説明

長尺物の巻取リール

【課題】巻取リールを折りたたんで保管したり運搬することができる一方、長尺物を巻き取った状態においては、容易に持ち運ぶことができると共に、安定よく積み重ねることができる長尺物の巻取リールを提供する。
【解決手段】リール胴11と、一対のフランジ20とを備える。フランジ20の対向面の所定の円周上には複数本の連結部材40の両端末部41がそれぞれ固着され、一対のフランジ20が連結部材40を間に挟んで接近する折りたたみ位置と、所定間隔を隔てて離反する離反位置とに配置切り換え可能に連結される。リール胴11は、シート状部材12よりなり、一対のフランジ20が離反位置に配置された状態で複数本の連結部材40の外周に沿って巻回されて筒状に形成される。一対のフランジ20のうち、少なくとも一方のフランジ20の外面側には扁平ベルトよりなる取手部材50が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は長尺物を巻き取るための巻取リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺押出品(樹脂、ゴム等を材料とする押出成形品)、ケーブル、ワイヤ等の長尺物を巻き取るための巻取リールにおいて、長尺物が巻き取られていない空の状態の巻取リールを折りたたみ可能に構成し、空の巻取リールの保管スペースや運搬スペースを小さくしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような折りたたみ式の巻取リールにおいては、一対のフランジを連結している連結胴部が折りたたみ並びに伸展可能に形成される。
【特許文献1】実開平5−92269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記した従来の長尺物の巻取リールにおいては、リール胴に長尺物を巻き取って持ち運ぶ場合、フランジの周縁部を把持したり、あるいは巻取リールを抱え込んで持ち運ばなければならず厄介であった。
そこで、フランジの外面側に持ち運びのための取手を取り付けることで巻取リールの持ち運びを容易化することが考えられる。
しかしながら、フランジの外面側に取手を取り付けると、長尺物を巻き取った巻取リールの一方のフランジを上向きにして積み重ねる際、取手が積み重ねの妨害物となり、安定よく積み重ねることができなくなる。
【0004】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、長尺物が巻き取られていない空の状態においては、巻取リールを折りたたんで保管したり運搬することができる一方、リール胴に長尺物を巻き取った状態においては、巻取リールを容易に持ち運ぶことができると共に、巻取リールの一方のフランジを上向きにして安定よく積み重ねることができる長尺物の巻取リールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、この発明の請求項1に係る長尺物の巻取リールは、長尺物を巻き取るためのリール胴と、このリール胴の両端に配置される一対のフランジとを備えた長尺物の巻取リールであって、
前記一対のフランジの対向面の所定の円周上には、折り曲げ変形可能な複数本の連結部材の両端末部がそれぞれ固着されることで、前記一対のフランジが前記複数本の連結部材を間に挟んで接近する折りたたみ位置と、所定間隔を隔てて離反する離反位置とに配置切り換え可能に連結され、
前記リール胴は、シート状部材よりなり、前記一対のフランジが離反位置に配置された状態で前記複数本の連結部材の外周に沿って取外可能に巻回され、かつ、前記シート状部材の両端部が接離可能に結合されることで筒状に形成され、
前記一対のフランジのうち、少なくとも一方のフランジの外面側には扁平ベルトよりなる取手部材が設けられていることを特徴とする。
【0006】
前記構成によると、巻取リールに長尺物を巻き取る場合、先ず、一対のフランジを所定間隔を隔てる離反位置に配置させた状態で、複数本の連結部材の外周に沿ってシート状部材を巻回し、その両端部を結合させることによって筒状のリール胴を形成する。
ここで、リール胴の外周面に沿って所望とする長尺物を巻き取る。
前記したようにリール胴に長尺物を巻き取った状態において、巻取リールを持ち運ぶ場合、少なくとも一方のフランジの外面側に設けた取手部材を把持して巻取リールを容易に持ち運ぶことができる。
