説明

錠剤状食品とその製造方法

【課題】廃棄処分されていた野菜や果物を、簡単な方法で有効に食品として活用できる錠剤状食品とその製造方法を提供する。
【解決手段】野菜や果物を生の状態で、成分が変質しない温度であって、凍結しない温度範囲で乾燥させて乾燥粉末を形成し、錠剤状の形状にプレスして固める。乾燥は、温度が15℃以下、好ましくは10℃〜−3℃で、湿度が15%以下で行う。乾燥粉末は、粉末状態でプレスして、錠剤状に成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、野菜や果物を乾燥させて錠剤形状に形成した錠剤状食品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年食品の安全性や自給率の向上が問題となり、特に日本では、生産段階から流通段階において、規格外となった野菜や果物、店頭展示期限や賞味期限の来た野菜や果物の廃棄による無駄が問題となっている。現在これらの廃棄する野菜や果物の有効利用方法として、規格外のものや期限の迫ったものを、価格を下げて販売している程度であった。
【0003】
その他、廃棄野菜等の処理方法として、特許文献1に開示されているように、乾燥させて処理する場合や、特許文献2に開示されているように発酵処理して、堆肥等にする場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−239522号公報
【特許文献2】特開平11−292667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景技術の値引き販売する場合は、売れ残る恐れがあり、売れ残った食品は廃棄されている。また、特許文献1,2に開示されているように、乾燥したり発酵させたりして処理する場合は、大がかりなプラントを必要とし、食品として利用するものではないので、食料自給率の向上にはならず、必ずしも有効に利用しているものではなかった。
【0006】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、廃棄処分されていた野菜や果物を、簡単な方法で有効に食品として活用できる錠剤状食品とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、野菜や果物を生の状態で、成分が変質しない15℃以下の温度であって、凍結しない温度範囲で乾燥させて乾燥粉末を形成し、錠剤状の形状にプレスして固める錠剤状食品の製造方法である。
【0008】
前記乾燥は、温度が10℃〜−3℃で、湿度が15%以下で行うものである。さらに、前記乾燥粉末は、粉末状態でプレスして、錠剤状に成形するものである。前記乾燥は、前記野菜や前記果物が凍結しない氷温で乾燥させるものである。
【0009】
またこの発明は、野菜や果物を生の状態で、成分が変質しない15℃以下の温度であって、凍結しない温度範囲で乾燥させて乾燥粉末を形成し、錠剤状の形状にプレスして固めて成る錠剤状食品である。前記乾燥粉末は、糖類や穀類のバインダを添加して固めたものでもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明の錠剤状食品とその製造方法は、廃棄される食材を食品として有効に利用することが出来、製造も容易なものである。さらに、食品の有効利用が促進され、廃棄物処理のための費用もかからず、無駄に捨てられていた食材から種々の付加価値のある食品を生みだすことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態の錠剤状食品とその製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の一実施形態について説明する。この実施形態の錠剤状食品10は、直径が3mm〜30mm程度、好ましくは5mm〜10mmm、厚さが1mm〜10mm程度、好ましくは3mm〜5mm程度の錠剤状の形状であり、気管を詰まらせない大きさであり、円形以外に三角形や四角形等の多角形や、星形、ハート形等の任意の形状の粒形をしたものである。
【0013】
成分は一般的な野菜や果物等の乾燥粉末と、必要に応じて添加されるバインダとしての穀類や糖類から成る。野菜の乾燥粉末としては、例えば、ホウレンソウ、コマツナ、レタス、キャベツ、ハクサイ、自然薯、ニンジン、ダイコン、ゴボウ、トマト、ピーマン等の一般的な野菜、ヨモギやその他の山菜の乾燥粉末も含む。果物の乾燥粉末そしては、イチゴ、メロン、リンゴ、バナナ、マンゴー、桃、梨等、任意に選択可能である。ここで使用する野菜や果物は、食品として食するには問題のないものであって、例えば店頭に並べられて売れ残ったものや、大きさや糖度等が規格外であるとされて、従来廃棄処分されていたものである。この発明では、これらの野菜や果物を廃棄処分せずに、食品として有効に利用するものである。
【0014】
次に、この錠剤状食品10の製造方法について説明する。図1は、錠剤状食品10の製造工程を示した工程図で、先ず、野菜や果物等に対して、前処理を施す。前処理としては、葉物野菜は洗浄し、埃や虫を除去する。果物やニンジン等の根菜類は洗浄後、厚さ1〜5mm程度にスライスする(s1)。洗浄は、ホタテ貝、牡蠣、ホッキ貝、アコヤ貝などの貝殻を焼成した酸化カルシウム粉末や水酸化カルシウム粉末を用いると良い。この酸化カルシウム粉末や水酸化カルシウム粉末は、水に溶かして強アルカリ性を示し、殺菌や農薬の除去機能を有する。
【0015】
洗浄は、強アルカリ性水による殺菌洗浄以外に、次亜塩素酸水による殺菌洗浄や、その他の食品に安全な方法による殺菌方法を用いても良い。
【0016】
