説明

鍛接を利用して酸化物分散強化型貴金属シートを結合するための方法及び装置

本発明は、構造部分を形成するために貴金属シート(1,4)を接合するための方法及び装置、並びに前記方法によって形成される製品(1,4)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
貴金属及び貴金属合金、例えば好適にはPGM材料から成る構造部分は、ガラス工業、特に特殊ガラスの溶融及び熱間成形のためのプラントにおいて使用されている。PGM(白金系金属)製品とも呼ばれる、融着技術において使用されるこれらのプラント構成要素は、液体ガラスを溶融、精製、搬送、均質化及び配分するために働く。これらの貴金属合金は、大抵、ロジウム、イリジウム又は金の合金化添加物を含んだプラチナベース合金である。ガラス溶融物によって課せられる機械的及び/又は熱的な応力により、極めて高い構造部分強度が必要とされる場合、酸化物分散強化型プラチナベース合金がますます使用されるようになっている。なぜならば、これらの合金は、標準的な合金よりも、熱的、機械的及び化学的応力に耐えるためのより高い能力を特徴とするからである。以下ではODS合金とも呼ばれる酸化物分散強化型合金は、極めて均質な微細構造によって識別される。
【0002】
ガラス溶融物を支持するプラント部分は、しばしば、薄い壁部の管システムとして設計された貴金属シート構造体である。溶融したガラスは、1000℃〜1700℃の温度でこれらの構造体を流過する。
【0003】
高い融点により、PGM(白金系金属)材料は、耐熱性、さらに高い機械的強度及び耐摩耗性を特徴とし、したがって、ガラス溶融物と接触する、プラントにおける構造部分又はプラント部分の製造に特に適している。適切な金属は、プラチナ、プラチナの合金、及び/又はその他のPGM金属であり、これらは、選択的に、別の合金化構成要素又は酸化物添加物として少量の卑金属を含んでいてもよい。典型的な材料は、精製プラチナ、プラチナ−ロジウム合金、及びプラチナ−イリジウム合金であり、これらは、強度と、高温クリープに対する耐性とを高めるために、少量の微細に分配された耐熱金属酸化物、例えば特に二酸化ジルコニウム又は酸化イットリウムを含有している。
【0004】
しかしながら、適切な金属の選択に加え、貴金属構成部材の製造、特に成形も、強度の決定において重要な役割を果たす。概して、これらの構成部材は、所要のジオメトリを提供するために個々の金属シートから接合され、通常は融接によって互いに結合される。このプロセスにおいて、互いに結合される金属シートの間の接続部と、当てはまるならば、同じタイプのフィラー材料とが、熱の提供によって溶融状態に変換され、互いに融合させられる。この場合、融着の熱を、電気的なアーク、又は点火されたガス−酸素混合物によって発生することができる。しかしながら、このように接合された構成部材が極めて高い温度、例えば1200℃を超える温度に曝されると、溶接継目がしばしば全体的な材料結合の弱点を形成してしまう。究明された原因は、溶接継目における不均質性と、熱によって影響された領域における微細構造に対する変化である。円筒形の構造部分、例えば管における特に長手方向の溶接継目は、周方向の溶接継目と比較してほとんど2倍大きな作用応力による特定のリスクを受け、したがってこれらの長手方向の溶接継目はしばしば破損し、分裂する。公知の溶接プロセス、例えばタングステン不活性ガス(TIG)溶接、プラズマ溶接、レーザ溶接、アセチレン溶接が用いられる場合、合金は溶融される。1200℃を超える温度における使用中の再結晶化の結果として、従来の代わりの固溶体合金を溶融する場合、溶接継目において、極めて僅かな強度損失しか見られないが、酸化物分散強化合金を溶接する場合の溶融は、溶融物における、通常はZrO2及び/又はY23の、大部分の分散質の凝集及び浮動につながる。溶接継目に、粗い粒子の固化微細構造が形成される。これにより、溶接継目における分散質の強化作用が無効にされる。したがって、応力に耐えるための、このように接合された構成部材の能力、及び構成部材の寿命は、標準的な合金から接合された構成部材のレベルに減じられる。
【0005】
