説明

錠装置

【課題】係止部が不使用状態であっても、悪戯されることのない錠装置の提供を目的とする。
【解決手段】施錠対象物1に形成された被係止部2を施錠状態において連結解除不能に連結し、連結状態において外部から隠蔽される係止部3を備えた錠本体4と、
錠本体4の施錠状態において、不使用の係止部3に脱離不能に連結されて該係止部3を外部から隠蔽する錠保護部材5とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
適宜の施錠対象を施錠可能に連結する錠装置としては、特許文献1、2に記載されたものが知られている。特許文献1記載の従来例において、錠アセンブリーは施錠対象側に形成される錠止部材(被係止部)を脱離不能に受容する複数のドッキングポート(受容孔)を有しており、利用者は空いているドッキングポートに施錠対象物の被係止部を解除不能に係止させることにより盗難等が防止される。
【0003】
しかし、上述した従来例において、不使用のドッキングポートは開放状態のままに放置されるために、悪戯の対象とされるおそれがある。
【0004】
かかる事情は、例えば、特許文献2記載の従来例のように、ワイヤの固定孔(受容孔)が1個しか設けられない場合であっても、施錠対象(ワイヤ)を抜去した使用状態が想定される場合にも発生する。
【特許文献1】特表2002-522189号公報
【特許文献2】特開2001-1967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、係止部が不使用状態であっても、悪戯されることのない錠装置の提供を目的とする。
【0006】
本発明の他の目的は、この錠装置に利用可能な錠保護部材の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記目的は、
施錠対象物1に形成された被係止部2を施錠状態において連結解除不能に連結し、連結状態において外部から隠蔽される係止部3を備えた錠本体4と、
錠本体4の施錠状態において、不使用の係止部3に脱離不能に連結されて該係止部3を外部から隠蔽する錠保護部材5とからなる錠装置を提供することにより達成される。
【0008】
錠本体4は、例えばチェーン、ワイヤ、施錠杆等の施錠対象物1に形成された被係止部2を施錠状態で解除不能に連結可能であり、錠保護部材5は、被係止部2を係止する係止部3が不使用の時に該係止部3に連結される。錠保護部材5は係止部3に連結した状態において、隠蔽部8により係止部3を外部から隠蔽し、係止部3への悪戯が防止される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、係止部が不使用状態であっても、係止部を外部から隠蔽することができるために、係止部への悪戯を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1にチェーン錠として構成された本発明の実施の形態を示す。チェーン錠は、施錠対象物1としてのチェーン状拘束体を施錠状態において解除不能に連結する錠本体4と、錠本体4に装着される錠保護部材5とからなる。
【0011】
チェーン状拘束体1は、切断破壊等に十分な耐性をもった材料により屈曲可能に形成される一般部1aの先端に錠挿入部1bを形成して構成される。錠挿入部1bには、外周を全周に渡って溝状に窪ませて被係止部2が形成される。
【0012】
図2に示すように、錠本体4は、外郭部材4aにより覆われたハウジング4bに回転操作可能なプラグ9を保持して形成される。プラグ9はキー挿入孔9aから挿入される真正な解錠キー(図示せず)によってのみ回転操作可能であり、図1(b)に示す施錠回転位置に対して時計回りと反時計回りに90°回転した位置に解錠回転位置が設定される。図2に示すように、プラグ9の終端には、プラグ9の回転中心(C)に対して偏心したカム突部9bが設けられ、後述する駆動部材10に連結される。
【0013】
上記ハウジング4bにはチェーン挿入孔(受容孔6)が開設される。このチェーン挿入孔6は、図2、3に示すように、プラグ9を挟んで線対称位置に配置される2本の平行なチェーン挿通線(Lc)上に2個が配置され、図3(a)に示すように、各々がハウジング4bの側壁に開口される。
【0014】
