説明

長尺体用止め具

【課題】長尺体受け部をケースの引出口と容易に対応でき、引出口から出ている長尺体が使用者の意図に反してケース内へ引き込まれることを防止でき、巻装部から引き出し過ぎた長尺体を巻装部内の長尺体用止め具よりも内側へ案内して巻き取れるようにする。
【解決手段】ケース(3)内へ収容されるスプール(2)は、円筒状の胴部(4)とその両側端から径方向外側へ延設したフランジ部(5)とを備える。胴部(4)の周囲に巻装部(6)が形成してある。長尺体用止め具(1)は、巻装部(6)の周方向へ回動可能に嵌着される。ケース(3)へ係止可能な係止部(16)を備える。係止部(16)によるケース(3)への係止により、ケース(3)に対する相対的な回動が制限される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプールの巻装部に巻きつけられた釣糸や手芸糸、金属線などの糸条体のほか、包装用テープなどの長尺体を引出し可能に保持できる、円弧状や環状の長尺体用止め具に関し、さらに詳しくは、長尺体受け部をスプール用ケースの引出口と容易に対応させて位置決めできるうえ、引出口から引き出されている長尺体が使用者の意図に反してケース内へ引き込まれることを防止でき、しかも、巻装部から引き出し過ぎた長尺体を巻装部内の長尺体用止め具よりも内側へ簡単に案内して巻き取ることができる、長尺体用止め具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣糸などの長尺体が巻回されるスプールとしては、円筒状の胴部とこの胴部の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部とを備え、長尺体が巻回される巻装部をこの両フランジ部間で上記の胴部の周囲に形成したものがある。
【0003】
上記のスプールは、通常、ケースから取り出したのち、鉛筆など任意の支軸を上記の胴部に挿通することで回転自在に支持され、この状態でそのスプールから長尺体が引き出される。これに対し、ケース内にスプールを胴部の周方向へ回転自在に収容するとともに、そのケースに長尺体用引出口を開口し、そのケース内に収容した状態のスプールから、上記の引出口を介して長尺体を引き出すように構成したものがある(例えば、特許文献1参照、以下、従来技術1という。)。
【0004】
上記の従来技術1のスプールは、ケース内で回転自在であるため、使用者の意図に反してスプールがケース内で回転し、長尺体が自然に引出口から送り出される虞ある。また、スプールが引き出し方向とは逆方向に回転すると、長尺体の端部が引出口からケース内へ入り込んでしまい、ケースからスプールを取り出さないと使用者が長尺体を容易に引き出せなくなる問題もある。
【0005】
これらの問題を解消するため、ケースの一部に、上記の巻装部へ向かって弾性片からなる押圧片を設け、この押圧片で巻装部内の長尺体を押圧するものが提案されている(例えば、特許文献2参照、以下、従来技術2という。)。この従来技術2のスプールでは、ケース内でスプールが使用者の意図に反して回転することがなく、長尺体がスプールから自然に解けて送り出されることが防止される。
【0006】
しかしながら上記の従来技術2では、スプールをケースから取り出した場合や、生産時にスプールの巻装部へ長尺体を巻回したのち、このスプールをケース内へ収容するまでの間は、長尺体の端部を巻装部内に保持することができず、その巻装部から長尺体が自然に解けて送り出される虞がある。またこの従来技術2では、ケースに上記の押圧片を形成しなければならず、ケースの構造が複雑となって安価に製作できないばかりか、押圧片で巻装部内の長尺体を押圧できるようにケースの一部を切り欠いているため、巻装部の一部がケース外に露出して、巻装部内の長尺体を十分に保護できない問題もある。
【0007】
一方、スプールの巻装部に巻回された長尺体が自然には解けないように、円弧状や環状の長尺体用止め具を、上記の巻装部に周方向へ回動可能に嵌着したものがある(例えば、特許文献3参照、以下、従来技術3という。)。この長尺体用止め具は、その弾性により巻装部が挟持されるように、両端の間隔が巻装部の外径よりも狭く形成されており、長尺体が巻回された巻装部が外側からこの両端で挟持される。この挟持による締付け力で長尺体の外側端部が保持され、これにより長尺体が自然に解けることが防止される。