この欠点を防止するための手段は、特開昭52−12577号公報及び欧州特許第0320877号明細書から公知である。これらに開示されたプロセスにおいて、ODS金属シートにおける融接された継目は、その後、Pt−ODS箔によって被覆され、高温においてハンマー打ち(hammering)することによって継目になるようにプレスされる。この手段は、箔を介して、溶接継目の粒径分布の細かさを高め、その結果、表面におけるき裂形成の可能性を減じる。別の廃れた代替手段に加え、鍛接された継目によって形成された一体的な結合部に頼っていた。しかしながら、このタイプの結合は、品質の極めて大きな変動を生じる。これらの変動を排除するために、溶接継目の準備のための極めて大きな出費と、溶接中のプロセスパラメータの極めて正確な制御とが要求される。このプロセスの場合、ハンマー打ちの間の、接合される2つの材料、特に金属シートの均一な加熱が困難であることが判明した。そうする場合、ハンマー打ちの間に良好な接着効果を達成するためにトーチによって十分に溶接位置における下側の金属シートを加熱することは、しばしばほとんど不可能である。このプロセスはその結果極めて手間がかかり、必ずしも最適な結果につながらず、極めて高価である。さらに、鍛接された継目を製造する場合の基本的な問題があり、この問題は、4質量%未満のロジウム含有量を有する合金の場合、一般的にODS合金の場合、ハンマー打ちの間の材料の低い接着傾向があるということである。ODS材料に既に存在する酸化物及び/又はハンマー打ちの間に形成される酸化物、主として酸化ロジウムは、2つの構造的部材、特に金属シートの接着結合を著しく低下させる。不十分な接着結合は、製造費を著しく高めるという効果を有するが、同時に、継目における接合領域のある領域において十分な結合がもはや達成されないリスクを高めるという効果も有する。
【0006】
独国特許第10237763号明細書において、酸化物拡散強化型(ODS)金属材料の構造部分の永久的な一体的な結合の形成の間、個々の材料の溶接はそれぞれ融解温度よりも低温で行われ、接合領域における拡散接合の少なくとも部分的な形成を生じる。第2のプロセスステップにおいて、拡散接合部、好適には接合領域全体は、同様に材料及び/又は互いに結合される構造部分の融解温度よりも低温の温度に加熱され、この温度において、機械的に再コンパクト化され、ハンマー鍛造される。溶接作業の前の互いに対する配置に依存して、この場合に互いに結合される2つの材料は、接合部を形成し、この接合部は、概して接合領域、すなわち2つの材料の間の所望の結合が形成される領域をも形成する。このプロセスにおいて、酸化物拡散強化型(ODS)金属材料の構造部分の永久的な一体的な結合は、結果的に、加熱による機械的な再コンパクト化の前に行われる拡散溶接結合の形成のために配置することによって提供される。好適な実施の形態は、溶接フィラーの使用を提供する。この溶接フィラーは、2つの材料及び/又は互いに結合される酸化物拡散強化型金属材料の構造部分の間の接合領域に配置される。この場合、溶接フィラーは、別個のエレメントの形態であることもでき、又は接合領域において互いに面する接合面のうちの少なくとも一方におけるコーティングの形態であることもできる。この場合の適切な溶接フィラーは、特に、延性の融解合金、例えばPtAu5、PtIr1、純粋なPtであるが、よりソリッドな合金、例えばPtRh5、PtRh10、PtIr3でもある。前記文献は、溶接フィラーが、互いに結合される2つの材料の間の著しく改善された結合を達成することを可能にすると強調する。なぜならば、2つの材料の間の接着傾向が著しく高められるからであり、このことは、製造費を著しく減じる。さらに、熱的及び機械的な応力に耐える接合領域の能力は著しく高められるべきである。さらに、前記文献は、貴金属泊の挿入が何よりも好適であることを強調する。好適な実施の形態において、この文献は、結合される金属シートのエッジが面取りされており、これらの面取りされたエッジが互いに正確に合わさるように互いに上下に配置され、凍結ステップにおいて、まず拡散接合によって仮に結合され、この拡散接合は、その後のステップにおいて最終的な拡散接合を生ぜしめるために機械的に再コンパクト化される。
【0007】
エッジの面取りされた部分を互いに対面させて正確に重ねることは不利であり、このことは、他の金属シートよりも薄い拡散接合、又はより強力でない拡散接合を生じ、これらはいずれも、特に機械的荷重が加えられた場合に、結合のより小さな強度を生じる。さらに、結合される金属シートとは異なる組成の溶接フィラー又は箔の使用は不利である。なぜならば、結果として生じるカーケンドール効果が空隙形成を生じるからである。
【0008】
本発明は、酸化物拡散型貴金属シートを結合するための改良された及び/又は択一的な方法と、この方法を実施するための装置とを提供するという目的に基づく。
【0009】
