鎖状構造体情報の生成装置、生成方法、及び生成プログラム
【課題】高分子モデルを成形するための鎖状構造体情報を自動的に生成する。
【解決手段】鎖状構造体情報の生成装置100は、粒子鎖に追加する新たな粒子の配置位置を定義するための成長パラメータと、成長パラメータによって決定された配置位置に新たな粒子を配置できない場合に新たな配置位置を決定するための成長ルールと、を取得する情報取得部101と、鎖状構造体を生成するための作業領域内に、粒子鎖を生成するための種粒子を示す種粒子位置情報を生成する種粒子配置部102と、種粒子のそれぞれについて、成長ルール及び成長パラメータに従って決定された方向に、新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する粒子鎖成長制御部103と、生成された複数の粒子鎖を示す情報を、鎖状構造体を示す情報として出力する鎖状構造体情報出力部107と、を備えることを特徴とする。
【解決手段】鎖状構造体情報の生成装置100は、粒子鎖に追加する新たな粒子の配置位置を定義するための成長パラメータと、成長パラメータによって決定された配置位置に新たな粒子を配置できない場合に新たな配置位置を決定するための成長ルールと、を取得する情報取得部101と、鎖状構造体を生成するための作業領域内に、粒子鎖を生成するための種粒子を示す種粒子位置情報を生成する種粒子配置部102と、種粒子のそれぞれについて、成長ルール及び成長パラメータに従って決定された方向に、新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する粒子鎖成長制御部103と、生成された複数の粒子鎖を示す情報を、鎖状構造体を示す情報として出力する鎖状構造体情報出力部107と、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子モデル成形に用いる鎖状構造体を示す情報の生成装置、生成方法、及び生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムなどの高分子が非常に良く伸び、かつ簡単に破断せずに力を取り除くと元の形状に戻る性質を有する理由は、多数の非常に長い高分子鎖が効率的に折り畳まれながら絡み合っていることに起因していることが知られている(例えば非特許文献1)。高分子のように非常に長い分子鎖は、必然的に絡み合ったり結び目ができる可能性が高い。天然であれ人工であれ高分子の鎖は、元々長い鎖ありきではなく、分子が多数集合する過程で非対称な分子間力の影響で螺旋構造やループを作りながら長い構造へと変化することが知られている。また、伸縮性の高い繊維も良くよられた糸をさらに捻った状態で織ったり編んだりすることで、その特性が得られることも知られている。
【0003】
また、高分子に限らず、繊維、毛髪、ロープ、ワイヤーなど細長い鎖状または紐状の物質が規則的にまたは不規則に多数集まってできている物質は、非常に大きな伸縮特性を示したり液膜を保持したり1本の鎖の引張強度の何百倍もの強度を示したりと、その幾何学的な理由から、それぞれ特有の性質が生み出される。
【0004】
この性質を定量的に調べるためには、実際の対象物質を用いた実験を行う手法と、幾何学と統計力学を組み合わせた解析的な手法と、形状を模擬した物質またはコンピュータを用いたシミュレーション的手法が考えられる。当然ながら、コンピュータによる詳細なシミュレーションが可能であれば、経済的であるばかりか、実在しない新素材の開発などの可能性が出てくる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】久保亮五、“ゴム弾性”、裳華房、1996年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高分子、繊維、毛髪、ロープ、ワイヤーなど、単純な物質が1次元的に多数連結して細長い鎖状物質が多数集まってネットワークを構成している伸縮性の大きな系に対する数値シミュレーションを可能とするためには、高分子のように大きな伸張強度を発揮したり、500%を簡単に超えるような大きなひずみを生じるような特性をもつことができる構造をコンピュータシミュレーションの初期状態として実現できることが望ましい。
【0007】
そこで本発明は、高分子材料等の性質を再現可能な高分子モデルを成形するための鎖状構造体情報を自動的に生成可能な生成装置、生成方法、及び生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る鎖状構造体情報の生成装置は、高分子モデル成形に用いる鎖状構造体を示す情報の生成装置であって、鎖状構造体を示す情報は相互に接触せず任意の形状をとる複数の粒子鎖を示す情報から構成され、粒子鎖を示す情報のそれぞれは、温度に応じたランダム速度で動く複数の粒子を示す情報と、隣接する2つの粒子を一定範囲の距離に保つばね部を示す情報とから構成されており、粒子鎖に新たな粒子を追加する際に、粒子鎖の端部に位置し該新たな粒子と連結する粒子に対する該新たな粒子の相対的な配置位置を定義するための成長パラメータと、成長パラメータによって決定された配置位置に新たな粒子を配置できない場合に新たな配置位置を決定するための成長ルールと、を取得する取得手段と、鎖状構造体を生成するための作業領域内に、粒子鎖を生成するための種粒子として配置される複数の粒子を示す種粒子位置情報を生成する種粒子配置手段と、種粒子配置手段によって生成された種粒子位置情報により定義される種粒子のそれぞれについて、取得手段により取得された成長ルール及び成長パラメータに従って決定された方向に、粒子間の距離を一定範囲に保つバネ部によって新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する粒子鎖生成手段と、粒子鎖生成手段により生成された複数の粒子鎖を示す情報を、鎖状構造体を示す情報として出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
同様に、上記課題を解決するために、本発明に係る鎖状構造体情報の生成方法は、高分子モデル成形に用いる鎖状構造体を示す情報の生成方法であって、鎖状構造体を示す情報は相互に接触せず任意の形状をとる複数の粒子鎖を示す情報から構成され、粒子鎖を示す情報のそれぞれは、温度に応じたランダム速度で動く複数の粒子を示す情報と、隣接する2つの粒子を一定範囲の距離に保つばね部を示す情報とから構成されており、粒子鎖に新たな粒子を追加する際に、粒子鎖の端部に位置し該新たな粒子と連結する粒子に対する該新たな粒子の相対的な配置位置を定義するための成長パラメータと、成長パラメータによって決定された配置位置に前記新たな粒子を配置できない場合に新たな配置位置を決定するための成長ルールと、を取得する取得ステップと、鎖状構造体を生成するための作業領域内に、粒子鎖を生成するための種粒子として配置される複数の粒子を示す種粒子位置情報を生成する種粒子配置ステップと、種粒子配置ステップにおいて生成された前記種粒子位置情報により定義される種粒子のそれぞれについて、取得ステップにおいて取得された成長ルール及び成長パラメータに従って決定された方向に、粒子間の距離を一定範囲に保つバネ部によって新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する粒子鎖生成ステップと、粒子鎖生成ステップにおいて生成された複数の粒子鎖を示す情報を、鎖状構造体を示す情報として出力する出力ステップと、を備えることを特徴とする。
【0010】
同様に、上記課題を解決するために、本発明に係る鎖状構造体情報の生成プログラムは、高分子モデル成形に用いる鎖状構造体を示す情報の生成プログラムであって、鎖状構造体を示す情報は相互に接触せず任意の形状をとる複数の粒子鎖を示す情報から構成され、粒子鎖を示す情報のそれぞれは、温度に応じたランダム速度で動く複数の粒子を示す情報と、隣接する2つの粒子を一定範囲の距離に保つばね部を示す情報とから構成されており、粒子鎖に新たな粒子を追加する際に、粒子鎖の端部に位置し該新たな粒子と連結する粒子に対する該新たな粒子の相対的な配置位置を定義するための成長パラメータと、成長パラメータによって決定された配置位置に新たな粒子を配置できない場合に新たな配置位置を決定するための成長ルールと、を取得する取得機能と、鎖状構造体を生成するための作業領域内に、粒子鎖を生成するための種粒子として配置される複数の粒子を示す種粒子位置情報を生成する種粒子配置機能と、種粒子配置機能によって生成された種粒子位置情報により定義される前記種粒子のそれぞれについて、取得機能により取得された成長ルール及び成長パラメータに従って決定された方向に、粒子間の距離を一定範囲に保つバネ部によって新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する粒子鎖生成機能と、粒子鎖生成機能により生成された複数の粒子鎖を示す情報を、鎖状構造体を示す情報として出力する出力機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とする。
【0011】
これらの構成により、作業領域内に配置された種粒子から成長パラメータに従った成長方向に新たな粒子が連結され、また、成長パラメータによって決定された配置位置に他の粒子や作業領域境界が存在するために粒子を配置不可能な場合には、成長ルールに従った新たな成長方向に粒子が連結されて、粒子鎖が成長していき鎖状構造体が生成される。このため、成長パラメータと成長ルールという情報を与えるだけで、高分子材料等の性質を再現可能な高分子モデルを成形するための鎖状構造体情報を自動的に生成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る鎖状構造体情報の生成装置、生成方法、及び生成プログラムによれば、高分子材料等の性質を再現可能な高分子モデルを成形するための鎖状構造体情報を自動的に生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る鎖状構造体情報の生成装置のブロック構成図である。
