説明

開口部装置

【課題】取り付け容易である蝶番を備えた開口部装置を提供する。
【解決手段】建物開口部の縁に沿って設けられた枠体11と、該枠体内に配置された障子19と、障子の1辺に具備され、該障子を開閉可能に枠体に連結する蝶番30と、を備える開口部装置10であって、枠体が該枠体の蝶番が取り付けられる位置に突出して配置されたネジ50、50、50を有し、蝶番が、該蝶番をネジの頭部と枠体との間に係止することを可能にする第一スリット38、38、38と、ネジを第一スリットまで内側を通して導入可能に設けられた第二スリット37、37、37と、を備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅や公共施設等の建物開口部に好適に用いられる開口部装置に関し、詳しくは開閉障子を枠体に取り付ける際に、該開閉障子の取り付け性を向上させることができる蝶番を備える開口部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるスイング形式の開口部装置(以降、単に「開口部装置」と記載することがある。)は、建物開口部の四辺に沿って備えられた枠体と、閉鎖時において枠体の内側に配置される障子と有している。そして、枠体の1辺と障子の1辺とが蝶番によって連結されることにより、該蝶番が備えられた辺を軸として障子を回動させ、その開閉をさせることができるように構成されている。
【0003】
従来における蝶番の一例を図8に示した。従来の開口部装置に備えられる蝶番130は、軸131と、該軸131を軸として回動可能な枠体側回動板135と、軸131を軸として回動可能な障子側回動板145とを備えている。そして枠体側回動板135及び障子側回動板145には、板厚方向に貫通した貫通孔が設けられていた。そして、該貫通孔を貫通して配置されるネジ150、150、…により、枠体側回動板135は枠体に、障子側回動板145は障子にそれぞれ固定されていた。
【0004】
ここで、枠体側回動板135及び障子側回動板145に設けられた貫通孔は、上記ネジ150、150、…のネジ部が貫通することができる単なる孔である。
【0005】
以上のような構成を有する蝶番を備える開口部装置は、文献等によらずとも通常に用いられており、当業者に採用されているものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の蝶番を備えた開口部装置は、その組み立てにおいて、始めに蝶番をネジにより障子に固定し、次に蝶番の取り付けられた障子の該蝶番を枠体に取り付けるものであった。このとき、障子に取り付けられた蝶番の孔を枠体に設けられた取り付け用のネジ孔に合わせなければならず、障子を他の人や治具により保持しておく必要があった。
【0007】
さらには、近年における開口部装置の多様化によって、窓がスイングできる角度が小さく制限されたものも増加する傾向にある。このときに、これまで蝶番のネジ止めをするために窓を開放して確保していたネジ止めの作業スペースをこれまで通りに確保することが困難になり、さらに蝶番の取り付けが困難になる傾向にある。
【0008】
そこで、本発明は取り付け容易である蝶番を備えた開口部装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
請求項1に記載の発明は、建物開口部の縁に沿って設けられた枠体(11)と、該枠体内に配置された障子(19)と、障子の1辺に具備され、該障子を開閉可能に枠体に連結する蝶番(30)と、を備える開口部装置(10)であって、枠体が該枠体の蝶番が取り付けられる位置に突出して配置されたネジ(50、50、50)を有し、蝶番が、該蝶番をネジの頭部と枠体との間で該ネジに係止することを可能にする第一スリット(38、38、38)と、ネジを第一スリットまで内側を通して導入可能に設けられる第二スリット(37、37、37)と、を備える開口部装置を提供することにより前記課題を解決する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の開口部装置(10)を製造する方法であって、蝶番(30)を障子(19)に取り付ける工程と、ネジ(50、50、50)を予め枠体(11)に取り付ける工程と、第二スリット(37、37、37)内をネジが移動するように障子に取り付けられた蝶番を移動させ、ネジを第一スリット(38、38、38)の内側まで導入する工程と、蝶番を第一スリットを介してネジに係止する工程と、ネジを締め付け、蝶番を枠体に固定する工程と、を有する開口部装置の製造方法を提供することにより前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、障子に取り付けられた蝶番をさらに枠体に取り付けるとき第二スリットにより導入され、位置決めが行われ、さらに第一スリットにより係止される構造とされているので、1人でも当該開口部装置の組み立てをすることできる。そしてその組み立ても容易である。従って、障子の開閉角度が制限される開口部装置であっても安定して障子が係止されているため円滑に枠体への固定作業をすることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、容易に、かつ、確実に請求項1に記載の開口部装置の製造をすることができる。そしてこの製造は1人でも可能である。