適切な貴金属シートは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、及びこれらの互いの合金及びその他の金属とのこれらの合金から選択された貴金属、好適には、金、プラチナ、ロジウム、イリジウム、及びこれらの互いの合金及びその他の金属とのこれらの合金、特に純水プラチナ、金かイリジウムか又はロジウムを含むプラチナ合金から選択された貴金属、特にPtAu5、PtIr1、PtRh5、PtRh10、PtIr3から成るグループから選択された合金から成る金属シートである。本発明によれば、貴金属シートは、適切な酸化物の拡散により、酸化物拡散、すなわち微粒子安定化されている。これらの酸化物は概して希土類酸化物、例えば酸化イットリウム、酸化ジルコニウムである。特に好適であるのは、酸化イットリウム又は酸化ジルコニウムが酸化物拡散された、プラチナ、PtAu5、PtIr1、PtRh5、PtRh10又はPtIr3から成る金属シートである。
【0010】
この目的は、請求項の主体によって、また本願の記載に開示されているように達成される。
【0011】
第1の態様によれば、本発明は、以下のステップを含む上記の方法に関する。つまり、ベースを予熱し、結合される少なくとも2つの金属シート部分を、重なり合うように配置し、少なくとも1つの金属シート部分をベース上に載置し、金属シート部分に拡散鍛接を行う。この場合、ベースは、真っ直ぐな又は曲がった形態又はあらゆるその他の一体的な又は組み合わされた形態を有することができ、金敷であってよい。ベースは好適には、特にその後に拡散溶接の領域において望まれるような形態に対応する形態を有する。したがって、管状の物品が形成される場合には、ベースは好適には、管状の物品と同じか又は同等の曲率半径を備えるように形成される。重なり合った配置は、手作業で又は機械を利用して提供することができる。重なり合わされる金属シート部分に隣接した金属シート領域は好適には締め付けられ、製造及び拡散鍛接の間にこれらの金属シート部分が所定の位置から滑り出るのを防止する。
【0012】
さらに、別の態様によれば、エッジは好適には面取りされており、さらに好適には真っ直ぐに面取りされている。この場合、結合される金属シート部分は、面取りされたエッジがその後に外向きに、すなわち金属シート部分が重なり合うように配置された時に隣接する金属シート部分と反対側に延びるような形で面取りされている。このような形式での金属シート部分の面取り及び整合は、完成した接合製品のクリープ破断強さを高めることが分かった。このことは以下により詳細に示す。この場合にも、金属シート部分に拡散鍛接が行われる。本発明による好適なプロセスはまた、上記の2つの態様、すなわちベースの提供及び予熱と、示された形式での面取りの形成とを含んでいる。
【0013】
面取りされたエッジの面取り幅(F)は、元の金属シート厚さ(t0)の1〜3倍、好適には2倍である。さらに好適には、面取り角度αは、約15〜27゜、好適には約17.6〜約25.6゜、さらに好適には約19.6〜約23.6゜、最も好適には約21.6゜である。面取りされたエッジは好適には、エッジの面取りされた部分が互いに平行又は少なくとも実質的に平行になるように、つまり面取りされた部分が互いに対面するように配置された時には両方のエッジが互いに補い合うような形に成形されている。これは常に、面取り角度αが両方のエッジに対して同じであるような場合である。
【0014】
本発明によれば、ベースは、約300〜約600℃、好適には約350〜約550℃、さらに好適には約400〜約500℃に予熱される。この予熱は、あらゆる所望の形式、例えば適切な炉において火炎を利用してベースを加熱することによって又は好適にはベース内に及び/又はベース上に提供された誘導加熱器又は抵抗加熱器によって行うことができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、重なり合った配置は、金属シート部分を好適には互いに上下に直接に配置することを含む。さらに、金属シート部分の間には溶接フィラー及び/又は箔は提供されない。本発明によれば、バンデージも使用されず、これは、金属シートの重なり合った部分の上側又は下側に付加的な管片又は金属シートが配置されないことを意味し、例えば独国特許第1527299号明細書の図1に示されているように、結合されるエッジの間の拡散接合に導入される。それにもかかわらず本発明は従来技術よりも優れたクリープ破断強さを提供することが分かった。
【0016】
金属シート部分は好適には、元の金属シート厚さ(t0)の2.5〜7.5倍、好適には、元の金属シート厚さ(t0)の4〜7倍の重なり合い長さだけ重なり合うように配置される。拡散溶接の後、金属シート部分の重なり合いは、元の金属シート厚さ(t0)の3〜8倍、好適には元の金属シート厚さ(t0)の5〜7倍である。
【0017】
