説明

開口部を持つ反応射出成形体の製造方法と金型装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、開口部を持つ反応射出成形体の製造方法と金型装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート成形体や金属成形体は、重いことおよび切削加工が困難であることなどの欠点を有することから、近年では、従来金属またはコンクリートで成形していた成形体を合成樹脂で成形しようとする試みが盛んである。
【0003】
特にノルボルネン系モノマーの反応射出成形体(RIM)は、耐衝撃性に優れ、しかも大型成形体の成形が容易であることから、多方面の技術分野において用いられることが検討されている。
たとえば大型のノルボルネン系モノマーの反応射出成形体で、槽または槽の構成部材を成形する場合には、槽内部の清掃などのために、上部にマンホールなどの開口部を複数設けている。このような槽に形成されたマンホールなどの開口部は、内径が450mm〜600mm程度に開口面積が大きい。
【0004】
開口部を持つ反応射出成形体を製造するための従来例に係る金型装置の一例を図2に示す。
図2に示すように、この金型装置2は、コア型4とキャビ型6とから成り、これらが組み合わされることにより、間にキャビティ8が形成される。キャビティ8は、成形体の形状に対応した形状を有し、成形体に開口部12を形成するために、コア型4には、開口部12の形状に対応した凸部10が形成してある。凸部10の頂面は、キャビ型6の内周面に密着するように構成してある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、開口部12の開口面積が大きい場合や、複数の開口部12を形成しなければならない場合などに、コア型4の凸部10の頂面とキャビティ型6の内周面とを均一に接触させることは困難であり、図3に示すように、開口部12の約半分程度まで塞ぐバリ14が成形体に形成されることがあった。このバリは、成形後に除去しなければならず、その作業が煩雑であった。
【0006】
また、コア型4の凸部10の頂面とキャビティ型6の内周面との間に隙間があると、バリが発生するだけでなく、キャビティ8内に反応原液を注入する際に、注入された反応原液中に空気を巻き込み、成形体のボイド発生原因と成るおそれがあった。
【0007】
このような不都合を解消するためには、キャビ型6の内周面の寸法精度と、コア型4の凸部の頂面の寸法精度とを厳しく管理する必要があるが、従来の技術では、全ての開口部において、バリを発生させないようにすることは困難であった。また、高寸法精度が要求される部分の面積が大きいため、金型の製作コストが増大するおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、成形体の開口部におけるバリの発生を極力抑制し、成形体にボイドが発生せず、しかも、高寸法精度が要求される部分の面積が小さく、製造コストが安価な、開口部を有する反応射出成形体の製造方法と金型装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る反応射出成形体の製造方法は、第1金型と第2金型とを有する金型装置のキャビティ内に反応原液を注入し、反応射出成形を行い、開口部を持つ反応射出成形体を製造する方法であって、前記反応射出成形体の開口部に対応する前記第1金型または第2金型の一部に、開口部の形状に沿って、シール溝を形成し、前記シール溝にシール部材を装着し、前記第1金型と第2金型とを型締めし、前記シール部材が第1金型と第2金型との間の隙間をシールした状態で、金型装置のキャビティ内に反応原液を注入し、反応射出成形を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る金型装置は、第1金型と第2金型とを有し、開口部を持つ反応射出成形体を製造するための金型装置であり、前記反応射出成形体の開口部に対応する前記第1金型または第2金型の一部に、開口部の形状に沿って、シール溝が形成してあり、前記シール溝には、前記第1金型と第2金型とが型締めされた状態で、第1金型と第2金型との間の隙間をシールするシール部材が装着してあることを特徴とする。
【0011】
本発明において、開口部の形状は、特に限定されないが、開口部に蓋をすることを考え、蓋が内部に落下し難くするためには、円形にすることが好ましい。
