説明

長短複合交撚糸

【課題】糸が引き伸ばされて切断される際、まず強さに劣る短繊維群が切断されるのではなく、長繊維群と短繊維群とが略同時に切断される、新規な長短複合交撚糸を提供する。
【解決手段】糸全体に占める長繊維群の比率が5〜70質量%である長短複合交撚糸9であって、芯部に長繊維群を鞘部に短繊維群を配してなる長短複合紡績糸を複数本撚り合わせてなる長短複合交撚糸。該長短複合交撚糸は、製織編工程において、糸切れ検出手段として振動式糸切検出器やピンドロッパーなどを用いても、糸切れを感度よく検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長短複合交撚糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鞘部に長繊維群を芯部に短繊維群を配してなる長短複合紡績糸が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。これらは、いずれも被覆性の向上を目的として発明されたものである。
【特許文献1】特公昭40−8743号公報
【特許文献2】特開平10−195721号公報
【特許文献3】特開2006−161227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に織編物を得るための工程では、工程通過性を向上させる目的で糸に張力を付加する。そこで糸切れに注意しながら工程を進めるが、いくら注意を払ったところで糸切れを皆無にすることは、物理的に不可能である。したがって、織編物を得るための工程では、糸切れを十分に低減させることは当然重要であるものの、一方で糸切れ時に直ちに機台を停止させ、糸切れ箇所を素早く補修することも非常に重要なのである。要するに、糸切れ時に機台が停止しなければ、欠点を抱えたまま工程が進むので、かかる欠点を含んだ経糸ビームや生機ができあがることになるからである。
【0004】
糸には、長繊維からなる糸と、短繊維からなる糸とがある。ここで、両者を糸切れするまで引き伸ばした場合について考えてみる。この場合、両者の構造を考慮すれば、前者では、糸を切断することと長繊維自体を切断することとが実質的に同じ意味を持つ。すなわち、前者では、各長繊維の引張強さの総和が糸の引張強さに相当する。これに対し、後者では、糸を切断することと短繊維間に滑脱を生じさせることとが実質的に同じ意味を持つ。すなわち、後者では、短繊維相互の抱合力が糸の引張強さに相当する。このことから、長繊維からなる糸は、短繊維からなる糸よりも引張強さが格段に高い傾向にあるといえる。
【0005】
翻って、長短複合紡績糸の場合を考えてみる。長短複合紡績糸は、長繊維と短繊維とから構成される紡績糸である。したがって、長短複合紡績糸を引き伸ばしたとき、まず、強さに劣る短繊維群が切断され、しかる後に長繊維群が切断されることになる。
【0006】
織編物を得る過程で糸が切断したとき、例えば、糸切れ検出手段として、荒巻整経では光電式毛羽発見器などを、製織編工程では振動式糸切検出器やピンドロッパーなどを用い、糸切れ部分を検出して直ちに機台停止信号を作動させる。長短複合紡績糸使いの織編物を作製する過程での糸切れの場合、上記のように、まず強さに劣る短繊維群から切断される。したがって、製織編工程における振動式糸切検出器やピンドロッパーなどのように、ガイドが糸切れと共に下方に落下し、下部に設置された端子に接触することで糸切れを通電検出する糸切れ検出手段では、短繊維群だけでなく長繊維群も切断されない限り、ガイドが下方に落下しないため、短繊維群だけが切断された状態では糸切れを検出できず、機台停止信号を作動させることができない。そうすると、欠点を抱えたまま工程が進むので、かかる欠点を含んだ生機ができあがってしまうことになる。
【0007】
この問題を解決するために、荒巻整経における毛羽発見器のように、走行糸によって遮られる光電管放出光に変化が生じたとき、糸切れと判断する糸切れ検出手段を採用すれば、短繊維群だけが切断された状態でも糸切れとして検出できるとも考えられるが、製織編工程では、機台の振動が激しい上に糸が上下に振れるので、このような糸切れ検出手段は構造上採用できない。
【0008】