拡散鍛接は好適にはガス−酸素トーチを用いて行われる。したがって、金属シート部分は局所的に、好適には約1000℃〜約1700℃の温度、さらに好適には約1200℃〜約1300℃の温度又は約1400℃〜約1600℃の温度に加熱される。さらに好適には、金属シート部分は、好適には約0.05〜約25μm、さらに好適には約0.5〜約10μmの表面粗さRaを備えるように、重なり合うように配置される前に互いに対面する側において粗くされる。この粗さは、規定された切断刃による切断によって、又は規定されない切断刃を用いて切断することによるその後の表面切削、例えば研削によって、面取りの間に既に提供されていてよい。粗くすることは、拡散溶接の領域における拡大した表面積を提供することを可能にし、かつ/又は溶接パラメータの改善された制御性を可能にする。
【0018】
本発明は、拡散鍛接の後に、拡散鍛接によって提供された継目に、継目を平滑化しかつ/又は継目の厚さを減じるために冷間成形又は熱間成形が行われることも提供する。このプロセスにおいて、厚さは好適には、元の金属シート厚さ(t0)の0.9〜1.2倍、さらに好適にはほぼ元の金属シート厚さ(t0)に減じられる。次いで、均一な表面品質を得るために継目には、適切であるならば全表面と一緒に、継目を研削及び研磨することによって表面仕上げを提供することもできる。
【0019】
このプロセスは好適には、冷間成形又は熱間成形の後に、継目が、元の金属シート厚さ(t0)の約5〜約10倍の幅、さらに好適には元の金属シート厚さ(t0)の約6〜約7倍の幅を有する。さらに好適には、拡散溶接の後に、約900℃〜約1400℃の温度、好適には約1000℃〜約1200℃の温度での熱処理(応力除去焼きなまし)が行われる。本発明によれば、金属検鏡試片において、本発明によるプロセスによって得られた継目と、継目を有さない隣接する金属シート部分との間に、差異を確認することはできない。
【0020】
別の態様によれば、本発明は、酸化物拡散強化型貴金属シートを結合するための、特に本発明による方法を行うための装置にも関する。特に、この装置は、上記のように形成及び設備することができる加熱可能なベースを有する。さらに、結合される少なくとも2つの金属シート部分を、これらの金属シート部分が重なり合うように配置するための整合装置が提供されている。この整合装置は、液圧式、空圧式及び/又は電気式に作動可能な締付け装置を有することができる。締付け後、少なくとも2つの金属シート部分のうちの少なくとも一方はベース上に載置される。さらに、金属シート部分に拡散鍛接を提供するためのハンマーが提供されている。半自動又は全自動のハンマーを使用することができる。
【0021】
本発明による装置は好適には、少なくとも金属シート部分によって接触される表面において、約300℃〜約600℃、好適には約350℃〜約550℃、さらに好適には約400℃〜約500℃に加熱するために適した加熱可能なベースを有する。
【0022】
以下の記載において、好適な典型的な実施の形態に基づいて発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】接合前の2つの面取りされた金属シート部分を示す概略図であり、面取り部は本発明に従って互いから離れる方向に面している。
【図2】図1と同様の別の概略図を示しているが、金属シート部分は加熱されるベース10及び/又は金敷上に位置決めされている。
【図3】拡散鍛接によって結合された2つの金属シート部分を示す別の概略図である。
【図4】拡散鍛接によって結合されかつ冷間成形も行われた2つの金属シート部分を示す別の概略図である。
【図5】従来技術の方法による拡散鍛接によって結合されかつ冷間成形も行われた2つの金属シート部分を示す別の概略図である。
【図6】正規化されたクリープ破断強さを示すグラフである。
【0024】
図1には、2つの金属シート部分、つまり第1の金属シート部分1と第2の金属シート部分4とが示されており、この実施の形態においてこれらは同じ又は少なくとも極めて近似の金属シート厚さt0を有する。これらの厚さは互いに異なることもできる。金属シート部分の両端部は、真っ直ぐな形式で外向きに、すなわちそれぞれの隣接する金属シート部分とは反対側に面した側において面取りされており、これにより、面取り部3及び6は面取り角度αで形成されており、面取り幅はFで示されている。発明の1つの態様によれば、これらの面取り部は、金属シート部分が接合されていない状態において2つの金属シート部分が1つの平面にない、若しくは実質的に1つの平面にないような形で向き付けられている。重なり合い幅Uを有する重なり合い領域において、2つの金属シート部分の、後で接触させられるそれぞれの接触部分2及び5は対向しており、これらの接触部分を粗くすることが可能である。重なり合い幅Uは常に面取り幅Fよりも大きい。
【0025】