【0008】
また上記の長尺体用止め具には、長尺体をガイドするための長尺体受け部が形成してあり、巻装部の長尺体はこの長尺体受け部を経て引き出される。このとき、スプールは引き出し方向へ回転するが、長尺体用止め具は長尺体受け部に受け止めた長尺体に押圧され、スプールに対し引き出し方向とは逆方向へ巻装部内を回動し、これにより長尺体が巻装部から自由に引き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平08−070746号公報
【特許文献2】特開2003−164245号公報
【特許文献3】特開平11−220990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の従来技術3では、上記の長尺体用止め具が巻装部に巻回された長尺体を外側から挟持しているため、スプールがケース内で回転自在に収容されている場合にも、このスプールから長尺体が使用者の意図に反して自然に送り出されることがない。しかしながら、上記のスプールが使用者の意図に反してケース内で自由に回転すると、上記の長尺体用止め具はその挟持力によりそのスプールと同行回転することから、引出口から出ている長尺体の端部がその引出口からケース内へ引き込まれてしまうこととなる。そしてこの長尺体の端部がケース内へ引き込まれてしまうと、使用者はその長尺体の端部を掴むことができず、ケースからスプールを取り出さないかぎり長尺体を引き出せなくなる問題がある。
【0011】
また、スプールから長尺体を引き出し過ぎた場合に、このスプールをケース内で引き出し方向とは逆方向に回転させて、その引き出し過ぎた長尺体を巻装部へ巻きとろうとすると、巻装部へ装着した長尺体用止め具がスプールと同行回転するため、上記の長尺体はこの長尺体用止め具の外側に巻き取られることとなり、その部分の長尺体に対しては、長尺体用止め具がこれを巻装部内に保持することができず、もはや長尺体用止め具としての機能を果たさなくなる問題がある。
【0012】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、スプールの巻装部へ装着される長尺体用止め具であって、長尺体受け部をスプール用ケースの引出口と容易に対応させて位置決めできるうえ、引出口から引き出されている長尺体が使用者の意図に反してケース内へ引き込まれることを防止でき、しかも、巻装部から引き出し過ぎた長尺体を巻装部内の長尺体用止め具よりも内側へ簡単に案内して巻き取ることができる、長尺体用止め具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば、本発明の実施の形態を示す図1から図9に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明1は長尺体用止め具に関し、ケース(3)内へ収容されるスプール(2)の、円筒状の胴部(4)の周囲に形成された巻装部(6)に、その巻装部(6)の周方向へ回動可能に嵌着される長尺体用止め具であって、上記のケース(3)へ係止可能な係止部(16)を備え、この係止部(16)による係止により、ケース(3)に対する相対的な回動が制限されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明2は長尺体用止め具に関し、円筒状の胴部(4)とその両側端から径方向外側へ延設したフランジ部(5)とを備えるスプール(2)の、その胴部(4)の周囲に形成された巻装部(6)に、その巻装部(6)の周方向へ回動可能に嵌着される長尺体用止め具であって、上記のフランジ部(5)の外周縁よりも径方向外側へ突出した係止部(16)を備えることを特徴とする。
【0015】