【0014】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0016】
図1は、本発明の第一実施形態にかかる開口部装置10が使用される建物1の外観を示す正面図である。建物1は、1階及び2階からなり、各階に開口部を有している。1階には玄関5や窓3が、2階にも窓4が備えられている。2階にはさらにスリット状の開口を備え、該開口に本発明の開口部装置10が配置されている。開口部装置10は、このような開閉可能なスリット窓に好適に使用されるが、スリット窓に限らずあらゆる種類の窓にも適用が可能である。また、建物の種類も住宅に限定されず、公共施設やオフィスなどの大型建物にでも適用できる。図1中の符号2は建物1の外壁2を示している。
【0017】
図2は第一実施形態にかかる開口部装置10の正面図である。図2(A)は室外視正面図、図2(B)は室内視正面図である。開口部装置10は、建物1に設けられた開口部の縁に沿って備えられた枠体11と、該枠体11内に配置される障子19とを有している。枠体11は、縦枠12、13及び横枠14、15が組み合わせられて枠状体が形成されることにより構成されている。本実施形態では、いわゆる横通しの形態の枠体11である。障子19は、ガラスパネル25と該ガラスパネル25の縁に取り付けられた框20とを備えている。框20は、縦框21、22及び横框23、24により構成されている。各部材の位置関係は後で説明する。本実施形態の開口部装置10は、図2(A)に示すように、開口部装置10を室外側から見ると建物の外壁2、框20及びガラスパネル25しか見えず、開口部装置10を室内側から見ると図2(B)に示すように建物の室内側壁6(図3参照)、枠体11及びガラスパネル25しか見えない。従ってガラスパネル25と建物の外壁2又は建物の室内側壁6との間に見える部材が従来に比べて少ないので、シンプルで開放的な印象を与えることができる。
【0018】
図3は、開口部装置10の、蝶番30が備えられた部分を含む水平断面図である。図3では紙面左が室外側、紙面右が室内側であり、障子19が閉鎖された姿勢を表している。見易さのため、一部の部材は省略又は破線で示す。図3には、開口部装置10のうち開口部の左右に鉛直に配置された縦枠12、13、縦框21、22及びガラスパネル25が現れている。そして、さらに縦枠13と縦框21とを開閉可能に連結する蝶番30が設けられている。開口部装置10に、蝶番30は図3の紙面奥/手前方向に3つ並べられて設置してあり、これらはいずれも同じように縦枠13と縦框21とを連結している。以下、各部材について説明する。
【0019】
縦枠12、13は、開口部における外壁2の端面及び室内側壁6の端部に接して取り付けられる。縦枠12、13は開口部の端面に沿って配置される片12a、13aと、該片12a、13aの室内側の一端から略直角にガラスパネル25の方向へ延在する片12b、13bと、片12b、13bのガラスパネル25側端部から片12a、13aに平行に室外方向へ延在する片12c、13cとを備えている。片12a、13aの室外側端部は室外に突出している。また、片12b、13bは、室内側壁6の室外側に設けられた切欠きに接して配置される。
【0020】
縦框21、22は、水平断面において略矩形である。該矩形を形成する片のうち、ガラスパネル25が挿入される片には、スリット21a、22aが設けられている。また、室外側にガラスパネル25と略平行に配置される片21b、22bは、そのガラスパネル25側と反対側端部が大きく延長されるように延在する。
【0021】
次に蝶番30について説明する。図4に蝶番30の外観斜視図を示した。図3、及び図4を参照しつつ蝶番30について説明する。蝶番30は、軸31と、枠体側回動板35と、障子側回動板45とを備えている。これらは、軸31に、枠体側回動板35の一端及び障子側回動板45の一端が回動自在に取り付けられることにより、いわゆる蝶番として形成されている。枠体側回動板35には、軸31に取り付けられた端部と反対側の端部に、該端部に沿って3箇所、取付スリット36、36、36が設けられている。取付スリット36、36、36は、軸31に取り付けられた端部と反対側の端面から、軸31の方向に略水平である横スリット(第二スリット)37、37、37、と、該横スリット37、37、37の軸31側端部に連結して鉛直方向に設けられた縦スリット(第一スリット)38、38、38とにより形成されている。