そこで、新たな糸切れ検出手段の開発が進められているが、未だ振動式糸切検出器やピンドロッパーに代わる検出手段は開発されておらず、かかる問題を解決するには、糸構造の抜本的な変更が必要である。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を解消するものであり、糸が引き伸ばされて切断される際、まず強さに劣る短繊維群が切断されるのではなく、長繊維群と短繊維群とが略同時に切断される、新規な長短複合交撚糸を提供することを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究の結果、長短複合紡績糸において、芯部に長繊維群を1束ではなく複数本配すれば、紡績糸を引き伸ばした際に短繊維群と長繊維群とが略同時に切断されることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、糸全体に占める長繊維群の比率が5〜70質量%である長短複合交撚糸であって、芯部に長繊維群を鞘部に短繊維群を配してなる長短複合紡績糸を複数本撚り合わせてなることを特徴とする長短複合交撚糸を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の長短複合交撚糸は、切断時に長繊維群と短繊維群とが略同時に切断されるため、従来の長短複合紡績糸の場合とは異なり、製織編工程において、糸切れ検出手段として振動式糸切検出器やピンドロッパーなどを用いても、糸切れを感度よく検出することができる。そのゆえ、糸切れ箇所を素早く補修することが可能となり、ひいては、織編物の品位向上に資するところが大きくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の長短複合交撚糸は、長繊維群と短繊維群とからなるものであり、糸全体に占める長繊維群の比率としては、5〜70質量%である必要があり、10〜50質量%であることが好ましい。長繊維群の比率が5質量%未満になると、長繊維群固有の特性が交撚糸全体の特性に反映されなくなる。一方、70質量%を超えると、精紡後の仕上げ工程において糸つなぎのミスが多発するだけでなく、長繊維群が交撚糸表面に露出してしまう結果、織編物の品位を低下させてしまう。
【0015】
糸全体に占める長繊維群の比率の測定方法としては、JIS L1030−2 繊維製品の混用率試験方法−第2部:繊維混用率に準ずるものとする。
【0016】
また、本発明の長短複合交撚糸は、複数本の長短複合紡績糸を撚り合わせてなるものである。長短複合紡績糸とは、芯部に長繊維群を鞘部に短繊維群を配してなる紡績糸をいう。また、長繊維群とは、複数の長繊維が合わさって1つの束となしているものをいい、芯部には、複数の長繊維群が配されていてもよいが、通常はコストの観点から長繊維群は1束とするのがよい。
【0017】
本発明における長繊維群を構成する長繊維としては、単糸繊度、形状及び素材として特に限定されるものでない。例えば、単糸繊度としては、0.1〜5.0dtexが好ましく、形状としては、長手方向の形状としてフラット状、捲縮状、太細状、リング状、スパイラル状などがあげられ、断面の形状として丸型、菱形、三角型、六角型、十字型、中空型、C字型などがあげられる。また、長繊維の素材としては、ポリエステル、ポリ乳酸、ナイロン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、レーヨンなどがあげられる。もちろん、かかる長繊維群は、単一の長繊維からなるものであってもよいし、異なる複数の長繊維からなるものであってもよい。なお、繊維素材の判別としては、JIS L1030−1 繊維製品の混用率試験方法−第1部:繊維鑑別に準ずるものとする。
【0018】
一方、糸の鞘部には、長繊維群の周囲を取り囲むようにして短繊維群が配される。短繊維群を構成する短繊維についても、特に限定されるものでなく、単糸繊度、形状などについては基本的に長繊維の場合と同様のものが、素材については長繊維で例示したものに加え綿、羊毛、竹などが採用できる。また、短繊維の繊維長としては、紡績性の観点から10〜60mmが好ましい。
【0019】
