説明

長尺レール取り卸し装置

【課題】レール運搬車に積載した長尺レールを軌道敷上に取り下げて、レールに固定された固定金具を、危険なく、騒音なく、迅速に取り外すことができるようにした長尺レール取り卸し装置を提供する。
【解決手段】レール100の頭部101及びウェブ102を僅かな間隙を隔てて外嵌できるようにしたレール嵌合部を設け、中間部にレールの頭部の下面が当接する傾斜面を設け、上面に傾斜面23を設けた固定金具20と、頭部33と傾斜面32をもったクサビ部で形成され、固定金具の傾斜面23とレールの頭部上面との間に打ち込んで固定できるようにした固定キー30と、円筒状のシリンダにピストン12を内嵌し給排油穴を介して給油によりピストンが押し出され、排油により引張コイルバネを介してピストンが引き戻されるように形成した取り外しジャッキ10とを備えたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用長尺レール(長さ25mのレールを溶接でつないだ1本概ね150〜200mのレール)を、16〜20本積載し、機関車にけん引されて、軌道上を低速で走行するレール運搬車から、連続して軌道敷上にレールを取り下げて、固定金具を取り外す取り卸し作業を行う長尺レール取り卸し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の装置は、図5−1、図5−2、図6−1及び図6−2に示すように、レールの両端に取り付ける固定金具1を、レール頭部101に嵌合したのち、固定キー2を固定金具1の傾斜面1Aとレール100の頭部101上面との間に打ち込み、傾斜面1Aの摩擦により固定し、ワイヤーロープ接続金具4にワイヤーロープ50をつなぎ、レール取り下げ作業を行い、レール取り下げ作業終了後に、キー抜き取り金具3を固定金具1と固定キー2の間隙に打ち込み、固定キー2を取り外すようになっているが、作業者は、作業の簡素化と時間短縮のため、キー抜き取り金具3を使用せず、直接、固定金具1又は固定キー2の頭部をハンマーで打つことが多く、狭い隙間にハンマーを斜めに打つため、打ち損じた場合、ハンマーが滑って危険が多く(特に雨の日に滑りやすい)、また、ハンマーの打撃音が大きく、作業現場付近に迷惑がかかる欠点があった。
そこで本発明者は、固定金具と固定キー頭部との隙間を大きくし、その隙間に専用の油圧ジャッキを挿入してジャッキアップして、固定金具から固定キーを、危険や騒音が発生しないように、また、迅速に取外すことに成功した。
【特許文献1】特開2005−15087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、レール運搬車に積載した長尺レールを軌道敷上に取り下げて、レールに固定された固定金具を、危険なく、騒音なく、迅速に取り外すことができるようにした長尺レール取り卸し装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の長尺レール取り卸し装置の請求項1の発明は、上記課題を達成するため、図示するように、レール100の頭部101及びウェブ102を僅かな間隙を隔てて外嵌できるようにしたレール嵌合部22を設け、中間部にレール100の頭部101の下面103が当接する傾斜面25を設け、上面に傾斜面23を設けた固定金具20と、頭部33と傾斜面32をもったクサビ部31で形成され、固定金具20の傾斜面23とレール100の頭部101上面との間に打ち込んで固定できるようにした固定キー30と、円筒状のシリンダ11にピストン12を内嵌し給排油穴112を介して給油によりピストン12が押し出され、排油により引張コイルバネ1231を介してピストン12が引き戻されるように形成した取り外しジャッキ10とを備えたものである。
また、本発明の長尺レール取り卸し装置の請求項2の発明は、上記課題を達成するため、図示するように、請求項1の長尺レール取り卸し装置において、水平方向の摺動内筒111とその後端に内底1121を有し、摺動内筒111の前端にピストン12の往復止め13を螺合したシリンダ11と、シリンダ11の摺動内筒111に嵌合してOリング1201でシールして往復動する摺動ガイド部122と往復止め13に嵌合して往復動するロッド部121と中央部後方へ開口した引張コイルバネ1231を備えたバネ用穴123とを設けたピストン12と、シリンダ11の摺動内筒111の内底1121に連通するように設けた給排油穴112を備えた取り外しジャッキである。
【発明の効果】
【0005】
本発明装置により、長尺レールに固定金具を固定してレール運搬車からレールを容易に軌道敷上に取り下げると共に、レールに固定された固定金具を、人力を使用することなく、油圧ジャッキにより、危険なく、騒音なく、簡単迅速に取り外すことができることになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施例は図1−1乃至図4−3に示されている。
【実施例】
【0007】
本発明の実施例が図1−1乃至図4−3に示されている。
本発明実施例の長尺レール取り卸し装置は、取り外しジャッキ10と、固定金具20と、固定キー30とを備えている。
取り外しジャッキ10は、シリンダ11とピストン12と往復止め13と当て板14と引張コイルバネ1231とからなる。
シリンダ11は、図1−1に示すように、丸棒の一端からピストン12の摺動内筒111を削正し、その内底1121に通じる給排油穴112を設けている。 また、シリンダ11は、図1−2に示すように、左右側面にワイヤーロープ50、50の狭い間隙を通して固定キー30に係着できるように平滑面1101、1101が形成されている。
ピストン12は、丸棒の一部から摺動ガイド部122を形成し、他部は先端までロッド部121を形成し、中央部後方に引張コイルバネ1231用穴123を形成している。
摺動ガイド部122に設けた円環溝124に、シールのためOリング1201とバックアップリング1202が嵌入されている。
往復止め13は、円環状の平板で、ピストン12のロッド部121に外嵌し、シリンダ11の摺動内筒111の前端の螺孔13に螺合している。
当て板14は、円板状でピストン12の先端面にねじ止めされている。
