説明

閉鎖器

閉鎖器本体(1)、第一の位置制御素子(2)および第二の位置制御素子(3)から成る、生体内の通路を閉鎖するための閉鎖器であり、閉鎖器本体(1)は、形状記憶性のない、可撓性で流体密封の材料から成るバルーンである。閉鎖器本体(1)は、近位チャンバー(10)、遠位チャンバー(11)およびこれら2つのチャンバー(10、11)を接続する接続チャネル(12)から成る。閉鎖器本体(1)は、長手方向の第一の形状に圧縮でき、閉鎖器本体(1)の近位端は第一の位置制御素子(2)に接合し、バルーンの遠位端は第二の位置制御素子(3)に接合している。第一の位置制御素子(2)および第二の位置制御素子(3)は、バルーンの流体密封な閉鎖を構成する、一対の部分である。バルーンを、放射状に拡張し、長手方向に圧縮した弟三の状態に固定するための付加的な固定手段を閉鎖器本体(1)内に配置する必要はない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中隔欠損等による、体内の通路を閉鎖するための閉鎖器および閉鎖器を導入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心室あるいは大血管間には、異常な開口部、穴あるいは短絡が生じ、その開口部あるいは通路を通っての血液の短絡を引き起こす。このような異常な開口部は、例えば、心室中隔欠損、心房中隔欠損及び動脈管開存症として現れる。開胸手術に伴う罹患および死亡を避ける目的で、各種の経カテーテル閉鎖技術がこれまで試みられてきた。これらの技術においては、カテーテルを用いて閉鎖器を導入する。閉鎖器は、欠損部に隣接したら、欠損部の血流を効果的に遮断するようなやり方で、中隔の残りの部分に接合しなければならない。
【0003】
米国特許第4836204号には、ラテックスあるいはゴム製の、二つの膨張性のバルーンから成る、閉鎖器が開示されている。この二つのバルーンは、カテーテルのシャフトによって分離されている。バルーンは膨張し、その膨張した状態で通路に近づく。この閉鎖器は、きわめて場所をとるものであり、そのため、小さい開口部の閉合には使用できない。
【0004】
WO97/41779号には、流体密封の、膨張性の二重チャンバーバルーンから成る閉鎖器が開示されている。二つのチャンバーの間の接続部は、閉鎖するべき通路の外周辺縁でその二つのチャンバーを案内するように配置されている。この二つのチャンバーは、多くの固定手段によって放射状に拡張している。第一の態様では、この固定手段は、チャンバーに配設された金属製のコイルであり、第二の態様では、金属製のネジである。バルーンの各端に配置されている、二つのスナップ接続要素から成る固定機構は、バルーンを拡張し、かつ排気された状態に固定するため、あるいはネジをねじれたバネ状の状態に固定するために設けられる。しかしながら、金属部分は、心不整脈を考慮するとマイナス要因となる。
【0005】
フランス特許第2714284号には、二重チャンバーバルーン付きの閉鎖器が記載されている。バルーンは、形状記憶素材から成っている。バルーンの遠位端は閉鎖されており、近位端は弁となっている。バルーンは、膨張され、欠損部位に置かれ、次に排気される。バルーンが選ばれた場所に確実にとどまるように、カテーテルは、ある一定の期間、留置される。
【0006】
最新の技術による閉鎖器は、構造が複雑で、取り扱いが極めて面倒だという欠点がある。特に、それらが欠損部に位置してしまうと、その最終的な位置や形状を操作・変更することはほとんど不可能である。
【0007】
米国特許第6692494号には、並立した開口部あるいは通路を気道の壁に生成・維持するための機器が開示されている。この機器は、呼気を肺組織から直接通過させ、酸素の血液への交換及び/又は膨張し過ぎた肺の減圧を同時に促進するためのものである。この機器は、砂時計の形状をしたバルーンカテーテルを使用して導入される。機器が導入されると、このバルーンは除去される。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、ヒトあるいは動物の体内の通路を閉鎖するための、非常に単純ではあるが、うまく作動する閉鎖器を提供することにある。
【0009】