本発明において、シール部材としては、たとえばOリングのようなシール部材を用いることが好ましく、その素材としては、特に限定されないが、基本的には弾性を有するエラストマーや発泡体などで構成される。エラストマーは、発泡体に比較して、繰り返し使用による材料のヘタリが少ないので特に好ましい。シール材の用途によっては、金型の熱や反応熱に耐え得る耐熱性および反応原液に対する耐性などが要求される。
【0012】
具体的には、シール部材は、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系ゴム、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーゴム(EPDM)、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、フッ素ゴムなどのオレフィン系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、またはこれらの発泡体、またはウレタンもしくはナイロンの発泡体などで構成される。中でも、シール部材は、エラストマー、特に好ましくは、NBR、IR、EPDM、フッ素ゴムなどで構成される。
【0013】
本発明では、シール溝の寸法形状は、シール部材の大きさに合わせて決定され、第1金型と第2金型とが型締めされた状態で、シール部材が押し潰されてシール特性を発揮するように決定される。
シール溝が形成された第1金型または第2金型の外周側には、型合わせ用凸部が形成してあり、この型合わせ用凸部の頂面が、シール溝が形成されていない第2金型または第1金型の内周面に圧接するようになっている。シール溝が形成された第1金型または第2金型の内周側の平面は、シール溝が形成されていない第2金型または第1金型の内周面に圧接する必要がないので、粗い寸法精度の平面でよい。
【0014】
本発明に係る金型装置を用いた反応射出成形体の製造方法では、反応射出成形体の開口部に対応する前記第1金型または第2金型の一部に、開口部の形状に沿って、シール溝を形成し、このシール溝にシール部材が装着してある。このため、キャビティ内へ反応原液の注入に際し、金型間の隙間がシール部材によりシールされ、開口部の内周側に反応原液は回り込まず、成形体の開口部に生じるバリを最小限にすることができる。したがって、成形後のバリ取りの作業の容易化が図れる。
【0015】
また、シール部材の作用により、開口部の内周側に反応原液が回り込まないことから、反応原液へのエアの巻き込みも防止でき、結果として、成形体にボイドなどが生じ難くなる。さらに、シール部材の作用により、開口部の内周側に反応原液が回り込まないことから、シール溝が形成された第1金型または第2金型の内周側の平面は、シール溝が形成されていない第2金型または第1金型の内周面に圧接する必要がなくなり、粗い寸法精度の平面でよい。高寸法精度が要求される部分は、シール溝が形成された第1金型または第2金型の外周側に形成された型合わせ用凸部の頂面のみである。したがって、本発明では、高寸法精度が要求される部分を必要最小限にすることができ、金型装置の製造コストを低減することができる。
【0016】
本発明において、反応射出成形に用いる反応原液としては、特に限定されないが、ウレタン系、ウレア系、ナイロン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系、フェノール系および、ノルボルネン系などが挙げられ、一般的成形条件としては、反応原液温度は20〜80°C、反応原液の粘性は、たとえば、30°Cにおいて、5cps〜3000cps好ましくは100cps〜1000cps程度である。
【0017】
かかる成形においては、補強材を予め金型内に設置しておき、その中に反応液を供給して重合させることにより強化ポリマー(成形品)を製造することができる。
補強材としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、金属繊維、ポリプロピレン繊維、アルミコーティングガラス繊維、木綿、アクリル繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、アルミナ繊維などを挙げることができる。また、チタン酸カリウムや硫酸カルシウムなどのウィスカーも挙げることができる。さらに、これらの強化剤は、長繊維状またはチョップドストランド状のものをマット化したもの、布状に織ったもの、チョップ形状のままのものなど、種々の形状で使用することができる。これらの補強材は、その表面をシランカップリング材等のカップリング剤で処理したものが、樹脂との密着性を向上させる上で好ましい。配合量は、特に制限はないが、通常10重量%以上、好ましくは20〜60重量%である。