引張コイルバネ1231は、ピストン12のバネ用穴123に内嵌され、前端部は前バネ支え1232にて、バネ用穴123の前端にねじ止めされ、後端部は後バネ支え1233にて、シリンダ11の内底1121にねじ止めされている。
固定金具20は、図2−1及び図2−2に示すように、鋳鋼製の一体鋳造品で、レール100の頭部101及びウェブ102を、僅かな間隙を隔てて外嵌できるようにしたレール嵌合部22が前後方向に形成され、その中間部にレール100の頭部101の下面103が当接する傾斜面25が形成され、レール嵌合部22の上面に前後方向の傾斜面23が設けられ、外部の上面前端部に取り外しジャッキ10のシリンダ11の後端が当接する当接部24が設けられている。
固定キー30は、L字状で、頭部33とクサビ部31とからなり、頭部33はクサビ部31の後端に上方向に連設され、上端内側に取り外しジャッキ10の当て板14の先端が当接する当接部34が設けられ、クサビ部31の中央から先端にかけ、固定金具20の傾斜面23に当接する傾斜面32が形成されている。
従って、固定金具20を使用するときは、図4−1及び図4−2に示すように、レール100の頭部101及びウェブ102に、固定金具20のレール嵌合部22を外嵌し、固定キー30のクサビ部31を、固定金具20の傾斜面23とレール100の頭部101上面との間に挿入し、固定キー30の頭部33をハンマーで打てば、固定金具20はレール100上面に固定され、従来より使用されているワイヤーロープ接続金具40とワイヤーロープ50により、軌道敷上へのレール100の取り下げが連続して行われる。
取り下げが終了すると、図4−3に示すように、取り外しジャッキ10を固定キー30のクサビ部31上の頭部33と固定金具20との間に置き、油圧ポンプ200で、給排油穴112から給油すれば、図1−3に示すように、ピストン12を前方へ押して、固定キー30を押し出し、固定キー30が固定金具20のレール嵌合部22の上の傾斜面23から離されて、固定キー30を固定金具20から、安全に、騒音を発することなく、簡単迅速に引き抜くことができ、排油すれば、ピストン12は引張コイルバネ1231により自動的に引き戻され、長尺レールの取り卸し作業が完了する。
【産業上の利用可能性】
【0008】
本発明装置の固定金具、固定キー及び取り外しジャッキは、いずれも小型、軽量で量産でき、レール取り卸し現場への搬送が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1−1】本発明実施例の取り外しジャッキの断面を示す説明図である。
【図1−2】図1−1の前方から見た側面図である。
【図1−3】図1−1の取り外しジャッキを作動させた状態を示す説明図である。
【図2−1】本発明実施例の固定金具の側面図である。
【図2−2】図2−1の正面図である。
【図3】本発明実施例の固定キーの側面図である。
【図4−1】本発明実施例の使用状態を示す説明図である。
【図4−2】図4−1の上方から見た説明図である。
【図4−3】図4−1の実施例に取り外しジャッキを取り付けて作動させた状態を示す説明図である。
【図5−1】従来の固定金具の使用状態を示す説明図である。
【図5−2】図5−1の上方から見た説明図である。
【図6−1】従来のレール取り卸しの金具の使用状態を示す説明図である。
【図6−2】従来のレール取り卸しの金具の別の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0010】
10 取り外しジャッキ
11 シリンダ
111 摺動内筒
112 給排油穴
1121 シリンダの内底
12 ピストン
1201 Oリング
121 ロッド部
122 摺動ガイド部
123 バネ用穴
1231 引張コイルバネ
13 往復止め
20 固定金具
22 レール嵌合部
23 固定金具の傾斜面
25 レール当接傾斜面
30 固定キー
31 クサビ部
32 固定キーの傾斜面
33 頭部
100 レール
101 レール頭部
102 レールウェブ
103 レール頭部の下面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール100の頭部101及びウェブ102を僅かな間隙を隔てて外嵌できるようにしたレール嵌合部22を設け、中間部にレール100の頭部101の下面103が当接する傾斜面25を設け、上面に傾斜面23を設けた固定金具20と、頭部33と傾斜面32をもったクサビ部31で形成され、固定金具20の傾斜面23とレール100の頭部101上面との間に打ち込んで固定できるようにした固定キー30と、円筒状のシリンダ11にピストン12を内嵌し給排油穴112を介して給油によりピストン12が押し出され、排油により引張コイルバネ1231を介してピストン12が引き戻されるように形成した取り外しジャッキ10とを備えたことを特徴とする長尺レール取り卸し装置。
【請求項2】
請求項1の長尺レール取り卸し装置において、水平方向の摺動内筒111とその後端に内底1121を有し、摺動内筒111の前端にピストン12の往復止め13を螺合したシリンダ11と、シリンダ11の摺動内筒111に嵌合してOリング1201でシールして往復動する摺動ガイド部122と往復止め13に嵌合して往復動するロッド部121と中央部後方へ開口した引張コイルバネ1231を備えたバネ用穴123とを設けたピストン12と、シリンダ11の摺動内筒111の内底1121に連通するように設けた給排油穴112を備えたことを特徴とした取り外しジャッキ。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【公開番号】特開2010−100346(P2010−100346A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270492(P2008−270492)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(393011463)草野産業株式会社 (5)
【復代理人】
【識別番号】100080724
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 久喜
【復代理人】
【識別番号】100092749
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 得二