説明

閉塞状況検査方法

【課題】触媒ハニカム層の閉塞状況を効率よく、かつ、精度よく検出できる閉塞状況検査方法を提供する。
【解決手段】燃焼排ガス中の窒素酸化物を除去する触媒ハニカム層7aを備えた脱硝装置1における触媒ハニカム層7aの閉塞状況を検出する閉塞状況検査方法であって、触媒ハニカム層7aを挟んで一方に第一スピーカ13および第一マイク15を、他方に第二マイク17を配置し、第二マイク17を、触媒ハニカム層7aの面内に沿う経路29に沿って移動させ、第一マイク15が受信する音波と第二マイク17が受信する音波とに基づいて音波の減音量を検出し、減音量の分布に基づいて触媒ハニカム層7aの閉塞状況を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硝装置に用いられる触媒ハニカム層の閉塞状況を検出する閉塞状況検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
事業用や産業用の石炭火力発電所においては、石炭焚きのボイラから排出される燃焼排ガス中に窒素酸化物(NOx)が含まれており、この窒素酸化物を除去するための装置として脱硝装置が知られている。
脱硝装置では、窒素酸化物を化学反応により除去するための触媒が用いられている。触媒は通常ハニカム構造とされている。燃焼排ガスの通過方向に間隔を空けて複数の触媒ハニカム層を配置し、アンモニア水を気化したガスと燃焼排ガスとを混合させて触媒ハニカム層の触媒を通過させることで、無害な窒素と水に分解する。
【0003】
燃焼排ガスがばい塵を含んでいる場合には、触媒ハニカム層が部分的または全体的に閉塞することがある。このように閉塞すると、燃焼排ガスが閉塞した部分を通過しなくなるため、燃焼排ガスから窒素酸化物を除去する効率が低下する。このため、時期を見計らってボイラの運転を止めて触媒ハニカム層の閉塞状況を検査している。閉塞状況に応じて、除塵作業を行ったり、触媒ハニカム層を更新したりして、窒素酸化物の除去効率が低下するのを防止している。
【0004】
たとえば、特許文献1には、音波によって触媒層上の堆積物の量の検出を行う技術が開示されている。これは運転中にも実施できるが、一方で触媒層上の堆積物の周囲に対向する位置に配置される音波送受信機によって送受信される音波の伝搬経路における音波の減衰量を計測するため、触媒層上にある程度の堆積物が堆積した状態、すなわち、触媒が完全に閉塞した状態になっていないと音波の減衰を検出できず、触媒の閉塞状況を検出することはできない。
したがって、閉塞状況の検査は、停止時に作業員が目視によって行うのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−109925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、脱硝装置の触媒ハニカム層は、閉ざされた暗い、かつ、狭隘な環境に設置されているので、閉塞状況を目視で行う場合、作業姿勢が悪くなり、かつ、作業時間時間が長くなるため、作業効率が低下し、作業者の負担が大きくなるという課題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、触媒ハニカム層の閉塞状況を効率よく、かつ、精度よく検出できる閉塞状況検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の一態様は、燃焼排ガス中の窒素酸化物を除去する触媒ハニカム層を備えた脱硝装置における該触媒ハニカム層の閉塞状況を検出する閉塞状況検査方法であって、前記触媒ハニカム層を挟んで一方に第一の音波送信手段および第一の音波受信手段を、他方に第二の音波受信手段を配置し、前記第二の音波受信手段を、前記触媒ハニカム層の面内に沿う所定経路に沿って移動させ、前記第一の音波受信手段が受信する音波と前記第二の音波受信手段が受信する音波とに基づいて音波の減音量を検出し、該減音量の分布に基づいて前記触媒ハニカム層の閉塞状況を検出する閉塞状況検査方法である。
【0009】