ここで、上記の長尺体とは、上記の胴部へ捲回可能な糸条体や帯状体をいう。この糸条体とは、例えば釣糸や手芸糸などの繊維製品のほか、金属線などをも含む。また上記の帯状体とは、例えば装飾や包装などに用いられるリボン、テープなどをいうが、これらに限定されない。これらの長尺体は、太さや幅が特定の寸法のものに限定されず、合成樹脂製のほか天然繊維製や金属製、紙製などであってもよく、特定の材質に限定されない。
【0016】
また上記の長尺体用止め具の材質は、具体的には、例えばポリカーボネイト樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などを挙げることができるが、両挟持部が巻装部を確りと締め付ける弾性を備えておればよく、特定の材質のものに限定されない。
【0017】
上記の本発明1にあっては、上記の長尺体用止め具は、スプールの巻装部に長尺体が巻回されたのち、その巻装部の長尺体の外側へ嵌着される。これにより長尺体は自然に解けることがなく巻装部に保持されて、使用者の意図に反してスプールから自然に送り出されることが防止される。
【0018】
上記の長尺体用止め具を装着したスプールがスプール用ケースに収容されると、上記の係止部がケースに係止されて、ケースに対する長尺体用止め具の相対的な回動が制限される。これにより、長尺体用止め具に設けた長尺体受け部は、ケースに設けた長尺体用引出口と対応して位置決めされる。また、この長尺体用止め具は巻装部を挟持しているので、その締付け力でスプールに回転抵抗が付与される。この結果、スプールが使用者の意図に反してケース内で回転することがなく、引出口から引き出されている長尺体の端部は、スプールの回転によりケース内へ引き込まれることが防止される。
【0019】
上記の引出口から出ている長尺体の端部を使用者が掴んで引き出すと、長尺体が巻装部から引き出されるとともに、スプールがケース内で引出し方向へ自在に回転する。このとき、長尺体用止め具は係止部がケースに係止されており、スプールとは同行回転しないため、長尺体受け部が引出口と対応する位置に保持されている。長尺体はこの長尺体受け部にガイドされて、上記の引出口から自由に引き出される。
【0020】
上記の巻装部から長尺体を引き出し過ぎた場合は、上記のスプールをケース内で引き出し方向とは逆方向に回転させることで、その長尺体が巻装部に巻き取られる。このとき、長尺体用止め具は係止部がケースに係止されて回動しないので、引出口からケース内へ引き込まれた長尺体は、長尺体受け部を経て長尺体用止め具の内側へ案内される。この結果、巻装部に巻き取られた長尺体は外側から長尺体用止め具で保持され、自然に解けることが防止される。
【0021】
この本発明1において、上記の係止部による係止は、長尺体用止め具を、ケースに対し回動不能に制限したものであってもよいが、例えば中心角が90度よりも狭い範囲内等、長尺体受け部が引出口と対応する一定範囲内での回動を許容したものであってもよい。
【0022】
また上記の係止部は、上記のケースに直接当接して係止されてもよく、或いは、ケースに固定した係合部材を介してケースに係止されてもよい。例えば、ケース内にスプールの回転を案内するガイド部材を付設して、このガイド部材でスプールのフランジ部の外周縁を円滑に案内する場合には、このガイド部材を係合部材に兼用して、これに上記の係止部を係止させてもよい。なお、上記の係合部材は、ケースへ着脱不能に固定してあってもよいが、着脱可能に固定してあると、ケース自体の構造を簡略にできるうえ、既存のケースにも適用でき、安価に実施できて好ましい。
【0023】
上記の長尺体用止め具は巻装部に嵌着されているため、巻装部内の長尺体が引き出されると内径が縮径し、上記の係止部がスプールの胴部側へ、即ち径方向内側へ偏位する。このため、この偏位を吸収して係止部をケースへ確実に係止できるように、上記の係合部材は弾性変形可能で、その弾性復元力により上記の係止部をスプールの径方向内側へ付勢していると好ましく、また、上記の係止部も同様に弾性変形可能で、その弾性復元力により長尺体用止め具が上記のスプールの径方向内側へ付勢されていると好ましい。
【0024】
上記の本発明1の係止部は、通常、長尺体用止め具の外周面に突設される。しかしこの係止部は、長尺体用止め具に凹設したものであってもよく、例えばケースに固定した係合部材をこの係止部に受け止めることで、係止部をケースへ係止させてもよい。