図2は、既に加熱されているか又はさらに加熱される、金敷等のベース10に2つの金属シート部分4が載置されている実施の形態を示している。この場合、熱はベースから、最初に第2の金属シート部分4へ伝達され、適切であるならば第1の金属シート部分1にも伝達される。第1の金属シート部分1の一部もベース10上に載置されているならば、熱はまたこれを介して伝達されるが、溶接される金属シート部分の複数箇所の予熱が重要である。
【0026】
両金属シート部分1及び4は整合装置(図示せず)によって締付力FEで締め付けられる。整合装置は概して、締め付けられた金属シート部分によって間接的にベース10に結合されているだけである。
【0027】
図3は、拡散鍛接若しくは拡散ハンマー溶接によって接合された形式における2つの金属シート部分1及び4を示している。これは、図3に概略的に示すような構造を提供する。溶接継目の領域において、厚さは元の金属シート厚さt0の1.0〜1.6倍である。溶接継目の幅はBweldであり、概して元の重なり合い幅U(図1参照)よりも広い。
【0028】
図4は、結局、溶接継目の領域における厚さtfinishedを備えた、冷間成形によって得られた厚さの減少を示している。既に述べたように、これは実質的にt0に相当するか又はこれよりも僅かに大きいだけである。他方、溶接継目の完成した幅Bは、拡散鍛接の直後の溶接継目幅よりも広い。
【実施例】
【0029】
比較例において、材料FGSPtRh10(酸化ジルコニウムによって微粒子安定化されたPtRh10)から成りかつ0.8mmの厚さを有する金属シート部分と、金属シート部分の間に挿入された化学的に純粋なプラチナ箔とに拡散溶接を行った。本発明による例として、様々な面取り及び重なり合いを有する複数の金属シート部分に拡散溶接を行った。様々な重なり合い長さ及び面取り角度は表1に示されている。ベースは約400℃の温度に予熱され、次いで約1250℃の温度で拡散溶接が行われた。冷却後、継目は室温で元の金属シート厚さまでハンマー鍛造された。1400℃の温度での1時間、10時間及び100時間における、比較例に関して正規化されたクリープ破断強さが、表2及び図6に示されている。クリープ破断強さを決定するために、継目と、600mm、5mm及び0.8mmの長さ、幅及び高さとを有する帯材が、炉における1400℃の温度で様々な重量で負荷され、破断が引張強さに対してプロットされるまで時間が計測された。1時間、10時間及び100時間におけるクリープ破断強さは、得られた、比較例のクリープ破断強さに関して正規化されたプロットから決定される。重なり合い長さ及び面取り角度を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
この結果から、比較試験と比較して著しく改善されたクリープ破断強さを見て取ることができる。
【0033】
溶接されていない開始材料と比較すると、降伏強さは僅かしか減じられていない。比較的長時間(試験作業における100時間)の後でさえも、クリープ破断強さは、溶接されていない開始材料のクリープ破断強さよりも、多くとも約20%しか低くない。より高温(1400℃)では、クリープ破断強さは、溶接継目に挿入された箔を有する試料の場合よりもほぼ50%高い。
【0034】
本発明は同様に、個々の特徴部が他の特徴部に関連して示されているとしても及び/又は上記又は下記に言及されていないとしても、図面における個々の特徴部を含んでいる。
【0035】
本発明は同様に、様々な実施の形態に関連して上記又は下記に言及又は図示された特徴のあらゆる組合せを備えた実施の形態を含んでいる。本発明は同様に、これらの表現、特徴部、数値又は範囲が、"約、ほぼ、実質的に、概して、少なくとも"等の表現と関連して上記又は下記に言及されているとしても、正確な又は厳格な表現、特徴、数値又は範囲等を含んでいる(すなわち"約3"は同様に"3"を含むべきである又は"実質的に半径方向"は"半径方向"を含むべきである)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物拡散強化型貴金属シートを結合する方法において、
ベースを予熱し、結合される少なくとも2つの金属シート部分を重なり合うように配置し、少なくとも一方の金属シート部分をベース上に載置し、金属シート部分に拡散鍛接を行うことを特徴とする、酸化物拡散強化型貴金属シートを結合する方法。
【請求項2】
酸化物拡散強化型貴金属シートを結合する方法において、
結合される少なくとも2つの金属シート部分のエッジを面取りし、
少なくとも2つの金属シート部分を重なり合うように配置し、その際、面取りされたエッジは、隣接する金属シート部分とは反対側に外向きに延び、
金属シート部分に拡散鍛接を行うことを特徴とする、酸化物拡散強化型貴金属シートを結合する方法。