図3(a)に示すように、各チェーン挿入孔6の近傍にはロックピース11が配置される。ロックピース11は、プラグ9の中心軸(C)とチェーン挿通線(Lc)に対してねじれの位置にあり、かつ、これらと交差角90°で立体的に交差する枢軸11a回りに回転自在に枢支される。
【0015】
また、ロックピース11は、短辺部が上記錠挿入部1bの被係止部2の曲率にほぼ一致する小判形状を有し、回転姿勢により、一方の短辺部(係止部3)が図4(a)に示すように、チェーン挿入孔6内に進入したり、あるいは図5(b)の右側に示すように、チェーン挿入孔6から退避することができる位置で軸支される。
【0016】
係止部3がチェーン挿入孔6内に進入した後、オーバランして再びチェーン挿入孔6から退避するのを防止し、係止部3がチェーン挿入孔6内に進入する回転位置(係止回転位置)にロックピース11を停止させるために、ハウジング4bには、ロックピース11のストッパ突起11bに衝接するストッパ壁4cが設けられる。さらに、ロックピース11は回転中心に対して点対称形状に形成され、係止部3に対向する他の短辺部において上記ストッパ突起11bに対応するものは、操作突起11cとして利用される。
【0017】
これに対し、係止部3がチェーン挿入孔6から退避するロックピース11の係止解除回転位置側のストローク終端は、図5(b)に示すように、係止部3の側辺が当接するハウジング4bの解除側ストローク規制壁4dにより決定される。
【0018】
さらに、このロックピース11は、付勢手段12により係止回転位置側に付勢される。図3(b)に示すように、この実施の形態における付勢手段12は、ロックピース11の枢軸11aに形成される小判断面部12aと、この小判断面部12aの平面部を挟む板ばね12bにより形成される。ロックピース11が係止解除回転位置まで回転した場合にも付勢力が発生するように、小判断面部12aの平面部と曲率部との境界は、ロックピース11が係止解除回転位置まで回転した場合であっても、板ばね12bに当接するように設定される。
【0019】
図3(a)に示すように、同一チェーン挿通線(Lc)上のロックピース11は、小判断面部12aの姿勢を基準に左右勝手違い形状を有しており、ストッパ突起11bがチェーン挿入孔6の開口方向を向くように背向し、操作突起11cが互いに対向するように配置される。
【0020】
したがってこの実施の形態において、図3に示すように、チェーン状拘束体1の錠挿入部1bがチェーン挿入孔6に挿入されていない状態では、ロックピース11は付勢手段12により係止回転位置に保持される。プラグ9を施錠回転位置にした状態でチェーン状拘束体1の錠挿入部1bをチェーン挿入孔6に挿入すると、図4(a)において右側に示すように、ロックピース11は錠挿入部1bの先端に押されて係止解除回転位置側に回転し、錠挿入部1bをチェーン挿入孔6内に受容する。
【0021】
この状態では、図4(b)の右側に示すように、ロックピース11は付勢手段12により係止回転位置側に付勢されており、さらに錠挿入部1bを挿入して係止部3の回転軌跡に被係止部2が合致すると、図4(a)の左側に示すように、付勢力によりロックピース11は係止回転位置に復帰し、両者は係止状態に移行する。ロックピース11は、係止回転位置からのオーバランがストッパ壁4cにより規制されているために、係止状態で錠挿入部1bに抜去方向の荷重を負荷しても、錠挿入部1bが抜けることはなく、連結状態が維持される。
【0022】
この係止状態の解除は、プラグ9を操作して上記駆動部材10を駆動することにより行われる。図2(b)に示すように、駆動部材10は、プラグ9の中心線(C)に直交する面内で、チェーン挿通線(Lc)に沿って移動自在なプレート体であり、中心部に開設される長孔10aに、プラグ9と一体に回転するカム突部9bが挿通される。カム突部9bは、プラグ9を双方の解錠回転位置まで回転させたときの回転ストロークの中心がプラグ9の施錠回転位置における位置に合致するように設定される。
【0023】
