部34を貫通するボルト51にナット53を螺合させることによって、上端側の礫体捕捉部材31Aがその下流側のガイドプレート23に対して連結されている。なお、ここで用いられる連結手段は、この他に、クランプ金具等の公知の連結金具であれば特に限定するものではない。また、ナット53は、予めガイドプレート23に溶接等により固着されていてもよい。
【0049】
間隔保持部材41は、図5(b)に示すように、例えば、その下端面41bを礫体捕捉部材31のウエブ部33表面に当接させたうえで、これらを溶接等することによって礫体捕捉部材31に対して固着される。本実施形態において間隔保持部材41は、礫体捕捉部材31の軸方向両側に略同一長さのものが一つずつ固着されている。
【0050】
間隔保持部材41は、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に複数の礫体捕捉部材31を積み重ねて配置するうえで、各礫体捕捉部材31間の間隔が所定間隔に保持されるよう礫体捕捉部材31に対して固着されるものである。この間隔保持部材41の長さを調整することによって、複数の礫体捕捉部材31間の間隔を調整できることになる。
【0051】
間隔保持部材41は、本実施形態において、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に複数の礫体捕捉部材31を積み重ねた際に、その下側に配置される礫体捕捉部材31に対して溶接等により固着されている例を示したが、少なくともその下側又は上側の何れか一方の礫体捕捉部材31にのみ固着されていればよい。なお、間隔保持部材41は、その断面形状や礫体捕捉部材31に対して固着される数等については特に限定するものではない。
【0052】
礫体捕捉部材31の端部31aは、二枚のガイドプレート21、23間に配置する際に、例えば、図4に示すような、二枚のガイドプレート21、23の上端側のこれらの間の間隙27から挿入することになる。ここで、本実施形態のように、二枚のガイドプレート21、23の上端に近接して横梁13が位置する場合、間隔保持部材41の固着された礫体捕捉部材31Bでは、その端部31aをこの間隙27から挿入しようとする際に、間隔保持部材41が横梁13に引っ掛かるため挿入作業が困難となる。
【0053】
そこで、本実施形態においては、上流側のガイドプレート21の上端側において、礫体捕捉部材31の端部31aを二枚のガイドプレート21、23間に上流側から挿入可能とするための挿入口22が形成されている。この挿入口22は、間隔保持部材41の固着された礫体捕捉部材31の端部31aをその挿入口22から二枚のガイドプレート21、23間に挿入する際に、横梁13に引っ掛かることなく挿入できる程度の大きさに形成されており、これによって、礫体捕捉部材31Bの二枚のガイドプレート21、23間への挿入作業が容易となる。
【0054】
この挿入口22は、例えば、本実施形態のように、上流側のガイドプレート21の上端側を切り欠いて形成されるものであるが、この他に、上流側のガイドプレート21の上端側長さを下流側のガイドプレート23の上端側長さより短くすることによって形成されていてもよい。
【0055】
間隔保持部材41は、本実施形態において、図3に示すように、上流側のガイドプレート21の川幅方向先端部24bより礫体捕捉部材31の内側に位置するように固着されている。これにより、間隔保持部材41の固着された礫体捕捉部材31の端部31aを二枚のガイドプレート21、23間に挿入する際に、間隔保持部材41を上流側のガイドプレート21に引っ掛けることなく挿入することが可能となる。これは、間隔保持部材41が下側に固着された礫体捕捉部材31を四枚一組のガイドプレート21、23間にそれらの上端側から配置する場合に特に有効となり、これにより、挿入口22を大幅に小さくすることが可能となる。
【0056】
なお、本実施形態においては、四枚一組のガイドプレート21、23や複数の礫体捕捉部材31が、支柱11の下端側に設けられないように構成されており、これによって、支柱11の下端側において、図1、図2に示すように、礫体捕捉部材31や支柱11、基礎コンクリート5によって囲まれた礫体透過空間61が形成されている。このような礫体透過空間61が形成されることにより、平常時において河川7を流れる中小礫等を礫体透過空間61を通して積極的に透過させて、河川7の流れが妨げられるのを防止することが可能となる。
【0057】
次に、このような礫体捕捉部材31をスリットダム本体10に対して取り付ける方法について、スリットダム本体10の構築方法の一例とともに説明する。図8及び図9は、礫体捕捉部材31をスリットダム本体10に対して取り付ける方法について説明するための側面断面図である。
【0058】
まず、河川7の河床9上に基礎コンクリート5を打設、固化させた後、その上でスリットダム本体10を構成する各鋼管部材を組み合わせて基礎コンクリート5上にスリットダム本体10を配置する。ここで組み合わせる鋼管部材には、工場等において予めガイドプレート21、23や支持部材25を固着したものを用いれば、現場での作業数を低減させることができるので好ましい。続いて、スリットダム本体10の支柱11の下端から所定の高さまで基礎コンクリート5を更に打設し、基礎コンクリート5内に支柱11の下端部を埋め込み固定させる。
【0059】
以上が、スリットダム本体10の構築方法の一例であるが、その構築方法については公知の如何なる方法を用いてもよいのは勿論である。また、堤体3は、スリットダム本体10の構築と並行して行なうようにすればよい。
【0060】
次に、図8(a)に示すように、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に一つ目の礫体捕捉部材31Bを配置する。具体的には、礫体捕捉部材31Bをクレーン等の重機又は作業員が持ち上げたうえで、二枚のガイドプレート21、23の上端側における挿入口22等から礫体捕捉部材31Bの端部31aをその二枚のガイドプレート21、23間に挿入する。その後、重機又は作業員による持ち上げを解いて礫体捕捉部材31Bを自重により落下させる。これにより、二枚のガイドプレート21、23に対して礫体捕捉部材31Bの両側のスライド面36がスライドしつつ落下し、支持部材25に対して接触することによって礫体捕捉部材31Bが静止し、一つ目の礫体捕捉部材31Bの配置作業が終了する。
【0061】
先行の礫体捕捉部材31Bの配置作業が終了した後は、図8(b)に示すように、先行の礫体捕捉部材31と同じ要領で、後行の礫体捕捉部材31Bの端部31aを二枚のガイドプレート21、23間にその上端側の挿入口22等から挿入してこれを自重により落下させる。これにより、二枚のガイドプレート21、23に対して後行の礫体捕捉部材31Bの両側のスライド面36がスライドしつつ落下し、先行の礫体捕捉部材31Bに固着された間隔保持部材41に対して接触することによって礫体捕捉部材31Bが静止し、後行の礫体捕捉部材31Bの配置作業が終了する。
【0062】
このような作業を繰り返すことにより、図9(a)に示すように、複数の礫体捕捉部材31Bが間隔保持部材41を介して上下方向に積み重ねて配置されることになる。
【0063】
ここで、本実施形態における礫体捕捉部材31は、河川7の流れ方向の両側に上述したようなスライド面36を有しており、その礫体捕捉部材31が軸方向回りに回動するのを防止することができるので、二枚のガイドプレート21、23間に礫体捕捉部材31の端部31aを挿入した際の配向状態のままで礫体捕捉部材31が落下して配置されることになる。このため、二枚のガイドプレート21、23間に先行の礫体捕捉部材31の端部31aを挿入して配置した後は、その先行の礫体捕捉部材31を回動させる等して位置決め作業を特にすることなく、後行の礫体捕捉部材31の配置作業を行うことが可能となっており、その礫体捕捉部材31の配置作業時における作業性が向上している。
【0064】
上端側の礫体捕捉部材31Aを除く他の礫体捕捉部材31Bを配置した後は、図8(a)に示すように、上端側の礫体捕捉部材31Aを他の礫体捕捉部材31Bと同じ要領で配置し、その後に、図8(b)に示すように、上端側の礫体捕捉部材31Aを下流側のガイドプレート23に対してボルト51、ナット53等で連結して固定する。これによって、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に複数の礫体捕捉部材31が配置されて、これらがスリットダム本体10に対して取り付けられることになる。
