説明

長鎖DNA断片導入葉緑体形質転換用ベクター

【課 題】 本発明は、8kb以上の長鎖DNA断片を導入するベクターを提供することを目的とする。
【解決手段】2種類の葉緑体ゲノムDNA由来のDNAの間に、約8kbp以上の被導入有用長鎖DNA断片を有することを特徴とする葉緑体形質転換用ベクター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、葉緑体ゲノムへ8kbp以上の有用な長鎖DNA断片を導入できる転換用ベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの基礎研究において、数kbpの外来DNAをタバコ葉緑体ゲノムへ導入する葉緑体形質転換技術が確立されている(例えば、特許文献1参照。)。この場合、葉緑体へ目的の遺伝子を運ぶ葉緑体形質転換用ベクターは、pUCベクター等を基本として作製されている。しかし、従来は、pUCベクター等のクローン化できる外来DNAのサイズは、約8kbp程度までである。このため例えば脂肪酸合成酵素等のような8kbp以上の長鎖DNA断片を葉緑体形質転換用ベクターに挿入することは不可能であった。
また、最近のゲノム研究の進展により、機能発現のための遺伝子がクラスター構造をとっているケースが知られている。このような構造をとる遺伝子群は、8kbp以上のDNAの大きさを示すケースが多い。このため現在使用されているpUCベクター等を基本骨格とする葉緑体形質転換用ベクターを用いると、クラスター構造をとる遺伝子群のクローニングが困難である。また、クラスター構造をとっている遺伝子は、遺伝子群としての機能を発揮する場合が多い。このため、クラスター構造をとっている遺伝子においては、その遺伝子群を含む長鎖DNA断片を導入する事が望ましい。
植物への長鎖DNA断片導入について、約80kbpのDNAの核ゲノムへの導入成功例が報告されている(非特許文献1参照。)。しかし、植物核への遺伝子導入の場合、花粉の飛散による自然界への遺伝子伝播が問題視されている。一方、花粉の飛散による自然界への遺伝子伝播の可能性が低い、葉緑体形質転換におけるDNA導入の報告は、最長、約6kbpまでのDNA導入例しか報告されていない(非特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2000−253768号公報
【非特許文献1】リュー(Liu)等、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイテッド・ステート・オブ・アメリカ(Proc.Natl Acad.Sci.USA)、1999年、第96巻、p.6535−6540
【非特許文献2】ロスル(Lossl)等、プラント・セル・レポート(Plant cell Rep.)、2003年、第21巻、p.891−899
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、葉緑体ゲノムへ8kb以上の有用な長鎖DNA断片を導入できるベクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、BAC(bacterial artificial chromosome)系の細菌人工合成ベクターに、2種類の葉緑体ゲノムDNA由来のDNAを挿入し、該葉緑体ゲノムDNA由来のDNAの間に8kbp以上の有用な長鎖DNA断片を導入したベクターを作製し、該ベクターを植物の葉細胞の葉緑体ゲノムに導入でき、該植物を形質転換できることを見出した。本発明者らは、これらの知見を基礎として更に研究を重ね、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、
[1] 2種類の葉緑体ゲノムDNA由来のDNAの間に、8kbp以上の被導入有用長鎖DNA断片を有することを特徴とする葉緑体形質転換用ベクター、
[2] 2種類の葉緑体ゲノムDNA由来のDNAが、葉緑体ゲノム上で2種類の構造遺伝子がその非コード領域を挟んで繋がる領域の塩基配列において、該非コード領域の5’側末端から3’側に又は3’側末端から5’側に少なくとも約50bpの位置で2分割されて得られる塩基配列を有し、非コード領域で分割された位置から2種類の構造遺伝子側に、それぞれ少なくとも約700bpの長さを有し、かつ分割された非コード領域に繋がる構造遺伝子の塩基配列を少なくとも50bp有するDNAであることを特徴とする前記[1]に記載のベクター、
[3] 2種類の構造遺伝子が、trnGとtrnfM、rbcL遺伝子とaccD遺伝子、trnIとtrnA及び3’rps12遺伝子とtrnVとの組み合わせから選択される2種類の遺伝子であることを特徴とする前記[2]に記載のベクター、
[4] 8kbp以上の被導入有用長鎖DNA断片が、(a)脂肪酸合成酵素遺伝子を含むDNA断片;(b)窒素固定酵素ニトロゲナーゼの構造遺伝子を含むDNA断片;(c)光合成に関与するカルビンサイクルの律速酵素群を構成する酵素をコードするDNAを連結したDNA断片;(d)植物体で生産される有用成分の生合成に関わる酵素遺伝子を含むDNA断片;(e)病虫害耐性タンパク質をコードする遺伝子を含むDNA断片;(f)除草剤耐性タンパク質をコードする遺伝子を含むDNA断片;(g)環境ストレス耐性遺伝子又は生産効率に関わる遺伝子を含むDNA断片;(h)ゴムを生合成する遺伝子群を含むDNA断片;(i)炭化水素を生合成する遺伝子群を含むDNA断片;(j)アミノ酸を生合成する遺伝子群を含むDNA断片;(k)生分解性プラスチック原料等を生合成する遺伝子群を含むDNA断片;(l)セルロース合成酵素遺伝子群を含むDNA断片;(m)ポリケチド化合物合成酵素遺伝子群を含むDNA断片;(n)セルロース分解酵素遺伝子群を含むDNA断片から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載のベクター、
[5] 8kbp以上の被導入有用長鎖DNA断片が、ラン藻ゲノムDNA由来DNA断片であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載のベクター、
[6] 前記[5]に記載のベクターで作製したラン藻ゲノムライブラリー、
[7] 前記[1]〜[5]のいずれかに記載のベクターで形質転換されていることを特徴とする植物、
[8] 前記[1]〜[5]のいずれかに記載のベクターを、植物の葉細胞に導入することを特徴とする植物葉緑体の形質転換方法、及び
[9] ベクターの導入が、パーティクルガンを用いることを特徴とする前記[8]に記載の形質転換方法、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明で構築した長鎖DNA断片導入葉緑体形質転換用ベクターを用いる事により、従来の葉緑体形質転換用ベクターでは導入が不可能であった、外来長鎖DNA断片を導入した葉緑体形質転換植物の創製が可能になった。