また、駆動部材10の移動側両端縁には操作辺10bが設定される。操作辺10bは、図3(a)に示すように、プラグ9が施錠回転位置にあるときに、対向する操作突起11cの双方に対峙する。この状態から、図5に示すように、プラグ9をいずれか一方の解錠回転位置側に回転させると、図5(b)において右側に示すように、移動先端縁となる駆動部材10の操作辺10bが対応する2個のロックピース11の操作突起11cを押し付ける。この結果、当該ロックピース11は係止解除回転位置側に回転駆動され、このロックピース11により拘束されていた側のチェーン状拘束体1の抜去が可能になる。
【0024】
錠保護部材5は、以上のように、複数のチェーン挿入孔6のうち、不使用のものを閉塞して悪戯から保護するために用意される。この錠保護部材5は、錠挿入部1bほどには外力が負荷されないために、例えば合成樹脂材により形成することが可能であり、この実施の形態においては、合成樹脂材を射出成型して形成される。
【0025】
図1(b)に示すように、上記錠保護部材5は、チェーン挿入孔6に嵌合してチェーン挿入孔6内部、正確には係止部3を外部から隠蔽する筒状の隠蔽部8を備える。隠蔽部8の一端には、錠本体4への装着状態において錠本体4の側壁に当接するフランジ8aが設けられる。
【0026】
また、隠蔽部8の他端には連結部7が形成される。連結部7は錠本体4側の係止部3に連結可能な形状に形成され、この実施の形態においては、錠挿入部1bの被係止部2と同一形状に形成される。
【0027】
したがってこの実施の形態において、チェーン状拘束体1を連結しないチェーン挿入孔6に錠保護装置を挿入し、錠本体4を施錠状態にするだけで、チェーン挿入孔6が完全に閉塞され、外部からの悪戯を防止できる。また、錠本体4を解錠状態にすると、錠保護装置は簡単に抜去できるために、使用感を低下させることもない。
【0028】
なお、以上においては、チェーン状拘束体1を施錠対象物1とし、例えば二輪車等の拘束対象を間接的に拘束する錠本体4を例にとって説明したが、錠本体4は、被係止部2を備えた拘束対象に連結され、該拘束対象を直接拘束するように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を示す図で、(a)は錠挿入部を示す図、(b)は錠保護部材を示す側面図、(c)は錠本体に施錠対象物と錠保護部材を装着した状態を示す平面図、(d)は(b)の正面図である。
【図2】錠本体を示す図で、(a)は図1(b)の2A-2A線断面図、(b)は外殻部材を取り除いた図2(a)の2B方向矢視図である。
【図3】錠挿入部未挿入状態を示す図で、(a)は図2(b)の3A-3A線断面図、(b)は図2(b)の3B-3B線断面図である。
【図4】錠挿入部の挿入状態を示す断面図で、(a)は図3(a)に対応する図、(b)は図3(b)に対応する図である。
【図5】係止解除動作を示す図で、(a)は図2(b)に対応する図、(b)は図3(a)に対応する図である。
【符号の説明】
【0030】
1 施錠対象物
2 被係止部
3 係止部
4 錠本体
5 錠保護部材
6 受容孔
7 連結部
8 隠蔽部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
施錠対象物に形成された被係止部を施錠状態において連結解除不能に連結し、連結状態において外部から隠蔽される係止部を備えた錠本体と、
錠本体の施錠状態において、不使用の係止部に脱離不能に連結されて該係止部を外部から隠蔽する錠保護部材とからなる錠装置。
【請求項2】
前記係止部は錠本体に開設された受容孔内に配置され、
錠保護部材は、受容孔内に挿入されるキャップ状部材として形成される請求項1記載の錠装置。
【請求項3】
施錠対象物に形成された被係止部を施錠状態において連結解除不能に連結する係止部を備えた錠本体の不使用係止部に装着される錠保護部材であって、
錠本体の施錠状態において前記係止部により連結解除不能に連結される連結部と、
連結状態において前記係止部を外部から隠蔽する隠蔽部と、
を有する錠保護部材。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−274548(P2006−274548A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91297(P2005−91297)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000170598)株式会社アルファ (433)