説明

開放式気管吸引用のドレープ

【課題】手術部位の病原体からの保護を向上させたサージカルドレープを提供する。
【解決手段】本発明のサージカルドレープは、ベースシートと、ドレープを貫通する接続要素とを含む。前記接続要素は、医療器具のコネクタとオス型若しくはメス型嵌合可能に構成され、かつ前記ベースシートの前記中央領域の前記開口部を塞ぐように構成されている。接続要素は、中央領域の上面の上方及び中央領域の下面の下方に部分的に延在することが望ましい。ベースシート及び/または該ベースシートの中央領域は、液体吸収材料層またはバリア繊維あるいはその両方を含み得る。液体吸収材料またはバリア繊維は、その表面層上またはそれ自体の内部に殺菌剤を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放式気管吸引に用いられるドレープに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な種類のサージカルドレープが知られており、手術処置の際に患者の手術部位を無菌に保つために使用されている。従来、サージカルドレープはリネンまたは織布であり、毎回使用後は再利用のために滅菌される。最近では、不織紙または不繊維がドレープの要部を形成する使い捨て型の無菌ドレープが導入されている。多くの場合、構造的な強度を付与するため及び手術部位からの体液を吸収するために、使い捨て型の手術用ドレープの縁部または開窓部周囲に補強領域が形成される。また、多くの使い捨て型ドレープでは、ドレープ領域及び補強領域が異なる材料の多層構造から成り、各層がドレープに異なる特性を付与するように構成されている。例えば、スパンボンド繊維、メルトブローン繊維、及びポリマーフィルムが、使い捨て型ドレープの層として使用されている。
【0003】
従来、サージカルドレープは、四角形の形状(ただし、任意の形状であり得る)であり、ドレープの縁部から開口部が形成されたより中央の領域へ向かう切り込みを有していた。気管気道開口、気管吸引、気管支鏡検査などの挿管処置を伴う医療処置では、チューブのシャフトが、患者の顔の表面を超えて延在するため、露出したチューブが病原体に感染する及び汚染される可能性がある。
【0004】
例えば、従来の気管吸引中は、チューブシャフトは患者の顔の表面を超えて延在しドレープにより覆われていないので、吸引カテーテルの挿入先端が保護されていないチューブシャフトまたはコネクタと不用意に接触してしまう可能性があった。そのため、下気道に病原体が偶発的に伝播する危険性がある。
【0005】
したがって、例えば、開放式気道吸引中は、医療従事者は気管チューブの位置を手動で操作する必要があり、そのためには、チューブシャフトの外側との物理的接触を必要とし、チューブシャフトの外側に存在する病原体で操作する手または手袋が汚染されることがあった。
【0006】
よって、患者の体外に延在するチューブを用いる医療処置中に、チューブシャフトを病原体から保護する必要が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6、055、987号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、医療処置に際して患者を覆うためのドレープを提供する。このドレープは、上面、下面、複数の縁部及び中央領域を備えると共に、中央領域に画定され医療処置部位の上方に位置するように適合された開口部を有するベースシートを含む。ドレープはまた、医療器具のコネクタとオス型若しくはメス型嵌合可能に構成され、かつドレープを貫通すると共に開口部を塞ぐように構成された接続要素を含む。
【0009】
接続要素は、中央領域の上面の上方及び中央領域の下面の下方に部分的に延在することが望ましい。ベースシート及び/または該ベースシートの中央領域は、液体吸収材料層またはバリア繊維あるいはその両方を含み得る。液体吸収材料またはバリア繊維は、その表面層上またはそれ自体の内部に殺菌剤を含み得る。
【0010】
開口部を画定するベースシートの中央領域は、医療器具のコネクタに接続要素を挿入したときに医療器具を取り囲むように構成され、かつ、医療器具を直接触らずに操作できるように構成されている。開口部を画定するベースシートの中央領域はプラスチック膜を含み得、プラスチック膜は透明であり得る。さらに、接続要素は、ベースシートの上面を超えて延在するオス型またはメス型の外側ポートを有し得る。外側ポートは、約10ないし20mmの直径を有し得る。
【0011】
医療器具は、気管内チューブ、気管切開チューブ、気管支鏡、血管カテーテル、泌尿器カテーテル、または、医療処置の少なくとも一部の際に身体から外側に向かって延在する任意の医療器具であり得る。
【0012】
ドレープは、接続要素が医療器具のコネクタと接続できるように、予め折り畳まれ得る。さらに、ドレープは、ベースシートに設けられたトレイを含み得る。
【0013】