【0065】
因みに、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される一部の礫体捕捉部材31が損傷した場合、まず、一組のガイドプレート21、23間の上端側に位置する礫体捕捉部材31Aに連結されているボルト51、ナット53等を外す。続いて、その損傷した礫体捕捉部材31が一組のガイドプレート21、23間から抜き出されるまで、上端側の礫体捕捉部材31A、31Bから順に抜き出す。続いて、新設の礫体捕捉部材31と抜き出した礫体捕捉部材31A、31Bとを、上述したのと同じ要領で一組のガイドプレート21、23間に配置して、補修作業が完了する。
【0066】
このように、本発明に係る鋼製スリットダム1によれば、礫体捕捉部材31の取り付け作業時において必要となる作業の大半が、礫体捕捉部材31の端部31aを二枚のガイドプレート21、23の上端側から挿入して落下させるといった簡単な作業となっている。また、この他に必要となる作業も、上端側の礫体捕捉部材31Aを下流側のガイドプレート23にボルト51等で連結するといった簡単な作業となっている。このため、本発明によれば、スリットダム本体10に対して礫体捕捉部材31を取り付けるための現場での作業数を大幅に低減させることが可能となっている。
【0067】
また、本発明によれば、礫体捕捉部材31の取り付け作業時において、間隔保持部材41が固着されていない礫体捕捉部材31Aや、これに間隔保持部材41が固着された礫体捕捉部材31Bのような、比較的小サイズ、小重量のものを一つずつ持ち上げて配置作業を行うことになるので、大型、高性能の重機が不要となり、礫体捕捉部材31の取り付け作業を容易に行うことが可能となっている。
【0068】
次に、本発明に係る鋼製スリットダム1の作用や他の効果について説明する。
【0069】
河川7の上流側から下流側にかけて流れてきた巨礫、流木、中小礫のうち、巨礫、流木は、主としてスリットダム本体10に対して衝突してこのスリットダム本体10によって捕捉される。また、中小礫は、主として礫体捕捉部材31やスリットダム本体10に対して衝突してこれらによって捕捉されることになる。
【0070】
ここで、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される複数の礫体捕捉部材31に負荷される礫体からの衝突荷重は、主として下流側のガイドプレート23を介してスリットダム本体10に伝達されることになる。また、下流側のガイドプレート23が鉛直方向に傾斜して設けられているので、礫体捕捉部材31に礫体から上向きの衝突荷重が負荷されるが、上端側の礫体捕捉部材31が下流側のガイドプレート23に連結されているので、この上向きの衝突荷重もその上端側の礫体捕捉部材31から下流側のガイドプレート23を介してスリットダム本体10に伝達されることになる。即ち、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置されている何れの礫体捕捉部材31もが、ガイドプレート21、23が大きく変形したり支柱11から外れたりしない限り、二枚のガイドプレート21、23間から抜け出ないように構成されていることになる。
【0071】
なお、上端側の礫体捕捉部材31が下流側のガイドプレート23に連結されていなくとも、礫体との衝突時に過度に大きな衝突荷重が負荷されない限り上端側の礫体捕捉部材31のみが二枚のガイドプレート21、23間から抜け出ないものと考えられる。しかし、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される総ての礫体捕捉部材31が抜け出るのを防止して安全性を高めるうえでは上端側の礫体捕捉部材31が下流側のガイドプレート23に連結されていることが好ましい。
【0072】
ここで、本発明に係る鋼製スリットダム1によれば、複数の礫体捕捉部材31のうちの一部の礫体捕捉部材31が損傷した場合に、交換による補修が必要な一部の部材以外は交換することなく補修が完了するため、余計な補修コストの発生を抑えることが可能となる。
【0073】
また、礫体捕捉部材31が、スリットダム本体10を構成する鋼管部材を上流側から交差して覆うように設けられているのではなく、複数の支柱11間に配置される構造となっている。このため、礫体を捕捉する機能を有する部材の無駄な使用が抑えられ、その分、材料コストを抑えることが可能となっている。
【0074】
また、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される複数の礫体捕捉部材31は、上端側に位置するもの以外がガイドプレート21、23等の他部材に対して非固定の状態とされているため、礫体捕捉部材31と他部材を連結した場合に生じる温度応力によるその他部材への影響を抑えることが可能となっている。
【0075】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0076】
例えば、本発明に係るスリットダム本体10は、その支柱11や横梁13の数について特に限定するものではない。また、横梁13は、川幅方向に間隔を空けて立設された3つ以上の支柱11と交差するように接続されていてもよいし、その両端が堤体3内に埋め込まれた鞘管内に挿入されるよう構成されていてもよい。また、支柱11に対して基礎コンクリート5から傾斜して立設された他の支柱11が接続されていてもよい。
【0077】
また、礫体捕捉部材31が取り付けられるべき支柱11は、上述の実施形態において説明したように、スリットダム本体10の最上流側に立設された支柱11とすることが好ましく、これによって、礫体捕捉部材31に対して礫体が衝突する際に発生する衝突荷重を有効に基礎コンクリート5に分散させることができる。
【0078】
また、上述の実施形態において説明した支持部材25は、本発明において必須の構成となるものではなく、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される礫体捕捉部材31を、基礎コンクリート5や横梁13によって直接又は間隔保持部材41を介して支持させるようにしてもよい。
【0079】
図10は、本発明に係る礫体捕捉部材31の他の実施形態の構成を上流側からみた状態を示す正面図であり、図11は、そのD−D線断面図である。
【0080】
本実施形態においては、礫体捕捉部材31が、円形鋼管のような中空断面の円形管状に形成されている。また、礫体捕捉部材31は、その両端部31aが、角筒状の外装部材38内に配置されるとともにその外装部材38に溶接等により固着されている。また、この外装部材38は、流れ方向の両側に二枚のガイドプレート21、23と略平行なスライド面36を有している。この外装部材38は、礫体捕捉部材31の軸方向回りの回動時において、その流れ方向の両側のスライド面36が二枚のガイドプレート21、23に同時に接触可能となるように、その大きさが調整されて形成されている。
【0081】
このような外装部材38を用いることによって、礫体捕捉部材31として中空断面の円形管状のものを用いた場合でも、礫体捕捉部材31が軸方向回りに回動するのを防止することができるので、二枚のガイドプレート21、23間に礫体捕捉部材31の端部31aを挿入して配置する際に、その挿入した際の配向状態のまま礫体捕捉部材31を配置することが可能となる。この結果、上述の実施形態において説明したのと同様に、二枚のガイドプレート21、23間に先行の礫体捕捉部材31の端部31aを挿入した配置した後に、その先行の礫体捕捉部材31を回動させる等して位置決め作業を特にすることなく、後行の礫体捕捉部材31の配置作業を行うことが可能となっている。
【0082】
このような中空断面の円形管状の礫体捕捉部材31を用いた場合、一般に、このような断面形状の部材に関して礫体との衝突時の評価方法が他の断面形状のものより確立されているので、容易に設計を行なうことができるというメリットがある。また、これにより、礫体との衝突時において礫体捕捉部材31自体が大きく変形することによって礫体からの衝撃力を吸収し易くなるというメリットもある。