【図2】鎖状構造体情報に用いる粒子の定義を示す図である。
【図3】鎖状構造体情報に用いる粒子の粒子間結合の定義を示す図である。
【図4】図1中の種粒子配置部により作業領域内に配置された種粒子を示す図である。
【図5】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図6】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図7】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図8】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図9】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図10】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図11】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図12】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図13】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図14】図1中の接触判別部により接触ありと判別される状態と、接触ありと判定された場合の粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図15】図1中の接触判別部により接触ありと判別される状態と、接触ありと判定された場合の粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図16】図1中の接触判別部により接触ありと判別される状態と、接触ありと判定された場合の粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図17】図1中の接触判別部により接触ありと判別される状態と、接触ありと判定された場合の粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図18】鎖状構造体の成長過程の一例を示す図である。
【図19】鎖状構造体の成長過程の一例を示す図である。
【図20】鎖状構造体の成長過程の一例を示す図である。
【図21】鎖状構造体の鎖の長さの分布を示す図である。
【図22】成長パラメータに応じた生成装置により生成された鎖状構造体の例を示す図である。
【図23】成長パラメータに応じた生成装置により生成された鎖状構造体の例を示す図である。
【図24】成長パラメータに応じた生成装置により生成された鎖状構造体の例を示す図である。
【図25】成長パラメータに応じた生成装置により生成された鎖状構造体の例を示す図である。
【図26】本実施形態の鎖状構造体情報の生成装置により実施される鎖状構造体情報の生成処理を示すフローチャートである。
【図27】本実施形態の鎖状構造体情報の生成装置により実施される鎖状構造体情報の生成処理を示すフローチャートである。
【図28】本実施形態に係る鎖状構造体情報の生成プログラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る、高分子モデル成形に用いる鎖状構造体情報の生成装置の好適な実施形態について図1から図28を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の記号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る鎖状構造体情報の生成装置のブロック構成図、図2は、鎖状構造体情報に用いる粒子の定義を示す図、図3は、鎖状構造体情報に用いる粒子の粒子間結合の定義を示す図、図4は、図1中の種粒子配置部により作業領域内に配置された種粒子を示す図、図5〜13は、図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図、図14〜17は、図1中の接触判別部により接触ありと判別される状態と、接触ありと判定された場合の粒子鎖の成長過程を示す図、図18〜20は、鎖状構造体の成長過程の一例を示す図、図21は、鎖状構造体の鎖の長さの分布を示す図、図22〜25は、成長パラメータに応じた生成装置により生成された鎖状構造体の例を示す図、図26〜27は、本実施形態の鎖状構造体情報の生成装置により実施される鎖状構造体情報の生成処理を示すフローチャート、図28は、本実施形態に係る鎖状構造体情報の生成プログラムを示す図である。
【0016】
ゴムなどの高分子材料についてコンピュータシミュレーションを行う場合は、折り畳みと絡み合いのある複雑な鎖状ネットワークの幾何学的形状を入力にしなければならないが、これを簡単に生成することは非常に困難である。つまり、いかにして、必要とされる複雑な形状をコンピュータ上に初期状態として作る方法を考える研究開発上、重要な鍵となる。
【0017】
まず、コンピュータで長い鎖を定義するためには、鎖を構成するメンバー(ここでは、それを粒子で代表させ、隣接粒子を棒でつないだものを鎖と定義する)の座標を与えなければならない。
【0018】
一般的に、コンピュータ上で体積を有する多数の粒子を空間に配置する問題(=粒子中心の座標を与えること)は、粒子の位置関係が規則的であるときには比較的容易であるが、配置にランダムさを求められる場合は、空間充填率が低い場合(約35%以下)を除いて、単に乱数の組み合わせでは作ることができないことが知られている。さらに、粒子が鎖状に連なっている場合は、問題はさらに複雑になる。
【0019】
本発明の特徴は、鎖は成長しながら3次元的に2種類の回転角を持ち、成長方向に障害物が存在するときにはフレキシブルに方向を変えてその障害物を避けながら成長するというアルゴリズムである。鎖を構成する基本ユニットを体積を有する粒子で表現し、粒子を所定の幾何学的ルールに従って、順次連結させることで鎖を成長させる。必要な鎖の本数と成長回数と幾何学連結ルールを入力として、最終的に得られたランダムな鎖状ネットワークを構成する全ての粒子の座標を出力とする。
【0020】
図1に示す本実施形態に係る鎖状構造体情報の生成装置100は、「成長パラメータ」及び「成長ルール」を示す情報を取得すると、これらの情報に基づいて鎖状構造体の構成を示す「鎖状構造体情報」を出力する。ここで、「鎖状構造体」とは、本実施形態では、相互に接触せず任意の形状をとる複数の粒子鎖により構成される、折り畳みと絡み合いのある複雑な粒子鎖の集合体のことをいう。この鎖状構造体を初期状態として利用すれば、ゴム等の高分子材料のシミュレーションに適用なモデルを作成することができる。
【0021】
また、鎖状構造体を構成する粒子鎖のそれぞれは、温度に応じたランダム速度で動く複数の粒子と、隣接する2つの粒子を一定範囲の距離に保つばね部とから構成されている。さらに、個々の粒子は、図2に示すように半径rの球体で定義される。したがって、粒子は体積を有し、異なる粒子同士で同じ空間点を共有することはできない、つまり重なり合うことはできない。また、図3に示すように、結合した2つの粒子間の距離は半径rの2倍とすると、粒子が球形で体積があるため、3粒子が連結している場合、折れ曲がり角Aの最小値は60度である。
【0022】
ここで、上記の「成長パラメータ」とは、粒子鎖に新たな粒子を追加する際に、粒子鎖の端部に位置し新たな粒子と連結する粒子に対する、新たな粒子の相対的な配置位置を定義するパラメータである。具体的には、例えば図11に示すように、隣接する粒子間での回転角φ及び結合角θである。回転角φ及び結合角θは、個別の所定値またはランダム値でそれぞれ設定される。
【0023】
また、上記の「成長ルール」とは、成長パラメータによって決定された配置位置に新たな粒子を配置すると、他の粒子や作業領域の境界面と重複してしまい、当該位置に粒子を配置できない場合に新たな成長方向を決定するためのルールである。具体的には、シミュレーション環境やモデル化したい材料の種類などの各種条件に応じて、(1)結合角θだけ異なる値を与える、(2)回転角φ及び結合角θの両方に異なる値を与える、(3)成長を止めるなどの手法を適宜選択して設定することができる。なお、(1)や(2)の「異なる値」の与え方としては、例えば乱数やある角度の整数倍などが挙げられる。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る鎖状構造体情報の生成装置100は、情報取得部(取得手段)101、種粒子配置部(種粒子配置手段)102、成長制御部(粒子鎖生成手段)103、接触判別部(粒子鎖生成手段)104、粒子情報格納部105、成長終了判別部106、鎖状構造体情報出力部(出力手段)107を含んで構成されている。
【0025】
この生成装置100は、物理的には、CPU(Central ProcessingUnit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置、ディスプレイ等の出力装置、ハードディスク等の補助記憶装置などを含むコンピュータシステムとして構成されている。図1において説明した本実施形態に係る鎖状構造体情報の生成装置100を構成する各機能は、CPU、RAM等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで入力装置及び出力装置を動作させるとともに、RAMや補助記憶装置におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。以下、図1に示す機能ブロックに基づいて、各機能ブロックを説明する。
【0026】