【0018】
また、酸化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、発泡剤、難燃剤、摺動付与剤、エラストマー、ジシクロペンタジエン系熱重合樹脂およびその水添物など種々の添加剤を配合することにより、得られるポリマーの特性を改質することができる。酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、アミン系など各種のプラスチック・ゴム用酸化防止剤がある。充填剤にはミルドガラス、カーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、雲母などの無機質充填剤がある。エラストマーとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)およびこれらの水素化物などがある。
【0019】
添加剤は、通常、予め反応液のいずれか一方または双方に混合しておく。
反応射出成形に用いる金型は、必ずしも剛性の高い高価な金型である必要はなく、金属製金型に限らず、樹脂製金型、または単なる型枠を用いることができる。反応射出成形は、低粘度の反応液を用い、比較的低温低圧で成形できるためである。重合反応に用いる成分類は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で貯蔵し、かつ操作することが好ましい。また、金型のキャビティ内に反応原液を注入する前に、キャビティ内を窒素ガスなどの不活性ガスで置換することが好ましい。
【0020】
金型温度は、好ましくは、10〜150℃、より好ましくは、30〜120℃、さらに好ましくは、50〜100℃である。金型圧力は通常0.1〜100Kg/cm の範囲である。重合時間は、適宜選択すればよいが、通常、反応液の注入終了後、20秒〜20分、好ましくは、5分以下、さらに好ましくは20〜40秒である。
【0021】
本発明に係る反応射出成形方法により得られた成形体の具体的用途は、特に限定されず、水槽または浄化槽の槽体などである。特に、複数の開口部が形成される浄化槽の大型槽体を反応射出成形により成形しようとする場合に、本発明に係る金型装置およびそれを用いた反応射出成形体の製造方法は有効である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る開口部を持つ反応射出成形体の製造方法と金型装置を、図面に示す実施形態に基づき、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る金型装置の要部断面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る金型装置は、第1金型20と第2金型22とを有する。これら金型20,22の割面を合わせることで、金型装置内部には、キャビティ8が形成される。本実施形態では、第1金型20が凹状金型(キャビ型)であり、第2金型22が凸状金型(コア型)である。キャビティ8の形状は、得られる成形体の形状に対応し、本実施形態では、複数の開口部12を持つ浄化槽の槽体形状である。槽体の全体形状(キャビティ8の全体形状)は、図2に示すキャビティ8の形状と同様である。
【0024】
本実施形態では、成形体の各開口部12に対応する部分で、リング状の型合わせ用凸部26が第2金型22にそれぞれ形成してあり、その内周側に、シール溝28がそれぞれ形成してある。型合わせ用凸部26の半径方向幅bは、特に限定されないが、好ましくは5〜15mm程度である。この幅bが余りに狭いと、その内周側にシール溝28を形成することが困難になり、この幅bが余りに広いと、シール溝28を形成する意味がなくなる。
【0025】
シール溝28の内周側には、型合わせ用凸部26よりも低い平面32が形成してある。第1金型20と第2金型22とが型締めされた状態で、型合わせ用凸部26の頂面は、第2金型20のキャビティ内周面に圧接する必要があることから、高寸法精度で形成される。これに対し、シール溝28の内周に位置する平面32は、第2金型20のキャビティ内周面に圧接する必要がないので、型合わせ用凸部26の頂面に比較して、粗い寸法精度で良い。
【0026】
シール溝28には、シール部材としてのOリング30が装着される。Oリングの形状は、その断面形状が円、矩形または図4(後述する)のような変形の矩形が用いられる。Oリング30は、たとえばNBR、シリコンゴム、IR、EPDM、フッ素ゴムなどで構成される。Oリング30の大きさは、開口部12の大きさなどに応じて決定され、その横断面の直径は5〜20mm程度が好ましい。シール溝28の寸法形状は、このシール溝28内にOリング30が収容され、第1金型20と第2金型22とが型締めされた状態で、Oリング30がシール溝28内の金型20,22間で、所定の潰し代にて圧縮変形するように決定される。