【0083】
因みに、本実施形態においては、間隔保持部材41が礫体捕捉部材31に固着される代わりに外装部材38に固着されている。
【0084】
また、本実施形態のような外装部材38を用いた場合、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される複数の礫体捕捉部材31のうち、上端側の礫体捕捉部材31を下流側のガイドプレート23に連結するうえで、外装部材38や礫体捕捉部材31の内部にボルト51、ナット53等を配置することが困難となる。このため、このような場合、次に説明するようなL形鋼等からなる連結部材37を用いることとしてもよい。
【0085】
この連結部材37は、外装部材38の上下面にその一側面が溶接等により固着されているものであり、例えば、その一側面と直交する他側面を下流側にガイドプレート23に当接させたうえで、この他側面と下流側のガイドプレート23とを貫通するボルト51にナット53を螺合させることによって、礫体捕捉部材31が下流側のガイドプレート23に連結されることになる。
【符号の説明】
【0086】
1 鋼製スリットダム
3 堤体
5 基礎コンクリート
7 河川
10 スリットダム本体
11 支柱
11a 側部
13 横梁
21 ガイドプレート
22 挿入口
23 ガイドプレート
25 支持部材
31(31A、31B) 礫体捕捉部材
36 スライド面
38 外装部材
41 間隔保持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の土石流、流木対策用等として好適に用いられる鋼製スリットダム、これに用いられる礫体捕捉部材及びその取り付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、土石流発生時に河川を流れる巨礫、流木等の礫体が河川下流側へ流出するのを防止するため、図12に示すような鋼製スリットダム101が提案されている。この鋼製スリットダム101は、複数の鋼管部材を組み合わせて形成される骨組構造体としてのスリットダム本体110から構成されている。
【0003】
このスリットダム本体110は、河川107の川幅方向に間隔を空けて構築される堤体103間に配置されるもので、川幅方向に間隔を空けて立設された複数の支柱111と、支柱111に接続された横梁113とを備えている。河川107の上流側から下流側にかけて流れてくる比較的粒径の大きな礫体や流木等は、このスリットダム本体110に衝突することによって捕捉されることになる。
【0004】
ところで、近年においては、家屋等が周囲に多く存在する河川の上流側においてこのような鋼製スリットダムが配置されるケースが増加してきている。このため、保全対象となる下流側の家屋等の安全性を確保する観点から、土石流中に含まれる粒径の小さい中小礫も捕捉可能となるよう礫体捕捉性能を向上させた構造の鋼製スリットダムの提案が望まれている。
【0005】
このような構造の鋼製スリットダムとしては、例えば、特許文献1、2に開示のようなものが提案されている。特許文献1において提案されている鋼製スリットダムは、リングネット、エキスパンドメタル、H形鋼等によって構成される礫捕捉用部材をスリットダム本体に上流側から取り付けることを特徴としている。特許文献2において提案されている鋼製スリットダムは、複数本の縦桟、横桟を格子状に組んで構成される中小礫捕捉部材をスリットダム本体に上流側から取り付けることを特徴としている。
【0006】
何れの文献においても、スリットダム本体に対して礫体捕捉用の部材を取り付けることによって、川幅方向に間隔を空けて立設されている複数の支柱間を通過しようとする礫体をその礫体捕捉用の部材によって捕捉する構造の鋼製スリットダムが開示されており、これによって、鋼製スリットダムの礫体捕捉性能の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−201019号公報
【特許文献2】特開2007−191936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示のH形鋼からなる礫捕捉用部材や特許文献2に開示のような中小礫捕捉部材のような礫体捕捉部材は、何れもスリットダム本体を構成する鋼管部材を上流側から交差して覆うような構造とされている。これは、礫体を捕捉する機能を有する部材がその交差部で二重に用いられていることを意味しており、その分、同機能を有する部材のために無駄な材料が用いられ、材料コストの高騰を招くこととなる。
【0009】
また、特許文献2においては、礫体捕捉用の部材をスリットダム本体に取り付ける構造として、スリットダム本体に取り付けられたブラケットに対して礫体捕捉用の部材をボルトナットにより連結して取り付ける構造や、スリットダム本体に対して直接ボルトナットにより連結して取り付ける構造が開示されている。しかしながら、このような構造の場合、礫体捕捉用の部材をスリットダム本体に取り付ける際に多くの箇所でボルトナットによる連結作業を行う必要があり、現場での作業数が増大してしまうという問題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、スリットダム本体に対して中小礫の捕捉を容易とする礫体捕捉部材を取り付ける場合において、無駄な部材の使用を極力低減することができ、これに伴い材料コストの低減を図ることが可能であるとともに、礫体捕捉部材をスリットダム本体に取り付けるための現場での作業数を低減させることのできる鋼製スリットダム、これに用いられる礫体捕捉部材及びその取り付け方法を提供することとにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上述した課題を解決するために、鋭意検討の末、下記の鋼製スリットダムを発明した。
【0012】
第1発明に係る鋼製スリットダムは、河川の川幅方向に間隔を空けて構築された堤体間に配置される鋼製スリットダムにおいて、前記川幅方向に間隔を空けて傾斜して立設された複数の支柱と、前記複数の支柱の互いに対向する側部において、当該支柱の軸方向に沿うとともに前記河川の流れ方向に間隔を空けて略平行に配置された二枚のガイドプレートと、前記川幅方向両側の前記二枚のガイドプレート間に両端部が配置された礫体捕捉部材とを備え、前記礫体捕捉部材は、その上側又は下側の少なくとも何れかに配置された間隔保持部材を介して上下方向に間隔を空けて複数積み重ねられていることを特徴とする。
【0013】
第2発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明において、前記間隔保持部材は、その上側又は下側の何れか一方の前記礫体捕捉部材にのみ固着されていることを特徴とする。
【0014】
第3発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明又は第2発明において、前記複数の礫体捕捉部材は、その上端側の礫体捕捉部材が下流側の前記ガイドプレートに連結されていることを特徴とする。
【0015】
第4発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明〜第3発明の何れか一つの発明において、前記礫体捕捉部材は、前記流れ方向の両側に前記二枚のガイドプレートと略平行なスライド面を有し、その軸方向回りの回動時において前記流れ方向の両側のスライド面が前記二枚のガイドプレートに同時に接触可能とされていることを特徴とする。
【0016】
第5発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明〜第3発明の何れか一つの発明において、前記礫体捕捉部材は、中空断面の円形管状に形成されるとともに、その両端部が角筒状の外装部材内に配置されて当該外装部材に固着されており、前記外装部材は、前記流れ方向の両側に前記二枚のガイドプレートと略平行なスライド面を有し、前記礫体捕捉部材の軸方向回りの回動時において前記流れ方向の両側のスライド面が前記二枚のガイドプレートに同時に接触可能とされていることを特徴とする。
【0017】
