説明

長尺状積層偏光板の製造方法及び長尺状積層偏光板

【課題】本発明は、長尺状位相差フィルム上に長尺状偏光膜が直接塗布形成されている長尺状積層偏光板の製造方法、及び、長尺状積層偏光板を提供することを目的とする。
【解決手段】長手方向に遅相軸を有する長尺状位相差フィルムと、該長尺状位相差フィルムの遅相軸方向に対して面内の25〜65°の方向に吸収軸又は透過軸を有する長尺状偏光膜とを備えた長尺状積層偏光板の製造方法であって、長手方向に遅相軸を有し、かつ、Nz係数が1.5以下である長尺状位相差フィルムを準備する工程A、該工程Aで得られた長尺状位相差フィルムを走行させながら、前記長手方向に対して面内の20〜70°の方向にラビング処理する工程B、及び、該工程Bで得られた長尺状位相差フィルムのラビング処理した表面に、等方相状態の液晶化合物溶液を塗布して固化させ、該液晶化合物が配向した長尺状偏光膜を形成する工程Cを含む、長尺状積層偏光板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状位相差フィルムと長尺状偏光膜とを備えた長尺状積層偏光板の製造方法及び長尺状積層偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
積層偏光板としては、例えば、直線偏光板と1/4波長の面内位相差を有する位相差フィルム(λ/4板ともいう)とが積層されてなる円偏光板等が知られている。このような円偏光板は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等に使用されている。
【0003】
円偏光板の製造方法としては種々の方法が知られているが、例えば、斜め方向に延伸された一枚のポリマーフィルムからなるλ/4板と直線偏光膜とを積層して、ロール状の円偏光板を作製する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような円偏光板は、ロールによる連続生産が可能なため生産性に優れるものである。
【0004】
しかしながら、特許文献1の製造方法では、直線偏光膜とλ/4板とを接着剤等により貼り合わせる必要があり、λ/4板等の位相差板上に偏光膜が直接形成されている長尺状積層偏光板及びその製造方法は知られていないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−22944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、長尺状位相差フィルム上に長尺状偏光膜が直接塗布形成されている長尺状積層偏光板の製造方法、及び、長尺状積層偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点に鑑み、鋭意検討の結果、Nz係数が1.5以下の長尺状位相差フィルムを走行させながら特定の方向にラビング処理し、当該長尺状位相差フィルムのラビング処理面に、等方相状態の液晶化合物溶液を塗布して固化することで、ラビング処理方向と液晶化合物の分子の配向方向とを略平行にすることができ、かつ、接着剤層等を介さずに長尺状位相差フィルムと長尺状偏光膜とを積層できることを見出したものである。
【0008】
本発明は、長手方向に遅相軸を有する長尺状位相差フィルムと、該長尺状位相差フィルムの遅相軸方向に対して面内の25〜65°の方向に吸収軸又は透過軸を有する長尺状偏光膜とを備えた長尺状積層偏光板の製造方法であって、
長手方向に遅相軸を有し、かつ、面内の最大屈折率をnx、nxに面内で直交する方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、(nx−nz)/(nx−ny)で表されるNz係数が1.5以下である長尺状位相差フィルムを準備する工程A、
該工程Aで得られた長尺状位相差フィルムを走行させながら、前記長手方向に対して面内の20〜70°の方向にラビング処理する工程B、及び、
該工程Bで得られた長尺状位相差フィルムのラビング処理した表面に、等方相状態の液晶化合物溶液を塗布して固化させ、該液晶化合物が配向した長尺状偏光膜を形成する工程Cを含む、
長尺状積層偏光板の製造方法に関する。
【0009】