本態様では、脱硝装置の運転を停止した状態で、触媒ハニカム層を挟んで一方に第一の音波送信手段および第一の音波受信手段を、他方に第二の音波受信手段を配置する。第一の音波送信手段から送信される音波を第一の音波受信手段および第二の音波受信手段が受信する。第一の音波受信手段は、第一の音波送信手段と同じ空間に位置しているので、触媒ハニカム層を通過しない音波を受信することになる。一方、第二の音波受信手段は、第一の音波送信手段に対し触媒ハニカム層を挟んだ空間に位置しているので、触媒ハニカム層を通過した音波を受信することになる。すなわち、第二の音波受信手段が受信する音波は、第一の音波受信手段が受信する音波に比べて触媒ハニカム層で減衰された量だけ減音された音量(減音量)となる。
この減音量は、触媒ハニカム層での減衰が大きい、言い換えれば、触媒ハニカム層の閉塞が多いほど大きくなる。
【0010】
本態様では、第二の音波受信手段を、触媒ハニカム層の面内に沿う所定経路に沿って移動させるので、この所定経路に沿った減音量の分布を検出することができる。この分布において減音量が、他と比べて大きいところは、触媒ハニカム層の閉塞傾向が顕著であることを示すので、閉塞傾向が顕著なところを精度よく把握することができる。
所定経路として触媒ハニカム層の全面がカバーされるように設定することによって、触媒ハニカム層の全面に亘る減音量の分布を検出することができる。
このとき、比較的軽量に構成できる第二の音波受信手段を、移動させるだけでよいので、作業員の負担が少なくなり、触媒ハニカム層の閉塞状況の検査効率を向上させることができる。
【0011】
本態様では、予め、閉塞していない前記触媒ハニカム層について、前記手順にて音波の減音量を測定し、未閉塞時減音量分布として記憶しておき、前記閉塞状況を検出する際に、検出した減音量の分布と前記未閉塞時減音量分布とを比較して前記触媒ハニカム層の閉塞状況を検出するようにすることが好適である。
【0012】
このように、検出された減音量の分布は、閉塞していない触媒ハニカム層について測定した未閉塞時減音量分布と比較されるので、触媒ハニカム層の閉塞の程度を把握することができる。
これにより、触媒ハニカム層の閉塞状況をより精度よく把握することができる。
【0013】
本態様では、前記第二の音波受信手段の前記触媒ハニカム層に対して反対側に位置する第二の触媒ハニカム層を挟んで第二の音波送信手段を配置して検出するようにしてもよい。
【0014】
このように、第一の音波送信手段は第二の音波受信装置に対して触媒ハニカム層を挟んで配置され、第二の音波送信手段は第二の音波受信装置に対して第二の触媒ハニカム層を挟んで配置されることになるので、第二の音波受信手段を所定経路に沿って移動させることにより、第二の音波受信手段は第一の音波送信手段が発信し、触媒ハニカム層を通過した音波を受信するとともに、第二の音波送信手段が発信し、第二の触媒ハニカム層を通過した音波を受信することになる。
したがって、第二の音波受信手段を移動させることによって触媒ハニカム層および第二の触媒ハニカム層の減音量の分布を検出することができる。言い換えれば、第二の音波受信手段の移動によって触媒ハニカム層および第二の触媒ハニカム層の閉塞状況を同時に検出することができ、作業効率を向上させることができる。
このとき、たとえば、第一の音波送信手段および第二の音波送信手段の周波数特性を相互に異ならせておく、あるいは、送信に時間差を設けておく等の処置が行い、第二の音波受信手段が第一の音波送信手段および第二の音波送信手段のどちらの音波を受信しているかを明確にしておくのが好ましい。
【0015】
本態様では、前記触媒ハニカム層または前記第二の触媒ハニカム層は、面内で複数のユニットに分割されており、該ユニット毎に閉塞状況が検出されるようにしてもよい。
【0016】
触媒ハニカム層および第二の触媒ハニカム層は、一般に、面内で複数のユニットに分割され、ユニット毎に敷き詰められて構成されている。
本態様では、ユニット毎に閉塞状況が検出されるので、閉塞の著しいユニットを交換することによって、全面を交換することに比べて安価に、窒素酸化物の除去効率を維持することができる。
【0017】
本態様では、前記第二の音波受信手段には、平面内の位置を測定する位置測定手段が備えられ、該位置測定手段で測定された所定位置で前記減音量を検出するようにしてもよい。
【0018】