情報取得部101は、上述の成長パラメータ及び成長ルールを取得する部分である。情報取得部101は、例えば、入力装置を介して操作者により入力された情報、または主記憶装置や補助記憶装置から読み出された情報などを受信して、成長パラメータ及び成長ルールを取得する。
【0027】
種粒子配置部102は、鎖状構造体を生成するための作業領域内に、粒子鎖を生成するための種粒子として配置される複数の粒子を示す種粒子位置情報を生成する。具体的には、図4に示すように、直方体状(円筒状など他の形状でもよい)の境界が定義された閉空間である所定の作業領域内において、3つの乱数を発生させて個々の種粒子の座標(X,Y,Z)を決めて、所定個数の種粒子を配置してゆく。このとき、既に配置された他の粒子と重なりができるときは、乱数を発生し直す。種粒子配置部102は、このように定められた種粒子の座標をまとめて種粒子位置情報として粒子鎖成長制御部103に送信し、粒子情報格納部105に格納する。
【0028】
粒子鎖成長制御部103は、種粒子配置部102によって生成された種粒子位置情報により定義される種粒子のそれぞれについて、情報取得部101により取得された成長パラメータに従って決定された方向にバネ部によって新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する。
【0029】
ここで、粒子鎖の成長過程について図5〜13を参照して説明する。図5に示すように、まず種粒子にローカル座標系を与える。空間に固定されたグローバル座標系に基づいて決められた領域内に所定数だけ発生されたそれぞれの種粒子に対して、一様乱数を用いてグローバル座標系を3次元回転させることでローカル座標系を与える。このとき、一様乱数を用いるので、種粒子が統計的に十分に多ければ、全ての種粒子のローカル座標系は空間に対して等方性を保つことができる。このローカル座標系は、鎖の成長とともに、それぞれの粒子が所定のルールに従って受け継がれる。
【0030】
次に、図6に示すように、粒子鎖の成長過程の第1段階が行われる。1つの鎖のn番目の粒子(成長粒子、着目粒子N=n)に新たにn+1番目の粒子(追加粒子N=n+1)を追加する場合、まず、粒子n−1と粒子nを結ぶベクトルを作り、それをaとする。種粒子(N=1、Nは1つの鎖を構成する粒子数)の成長の場合は、N=n−1が0となり粒子が存在しないので、種粒子から距離dだけ離れた任意の位置を乱数で決め仮想粒子N=0を作り、種粒子と結ぶベクトルaを決める。
【0031】
次に、図7に示すように、粒子鎖の成長過程の第2段階が行われる。成長粒子nの中心を始点とするベクトルaを作り、それをベクトルa’とする。
【0032】
次に、図8に示すように、粒子鎖の成長過程の第3段階が行われる。ベクトルa’を粒子nのローカル座標系のz軸の周りに+θだけ回転させて得られるベクトルをa’’とする。このとき、a’’はローカル座標系のx−y平面上にある。このときとれるθは0からπ/2までとする。
【0033】
次に、図9に示すように、粒子鎖の成長過程の第4段階が行われる。ローカル座標系のx−y平面上にあるベクトルa’’をローカル座標系のx軸の周りに+φだけ回転して得られるベクトルをbとする。このとき、φは0から2πまでとする。
【0034】
次に、図10に示すように、粒子鎖の成長過程の第5段階が行われる。ベクトルaとa’’の間の角θは分子の結合角に相当しa’’がx軸の周りを自由回転できる場合、bは、図10に示すようにベクトルa’’を斜辺とする円錐上のどこかに存在することになる。
【0035】
次に、図11に示すように、粒子鎖の成長過程の第6段階が行われる。自由回転を何らかの理由(φを一定値で決める、又はφを所定値の整数倍とするなど)で拘束し、あるφのときのベクトルbの終点を追加粒子n+1の中心として配置する。
【0036】
次に、図12に示すように、粒子鎖の成長過程の第7段階が行われる。粒子nが有していたローカル座標系は粒子n+1に次のように引き継がれる。まず、x軸はベクトルbの方向とし、z軸はベクトルa’(これは粒子nのx軸である)とベクトルbが作る平面に垂直な方向(これはベクトルa’とベクトルbの外積ベクトルの方向である)とし、その両者に直行する方向をy軸とする。
【0037】
結合角θと回転角φを固定して、上述した粒子鎖の成長過程の第1段階〜第7段階鎖を繰り返しながら鎖の末端に粒子を次々と配置し、それぞれのローカル座標も更新してゆくと、θとφに応じて、1本の鎖は3次元的な波模様となったり螺旋コイル状となったりする。図13は、鎖の基本成長パターンである。
【0038】
また、粒子鎖成長制御部103は、後述する接触判別部104より接触との判定結果を受信すると、成長パラメータによって決定された配置位置に新たな粒子を配置できないと判断し、この場合には成長ルールにしたがって新たな配置位置を決定する。
【0039】
接触判別が行われるケースの一例は、成長粒子が既存粒子と空間上で重なり合いを生じてしまう場合である。つまり、図14に示すように、鎖の成長過程で粒子nを始点とするベクトルbが決まり、粒子nに粒子n+1を追加しようとしたときに、同じ鎖や他の鎖の既存粒子と空間上で重なりが生じてしまう場合である。
【0040】
この場合、図15に示すように、1)自由回転角φを乱数で与え直してφ’とし、ベクトルb’を作って、粒子n+1を配置し、2)ベクトルb’では、さらに別の重なりが生じてしまう場合、もう一度1)を行う。
【0041】
上記2)を所定の限界回数(k回:kは10000以上の大きい数)行っても重なりがある場合は、図16に示すように、3)自由回転角φを変化させても重なりが解消されない場合は、重なりが無い場所が見つかるまで結合角θと自由回転角φを乱数で与え、4)上記3)のプロセスを制限回数行っても見つからない場合、その鎖の成長を終える。
【0042】
接触判別が行われるケースの他の例は、図17に示すように、成長粒子が作業領域の壁面境界に接触してしまう場合である。この場合も、既存粒子と重なりが生じる場合と同じで、自由回転角φ、結合角θを乱数で与えて接触がない場所を探査し、なければ鎖の成長を終了させる。
【0043】
図1に戻り、接触判別部104は、粒子鎖成長制御部103により新たに追加された粒子について接触判別を行う。ここで「接触」とは(1)他の粒子との接触(図14参照)、及び(2)作業領域境界面との接触(図17参照)をいう。接触判別部104は、具体的には、後述する粒子情報格納部105に格納されている作業領域内の粒子の位置情報に基づいて接触判別を行う。接触ありと判定した場合、その判定結果を粒子鎖成長制御部103に送信する。接触なしと判定したときには新たに追加した粒子の位置情報を粒子情報格納部105に格納する。
【0044】
粒子情報格納部105は、粒子鎖成長制御部103によって作業領域に配置された粒子の位置情報を格納する。粒子情報格納部105に格納される情報は、例えば、接触判別部104から接触なしとの判定が出たときに更新する。
【0045】
成長終了判別部106は、作業空間内の全ての粒子鎖の成長が終了したか否かを判別する。具体的には、例えば、全ての粒子鎖が、(1)所定の長さに達した状態、または(2)成長ルールに従って成長が終了した状態のいずれかである場合に、全ての粒子鎖の成長が終了したものと判定する。成長未終了の場合は、粒子鎖成長制御部103に通知してさらに粒子鎖の成長処理を実行させる。成長完了と判別すると、鎖状構造体情報出力部107に通知する。
【0046】
鎖状構造体情報出力部107は、成長終了判別部106から成長完了の通知を受け取ると、粒子情報格納部105から鎖状構造体を構成する粒子の位置情報を取得して、これらの情報をまとめて鎖状構造体情報として出力する。
【0047】
このような生成装置100により、例えば図18〜20に示すように鎖状構造体が生成される。図18は、作業空間に種粒子を配置した状態である。図19は、粒子鎖の成長途上の状態である。図20は、全ての粒子鎖の成長が終了して鎖状構造体が生成された状態である。本手法を用いて発生した折り畳みと絡み合いのある複雑な鎖の集合体について、鎖の長さとその頻度をグラフにすると、図21に示すようにほぼ正規分布になることが分かった。この結果は、鎖の成長がランダム過程によるものであること証明していて、できた鎖の集合体はランダムネットワークであることを意味している。
【0048】
図22〜25は、成長パラメータに応じた生成装置100により生成された鎖状構造体の例を示す。図22〜25は、回転角φが60度であり、結合角θがそれぞれ5度、10度、20度、40度の場合に、生成装置100により生成された鎖状構造体である。結合角θ及び回転角φを両方固定すると、伸縮率が大きくなり、ゴムなどの材料のモデルに適用可能であるし、また、変形後に形状を戻すパラメータがθとφの2つだけと少ないため、形状記憶材料のモデル化に利用するのも好適である。
【0049】
図22〜25に示すように、成長パラメータの結合角θ及び回転角φを両方固定すると、鎖状構造体に含まれる粒子鎖のそれぞれは螺旋状となる。このような螺旋状の粒子鎖は、折畳んだ状態と伸ばした状態の1次元的な長さの比が非常に大きい構造である。つまり、天然ゴムに特有な非常に大きな伸び(例えば数千パーセントの歪み)を表現するのに、図22〜25に示すようなローカルに螺旋状になっている鎖状構造体は効果的である。その他、非常に重要なことは、一度伸ばされた鎖が再び折畳まれるときに、モデルの場合には、どうやって折り畳まれていたのだったかを示すという情報が必要となるが、螺旋形状の場合には、上述のように隣接粒子間の結合角θ及び回転角φの2つのパラメータだけを記憶させておけば、たとえランダムな螺旋であっても、完璧に元の形状に戻すことができる。螺旋以外の他の形状だと、記憶させるべき情報がもっと多くなり計算上不都合なだけでなく、現実にも高分子を構成する原子や分子がそのような膨大な記憶をするメカニズムが見当たらない。したがって、鎖状構造体を構成する粒子鎖を螺旋形状にすることは、(1)よく伸び縮みできる、(2)疑似ランダム構造が作れる、(3)元の形状に折り畳むための情報が少ない、という大きなメリットがある。