第6発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明〜第5発明の何れか一つの発明において、前記二枚のガイドプレートは、前記礫体捕捉部材の端部を当該二枚のガイドプレート間に上流側から挿入可能とするための挿入口がその上端側に形成されていることを特徴とする。
【0018】
第7発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明〜第6発明の何れか一つの発明において、前記二枚のガイドプレートの下端側において配置された支持部材を更に備え、前記複数の礫体捕捉部材は、その下端側の礫体捕捉部材の端部が前記支持部材により支持されていることを特徴とする。
【0019】
第8発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明〜第7発明の何れか一つの発明において、前記複数の支柱は、前記流れ方向に間隔を空けて列状に複数列立設されるとともに、最上流側のものが上端から下端に向かうにつれて上流側に傾斜して立設され、前記二枚のガイドプレート及び前記礫体捕捉部材は、前記最上流側の複数の支柱に設けられていることを特徴とする。
【0020】
第9発明に係る礫体捕捉部材は、第1発明〜第8発明の何れか一つの発明に係る鋼製スリットダムに用いられることを特徴とする。
【0021】
第10発明に係る礫体捕捉部材の取り付け方法は、第1発明〜第8発明の何れか一つの発明に係る複数の支柱を有するスリットダム本体に対して前記礫体捕捉部材を取り付ける方法であって、前記複数の支柱の互いに対向する側部に配置された二枚のガイドプレート間に前記礫体捕捉部材の両端部を上端側から挿入することを繰り返すことにより、当該礫体捕捉部材を前記間隔保持部材を介して上下方向に間隔を空けて複数積み重ねて配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
第1発明に係る鋼製スリットダムによれば、礫体捕捉部材が損傷した場合に、交換による補修が必要な一部の部材以外は交換することなく補修が完了するため、余計な補修コストの発生を抑えることが可能となる。また、礫体を捕捉する機能を有する部材の無駄な使用が抑えられ、その分、材料コストを抑えることが可能となる。また、複数の支柱を有するスリットダム本体に対する礫体捕捉部材の取り付け作業時において必要となる作業の大半が、礫体捕捉部材の端部を二枚のガイドプレートの上端側から挿入して落下させるといった簡単な作業となっており、礫体捕捉部材を取り付けるための現場での作業数を大幅に低減させることが可能となっている。また、礫体捕捉部材の取り付け作業時に比較的小サイズ、小重量の礫体捕捉部材を一つずつ持ち上げてこの配置作業を行うことになるので、大型、高性能の重機が不要となる。
【0023】
第3発明に係る鋼製スリットダムによれば、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート間に配置される総ての礫体捕捉部材がそのガイドプレートから抜け出るのを防止して安全性を高めることが可能となる。また、複数の礫体捕捉部材のうち、上端側の礫体捕捉部材のみを下流側のガイドプレートに連結するのみでよいため、礫体捕捉部材を取り付けるための現場での作業数を低減させることが可能となっている。
【0024】
第4発明に係る鋼製スリットダムによれば、礫体捕捉部材の端部を二枚のガイドプレート間に挿入して落下させる際に、礫体捕捉部材が回動するのを防止でき、その礫体捕捉部材の配置作業時における作業性を向上させることが可能となる。また、礫体捕捉部材に対して礫体が衝突した際に、その下流側のスライド面が下流側のガイドプレートに面タッチするので、衝撃荷重が局所的ではなく分散して伝達され、ガイドプレートの耐久性を向上させることができる。
【0025】
第5発明に係る鋼製スリットダムによれば、礫体捕捉部材として中空断面の円形管状のものを用いた場合でも、礫体捕捉部材の端部を二枚のガイドプレート間に挿入して落下させる際に、礫体捕捉部材が回動するのを防止でき、その礫体捕捉部材の配置作業時における作業性を向上させることが可能となる。また、礫体捕捉部材に対して礫体が衝突した際に、外装部材の下流側のスライド面が下流側のガイドプレートに面タッチするので、衝撃荷重が局所的ではなく分散して伝達され、ガイドプレートの耐久性を向上させることができる。
【0026】
第6発明に係る鋼製スリットダムによれば、支柱に接続された横梁が二枚のガイドプレートの上端に近接している場合でも、礫体捕捉部材の端部を二枚のガイドプレート間へ挿入する作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る鋼製スリットダムの構成の一例を上流側からみた状態を示す一部横断正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】川幅方向両側のガイドプレートとそのガイドプレート間に配置された礫体捕捉部材との構成を上流側からみた状態を示す正面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】(a)は間隔保持部材が固着されている礫体捕捉部材の構成を示す正面図であり、(b)はそのC−C線断面図である。
【図6】礫体捕捉部材の好ましい断面形状について説明するための側面断面図である。
【図7】礫体捕捉部材の他の断面形状を示す側面断面図である。
【図8】礫体捕捉部材をスリットダム本体に対して取り付ける方法について説明するための側面断面図である。
【図9】礫体捕捉部材をスリットダム本体に対して取り付ける方法について説明するための他の側面断面図である。
【図10】礫体捕捉部材の他の実施形態の構成を上流側からみた状態を示す正面図である。
【図11】図10のD−D線断面図である。
【図12】従来の鋼製スリットダムについて説明するための一部横断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を適用した鋼製スリットダムを実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る鋼製スリットダム1の構成の一例を上流側からみた状態を示す一部横断正面図を示しており、図2は、そのA−A線断面図を示している。
【0030】
鋼製スリットダム1は、河川7の川幅方向に間隔を空けて構築された堤体3間に配置されるものであり、その堤体3間の河床9上には基礎コンクリート5が打設されている。堤体3は、河床9上に構築された剛性に優れた構造体から構成されるものであり、例えば、コンクリート等から構築される。また、堤体3は、この他に、複数の鋼矢板や鋼製セグメント等を組み合わせて筒状構造体や二重壁構造を構築し、その内部に土砂等を充填して構成されていてもよい。また、いわゆるインセム工法のような、現地発生土にセメントを混合して得られるソイルセメントを用いて堤体3を構築してもよいし、堤体3の構造、構築方法は公知のものであれば特に限定するものではない。
【0031】
鋼製スリットダム1は、上下方向や水平方向等に延長されてなる複数の断面円形状の鋼管部材を組み合わせて形成される骨組構造体としてのスリットダム本体10を備えている。図示の例では、河川7の川幅方向に間隔を空けて二つのスリットダム本体10が配置されているが、スリットダム本体10の数については特に限定するものではない。また、スリットダム本体10を構成する鋼管部材は、断面角形状に形成されていてもよい。
【0032】
本実施形態におけるスリットダム本体10は、河川7の川幅方向や流れ方向に間隔を空けて基礎コンクリート5上に立設される複数の支柱11と、支柱11に接続された横梁13とを備えている。本実施形態における支柱11は、川幅方向に間隔を空けて立設されている複数の支柱11を一単位列として、河川7の流れ方向に間隔を空けて列状に複数列立設されている。横梁13は、本実施形態において、河川7の川幅方向や流れ方向に隣り合う支柱11に接続されることによって、それらの支柱11間に架設されている。
【0033】
河川7の上流側に立設された複数の支柱11は、その上端から下端に向かうにつれて河川7の上流側に傾斜するように設けられ、下流側に立設された複数の支柱11は、その上端から下端に向かうにつれて河川7の下流側に傾斜するよう設けられている。各支柱11は、その下端部が基礎コンクリート5内に埋め込み固定されている。