さらに、作製した葉緑体形質転換用ベクターは、ゲノム機能解析用長鎖ゲノムライブラリーの構築にも使用できる。また、長鎖ゲノムライブラリーを構築するベクターを用いると、長鎖ゲノムを直接葉緑体ゲノムへ導入できる、
本発明で構築した長鎖DNA断片導入葉緑体形質転換用ベクターを用いることにより、代謝経路に関連する一連の遺伝子群や、多重化有用遺伝子群を葉緑体ゲノムに一括導入することも可能となり、新たな代謝経路や新たな機能を付与した新規植物の創製が可能となる。
また、本発明の形質転換植物は、被導入有用長鎖遺伝子が核ゲノムではなく、葉緑体ゲノムに直接導入されるため、導入された遺伝子が花粉によって拡散する恐れがない。すなわち、例えば核に遺伝子が導入された植物のように、花粉が風や昆虫により広範囲に撒き散らされ、動植物界への悪影響を与える等の環境汚染の心配がない。また、系統間で発現が安定している。
本発明の形質転換方法によれば、有益な機能を有するタンパク質をコードする長鎖(又は多重)遺伝子を導入することにより、導入した遺伝子が形質転換された植物中で発現し、有益な機能を有するタンパク質が産生し得る。
【0007】
さらに、作製した葉緑体形質転換用ベクターは、ゲノム機能解析用長鎖ゲノムライブラリーの構築にも使用でき、ライブラリーから有用機能を持ったクローンを選び出し、直接葉緑体ゲノムへ形質転換できる。
葉緑体はラン藻などの原核生物と似ている細胞小器官もしくは同様の細胞小器官であると考えられている。また葉緑体ゲノムの遺伝子は原核生物同様ポリシストロニックな発現をする事が知られている。このような事から長鎖DNA導入用形質転換ベクターを用いて原核生物であるラン藻ゲノムライブラリーを大腸菌で作製することにより、ラン藻ゲノムの配列の決定や、遺伝子にアノテーション(注釈)をつけることにより有用遺伝子(群)を含んだクローンを選びだせば、選び出したクローンが有するDNAを直接葉緑体ゲノムへ導入する事ができる。また、作製したラン藻ゲノムライブラリーから特定の機能スクリーニングを行う事により機能を有するクローンを選び出すことができ、選び出したクローンが有するDNAを直接葉緑体ゲノムへ導入する事ができる。例えば、ライブラリーから窒素固定を行うクローンを探しだせれば、そのクローンが有するDNAを葉緑体ゲノムへ導入する事がでる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の葉緑体形質転換用ベクターは2種類の葉緑体ゲノムDNA由来のDNAの間に、約8kbp以上の被導入有用長鎖DNA断片を有することを特徴とする。以下に、本発明の葉緑体形質転換用ベクターについて詳説する。
【0009】
本発明において、「葉緑体」とは、緑色植物の、葉その他の緑色組織にある細胞小器官をいう。緑色植物とは、緑色の植物の総称をいい、葉緑素をもち、光合成を行うことができる植物であればその種類は問わない。緑色植物は、緑藻、車軸藻、コケ、シダ、種子植物の各門が属する。好ましい植物としては、タバコ、モロコシ、Brassica、コムギ、ワタ、オオムギ、ヒマワリ、キュウリ、レタス、アルファルファ、ダイズ、モロコシ、ポプラ、イネ又はシロイヌナズナ等が挙げられ、特にタバコが好ましい。また、本発明において「遺伝子」という用語には、DNAのみならずそのmRNA及びcDNAも含むものとする。したがって、本発明の遺伝子には、これらのDNA、mRNA及びcDNAの全てが含まれる。
【0010】
葉緑体ゲノムDNAとしては、すでにジーンバンク等に登録され明らかになっている各種植物の葉緑体ゲノムDNA、例えばタバコ葉緑体ゲノムDNA(accession No.Z00044 S54304)等が挙げられる。
【0011】
「2種類の葉緑体ゲノムDNA由来のDNA」とは、葉緑体ゲノムDNAと相同組換えできる塩基配列を有するDNAであればよく、葉緑体ゲノムDNAに存在する構造遺伝子及び構造遺伝子以外の非コード領域の塩基配列を有するDNAをいうが、葉緑体ゲノムDNAのうち、葉緑体ゲノム上で2種類の構造遺伝子がその非コード領域を挟んで繋がる領域の塩基配列において、該非コード領域の任意の位置(非コード領域の5’側末端から3’側に又は3’側末端から5’側に少なくとも約50bp、好ましくは約100〜1000bp、より好ましくは約200〜500bpの位置)で2分割されて得られる2種類の塩基配列(以下、それぞれを該非コード領域に繋がる構造遺伝子についての構造遺伝子領域という。)をそれぞれ有する2種類のDNAが好ましい。構造遺伝子領域の塩基配列は、分割されて得られる全ての塩基配列を有する必要はない。該塩基配列は、非コード領域で分割された位置から構造遺伝子側に、少なくとも約700bp、好ましくは約700〜2000bpを有し、かつ該分割された非コード領域に繋がる構造遺伝子の塩基配列を少なくとも約50bp(好ましくは約100〜1000bp、さらに好ましくは約200〜800bp)有すればよい
【0012】
上記「構造遺伝子」とは、葉緑体ゲノムDNAのうち、タンパク質、リボソームRNA又は転移RNAをコードしている領域をいう。構造遺伝子としては、例えば光合成にかかわる酵素であるRubiscoの大サブユニットをコードするrbcL遺伝子及び植物において脂肪酸合成に関与している酵素のアセチルCoAカルボキシラーゼベータサブユニットをコードするaccD遺伝子が好ましく挙げられる。また、rbcL遺伝子やaccD遺伝子以外の葉緑体ゲノムDNA由来の好ましい構造遺伝子としては、trnG(tRNA−Gly(GCC))、trnfM(tRNA−fMet(CAU))、trnI(tRNA−Ile(GAU))、trnA(tRNA−Ala(UGU))、trnV(tRNA−Val(GAC))又は3’rps12(リボソーマルプロテインS12エクソン−3)遺伝子等が挙げられる。
「非コード領域」とは、葉緑体ゲノムDNA上でのタンパク質、リボソームRNA又は転移RNAをコードする構造遺伝子以外の領域をいう。非コード領域には、遺伝子発現調節領域(例えばプロモーター、ターミネーター等)などを含む。
【0013】
非コード領域を挟んで繋がる領域における2種類の構造遺伝子としては、例えば、trnGとtrnfM、rbcL遺伝子とaccD遺伝子、trnIとtrnA、又は3’rps12遺伝子とtrnVと等を好ましく挙げることができる。とりわけ好ましくは、rbcL遺伝子とaccD遺伝子である。
【0014】
葉緑体ゲノム上で2種類の構造遺伝子がその非コード領域を挟んで繋がる領域の塩基配列において、該非コード領域の任意の位置で2分割されて得られる2種類の構造遺伝子領域としては、trnG領域とtrnfM領域;rbcL遺伝子領域とaccD遺伝子領域;trnI領域とtrnA領域;3’rps12遺伝子領域とtrnV領域が挙げられる。好ましくは、rbcL遺伝子領域とaccD遺伝子領域である。
【0015】
また、葉緑体ゲノムDNA由来のDNAとしては、上記した葉緑体ゲノムDNA由来のDNAと実質的に同一の配列、又は葉緑体ゲノムDNA由来のDNA又は該DNAと実質的に同一の配列と相補的な塩基配列を有するDNAが挙げられる。また葉緑体ゲノムDNA由来のDNAと相同性を示す配列を有し、葉緑体ゲノムDNAと相同組換えできる配列を有するDNAが挙げられる。