この目的は、閉鎖器本体、第一の位置制御素子および第二の位置制御素子から成る、体内に生じた通路を閉鎖するための閉鎖器によって達成される。閉鎖器本体は、形状記憶性がなく、可撓性で、流体密封の材料から成るバルーンである。バルーンは、遠位のチャンバーおよび近位のチャンバー、そしてこれら二つのチャンバーを結びつける、接続チャネルから成る。バルーンは、長手方向の第一の形状に圧縮できる。このバルーンの近位端は、第一の位置制御素子に接合され、遠位端は、第二の位置制御素子に接合される。第一の位置制御素子および第二の位置制御素子は、バルーンの流体密封閉鎖を構成する、一対の部分である。閉鎖本体は、流体の導入によって膨張した第二の形状になり、流体が排出され、二つの位置制御素子がスナップ接続(snapped together)位置に移動することによって、放射方向に拡張しているが、長手方向に圧縮した第三の形状になるように構成されている。バルーンを、放射状に拡張し、長手方向に圧縮した第三の形状に固定させるための固定手段が、バルーン内に配置されることはない。
【0010】
この閉鎖器は、欠損部の位置で、その形状を変えることが出来、膨張した状態においても整え直すことができる。
【0011】
この閉鎖器は、金属の部品あるいは複雑な材料をほとんどもしくは全く必要としない。ワイヤを含んでいないため、閉鎖器の構造が破壊および/又は患者の組織に穴を開けてしまう危険性を最小限にする。ワイヤを含んでいないため、閉鎖器はさらに非常に柔らかく、非導電性になる。これによってAVブロック(房室ブロック)を防止することができる。
【0012】
本発明の閉鎖器は、せまい場所あるいは損傷の危険度が高い場所において使用するのにとりわけ適している。ワイヤつきの閉鎖器は、展開する際、最終的に欠損を閉鎖するのに必要なスペースよりも多くのスペースを必要とする。ワイヤは周囲の組織に絡みつき、組織を損傷させてしまう。本発明の閉鎖器は、ゆっくりと拡大し、損傷させることなく、周囲の組織を押しのけることができる。特に、心弁を損傷させる危険性は最小限となる。
【0013】
本発明の好適な実施態様において、閉鎖器は少なくとも部分的に生分解可能な素材から成っている。
【0014】
閉鎖本体の素材は形状記憶性を有していないため、位置制御素材がその形状を規定する。つまり、二つの位置制御素子が別々に作動するため、バルーンのチャンバーが別々にその形状を機械的に変えることができる。これと同様に、二つのバルーンチャンバーは、別々に、膨張しているが長手方向には圧縮された第三の形状になる。また、ユーザが、その遠位のチャンバーを最初にこの状態にしたいか、あるいは近位のチャンバーあるいは両方のチャンバーを同時にこの状態にしたいかを選択することができる。これにより、ユーザは、欠損部の最適な場所に閉鎖器を置き、欠損部内で再配置することができる。同じ寸法および形状の閉鎖器を、異なった種類および大きさの欠損に使用できる。さらに、バルーンの寸法および形状は、各種の寸法および形状から選択でき、閉鎖するべき欠損の種類に従って、最適なものを選ぶことができる。好ましくは、バルーンは、例えば、砂時計に似た、まだ膨張していない形状に予備成形され、この形状は、主として膨張時にのみ拡大する。
【0015】
本発明の他の目的は、閉鎖器を、ヒトあるいは動物の体内の閉鎖されるべき通路に運ぶための改良された方法を提供することにある。
【0016】
本発明による、体内の通路を閉鎖器で閉鎖する方法は、
閉鎖器を準備し、前記閉鎖器が、二つのチャンバーバルーンの形状の閉鎖器本体、第一の位置制御素子および第二の位置制御素子から成り、前記閉鎖器本体が、前記第一の位置制御素子に接続した近位端および前記第二の位置制御素子に接続した遠位端から成る工程と、
閉鎖すべき通路に前記閉鎖器を導入するために導入システムを設け、前記導入システムが遠位端を有する近位制御カテーテル、遠位端を有する遠位制御カテーテルから成り、前記近位制御カテーテルには前記遠位制御カテーテルが貫通し、前記二つのロッドは互いに独立して長手方向に移動可能であり、前記カテーテル導入システムが、加圧装置を含む工程と、
前記第一の位置制御素子を前記近位制御カテーテルの遠位端に接続し、前記第二の位置制御素子を前記遠位制御カテーテルの遠位端に接続する工程と、
前記閉鎖器本体を長手方向の第一の形状に圧縮するため、前記遠位制御カテーテルの遠位端および前記近位制御カテーテルの遠位端との間の距離を変える工程と、