【0034】
支柱11は、その上端部や中間部から川幅方向や流れ方向に隣り合う支柱11に向けて、横梁13の一部を構成する水平部材14が突出されている。水平部材14の先端には環状のフランジ15が固着されている。略同一方向に直列に配置された複数の水平部材14は、互いにフランジ15を当接させたうえでこれらをボルトナット等により固定することによって連結されており、これら直列に配置された複数の水平部材14によって一つの横梁13が構成されている。
【0035】
ここで、本発明に係る鋼製スリットダム1は、複数の支柱11の互いに対向する側部11aにおいて、支柱11の軸方向に沿うとともに、河川7の流れ方向に間隔を空けて略平行に配置された二枚のガイドプレート21、23と、その川幅方向両側の二枚のガイドプレート21、23間に両端部31aが配置された礫体捕捉部材31とを備えている。本実施形態においては、これらの二枚のガイドプレート21、23及び礫体捕捉部材31が、河川7の上流側の複数の支柱11に設けられている。
【0036】
図3は、川幅方向両側のガイドプレート21、23とそのガイドプレート21、23間に配置された礫体捕捉部材31との構成を上流側からみた状態を示す正面図であり、図4は、図3のB−B線断面図である。
【0037】
ガイドプレート21、23は、複数の支柱11の互いに対向する側部11aのそれぞれにつき所定長さのものが二枚配置されており、その川幅方向両側の二枚ずつを合わせた計四枚を一組として配置されている。礫体捕捉部材31は、その川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間において、その上側又は下側の少なくとも何れかに配置されたL形鋼等からなる間隔保持部材41を介して上下方向に間隔を空けて複数積み重ねられている。
【0038】
これら四枚一組のガイドプレート21、23や複数の礫体捕捉部材31は、図1に示すように、一つのスリットダム本体10を構成する複数の支柱11間や、川幅方向に隣り合う複数のスリットダム本体10を構成する複数の支柱11間に配置されている。これによって、複数の礫体捕捉部材31が複数の支柱11間に架設された状態となり、複数の支柱11間を通過しようとする礫体を礫体捕捉部材31に衝突させることによって捕捉することが可能となっている。
【0039】
ガイドプレート21、23は、図3に示すように、その川幅方向の基端部24aが支柱11の側部11aに対して溶接等することによって固着されている。
【0040】
本実施形態に係る鋼製スリットダム1は、この二枚のガイドプレート21、23の下端側において配置された支持部材25を備えている。この支持部材25は、二枚のガイドプレート21、23間に配置される下端側の礫体捕捉部材31の端部31aを下側から支持するものである。本実施形態において支持部材25は、平板状の部材から構成されており、礫体捕捉部材31の端部31aを安定して支持できるようにその上面25aが支柱11の軸方向と直交する方向と略平行に設けられている。支持部材25は、図3に示すように、その川幅方向の基端部25bが支柱11の側部11aに対して溶接等することによって固着されている。
【0041】
礫体捕捉部材31は、本実施形態において、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される複数のもののうち、上端側に位置するものを除いたものが、その上側に配置される間隔保持部材41に対して溶接等により固着されている。また、上端側に位置する一つの礫体捕捉部材31のみが間隔保持部材41に対して溶接等により固着されていないものとされている。以下においては、間隔保持部材41が固着されていない礫体捕捉部材31については礫体捕捉部材31Aとし、間隔保持部材41が固着されている礫体捕捉部材31については礫体捕捉部材31Bとして説明する。
【0042】
図5(a)は、間隔保持部材41が固着されている礫体捕捉部材31Bの構成を示す正面図であり、(b)はそのC−C線断面図である。
【0043】
礫体捕捉部材31は、本実施形態においては、ウエブ部33とウエブ部33の両側に略平行に設けられたフランジ部34とを有する断面H型のH形鋼から構成されている。この礫体捕捉部材31は、図4等に示すように、その流れ方向の両側におけるフランジ部34の外側面であるスライド面36が二枚のガイドプレート21、23と略平行となるように配置される。この礫体捕捉部材31は、図6に示すように、その礫体捕捉部材31の軸方向回りの回動時において、その流れ方向の両側のスライド面36が二枚のガイドプレート21、23に同時に接触可能となるように、その断面形状や大きさが調整されて形成されている。
【0044】
礫体捕捉部材31は、流れ方向の両側にこのようなスライド面36を有する断面形状のものから形成されることが好ましい。これにより、後述のように、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に礫体捕捉部材31の両端部31aを挿入して落下させる際に、礫体捕捉部材31が回動するのを防止でき、その礫体捕捉部材31の配置作業時における作業性を向上させることができる。また、これにより、礫体捕捉部材31に対して礫体が上流側から衝突した際に、その下流側のスライド面36が下流側のガイドプレート23に面タッチするので、衝撃荷重が局所的ではなく分散して伝達され、ガイドプレート21、23の耐久性を向上させることができる。このようなスライド面36を有する断面形状としては、本実施形態のように断面H型のものの他に、図7(a)に示すような断面コ字状のもの、図7(b)に示すような角形管状のものが挙げられる。
【0045】
礫体捕捉部材31は、スリットダム本体10を構成する鋼管部材と異なり、礫体との衝突時において破断さえしなければ変形してもよいので、スリットダム本体10を構成する鋼管部材より小サイズ、薄肉の低強度の部材を用いてもよく、これによって材料コストの低減を図るようにしてもよい。また、礫体捕捉部材31は、図7(b)に示すような、中空断面の角形管状や後述のような円形管状に形成されていることが好ましく、これにより、礫体との衝突時において礫体捕捉部材31自体が大きく変形することによって礫体からの衝撃力を吸収しやすくなり、スリットダム本体10に過度の衝撃力が加わるのを抑えることができるというメリットがある。
【0046】
礫体捕捉部材31は、本実施形態において、ウエブ部33に複数の水抜き孔35が形成されており、これにより、ウエブ部33とフランジ部34との間に水が貯まって礫体捕捉部材31の腐食が進行するのを防止可能となっている。
【0047】
川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される複数の礫体捕捉部材31Bは、図4に示すように、支持部材25の上面25a、間隔保持部材41の上端面41aや下流側のガイドプレート23に対して非固定の状態で支持されており、これらによって支承された状態で配置されている。
【0048】
上端側の礫体捕捉部材31Aは、間隔保持部材41の上端面41aに対して非固定の状態で支持されている。また、この礫体捕捉部材31Aは、下流側のガイドプレート23に対して連結されている。具体的には、本実施形態では、下流側のガイドプレート23とそのフランジ部34を貫通するボルト51にナット53を螺合させることによって、上端側の礫体捕捉部材31Aがその下流側のガイドプレート23に対して連結されている。なお、ここで用いられる連結手段は、この他に、クランプ金具等の公知の連結金具であれば特に限定するものではない。また、ナット53は、予めガイドプレート23に溶接等により固着されていてもよい。
【0049】
間隔保持部材41は、図5(b)に示すように、例えば、その下端面41bを礫体捕捉部材31のウエブ部33表面に当接させたうえで、これらを溶接等することによって礫体捕捉部材31に対して固着される。本実施形態において間隔保持部材41は、礫体捕捉部材31の軸方向両側に略同一長さのものが一つずつ固着されている。
【0050】
間隔保持部材41は、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に複数の礫体捕捉部材31を積み重ねて配置するうえで、各礫体捕捉部材31間の間隔が所定間隔に保持されるよう礫体捕捉部材31に対して固着されるものである。この間隔保持部材41の長さを調整することによって、複数の礫体捕捉部材31間の間隔を調整できることになる。