【0025】
上記の本発明2にあっては、上記の本発明1と同様、上記の長尺体用止め具は、スプールの巻装部に長尺体が巻回されたのち、その巻装部の長尺体の外側へ嵌着され、これにより長尺体は自然に解けることがなく巻装部に保持されて、使用者の意図に反してスプールから自然に送り出されることが防止される。
【0026】
この長尺体用止め具を装着したスプールの巻装部から長尺体を引き出すと、スプールは引き出し方向に回転するが、長尺体用止め具は長尺体受け部に受け止めた長尺体に押圧されて、スプールに対し引き出し方向とは逆方向へ巻装部内を回動し、これにより長尺体が巻装部から自由に引き出される。
【0027】
上記の巻装部から長尺体を引き出し過ぎた場合は、上記の長尺体用止め具に対し、スプールを引き出し方向とは逆方向へ相対的に回転させる。例えば、作業者が上記の係止部を指先で摘むなどして、上記の長尺体用止め具の回動不能に固定し、スプールを引き出し方向とは逆方向へ回転させる。或いは、スプールを固定した状態で、上記の長尺体用止め具を巻装部内で引出し方向へ回転させる。これにより、長尺体は、長尺体受け部で長尺体用止め具の内側へ案内され、巻装部に巻き取られる。この巻装部に巻き取られた長尺体は、外側から長尺体用止め具で保持されているので、自然に解けることが防止される。
【0028】
なおこの本発明2の長尺体用止め具を装着したスプールは、上記の本発明1のようにケース内に収容して用いてもよく、或いは、ケースから取り出して使用してもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0030】
(1)本発明1と本発明2においては、長尺体用止め具に対しスプールを引出し方向とは逆方向へ回転させることができるので、巻装部から引き出し過ぎた長尺体を巻装部内の長尺体用止め具よりも内側へ簡単に案内して巻き取ることができ、この巻装部に巻き取られた長尺体を、外側から長尺体用止め具で保持して、自然に解けることを防止できる。
【0031】
(2)本発明1においては、上記の効果(1)に加えて、上記の係止部がケースへ係止されているので、長尺体受け部をスプール用ケースの引出口と容易に対応させて位置決めできるうえ、この長尺体用止め具の締付け力により、スプールが使用者の意図に反してケース内で回転することを防止でき、引出口から引き出されている長尺体の端部が、スプールの回転によりケース内へ引き込まれることを防止できる。従って、使用者は必要に応じてこの長尺体の端部を確実に掴むことができ、巻装部内の長尺体を容易に引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、釣糸用止め具が装着されたスプールをケースに収容した状態の、一部を破断した斜視図である。
【図2】第1実施形態の、釣糸用止め具の斜視図である。
【図3】第1実施形態の、釣糸用止め具が装着されたスプールをケースに収容した状態の横断平面図である。
【図4】第2実施形態を示す、図3相当図である。
【図5】第2実施形態の、釣糸用止め具の端部の拡大図である。
【図6】第2実施形態の変形例を示す、図5相当図である。
【図7】第3実施形態の、釣糸用止め具が装着されたスプールをケースに収容した状態の、要部の横断平面図である。
【図8】第4実施形態の、図7相当図である。
【図9】第5実施形態の、図7相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1から図3は本発明の第1実施形態を示す。図1に示すように、本発明の長尺体用止め具である釣糸用止め具(1)は、釣糸用スプール(2)に装着されており、この状態でスプール用ケース(3)に収容してある。上記のスプール(2)は、円筒状に形成された胴部(4)と、この胴部(4)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(5)とを備える。この両フランジ部(5)間で上記の胴部(4)の周囲に巻装部(6)が形成してあり、この巻装部(6)に長尺体である釣糸(7)が巻回される。上記の釣糸用止め具(1)は、巻装部(6)内で上記の釣糸(7)の外側に、周方向へ回動可能に嵌着される。