擬似ランダム構造が作れるメリットは以下のとおりある。螺旋は完全に特徴のある構造でランダム構造ではない。逆に完全なランダム構造は螺旋にはなれない。ランダムなのによく伸び縮みできて、元の形状に折畳むための情報も少なくてすむのがランダム螺旋で、これを「擬似ランダム構造」と呼びます。なぜランダム性を追求しなければならないかという理由は、天然ゴムのような物質は、決して完全に特徴のある構造にはならず、鎖の成長過程である程度のランダムさがどうしても存在し、このランダムさがゴムをゴムらしくしているという知見があるためである。よく伸びるのにランダムであるという相反する条件はランダム螺旋によって実現される。
【0050】
なお、例えば高分子の炭素−炭素間結合の場合、幾何学的には回転角φは自由だが、エネルギー的に落ち着く角度は120度であるという知見がある。また、このφに一定値を与えると、結果として鎖は螺旋状になる。勿論、乱数で決めて完全にランダムであるケースも考えられる。従って、何をこの鎖状構造体でモデル化するのかというケースによって、このφの決め方は異なる。
【0051】
図26、27は、本実施形態の鎖状構造体情報の生成装置100により実施される鎖状構造体情報の生成処理を示すフローチャートである。
【0052】
図26に示すように、まず種粒子配置部102により作業領域が設定され(S1001)、種粒子が作業領域に発生される(S1002)。次に粒子鎖成長制御部103によって、各種粒子ごとに初期成長方向及びローカル座標系が設定され(S1003)、成長ルール及び成長パラメータが設定され(S1004)、鎖状ネットワーク成長が実行される(S1005)。
【0053】
鎖状ネットワーク成長の実行処理S1005では、図27に示すサブルーチンが実施される。まず、成長可能な粒子鎖をピックアップした選定候補リストから成長させる鎖(i)が一様乱数により選定される(S2001)。次に、鎖(i)の現在の粒子数がnのときのn番目とn−1番目の粒子座標からベクトルaが算出される(S2002)。さらに、結合角θと回転各φからn+1番目の粒子の座標が算出され(S2003)、既存粒子及び作業領域境界面との接触判別が行われる(S2004)。接触なしと判定された場合にはステップS2005に移行する。接触ありと判定された場合には、試行回数が上限値未満かどうかが確認され(S2007)、上限値未満である場合にはステップS2003に戻る。上限値以上の場合には、鎖(i)の成長を終了して(S2008)選定候補リストから当該鎖(i)の情報(例えば鎖番号など識別情報)を削除し、ステップS2006に移行する。
【0054】
ステップS2004において接触なしと判定された場合には、鎖(i)のn+1番目の座標が粒子情報格納部105に格納され(S2005)、全ての鎖の成長が終了したか否かが確認される(S2006)。具体的には、選定候補リストに鎖の情報が残っているか否かを確認し、選定候補リスト内の鎖の情報がなくなった場合に全ての鎖の成長が終了したと判定する。全ての鎖の成長が終了していない場合には、ステップS2001に戻る。全ての鎖の成長が終了した場合には、図26のメインフローに戻り処理を終了する。
【0055】
次に、上述した一連の鎖状構造体情報の生成処理をコンピュータに実行させるための鎖状構造体情報の生成プログラムを説明する。図28に示すように、鎖状構造体情報の生成プログラム202は、コンピュータが備える記憶媒体200に形成されたプログラム格納領域201内に格納されている。
【0056】
鎖状構造体情報生成プログラム202は、情報取得モジュール(取得機能)202a、種粒子配置モジュール(種粒子配置機能)202b、粒子鎖成長制御モジュール(粒子鎖生成機能)202c、接触判別モジュール(粒子鎖生成機能)202d、粒子情報格納モジュール202e、成長終了判別モジュール202f、鎖状構造体情報出力モジュール(出力機能)202gを備えて構成される。
【0057】
情報取得モジュール202a、種粒子配置モジュール202b、粒子鎖成長制御モジュール202c、接触判別モジュール202d、粒子情報格納モジュール202e、成長終了判別モジュール202f、及び鎖状構造体情報出力モジュール202gを実行させることにより実現される機能は、上述した図1の鎖状構造体情報の生成装置100の情報取得部101、種粒子配置部102、粒子鎖成長制御部103、接触判別部104、粒子情報格納部105、成長終了判別部106、及び鎖状構造体情報出力部107の機能とそれぞれ同様である。
【0058】
なお、鎖状構造体情報生成プログラム202は、その一部又は全部が、通信回線等の伝送媒体を介して伝送され、他の機器により受信されて記録(インストールを含む)される構成としてもよい。また、鎖状構造体情報生成プログラム202は、その一部又は全部が、CD−ROM、DVD−ROM、フラッシュメモリなどの持ち運び可能な記憶媒体に格納された状態から、他の機器に記録(インストールを含む)される構成としてもよい。
【0059】
本実施形態に係る鎖状構造体情報の生成装置100では、作業領域内に配置された種粒子から成長パラメータに従った成長方向に新たな粒子が連結され、また、成長パラメータによって決定された配置位置に他の粒子や作業領域境界が存在するために粒子を配置不可能な場合には、成長ルールに従った新たな成長方向に粒子が連結されて、粒子鎖が成長していき鎖状構造体が生成される。このため、成長パラメータと成長ルールという情報を与えるだけで、高分子材料等の性質を再現可能な高分子モデルを成形するための鎖状構造体情報を自動的に生成することができる。
【符号の説明】
【0060】
100…鎖状構造体情報の生成装置、101…情報取得部(取得手段)、102…種粒子配置部(種粒子配置手段)、103…粒子鎖成長制御部(粒子鎖生成手段)、104…接触判別部(粒子鎖生成手段)、105…粒子情報格納部、106…成長終了判別部、107…鎖状構造体情報出力部(出力手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子モデル成形に用いる鎖状構造体を示す情報の生成装置、生成方法、及び生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムなどの高分子が非常に良く伸び、かつ簡単に破断せずに力を取り除くと元の形状に戻る性質を有する理由は、多数の非常に長い高分子鎖が効率的に折り畳まれながら絡み合っていることに起因していることが知られている(例えば非特許文献1)。高分子のように非常に長い分子鎖は、必然的に絡み合ったり結び目ができる可能性が高い。天然であれ人工であれ高分子の鎖は、元々長い鎖ありきではなく、分子が多数集合する過程で非対称な分子間力の影響で螺旋構造やループを作りながら長い構造へと変化することが知られている。また、伸縮性の高い繊維も良くよられた糸をさらに捻った状態で織ったり編んだりすることで、その特性が得られることも知られている。
【0003】
また、高分子に限らず、繊維、毛髪、ロープ、ワイヤーなど細長い鎖状または紐状の物質が規則的にまたは不規則に多数集まってできている物質は、非常に大きな伸縮特性を示したり液膜を保持したり1本の鎖の引張強度の何百倍もの強度を示したりと、その幾何学的な理由から、それぞれ特有の性質が生み出される。
【0004】
この性質を定量的に調べるためには、実際の対象物質を用いた実験を行う手法と、幾何学と統計力学を組み合わせた解析的な手法と、形状を模擬した物質またはコンピュータを用いたシミュレーション的手法が考えられる。当然ながら、コンピュータによる詳細なシミュレーションが可能であれば、経済的であるばかりか、実在しない新素材の開発などの可能性が出てくる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】久保亮五、“ゴム弾性”、裳華房、1996年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高分子、繊維、毛髪、ロープ、ワイヤーなど、単純な物質が1次元的に多数連結して細長い鎖状物質が多数集まってネットワークを構成している伸縮性の大きな系に対する数値シミュレーションを可能とするためには、高分子のように大きな伸張強度を発揮したり、500%を簡単に超えるような大きなひずみを生じるような特性をもつことができる構造をコンピュータシミュレーションの初期状態として実現できることが望ましい。
【0007】
そこで本発明は、高分子材料等の性質を再現可能な高分子モデルを成形するための鎖状構造体情報を自動的に生成可能な生成装置、生成方法、及び生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る鎖状構造体情報の生成装置は、高分子モデル成形に用いる鎖状構造体を示す情報の生成装置であって、鎖状構造体を示す情報は相互に接触せず任意の形状をとる複数の粒子鎖を示す情報から構成され、粒子鎖を示す情報のそれぞれは、温度に応じたランダム速度で動く複数の粒子を示す情報と、隣接する2つの粒子を一定範囲の距離に保つばね部を示す情報とから構成されており、粒子鎖に新たな粒子を追加する際に、粒子鎖の端部に位置し該新たな粒子と連結する粒子に対する該新たな粒子の相対的な配置位置を定義するための成長パラメータと、成長パラメータによって決定された配置位置に新たな粒子を配置できない場合に新たな配置位置を決定するための成長ルールと、を取得する取得手段と、鎖状構造体を生成するための作業領域内に、粒子鎖を生成するための種粒子として配置される複数の粒子を示す種粒子位置情報を生成する種粒子配置手段と、種粒子配置手段によって生成された種粒子位置情報により定義される種粒子のそれぞれについて、取得手段により取得された成長ルール及び成長パラメータに従って決定された方向に、粒子間の距離を一定範囲に保つバネ部によって新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する粒子鎖生成手段と、粒子鎖生成手段により生成された複数の粒子鎖を示す情報を、鎖状構造体を示す情報として出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