前記実質的に同一とは、一塩基多型(single nucleotide polymorphisms;SNP)のことをいう。
「相補的な塩基配列」とは、葉緑体ゲノムDNAにおいて、その葉緑体ゲノムDNAの塩基配列に対して塩基対合則(アデニン/チミン、シトシン/グアニン)に従って形成される塩基配列をいう。
「相同性を示す配列」とは、葉緑体ゲノムDNAにおける、例えば構造遺伝子領域の塩基配列との一致の度合いが少なくとも約50%、好ましくは約60%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、とりわけ好ましくは約95%以上である塩基配列、又は完全な相補性はないが、安定な構造をとるのに十分な塩基対が形成される塩基配列をいう。
【0016】
また、葉緑体ゲノムDNA由来のDNAとしては、上記した葉緑体ゲノムDNA由来のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、葉緑体ゲノムDNAと相同組換えできるDNAを単離することによっても、本発明に用いられるDNAが得られる。「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、例えば、配列番号1に示すDNAの部分配列をプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味する。なお、ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、相同性が高いDNA同士、例えば、少なくとも配列番号1で示される塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約80%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは、約0.1〜2倍程度の濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる。)、温度約65℃程度でのハイブリダイズ条件をいう。なお、相同性はBLASTにより計算された場合である。
【0017】
上記、長鎖DNA断片が葉緑体ゲノム中に導入される位置は、本発明のベクターに使用される2種類の葉緑体ゲノムDNA由来のDNAによって異なる。2種類の葉緑体ゲノムDNA由来のDNAがtrnG領域由来DNAとtrnfM領域由来DNA、rbcL遺伝子領域由来DNAとaccD遺伝子領域由来DNA、trnI領域由来DNAとtrnA領域由来DNA又は3’rps12遺伝子領域由来DNAとtrnV領域由来DNAである場合、長鎖DNA断片は、それぞれ葉緑体ゲノムのtrnG領域とtrnfM領域の間、rbcL遺伝子領域とaccD遺伝子領域の間、trnI領域とtrnA領域の間又は3’rps12遺伝子領域とtrnV領域の間等であり、それぞれの構造遺伝子から充分な距離を置いた非コード領域が望ましい。前記充分な距離とは、構造遺伝子から少なくとも約50塩基以上、好ましくは約100〜1000塩基程度、より好ましくは約200〜500塩基程度である。
以下に葉緑体ゲノムDNA由来のDNAとして、rbcL遺伝子領域由来DNAとaccD遺伝子領域由来DNAを使用した本発明の葉緑体形質転換用ベクターにつき、より詳細に説明する。rbcL遺伝子とaccD遺伝子がその非コード領域を挟んで繋がる領域の塩基配列としては、例えばタバコ葉緑体DNAとしてジーンバンクに登録されているaccession No.Z00044 S54304における57595..61331の領域の塩基配列が挙げられる。
【0018】
rbcL遺伝子は、葉緑体ゲノムにコードされているRubisco大サブユニットの遺伝子である。Rubisco大サブユニットは、光合成CO固定反応回路(カルビンサイクル)において、初発段階であるCO固定反応(カルボキシラーゼ反応)を触媒し、前記回路における代謝回転の律速となる鍵酵素である。また、該酵素は酸素(O)を固定する反応(オキシゲナーゼ反応)も触媒する。
【0019】
rbcL遺伝子領域由来DNAとしては、例えばタバコ葉緑体ゲノムDNA由来のrbcL遺伝子領域の塩基配列[配列表の配列番号1に示される塩基配列(1729bp)]を有するDNAを用いることができる。また、前記rbcL遺伝子領域の塩基配列と相補的な塩基配列、又はrbcL遺伝子領域の塩基配列若しくはその相補的な塩基配列中の1個又は複数個の塩基、例えば、1〜数個(約5〜10)個の塩基が欠失されるか、又は別の塩基に置換されるか、又は1〜数個(約5〜10)個の別の塩基が付加されるかして改変されたDNAが、タバコ葉緑体rbcL遺伝子領域と相同的組換えし得る配列であれば好ましく用いることができる。
【0020】
また、前記rbcL遺伝子領域由来DNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ葉緑体rbcL遺伝子と相同組換えできるDNAであれば、本発明に用いられる。「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」及び「ストリンジェントな条件」は、上記と同様である。
【0021】
accD遺伝子は、葉緑体ゲノムにコードされているアセチルCoAカルボキシラーゼベータサブユニットの遺伝子である。アセチルCoAカルボキシラーゼは、植物において脂肪酸合成に関与している酵素である。
【0022】
accD遺伝子領域由来DNAとしては、例えばタバコ葉緑体ゲノムDNA由来のaccD遺伝子領域の塩基配列[配列表の配列番号2に示される塩基配列(1183bp)]、を有するDNAを用いることができる。また、前記accD遺伝子領域の塩基配列と相補的な塩基配列、又はaccD遺伝子領域の塩基配列若しくはその相補的な塩基配列中の1個又は複数個の塩基、例えば、1〜数個(約5〜10)個の塩基が欠失されるか、又は別の塩基に置換されるか、又は1〜数個(約5〜10)個の別の塩基が付加されるかして改変されたDNAが、タバコ葉緑体accD遺伝子領域と相同的組換えし得る配列であれば好ましく用いることができる。
【0023】
また、前記accD遺伝子領域由来DNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ葉緑体accD遺伝子と相同組換えできるDNAであれば、本発明に用いられる。「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」及び「ストリンジェントな条件」は、上記と同様である。
【0024】