また、長尺物を巻き取った複数の巻取リールを積み重ねて保管したり、あるいは運搬する場合、巻取リールの一対のフランジのうち、一方のフランジを上向きにし、他方のフランジを下向きにした状態で順次積層状に積み重ねる。
この際、少なくとも一方のフランジの外面側に設けた扁平ベルトよりなる取手部材がフランジの面に沿うため、取手部材が積み重ねの妨害物となることなく安定よく積み重ねることができる。
一方、長尺物が巻き取られていない空の状態においては、筒状のリール胴を形成しているシート状部材の両端部の結合を外した状態で一対のフランジからシート状部材を取り外した後、複数本の連結部材を曲げ変形すると共に、これら複数本の連結部材を間に挟んで一対のフランジを接近させることで容易に折りたたむことでができる。
前記したように巻取リールを折りたたむことによって、多数個の巻取リールを小さいスペース内で保管したり運搬することができる。
【0007】
請求項2に係る長尺物の巻取リールは、請求項1に記載の長尺物の巻取リールであって、
取手部材は、一対のフランジの両外側面に跨って移動可能に挿通されかつ前記一対のフランジの外面側に折返状の把持部をそれぞれ形成する無端状扁平ベルトによって形成されていることを特徴とする。
【0008】
前記構成によると、無端状扁平ベルトによって取手部材を形成することで、一対のフランジの外面側に折返状の把持部をそれぞれ形成することができ、巻取リールの持ち運びの際の使い勝手の向上を図ることができる。
【0009】
請求項3に係る長尺物の巻取リールは、請求項1又は2に記載の長尺物の巻取リールであって、
リール胴を形成するシート状部材の両端部には係脱可能に係合する面ファスナがそれぞれ設けられていることを特徴とする。
前記構成によると、一対のフランジを連結している複数本の連結部材の外周に沿ってシート状部材を巻回し両端部を結合させて筒状のリール胴を形成する作業や、あるいは、リール胴を形成しているシート状部材の両端部の結合を外して取り外す作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、この発明を実施するための最良の形態を実施例にしたがって説明する。
【実施例】
【0011】
(実施例1)
この発明の実施例1を図面にしたがって説明する。
図1はこの発明の実施例1に係る長尺物の巻取リールを示す斜視図である。図2はリール胴を形成するシート状部材を一対のフランジから取り外した状態を示す斜視図である。図3は巻取リールを示す平面図である。図4は巻取リールを示す側面図である。図5は図4のV−V線に基づく巻取リールの平断面図である。図6は図3のVI−VI線に基づく巻取リールの側断面図である。図7は一対のフランジを連結部材を間に挟んで折りたたんだ状態を示す側面図である。図8は長尺物を巻き取った複数の巻取リールを積み重ねた状態を示す説明図である。
【0012】
図1〜図4に示すように、巻取リール10は、長尺押出品(樹脂、ゴム等を材料とする押出成形品)、ケーブル、ワイヤ等の長尺物を巻き取るためのリール胴11を形成するシート状部材12と、リール胴11の両端に配置される一対のフランジ20と、複数の連結部材40と、取手部材50とを備えている。
一対のフランジ20は、円形状をなしかつ中心部に巻き取り軸(図示しない)が嵌挿される嵌合孔20aが貫設ている。
図5と図6に示すように、複数本の連結部材40は、その各両端末部41が一対のフランジ20の対向面の所定の円周上に配列された状態でそれぞれ固着されている。そして、一対のフランジ20は、図7に示すように、複数本の連結部材40を間に挟んで接近する折りたたみ位置と、図2に示すように、所定間隔を隔てて離反する離反位置とに配置切り換え可能に連結されている。
【0013】
また、図5と図6に示すように、一対のフランジ20は、プラスチック製段ボール、紙製段ボール等のシート材よりなる第1、第2の両シート材21、22が積層状に重ね合わされ、止着部材としてのリベット31によって一体状に接合されることによって形成されている。
一方、複数本の連結部材40は、折り曲げ変形可能な扁平紐(合成繊維、天然繊維等の繊維材料よりなる扁平紐)により形成されている。そして、一対のフランジ20を構成する各第1、第2の両シート材21、22がリベット31によって一体状に接合する際、複数本の連結部材40の両端末部41が第1、第2の両シート材21、22の間に挟まれた状態で、これら第1、第2の両シート材21、22と共に複数本の連結部材40の両端末部41が共通のリベット31によって止着されている。