同様に、上記課題を解決するために、本発明に係る鎖状構造体情報の生成方法は、高分子モデル成形に用いる鎖状構造体を示す情報の生成方法であって、鎖状構造体を示す情報は相互に接触せず任意の形状をとる複数の粒子鎖を示す情報から構成され、粒子鎖を示す情報のそれぞれは、温度に応じたランダム速度で動く複数の粒子を示す情報と、隣接する2つの粒子を一定範囲の距離に保つばね部を示す情報とから構成されており、粒子鎖に新たな粒子を追加する際に、粒子鎖の端部に位置し該新たな粒子と連結する粒子に対する該新たな粒子の相対的な配置位置を定義するための成長パラメータと、成長パラメータによって決定された配置位置に前記新たな粒子を配置できない場合に新たな配置位置を決定するための成長ルールと、を取得する取得ステップと、鎖状構造体を生成するための作業領域内に、粒子鎖を生成するための種粒子として配置される複数の粒子を示す種粒子位置情報を生成する種粒子配置ステップと、種粒子配置ステップにおいて生成された前記種粒子位置情報により定義される種粒子のそれぞれについて、取得ステップにおいて取得された成長ルール及び成長パラメータに従って決定された方向に、粒子間の距離を一定範囲に保つバネ部によって新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する粒子鎖生成ステップと、粒子鎖生成ステップにおいて生成された複数の粒子鎖を示す情報を、鎖状構造体を示す情報として出力する出力ステップと、を備えることを特徴とする。
【0010】
同様に、上記課題を解決するために、本発明に係る鎖状構造体情報の生成プログラムは、高分子モデル成形に用いる鎖状構造体を示す情報の生成プログラムであって、鎖状構造体を示す情報は相互に接触せず任意の形状をとる複数の粒子鎖を示す情報から構成され、粒子鎖を示す情報のそれぞれは、温度に応じたランダム速度で動く複数の粒子を示す情報と、隣接する2つの粒子を一定範囲の距離に保つばね部を示す情報とから構成されており、粒子鎖に新たな粒子を追加する際に、粒子鎖の端部に位置し該新たな粒子と連結する粒子に対する該新たな粒子の相対的な配置位置を定義するための成長パラメータと、成長パラメータによって決定された配置位置に新たな粒子を配置できない場合に新たな配置位置を決定するための成長ルールと、を取得する取得機能と、鎖状構造体を生成するための作業領域内に、粒子鎖を生成するための種粒子として配置される複数の粒子を示す種粒子位置情報を生成する種粒子配置機能と、種粒子配置機能によって生成された種粒子位置情報により定義される前記種粒子のそれぞれについて、取得機能により取得された成長ルール及び成長パラメータに従って決定された方向に、粒子間の距離を一定範囲に保つバネ部によって新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する粒子鎖生成機能と、粒子鎖生成機能により生成された複数の粒子鎖を示す情報を、鎖状構造体を示す情報として出力する出力機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とする。
【0011】
これらの構成により、作業領域内に配置された種粒子から成長パラメータに従った成長方向に新たな粒子が連結され、また、成長パラメータによって決定された配置位置に他の粒子や作業領域境界が存在するために粒子を配置不可能な場合には、成長ルールに従った新たな成長方向に粒子が連結されて、粒子鎖が成長していき鎖状構造体が生成される。このため、成長パラメータと成長ルールという情報を与えるだけで、高分子材料等の性質を再現可能な高分子モデルを成形するための鎖状構造体情報を自動的に生成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る鎖状構造体情報の生成装置、生成方法、及び生成プログラムによれば、高分子材料等の性質を再現可能な高分子モデルを成形するための鎖状構造体情報を自動的に生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る鎖状構造体情報の生成装置のブロック構成図である。
【図2】鎖状構造体情報に用いる粒子の定義を示す図である。
【図3】鎖状構造体情報に用いる粒子の粒子間結合の定義を示す図である。
【図4】図1中の種粒子配置部により作業領域内に配置された種粒子を示す図である。
【図5】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図6】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図7】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図8】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図9】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図10】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図11】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図12】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図13】図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図14】図1中の接触判別部により接触ありと判別される状態と、接触ありと判定された場合の粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図15】図1中の接触判別部により接触ありと判別される状態と、接触ありと判定された場合の粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図16】図1中の接触判別部により接触ありと判別される状態と、接触ありと判定された場合の粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図17】図1中の接触判別部により接触ありと判別される状態と、接触ありと判定された場合の粒子鎖の成長過程を示す図である。
【図18】鎖状構造体の成長過程の一例を示す図である。
【図19】鎖状構造体の成長過程の一例を示す図である。
【図20】鎖状構造体の成長過程の一例を示す図である。
【図21】鎖状構造体の鎖の長さの分布を示す図である。
【図22】成長パラメータに応じた生成装置により生成された鎖状構造体の例を示す図である。
【図23】成長パラメータに応じた生成装置により生成された鎖状構造体の例を示す図である。
【図24】成長パラメータに応じた生成装置により生成された鎖状構造体の例を示す図である。
【図25】成長パラメータに応じた生成装置により生成された鎖状構造体の例を示す図である。
【図26】本実施形態の鎖状構造体情報の生成装置により実施される鎖状構造体情報の生成処理を示すフローチャートである。
【図27】本実施形態の鎖状構造体情報の生成装置により実施される鎖状構造体情報の生成処理を示すフローチャートである。
【図28】本実施形態に係る鎖状構造体情報の生成プログラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る、高分子モデル成形に用いる鎖状構造体情報の生成装置の好適な実施形態について図1から図28を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の記号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る鎖状構造体情報の生成装置のブロック構成図、図2は、鎖状構造体情報に用いる粒子の定義を示す図、図3は、鎖状構造体情報に用いる粒子の粒子間結合の定義を示す図、図4は、図1中の種粒子配置部により作業領域内に配置された種粒子を示す図、図5〜13は、図1中の粒子鎖成長制御部による粒子鎖の成長過程を示す図、図14〜17は、図1中の接触判別部により接触ありと判別される状態と、接触ありと判定された場合の粒子鎖の成長過程を示す図、図18〜20は、鎖状構造体の成長過程の一例を示す図、図21は、鎖状構造体の鎖の長さの分布を示す図、図22〜25は、成長パラメータに応じた生成装置により生成された鎖状構造体の例を示す図、図26〜27は、本実施形態の鎖状構造体情報の生成装置により実施される鎖状構造体情報の生成処理を示すフローチャート、図28は、本実施形態に係る鎖状構造体情報の生成プログラムを示す図である。
【0016】
ゴムなどの高分子材料についてコンピュータシミュレーションを行う場合は、折り畳みと絡み合いのある複雑な鎖状ネットワークの幾何学的形状を入力にしなければならないが、これを簡単に生成することは非常に困難である。つまり、いかにして、必要とされる複雑な形状をコンピュータ上に初期状態として作る方法を考える研究開発上、重要な鍵となる。
【0017】
まず、コンピュータで長い鎖を定義するためには、鎖を構成するメンバー(ここでは、それを粒子で代表させ、隣接粒子を棒でつないだものを鎖と定義する)の座標を与えなければならない。
【0018】
一般的に、コンピュータ上で体積を有する多数の粒子を空間に配置する問題(=粒子中心の座標を与えること)は、粒子の位置関係が規則的であるときには比較的容易であるが、配置にランダムさを求められる場合は、空間充填率が低い場合(約35%以下)を除いて、単に乱数の組み合わせでは作ることができないことが知られている。さらに、粒子が鎖状に連なっている場合は、問題はさらに複雑になる。
【0019】