なお、形質転換される植物の葉緑体全ゲノム塩基配列が未知の場合は、植物の葉緑体ゲノムを公知の方法、例えば新生化学実験講座第2巻 核酸1分離精製(日本生化学会編)東京化学同人、pp.29−32(1991)に記載の方法やCTAB(Cetyl trimethyl ammonium bromide)法等に従って抽出し、遺伝子のその配列相同性に基づいて、周知技術に従って単離され得る。この場合、公知のコード配列(例えばタバコ葉緑体ゲノムのrbcL又はaccD遺伝子の塩基配列)のすべてまたは部分が、形質転換される植物由来のゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリー中に存在する配列に対して選択的にハイブリダイズするプローブとして使用されるか、あるいはPCRプライマーを設計するために使用される。
【0025】
本発明のベクターは、上記2種類の葉緑体ゲノムDNA由来のDNA配列の間には、約8kbp以上の被導入有用長鎖DNA断片(以下、単に長鎖DNA断片という。)を含むDNAを挿入できる。なお、前記「約8kbp以上の長鎖DNA断片を含むDNAを挿入できる」とは、約8kbp未満のDNA断片を含むDNAの挿入は当然に可能であり、従来不可能であった約8kbp以上の長鎖DNA断片を含むDNAも挿入できるという意味である。
【0026】
長鎖DNA断片としては、約8kbp以上、好ましくは約8〜300kbp、より好ましくは約8〜200kbp、さらに好ましくは約8〜120kbp、とりわけ好ましくは約8〜80kbpの塩基配列を有するDNA断片で、かつ該DNAが発現することにより、有用な機能を発揮するDNAであればその種類は特に限定されない。有用な機能を発揮するDNAとしては、例えば植物の物質生産性を向上させる遺伝子を含むDNA断片、耐環境性を向上させる遺伝子を含むDNA断片、又は植物を省エネルギー型若しくは低環境負荷型の工業原料生産プロセスとして活用するために必要な複数の遺伝子(調節遺伝子を含む)含むDNA断片等が挙げられる。長鎖DNA断片は、植物固有の遺伝子でも、また外来遺伝子(例えば、他種植物、動物、細菌、酵母等の遺伝子)でもよい。また、長鎖DNA断片は、一つの遺伝子が約8kbp以上の塩基配列を有するDNA断片でもよく、複数の遺伝子を連結して約8kbp以上の塩基配列をなすDNA断片でもよい。このような長鎖DNA断片としては、例えば(a)脂肪酸合成酵素遺伝子(例えば、fabH、fabD、fabG、acpP、fabF遺伝子又はそれらの遺伝子群)を含むDNA断片;(b)窒素固定酵素ニトロゲナーゼの構造遺伝子(例えば、窒素固定nifH、nifD、nifK又はそれらの遺伝子群、窒素固定酵素ニトロゲナーゼの制御遺伝子のnifA等)を含むDNA断片;(c)光合成に関与するカルビンサイクルの律速酵素群を構成する酵素をコードするDNAを連結したDNA断片;(d)植物体で生産される有用成分の生合成に関わる酵素遺伝子(例えば.カロテノイド生合成酵素群等)を含むDNA断片;(e)病虫害耐性タンパク質(例えば、バチルス・チューリンゲス毒素等)をコードする遺伝子を含むDNA断片;(f)除草剤耐性タンパク質(例えば、5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸合成酵素等)をコードする遺伝子を含むDNA断片;(g)環境ストレス耐性遺伝子又は生産効率に関わる遺伝子(調節遺伝子を含む;例えば、カタラーゼ等)を含むDNA断片;(h)ゴムを生合成する遺伝子群を含むDNA断片;(i)炭化水素を生合成する遺伝子群を含むDNA断片;(j)アミノ酸を生合成する遺伝子群を含むDNA断片;(k)生分解性プラスチック原料等を生合成する遺伝子群を含むDNA断片;(l)セルロース合成酵素遺伝子(例えば、bcsA、bcsB、bcsC、bcsD等)群を含むDNA断片;(m)ポリケチド化合物合成酵素遺伝子(例えば、aveA1、aveA2、aveA3等)群を含むDNA断片;(n)セルロース分解酵素遺伝子群を含むDNA断片;又は前記(a)から(n)で示されるDNA断片を2以上組み合わせたDNA断片等が挙げられる。
【0027】
また、本発明の葉緑体形質転換用ベクターは、長鎖DNA断片を含むDNAの翻訳開始点の上流に、リボゾーム結合部位を挿入してもよい。該導入遺伝子を含むDNAの上流にリボソーム結合部位を置くことにより、長鎖DNA断片に基づくタンパク質を高発現させることができる。該リボゾーム結合部位は長鎖DNA断片の翻訳開始点に連続して上流にあってもよいが、翻訳開始点の約7〜11塩基程度上流にあることが好ましく、約9塩基程度上流にあることがさらに好ましい。かかるリボゾーム結合部位は、リボゾームが結合できることが知られている自体公知の塩基配列を有していればよいが、SD配列が好ましい。SD配列は、Shine−Dalgarno sequenceの略称であり、約4〜7個のヌクレオチドからなるセグメントであって、その塩基配列は5’−AGGAGGU−3’の一部又は全部である。
【0028】
本発明の葉緑体形質転換用ベクターには、長鎖DNA断片を含むDNAのN末端側上流に植物細胞由来のプロモーターを挿入してもよい。該プロモーターとしては、例えば、エロンゲーションファクター1α遺伝子のプロモーター(EF1αプロモーター)、35Sプロモーター、psbAプロモーター、PPDKプロモーター、PsPAL1プロモーター、PALプロモーター、UBIZM1ユビキチンプロモーター、rrnプロモーター等が挙げられる。中でも、葉緑体ゲノムDNA由来のプロモーターが好ましい。なお、上記リボゾーム結合部位を、長鎖DNA断片を含むDNAの翻訳開始点の上流に挿入する場合には、該リボゾーム結合部位のさらに上流に前記プロモーターを挿入するのがよい。この場合、該プロモーターは、リボゾーム結合部位の上流であれば、リボゾーム結合部位に連続してもよく、約1〜30塩基程度上流にあってもよい。
【0029】
本発明の葉緑体形質転換用ベクターには、長鎖DNA断片を含むDNAのC末端側下流に植物由来のターミネーターを挿入してもよい。該ターミネーターは、長鎖DNA断片を含むDNAの下流であれば、該DNAに連続してもよく、約1〜30塩基程度下流にあってもよい。該ターミネーターとしては、例えば35Sターミネーター、rps16ターミネーター、CaMV35Sターミネーター、ORF25polyA転写ターミネーター、PsbAターミネーター等が挙げられる。中でも、葉緑体ゲノムDNA由来のターミネーターが好ましい。
【0030】
また、本発明の葉緑体形質転換用ベクターには、遺伝子組換え体を識別するための遺伝子を有することが好ましい。遺伝子組換え体を識別するための遺伝子としては、特に限定されず、自体公知のものを用いてよい。例えば、各種の薬剤耐性遺伝子(aadA)、又は宿主の栄養要求性を相補する遺伝子等が挙げられる。より具体的には、例えば、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子(G418耐性)、クロラムフェニコール耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、URA3遺伝子等が挙げられる。また、該遺伝子の上流及び下流には、それぞれ該遺伝子を認識するためのプロモーター(以下、aadAプロモーターと略記する。)及び該遺伝子のターミネーター(以下、aadAターミネーターと略記する。)を配することが好ましい。該aadAプロモーター及びaadAターミネーターとして、上記した植物由来のプロモーター及びターミネーターを好ましく使用できるが、rrnプロモーター及びpsbAターミネーターが特に好適である。aadAプロモーター/aadA/aadAターミネーターをaadAカセットということもある。