本発明の製造方法によれば、ラビング処理方向と液晶化合物の分子の配向方向とを略平行にすることができ、かつ、長尺状位相差フィルム上に長尺状偏光膜を直接塗布形成することができる。従って、本発明の製造方法により得られた長尺状積層偏光板は、接着剤層を介さずに長尺状位相差フィルムと長尺状偏光膜とが積層されているものである。
【0010】
等方相状態の液晶化合物溶液が、等方相−液晶相転移濃度よりも希釈されたリオトロピック液晶化合物溶液であることが好ましい。この構成によると、溶媒を乾燥させることで相転移が生じて液晶化合物を配向させることができるため、製造工程の簡易化を図ることができる。
【0011】
前記工程Bのラビング処理は、走行する長尺状位相差フィルムに、回転するラビングロールを接触して行うものであることが好ましい。この構成によると、ラビングロールの方向と回転速度によって、ラビング処理の方向を調整でき、しかも、均一な処理が行えるようになる。
【0012】
さらに、本発明は、長手方向に遅相軸を有する長尺状位相差フィルムと、該長尺状位相差フィルムの遅相軸方向に対して面内の25〜65°の方向に吸収軸又は透過軸を有する長尺状偏光膜とを備えた長尺状積層偏光板であって、
長尺状位相差フィルムが、面内の最大屈折率をnx、nxに面内で直交する方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、(nx−nz)/(nx−ny)で表されるNz係数が1.5以下であって、表面が前記長手方向に対して面内の20〜70°の方向にラビング処理されており、
長尺状位相差フィルムのラビング処理された表面に、長尺状偏光膜が直接塗布形成されていることを特徴とする長尺状積層偏光板に関する。
【0013】
本発明の長尺状積層偏光板は、接着剤層を介さずに長尺状位相差フィルムと長尺状偏光膜とが積層されているため、薄型化が図れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)本発明の製造方法の一実施形態を示す模式図である。(b)図1(a)のA−A’断面図である。
【図2】(a)本発明の長尺状積層偏光板の一実施形態を示す断面図である。(b)本発明の長尺状積層偏光板の一実施形態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.長尺状積層偏光板の製造方法
本発明の長尺状積層偏光板の製造方法は、長手方向に遅相軸を有する長尺状位相差フィルムと、該長尺状位相差フィルムの遅相軸方向に対して面内の25〜65°の方向に吸収軸又は透過軸を有する長尺状偏光膜とを備えた長尺状積層偏光板の製造方法であって、以下の工程A〜Cを含むものである。
【0016】
(1)工程A
工程Aは、長手方向に遅相軸を有し、かつ、面内の最大屈折率をnx、nxに面内で直交する方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、(nx−nz)/(nx−ny)で表されるNz係数が1.5以下である長尺状位相差フィルムを準備する工程である。
【0017】
このような長尺状位相差フィルムを後述する液晶化合物溶液を塗布する基材として用いると、液晶化合物は分子の長軸方向(吸収軸方向、図2(b)中の12)とラビング処理方向(図2(b)中の7)とが略平行になるように配向する。ここで略平行とは、長軸方向とラビング処理方向とのなす角が、0°±5°程度であることを意味する。
【0018】
なお、液晶化合物の種類によっては、分子の長軸方向とラビング処理方向とが略直交するように配向する場合もあり、この場合は、分子の短軸方向(透過軸方向)とラビング処理方向とが略平行になるように配向する。ここで略平行とは、短軸方向とラビング処理方向とのなす角が、0°±5°程度であることを意味する。
【0019】
前記長尺状位相差フィルムのNz係数は、1.5以下であり、0〜1.2であることが好ましく、0〜0.5であることがより好ましい。つまり、前記長尺状位相差フィルムには、nx>ny>nz、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz=nx>nyの関係を満たす長尺状位相差フィルムが含まれる。Nz係数が1.5以下となることで、前記長尺状位相差フィルムを形成する分子の面内配向性が小さくなるため、液晶化合物が動きやすくなり、液晶化合物の分子の長軸方向(又は短軸方向)とラビング処理方向とが略平行になると考えられる。
【0020】