縦スリット38、38、38の長さ(紙面上下方向長さ)は、横スリット37、37、37の幅(紙面上下方向大きさ)よりも大きくされており、上下に同じように突出するように形成されている。これにより、当該蝶番30の上下を替える必要があるような、例えば取り付ける枠体及び障子が左右開きいずれにおいても、又、内開き外開きのいずれの場合でも、蝶番30の構成は変更することなく共通して該蝶番30を適用することができる。さらに具体的な横スリット37、37、37、及び縦スリット38、38、38の幅等については後で説明する。一方、障子側回動板45には、板厚方向に貫通する3つの孔46、46、46が略垂直方向に並べられて設けられている。
【0022】
横枠14、15及び横框23、24については、上記縦枠12、13、及び縦框21、22と同様の構成を備えているのでここでは説明を省略する。
【0023】
次に、以上の構成を有する本発明の開口部装置10における各部材の配置及び組み立てられる手順等について説明する。図3からわかるように、縦枠12、13については、片12a、13aが外壁2の端面に、片12b、13bが室内側壁6の室外側端部の切欠きに接するようにそれぞれ配置され、開口部端面に固定されている。障子19は、縦枠12、13の間に配置されるが、このとき、縦框21、22の室内側端部が縦枠12、13の片12c、13cの室外側端部にパッキン等を介して当接して配置される。また、縦框21、22の片21b、22bは、室外正面視で縦枠12、13を隠蔽するように配置される。
【0024】
横枠14、15及び横框23、24の配置については、上記縦枠12、13及び縦框21、22と同様の説明が該当するのでここでは省略する。
【0025】
かかる配置の枠体11と障子19とは、上記のように縦枠13と縦框21とが蝶番30により連結されることで、スイング形式で障子19を開閉することができる。次に蝶番30の取り付け手順について説明する。図5は、蝶番30の取り付け手順の一例を(a)〜(c)で順を追って模式的に示した図である。図5(a)に至る前には、蝶番30を障子19の縦框21にネジ等の固定部材で取り付ける工程と、縦枠13の所定位置にネジ50、50、50を予め取り付けておく工程を有している。ここで所定位置とは、蝶番30の取付スリット36、36、36が配置される位置に対応する。また、このときネジ50、50、50は、ネジ50、50、50の頭部が紙面手前に緩められた姿勢とされており、該ネジ50、50、50の頭部と縦枠13との間には所定の間隙が設けられている。この間隙は、少なくとも蝶番30の枠体側回動板35の板厚より大きいものである。以上の工程を経て図5(a)に示した姿勢とされる。
【0026】
かかる姿勢から、ネジ50、50、50を取付スリット36、36、36の横スリット37、37、37内を移動させ、縦スリット38、38、38内まで到達させる工程により、図5(b)に示したようになる。このとき、ネジ50、50、50が横スリット37、37、37内を円滑に移動することができるようにするため、横スリット37、37、37のスリット幅(図5における紙面上下方向距離)は、ネジ50、50、50のネジ部の径より大きく形成されていることを要する。この図5(a)、図5(b)における一連の作業は、複数人による必要はなく、一人でも十分に行うことができる。
【0027】
次に、図5(b)に示した姿勢から、障子19を保持している手を離すと、自重により障子19は下方に移動する。これに追随して蝶番30も移動するので、縦スリット38、38、38と、ネジ50、50、50とは図5(c)に示した姿勢となる。これは、蝶番30がネジ50、50、50に、つまりは、障子19がネジ50、50、50に引っ掛かって係止されたことを意味する。この工程により作業者が手を離しても障子19は落下しないので、最後にネジ50、50、50を締め付けて固定すればよい。ここで、縦スリット38、38、38の幅については、上記動作をさせることを考えると、ネジ50、50、50のネジ部より大きく、ネジ50、50、50の頭部よりも小さく形成されている必要がある。
【0028】
以上のように、本発明の開口部装置10に備えられる蝶番30によれば、その取り付け作業を1人で行うことができ、該開口部装置10の組み立て、施工において作業効率の高いものとすることができる。そして、その取り付け自体も従来に比べて容易とすることができる。
【0029】
ここでは、すでに建物開口部に取り付けられた枠体11に、蝶番30が取り付けられた障子19を組み付けるという手順を示した。しかし、開口部装置10が組み立てられる態様はこれに限定されることなく本発明の効果を享受することができる。これには例えば、開口部装置10の製造工場において、予め組み立てられる場合を挙げることができる。