ドレープが予め折り畳まれているとき、開口部を画定するベースシートの中央領域は、医療器具及びそのコネクタを受容するように構成された中央ダクトによってさらに画定される。
【0014】
本発明の別の態様では、医療処置に際して患者の周囲に滅菌野を形成する方法が提供される。この方法は、上面、下面、複数の縁部及び開口部を備えると共に、開口部を塞ぐ接続要素を有するベースシートを含むドレープを提供するステップと、開口部を、医療処置部位の上方に位置させるステップと、接続要素を医療器具のコネクタに接続するステップと、医療器具を直接触らずに操作するステップとを含む。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、気管、気管支鏡、血管または泌尿器処置に際して患者を覆うためのドレープが提供される。このドレープは、上面、下面、複数の縁部及び中央領域を備えると共に、前記中央領域に画定され医療処置部位の上方に位置するように適合された開口部を有するベースシートを含む。ドレープはまた、医療器具のコネクタとオス型若しくはメス型嵌合可能に構成され、かつドレープを貫通する共に開口部を塞ぐように構成された接続要素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】気管内チューブが挿管された患者を覆うサージカルドレープの図である。
【図2】ベースシートの中央領域、中央領域の開口部、及び、開口部と一体化された任意選択のメス型外側ポートを有する接続要素を示す断面図である。
【図3】ベースシートの中央領域、中央領域の開口部、及び、開口部と一体化された任意選択のオス型外側ポートを有する接続要素の断面図である。
【図4】ベースシートの中央領域を画定する中央ダクトの断面図である。
【図5】折り畳まれたサージカルドレープの角端部の断面図である。
【図6】サージカルドレープを収納するパッケージの図である。パッケージは、その端部に、ミシン目を有する。
【図7】気管内チューブが挿管された患者を覆う、トレイが設けられたサージカルドレープの図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
【0018】
本明細書中で使用される「殺菌剤(germicidal agent)」という用語は、微生物を殺滅する、あるいは微生物の増殖を遅らせる化学物質またはその他の物質を指す。今日使用される殺菌剤には、抗細菌物質(細菌を殺滅する)、抗ウイルス物質(ウイルスを殺滅する)、抗真菌物質(真菌を殺滅する)、及び抗寄生虫物質(寄生虫を殺滅する)が含まれる。殺菌剤の主要カテゴリーは表面殺菌剤(surface disinfectant)であり、別名「殺生物剤」(biocide)として知られている。
【0019】
「殺生物剤」という用語は、例えば殺虫剤などの、生きている微生物を通常は広範囲に不活性化する化学物質を表す一般的な用語である。殺生物剤は、殺菌作用に幅があるので、増殖を抑制する「静菌性(-static)」(例えば、静細菌性、静真菌性、静胞子性)や、標的生物を殺滅する「殺滅性(-cidal)」(例えば、殺細菌性、殺真菌性、殺胞子性、殺ウイルス性)などの用語を用いるとより具体的になる。殺生物剤は、複数の標的及び作用機序を有する。殺生物剤の作用機序には、例えば、細菌性微生物の外側細胞膜の物理的破壊及び恒久的破壊などが含まれる。有用な殺生物性化学物質のいくつかの例には、ビグアニド(例えば、クロルヘキシジン、アレキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、及びそれらの関連する塩)、ハロゲン放出剤(例えば、ヨード、ヨードフォア、次亜塩素酸ナトリウム、N−ハラミンなど)、安定化酸化剤(例えば、二酸化塩素)、安定化過酸化物(例えば、過酸化尿素、過酸化物マンニトール)、金属含有種及びそれらの酸化物(例えば、粒子形態の、あるいは支持マトリックス(例えばゼオライト若しくはポリマー)に組み込まれた銀、銅、セレンなど)、亜硫酸塩(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム)、ビスフェニル(例えば、トリクロサン、ヘキサクロロフェンなど)、第四級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、セトリミド、塩化セチルピリジウム、4級化セルロース、他の4級化ポリマーなど)、様々な「自然発生的」物質(例えば、緑茶または紅茶抽出物由来のポリフェノール、クエン酸、キトサン、アナターゼTiO、トルマリン、竹抽出物、ニーム油など)、ヒドロトロープ類(例えば、強力な乳化剤)、及びカオトロピック剤(例えば、アルキルポリグリコシド)、並びにそれらの相乗的組み合わせが含まれる。基材の化学的性質(ポリオレフィン対セルロース・ベース材料)及び製品への組み込み方法(局所的対グラフト)に応じて、最終的に要求される製品特性を得るために、上記の化学物質の多くを単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0020】