【0027】
本実施形態では、第2金型22を鋳造アルミニウムで構成してある。第1金型20は、電鋳製金型で構成してある。電鋳製金型から成る第1金型20は、金属メッキ層の裏面をレジコンで裏打ちしてある。金属メッキ層は、たとえばニッケルなどで構成してあり、レジコンは、樹脂と、アルミニウム粉末などとを含むコンクリートで構成してある。第1金型20および第2金型22には、図示省略してある熱媒体用流路が形成してある。本実施形態では、熱媒体による温度制御により、両金型20,22の温度制御を行う。両金型の温度は、必ずしも同一温度ではなくても良く、たとえば第1金型20を70°Cに設定し、第2金型22を45°Cに設定することもできる。
【0028】
次に、本実施形態に係る金型装置を用いた反応射出成形方法について説明する。
まず、図1に示す金型20,22相互の割面を合わせ、型締めする。型締め時の圧力は、特に限定されないが、0.1〜100Kg/cm である。型閉の時点では、金型内部には、反応原液が注入されておらず、金型内の温度は、温度制御された各金型自体の温度であり、40〜100°C程度である。
【0029】
型締めと同時に、本実施形態では、図示省略してあるパージ手段により、キャビティ内部を窒素パージする。このパージにより、キャビティ8の内部は、窒素ガスで置換され、キャビティ8の内部は、1〜3kg/cm 程度の窒素ガスで満たされる。窒素パージを行うことで、キャビティ内の湿気を追い出し、反応原液の失活を防止することができ、成形品の表面での反応性が良好になり、かつ金型の内周面の汚れも防止できる。この窒素パージは、反応原液の注入開始直前まで行われる。
【0030】
次に、ポンプを用いて、A液タンクおよびB液タンクからミックスチャンバへ、反応原液となる配合液をそれぞれ供給し、チャンバ内で混合し、スプール、ランナーおよびフィルムゲートを通してキャビティ8内部に反応原液を注入する。本実施形態では、反応射出成形は、ノルボルネン系モノマーを用いた反応射出成形である。本実施形態において使用するモノマーは、ジシクロペンタジエンやジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン等のノルボルネン環を有するシクロオレフィンである。
【0031】
ノルボルネン系モノマーを用いた反応射出成形において使用することができるメタセシス触媒は、六塩化タングステン、トリドデシルアンモニウムモリブデート、トリ(トリデシル)アンモニウムモリブデート等のモリブデン酸有機アンモニウム塩等のノルボルネン系モノマーの塊状重合用触媒として公知のメタセシス触媒であれば特に制限はないが、モリブデン酸有機アンモニウム塩が好ましい。
【0032】
活性剤(共触媒)としては、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド等のアルキルアルミニウムハライド、これらのアルコキシアルキルアルミニウムハライド、有機スズ化合物等が挙げられる。
反応射出成形の前準備として、ノルボルネン系モノマー、メタセシス触媒及び活性剤を主材とする反応射出成形用材料をノルボルネン系モノマーとメタセシス触媒とよりなるA液と、前記のノルボルネン系モノマーと活性剤とよりなるB液との安定な2液に分けて、それぞれを別のタンクに入れておく。
【0033】
前述したように、反応射出成形に際しては、この2液を混合し、次いで、この混合液を、スプール、ランナーおよびフィルムゲートを通してキャビティ8内部に注入する。注入開始から注入終了までの時間は、成形品の大きさなどにより決定されるが、本実施形態では、40秒である。本実施形態では、反応原液となる配合液の配合活性は、40秒の3〜5倍に設定してある。
【0034】
注入終了後に重合反応が開始し、反応終了後、除冷され、注入終了後の約120〜150秒後に、型開きされ、開口部12を持つ成形体が取り出される。
本実施形態では、反応射出成形体の開口部12に対応する第1金型22の一部に、開口部12の形状に沿って、型合わせ用凸部26とシール溝28とが形成してあり、このシール溝28にOリング30が装着してある。このため、キャビティ8内へ反応原液の注入に際し、金型20,22間の隙間がOリング30によりシールされ、Oリング30の内周側に反応原液は回り込まない。その結果、成形体の開口部12に生じるおそれのあるバリは、型合わせ用凸部26の頂面と第1金型20のキャビティ内周面との間のみである。したがって、バリの大きさを最小限にすることができ、成形後のバリ取りの作業が容易である。