【0034】
上記の釣糸用止め具(1)が装着されたスプール(2)は、上記のケース(3)内へ回転自在に収容されている。このケース(3)には周側面の1つに引出口(8)が開口してあり、この引出口(8)を介して、上記の巻装部(6)から上記の釣糸(7)が引き出される。このケース(3)の内面(9)には、側面の中央部に円筒状のガイド筒(10)が設けてあり、このガイド筒(10)に上記の胴部(4)が外嵌され、これにより上記のスプール(2)がケース(3)内で回転自在に支持される。このガイド筒(10)の一部は、スリットで残りの円筒部分と切り離されて制動部(11)を構成している。この制動部(11)は、拡径方向へ弾性偏位可能であり、使用者がこれを偏位させて胴部(4)の内周面へ押し当てると、スプール(2)の回転に抵抗が加えられ、巻装部(6)から引き出される釣糸(7)に所望の張力が付与される。なお、ケース(3)の外周面には、展示の際などに用いられる吊下具(12)が設けてあるが、本発明ではこれを省略してもよい。
【0035】
図1と図2に示すように、上記の釣糸用止め具(1)は、上記の巻装部(6)に沿った長い円弧状に形成してある。この釣糸用止め具(1)の長さ方向の両端部間は、巻装部(6)の外径よりも狭く、拡径方向へ弾性変形してその巻装部(6)の外径よりも拡げることができ、この釣糸用止め具(1)を巻装部(6)へ外嵌することにより、上記の釣糸(7)を周囲から締め付けるようにしてある。
【0036】
上記の釣糸用止め具(1)の長さ方向の中央部には、巻装部(6)の略全幅に亘って押え部(13)が形成してあり、上記の締付力で釣糸(7)を外側から確りと保持している。これにより、釣糸(7)が使用者の意図に反してスプール(2)から自然に送り出されることが防止される。この押え部(13)を挟んで周方向の両側には、長尺体受け部である釣糸受け部(14)がそれぞれ設けてあり、この釣糸受け部(14)と端縁との間に溝状の案内路(15)が形成してある。なお、この案内路(15)は、釣糸(7)がこの案内路(15)内を簡単に案内されるように、釣糸(7)の太さと同等またはそれよりも広い幅に形成してある。但し、端縁近傍においては、釣糸(7)がこの案内路(15)内へ容易に受け入れられるように、その端縁に向かって徐々に拡がる形状に形成してある。
【0037】
上記の釣糸用止め具(1)の中央部には、径方向外側に向かって係止部(16)が突設してある。図1と図3に示すように、この係止部(16)は、釣糸用止め具(1)がスプール(2)に装着された状態で上記のフランジ部(5)の外周縁よりも径方向外側へ突出させてあり、スプール(2)がケース(3)内に収容されると、上記の係止部(16)はケース内面(9)のコーナー部に対向させて配置される。
【0038】
上記の係止部(16)は、釣糸用止め具(1)が周方向へ回動しようとするとケース(3)の内面(9)に係止され、ケース(3)に対する釣糸用止め具(1)の回動が制限される。即ち釣糸用止め具(1)が、例えば釣糸(7)の引出し方向とは逆方向へ回動しようとすると、上記の係止部(16)が図3の実線に示す位置でケース内面(9)へ直接に当接して係止され、釣糸用止め具(1)はそれ以上の回動が阻止される。また、釣糸用止め具(1)が釣糸の引出し方向へ回動しようとすると、上記の係止部(16)が図3の仮想線に示す位置でケース内面(9)へ直接に当接して係止され、釣糸用止め具(1)はそれ以上の回動が阻止される。この結果、釣糸用止め具(1)は、上記の釣糸受け部(14)が前記の引出口(8)と対応した位置に位置決めされる。
【0039】
なお上記の係止部(16)の径方向外側への突出寸法は、巻装部(6)に巻回される釣糸(7)が少なくなって、釣糸用止め具(1)が縮径された状態でも、係止部(16)がケース内面(9)に当接して係止される寸法に設定してある。
【0040】
上記の釣糸用止め具(1)は回動が制限されているので、この釣糸用止め具(1)で巻装部(6)が挟持されたスプール(2)も、使用者の意図に範囲してケース(3)内を自由に回転することがない。この結果、上記の引出口(8)から引き出されている釣糸(7)は、スプール(2)の回転でケース(3)内へ引き込まれることがなく、使用者はこの釣糸(7)を容易に掴んで巻装部(6)から引き出すことができる。