本発明の特徴は、鎖は成長しながら3次元的に2種類の回転角を持ち、成長方向に障害物が存在するときにはフレキシブルに方向を変えてその障害物を避けながら成長するというアルゴリズムである。鎖を構成する基本ユニットを体積を有する粒子で表現し、粒子を所定の幾何学的ルールに従って、順次連結させることで鎖を成長させる。必要な鎖の本数と成長回数と幾何学連結ルールを入力として、最終的に得られたランダムな鎖状ネットワークを構成する全ての粒子の座標を出力とする。
【0020】
図1に示す本実施形態に係る鎖状構造体情報の生成装置100は、「成長パラメータ」及び「成長ルール」を示す情報を取得すると、これらの情報に基づいて鎖状構造体の構成を示す「鎖状構造体情報」を出力する。ここで、「鎖状構造体」とは、本実施形態では、相互に接触せず任意の形状をとる複数の粒子鎖により構成される、折り畳みと絡み合いのある複雑な粒子鎖の集合体のことをいう。この鎖状構造体を初期状態として利用すれば、ゴム等の高分子材料のシミュレーションに適用なモデルを作成することができる。
【0021】
また、鎖状構造体を構成する粒子鎖のそれぞれは、温度に応じたランダム速度で動く複数の粒子と、隣接する2つの粒子を一定範囲の距離に保つばね部とから構成されている。さらに、個々の粒子は、図2に示すように半径rの球体で定義される。したがって、粒子は体積を有し、異なる粒子同士で同じ空間点を共有することはできない、つまり重なり合うことはできない。また、図3に示すように、結合した2つの粒子間の距離は半径rの2倍とすると、粒子が球形で体積があるため、3粒子が連結している場合、折れ曲がり角Aの最小値は60度である。
【0022】
ここで、上記の「成長パラメータ」とは、粒子鎖に新たな粒子を追加する際に、粒子鎖の端部に位置し新たな粒子と連結する粒子に対する、新たな粒子の相対的な配置位置を定義するパラメータである。具体的には、例えば図11に示すように、隣接する粒子間での回転角φ及び結合角θである。回転角φ及び結合角θは、個別の所定値またはランダム値でそれぞれ設定される。
【0023】
また、上記の「成長ルール」とは、成長パラメータによって決定された配置位置に新たな粒子を配置すると、他の粒子や作業領域の境界面と重複してしまい、当該位置に粒子を配置できない場合に新たな成長方向を決定するためのルールである。具体的には、シミュレーション環境やモデル化したい材料の種類などの各種条件に応じて、(1)結合角θだけ異なる値を与える、(2)回転角φ及び結合角θの両方に異なる値を与える、(3)成長を止めるなどの手法を適宜選択して設定することができる。なお、(1)や(2)の「異なる値」の与え方としては、例えば乱数やある角度の整数倍などが挙げられる。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る鎖状構造体情報の生成装置100は、情報取得部(取得手段)101、種粒子配置部(種粒子配置手段)102、成長制御部(粒子鎖生成手段)103、接触判別部(粒子鎖生成手段)104、粒子情報格納部105、成長終了判別部106、鎖状構造体情報出力部(出力手段)107を含んで構成されている。
【0025】
この生成装置100は、物理的には、CPU(Central ProcessingUnit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置、ディスプレイ等の出力装置、ハードディスク等の補助記憶装置などを含むコンピュータシステムとして構成されている。図1において説明した本実施形態に係る鎖状構造体情報の生成装置100を構成する各機能は、CPU、RAM等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで入力装置及び出力装置を動作させるとともに、RAMや補助記憶装置におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。以下、図1に示す機能ブロックに基づいて、各機能ブロックを説明する。
【0026】
情報取得部101は、上述の成長パラメータ及び成長ルールを取得する部分である。情報取得部101は、例えば、入力装置を介して操作者により入力された情報、または主記憶装置や補助記憶装置から読み出された情報などを受信して、成長パラメータ及び成長ルールを取得する。
【0027】
種粒子配置部102は、鎖状構造体を生成するための作業領域内に、粒子鎖を生成するための種粒子として配置される複数の粒子を示す種粒子位置情報を生成する。具体的には、図4に示すように、直方体状(円筒状など他の形状でもよい)の境界が定義された閉空間である所定の作業領域内において、3つの乱数を発生させて個々の種粒子の座標(X,Y,Z)を決めて、所定個数の種粒子を配置してゆく。このとき、既に配置された他の粒子と重なりができるときは、乱数を発生し直す。種粒子配置部102は、このように定められた種粒子の座標をまとめて種粒子位置情報として粒子鎖成長制御部103に送信し、粒子情報格納部105に格納する。
【0028】
粒子鎖成長制御部103は、種粒子配置部102によって生成された種粒子位置情報により定義される種粒子のそれぞれについて、情報取得部101により取得された成長パラメータに従って決定された方向にバネ部によって新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する。
【0029】
ここで、粒子鎖の成長過程について図5〜13を参照して説明する。図5に示すように、まず種粒子にローカル座標系を与える。空間に固定されたグローバル座標系に基づいて決められた領域内に所定数だけ発生されたそれぞれの種粒子に対して、一様乱数を用いてグローバル座標系を3次元回転させることでローカル座標系を与える。このとき、一様乱数を用いるので、種粒子が統計的に十分に多ければ、全ての種粒子のローカル座標系は空間に対して等方性を保つことができる。このローカル座標系は、鎖の成長とともに、それぞれの粒子が所定のルールに従って受け継がれる。
【0030】
次に、図6に示すように、粒子鎖の成長過程の第1段階が行われる。1つの鎖のn番目の粒子(成長粒子、着目粒子N=n)に新たにn+1番目の粒子(追加粒子N=n+1)を追加する場合、まず、粒子n−1と粒子nを結ぶベクトルを作り、それをaとする。種粒子(N=1、Nは1つの鎖を構成する粒子数)の成長の場合は、N=n−1が0となり粒子が存在しないので、種粒子から距離dだけ離れた任意の位置を乱数で決め仮想粒子N=0を作り、種粒子と結ぶベクトルaを決める。
【0031】
次に、図7に示すように、粒子鎖の成長過程の第2段階が行われる。成長粒子nの中心を始点とするベクトルaを作り、それをベクトルa’とする。
【0032】
次に、図8に示すように、粒子鎖の成長過程の第3段階が行われる。ベクトルa’を粒子nのローカル座標系のz軸の周りに+θだけ回転させて得られるベクトルをa’’とする。このとき、a’’はローカル座標系のx−y平面上にある。このときとれるθは0からπ/2までとする。
【0033】
次に、図9に示すように、粒子鎖の成長過程の第4段階が行われる。ローカル座標系のx−y平面上にあるベクトルa’’をローカル座標系のx軸の周りに+φだけ回転して得られるベクトルをbとする。このとき、φは0から2πまでとする。
【0034】
次に、図10に示すように、粒子鎖の成長過程の第5段階が行われる。ベクトルaとa’’の間の角θは分子の結合角に相当しa’’がx軸の周りを自由回転できる場合、bは、図10に示すようにベクトルa’’を斜辺とする円錐上のどこかに存在することになる。
【0035】
次に、図11に示すように、粒子鎖の成長過程の第6段階が行われる。自由回転を何らかの理由(φを一定値で決める、又はφを所定値の整数倍とするなど)で拘束し、あるφのときのベクトルbの終点を追加粒子n+1の中心として配置する。
【0036】
次に、図12に示すように、粒子鎖の成長過程の第7段階が行われる。粒子nが有していたローカル座標系は粒子n+1に次のように引き継がれる。まず、x軸はベクトルbの方向とし、z軸はベクトルa’(これは粒子nのx軸である)とベクトルbが作る平面に垂直な方向(これはベクトルa’とベクトルbの外積ベクトルの方向である)とし、その両者に直行する方向をy軸とする。
【0037】
結合角θと回転角φを固定して、上述した粒子鎖の成長過程の第1段階〜第7段階鎖を繰り返しながら鎖の末端に粒子を次々と配置し、それぞれのローカル座標も更新してゆくと、θとφに応じて、1本の鎖は3次元的な波模様となったり螺旋コイル状となったりする。図13は、鎖の基本成長パターンである。
【0038】
また、粒子鎖成長制御部103は、後述する接触判別部104より接触との判定結果を受信すると、成長パラメータによって決定された配置位置に新たな粒子を配置できないと判断し、この場合には成長ルールにしたがって新たな配置位置を決定する。
【0039】
接触判別が行われるケースの一例は、成長粒子が既存粒子と空間上で重なり合いを生じてしまう場合である。つまり、図14に示すように、鎖の成長過程で粒子nを始点とするベクトルbが決まり、粒子nに粒子n+1を追加しようとしたときに、同じ鎖や他の鎖の既存粒子と空間上で重なりが生じてしまう場合である。
【0040】
この場合、図15に示すように、1)自由回転角φを乱数で与え直してφ’とし、ベクトルb’を作って、粒子n+1を配置し、2)ベクトルb’では、さらに別の重なりが生じてしまう場合、もう一度1)を行う。
【0041】
上記2)を所定の限界回数(k回:kは10000以上の大きい数)行っても重なりがある場合は、図16に示すように、3)自由回転角φを変化させても重なりが解消されない場合は、重なりが無い場所が見つかるまで結合角θと自由回転角φを乱数で与え、4)上記3)のプロセスを制限回数行っても見つからない場合、その鎖の成長を終える。
【0042】
接触判別が行われるケースの他の例は、図17に示すように、成長粒子が作業領域の壁面境界に接触してしまう場合である。この場合も、既存粒子と重なりが生じる場合と同じで、自由回転角φ、結合角θを乱数で与えて接触がない場所を探査し、なければ鎖の成長を終了させる。
【0043】