【0031】
本発明の葉緑体形質転換用ベクターは、葉緑体ゲノムDNA由来のDNAを有するので、長鎖DNA断片が、相同組換えにより植物の葉緑体ゲノムに組み込まれやすくなるという利点がある。
【0032】
本発明の葉緑体形質転換用ベクターに使用される、基本ベクターとしては、長鎖DNAがクローニング可能なベクターである市販のベクターや人工染色体を用いる事ができる。具体的には酵母人工染色体(YAC)のベクター(Molec.Reprod.Dev.1997年,第47巻,p.158−163)、細菌人工合成ベクター(BAC;bacterial artificial chromosome)ベクター又はフォスミド等が挙げられる。YACベクターとしてはpYAC2、pYAC3、pYAC4、pYACNeo等が挙げられる。BACベクターとしては、pCC1BAC、pBAC、plndigoBAC、pBeloBAC等が挙げられる。フォスミドとしては、pCCFOS等が挙げられる。好ましくは、BACベクターである。
【0033】
本発明のベクターの作製は例えば図1の手順にしたがって実施できる。まず、タバコ葉緑体ゲノムDNAのrbcL遺伝子領域由来DNAとaccD遺伝子領域由来DNAとの間の領域にマルチクローニングサイトを挿入したpUC19を、例えば特開2002−272476号公報に記載の方法に従って作製し、増幅する。該マルチクローニングサイトは、複数(約2〜10)の制限酵素部位(以下、制限酵素サイトともいう。)を有することが好ましい。制限酵素サイトとしては、例えばNotIサイト、NheIサイト、AscIサイト、PmlIサイト、ClaIサイト、MluIサイト又はSalIサイト等が挙げられる。これら制限酵素サイトは、各々制限酵素NotI、NheI、AscI、PmlI、ClaI、MluI又はSalIで切断され得る。
【0034】
次いで、増幅したpUC19から制限酵素(例えば、EcoRI及びHindIII等)を用いて、rbcL遺伝子領域由来DNAとaccD遺伝子領域由来DNAとの間の領域にマルチクローニングサイトを含む領域を切り出す。切り出した前記領域をBAC系ベクター、例えばpCC1BAC(EPICENTER社)に公知の方法で挿入し、pTA05を作製する。次いで、pTA05に挿入された前記領域のマルチクローニングサイトの任意の制限酵素サイトを特定の制限酵素を用いて切断し、その切断部位にaadAカセットを挿入することによって、本発明の葉緑体形質転換用ベクターpTA500が作製できる。また、マルチクローニングサイトの他の制限酵素サイトには、例えば長鎖DNA断片等を同様に導入することができる。
【0035】
このようにして作製された本発明のベクターpTA500を、本発明の実施態様の1つとして図2に模式図として例示した。図中、rbcLはタバコ葉緑体ゲノムDNA由来のrbcL遺伝子領域を表す。accDはタバコ葉緑体ゲノムDNA由来のaccD遺伝子領域を表す。太線の大部分はpCC1BAC由来の塩基配列を表す。Prrnはタバコ葉緑体ゲノムDNA由来のrrnプロモーターを表す。aadAはスペクチノマイシン耐性遺伝子を表す。TpsbAはタバコ葉緑体ゲノムDNA由来のpsbAターミネーターを表す。塩基配列を記載した部位はマルチクローニングサイトである。マルチクローニングサイトの制限酵素部位、好ましくはAscIサイト、PmlIサイト、ClaIサイト、MluIサイト、SalIサイトの少なくとも1箇所に長鎖DNAが挿入されることを表す。
【0036】
このようにして作製された葉緑体形質転換用ベクターを宿主細胞に導入し、形質転換体を作製する。このとき、宿主細胞としては、植物細胞が好ましく、植物の葉緑体がさらに好ましい。本発明の葉緑体形質転換用ベクターを宿主細胞、特にその葉緑体へ導入して形質転換する方法としては、公知の方法、例えばパーティクルガン法(Svab,Z.,Hajdukiewicz,P.,and Maliga,P.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1990年,第87巻,p.8526−8530)やPEG法(Golds,T.,Maliga,P.,and Koop,H.−U.,Bio/Technol.,1993年,第11巻,p.95−97)等を好ましく用いることができる。例えば、パーティクルガン法は、ベクターを金又はタングステンの極めて細かい粒子にまぶし、この該ベクターの付着した粒子を火薬又は高圧ガスで宿主細胞に打ち込むことにより、ベクターを宿主細胞に導入することができる。
【0037】
なお、上記の遺伝子工学又は生物工学の操作については、市販の実験書、例えば、1982年発行のモレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、1989年発行のモレキュラー・クローニング第2版(Molecular Cloning, 2nd ed.)コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)等に記載された方法に従って容易に行うことができる。
【0038】
ベクターが導入された植物の葉細胞は、培地で培養し、再分化して植物体とすることができる。カルス誘導培地又は再分化誘導培地の基礎培地としては、ガンボルグ(Gamborg)B5、ムラシゲ・スクーグ(Murashige−Skoog;MS)、ニッチ・ニッチ(Nitch&Nitch)等が挙げられる。培地には、培地を固めるための支持体等を添加するのがよい。支持体としては、例えば寒天、ゲランガム又はペーパーブリッジ等が挙げられる。
支持体の濃度は、培地のpH等により異なるが、例えばゲランガムの場合は約0.1〜0.5質量%、より好ましくは約0.15〜0.25質量%程度が好ましい。
【0039】
前記基礎培地には、所望により植物ホルモンを添加することができる。植物ホルモンとしては、オーキシン(例.ナフタレン酢酸、2−ナフトキシ酢酸、インドール酢酸、4−クロロインドール酢酸、インドール酪酸又は2,4−ジクロロフェノキシ酢酸等)又はサイトカイニン(例.カイネチン、ゼアチン、ベンジルアデニン、イソペンテニルアデニン、4−ピリジルフェニル尿素等)などが挙げられる。オーキシン及びサイトカイニンの濃度は、使用するオーキシン及びサイトカイニンにより異なるが、約0.01〜1.0mg/L、好ましくは約0.05〜0.2μMとなるよう基礎培地に添加され得る。
【0040】
また、上記基礎培地には、アミノ酸(例.グリシン等)、アデニン及び/又はココナツウォーター等を添加してもよい。