このようにすると、減音量を検出した位置が特定されるので、たとえば、交換対象のユニットを確実に指示することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、触媒ハニカム層の閉塞状況を効率よく、かつ、精度よく検出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる閉塞状況検査方法を実施する装置構成を示す縦断面図である。
【図2】図1の第二マイクの移動経路を例示する平面図である。
【図3】図1の装置構成の変形例における位置特定装置を示す平面図である。
【図4】本発明の第二実施形態にかかる閉塞状況検査方法を実施する装置構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明にかかる閉塞状況検査方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態について、図1および図2を用いて説明する。
図1は、本実施形態にかかる閉塞状況検査方法を実施する脱硝装置1および閉塞状況検査装置11の概略構成を示す縦断面図である。図2は、図1のマイクの移動経路を例示する平面図である。
脱硝装置1には、上下方向に延在した矩形断面の筒体である缶3と、缶3の上端に接続されたダクト5と、複数段(図1の例では2段)の触媒ハニカム層7a,7bとが備えられている。
【0022】
脱硝装置1は、ダクト5を介して上流側から燃焼排ガスを缶3内に導入して、触媒ハニカム層7a,7bの触媒において缶入口で噴霧されたアンモニア等の還元剤との化学反応により燃焼排ガス中の窒素酸化物(NOx)を除去する装置である。
触媒ハニカム層7a,7bは、缶3内に上下方向に間隔を空けて配設されており、触媒ハニカム層7aの上方に空間9aが、触媒ハニカム層7aと触媒ハニカム層7bとの間に空間9bが、触媒ハニカム層7bの下方に空間9cが存在している。
【0023】
閉塞状況検査装置11には、ランダムノイズを発信する第一スピーカ(第一の音波送信手段)13と、音波を受信する第一マイク(第一の音波受信手段)15と、音波を受信する第二マイク(第二の音波受信手段)17と、第一スピーカ13に音波を発信させる発信器19と、発信器19の動作を制御するとともに第一マイク15および第二マイク17の受信した音波を処理する制御部21とが備えられている。
制御部21には、処理に必要な情報を格納する格納部23と、種々な処理を行う処理部25とが備えられている。
【0024】
触媒ハニカム層7a,7bは、図2に示されるように面内で複数のユニット27に分割されている。図2に例示している触媒ハニカム層7a,7bは、複数、たとえば、20個のユニット27で構成されている。閉塞により脱硝装置1の脱硝能力が低下した場合、閉塞しているユニット27が閉塞していないものに取り換えられることになる。この意味で全体の閉塞状況を検出することも重要であるが、ユニット27毎の閉塞状況を検出することがより重要となる。
なお、図2の触媒ハニカム層7a(7b)が格子柄で示されているのは、触媒ハニカム層7a,7bがハニカム形状であることを示している。
【0025】
以下、このように構成された閉塞状況検査装置11を用いた触媒ハニカム層7aの閉塞状況を検出する閉塞状況検査方法について説明する。
脱硝装置1の運転を停止する。この停止状態で、第一スピーカ13および第一マイク15を空間9bに位置するように固定して取り付ける。制御部21は、発信器19を動作させ、第一スピーカ13から所定の周波数特性を有する音波を繰り返し発生させる。
そして、第二マイク17を持った作業員は、空間9a内を、第二マイク17が、たとえば、図2に示される経路(所定経路)29に沿って移動するようにする。経路29は、各ユニット27を順に通過するようにジグザグにされている。
【0026】
第一マイク15および第二マイク17は、それぞれ第一スピーカ13が放出した音波を取得する。第一マイク15は、第一スピーカ13と同じ空間9bに位置するので、ほとんど第一スピーカ13が発信した大きさの音波を受け取る。一方第二マイク17は触媒ハニカム層7aを挟んだ空間9aに位置するので、触媒ハニカム層7aを通過し、触媒ハニカム層7aによって減衰された音波を受け取ることになる。したがって、第二マイク17が受信する音波は、第一マイク15が受信する音波に比べて触媒ハニカム層7aで減衰された量だけ減音された音量(減音量)となる。この減音量は、触媒ハニカム層7aでの減衰が大きい、言い換えれば、触媒ハニカム層7aの閉塞が多いほど大きくなる。