【0014】
図1と図2に示すように、リール胴11を形成するシート状部材12は、プラスチック製段ボール、紙製段ボール等の可撓性を有する長方形状のシート材によって形成され、その両端部には係脱可能に係合する面ファスナ13、14が貼り付けられている。
そして、図2に示すように、一対のフランジ20が離反位置に配置された状態で複数本の連結部材40の外周に沿ってシート状部材12が巻回され、かつ、シート状部材12の両端部の面ファスナ13、14同士が接離可能に結合されることで、筒状のリール胴11を形成するようになっている(図1及び図5参照)。
【0015】
一対のフランジ20のうち、少なくとも一方のフランジ20の外面側には扁平ベルトよりなる取手部材50が設けられている。
この実施例1において、図2、図5及び図6に示すように、一対のフランジ20のリール胴11の内周側に位置する領域内に、二つの取手部材50を構成する扁平ベルト(合成繊維、天然繊維等の繊維材料よりなる扁平紐)が挿通可能なスリット状の二対の挿通孔がそれぞれ貫設されている。
そして、扁平ベルトの先端部が一方のフランジ20の片側の挿通孔の外側からそれぞれ挿通された後、他方のフランジ20の片側の挿通孔の内側から挿通される。その後、扁平ベルトの先端部が他方のフランジ20の反対側の挿通孔に挿通された後、一方のフランジ20の反対側の挿通孔に挿通される。
ここで、扁平ベルトの両端部が熱用着や接合部材等によって接合されることで無端状扁平ベルトよりなる取手部材50が形成されている。
これによって二つの取手部材50には、一対のフランジ20の外面側に折返部51aがそれぞれ形成され、図1に示すように、両折返部51aの一方が把持可能な長さに引き出されることで把持部51が形成されるようになっている。
【0016】
この実施例1に係る長尺物の巻取リールは上述したように構成される。
したがって、巻取リール10に長尺物を巻き取る場合、先ず、図2に示すように、一対のフランジ20を所定間隔を隔てる離反位置に配置させた状態で、図1と図5に示すように、複数本の連結部材40の外周に沿ってシート状部材12を巻回し、その両端部の面ファスナ13、14同士を係合させて結合させることによって筒状のリール胴11を形成する。
ここで、リール胴11の外周面に沿って所望とする長尺物を巻き取る。
前記したように、リール胴11に長尺物を巻き取った状態において、巻取リール10を持ち運ぶ場合、一方のフランジ20を上向きにして二つの取手部材50の各折返部51aを図1と図6に示すようにそれぞれ引き出して把持部51を構成することで、これら把持部51を把持して巻取リール10を容易に持ち運ぶことができる。
【0017】
図8に示すように、長尺物Wを巻き取った複数の巻取リール10を積み重ねて保管したり、あるいは運搬する場合、巻取リール10の一対のフランジ20のうち、一方のフランジ20を上向きにし、他方のフランジ20を下向きにした状態で順次積層状に積み重ねる。この際、取手部材50の把持部51がフランジ20の外面に沿って曲げられる。このため、取手部材50の把持部51が積み重ねの妨害物となることなく複数の巻取リール10を安定よく積み重ねることができる。
【0018】
また、長尺物が巻き取られていない空の状態の巻取リール10においては、筒状のリール胴11を形成しているシート状部材12の両端部の面ファスナ13、14同士の係合を外した後、図2に示すように、一対のフランジ20からシート状部材12を取り外す。その後、図7に示すように、複数本の連結部材40を曲げ変形すると共に、これら複数本の連結部材40を間に挟んで一対のフランジ20を接近させることで容易に折りたたむことでができる。
図7に示すように、巻取リール10を折りたたむことによって、多数個の巻取リール10を小さいスペース内で保管したり運搬することができる。
【0019】
また、この実施例1において、一対のフランジ20のうち、所望とするフランジ20の外面側に対し、無端状扁平ベルトよりなる取手部材50の折返部51aを把持可能な長さに引き出して把持部51を形成することができるため、巻取リール10の持ち運びの際の使い勝手の向上を図ることができる。