図1に戻り、接触判別部104は、粒子鎖成長制御部103により新たに追加された粒子について接触判別を行う。ここで「接触」とは(1)他の粒子との接触(図14参照)、及び(2)作業領域境界面との接触(図17参照)をいう。接触判別部104は、具体的には、後述する粒子情報格納部105に格納されている作業領域内の粒子の位置情報に基づいて接触判別を行う。接触ありと判定した場合、その判定結果を粒子鎖成長制御部103に送信する。接触なしと判定したときには新たに追加した粒子の位置情報を粒子情報格納部105に格納する。
【0044】
粒子情報格納部105は、粒子鎖成長制御部103によって作業領域に配置された粒子の位置情報を格納する。粒子情報格納部105に格納される情報は、例えば、接触判別部104から接触なしとの判定が出たときに更新する。
【0045】
成長終了判別部106は、作業空間内の全ての粒子鎖の成長が終了したか否かを判別する。具体的には、例えば、全ての粒子鎖が、(1)所定の長さに達した状態、または(2)成長ルールに従って成長が終了した状態のいずれかである場合に、全ての粒子鎖の成長が終了したものと判定する。成長未終了の場合は、粒子鎖成長制御部103に通知してさらに粒子鎖の成長処理を実行させる。成長完了と判別すると、鎖状構造体情報出力部107に通知する。
【0046】
鎖状構造体情報出力部107は、成長終了判別部106から成長完了の通知を受け取ると、粒子情報格納部105から鎖状構造体を構成する粒子の位置情報を取得して、これらの情報をまとめて鎖状構造体情報として出力する。
【0047】
このような生成装置100により、例えば図18〜20に示すように鎖状構造体が生成される。図18は、作業空間に種粒子を配置した状態である。図19は、粒子鎖の成長途上の状態である。図20は、全ての粒子鎖の成長が終了して鎖状構造体が生成された状態である。本手法を用いて発生した折り畳みと絡み合いのある複雑な鎖の集合体について、鎖の長さとその頻度をグラフにすると、図21に示すようにほぼ正規分布になることが分かった。この結果は、鎖の成長がランダム過程によるものであること証明していて、できた鎖の集合体はランダムネットワークであることを意味している。
【0048】
図22〜25は、成長パラメータに応じた生成装置100により生成された鎖状構造体の例を示す。図22〜25は、回転角φが60度であり、結合角θがそれぞれ5度、10度、20度、40度の場合に、生成装置100により生成された鎖状構造体である。結合角θ及び回転角φを両方固定すると、伸縮率が大きくなり、ゴムなどの材料のモデルに適用可能であるし、また、変形後に形状を戻すパラメータがθとφの2つだけと少ないため、形状記憶材料のモデル化に利用するのも好適である。
【0049】
図22〜25に示すように、成長パラメータの結合角θ及び回転角φを両方固定すると、鎖状構造体に含まれる粒子鎖のそれぞれは螺旋状となる。このような螺旋状の粒子鎖は、折畳んだ状態と伸ばした状態の1次元的な長さの比が非常に大きい構造である。つまり、天然ゴムに特有な非常に大きな伸び(例えば数千パーセントの歪み)を表現するのに、図22〜25に示すようなローカルに螺旋状になっている鎖状構造体は効果的である。その他、非常に重要なことは、一度伸ばされた鎖が再び折畳まれるときに、モデルの場合には、どうやって折り畳まれていたのだったかを示すという情報が必要となるが、螺旋形状の場合には、上述のように隣接粒子間の結合角θ及び回転角φの2つのパラメータだけを記憶させておけば、たとえランダムな螺旋であっても、完璧に元の形状に戻すことができる。螺旋以外の他の形状だと、記憶させるべき情報がもっと多くなり計算上不都合なだけでなく、現実にも高分子を構成する原子や分子がそのような膨大な記憶をするメカニズムが見当たらない。したがって、鎖状構造体を構成する粒子鎖を螺旋形状にすることは、(1)よく伸び縮みできる、(2)疑似ランダム構造が作れる、(3)元の形状に折り畳むための情報が少ない、という大きなメリットがある。
擬似ランダム構造が作れるメリットは以下のとおりある。螺旋は完全に特徴のある構造でランダム構造ではない。逆に完全なランダム構造は螺旋にはなれない。ランダムなのによく伸び縮みできて、元の形状に折畳むための情報も少なくてすむのがランダム螺旋で、これを「擬似ランダム構造」と呼びます。なぜランダム性を追求しなければならないかという理由は、天然ゴムのような物質は、決して完全に特徴のある構造にはならず、鎖の成長過程である程度のランダムさがどうしても存在し、このランダムさがゴムをゴムらしくしているという知見があるためである。よく伸びるのにランダムであるという相反する条件はランダム螺旋によって実現される。
【0050】
なお、例えば高分子の炭素−炭素間結合の場合、幾何学的には回転角φは自由だが、エネルギー的に落ち着く角度は120度であるという知見がある。また、このφに一定値を与えると、結果として鎖は螺旋状になる。勿論、乱数で決めて完全にランダムであるケースも考えられる。従って、何をこの鎖状構造体でモデル化するのかというケースによって、このφの決め方は異なる。
【0051】
図26、27は、本実施形態の鎖状構造体情報の生成装置100により実施される鎖状構造体情報の生成処理を示すフローチャートである。
【0052】
図26に示すように、まず種粒子配置部102により作業領域が設定され(S1001)、種粒子が作業領域に発生される(S1002)。次に粒子鎖成長制御部103によって、各種粒子ごとに初期成長方向及びローカル座標系が設定され(S1003)、成長ルール及び成長パラメータが設定され(S1004)、鎖状ネットワーク成長が実行される(S1005)。
【0053】
鎖状ネットワーク成長の実行処理S1005では、図27に示すサブルーチンが実施される。まず、成長可能な粒子鎖をピックアップした選定候補リストから成長させる鎖(i)が一様乱数により選定される(S2001)。次に、鎖(i)の現在の粒子数がnのときのn番目とn−1番目の粒子座標からベクトルaが算出される(S2002)。さらに、結合角θと回転各φからn+1番目の粒子の座標が算出され(S2003)、既存粒子及び作業領域境界面との接触判別が行われる(S2004)。接触なしと判定された場合にはステップS2005に移行する。接触ありと判定された場合には、試行回数が上限値未満かどうかが確認され(S2007)、上限値未満である場合にはステップS2003に戻る。上限値以上の場合には、鎖(i)の成長を終了して(S2008)選定候補リストから当該鎖(i)の情報(例えば鎖番号など識別情報)を削除し、ステップS2006に移行する。
【0054】
ステップS2004において接触なしと判定された場合には、鎖(i)のn+1番目の座標が粒子情報格納部105に格納され(S2005)、全ての鎖の成長が終了したか否かが確認される(S2006)。具体的には、選定候補リストに鎖の情報が残っているか否かを確認し、選定候補リスト内の鎖の情報がなくなった場合に全ての鎖の成長が終了したと判定する。全ての鎖の成長が終了していない場合には、ステップS2001に戻る。全ての鎖の成長が終了した場合には、図26のメインフローに戻り処理を終了する。
【0055】
次に、上述した一連の鎖状構造体情報の生成処理をコンピュータに実行させるための鎖状構造体情報の生成プログラムを説明する。図28に示すように、鎖状構造体情報の生成プログラム202は、コンピュータが備える記憶媒体200に形成されたプログラム格納領域201内に格納されている。
【0056】
鎖状構造体情報生成プログラム202は、情報取得モジュール(取得機能)202a、種粒子配置モジュール(種粒子配置機能)202b、粒子鎖成長制御モジュール(粒子鎖生成機能)202c、接触判別モジュール(粒子鎖生成機能)202d、粒子情報格納モジュール202e、成長終了判別モジュール202f、鎖状構造体情報出力モジュール(出力機能)202gを備えて構成される。
【0057】
情報取得モジュール202a、種粒子配置モジュール202b、粒子鎖成長制御モジュール202c、接触判別モジュール202d、粒子情報格納モジュール202e、成長終了判別モジュール202f、及び鎖状構造体情報出力モジュール202gを実行させることにより実現される機能は、上述した図1の鎖状構造体情報の生成装置100の情報取得部101、種粒子配置部102、粒子鎖成長制御部103、接触判別部104、粒子情報格納部105、成長終了判別部106、及び鎖状構造体情報出力部107の機能とそれぞれ同様である。
【0058】
なお、鎖状構造体情報生成プログラム202は、その一部又は全部が、通信回線等の伝送媒体を介して伝送され、他の機器により受信されて記録(インストールを含む)される構成としてもよい。また、鎖状構造体情報生成プログラム202は、その一部又は全部が、CD−ROM、DVD−ROM、フラッシュメモリなどの持ち運び可能な記憶媒体に格納された状態から、他の機器に記録(インストールを含む)される構成としてもよい。
【0059】
本実施形態に係る鎖状構造体情報の生成装置100では、作業領域内に配置された種粒子から成長パラメータに従った成長方向に新たな粒子が連結され、また、成長パラメータによって決定された配置位置に他の粒子や作業領域境界が存在するために粒子を配置不可能な場合には、成長ルールに従った新たな成長方向に粒子が連結されて、粒子鎖が成長していき鎖状構造体が生成される。このため、成長パラメータと成長ルールという情報を与えるだけで、高分子材料等の性質を再現可能な高分子モデルを成形するための鎖状構造体情報を自動的に生成することができる。
【符号の説明】
【0060】
100…鎖状構造体情報の生成装置、101…情報取得部(取得手段)、102…種粒子配置部(種粒子配置手段)、103…粒子鎖成長制御部(粒子鎖生成手段)、104…接触判別部(粒子鎖生成手段)、105…粒子情報格納部、106…成長終了判別部、107…鎖状構造体情報出力部(出力手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子モデル成形に用いる鎖状構造体を示す情報の生成装置であって、