前記長尺状位相差フィルムを準備する手段としては、代表的には、長手方向に遅相軸が生じるように、長尺状高分子フィルムを延伸する方法が挙げられる。Nz係数は、長尺状高分子フィルムを延伸する際の縦方向(長手方向)及び横方向の延伸倍率を制御することにより適宜調整することができる。例えば、Nz係数を大きくするためには、縦方向に延伸しつつ、横方向の延伸倍率を大きくすればよく、Nz係数を小さくするためには、縦方向に延伸しつつ、横方向の延伸倍率を小さくするか横方向には収縮させるとよい。延伸倍率は、用いるフィルム材料の種類や、所望のNz係数によって適宜設定することができる。
【0021】
前記長尺状位相差フィルムの材料としては、Nz係数が前記範囲となるものであればよく、特に限定されないが、シクロオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、シクロオレフィン系樹脂が好ましく、ノルボルネン系樹脂がより好ましい。
【0022】
前記長尺状位相差フィルムの厚みは、特に制限はないが、例えば、20〜200μmであることが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法においては、長尺状位相差フィルムと長尺状偏光膜とが接着剤層を介さずに積層することができるものであるが、長尺状偏光膜との密着性を向上させるために、前記長尺状位相差フィルムの表面にポリウレタン系樹脂層などからなる厚み数ミクロン程度の易接着層を形成することもできる。
【0024】
また、長尺状位相差フィルムの面内の位相差値{(nx−ny)×厚み}は、長尺状円偏光板を得る場合、120〜160nmであることが好ましく、130〜150nmであることがより好ましい。前記範囲内の長尺状位相差フィルムの遅相軸と、後述する長尺状偏光膜の吸収軸又は透過軸が25〜65°となるようにこれらを積層することで、長尺状楕円偏光板〜長尺状円偏光板とすることができる。前記長尺状位相差フィルムは、単層であっても複数層で構成されていてもよい。また、粘着層等の他の層を含んでいてもよい。
【0025】
(2)工程B
工程Bは、図1、2に示すように、前記工程Aで得られた長尺状位相差フィルム1を走行させながら(走行方向8)、前記長手方向6に対して面内の20〜70°(図中の角度α)の方向にラビンク処理する工程である。ここで、ラビング処理は、後述する液晶分子11を配向させるために、長尺状位相差フィルム1の表面をラビング布等で擦る処理である。
【0026】
本発明においては、ラビング処理方向7と一致する方向に液晶分子11を配向させることがーつの特徴であるが、それでも完全に平行又は直交にならない場合がある。従って、長尺状位相差フィルム1の遅相軸方向5に対して面内の25〜65°のいずれか一方に吸収軸又は透過軸を有する長尺状偏光膜10を得るためには、ラビング処理方向7は、目的とする長尺状偏光膜10の吸収軸又は透過軸の角度よりも±5°の範囲(つまり、20〜70°)で広く設定される。
【0027】
ラビング処理方法の好ましい実施態様の一例について図1(a)を用いてより詳細に説明する。ラビング処理は、前述の通り、長尺状位相差フィルム1を走行させながら行う。長尺状位相差フィルム1の走行に際しては、第1のガイドロール3、第2のガイドロール4が該長尺状位相差フィルム1の裏面に接触して回転しながら支持する。第1のガイドロール3及び第2のガイドロール4は、その種類・大きさに特に制限はないが、通常、ゴム又は金属製のものであり、かつ、直径が10〜500mmのものである。また、第1のガイドロール3と第2のガイドロール4は、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0028】
ラビング処理は、走行している長尺状位相差フィルム1の表面に接触するラビングロール2により実施される。ラビングロール2は、上下方向に昇降可能に構成されており、これにより、以下の所定の角度と押し込み量を調整可能である。
【0029】
前記ラビングロール2の所定の角度とは、ラビングロール2の回転軸2aと長尺状位相差フィルム1の長手方向(すなわち、走行方向)のなす角が90°+α(α=20〜70°)であることをいう。回転軸2aと長尺状位相差フィルム1の長手方向のなす角が前記範囲内となることで、ラビング処理方向を長手方向に対して面内のα°にすることができる(図1(a))。
【0030】