次に、葉物野菜やスライスした野菜・果物を、乾燥工程に送り乾燥させる。乾燥は、温度と湿度が精密にコントロールされた乾燥室で行い、粉砕可能な乾燥状態、例えば水分含有率が5%以下、好ましくは3%以下に乾燥させる。乾燥室内の温度は、15℃〜−3℃、好ましくは温度10℃〜−3℃で、凍結しない温度範囲、より好ましくは7℃〜−1℃で行う。特に、野菜や果物が凍結しない氷温で乾燥させると良い。湿度は、15%〜0.1%、好ましくは10%以下の雰囲気で乾燥を行う。
【0017】
さらに、湿度や温度のムラをなくすために、乾燥室内の空気を循環させ、葉物やスライスした野菜・果物を載置した乾燥用テーブルも、コンベア等により移動式にすると良い。乾燥時間は、乾燥する野菜や果物の量や厚みで異なるが、通常は、数〜十数時間程度で乾燥が完了する。これにより、葉物野菜の色が変化せず、その細胞壁が破壊されず、熱に弱いビタミンC等のビタミン類や色素、その他の有効成分が変質したり破壊されたりしない。また、スライスした野菜や果物も、同様にその細胞壁が破壊されず、ビタミンC等のビタミン類や色素、その他の有効成分が変質したり破壊されたりしない。また、低温乾燥により、乾燥時に、風味やうまみ成分の飛散もない(s2)。
【0018】
この後、低温で乾燥した葉物やスライスした野菜や果物を粉末にするため、適度な細かさに粉砕する。粉砕工程では、乾燥野菜や乾燥果物が熱くならないように、好ましくは上記乾燥温度程度で、粉末の平均粒径が10〜1000μm程度の平均粒径に粉砕する(s3)。
【0019】
この後、所定の形状に成形する。成形は、上下の型内に乾燥粉末を送り、打錠機により所定の上下型の形状にプレスして固める。プレス圧は、例えば50MPa〜300MPaである(s4)。ここで、プレス圧を変えることにより、錠剤状食品10の液体への溶けやすさ(分散しやすさ)や食感を変えることができる。特に、プレス圧を低くして、野菜・果物等の乾燥粉末を水に溶け(分散し)やすくすることができる。例えば、スープ等に溶かして食したり、お茶やコーヒー、牛乳等に混ぜて飲用することもできる。その他の液体や固体の食材に溶かしたり振りかけたりして使用することができる。特に形状が錠剤状であるため、量の調整を数で行うことができ、使いやすいものとなる。
【0020】
この実施形態の錠剤状食品10の使用方法は、乾燥した錠剤状食品10を液体の食材に混ぜたり溶かしたりして食する。その他、錠剤状食品10に調味料が含まれている場合は、そのまま食することができる。また、茹でたり、レンジで加熱して食するものでよい。
【0021】
この実施形態の錠剤状食品とその製造方法によれば、従来廃棄されていた野菜や果物を付加価値の高い食品として有効利用することができる。特に、乾燥した食材であり、長期間の保存が可能であり、保存食としても利用可能である。また、錠剤状食品10の形状が、気管を詰まらせる大きさではないので、高齢者や小児が誤って錠剤状食品10を気管に詰まらせる恐れが無く安全であり、栄養価も高いものである。さらに、製造工程が簡単であり、栄養価や風味、色合いが損なわれること無く、外観上も良好なものとなる。特に、凍結しない氷温前後の低い温度で野菜等を乾燥させることにより、風味や色合い栄養価がほとんど損なわれず、食味も向上するものである。
【0022】
なお、上記の野菜等の乾燥粉末は、粉末に糖類や穀類のバインダ成分を加えて打錠機でプレスして固めても良い。これにより、容易に成形可能であり、必要に応じてより固い錠剤状食品10を形成することが出来る。
【0023】
その他この発明の錠剤状食品において、野菜や果物等の低温乾燥工程での温度や湿度の調整は、適宜変更可能である。また、錠剤状食品の形状も適宜選択可能なものであり、食する際に、噛みやすくのどに詰まりにくい大きさに形成されたものであればよい。
【符号の説明】
【0024】
10 錠剤状食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜や果物を生の状態で、成分が変質しない15℃以下の温度であって、凍結しない温度範囲で乾燥させて乾燥粉末を形成し、錠剤状の形状にプレスして固めることを特徴とする錠剤状食品の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥は、温度が10℃〜−3℃で、湿度が15%以下で行うものである請求項1記載の錠剤状食品の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥粉末は、粉末状態でプレスして、錠剤状に成形する請求項2記載の錠剤状食品の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥は、前記野菜や前記果物が凍結しない氷温で乾燥させる請求項2記載の錠剤状食品の製造方法。
【請求項5】
野菜や果物を生の状態で、成分が変質しない15℃以下の温度であって、凍結しない温度範囲で乾燥させて乾燥粉末を形成し、錠剤状の形状にプレスして固めて成ることを特徴とする錠剤状食品。
【請求項6】
前記乾燥粉末は、糖類や穀類のバインダを添加して固めたものである請求項5記載の錠剤状食品。


【図1】
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【公開番号】特開2013−51923(P2013−51923A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192564(P2011−192564)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(591041163)
【出願人】(511215528)
【出願人】(511216411)
【Fターム(参考)】