前記鎖状構造体を示す情報は相互に接触せず任意の形状をとる複数の粒子鎖を示す情報から構成され、
前記粒子鎖を示す情報のそれぞれは、温度に応じたランダム速度で動く複数の粒子を示す情報と、隣接する2つの前記粒子を一定範囲の距離に保つばね部を示す情報とから構成されており、
前記粒子鎖に新たな粒子を追加する際に、前記粒子鎖の端部に位置し該新たな粒子と連結する粒子に対する該新たな粒子の相対的な配置位置を定義するための成長パラメータと、前記成長パラメータによって決定された配置位置に前記新たな粒子を配置できない場合に新たな配置位置を決定するための成長ルールと、を取得する取得手段と、
前記鎖状構造体を生成するための作業領域内に、前記粒子鎖を生成するための種粒子として配置される複数の粒子を示す種粒子位置情報を生成する種粒子配置手段と、
前記種粒子配置手段によって生成された前記種粒子位置情報により定義される前記種粒子のそれぞれについて、前記取得手段により取得された前記成長ルール及び前記成長パラメータに従って決定された方向に、粒子間の距離を一定範囲に保つバネ部によって新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する粒子鎖生成手段と、
前記粒子鎖生成手段により生成された複数の粒子鎖を示す情報を、鎖状構造体を示す情報として出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする鎖状構造体情報の生成装置。
【請求項2】
高分子モデル成形に用いる鎖状構造体を示す情報の生成方法であって、
前記鎖状構造体を示す情報は相互に接触せず任意の形状をとる複数の粒子鎖を示す情報から構成され、
前記粒子鎖を示す情報のそれぞれは、温度に応じたランダム速度で動く複数の粒子を示す情報と、隣接する2つの前記粒子を一定範囲の距離に保つばね部を示す情報とから構成されており、
前記粒子鎖に新たな粒子を追加する際に、前記粒子鎖の端部に位置し該新たな粒子と連結する粒子に対する該新たな粒子の相対的な配置位置を定義するための成長パラメータと、前記成長パラメータによって決定された配置位置に前記新たな粒子を配置できない場合に新たな配置位置を決定するための成長ルールと、を取得する取得ステップと、
前記鎖状構造体を生成するための作業領域内に、前記粒子鎖を生成するための種粒子として配置される複数の粒子を示す種粒子位置情報を生成する種粒子配置ステップと、
前記種粒子配置ステップにおいて生成された前記種粒子位置情報により定義される前記種粒子のそれぞれについて、前記取得ステップにおいて取得された前記成長ルール及び前記成長パラメータに従って決定された方向に、粒子間の距離を一定範囲に保つバネ部によって新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する粒子鎖生成ステップと、
前記粒子鎖生成ステップにおいて生成された複数の粒子鎖を示す情報を、鎖状構造体を示す情報として出力する出力ステップと、
を備えることを特徴とする鎖状構造体情報の生成方法。
【請求項3】
高分子モデル成形に用いる鎖状構造体を示す情報の生成プログラムであって、
前記鎖状構造体を示す情報は相互に接触せず任意の形状をとる複数の粒子鎖を示す情報から構成され、
前記粒子鎖を示す情報のそれぞれは、温度に応じたランダム速度で動く複数の粒子を示す情報と、隣接する2つの前記粒子を一定範囲の距離に保つばね部を示す情報とから構成されており、
前記粒子鎖に新たな粒子を追加する際に、前記粒子鎖の端部に位置し該新たな粒子と連結する粒子に対する該新たな粒子の相対的な配置位置を定義するための成長パラメータと、前記成長パラメータによって決定された配置位置に前記新たな粒子を配置できない場合に新たな配置位置を決定するための成長ルールと、を取得する取得機能と、
前記鎖状構造体を生成するための作業領域内に、前記粒子鎖を生成するための種粒子として配置される複数の粒子を示す種粒子位置情報を生成する種粒子配置機能と、
前記種粒子配置機能によって生成された前記種粒子位置情報により定義される前記種粒子のそれぞれについて、前記取得機能により取得された前記成長ルール及び前記成長パラメータに従って決定された方向に、粒子間の距離を一定範囲に保つバネ部によって新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する粒子鎖生成機能と、
前記粒子鎖生成機能により生成された複数の粒子鎖を示す情報を、鎖状構造体を示す情報として出力する出力機能と、
をコンピュータに実現させるための鎖状構造体情報の生成プログラム。
【請求項1】
高分子モデル成形に用いる鎖状構造体を示す情報の生成装置であって、
前記鎖状構造体を示す情報は相互に接触せず任意の形状をとる複数の粒子鎖を示す情報から構成され、
前記粒子鎖を示す情報のそれぞれは、温度に応じたランダム速度で動く複数の粒子を示す情報と、隣接する2つの前記粒子を一定範囲の距離に保つばね部を示す情報とから構成されており、
前記粒子鎖に新たな粒子を追加する際に、前記粒子鎖の端部に位置し該新たな粒子と連結する粒子に対する該新たな粒子の相対的な配置位置を定義するための成長パラメータと、前記成長パラメータによって決定された配置位置に前記新たな粒子を配置できない場合に新たな配置位置を決定するための成長ルールと、を取得する取得手段と、
前記鎖状構造体を生成するための作業領域内に、前記粒子鎖を生成するための種粒子として配置される複数の粒子を示す種粒子位置情報を生成する種粒子配置手段と、
前記種粒子配置手段によって生成された前記種粒子位置情報により定義される前記種粒子のそれぞれについて、前記取得手段により取得された前記成長ルール及び前記成長パラメータに従って決定された方向に、粒子間の距離を一定範囲に保つバネ部によって新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する粒子鎖生成手段と、
前記粒子鎖生成手段により生成された複数の粒子鎖を示す情報を、鎖状構造体を示す情報として出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする鎖状構造体情報の生成装置。
【請求項2】
高分子モデル成形に用いる鎖状構造体を示す情報の生成方法であって、
前記鎖状構造体を示す情報は相互に接触せず任意の形状をとる複数の粒子鎖を示す情報から構成され、
前記粒子鎖を示す情報のそれぞれは、温度に応じたランダム速度で動く複数の粒子を示す情報と、隣接する2つの前記粒子を一定範囲の距離に保つばね部を示す情報とから構成されており、
前記粒子鎖に新たな粒子を追加する際に、前記粒子鎖の端部に位置し該新たな粒子と連結する粒子に対する該新たな粒子の相対的な配置位置を定義するための成長パラメータと、前記成長パラメータによって決定された配置位置に前記新たな粒子を配置できない場合に新たな配置位置を決定するための成長ルールと、を取得する取得ステップと、
前記鎖状構造体を生成するための作業領域内に、前記粒子鎖を生成するための種粒子として配置される複数の粒子を示す種粒子位置情報を生成する種粒子配置ステップと、
前記種粒子配置ステップにおいて生成された前記種粒子位置情報により定義される前記種粒子のそれぞれについて、前記取得ステップにおいて取得された前記成長ルール及び前記成長パラメータに従って決定された方向に、粒子間の距離を一定範囲に保つバネ部によって新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する粒子鎖生成ステップと、
前記粒子鎖生成ステップにおいて生成された複数の粒子鎖を示す情報を、鎖状構造体を示す情報として出力する出力ステップと、
を備えることを特徴とする鎖状構造体情報の生成方法。
【請求項3】
高分子モデル成形に用いる鎖状構造体を示す情報の生成プログラムであって、
前記鎖状構造体を示す情報は相互に接触せず任意の形状をとる複数の粒子鎖を示す情報から構成され、
前記粒子鎖を示す情報のそれぞれは、温度に応じたランダム速度で動く複数の粒子を示す情報と、隣接する2つの前記粒子を一定範囲の距離に保つばね部を示す情報とから構成されており、
前記粒子鎖に新たな粒子を追加する際に、前記粒子鎖の端部に位置し該新たな粒子と連結する粒子に対する該新たな粒子の相対的な配置位置を定義するための成長パラメータと、前記成長パラメータによって決定された配置位置に前記新たな粒子を配置できない場合に新たな配置位置を決定するための成長ルールと、を取得する取得機能と、
前記鎖状構造体を生成するための作業領域内に、前記粒子鎖を生成するための種粒子として配置される複数の粒子を示す種粒子位置情報を生成する種粒子配置機能と、
前記種粒子配置機能によって生成された前記種粒子位置情報により定義される前記種粒子のそれぞれについて、前記取得機能により取得された前記成長ルール及び前記成長パラメータに従って決定された方向に、粒子間の距離を一定範囲に保つバネ部によって新たな粒子を連結させることを繰り返して、複数の粒子鎖を示す情報を生成する粒子鎖生成機能と、
前記粒子鎖生成機能により生成された複数の粒子鎖を示す情報を、鎖状構造体を示す情報として出力する出力機能と、
をコンピュータに実現させるための鎖状構造体情報の生成プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図21】
【図26】
【図27】
【図28】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図21】
【図26】
【図27】
【図28】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−211761(P2010−211761A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60055(P2009−60055)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]