前記閉鎖器を閉鎖するべき通路に導入し、前記バルーンの一つのチャンバーが通路壁の片側に、そして前記バルーンのもう一つのチャンバーが通路壁の他方の側に位置するように前記閉鎖器を配置する工程と、
付加的な固定手段を使用することなく、前記加圧装置で前記閉鎖器本体を膨張した第二の形状に膨張させる工程と、
前記閉鎖器の位置を確認し、もし適切であれば、前記第一および第二の位置制御素子を、それぞれ前記カテーテルおよび遠位制御カテーテルで押し引きすることによって前記閉鎖器を再配置する工程と、
前記加圧装置で前記閉鎖器本体を収縮させ、前記近位制御カテーテルの遠位端および前記遠位制御カテーテルの遠位端との間の距離を狭め、それによって、前記二つの位置制御素子がスナップ接続され、スナップ閉鎖を形成するまで互いに近づける工程と、および
閉鎖した通路から前記遠位制御カテーテルおよび前記近位制御カテーテルを除去する工程から成る。
【0017】
閉鎖器が収縮して、ヒトあるいは動物の組織に接着し、近位および遠位のチャンバーがほとんど互いに独立して、長手方向に移動、収縮できるため、閉鎖器は異なった解剖学的形状に非常に適合しやすい。収縮した閉鎖器は、それ以上動かず、その結果、閉鎖器を配置した後、カテーテルを患者の体内に残す必要はない。
【0018】
本発明のさらに好適な態様は、従属項に記載している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明による閉鎖器の側面図である。
【図2】図2は、第一の圧縮された状態にある、図1による閉鎖器を運ぶカテーテルの側面図である。
【図3】図3は、図2の拡大詳細図である。
【図4】図4は、解剖学的構造の中において第二の膨張した状態にある閉鎖器を備えた図2に示すカテーテルの側面図である。
【図5】図5は、解剖学的構造の中における、図4の詳細拡大図である。
【図6】図6は、図5の長手方向の詳細断面図である。
【図7】図7は、部分的に、第三の拡大し、長手方向に圧縮された状態にある閉鎖器である。
【図8】図8は、図7の代替図である。
【図9】図9は、図8に示す閉鎖器の長手方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施態様を、添付の図面を参照しながら、より詳細に説明する。
図1は、使用前の元の形状にある、本発明による生体の通路を閉鎖する閉鎖器を示す。閉鎖器は、閉鎖器本体1、第一の位置制御素子2、および第二の位置制御素子3から成る。位置制御素子2、3は、好ましくは閉鎖器の遠位および近位の端部である。
【0021】
閉鎖器本体1は、形状記憶性のない、可撓性で流体密封な材料から成る、シェルかバルーンである。好ましくは、バルーンはPET(ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン、その他の弾性あるいは非弾性ではあるが可撓性の素材から成る。バルーンは、近位チャンバー10、遠位チャンバー11、これら二つのチャンバーを接続する接続チャネル12から成る。2つのチャンバー10、11および接続チャネル12は、単一の空洞部を形成する。好ましくは、バルーンは単一の部品である。図中の線は、バルーンの形状をよりよく見せるためのものであって、実際には線はない。とりわけ、区分線や継ぎ目はない。
【0022】
使用前のもともとの状態では、近位のチャンバー10は、遠位のチャンバー11と同じサイズおよび形状を有することができる。しかし、二つのチャンバー10、11は、異なるサイズおよび形状を有していてもよい。サイズおよび形状は、閉鎖器が閉鎖すべき欠損の種類によって異なる。
【0023】
接続チャネル12は2つのチャンバー10、11よりも直径が小さい。チャンバー10、11の典型的な直径は、5から50ミリ、典型的には15ミリで、接続チャンバー12の直径は2から30ミリ、典型的には6ミリである。バルーンの典型的な長さは30から150ミリである。バルーン壁の厚みは、全てにわたって同じであることが好ましく、0.01から0.15ミリの範囲にあることが好ましい。
【0024】
バルーンの近位端は第一の接合域13およびバルーンの遠位端は第二の接合域13を形成する。両方の接合域13は、第一および第二の位置制御素子2、3の本体21、31にそれぞれ固定、好ましくは溶接、糊付け、あるいは圧接される。これらの結合部は、好ましくは流体密封、特に気密である。溶接および糊付けに加え、あるいはこれらの固定の代わりに、バルーンはリングで固定されてもよい。そのリングは、第一および第二の位置制御素子2、3を取り囲み、バルーン素材をこれらの素子の外表面に押し付ける。これらのリングは図示していない。