培地は、通常水酸化カリウム等でpH約4〜8、好ましくはpH約5〜7に調整される。
【0041】
本発明により形質転換される植物はいずれの種類であってもよく、例えばタバコ、モロコシ、Brassica、コムギ、ワタ、オオムギ、ヒマワリ、キュウリ、レタス、アルファルファ、ダイズ、モロコシ、ポプラ、イネ又はシロイヌナズナ等が挙げられる。好ましくはタバコである。
【0042】
本発明により形質転換された植物は、導入された長鎖DNA断片に含まれる遺伝子が発現し、植物に種々の機能を付与することが可能となる。例えば二酸化炭素固定に重要な役目を果たす光合成に関与する酵素群をコードする遺伝子等が植物に導入されることにより、光合成に関与する酵素の産生が、通常の植物より高まり、植物の一次代謝である光合成の機能が改善される。その結果、該植物が早生し、植物の収穫量が増大する。また、前記遺伝子群が導入され、光合成に関与する酵素の産生が高められた植物は、大気中の二酸化炭素の取り込み率を高めるもとができるので、該植物の栽培によって大気中の二酸化炭素濃度を低減できる。よって、該植物を栽培することにより、地球温暖化の抑制にも貢献できる。;窒素固定化酵素をコードする遺伝子を導入することにより、形質転換された該遺伝子を発現する植物は、窒素固定化酵素が通常の植物より高まり、低窒素条件下でも生育が可能となるので、化学窒素肥料等の低減が図れ、環境に優しい植物の生産が可能となる。また、人為的に肥料を与えることが困難な山野等での窒素源の枯渇に耐え得る植物の生産が可能となる。;脂肪酸合成酵素をコードする遺伝子を導入することにより、形質転換された該遺伝子を発現する植物は、脂肪酸合成酵素が通常の植物より高まり、該植物において脂肪酸合成が促進され植物油の生産量を増やすことができる。;また、植物体で生産される有用成分の生合成に関わる酵素(例えば、カロテノイド生合成酵素群等)を発現できるので、カロテノイド等の有用成分含有の高い植物を生産できる。;バチルス・チューリンゲス毒素等の病虫害耐性タンパク質や5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸合成酵素等の除草剤耐性タンパク質、或いは環境ストレス耐性に係わるカタラーゼ等のタンパク質が植物中で生産されることにより、病虫害に対し耐性を有する植物、除草剤に対し耐性を有する植物、環境に適応性の高い植物等の生産が可能となる。;さらに、ゴム、炭化水素、アミノ酸、生分解性プラスチック原料、セルロース、ポリケチド化合物又は/及びセルロース分解酵素等を、植物を用いて合成し得る。
【0043】
また、本発明の葉緑体形質転換用ベクターは、ゲノムDNAライブライリーの作製に使用できる。該ライブラリーとしては、例えばラン藻ゲノムDNAライブラリー等が挙げられる。
ラン藻等のゲノムDNAライブラリーの作製は、以下の方法により実施できる。
(1)まず、ラン藻ゲノムDNAを抽出する。ラン藻ゲノムDNAは、例えば新生化学実験講座第2巻 核酸1分離精製(日本生化学会編)東京化学同人、pp.29−32(1991)に記載の方法に従って抽出できる。
(2)次いで、長鎖DNA断片導入前の2種類の葉緑体ゲノムDNA由来のDNAの間に挿入された上記葉緑体形質転換用ベクターのマルチクローニングサイトの制限酵素サイトを制限酵素で切断する。制限酵素は、マルチクローニングサイトの制限酵素サイトを切断できる制限酵素の1種類又は2種類を用いて実施できる。例えばMluIサイトを制限酵素MluIで切断する等が挙げられる。制限酵素の切断末端は、脱リン酸処理することが好ましい。脱リン酸化処理は、例えば市販のアルカリフォスファターゼ(BAP、CIAP、SAP:タカラバイオ株式会社)等を用いて行い得る。
(3)上記(1)で抽出したラン藻ゲノムDNAは、上記(2)においてマルチクローニングサイトを切断した制限酵素と同じ制限酵素、例えばMluIで消化する。
(4)制限酵素で消化されたラン藻ゲノムDNAは、葉緑体形質転換用ベクターのマルチクローニングサイトの切断部位にライゲーションにより挿入する。ライゲーションは、例えばFast−Link DNA Ligase(EPICENTER社)等を用いて行い得る。
(5)制限酵素で消化されたラン藻ゲノムDNAが挿入されたベクターを、例えば大腸菌などの宿主に導入することによりラン藻ゲノムDNAライブラリーが作製できる。宿主への導入は、自体公知の例えば、エレクトロポレーション法等により行う事ができる。
【0044】
以下に、本発明の長鎖DNA断片導入葉緑体形質転換用ベクターの作製と、これを用いた、ラン藻ゲノムDNA断片をタバコ葉緑体に導入した例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0045】
長鎖DNA断片導入葉緑体形質転換用ベクターの構築
長鎖DNA断片導入葉緑体形質転換用ベクターの塩基配列を配列表の配列番号3に示した。まずタバコ葉緑体ゲノムのrbcL遺伝子領域由来DNA(配列表の配列番号1)とaccD遺伝子領域由来DNA(配列表の配列番号2)との間の領域にマルチクローニングサイト(配列表の配列番号4)を挿入したpUC19を特開2002−272476号公報に記載の方法に従って作製した。該マルチクローニングサイトは、制限酵素サイトとして、NheIサイト、AscIサイト、MluIサイト、PstIサイト、NotIサイト、SalIサイト、PmlIサイト及びClaIサイトを有する。
増幅したpUC19から、EcoRI及びHindIII制限酵素を用いて、rbcL遺伝子領域由来DNA/マルチクローニングサイト/accD遺伝子領域由来DNAを含む領域を切り出した。次いで、切り出した領域を、pCC1BAC(EPICENTER社)のEcoRIサイト及びHindIIIサイトに挿入し、pTA05を作製した。
別途、aadAカセットは、pLD6(accession NO.BD174931)を鋳型にフォワードプライマー(配列表の配列番号5;5’−GCTAGCTCTAGTTGGATTTGCTCCCC−3’)及びリバースプライマー(配列表の配列番号6;5’−GGCGCGCCTTCGAATATAGCTCTTCTTTC−3’)を用いてPCRで増幅し、pTA05のマルチクローニングサイトのNheI及びAscIサイトに導入した。なお、フォワードプライマーの5’側末端は、NheI制限酵素認識部位を、リバースプライマーの5’側末端は、AscI制限酵素認識部位を有する。このようにして、基本となる本発明の長鎖DNA断片導入用葉緑体形質転換用ベクターpTA500(図2;配列表の配列番号3)を作製した。なお、配列表の配列番号3の塩基配列において、rbcL遺伝子領域由来DNAは、第333番目から第2061番目、aadAカセットは第2079第から3418番目、accD遺伝子領域由来DNAは第3453番目から第4635番目に相当する。
【実施例2】
【0046】
長鎖DNA断片導入葉緑体形質転換用ベクターを用いたラン藻ゲノムDNAライブラリーの作製
(1)ラン藻ゲノムDNA断片の調製