本発明の長短複合交撚糸は、このような長短複合交撚糸を複数本撚り合わせてなるものであるところ、断面形状として、あたかも短繊維群からなる海に長繊維群からなる島が浮かんでいる海島構造に近いものとなる。
【0020】
そして、本発明の長短複合交撚糸は、このような形状に起因して、芯部に一束の長繊維群を配した従来の長短複合紡績糸では決してなしえない優れた作用効果を奏する。すなわち、糸を切れるまで引き伸ばしたとき、従来の長短複合紡績糸では、短繊維群が切断された後に長繊維群が切断されるのに対し、本発明の長短複合交撚糸では、長繊維群と短繊維群とが略同時に切断されるのである。この理由は定かでないが、糸中に長繊維群が複数本配されることで長繊維群と短繊維群との接触面が増え、その結果、短繊維間の滑脱が抑えられ抱合力が増すことによるものと推察できる。
【0021】
本発明の長短複合交撚糸は、切断時に長繊維群と短繊維群とが略同時に切断されるため、従来の長短複合紡績糸の場合とは異なり、製織編工程において、糸切れ検出手段として振動式糸切検出器やピンドロッパーなどを用いても、糸切れを感度よく検出することができる。そのゆえ、糸切れ箇所を素早く補修することが可能となり、ひいては、織編物の品位向上に資するところが大きくなる。
【0022】
次に、本発明の長短複合交撚糸を得る方法について説明する。
【0023】
本発明の長短複合交撚糸は、基本的に合撚又は精紡交撚による方法により得ることができる。合撚による方法とは、複数の長短複合紡績糸を得た後、得られた長短複合紡績糸を合撚して本発明を得る方法であり、精紡交撚による方法とは、精紡時に長繊維糸(上記した長繊維から構成される糸条)と短繊維束(上記した短繊維から構成されるロープ状の集合体)とを重ね合わせ、重ね合わせられた繊維束同士を合流、加撚して本発明を得る方法である。両者の違いは、前者(合撚による方法)の場合、長短複合交撚糸内の長短複合紡績糸間の境界付近に位置する短繊維同士を絡ませ難いのに対し、後者(精紡交撚による方法)の場合、当該短繊維同士を十分に絡ませることができる点にある。その結果、前者により得られた交撚糸は、織編物を得る過程でガイドや筬などにより擦られる結果、長短複合紡績糸間で滑脱が生じやすいのに対し、後者では、そのような滑脱が発生し難い。この点、長短複合紡績糸間の滑脱は、短繊維相互の抱合力を低減させ、ひいては交撚糸の引張強さを低減させる場合もあることから、本発明では、後者を採用するのが好ましい。
【0024】
ここで、図1、2に精紡交撚による方法を図示する。なお、これらの図は、リング精紡機のドラフト域周辺の平面図であるが、あくまで精紡の一例を図示するに過ぎず、これらに限定されるものではない。
【0025】
精紡交撚による方法を実施するには、まず、公知技術を準用することで得ることのできる、短繊維束1及び長繊維糸5を用意する。そして、図1に示されているように、リング精紡機に供給した短繊維束1を、バックローラー2、エプロン3及びフロントローラー4を介することで、所定の倍率にドラフトする。その一方で、プレスローラーなどを介して張力を付加しながら長繊維糸5をフロントローラー4に供給する。
【0026】
そして、フロントローラー4において、長繊維糸5と短繊維束1とを重ね合わせる。このとき、長繊維糸5は、張力を付加され張った状態であるため、必然的に芯部に長繊維糸5が、鞘部に短繊維束1が配される。
【0027】
このようにして、長繊維糸5と短繊維束1とを重ね合わせ、一つの繊維束7となす。
【0028】
その後、スネルワイヤーガイド8で、複数の繊維束7を合流させ、スピンドルとリングトラベラとにより加撚し、本発明の長短複合交撚糸9となす。
【0029】
本発明の長短複合交撚糸は、長繊維群と短繊維群とからなるものである。既に述べたように、短繊維群は長繊維群に比べ引張強さが劣る。そのため、長短複合交撚糸として引張強さを向上させるには、短繊維群の引張強さを向上させることが好ましい。そうすると、短繊維群の引張強さは、短繊維相互の抱合力に依るところが大きいので、短繊維群を構成する短繊維間の滑脱をできうる限り抑えることが好ましいことになる。
【0030】