【0027】
第一マイク15および第二マイク17で取得された各音波は、制御部21の処理部25に送られる。処理部25では、これらの音波をそれぞれ、たとえば、周波数分析し、両者を比較して減音量を算出する。算出された減音量は格納部23に格納される。
これが、第二マイク17が経路29に沿って移動する間に行われるので、経路29に沿った減音量の分布を検出することができる。
この分布において減音量が、他と比べて大きいところは、触媒ハニカム層7aの閉塞傾向が顕著であることを示すので、閉塞傾向が顕著なところを精度よく把握することができる。
経路29は、全ユニット27をカバーしているので、触媒ハニカム層7aの全面に亘る減音量の分布を得ることができる。
【0028】
このように、作業員は軽量の第二マイク17を持って、それが経路29に沿って移動するようにするだけで触媒ハニカム層7aの閉塞状況を把握することができるので、目視によって閉塞状況を判断しながら移動することに比べて作業員の負担が大幅に軽減される。これにより、触媒ハニカム層7aの閉塞状況の検査効率を向上させることができる。
【0029】
次に、触媒ハニカム層7bの閉塞状況を検出する場合、作業員は第二マイク17を持って第一スピーカ13に対し触媒ハニカム層7bを挟んだ空間9cに移動し、前記した触媒ハニカム層7aと同様に、たとえば、経路29に沿って移動させて行う。
また、触媒ハニカム層7a,7bがさらに多くの層数である場合には、第一第一スピーカ13および第一マイク15を移動し、間に測定する触媒ハニカム層を挟むようにして第二マイク17を移動させて閉塞状況を検出する。
【0030】
なお、予め、閉塞していない触媒ハニカム層7a,7bについて、前記手順にて音波の減音量を測定し、未閉塞時減音量分布として格納部23に格納しておき、処理部25で触媒ハニカム層7a,7bの閉塞状況を検出する際に、検出した減音量の分布と未閉塞時減音量分布とを比較して触媒ハニカム層7a,7bの閉塞状況を検出するようにしてもよい。
このようにすると、触媒ハニカム層7a,7bで検出された減音量の分布は、閉塞していない触媒ハニカム層7a,7bについて測定した未閉塞時減音量分布と比較されるので、触媒ハニカム層の閉塞の程度を把握することができる。
これにより、触媒ハニカム層の閉塞状況をより精度よく把握することができる。
【0031】
また、本実施形態では、第二マイク17は経路29に沿って連続的に集音するようにしているが、これに限定されない。たとえば、経路29中の図2に二点鎖線で表示している各ユニット27で一か所の位置にて、第二マイク17が集音するようにしてもよい。
このようにすると、ユニット27単位で閉塞状況が明確に検出できるので、閉塞状況が著しい、交換を要するユニット27を容易に特定することができる。
【0032】
この場合、図3に示されるような第二マイク17の位置を特定する位置特定装置(位置測定手段)31を備えるようにしてもよい。
位置特定装置31には、第二マイク17と一体的に移動する音波送受信部33と、位置を特定する分析器35とが備えられている。
音波送受信部33は、対向する缶3の壁37に向かって2方向に指向性の高い音波を発信し、壁37から反射する反射音を受信するものである。缶3は矩形状断面であるので、隣り合う壁37は略直角に交差しているため、音波を送信する2方向は相互に直交するようにされている。
【0033】
音波送受信部33が、送信する音波は、区別するため第一マイク13が発信する音波とは周波数特性が異なるものとされる。また、音波送受信部33から2方向に送信される音波は識別のために相互に周波数が異なるようにされている。
なお、音波送受信部33から2方向に送信される音波は周波数を同じとし、2方向に送信される音波に時間差を設けるようにしてもよい。
分析器35は、音波送受信部33と無線でデータの交換が行えるもので、音波送受信部33から音波を送信したデータおよび反射音を受信したデータを受け取り、音波の発信から反射音の受信までの時間によって2つの壁37からの距離を導出する。このように2つの壁37からの距離が導出されると、音波送受信部33、すなわち、第二マイク17の位置を特定することができる。