【0041】
上記の引出口(8)から出ている釣糸(7)の端部を使用者が掴んで引き出すと、釣糸(7)が巻装部(6)から引き出されるとともに、スプール(2)がケース(3)内で引出し方向へ自在に回転する。このとき、釣糸用止め具(1)は係止部(16)でケース(3)に係止されているので、スプール(2)とは同行回転せず、釣糸受け部(14)が引出口(8)と対応する位置に保持される。これにより、釣糸(7)はこの釣糸受け部(14)にガイドされ、上記の引出口(8)から自由に引き出される。
【0042】
上記の巻装部(6)から釣糸(7)を引き出し過ぎた場合は、上記のスプール(2)をケース(3)内で引き出し方向とは逆方向に回転させる。これにより、その釣糸(7)が巻装部(6)に巻き取られる。このとき、釣糸用止め具(1)は係止部(16)がケース(3)に係止されて回動しないので、引出口(8)からケース(3)内へ引き込まれた釣糸(7)は、釣糸受け部(14)を経て釣糸用止め具(1)の内側へ案内される。従って巻装部(6)に巻き取られた釣糸(7)は、外側から釣糸用止め具(1)で保持され、自然に解けることが防止される。
【0043】
図4と図5は、本発明の第2実施形態を示す。この第2実施形態では、図4に示すように、スプール(2)の巻装部(6)に沿って、釣糸用止め具(1)が略環状に形成してある。この釣糸用止め具(1)には2か所に係止部(16)が設けてあり、釣糸用止め具(1)が許容された範囲内で回動すると、いずれか一方又は両方の係止部(16)が、ケース内面(9)へ直接に当接して係止され、釣糸用止め具(1)はそれ以上の回動が阻止される。なお、巻装部(6)に巻回されている釣糸(7)が少なくなると、この釣糸(7)の外側に配置される釣糸用止め具(1)は縮径するが、仮想線で示すように、コーナー部から離れた位置でケース内面(9)へ直接に当接して係止される。
【0044】
上記の釣糸用止め具(1)には、図4と図5に示すように、端部近傍に釣糸受け部(14)が設けてあり、端部からこの釣糸受け部(14)に向かって徐々に狭くなる案内路(15)が設けてある。この釣糸受け部(14)は、図4に示すように上記の係止部(16)がケース内面(9)に係止されると、ケース(3)に設けた引出口(8)と対応して位置決めされる。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0045】
この第2実施形態では、釣糸用止め具(1)の端部と釣糸受け部(14)との間に案内路(15)を設けた。しかし本発明では、例えば図6に示す変形例のように、釣糸用止め具(1)の側縁と釣糸受け部(14)との間に案内路(15)を設けてもよく、さらには、この釣糸受け部(14)を釣糸用止め具(1)の端部から離れた、長さ方向の中間部に設けてもよい。即ち、本発明では上記の釣糸受け部(14)や案内路(15)は特定の形状や構造、配置のものに限定されず、上記の各実施形態や以下に説明する他の実施形態において、上記の第1実施形態や第2実施形態、或いは変形例で採用したものや、他の形状、構造、配置の釣糸受け部と案内路を採用してもよい。
【0046】
上記の各実施形態では、いずれも上記の係止部(16)をケース(3)へ直接に当接させて係止した。しかし本発明では、例えば図7に示す第3実施形態のように、ケース(3)に固定された係合部材(17)を介してそのケース(3)へ係止してもよい。
【0047】
即ちこの第3実施形態では、ケース内面(9)にガイド部材(18)が固定してあり、このガイド部材(18)によりスプール(2)のフランジ部(5)の外周縁が円滑に回転方向へ案内される。このガイド部材(18)は一対の棒状体からなり、上記の係合部材(17)を兼ねている。釣糸用止め具(1)に設けられたツノ状の係止部(16)は、この係合部材(17)間に挿入されて係止されており、ケース(3)に対し回動不能となっている。
【0048】