【0025】
位置制御素子2、3は、好ましくはプラスチック、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)から成っている。これらの本体21および31は、好ましくは管状の形状を成し、バルーン1の接合域13に接着するための外表面を有している。
【0026】
近位の第一の位置制御素子2は、クリアランスホールあるいは通路23を有しているが、それは、下記に記載の遠位制御カテーテル60が貫通できるほど大きい。その本体21は、外ネジ20にその近位端を置いている。遠位端領域では、内部テーパリング22を有し、それが内部通路23を狭めている。
【0027】
遠位の第二の位置制御素子3は、バルーン1内部に向かって伸張する中空のシャフト30を含む。シャフト30は、好ましくは、その本体31よりも長く、同時に、第一の位置制御素子2の本体21よりも長い。図6に示すように、シャフト30の近位端はノーズ32から成る、弾性留め具(catch)36として形成されている。シャフト30内部および/またはシャフト30と本体31の間の接続域では、位置制御素子3が内ネジ34から成っている。シャフト30は本体31よりも直径が小さいが、この領域は周辺ショルダー35を含む。ネジ34は、本体31と一体であってよい。好ましくは、ネジ34は制御素子3に押し込まれる金属筒の一部である。しかし、この金属部分に加え、あるいは代わりに、他の部分もまた金属から成っていてよい。
【0028】
この閉鎖器は、好ましくは、閉鎖するべき欠損部を通して置かれたカテーテルあるいはガイドワイヤの上に導入される。他の導入方法もまた可能である。
【0029】
図2は、カテーテル導入システムを用いた第1の導入方法を示す。閉鎖器は、図中では参照番号4で示される。
【0030】
カテーテル導入システムは、近位の制御カテーテル50および2つのアーム51、52を備えたyコネクタ5から成る。近位の制御カテーテル50は、その遠位端に内ネジ54を含んでおり、それは、第一の位置制御素子2の外ネジ20に係合でき、従って、ロッド50をこの第一の素子2と結合させる。このように、閉鎖器4は、その近位端でカテーテル導入システムに固定している。遠位の制御カテーテル60は、第一のアーム51を通って延びており、近位の制御カテーテル50を貫通し、その近位端がハンドル60にあり、遠位端が、第二の位置制御素子3の内ネジ34と連結できる外ネジ63にある。ネジ63を具備した遠位端は、独立したインサート61であることができ、そのインサートは遠位の制御カテーテル60と接続している。例えば、のりづけあるいはネジ止めで接続することができる。好ましい態様においては、遠位端は遠位制御カテーテル60と一体である。
【0031】
近位制御カテーテル50の内ネジ54を担持している遠位端もまた独立したインサート53であってよい。それは、例えば、接着剤やネジにより、近位の制御カテーテル50に接続させることができる。図6にこれを示す。しかし、それは近位制御カテーテル50の一部であってよい。
【0032】
閉鎖器4の遠位端も、カテーテル導入システムに固定されているが、その近位端の固定部からは独立している。
【0033】
カテーテルを本体に接続するために、ネジの代わりに他の周知の接続手段を用いてもよい。
【0034】
図2および、さらに詳細に図3に示されるように、遠位制御カテーテル60および近位制御カテーテル50の2つの遠位端間の距離を制御するため、閉鎖器4が細長い最初の状態に圧縮される。この状態で、閉鎖器4は、好ましくは下記のシリンジ7を使用することによって、空気を抜くことができる。
【0035】
カテーテル導入システムは排気装置、ここではシリンジ7を含む。シリンジの代わりに、小型の、手動あるいは電気の圧力ポンプも同様に使用することができる。シリンジ7は第二のアーム52に接続される。シリンジ7のピストン70を使用することにより、閉鎖器4のバルーン1は膨張したり収縮したりすることができる。後者の状況は、図2および3に示されている。この状態の閉鎖器4の外径は、血管や他の管などの生体の通路を通れるくらいに十分に細い。典型的な最小外径は1から3ミリである。
【0036】