前記ラビングロール2の押し込み量9は、液晶分子がラビング処理方向に配向するように、適宜設定される。押し込み量9は、10〜50mmが好ましい。押し込み量9が前記範囲内にあると、ラビング処理方向7と一致する方向に液晶分子を配向させやすくなるため好ましい。ここで、押し込み量9とは、図1(b)に示すように、ラビングロールが接触する前の長尺状位相差フィルムの位置を原点とし、当該原点から位相差フィルムに向けてラビングロールを押し込んだ量(位置の変動量)を意味する。
【0031】
ラビング布の材質は、特に限定されるものではなく、起毛布であればよい。起毛布の材質や形状等は、ラビング処理を施される材料に応じて適宜選択することができる。一般的に、起毛布としては、例えば、コットン、レーヨン、ナイロン、トリアセテート等を挙げることができる。また、ラビングロール2は、その種類・大きさ等、特に限定されないものである。
【0032】
さらに、ラビング処理の一連の流れを詳細に説明する。例えば、前記第1のガイドロール3と第2のガイドロール4の間に所定の張力で長尺状位相差フィルム1を架設する一方、ラビングロール2をこの長尺状位相差フィルム1に接触しない上方位置に待機させておく。そして、ラビングロール2を水平方向に回動し、図1に示すように所望するラビング角を設定する。次に、ラビングロール2を所定の位置まで下降させて、長尺状位相差フィルム1の上面に接触させる。そして、適宜の搬送駆動装置(図示せず)によって、所定の張力及び所定の速度で長尺状位相差フィルム1をガイドロール3からガイドロール4に向けて搬送し、かつ、所定の速度でラビングロールを回転させることにより、長尺状位相差フィルム1の上面に連続的にラビング処理が施される。
【0033】
長尺状位相差フィルム1の走行速度とラビングロールの回転速度は、特に限定されるものではないが、ラビングロール2の回転速度が長尺状位相差フィルム1の走行速度と比較して十分速いことが好ましい。
【0034】
(3)工程C
工程Cは、前記工程Bで得られた長尺状位相差フィルムのラビング処理した表面に、等方相状態の液晶化合物溶液を塗布して固化させ、液晶化合物が配向した長尺状偏光膜を形成する工程である。
【0035】
液晶化合物としては、リオトロピック液晶化合物とサーモトロピック液晶化合物のいずれであってもよいが、リオトロピック液晶化合物の方が好ましい。ここで、「リオトロピック液晶化合物」とは、溶媒に溶解して液晶化合物溶液となり、溶液中の濃度変化により、等方相から液晶相へ(またはその逆の)相変化を起こす液晶化合物である。このとき、液晶性を示さない状態(等方相)から液晶性を示す状態(液晶相)に転移する濃度を等方相−液晶相転移濃度という。また、「サーモトロピック液晶化合物」とは、熱によって等方相から液晶相へ(またはその逆の)相変化を起こす液晶化合物である。このとき、液晶性を示さない状態(等方相)から液晶性を示す状態(液晶相)に転移する温度を等方相−液晶相転移温度という。
【0036】
従って、本発明において、「等方相状態の液晶化合物溶液」とは、具体的には、等方相−液晶相転移濃度よりも希釈された濃度の液晶化合物溶液、又は、等方相−液晶相転移温度よりも高い温度の液晶化合物溶液等であって、液晶性を示さない状態(等方相)のものである。
【0037】
本発明に用いられるリオトロピック液晶化合物溶液は、通常、リオトロピック液晶化合物と当該リオトロピック液晶化合物を溶解する溶媒とを含む。前記リオトロピック液晶化合物は、例えば、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、キノフタロン系化合物、ナフトキノン系化合物、メロシアニン系化合物等が挙げられ、これらの中でもアゾ系化合物が好ましい。
【0038】
アゾ系化合物としては、例えば、下記一般式(1):
【化1】

(式中、Qは置換基を有していてもよいアリール基を表わし、Qは置換基を有していてもよいアリーレン基を表わし、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アセチル基、ベンゾイル基またはフェニル基(これらの基は置換基を有していてもよい)を表わし、Mは対イオンを表わす。)
で表わされるアゾ化合物を挙げることができる。
【0039】