【0051】
間隔保持部材41は、本実施形態において、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に複数の礫体捕捉部材31を積み重ねた際に、その下側に配置される礫体捕捉部材31に対して溶接等により固着されている例を示したが、少なくともその下側又は上側の何れか一方の礫体捕捉部材31にのみ固着されていればよい。なお、間隔保持部材41は、その断面形状や礫体捕捉部材31に対して固着される数等については特に限定するものではない。
【0052】
礫体捕捉部材31の端部31aは、二枚のガイドプレート21、23間に配置する際に、例えば、図4に示すような、二枚のガイドプレート21、23の上端側のこれらの間の間隙27から挿入することになる。ここで、本実施形態のように、二枚のガイドプレート21、23の上端に近接して横梁13が位置する場合、間隔保持部材41の固着された礫体捕捉部材31Bでは、その端部31aをこの間隙27から挿入しようとする際に、間隔保持部材41が横梁13に引っ掛かるため挿入作業が困難となる。
【0053】
そこで、本実施形態においては、上流側のガイドプレート21の上端側において、礫体捕捉部材31の端部31aを二枚のガイドプレート21、23間に上流側から挿入可能とするための挿入口22が形成されている。この挿入口22は、間隔保持部材41の固着された礫体捕捉部材31の端部31aをその挿入口22から二枚のガイドプレート21、23間に挿入する際に、横梁13に引っ掛かることなく挿入できる程度の大きさに形成されており、これによって、礫体捕捉部材31Bの二枚のガイドプレート21、23間への挿入作業が容易となる。
【0054】
この挿入口22は、例えば、本実施形態のように、上流側のガイドプレート21の上端側を切り欠いて形成されるものであるが、この他に、上流側のガイドプレート21の上端側長さを下流側のガイドプレート23の上端側長さより短くすることによって形成されていてもよい。
【0055】
間隔保持部材41は、本実施形態において、図3に示すように、上流側のガイドプレート21の川幅方向先端部24bより礫体捕捉部材31の内側に位置するように固着されている。これにより、間隔保持部材41の固着された礫体捕捉部材31の端部31aを二枚のガイドプレート21、23間に挿入する際に、間隔保持部材41を上流側のガイドプレート21に引っ掛けることなく挿入することが可能となる。これは、間隔保持部材41が下側に固着された礫体捕捉部材31を四枚一組のガイドプレート21、23間にそれらの上端側から配置する場合に特に有効となり、これにより、挿入口22を大幅に小さくすることが可能となる。
【0056】
なお、本実施形態においては、四枚一組のガイドプレート21、23や複数の礫体捕捉部材31が、支柱11の下端側に設けられないように構成されており、これによって、支柱11の下端側において、図1、図2に示すように、礫体捕捉部材31や支柱11、基礎コンクリート5によって囲まれた礫体透過空間61が形成されている。このような礫体透過空間61が形成されることにより、平常時において河川7を流れる中小礫等を礫体透過空間61を通して積極的に透過させて、河川7の流れが妨げられるのを防止することが可能となる。
【0057】
次に、このような礫体捕捉部材31をスリットダム本体10に対して取り付ける方法について、スリットダム本体10の構築方法の一例とともに説明する。図8及び図9は、礫体捕捉部材31をスリットダム本体10に対して取り付ける方法について説明するための側面断面図である。
【0058】
まず、河川7の河床9上に基礎コンクリート5を打設、固化させた後、その上でスリットダム本体10を構成する各鋼管部材を組み合わせて基礎コンクリート5上にスリットダム本体10を配置する。ここで組み合わせる鋼管部材には、工場等において予めガイドプレート21、23や支持部材25を固着したものを用いれば、現場での作業数を低減させることができるので好ましい。続いて、スリットダム本体10の支柱11の下端から所定の高さまで基礎コンクリート5を更に打設し、基礎コンクリート5内に支柱11の下端部を埋め込み固定させる。
【0059】
以上が、スリットダム本体10の構築方法の一例であるが、その構築方法については公知の如何なる方法を用いてもよいのは勿論である。また、堤体3は、スリットダム本体10の構築と並行して行なうようにすればよい。
【0060】
次に、図8(a)に示すように、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に一つ目の礫体捕捉部材31Bを配置する。具体的には、礫体捕捉部材31Bをクレーン等の重機又は作業員が持ち上げたうえで、二枚のガイドプレート21、23の上端側における挿入口22等から礫体捕捉部材31Bの端部31aをその二枚のガイドプレート21、23間に挿入する。その後、重機又は作業員による持ち上げを解いて礫体捕捉部材31Bを自重により落下させる。これにより、二枚のガイドプレート21、23に対して礫体捕捉部材31Bの両側のスライド面36がスライドしつつ落下し、支持部材25に対して接触することによって礫体捕捉部材31Bが静止し、一つ目の礫体捕捉部材31Bの配置作業が終了する。
【0061】
先行の礫体捕捉部材31Bの配置作業が終了した後は、図8(b)に示すように、先行の礫体捕捉部材31と同じ要領で、後行の礫体捕捉部材31Bの端部31aを二枚のガイドプレート21、23間にその上端側の挿入口22等から挿入してこれを自重により落下させる。これにより、二枚のガイドプレート21、23に対して後行の礫体捕捉部材31Bの両側のスライド面36がスライドしつつ落下し、先行の礫体捕捉部材31Bに固着された間隔保持部材41に対して接触することによって礫体捕捉部材31Bが静止し、後行の礫体捕捉部材31Bの配置作業が終了する。
【0062】
このような作業を繰り返すことにより、図9(a)に示すように、複数の礫体捕捉部材31Bが間隔保持部材41を介して上下方向に積み重ねて配置されることになる。
【0063】
ここで、本実施形態における礫体捕捉部材31は、河川7の流れ方向の両側に上述したようなスライド面36を有しており、その礫体捕捉部材31が軸方向回りに回動するのを防止することができるので、二枚のガイドプレート21、23間に礫体捕捉部材31の端部31aを挿入した際の配向状態のままで礫体捕捉部材31が落下して配置されることになる。このため、二枚のガイドプレート21、23間に先行の礫体捕捉部材31の端部31aを挿入して配置した後は、その先行の礫体捕捉部材31を回動させる等して位置決め作業を特にすることなく、後行の礫体捕捉部材31の配置作業を行うことが可能となっており、その礫体捕捉部材31の配置作業時における作業性が向上している。
【0064】
上端側の礫体捕捉部材31Aを除く他の礫体捕捉部材31Bを配置した後は、図8(a)に示すように、上端側の礫体捕捉部材31Aを他の礫体捕捉部材31Bと同じ要領で配置し、その後に、図8(b)に示すように、上端側の礫体捕捉部材31Aを下流側のガイドプレート23に対してボルト51、ナット53等で連結して固定する。これによって、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に複数の礫体捕捉部材31が配置されて、これらがスリットダム本体10に対して取り付けられることになる。
【0065】
因みに、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される一部の礫体捕捉部材31が損傷した場合、まず、一組のガイドプレート21、23間の上端側に位置する礫体捕捉部材31Aに連結されているボルト51、ナット53等を外す。続いて、その損傷した礫体捕捉部材31が一組のガイドプレート21、23間から抜き出されるまで、上端側の礫体捕捉部材31A、31Bから順に抜き出す。続いて、新設の礫体捕捉部材31と抜き出した礫体捕捉部材31A、31Bとを、上述したのと同じ要領で一組のガイドプレート21、23間に配置して、補修作業が完了する。
【0066】