閉鎖器4が、欠損部に到達し、通路壁8の両側に位置すると、バルーン1は造影剤で膨張し、その位置が確認できる。そして閉鎖器は、第二の膨張した状態になる。この状態を図4、およびより詳細には図5に示す。造影剤の代わりに、他の流体も使用できる。近位チャンバー10は、通路壁8の近位側に配置され、遠位チャンバー11は遠位側に配置される。接続チャネル12は、通路壁8の周辺で二つのチャンバー10、11のガイダンスとなり、欠損部の真ん中に閉鎖器を置く。
【0037】
正しい場所においては、残存したシャントは見えないはずである。遠位制御カテーテル60および近位制御カテーテル50にそれぞれ接続した二つの位置制御素子1、2を使用して、閉鎖器を再配置し、欠損部に閉鎖器を正確に着座させるために、押し引きの操作を行うことができる。これは、第一の制御素子2を押したり引いたりし、同時又はその後で、第二の素子3を反対方向に押したり引いたりできることを意味する。再配置は、好ましくは、欠損部において閉鎖器を中心に位置させ、第三の状態にある閉鎖器の形状を、解剖学的構造に適合させることを含む。
【0038】
図6には、遠位制御カテーテル60および近位制御カテーテル50が、それぞれ二個の位置制御素子2および3と係合しているのが示されている。遠位制御カテーテル60は、この最後数センチメートルにおいてうまく案内されるが、必ずしもうまく案内される必要はない。その理由は、第一の位置制御素子2の中で、テーパリング22によって案内され、その後、バルーン1内に伸張するシャフト30の存在により、短い距離で第二の位置制御素子3に接続されるからである。
【0039】
閉鎖器4が正しい位置に配置された後、二つの制御要素2、3は互いに接近し、造影剤がカテーテル導入システムから取り除かれる。それらを互いに接近させながら、ユーザはまず遠位バルーンチャンバー11を圧縮したいのか、それとも近位バルーンチャンバー10を圧縮したいのかを選択することができる。図7においては、遠位チャンバー11が最初に圧縮し、図8では、近位チャンバー10が最初に圧縮している。これらを同時に圧縮させることも可能である。さらに、シリンジ7を使用しての吸引によって、閉鎖器の形状を患者の解剖学的構造に適合させることもできる。図7および図8に示されるように、同じ閉鎖器のサイズを、異なった大きさの欠損部、特に異なった厚みの通路壁8に使用できる。図7においては、壁はきわめて薄いが、図8においては、壁はきわめて厚い。二つのチャンバー10、11および接続チャネル12は、その形状を、それぞれの患者の生体の解剖学的構造に適合させる。
【0040】
図9は、閉鎖器が放射状に拡大し、長手方向に圧縮された第三にして最後の状態を示している。遠位制御カテーテル60を撤退させることによって、第二の素子3のシャフト30は、第一の素子2の本体21にスナップ留めされ、テーパリング22と係合する弾性留め具36のノーズ32によって保持される。二つの位置制御素子2、3はスナップ閉鎖の1対の要素を形成する。この固定により、欠損部における閉鎖器の位置および形状が確実に安定する。スナップ閉鎖の代わりに、他の周知の閉鎖を使用することができる。この閉鎖は、バルーンの内部が、流体密封になるような閉鎖でなければいけない。しかし、閉鎖そのものでは、図9に示すように、閉鎖器を通る開放された通路を形成する。本体21、31を通る開放通路はまだ存在するが、バルーン内部は周囲に対して閉鎖されている。閉鎖、特にスナップ閉鎖は、好ましくはその位置で再度開くことができる。したがって、バルーンは、バルーンの素材が患者の組織と共に大きくならない限り、再び膨張し、再配置することができる。
【0041】
スナップ閉鎖は、好ましくは流体密封で、それにより、閉鎖器の内部空洞部が周囲から閉鎖される。造影剤の除去によって、この空洞部の圧力は、周囲に比べて、低いか、少なくとも高くはない。
【0042】
本実施態様において、シャフト30は第二の素子3の一部であった。しかし、それは第一の近位素子2の一部であってもよい。さらに、この固定的に保持可能なシャフト以外の他のスナップ素子もまた使用可能である。
【0043】
図示されるように、閉鎖器の内部には、その形状を変えるための付加的な固定手段は必要としない。これと同様に、閉鎖器の金属形成部の量も最小化されるか、ゼロとすることができる。
【0044】
この閉鎖器は、心室中隔欠損、心房中隔欠損、動脈管開存症など、さまざまな欠損に使用することができる。特に、VSD(心室中隔欠損)に非常に適している。