Mは対イオンを表わし、好ましくは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、前記金属の金属イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンである。金属イオンとしては、例えばLi、Ni2+、Fe3+、Cu2+、Ag、Zn2+、Al3+、Pd2+、Cd2+、Sn2+、Co2+、Mn2+、Ce3+などが挙げられる。対イオンMが多価イオンの場合は複数のアゾ化合物が一つの多価イオン(対イオン)を共有する。
【0040】
前記アゾ化合物は、好ましくは下記一般式(2)で表わされるものである。式(2)中、RおよびMは式(1)と同様である。Xは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基または−SOM基を表わす。
【化2】

【0041】
前記アゾ化合物は、例えば、特開2009−173849号公報に記載されている方法により製造することができる。
【0042】
前記溶媒としては、リオトロピック液晶化合物を溶解できるものであればよいが、親水性溶媒が好ましい。親水性溶媒としては、水、アルコール類、セロソルブ類およびそれらの混合溶媒を挙げることができ、これらの中でも水が好ましい。また、溶媒には、グリセリン、エチレングリコール等の水溶性の化合物が添加されていてもよい。
【0043】
前記リオトロピック液晶化合物溶液の濃度は、等方相−液晶相転移濃度よりも低い。すなわち、リオトロピック液晶化合物溶液は、液晶性を示さない状態(等方相)のものである。このようなリオトロピック液晶化合物溶液を用いれば、塗布する際のせん断応力の影響を受けずに、ラビング処理方向に平行または直交に配向しやすくなる。
【0044】
前記リオトロピック液晶化合物溶液の濃度は、等方相−液晶相転移濃度よりも低ければよく、特に限定されるものではないが、通常、溶液総重量に対して1〜10重量%であることが好ましい。前記リオトロピック液晶化合物溶液の塗布方法は、均一に流延できるものであればよく、例えば、ワイヤーバー、ギャップコーター、コンマコーター、グラビアコーター、テンションウェブコーター、スロットダイなどを使用することができる。
【0045】
リオトロピック液晶化合物溶液を塗布した後、溶液濃度を変化させて、等方相から液晶相へ相変化させ、液晶分子を配向させて長尺状偏光膜を形成する。溶液濃度を変化させる方法としては、特に限定されないが、自然乾燥させる方法や、加熱乾燥させる方法を挙げることができる。
【0046】
また、本発明に用いられるサーモトロピック液晶化合物溶液は、通常、サーモトロピック液晶化合物と当該サーモトロピック液晶化合物を溶解する溶媒とを含む。サーモトロピック液晶化合物溶液の溶媒、塗布方法としては、リオトロピック液晶化合物の場合と同様のものを挙げることができる。また、サーモトロピック液晶溶液を用いた場合は、温度変化により、等方相から液晶相へ相変化させ、液晶分子を配向させて長尺状偏光膜を形成することができる。相転移させる温度は、用いる液晶化合物の種類によって適宜選択することができる。
【0047】
工程Cで形成された長尺状偏光膜中の液晶化合物の濃度は、長尺状偏光膜の総重量に対して80〜100重量%であることが好ましい。また、長尺状偏光膜の厚みは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.1〜5μmであることがより好ましい。
【0048】
工程Cで形成された長尺状偏光膜は、可視光領域のいずれかの波長で吸収二色性を示し、面内の一方向に吸収軸を有する。吸収二色性は、長尺状偏光膜中で液晶化合物が配向することにより得られる。前記長尺状偏光膜の吸収軸方向又は透過軸方向は、長手方向に対して25〜65°である。
【0049】
2.長尺状積層偏光板
本発明の長尺状積層偏光板は、長手方向に遅相軸を有する長尺状位相差フィルム1と、該長尺状位相差フィルムの遅相軸方向に対して面内の25〜65°の方向に吸収軸又は透過軸を有する長尺状偏光膜10とを備え、長尺状位相差フィルムが、面内の最大屈折率をnx、nxに面内で直交する方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、(nx−nz)/(nx−ny)で表されるNz係数が1.5以下であって、表面が前記長手方向に対して面内の20〜70°の方向にラビング処理されており、長尺状位相差フィルムのラビング処理された表面に、長尺状偏光膜が直接塗布形成されていることを特徴とするものである。
【0050】