短繊維間の滑脱を抑えるには、例えば、交撚糸中の短繊維群を強く把持できればよく、例えば、精紡時、長繊維糸と短繊維束とをより強く絡ませることにより実現可能である。図2は、フロントローラー4の下流域に補助ローラー6を設置した場合を例示するものであるが、補助ローラー6の表面速度をフロントローラー4のそれより速めれば、短繊維束1を略弛緩した状態で走行させることができる。その上で補助ローラー6において、長繊維糸5と短繊維束1とを重ね合わせれば、長繊維糸5と短繊維束1とをより強く絡ませることができる。
【0031】
このように、本発明の長短複合交撚糸は、基本的に既存設備又はそれに少し手を加えたものを用いれば容易に得ることができ、コストも十分抑えることができるのである。
【実施例】
【0032】
次に、本発明を実施例により説明する。なお、糸の引張強さ及び伸び率は、JIS L1095 9.5.1に基付いて、つかみ間隔25cm、引張速度30cm/分にて測定した。引張強さは、引張強さと伸び率との関係をグラフ化し(これを以下「S−S曲線」という)、そのS−S曲線で最も高い点を糸の引張強さとする。また、試験回数は60回とし、その平均値を引張強さ及び伸び率とした。
【0033】
(実施例1)
短繊維束1として、単糸繊度1.15dtexの綿短繊維からなる綿粗糸130gr/30ydを、図1に示すリング精紡機に2本同時に供給し、バックローラー2、エプロン3及びフロントローラー4を介して、38.8倍にドラフトした。
【0034】
一方、長繊維糸5として、プレスローラーを介して張力を付加しながら、引張強さ4.5cN/dtex、伸び率42%のナイロン長繊維糸44dtex24fを、図1中に示すフロントローラー4に供給した。
【0035】
そして、フロントローラー4において、両者を重ね合わせ、一つの繊維束7とした後、スネルワイヤーガイド8で2本の繊維束7を合流させ、その後、スピンドル回転数8000rpmにて、撚方向Z方向、撚数18.0回/2.54cmで加撚し、23番手(英式綿番手)の本発明の長短複合交撚糸9を得た。
【0036】
得られた長短複合交撚糸は、被覆性に優れており、長繊維群の糸表面への露出は、目視では確認できなかった。また、糸全体に占める長繊維群の比率は35質量%であった。そして、交撚糸の引張強さは451cN、伸び率は8.0%であった。さらに、交撚糸を引き伸ばしたとき、長繊維群と短繊維群とが略同時に切断することが、引張強さ及び伸び率の測定時に確認できた。
【0037】
(実施例2)
短繊維束1として、実施例1で用いた綿粗糸を、図2に示すリング精紡機に2本同時に供給して実施例1同様に3つのローラーを介してドラフトし、さらに、ドラフト比(補助ローラーの表面速度/フロントローラーの表面速度)0.98に設定された補助ローラー6に供給した。
【0038】
一方、長繊維糸5として、実施例1で用いたナイロン長繊維糸を補助ローラー6に供給した。
【0039】
そして、補助ローラー6において、両者を重ね合わせ、一つの繊維束7とした後、実施例1と同様に2本の繊維束7を合流、加撚し、23番手(英式綿番手)の本発明の長短複合交撚糸9を得た。
【0040】
得られた長短複合交撚糸は、被覆性に優れており、長繊維群の糸表面への露出は、目視では確認できなかった。また、糸全体に占める長繊維群の比率は35質量%であった。そして、交撚糸の引張強さは460cN、伸び率は9.4%であった。さらに、交撚糸を引き伸ばしたとき、長繊維群と短繊維群とが略同時に切断することが、引張強さ及び伸び率の測定時に確認できた。
【0041】
(比較例1)
長繊維糸5として、実施例1で用いたナイロン長繊維糸を2本引き揃えて用いると共に、この長繊維糸5をフロントローラー4へ供給するにあたり、2本の短繊維束の略中央に供給する以外は、実施例1と同様にして、23番手(英式綿番手)の長短複合紡績糸を得た。
【0042】
得られた長短複合紡績糸は、被覆性に優れており、長繊維群の糸表面への露出は、目視では確認できなかった。また、糸全体に占める長繊維群の比率は35質量%であった。そして、引張強さが381cNと実施例にかかる交撚糸より低くなる一方、伸び率が13.1%と実施例にかかる交撚糸より高くなった。さらに、紡績糸を引き伸ばしたとき、まず、強さに劣る短繊維群が切断され、しかる後に長繊維群が切断されることが、引張強さ及び伸び率の測定時に確認できた。
【0043】
(比較例2)