【0045】
本発明の閉鎖器は、欠損部内のバルーンの再配置を可能にし、バルーンの形状を、患者の生体の解剖学的構造に適応させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 閉鎖器本体
10 近位チャンバー
11 遠位チャンバー
12 接続チャネル
13 接続領域
2 第一の位置制御素子
20 外ネジ
21 本体
22 テーパリング
23 通路
3 第二の位置制御素子
30 シャフト
31 本体
32 ノーズ
33 閉鎖壁
34 内ネジ
35 ショルダー
36 弾性留め具
4 閉鎖器
5 y−コネクタ
50 近位制御カテーテル
51 第一のアーム
52 第二のアーム
53 インサート
54 内ネジ
6 ハンドル
60 遠位制御カテーテル
61 インサート
62 プレスフィット
63 外ネジ
7 シリンジ
70 ピストン
8 通路壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖器本体(1)、第一の位置制御素子(2)および第二の位置制御素子(3)から成る、生体内の通路を閉鎖するための閉鎖器であって、前記閉鎖器本体(1)が、形状記憶性のない可撓性で流体密封の材料からなるバルーンであり、前記バルーン(1)は遠位チャンバー(11)、近位チャンバー(10)およびこれら2つのチャンバー(10、11)を接続する接続チャネル(12)から成り、前記閉鎖器本体(1)は、長手方向の第一の形状に圧縮でき、前記閉鎖器本体(1)の近位端は前記第一の位置制御素子(2)に接合し、前記閉鎖器本体(1)の遠位端は前記第二の位置制御素子(3)に接合し、前記第一の位置制御素子(2)および前記第二の位置制御素子(3)は、前記バルーンの流体密封の閉鎖を構成する、一対の部分であり、前記閉鎖器(1)は流体の導入により膨張した第二の形状になり、この流体を排出し、前記二つの位置制御素子(2、3)を、スナップ接続(snap together)位置に移動させることにより、放射状に拡張し、長手方向に圧縮した第三の形状となるように構成されており、前記バルーンを、放射状に拡張し、長手方向に圧縮した前記第三の状態に固定するための付加的な固定手段を前記バルーン内に配置する必要のないことを特徴とする、閉鎖器。
【請求項2】
前記閉鎖器本体(1)が、一体のバルーンであることを特徴とする、請求項1に記載の閉鎖器。
【請求項3】
前記閉鎖がスナップ閉鎖であることを特徴とする、請求項1あるいは2に記載の閉鎖器。
【請求項4】
前記第一の位置制御素子(2)が、前記第一の位置制御素子(2)を近位制御カテーテル(50)に接続するための外ネジ(20)およびカテーテル導入システムの遠位制御カテーテル(60)が貫通する通路(23)から成り、前記遠位制御カテーテル(60)が前記近位制御カテーテル(50)を貫通していることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の閉鎖器。
【請求項5】
前記第二の位置制御素子(3)が、前記第二の位置制御素子(3)を前記遠位制御カテーテル(60)に接続するための内ネジ(34)を含むことを特徴とする、請求項4に記載の閉鎖器。
【請求項6】
前記第一あるいは第二の位置制御素子(2、3)がシャフト(30)を含み、前記二つの位置制御素子(2、3)のもう一方(other)がスペース(23、22)を含み、前記スペース内で前記シャフト(30)を固定保持できることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の閉鎖器。
【請求項7】
前記シャフト(30)が、他方の位置制御素子(2、3)に係合する弾性留め具(36)を含むことを特徴とする、請求項6に記載の閉鎖器。
【請求項8】
前記シャフト(30)が、前記第二の位置制御素子(3)の一部であることを特徴とする、請求項6および7のいずれか1項に記載の閉鎖器。
【請求項9】
前記シャフト(30)が、前記閉鎖器本体(1)内に延びていることを特徴とする、請求項6から8のいずれか1項に記載の閉鎖器。
【請求項10】
前記第一および第二の位置制御素子(2、3)が、それぞれが外表面を有する管状の本体(21、31)から成り、前記閉鎖器本体(1)が近位および遠位の管状接合域(13)から成り、これらの接合域(13)が、前記位置制御素子(2、3)の本体(21、31)の外表面に接合していることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の閉鎖器。