【0035】
また、Oリング30の作用により、Oリング30の内周側に反応原液が回り込まないことから、反応原液へのエアの巻き込みも防止でき、結果として、成形体にボイドなどが生じ難くなる。さらに、Oリング30の作用により、Oリング30の内周側に反応原液が回り込まないことから、シール溝28の内周側の平面32は、シール溝が形成されていない第1金型20の内周面に圧接する必要がなく、粗い寸法精度の平面でよい。高寸法精度が要求される部分は、型合わせ用凸部26の頂面のみである。したがって、本実施形態では、高寸法精度が要求される部分を必要最小限にすることができ、金型装置の製造コストを低減することができる。
【0036】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、型合わせ用凸部26、シール溝28および平面32を、凸型である第2金型22に形成したが、本発明では、型合わせ用凸部26、シール溝28および平面32を、凹型である第1金型20のキャビティ内周面に形成しても良い。
【0037】
また、シール部材としては、断面円形のOリングに限らず、図4に示すように、円形中空部40を有すると共に、圧接用凸部42が長手方向に沿って形成してあるゴムパッキン30aであっても良い。このパッキン30aは金型の割面のシール性に特に優れている。
【0038】
【実施例】
次に、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
第1金型20として電鋳製の金型を準備し、第2金型22としてアルミニウム鋳造品製の金型を準備した。第2金型22には、図1に示すように、成形体の開口部12に対応する部分で、リング状の型合わせ用凸部26とシール溝28と平面32とを形成し、シール溝28には、Oリング30を装着した。リング状の型合わせ用凸部26の外径は、580mmであり、その幅bは10mmであった。Oリング30としては、NBR製の横断面外径が10mmのものを用いた。シール溝30の溝深さは、Oリング30の潰し代が1.0mmとなるように決定した。
【0039】
型合わせ用凸部26の頂面は、平面32よりも2.0mm突出しており、凸部26の頂面のの寸法精度は、±0.1mmであり、平面32の寸法精度は、±0.5mmであった。図2に示すように、成形体の長手方向に三つの開口部12が形成されるようなキャビティの形状とした。
【0040】
各開口部12の中心間の距離は、950mmであった。成形体の長手方向長さは、3364mmであった。成形体の高さは、833mmであった。成形体の横幅は、1424mmであった。この成形体は、10人槽の浄化槽として用いられる。
反応射出成形に際しては、ジシクロペンタジエン(DCP)85%と、非対称型シクロペンタジエン三量体15%を用い、これにスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(クレイトン1170、シェル社製)を5%とフェノール系の酸化防止剤であるイルガノックス1010(チバガイギー社製)を2%溶解させ、これを2つの容器に入れ、一方にはモノマーに対しジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)を40ミリモル濃度、n−プロパノールを44ミリモル濃度、四塩化ケイ素を20ミリモル濃度となるように添加した(A液)。他方には、モノマーに対しトリ(トリデシル)アンモニウムモリブデートを10ミリモル濃度となるように添加した(B液)。
【0041】
このようにして調製されたA液およびB液を、それぞれギヤーポンプにて1対1の容積比となるようにパワーミキサーに送液し、次いで、金型装置のキャビティ内に、第1金型20の温度70°C、第2金型22の温度45°Cおよび注入圧力2.0Kg/cm 以下で注入した。金型内では3分間の反応を行ない、これらの一連の操作は、窒素雰囲気下で行った。
【0042】
その後、金型より成形体を取り出して、3つの開口部12を持つ成形体を得た。各開口部12に形成されたバリは、最大で、型合わせ用凸部26の幅bに対応する幅であり、その除去作業はきわめて容易であった。
また、成形体にはボイドがほとんど観察されなかった。
【0043】
比較例1
成形体の開口部12に対応する金型部分に、シール溝28を形成せず、開口部12に相当する面積で±0.2mmの寸法精度の型合わせ用凸部26を形成し、Oリング30を装着しない以外は、前記実施例1と同様にして反応射出成形を行った。