巻装部(6)内の釣糸(7)が少なくなって釣糸用止め具(1)が縮径すると、図7の仮想線に示すように、上記の係止部(16)が径方向内側へ偏位するが、この場合でも、その係止部(16)の先端部が上記の係合部材(17)間に挿入されており、この係合部材(17)を介して係止された状態が維持される。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0049】
上記の第1実施形態から第3実施形態のものは、いずれも、上記のスプール(2)に装着した上記の釣糸用止め具(1)の係止部(16)を、上記のフランジ部(5)の外周縁よりも径方向外側へ突出させてある。このため、これらの実施形態では、このスプール(2)をケース(3)から取り出した状態で、作業者が上記の係止部(16)の突出部分を摘むなどして、操作してもよい。
【0050】
即ち、例えば第3実施形態において、上記の釣糸用止め具(1)を装着したスプール(2)がケース(3)から取り出された状態であっても、巻装部(6)に巻回された釣糸(7)は釣糸用止め具(1)に挟持されて保持されているので、使用者の意図に反して釣糸(7)がスプール(2)から自然に送り出されることはない。
【0051】
使用者が釣糸(7)の端部を引っ張ってスプール(2)の巻装部(6)から引き出すと、スプール(2)は引き出し方向へ回転するが、釣糸用止め具(1)は釣糸受け部(14)に受け止めた釣糸(7)に押圧されて、スプール(2)に対し引き出し方向とは逆方向へ巻装部(6)内を回動し、これにより釣糸(7)が巻装部(6)から自由に引き出される。
【0052】
上記の巻装部(6)から釣糸(7)を引き出し過ぎた場合は、上記の係止部(16)の突出部を摘むなどして、釣糸用止め具(1)を回動不能に固定し、この状態で上記のスプール(2)を引き出し方向とは逆方向へ回転させる。或いは、スプール(2)を固定した状態で、上記の係止部(16)を摘んで釣糸用止め具(1)を引出し方向へ回転させる。これにより、釣糸(7)は釣糸受け部(14)で釣糸用止め具(1)の内側へ案内され、巻装部(6)に巻き取られる。この巻装部(6)に巻き取られた釣糸(7)は、外側から釣糸用止め具(1)で保持されるので、自然に解けることがない。
【0053】
図8は本発明の第4実施形態を示す、ケースに収容されたスプールの要部の断面図である。この第4実施形態では、上記の第1実施形態と同様、周方向に長い釣糸用止め具(1)の長さ方向の中央部に押え部(13)が形成してあるが、第1実施形態と異なり、この押え部(13)に係止部(16)が凹設してある。一方、スプール(2)が収容されるケース(3)内には、コーナー部に係合部材(17)が着脱可能に固定してあり、この係合部材(17)の先端の係合部(19)が上記の係止部(16)に受け止めてある。従って、この係止部(16)は、上記の係合部材(17)を介してケース(3)へ係止されている。
【0054】
上記の係合部材(17)は弾性変形可能であり、その弾性復元力により上記の係止部(16)をスプール(2)の径方向内側へ付勢している。このため、巻装部(6)内の釣糸(7)が少なくなって釣糸用止め具(1)が縮径した場合も、上記の係合部(19)が係止部(16)に受け止められており、係止部(16)は、この係合部材(17)を介してケース(3)へ係止された状態に保持されている。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0055】
図9は本発明の第5実施形態を示す、ケースに収容されたスプールの要部の断面図である。この第5実施形態では、ケース(3)の内面(9)に係合部材(17)が固定してあり、釣糸用止め具(1)の2か所に付設した弾性変形可能な係止部(16)が、上記の係合部材(17)を介してケース(3)へ係止してある。釣糸用止め具(1)は、この係止部(16)の弾性復元力により上記のスプール(2)の径方向内側へ付勢されている。従って、巻装部(6)内の釣糸(7)が少なくなって釣糸用止め具(1)が縮径した場合も、係止部(16)は、係合部材(17)を介してケース(3)へ係止された状態に保持されている。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0056】