このように、本発明に係る鋼製スリットダム1によれば、礫体捕捉部材31の取り付け作業時において必要となる作業の大半が、礫体捕捉部材31の端部31aを二枚のガイドプレート21、23の上端側から挿入して落下させるといった簡単な作業となっている。また、この他に必要となる作業も、上端側の礫体捕捉部材31Aを下流側のガイドプレート23にボルト51等で連結するといった簡単な作業となっている。このため、本発明によれば、スリットダム本体10に対して礫体捕捉部材31を取り付けるための現場での作業数を大幅に低減させることが可能となっている。
【0067】
また、本発明によれば、礫体捕捉部材31の取り付け作業時において、間隔保持部材41が固着されていない礫体捕捉部材31Aや、これに間隔保持部材41が固着された礫体捕捉部材31Bのような、比較的小サイズ、小重量のものを一つずつ持ち上げて配置作業を行うことになるので、大型、高性能の重機が不要となり、礫体捕捉部材31の取り付け作業を容易に行うことが可能となっている。
【0068】
次に、本発明に係る鋼製スリットダム1の作用や他の効果について説明する。
【0069】
河川7の上流側から下流側にかけて流れてきた巨礫、流木、中小礫のうち、巨礫、流木は、主としてスリットダム本体10に対して衝突してこのスリットダム本体10によって捕捉される。また、中小礫は、主として礫体捕捉部材31やスリットダム本体10に対して衝突してこれらによって捕捉されることになる。
【0070】
ここで、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される複数の礫体捕捉部材31に負荷される礫体からの衝突荷重は、主として下流側のガイドプレート23を介してスリットダム本体10に伝達されることになる。また、下流側のガイドプレート23が鉛直方向に傾斜して設けられているので、礫体捕捉部材31に礫体から上向きの衝突荷重が負荷されるが、上端側の礫体捕捉部材31が下流側のガイドプレート23に連結されているので、この上向きの衝突荷重もその上端側の礫体捕捉部材31から下流側のガイドプレート23を介してスリットダム本体10に伝達されることになる。即ち、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置されている何れの礫体捕捉部材31もが、ガイドプレート21、23が大きく変形したり支柱11から外れたりしない限り、二枚のガイドプレート21、23間から抜け出ないように構成されていることになる。
【0071】
なお、上端側の礫体捕捉部材31が下流側のガイドプレート23に連結されていなくとも、礫体との衝突時に過度に大きな衝突荷重が負荷されない限り上端側の礫体捕捉部材31のみが二枚のガイドプレート21、23間から抜け出ないものと考えられる。しかし、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される総ての礫体捕捉部材31が抜け出るのを防止して安全性を高めるうえでは上端側の礫体捕捉部材31が下流側のガイドプレート23に連結されていることが好ましい。
【0072】
ここで、本発明に係る鋼製スリットダム1によれば、複数の礫体捕捉部材31のうちの一部の礫体捕捉部材31が損傷した場合に、交換による補修が必要な一部の部材以外は交換することなく補修が完了するため、余計な補修コストの発生を抑えることが可能となる。
【0073】
また、礫体捕捉部材31が、スリットダム本体10を構成する鋼管部材を上流側から交差して覆うように設けられているのではなく、複数の支柱11間に配置される構造となっている。このため、礫体を捕捉する機能を有する部材の無駄な使用が抑えられ、その分、材料コストを抑えることが可能となっている。
【0074】
また、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される複数の礫体捕捉部材31は、上端側に位置するもの以外がガイドプレート21、23等の他部材に対して非固定の状態とされているため、礫体捕捉部材31と他部材を連結した場合に生じる温度応力によるその他部材への影響を抑えることが可能となっている。
【0075】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0076】
例えば、本発明に係るスリットダム本体10は、その支柱11や横梁13の数について特に限定するものではない。また、横梁13は、川幅方向に間隔を空けて立設された3つ以上の支柱11と交差するように接続されていてもよいし、その両端が堤体3内に埋め込まれた鞘管内に挿入されるよう構成されていてもよい。また、支柱11に対して基礎コンクリート5から傾斜して立設された他の支柱11が接続されていてもよい。
【0077】
また、礫体捕捉部材31が取り付けられるべき支柱11は、上述の実施形態において説明したように、スリットダム本体10の最上流側に立設された支柱11とすることが好ましく、これによって、礫体捕捉部材31に対して礫体が衝突する際に発生する衝突荷重を有効に基礎コンクリート5に分散させることができる。
【0078】
また、上述の実施形態において説明した支持部材25は、本発明において必須の構成となるものではなく、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される礫体捕捉部材31を、基礎コンクリート5や横梁13によって直接又は間隔保持部材41を介して支持させるようにしてもよい。
【0079】
図10は、本発明に係る礫体捕捉部材31の他の実施形態の構成を上流側からみた状態を示す正面図であり、図11は、そのD−D線断面図である。
【0080】
本実施形態においては、礫体捕捉部材31が、円形鋼管のような中空断面の円形管状に形成されている。また、礫体捕捉部材31は、その両端部31aが、角筒状の外装部材38内に配置されるとともにその外装部材38に溶接等により固着されている。また、この外装部材38は、流れ方向の両側に二枚のガイドプレート21、23と略平行なスライド面36を有している。この外装部材38は、礫体捕捉部材31の軸方向回りの回動時において、その流れ方向の両側のスライド面36が二枚のガイドプレート21、23に同時に接触可能となるように、その大きさが調整されて形成されている。
【0081】
このような外装部材38を用いることによって、礫体捕捉部材31として中空断面の円形管状のものを用いた場合でも、礫体捕捉部材31が軸方向回りに回動するのを防止することができるので、二枚のガイドプレート21、23間に礫体捕捉部材31の端部31aを挿入して配置する際に、その挿入した際の配向状態のまま礫体捕捉部材31を配置することが可能となる。この結果、上述の実施形態において説明したのと同様に、二枚のガイドプレート21、23間に先行の礫体捕捉部材31の端部31aを挿入した配置した後に、その先行の礫体捕捉部材31を回動させる等して位置決め作業を特にすることなく、後行の礫体捕捉部材31の配置作業を行うことが可能となっている。
【0082】
このような中空断面の円形管状の礫体捕捉部材31を用いた場合、一般に、このような断面形状の部材に関して礫体との衝突時の評価方法が他の断面形状のものより確立されているので、容易に設計を行なうことができるというメリットがある。また、これにより、礫体との衝突時において礫体捕捉部材31自体が大きく変形することによって礫体からの衝撃力を吸収し易くなるというメリットもある。
【0083】
因みに、本実施形態においては、間隔保持部材41が礫体捕捉部材31に固着される代わりに外装部材38に固着されている。
【0084】
また、本実施形態のような外装部材38を用いた場合、川幅方向両側の四枚一組のガイドプレート21、23間に配置される複数の礫体捕捉部材31のうち、上端側の礫体捕捉部材31を下流側のガイドプレート23に連結するうえで、外装部材38や礫体捕捉部材31の内部にボルト51、ナット53等を配置することが困難となる。このため、このような場合、次に説明するようなL形鋼等からなる連結部材37を用いることとしてもよい。
【0085】
この連結部材37は、外装部材38の上下面にその一側面が溶接等により固着されているものであり、例えば、その一側面と直交する他側面を下流側にガイドプレート23に当接させたうえで、この他側面と下流側のガイドプレート23とを貫通するボルト51にナット53を螺合させることによって、礫体捕捉部材31が下流側のガイドプレート23に連結されることになる。