したがって、減音量を検出した位置が特定されるので、たとえば、交換対象のユニット27を確実に指示することができる。
【0034】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態について図4を用いて説明する。
本実施形態にかかる閉塞状況検査方法は、同時に2層の触媒ハニカム層7a,7bを検査するようにした点で前記第一実施形態と異なるので、ここではこの異なる点を主として説明し、第一実施形態と共通する点については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
【0035】
本実施形態に用いる閉塞状況検査装置11には、第三マイク39と、ランダムノイズを発信する第二スピーカ(第二の音波送信手段)41と、第二スピーカ41に第一スピーカ13とは異なる周波数特性を有する音波を発信させる発信器43と、が備えられている。
【0036】
以下、この閉塞状況検査装置11を用いた本実施形態にかかる閉塞状況検査方法について説明する。
脱硝装置1の運転を停止する。この停止状態で、第一スピーカ13および第一マイク15を空間9aに、第二スピーカ41および第三マイク39を空間9cにそれぞれ位置するように固定して取り付ける。制御部21は、発信器19および発信器43を動作させ、第一スピーカ13および第二スピーカ41から相互に異なる所定の周波数特性を有する音波を繰り返し発生させる。
そして、第二マイク17を持った作業員は、空間9b内を、第二マイク17が、たとえば、図2に示される経路(所定経路)29に沿って移動するようにする。
【0037】
第一マイク15および第二マイク17は、それぞれ第一スピーカ13が放出した音波を、第三マイク39および第二マイク17は、それぞれ第二スピーカ41が放出した音波を取得する。言い換えれば、第二マイク17は、第一スピーカ13および第二スピーカ41が発信した音波を共に取得することになる。
このとき、第一スピーカ13および第二スピーカ41が発信した音波は、相互に周波数特性が異なるので、どちらから発信された音波であるかは容易に識別できる。また、識別を容易にするために、たとえば、第一スピーカ13および第二スピーカ41が音波を発信するタイミングをずらすようにしてもよい。
【0038】
第一マイク15は、第一スピーカ13と同じ空間9aに位置するので、ほとんど第一スピーカ13が発信した大きさの音波を受け取る。一方、第二マイク17は触媒ハニカム層7aを挟んだ空間9bに位置するので、触媒ハニカム層7aを通過し、触媒ハニカム層7aによって減衰された音波を受け取ることになる。
第三マイク39は、第二スピーカ41と同じ空間9cに位置するので、ほとんど第三スピーカ41が発信した大きさの音波を受け取る。一方、第二マイク17は触媒ハニカム層7bを挟んだ空間9bに位置するので、触媒ハニカム層7bを通過し、触媒ハニカム層7bによって減衰された音波を受け取ることになる。
【0039】
したがって、第二マイク17が受信する第一スピーカ13が発信した音波は、第一マイク15が受信する音波に比べて触媒ハニカム層7aで減衰された量だけ減音された音量(減音量)となる。この減音量は、触媒ハニカム層7aでの減衰が大きい、言い換えれば、触媒ハニカム層7aの閉塞が多いほど大きくなる。
また、第二マイク17が受信する第二スピーカ41が発信した音波は、第三マイク39が受信する音波に比べて触媒ハニカム層7bで減衰された量だけ減音された音量(減音量)となる。この減音量は、触媒ハニカム層7bでの減衰が大きい、言い換えれば、触媒ハニカム層7bの閉塞が多いほど大きくなる。
【0040】
第一マイク15、第二マイク17および第三マイク39で取得された各音波は、制御部21の処理部25に送られる。処理部25では、これらの音波をそれぞれ、たとえば、周波数分析し、第一マイク15の音波および第二マイク17の音波と、第三マイク39の音波および第二マイク17の音波とを比較してそれぞれの減音量を算出する。算出された減音量は格納部23に格納される。
これが、第二マイク17が経路29に沿って移動する間に行われるので、経路29に沿った触媒ハニカム層7aおよび触媒ハニカム層7bの減音量の分布を検出することができる。
【0041】