上記の各実施形態で説明した長尺体用止め具は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、係止部や長尺体受け部、案内路などの各部のほか、スプールやケースの各部の、形状や寸法、配置、材質等をこれらの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0057】
例えば、上記の第4実施形態では弾性変形可能な係合部材を用い、第5実施形態では弾性変形可能な係止部を用いたが、本発明では、共に弾性変形可能な係止部と係合部材とを組み合わせて用いてもよい。即ち本発明では、上記の各実施形態で用いた各部の構成や他の構成を、互いに組み合わせて採用することができる。
【0058】
また、上記の各実施形態では長尺体が釣糸である場合について説明したが、本発明に用いる上記の長尺体は、他の糸条体や、巻装部と同じ幅の或いはこれよりも狭い幅の帯状体等であってもよいことは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の長尺体用止め具は、長尺体受け部をスプール用ケースの引出口と容易に対応させて位置決めできるうえ、引出口から引き出されている長尺体が使用者の意図に反してケース内へ引き込まれることを防止でき、しかも、巻装部から引き出し過ぎた長尺体を巻装部内の長尺体用止め具よりも内側へ簡単に案内して巻き取ることができるので、特に釣糸用止め具として好適であるが、手芸糸や包装用テープなど、他の長尺体の止め具にも好適である。
【符号の説明】
【0060】
1…長尺体用止め具(釣糸用止め具)
2…長尺体用スプール(釣糸用スプール)
3…スプール用ケース
4…胴部
5…フランジ部
6…巻装部
7…長尺体(釣糸)
16…係止部
17…係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース(3)内へ収容されるスプール(2)の、円筒状の胴部(4)の周囲に形成された巻装部(6)に、その巻装部(6)の周方向へ回動可能に嵌着される長尺体用止め具であって、
上記のケース(3)へ係止可能な係止部(16)を備え、この係止部(16)による係止により、ケース(3)に対する相対的な回動が制限されることを特徴とする、長尺体用止め具。
【請求項2】
上記の係止部(16)は、上記のケース(3)へ直接に当接して係止される、請求項1に記載の長尺体用止め具。
【請求項3】
上記のケース(3)に係合部材(17)が固定してあり、この係合部材(17)を介して上記の係止部(16)が上記のケース(3)へ係止される、請求項1に記載の長尺体用止め具。
【請求項4】
上記の係合部材(17)は、上記のケース(3)に着脱可能である、請求項3に記載の長尺体用止め具。
【請求項5】
上記の係合部材(17)は弾性変形可能であり、その弾性復元力により上記の係止部(16)がスプール(2)の径方向内側へ付勢されている、請求項3または請求項4に記載の長尺体用止め具。
【請求項6】
上記の係止部(16)は弾性変形可能であり、その弾性復元力により上記のスプール(2)の径方向内側へ付勢されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の長尺体用止め具。
【請求項7】
円筒状の胴部(4)とその両側端から径方向外側へ延設したフランジ部(5)とを備えるスプール(2)の、その胴部(4)の周囲に形成された巻装部(6)に、その巻装部(6)の周方向へ回動可能に嵌着される長尺体用止め具であって、
上記のフランジ部(5)の外周縁よりも径方向外側へ突出した係止部(16)を備えることを特徴とする、長尺体用止め具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−4653(P2011−4653A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151060(P2009−151060)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(506269149)株式会社ワイ・ジー・ケー (21)
【Fターム(参考)】