ここで、「直接塗布形成」とは、接着剤を用いることなく、長尺状位相差フィルム上に直接長尺状偏光膜を形成することを意味する。また、「長尺状」とは、長さが幅よりも十分に大きいものをいい、好ましくは長さが幅の10倍以上のものをいう。
【0051】
本発明の長尺状積層偏光板の製造方法は、特に限定されるものではないが、前述の本発明の製造方法により製造することができる。また、長尺状位相差フィルムや長尺状偏光膜の材料、膜厚等については、前述の材料、膜厚等を採用することができる。
【0052】
本発明の長尺状積層偏光板の長さは、300m以上であることが好ましい。また、長尺状積層偏光板の総厚みは、20〜200μmであることが好ましい。
【0053】
前記長尺状位相差フィルムの遅相軸方向と長尺状偏光膜の吸収軸方向又は透過軸方向とのなす角度(図2(b)中の角度β)は、25〜65°であり、30〜60°が好ましい。この角度とすることで、特定方向から直線偏光を入射させたときに、可視光領域(波長380〜780nm)のいずれかの波長で、円偏光を生成する長尺状円偏光板とすることができるため好ましい。
【0054】
3.用途
本発明により得られた長尺状積層偏光板は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイに使われる。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例をあげて説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0056】
<測定方法>
以下の各実施例および比較例においては、下記の測定方法により評価・測定をおこなった。
【0057】
(1)厚みの測定
デジタルゲージ((株)尾崎製作所製、製品名「PEACOCK」)を用いて測定した。
【0058】
(2)長尺状位相差フィルムの遅相軸、面内位相差、Nz係数、並びに、長尺状偏光膜の吸収軸及び透過軸角度の測定
王子計測機器(株)製「KOBRA−WPR」(商品名)を用いて、23℃で測定した。測定波長は590nmで行った。
【0059】
製造例1(リオトロピック液晶水溶液の調製)
4−ニトロアニリンと8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸とを常法(細田豊著「理論製造 染料化学 第5版」昭和43年7月15日技法堂発行、135〜152頁)によりジアゾ化およびカップリング反応させてモノアゾ化合物を得た。得られたモノアゾ化合物を同様に常法によりジアゾ化し、さらに1−アミノ−8−ナフトール−2,4−ジスルホン酸リチウム塩とカップリング反応させて下記構造式(3)のアゾ化合物を含む粗生成物を得、これを塩化リチウムで塩析することにより下記の構造式(3)のアゾ化合物を得た。
【化3】

【0060】
上記の構造式(3)のアゾ化合物をイオン交換水に溶解させ8重量%のリオトロピック液晶水溶液を調製した。
【0061】
実施例1
シクロオレフィン系ポリマーフィルムを延伸することで、長手方向に平行に遅相軸を有し、かつ、Nz係数が0.4である長尺状位相差フィルムを得た。得られた長尺状位相差フィルムの面内位相差は140nmであった。
【0062】
得られた長尺状位相差フィルムを走行させながら、その表面に、図1(a)と同様の方法で、ラビング処理方向(α)が45°となるようにラビング処理した(ラビングロールの押し込み量:15mm、ラビング布:レーヨン布)。次に、前記長尺状位相差フィルムのラビング処理した表面に、製造例1で製造した濃度8重量%の等方相を示すリオトロピック液晶水溶液をテンションウェブコーターにより塗布し、自然乾燥させて、厚み0.4μmの長尺状偏光膜を形成した。前記リオトロピック液晶は、分子の長軸方向とラビング処理方向とが略直交するように配向するため、透過軸方向とラビング処理方向とが略平行になるように配向する。得られた長尺状円偏光板の長手方向と長尺状偏光膜の透過軸方向とのなす角度は42°であった。従って、ラビング処理方向と透過軸方向との角度のズレは、3°であった。
【0063】
実施例2
シクロオレフィン系ポリマーフィルムを延伸することで、長手方向に平行に遅相軸を有し、かつ、Nz係数が1.0である長尺状位相差フィルムを得た。得られた長尺状位相差フィルムの面内位相差は140nmであった。
【0064】