ラン藻(Cyanothece sp.TU126)は、窒素源無しのA−N培地(Mitsui et al.,Nature,1988年,第323巻,p.720−722)を用いて27℃、で約1ヶ月間培養を行った。ゲノムの抽出は以下の手順により行った。湿重量約600mgの菌体を洗浄液[50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH8.0)]に懸濁し、洗浄した。菌体に1.5mLの飽和ヨウ化ナトリウム水溶液を加え、ミキサーを使って懸濁後、保温(37℃、20分間)した。菌体を滅菌水で洗浄後、540μLのTEN緩衝液[50mM Tris−HCl、20mM EDTA(pH8.0)、100mM NaCl]に懸濁した。50mg/mL リゾチームを、60μLを加え、混合後、保温(37℃、20分間)した。さらに、20mg/mL プロテアーゼK溶液(和光純薬株式会社)を加えた後、10% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を30μL加え、保温(55℃、一晩)した。等量のTE飽和フェノール(株式会社ニッポンジーン)を加え、緩やかに混合(室温、20分間)した(以下、フェノール処理という。)。遠心分離し、水層を回収し、再度フェノール処理を行った。遠心分離後、回収した水層に等量のクロロホルム−イソアミルアルコール[24:1(V/V)]を加え、緩やかに混合した。遠心分離し、水層を回収した。クロロホルム−イソアミルアルコール[24:1(V/V)]抽出は中間層が消失するまで行った。回収した水層に等量のジエチルエーテルを加え、遠心分離し、水層を回収した。ジエチルエーテル処理を再度行った。水層に2.5倍容のエタノールを加え、緩やかに混合後、遠心分離した。上清を捨て、ペレットを70%エタノールで洗浄した後、100μLのTE緩衝液(50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH8.0))に溶解した。このように抽出したラン藻ゲノムに、2μgのゲノムに対し10unitのMluIを加え37℃で、一晩反応させ、ラン藻ゲノムDNA断片を調製した。
【0047】
(2)ラン藻ゲノムライブラリーの作製
実施例1で作製した長鎖DNA断片導入用葉緑体形質転換用ベクターpTA500のマルチクローニングサイトのMluI部位を制限酵素で切断し、末端を脱リン酸化処理した。脱リン酸化は、アルカリフォスファターゼ[Calf intestine alkaline phosphatase(CIAP);タカラバイオ株式会社]を用いて添付されているプロトコールに従って行った。リン酸化処理した長鎖DNA導入葉緑体形質転換用ベクターpTA500と上記(1)で調製したラン藻ゲノムDNA断片のライゲーションは、Fast−Link DNA Ligase(EPICENTER社)を用いて付属のプロトコールに従い行った。ラン藻ゲノムDNA断片がライゲーションされた上記ベクターをエレクトロポレーションによって大腸菌の中に導入することにより、ゲノムライブラリーを作製した。
作製したライブラリーからランダムにコロニーを選びだし、スペクチノマイシン及びクロラムフェニコールを添加したLB(Luria−Bertani)培地にて37℃、約16時間培養した。培養した大腸菌からQIAprep Spin Miniprep kit(QIAGEN社)を用いてプラスミドを精製した。精製したプラスミドをMluI(約1μgのプラスミドに対しMluI、1 unit)処理(37℃、2時間)し、パルスフィールド電気泳動(泳動時間13時間45分、フォワード9V/cm 、リバース6V/cm、0.05−0.92sec)にて長鎖DNA葉緑体形質転換用ベクターpTA500に導入されているラン藻ゲノムのサイズを調べた。ベクターに導入されたゲノムのサイズが約23、34、35kbpの3種類についてタバコ葉緑体ゲノムへ導入を試みた。
同時にこれら3種類のクローンについてのシーケンスを行った。シーケンス反応は、CEQ DTCS Quick Start kit(BECKMAN社)を用いて行い、シーケンスは、CEQ8000システム(BECKMAN社)で行った。方法はそれぞれ、添付のプロトコールに従った。シーケンス用のプライマーは、上流側は5’−GAACTTGTTTCTCTTCTTGC−3’(フォワードプライマー;配列表の配列番号21;配列表の配列番号3の第3263−3282番目に相当)、下流側は5’−CAACACGGAACAAAGGGGAC−3’(リバースプライマー;配列表の配列番号12;配列表の配列番号3の第3549−3568に相当)を用いた。
【実施例3】
【0048】
実施例2で取得したラン藻ゲノムDNA断片が挿入された長鎖DNA断片導入葉緑体形質転換用ベクターpTA500を、タバコ葉細胞の葉緑体にパーティクルガン(型式PDS−1000/He BIO−RAD社製)を用いて導入し、葉緑体形質転換植物を作製した。パーティクルガン導入方法及びベクターを導入したタバコ葉細胞から植物への分化誘導は、既知の方法[Zora Svab,Peter Hajdukiewicz,and Pal Maliga、Proc.NatlAcad.Sci.USA、87,8526−8530(1990年)]によった。すなわち、直径0.6ミクロンの金粒子2.3mg、実施例2で作製した葉緑体形質転換用ベクター25μg、2.5M塩化カルシウム250μL及び0.1Mスペルミジン50μLとを混ぜ、1分毎に懸濁を10回(懸濁と懸濁の間は氷中に静置)行い、金粒子にベクターを付着させた。金粒子をエタノールで2回洗浄後、60μLのエタノールに懸濁した。これは10回分の打ち込み実験に使用できる量に相当する。パーティクルガン(型式PDS−1000/He BIO−RAD社製)を用いてタバコの葉細胞に金粒子を打ち込んだ。1回の実験当たり10回の打ち込みを行った。打ち込み圧力は900psiであった。打ち込みをして2日後、ベクターを打ち込んだ生葉を3mm四方の切片にメスで刻み、スペクチノマイシン(50mg/L)を含むMS(Murashige & Skoog)培地に置床した。
タバコ葉細胞の葉緑体ゲノムへ約23kbpのラン藻ゲノム断片が導入されたタバコ葉細胞から植物に分化し、成長した植物体を図4に示した。
【実施例4】
【0049】
PCRによるタバコ葉緑体形質転換体の解析
実施例3で得られたタバコ植物体の葉組織、約50mgを採取し、液体窒素下で破砕した。破砕したサンプルにDNA抽出バッファー[0.3M塩化ナトリウム、0.05Mとリス塩酸(pH7.5)、20mM EDTA、0.5質量%ドデシル硫酸ナトリウム、5M尿素、5質量%フェノール]を加えて、混合した。次いで、前記混合物をフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール[25/24/1(V/V/V)]で抽出し、エタノ−ルでDNAを沈澱させた後、抽出したDNAを風乾した。乾燥した抽出DNAに100μLのTE溶液(10mM トリス塩酸、pH8.0;1mM EDTA、pH8.0)を加え、DNAを溶解した。ラン藻ゲノムDNA断片の導入の有無を確認するPCRではタバコ植物体から抽出したDNA溶液を鋳型に表1に示すように、1クローンにつき3種類のforwardプライマー(表1のLT、MT、ST)とreverseプライマー(表1のLB、MB、SB)セットを用いてPCR反応を行った。