【0030】
本実施形態の開口部装置10は、上記したような枠体11及び框20の形状を有しているので、図6に示したように障子19を開放させたときに、片13aと縦框21との関係で、該障子19を大きく開放することができない形式の開口部装置である。かかる場合には、従来においては、蝶番のネジを締める作業をするスペースを大きく確保できないため、障子を保持する人と、ネジを締める人との間で困難が生じる場合もあった。しかし本発明の開口部装置10では、ネジを締める際には障子19はすでに係止して固定されているので、上記不具合は生じない。
【0031】
ただし、枠体の断面形状、框の断面形状は上記第一実施形態で説明したものに限定される必要はなく、通常用いられるあらゆる形態の断面形状の枠体、框を用いてもその効果を享受することができる。
【0032】
また、その他の部分において、例えばガラスパネルについては、該ガラスパネルに代えて通常の開口部装置に利用されるあらゆる材質が使用可能である。例えば採光の観点から考えるとアクリル樹脂パネル、ポリカーボネートパネルを使用することができる。また、ロック機構やシール材等、その他通常の開口部装置が備える部材は本発明の開口部装置にも使用することができる。
【0033】
図7は第二実施形態にかかる本発明の開口部装置に備えられる蝶番30aの枠体側回動板35aに注目して示した図である。第二実施形態にかかる開口部装置では、蝶番30aの取付スリット36a、36a、36aの形態が第一実施形態の開口部装置10の蝶番30の取付スリット36、36、36と異なるのみで、他の部分は同じ構成なので、当該他の部分については説明を省略する。
【0034】
蝶番30aの取付スリット36a、36a、36aでは、該取付スリット36a、36a、36aの縦スリット38a、38a、38aが横スリット37a、37a、37aに対して、上側のみに延在し、突出して配置されている。このように構成しても、本発明の上記の効果を得ることができる開口部装置とすることができる。
【0035】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う開口部装置もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の開口部装置が使用される1つの実施形態にかかる建物の外観を示す正面図である。
【図2】第一実施形態にかかる開口部装置の正面図である。
【図3】第一実施形態にかかる開口部装置の蝶番を含む部位における水平方向断面を示す図である。
【図4】蝶番の斜視図である。
【図5】開口部装置の組み立ての手順のうち、蝶番部分の組み立てを順を追って示した模式図である。
【図6】開口部装置の障子が開放された姿勢の水平断面図である。
【図7】第二実施形態にかかる本発明の開口部装置に備えられる蝶番の一部を示した図である。
【図8】従来の蝶番が取り付けられた開口部装置の蝶番部分に注目して示した模式図である。
【符号の説明】
【0037】
1 建物
2 外壁
3 窓
4 窓
5 玄関ドア
6 室内側壁
10 開口部装置
11 枠体
12 縦枠
13 縦枠
14 横枠
15 横枠
19 障子
20 框
21 縦框
22 縦框
23 横框
24 横框
25 パネル
30 蝶番
31 軸
35 枠体側回動板
36 取付スリット
37 横スリット(第二スリット)
38 縦スリット(第一スリット)
45 障子側回動板
46 孔
50 ネジ(固定部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物開口部の縁に沿って設けられた枠体と、該枠体内に配置された障子と、前記障子の1辺に具備され、該障子を開閉可能に前記枠体に連結する蝶番と、を備える開口部装置であって、
前記枠体が
該枠体の前記蝶番が取り付けられる位置に突出して配置されたネジを有し、
前記蝶番が、
該蝶番を前記ネジの頭部と前記枠体との間で該ネジに係止することを可能にする第一スリットと、
前記ネジを前記第一スリットまで内側を通して導入可能に設けられる第二スリットと、
を備える開口部装置。
【請求項2】
請求項1に記載の開口部装置を製造する方法であって、
前記蝶番を前記障子に取り付ける工程と、
前記ネジを予め前記枠体に取り付ける工程と、
前記第二スリット内を前記ネジが移動するように前記障子に取り付けられた前記蝶番を移動させ、前記ネジを前記第一スリットの内側まで導入する工程と、
前記蝶番を前記第一スリットを介して前記ネジに係止する工程と、
前記ネジを締め付け、前記蝶番を前記枠体に固定する工程と、を有する開口部装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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