得られたNz係数が1.0である長尺状位相差フィルムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で長尺状円偏光板を作製した。得られた長尺状円偏光板の長手方向と長尺状偏光膜の透過軸方向とのなす角度は41°であった。従って、ラビング処理方向と透過軸方向との角度のズレは、4°であった。
【0065】
比較例1
シクロオレフィン系ポリマーフィルムを延伸することで、長手方向に平行に遅相軸を有し、かつ、Nz係数が1.6である長尺状位相差フィルムを得た。得られた長尺状位相差フィルムの内面位相差は140nmであった。
【0066】
得られたNz係数が1.6である長尺状位相差フィルムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で長尺状円偏光板を作製した。得られた長尺状円偏光板の長手方向と長尺状偏光膜の透過軸方向とのなす角は27°であった。従って、ラビング処理方向と透過軸方向との角度のズレは、18°だった。
【0067】
比較例2
シクロオレフィン系ポリマーフィルムを延伸することで、長手方向に平行に遅相軸を有し、かつ、Nz係数が1.8である長尺状位相差フィルムを得た。得られた長尺状位相差フィルムの内面位相差は140nmであった。
【0068】
得られたNz係数が1.8である長尺状位相差フィルムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で長尺状円偏光板を作製した。得られた長尺状円偏光板の長手方向と長尺状偏光膜の透過軸方向とのなす角は25°であった。従って、ラビング処理方向と透過軸方向との角度のズレは、20°だった。
【符号の説明】
【0069】
1 長尺状位相差フィルム
2 ラビングロール
2a 回転軸
3 第1のガイドロール
4 第2のガイドロール
5 遅相軸方向
6 長手方向
7 ラビング処理方向
8 走行方向
9 押し込み量
10 長尺状偏光膜
11 液晶分子
12 吸収軸方向(分子の長軸方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に遅相軸を有する長尺状位相差フィルムと、該長尺状位相差フィルムの遅相軸方向に対して面内の25〜65°の方向に吸収軸又は透過軸を有する長尺状偏光膜とを備えた長尺状積層偏光板の製造方法であって、
長手方向に遅相軸を有し、かつ、面内の最大屈折率をnx、nxに面内で直交する方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、(nx−nz)/(nx−ny)で表されるNz係数が1.5以下である長尺状位相差フィルムを準備する工程A、
該工程Aで得られた長尺状位相差フィルムを走行させながら、前記長手方向に対して面内の20〜70°の方向にラビング処理する工程B、及び、
該工程Bで得られた長尺状位相差フィルムのラビング処理した表面に、等方相状態の液晶化合物溶液を塗布して固化させ、該液晶化合物が配向した長尺状偏光膜を形成する工程Cを含む、
長尺状積層偏光板の製造方法。
【請求項2】
等方相状態の液晶化合物溶液が、等方相−液晶相転移濃度よりも希釈されたリオトロピック液晶化合物溶液である請求項1記載の長尺状積層偏光板の製造方法。
【請求項3】
前記工程Bのラビング処理は、走行する長尺状位相差フィルムに、回転するラビングロールを接触して行うものである請求項1又は2に記載の長尺状積層偏光板の製造方法。
【請求項4】
長手方向に遅相軸を有する長尺状位相差フィルムと、該長尺状位相差フィルムの遅相軸方向に対して面内の25〜65°の方向に吸収軸又は透過軸を有する長尺状偏光膜とを備えた長尺状積層偏光板であって、
長尺状位相差フィルムが、面内の最大屈折率をnx、nxに面内で直交する方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、(nx−nz)/(nx−ny)で表されるNz係数が1.5以下であって、表面が前記長手方向に対して面内の20〜70°の方向にラビング処理されており、
長尺状位相差フィルムのラビング処理された表面に、長尺状偏光膜が直接塗布形成されていることを特徴とする長尺状積層偏光板。

【図1】
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【図2】
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