【0050】
【表1】

【0051】
前記PCRの産物をアガロースゲル電気泳動で分析した結果を図5に示した。実施例3の23kbpDNA断片が挿入されたタバコの葉のDNA抽出物(図5−2;A)及び実施例3に使用したベクター(図5−2;C)には、23kbpのバンドが見られた。23kbpDNA断片の塩基配列は配列表の配列番号22に示した。このことは、本発明の葉緑体形質転換用ベクターは23kbp(約8kbp以上)のDNA断片を挿入できることを示す。
表2のプライマーを用いて同様にして、PCRを行い、34kbpDNA断片(配列表の配列番号23)及び35kbpDNA断片(配列表の配列番号24)を確認した。
【0052】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のベクターを用いると、植物の葉緑体ゲノムに長鎖DNA断片が導入できるので、新たな代謝経路、機能が付与された新規植物の創製に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、長鎖DNA断片葉緑体形質転換用ベクターの構築過程の一実施態様を示す図である。
【図2】図2は長鎖DNA断片葉緑体形質転換用ベクターpTA500の模式図である。rbcLはタバコ葉緑体ゲノムDNA由来のrbcL遺伝子領域を表す。accDはタバコ葉緑体ゲノムDNA由来のaccD遺伝子領域を表す。太線の大部分はpCC1BAC由来の塩基配列を表す。PmlI、ClaI、MluI、SalIは制限酵素部位を表す。Prrnはタバコ葉緑体ゲノムDNA由来のrrnプロモーターを表す。aadAはスペクチノマイシン耐性遺伝子を表す。TpsbAはタバコ葉緑体ゲノムDNA由来のpsbAターミネーターを表す。PpsbAはタバコ葉緑体ゲノムDNA由来のpsbAプロモーターを表す。塩基配列を記載した部位はマルチクローニングサイトである。
【図3】図3は、長鎖DNA断片葉緑体形質転換用ベクター用いて作ったラン藻MluI完全消化ゲノムライブラリーを制限酵素MluIで切断した断片のパルスフィールド電気泳動の結果を表す。
【図4】図4は、タバコ葉緑体ゲノムへ約23kbpのラン藻ゲノム断片を導入した植物体の写真である。
【図5】図5は、タバコ葉緑体ゲノムへ約23kbpのラン藻ゲノム断片導入の検討を行ったPCRプライマーの位置を模式図(図5−1)とアガロース電気泳動(図5−2)を示す。図中LT、LB、MT、MB、ST、SBは使用した、プライマーの名称である。LT/LB、MT/MB、ST/SBのプライマーセットでPCRを行った。1.8、23、0.5kbpは増幅サイズを表している。A、B、Cは、PCRの鋳型を示す。A:タバコ形質転換体DNA抽出物、B:タバコ野生型DNA抽出物、C:導入プラスミド、Mはマーカーを示す。M1:λ/HindIII、M2:1kbp ladder

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類の葉緑体ゲノムDNA由来のDNAの間に、8kbp以上の被導入有用長鎖DNA断片を有することを特徴とする葉緑体形質転換用ベクター。
【請求項2】
2種類の葉緑体ゲノムDNA由来のDNAが、葉緑体ゲノム上で2種類の構造遺伝子がその非コード領域を挟んで繋がる領域の塩基配列において、該非コード領域の5’側末端から3’側に又は3’側末端から5’側に少なくとも約50bpの位置で2分割されて得られる塩基配列を有し、非コード領域で分割された位置から2種類の構造遺伝子側に、それぞれ少なくとも約700bpの長さを有し、かつ分割された非コード領域に繋がる構造遺伝子の塩基配列を少なくとも50bp有するDNAであることを特徴とする請求項1記載のベクター。
【請求項3】
2種類の構造遺伝子が、trnGとtrnfM、rbcL遺伝子とaccD遺伝子、trnIとtrnA及び3’rps12遺伝子とtrnVとの組み合わせから選択される2種類の遺伝子であることを特徴とする請求項2に記載のベクター。
【請求項4】
8kbp以上の被導入有用長鎖DNA断片が、(a)脂肪酸合成酵素遺伝子を含むDNA断片;(b)窒素固定酵素ニトロゲナーゼの構造遺伝子を含むDNA断片;(c)光合成に関与するカルビンサイクルの律速酵素群を構成する酵素をコードするDNAを連結したDNA断片;(d)植物体で生産される有用成分の生合成に関わる酵素遺伝子を含むDNA断片;(e)病虫害耐性タンパク質をコードする遺伝子を含むDNA断片;(f)除草剤耐性タンパク質をコードする遺伝子を含むDNA断片;(g)環境ストレス耐性遺伝子又は生産効率に関わる遺伝子を含むDNA断片;(h)ゴムを生合成する遺伝子群を含むDNA断片;(i)炭化水素を生合成する遺伝子群を含むDNA断片;(j)アミノ酸を生合成する遺伝子群を含むDNA断片;(k)生分解性プラスチック原料等を生合成する遺伝子群を含むDNA断片;(l)セルロース合成酵素遺伝子群を含むDNA断片;(m)ポリケチド化合物合成酵素遺伝子群を含むDNA断片;(n)セルロース分解酵素遺伝子群を含むDNA断片から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のベクター。
【請求項5】
8kbp以上の被導入有用長鎖DNA断片が、ラン藻ゲノムDNA由来DNA断片であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のベクター。
【請求項6】
請求項5に記載のベクターで作製したラン藻ゲノムライブラリー。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のベクターで形質転換されていることを特徴とする植物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載のベクターを、植物の葉細胞に導入することを特徴とする植物葉緑体の形質転換方法。
【請求項9】
ベクターの導入が、パーティクルガンを用いることを特徴とする請求項8に記載の形質転換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−314301(P2006−314301A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143275(P2005−143275)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年3月5日 社団法人日本農芸化学会発行の「日本農芸化学会 2005年度(平成17年度)大会講演要旨集」に発表
【出願人】(591178012)財団法人地球環境産業技術研究機構 (153)
【Fターム(参考)】