【0044】
成形体の各開口部には、開口部の全面積の半分程度のバリが形成され、しかも開口部の近くにおいて成形体にはボイドが観察された。
【0045】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、キャビティ内へ反応原液の注入に際し、金型間の隙間がシール部材によりシールされ、開口部の内周側に反応原液は回り込まず、成形体の開口部に生じるバリを最小限にすることができる。したがって、成形後のバリ取りの作業の容易化が図れる。
【0046】
また、シール部材の作用により、開口部の内周側に反応原液が回り込まないことから、反応原液へのエアの巻き込みも防止でき、結果として、成形体にボイドなどが生じ難くなる。さらに、シール部材の作用により、開口部の内周側に反応原液が回り込まないことから、シール溝が形成された第1金型または第2金型の内周側の平面は、シール溝が形成されていない第2金型または第1金型の内周面に圧接する必要がなくなり、粗い寸法精度の平面でよい。高寸法精度が要求される部分は、シール溝が形成された第1金型または第2金型の外周側に形成された型合わせ用凸部の頂面のみである。したがって、本発明では、高寸法精度が要求される部分を必要最小限にすることができ、金型装置の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る金型装置の要部断面図である。
【図2】図2は金型装置の全体構成図である。
【図3】図3は従来例に係る成形体のバリを示す平面図である。
【図4】図4はシール部材の断面形状を示す断面図である。
【符号の説明】
8… キャビティ
12… 開口部
20… 第1金型
22… 第2金型
26… 型合わせ用凸部
28… シール溝
30… Oリング(シール部材)
30a…ゴムパッキン(シール部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型と第2金型とを有する金型装置のキャビティ内に反応原液を注入し、反応射出成形を行い、開口部を持つ反応射出成形体を製造する方法であって、
前記反応射出成形体の開口部に対応する前記第1金型または第2金型の一部に、開口部の形状に沿って、リング状のシール溝を形成し、
前記シール溝が形成された第1金型または第2金型の、該リング状のシール溝の外周側に幅5〜15mmのリング状の型合わせ用凸部を形成し、
前記シール溝にシール部材を装着し、前記第1金型と第2金型とを型締めし、
前記型合わせ用凸部の頂面を、シール溝が形成されていない第2金型または第1金型の内周面に圧接し、
前記シール部材が第1金型と第2金型との間の隙間をシールした状態で、金型装置のキャビティ内に反応原液を注入し、反応射出成形を行うことを特徴とする、開口部を持つ反応射出成形体の製造方法。
【請求項2】
第1金型と第2金型とを有し、開口部を持つ反応射出成形体を製造するための金型装置であり、
前記反応射出成形体の開口部に対応する前記第1金型または第2金型の一部に、開口部の形状に沿って、リング状のシール溝が形成してあり、
前記シール溝が形成された第1金型または第2金型の、該リング状のシール溝の外周側に幅5〜15mmのリング状の型合わせ用凸部が形成してあり、
前記シール溝には、前記第1金型と第2金型とが型締めされた状態で、第1金型と第2金型との間の隙間をシールするシール部材が装着される金型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3555331号(P3555331)
【登録日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【発行日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−136077
【出願日】平成8年5月30日(1996.5.30)
【公開番号】特開平9−314609
【公開日】平成9年12月9日(1997.12.9)
【審査請求日】平成14年11月28日(2002.11.28)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【参考文献】
【文献】実開平04−083619(JP,U)
【文献】特開平07−096539(JP,A)
【文献】実開昭62−058618(JP,U)
【文献】実開昭62−185015(JP,U)
【文献】特開平06−114888(JP,A)
【文献】実開平06−021915(JP,U)
【文献】実開昭62−111813(JP,U)
【文献】実開昭61−180708(JP,U)