長繊維糸5として、実施例1で用いたナイロン長繊維糸を2本引き揃えて用いると共に、この長繊維糸5を補助ローラー6へ供給するにあたり、2本の短繊維束の略中央に供給する以外は、実施例2と同様にして、23番手(英式綿番手)の長短複合紡績糸を得た。
【0044】
得られた長短複合交撚糸は、被覆性に優れており、長繊維群の糸表面への露出は、目視では確認できなかった。また、糸全体に占める長繊維群の比率は35質量%であった。そして、引張強さが430cNと実施例にかかる交撚糸より低くなる一方、伸び率が12.7%と実施例にかかる交撚糸より高くなった。さらに、紡績糸を引き伸ばしたとき、まず、強さに劣る短繊維群が切断され、しかる後に長繊維群が切断されることが、引張強さ及び伸び率の測定時に確認できた。
【0045】
(比較例3)
実施例1で用いたナイロン長繊維糸を2本引き揃え、このナイロン長繊維糸に綿30番手単糸を撚方向Z方向、撚数300回/mでシングルカバリングし、23番手(英式綿番手)の長短複合紡績糸を得た。
【0046】
得られた長短複合紡績糸は、被覆性にやや劣り、長繊維群の糸表面への露出が散見できた。また、糸全体に占める長繊維群の比率は35質量%であった。そして、引張強さが413cN、伸び率が7.8%と引張強さ及び伸び率共に実施例にかかる交撚糸より低くなった。さらに、紡績糸を引き伸ばしたとき、まず、強さに劣る短繊維群が切断され、しかる後に長繊維群が切断されることが、引張強さ及び伸び率の測定時に確認できた。
【0047】
ここで、実施例2にかかる長短複合交撚糸及び比較例2、3にかかる長短複合紡績糸のS−S曲線を図3に示す。
【0048】
図3から明らかなように、実施例2にかかる長短複合交撚糸のS−S曲線は、ピーク(ここでいうピークとは弾性域のピークをいう。以下同じ)を境に急激に落ち、その後、上昇していないのに対し、比較例2、3にかかる長短複合紡績糸のS−S曲線は、ピークを境に落ちはするものの、その後、上昇・下降を繰り返している。以上から、実施例2にかかる長短複合交撚糸は、長繊維群と短繊維群とが略同時に切断されているのに対し、比較例2、3にかかる長短複合紡績糸は、短繊維群がまず切断され、次に長繊維群が段階的に切断されていることが読み取れる。
【0049】
なお、比較例2、3にかかる長短複合紡績糸同士を比較すると、前者は後者に比べピークの引張強さが低い上にこれを境にしたS−S曲線の落ち込みが少なく、さらに、その後のS−S曲線の上昇・下降が著しい。このことから、前者は後者に比べ、短繊維群の切断と同時に切断される長繊維数が少ないことが読み取れる。理由として、後者が、製造過程で既に加撚済みの紡績糸を用いているため、短繊維群の抱合力が前者に比べ優っていることがあげられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の長短複合交撚糸を得るための一実施態様を示す概略平面図である。
【図2】本発明の長短複合交撚糸を得るための他の一実施態様を示す概略平面図である。
【図3】本発明の長短複合交撚糸及び従来の長短複合紡績糸の引張強さと伸び率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1 短繊維束
2 バックローラー
3 エプロン
4 フロントローラー
5 長繊維糸
6 補助ローラー
7 繊維束
8 スネルワイヤーガイド
9 長短複合交撚糸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸全体に占める長繊維群の比率が5〜70質量%である長短複合交撚糸であって、芯部に長繊維群を鞘部に短繊維群を配してなる長短複合紡績糸を複数本撚り合わせてなることを特徴とする長短複合交撚糸。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−62627(P2009−62627A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228996(P2007−228996)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(599089332)ユニチカテキスタイル株式会社 (53)
【Fターム(参考)】