また、リール胴11を形成するシート状部材12の両端部の面ファスナ13、14同士を係脱することによって、一対のフランジ20を連結している複数本の連結部材40の外周に沿ってシート状部材12を巻回した後、その両端部を結合して筒状のリール胴11を形成する作業や、あるいは、リール胴11を形成しているシート状部材12の両端部の結合を外して取り外す作業を容易に行うことができる。
【0020】
なお、この発明は前記実施例1に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
例えば、前記実施例1においては、一対のフランジ20の両外側面に跨って移動可能に挿通され、かつこれら一対のフランジ20の外面側に折返状の把持部51をそれぞれ形成する無端状扁平ベルトによって取手部材50が形成される場合を例示したが、一方のフランジ20の外面側に対してのみ扁平ベルトよりなる取手部材が設けられる場合においてもこの発明を実施可能である。
また、前記実施例1においては、一対のフランジ20及びシート状部材12がプラスチック製段ボール、紙製段ボール等のシート材によって形成される場合を例示したが、剛性、耐久性等を考慮すると、プラスチック製段ボールよりなるシート材によって一対のフランジ20及びシート状部材12を形成することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施例1に係る長尺物の巻取リールを示す斜視図である。
【図2】同じくリール胴を形成するシート状部材を一対のフランジから取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】同じく巻取リールを示す平面図である。
【図4】同じく巻取リールを示す側面図である。
【図5】同じく図4のV−V線に基づく巻取リールの平断面図である。
【図6】同じく図3のVI−VI線に基づく巻取リールの側断面図である。
【図7】同じく一対のフランジを連結部材を間に挟んで折りたたんだ状態を示す側面図である。
【図8】同じく長尺物を巻き取った複数の巻取リールを積み重ねた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
10 巻取リール
11 リール胴
12 シート状部材
13、14 面ファスナ
20 フランジ
40 連結部材
50 取手部材
51 把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺物を巻き取るためのリール胴と、このリール胴の両端に配置される一対のフランジとを備えた長尺物の巻取リールであって、
前記一対のフランジの対向面の所定の円周上には、折り曲げ変形可能な複数本の連結部材の両端末部がそれぞれ固着されることで、前記一対のフランジが前記複数本の連結部材を間に挟んで接近する折りたたみ位置と、所定間隔を隔てて離反する離反位置とに配置切り換え可能に連結され、
前記リール胴は、シート状部材よりなり、前記一対のフランジが離反位置に配置された状態で前記複数本の連結部材の外周に沿って取外可能に巻回され、かつ、前記シート状部材の両端部が接離可能に結合されることで筒状に形成され、
前記一対のフランジのうち、少なくとも一方のフランジの外面側には扁平ベルトよりなる取手部材が設けられていることを特徴とする長尺物の巻取リール。
【請求項2】
請求項1に記載の長尺物の巻取リールであって、
取手部材は、一対のフランジの両外側面に跨って移動可能に挿通されかつ前記一対のフランジの外面側に折返状の把持部をそれぞれ形成する無端状扁平ベルトによって形成されていることを特徴とする長尺物の巻取リール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の長尺物の巻取リールであって、
リール胴を形成するシート状部材の両端部には係脱可能に係合する面ファスナがそれぞれ設けられていることを特徴とする長尺物の巻取リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−308263(P2008−308263A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156274(P2007−156274)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000123549)化成工業株式会社 (11)
【出願人】(594061643)昭和包装工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】