【請求項11】
前記接合域(13)が、前記本体(21、31)に溶接、糊付けあるいは圧接されていることを特徴とする、請求項10に記載の閉鎖器。
【請求項12】
前記閉鎖した閉鎖部が再度開くことを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の閉鎖器。
【請求項13】
前記接続チャネル(12)が、前記近位および遠位チャンバー(10、11)よりも直径が小さいことを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の閉鎖器。
【請求項14】
前記閉鎖器本体(1)が、可撓性の素材から成ることを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の閉鎖器。
【請求項15】
前記閉鎖器本体(1)が、PET(ポリエチレンテレフタレート)あるいはナイロンから成ることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の閉鎖器。
【請求項16】
前記第一および第二の位置制御素子(2、3)が、プラスチックから成ることを特徴とする、請求項1から15のいずれか1項に記載の閉鎖器。
【請求項17】
前記閉鎖器が、非金属製であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか1項に記載の閉鎖器。
【請求項18】
閉鎖器で生体の通路を閉鎖する方法であって、
閉鎖器を準備し、前記閉鎖器が、二つのチャンバーバルーンの形状の閉鎖器本体、第一の位置制御素子および第二の位置制御素子から成り、前記閉鎖器本体が、前記第一の位置制御素子に接続した近位端および前記第二の位置制御素子に接続した遠位端から成る工程と、
閉鎖すべき通路に前記閉鎖器を導入するために導入システムを設け、前記導入システムが遠位端を有する近位制御カテーテル、遠位端を有する遠位制御カテーテルから成り、前記近位制御カテーテルには前記遠位制御カテーテルが貫通し、前記二つのロッドは互いに独立して長手方向に移動可能であり、前記カテーテル導入システムが、加圧装置を含む工程と、
前記第一の位置制御素子を前記近位制御カテーテルの遠位端に接続し、前記第二の位置制御素子を前記遠位制御カテーテルの遠位端に接続する工程と、
前記閉鎖器本体を長手方向の第一の形状に圧縮するため、前記遠位制御カテーテルの遠位端および前記近位制御カテーテルの遠位端との間の距離を変える工程と、
前記閉鎖器を閉鎖するべき通路に導入し、前記バルーンの一つのチャンバーが通路壁の片側に、そして前記バルーンのもう一つのチャンバーが通路壁の他方の側に位置するように前記閉鎖器を配置する工程と、
付加的な固定手段を使用することなく、前記加圧装置で前記閉鎖器本体を膨張した第二の形状に膨張させる工程と、
前記閉鎖器の位置を確認し、もし適切であれば、前記第一および第二の位置制御素子を、それぞれ前記カテーテルおよび遠位制御カテーテルで押し引きすることによって前記閉鎖器を再配置する工程と、
前記加圧装置で前記閉鎖器本体を収縮させ、前記近位制御カテーテルの遠位端および前記遠位制御カテーテルの遠位端との間の距離を狭め、それによって、前記二つの位置制御素子がスナップ接続され、前記バルーンが流体密封に閉鎖するまで互いに近づける工程と、および
閉鎖した通路から前記遠位制御カテーテルおよび前記近位制御カテーテルを除去する工程から成る、閉鎖器で生体の通路を閉鎖する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−501213(P2010−501213A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524861(P2009−524861)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000403
【国際公開番号】WO2008/022479
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(504296275)カラク アーゲー (9)
【Fターム(参考)】