この分布において減音量が、他と比べて大きいところは、触媒ハニカム層7aの閉塞傾向が顕著であることを示すので、閉塞傾向が顕著なところを精度よく把握することができる。
経路29は、全ユニット27をカバーしているので、触媒ハニカム層7a,7bの全面に亘る減音量の分布を得ることができる。
【0042】
このように、作業員は第二マイク17を持って、それが経路29に沿って移動するようにするだけで触媒ハニカム層7a,7bの閉塞状況を同時に把握することができるので、触媒ハニカム層7aおよび触媒ハニカム層7bをそれぞれ目視によって閉塞状況を判断しながら移動することに比べて作業員の負担が大幅に軽減される。これにより、触媒ハニカム層7a,7bの閉塞状況の検査効率を向上させることができる。
なお、触媒ハニカム層7aのみの閉塞状況を検出する場合には、第二スピーカ41および第三マイク39を設置せずに行えばよい。この場合でも、作業員の負担は大幅に軽減され、検査効率を向上させることができる。
【0043】
なお、第二マイク17は経路29に沿って連続的に音波を受信しないで、所定の位置で間欠的に音波を受信するようにしてもよい。この音波を受信する位置が、各ユニット27で一か所となるようにしてもよい。このようにすると、ユニット27単位で閉塞状況が明確に検出できるので、閉塞状況が著しい、交換を要するユニット27を容易に特定することができる。
【0044】
また、減音量を検出した位置を特定し、たとえば、交換対象のユニット27を確実に指示するために第一実施形態で説明した図3に示されるような位置特定装置31を備えるようにしてもよい。
【0045】
なお、本発明は以上説明した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 脱硝装置
7a,7b 触媒ハニカム層
11 閉塞状況検査装置
13 第一スピーカ
15 第一マイク
17 第二マイク
29 経路
31 位置特定装置
39 第三マイク
41 第二スピーカ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガス中の窒素酸化物を除去する触媒ハニカム層を備えた脱硝装置における該触媒ハニカム層の閉塞状況を検出する閉塞状況検査方法であって、
前記触媒ハニカム層を挟んで一方に第一の音波送信手段および第一の音波受信手段を、他方に第二の音波受信手段を配置し、
前記第二の音波受信手段を、前記触媒ハニカム層の面内に沿う所定経路に沿って移動させ、
前記第一の音波受信手段が受信する音波と前記第二の音波受信手段が受信する音波とに基づいて音波の減音量を検出し、該減音量の分布に基づいて前記触媒ハニカム層の閉塞状況を検出する閉塞状況検査方法。
【請求項2】
予め、閉塞していない前記触媒ハニカム層について、前記手順にて音波の減音量を測定し、未閉塞時減音量分布として記憶しておき、前記閉塞状況を検出する際に、検出した減音量の分布と前記未閉塞時減音量分布とを比較して前記触媒ハニカム層の閉塞状況を検出する請求項1に記載の閉塞状況検査方法。
【請求項3】
前記第二の音波受信手段の前記触媒ハニカム層に対して反対側に位置する第二の触媒ハニカム層を挟んで第二の音波送信手段を配置して検出する請求項1または請求項2に記載の閉塞状況検査方法。
【請求項4】
前記触媒ハニカム層または前記第二の触媒ハニカム層は、面内で複数のユニットに分割されており、該ユニット毎に閉塞状況が検出される請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の閉塞状況検査方法。
【請求項5】
前記第二の音波受信手段には、平面内の位置を測定する位置測定手段が備えられ、該位置測定手段で測定された所定位置で前記減音量を検出する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の閉塞状況検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−139638(P2012−139638A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294140(P2010−294140)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】