【符号の説明】
【0086】
1 鋼製スリットダム
3 堤体
5 基礎コンクリート
7 河川
10 スリットダム本体
11 支柱
11a 側部
13 横梁
21 ガイドプレート
22 挿入口
23 ガイドプレート
25 支持部材
31(31A、31B) 礫体捕捉部材
36 スライド面
38 外装部材
41 間隔保持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の川幅方向に間隔を空けて構築された堤体間に配置される鋼製スリットダムにおいて、
前記川幅方向に間隔を空けて前記河川の流れ方向に傾斜して立設された複数の支柱と、
前記複数の支柱の互いに対向する側部において、当該支柱の軸方向に沿うとともに前記流れ方向に間隔を空けて略平行に配置された二枚のガイドプレートと、
前記川幅方向両側の前記二枚のガイドプレート間に両端部が配置された礫体捕捉部材とを備え、
前記礫体捕捉部材は、その上側又は下側の少なくとも何れかに配置された間隔保持部材を介して上下方向に間隔を空けて複数積み重ねられていること
を特徴とする鋼製スリットダム。
【請求項2】
前記間隔保持部材は、その上側又は下側の何れか一方の前記礫体捕捉部材にのみ固着されていること
を特徴とする請求項1記載の鋼製スリットダム。
【請求項3】
前記複数の礫体捕捉部材は、その上端側の礫体捕捉部材が下流側の前記ガイドプレートに連結されていること
を特徴とする請求項1又は2記載の鋼製スリットダム。
【請求項4】
前記礫体捕捉部材は、前記流れ方向の両側に前記二枚のガイドプレートと略平行なスライド面を有し、その軸方向回りの回動時において前記流れ方向の両側のスライド面が前記二枚のガイドプレートに同時に接触可能とされていること
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項5】
前記礫体捕捉部材は、中空断面の円形管状に形成されるとともに、その両端部が角筒状の外装部材内に配置されて当該外装部材に固着されており、
前記外装部材は、前記流れ方向の両側に前記二枚のガイドプレートと略平行なスライド面を有し、前記礫体捕捉部材のその軸方向回りの回動時において前記流れ方向の両側のスライド面が前記二枚のガイドプレートに同時に接触可能とされていること
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項6】
前記二枚のガイドプレートは、前記礫体捕捉部材の端部を当該二枚のガイドプレート間に上流側から挿入可能とするための挿入口がその上端側に形成されていること
を特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項7】
前記二枚のガイドプレートの下端側において配置された支持部材を更に備え、
前記複数の礫体捕捉部材は、その下端側の礫体捕捉部材の端部が前記支持部材により支持されていること
を特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項8】
前記複数の支柱は、前記流れ方向に間隔を空けて列状に複数列立設されるとともに、最上流側のものが上端から下端に向かうにつれて上流側に傾斜して立設され、
前記二枚のガイドプレート及び前記礫体捕捉部材は、前記最上流側の複数の支柱に設けられていること
を特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項記載の鋼製スリットダムに用いられること
を特徴とする礫体捕捉部材。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか1項記載の複数の支柱を有するスリットダム本体に対して前記礫体捕捉部材を取り付ける方法であって、
前記複数の支柱の互いに対向する側部に配置された二枚のガイドプレート間に前記礫体捕捉部材の両端部を上端側から挿入することを繰り返すことにより、当該礫体捕捉部材を前記間隔保持部材を介して上下方向に間隔を空けて複数積み重ねて配置すること
を特徴とする礫体捕捉部材の取り付け方法。
【請求項1】
河川の川幅方向に間隔を空けて構築された堤体間に配置される鋼製スリットダムにおいて、
前記川幅方向に間隔を空けて前記河川の流れ方向に傾斜して立設された複数の支柱と、
前記複数の支柱の互いに対向する側部において、当該支柱の軸方向に沿うとともに前記流れ方向に間隔を空けて略平行に配置された二枚のガイドプレートと、
前記川幅方向両側の前記二枚のガイドプレート間に両端部が配置された礫体捕捉部材とを備え、
前記礫体捕捉部材は、その上側又は下側の少なくとも何れかに配置された間隔保持部材を介して上下方向に間隔を空けて複数積み重ねられていること
を特徴とする鋼製スリットダム。
【請求項2】
前記間隔保持部材は、その上側又は下側の何れか一方の前記礫体捕捉部材にのみ固着されていること
を特徴とする請求項1記載の鋼製スリットダム。
【請求項3】
前記複数の礫体捕捉部材は、その上端側の礫体捕捉部材が下流側の前記ガイドプレートに連結されていること
を特徴とする請求項1又は2記載の鋼製スリットダム。
【請求項4】
前記礫体捕捉部材は、前記流れ方向の両側に前記二枚のガイドプレートと略平行なスライド面を有し、その軸方向回りの回動時において前記流れ方向の両側のスライド面が前記二枚のガイドプレートに同時に接触可能とされていること
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項5】
前記礫体捕捉部材は、中空断面の円形管状に形成されるとともに、その両端部が角筒状の外装部材内に配置されて当該外装部材に固着されており、
前記外装部材は、前記流れ方向の両側に前記二枚のガイドプレートと略平行なスライド面を有し、前記礫体捕捉部材のその軸方向回りの回動時において前記流れ方向の両側のスライド面が前記二枚のガイドプレートに同時に接触可能とされていること
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項6】
前記二枚のガイドプレートは、前記礫体捕捉部材の端部を当該二枚のガイドプレート間に上流側から挿入可能とするための挿入口がその上端側に形成されていること
を特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項7】
前記二枚のガイドプレートの下端側において配置された支持部材を更に備え、
前記複数の礫体捕捉部材は、その下端側の礫体捕捉部材の端部が前記支持部材により支持されていること
を特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項8】
前記複数の支柱は、前記流れ方向に間隔を空けて列状に複数列立設されるとともに、最上流側のものが上端から下端に向かうにつれて上流側に傾斜して立設され、
前記二枚のガイドプレート及び前記礫体捕捉部材は、前記最上流側の複数の支柱に設けられていること
を特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項記載の鋼製スリットダムに用いられること
を特徴とする礫体捕捉部材。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか1項記載の複数の支柱を有するスリットダム本体に対して前記礫体捕捉部材を取り付ける方法であって、
前記複数の支柱の互いに対向する側部に配置された二枚のガイドプレート間に前記礫体捕捉部材の両端部を上端側から挿入することを繰り返すことにより、当該礫体捕捉部材を前記間隔保持部材を介して上下方向に間隔を空けて複数積み重ねて配置すること
を特徴とする礫体捕捉部材の取り付け方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−94356(P2011−94356A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248092(P2009−248092)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
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