【請求項3】
貴金属シートが、プラチナ、金、ロジウム、イリジウム及びこれらの互いの合金又はその他の金属とのこれらの合金から成る金属シートである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
面取りされたエッジの面取り幅(F)が元の金属シート厚さ(t0)の1〜3倍、好適には2倍である及び/又は面取り角度が15〜27゜、好適には17.6〜25.6゜、さらに好適には19.6〜23.6゜、最も好適には約21.6゜である、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
前記ベースを300〜600℃、好適には350〜550℃、さらに好適には400〜500℃に予熱する、請求項1,3又は4記載の方法。
【請求項6】
重なり合う配置が、金属シート部分を互いに上下に直接に配置することを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
金属シート部分を、元の金属シート厚さ(t0)の2.5〜7.5倍、好適には元の金属シート厚さ(t0)の4〜7倍の重なり合い長さで重なり合うように配置する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
拡散鍛接の後に、金属シート部分の重なり合いが、元の金属シート厚さ(t0)の3〜8倍、好適には元の金属シート厚さ(t0)の5〜7倍である、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
拡散鍛接をガス−酸素トーチを用いて行い、これにより、金属シート部分を局所的に、好適には1000〜1700℃の温度、さらに好適には1200〜1300℃又は1400〜1600℃の温度に加熱する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
金属シート部分を重なり合うように配置する前に、0.05〜25μm、さらに好適には0.5〜10μmの表面粗さRaを備えるように、前記金属シート部分を互いに対面する側において粗くする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
拡散鍛接の後に、該拡散鍛接によって形成された継目に冷間成形又は熱間成形を行い、これにより、継目の厚さを好適には元の金属シート厚さ(t0)の0.9〜1.2倍、さらに好適にはほぼ元の金属シート厚さ(t0)にまで減じる、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
冷間成形又は熱間成形の後に、継目が元の金属シート厚さ(t0)の5〜10倍、さらに好適には元の金属シート厚さ(t0)の6〜7倍の幅を有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
拡散鍛接の後に、900〜1400℃、好適には1000〜1200℃で応力除去焼きなましを行う、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
酸化物拡散強化型貴金属シートを結合するための、特に請求項1から13までのいずれか1項記載の方法を行うための装置において、
加熱可能なベースと、
結合される少なくとも2つの貴金属シート部分を重なり合うように配置するための整合装置とが設けられており、少なくとも1つの金属シート部分はベース上に載置されており、
金属シート部分に拡散鍛接を行うためのハンマーが設けられていることを特徴とする、酸化物拡散強化型貴金属シートを結合するための、特に請求項1から13までのいずれか1項記載の方法を行うための装置。
【請求項15】
加熱可能なベースは、300〜600℃、好適には350〜550℃、さらに好適には400〜500℃に加熱することができ、好適には誘導加熱器を有する、請求項14記載の装置。
【請求項16】
請求項1から13までのいずれか1項記載の方法によって得られる、貴金属シートから成る接合された物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−501623(P2013−501623A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524122(P2012−524122)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004410
【国際公開番号】WO2011/018148
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】