詳細な説明
【0021】
本発明のドレープは、手術部位の周囲領域への病原体の侵入を減少させるように設計されている。具体的には、本発明のドレープは、手術若しくは医療処置の少なくとも一部の間に手術若しくは医療処置用器具が体内から外側に向かって延在するときに、手術若しくは医療処置用器具上に存在する病原体が手術若しくは医療処置部位の周囲に侵入するのを防止するように設計されている。病原体の伝播防止は、前記器具を接続要素と接続させた後に、前記器具が外気に露出しないようにドレープ材料で覆うことにより達成される。さらに、病原体の伝播防止は、手術若しくは医療処置の際に、医療従事者が手術若しくは医療処置用器具を直接的に触るのを防止することにより実現される。これに関し、医療従事者は、医療処置中に、前記器具自体ではなくドレープ材料を触ることにより、前記器具を操作することができる。したがって、ドレープの使用は、病原体が手術器具上に伝播する、あるいは病原体が手術器具から医療従事者の手袋上に伝播する危険性を著しく低くすることができる。このことは、外因性感染が、手術若しくは医療処置部位を通って患者の体内に波及する機会を著しく減少させる。
【0022】
本発明に従って作製されたサージカルドレープは、一般的に、ドレープの使用用途や所望する性質に応じて、任意の様々なサイズ及び形状を有することができる。例えば、あるサージカルドレープの構造が、特許文献1に記載されている(特許文献1は、全ての目的のために、引用することを以って本明細書の一部となす)。
【0023】
以下、本発明を、いくつかの実施形態を示す図を参照して説明する。これらの実施形態は本発明の範囲を完全に示すものではなく、本発明は、添付された特許請求の範囲に含まれ得る様々な変形及び均等物の形態で広範囲に適用可能であることは、当業者であれば理解できるであろう。さらに、或る実施形態の一部として説明または図示された特徴は、それを別の実施形態に適用することにより、さらに別の実施形態を生じさせ得る。そのような変形或いは実施形態はすべて、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0024】
簡潔さ及び簡明さの理由から、本明細書に記載されているあらゆる数値範囲は、その範囲内のすべての値を含むことを意図するものであり、記載された特定範囲内のすべての数値を末端値とする小範囲を記している特許請求の範囲をサポートするものと解釈される。具体的な例を挙げると、本明細書中における1から5という範囲の開示は、1−5;1−4;1−3;1−2;2−5;2−4;2−3;3−5;3−4;及び4−5の小範囲のいずれに対しても、特許請求の範囲をサポートすると考えられる。
【0025】
図1〜3を参照すると(図2及び図3は断面図である)、ベースシート80と中央領域60とを有するサージカルドレープが示されている。ドレープは、胸領域20及び首領域180を含む身体を全体的あるいは部分的に覆い得る。ドレープのベースシート80は、上面200(患者から離れる方向を向く面)と、下面210(患者の方向を向く面)とを含む。ベースシート80は、1つまたは複数の材料から作製され得、例えば、1つまたは複数の不織層、接着層、膜層などから作製され得る。ベースシート80は、親水性、疎水性、または両方の特性を有する部分を有し得、所望の水吸収性を得るために化学的に処理され得る。ベースシート80は、バリア層に例えばメルトブローン接着層などの接着層で接合される不織表面層であることが望ましい。前記不織層は、約5〜50gsm、より好ましくは約10〜30gsm、さらに好ましくは約20gsmの坪量を有するスパンボンドポリオレフィン(すなわちプロピレン)材料シートであり得、離散的に融着されかつ空隙を有する結合の繰り返しパターンによって結合され得るか、あるいは、その他の従来の結合方法により結合され得る。メルトブローン接着層は非晶質ポリオレフィンから作製され得、例えば、約0.5〜5gsm、より好ましくは約1〜4gsm、さらに好ましくは約3gsmの割合でスパンボンド材料に塗布される。バリア層は、例えば、約0.5〜3ミル(約12.5〜75μm)、より好ましくは約1.5ミル(約37.5μm)の厚さのポリエチレン及び炭酸カルシウム膜であり得る。前記膜は、メルトブローン接着層でスパンボンド材料に積層させる前に、一方向に伸長され得る。前記膜は、水性流体及びアルコール溶液に対する不浸透性のバリアを提供する。炭酸カルシウムを封入すること、及び、その後に伸長させることにより、浸湿性を向上させることができる。不織層がベースシートの表面であり得る、または、メルトブローン接着層がベースシートの表面であり得ると考えられる。
【0026】
ベースシートには、抗微生物性物質が組み込まれ得る。抗微生物性物質を組み込む方法としては、任意の従来の方法を用いることができ、そのような方法には、例えば、繊維を押し出したり紡いだりする間や製品の作製に使用される不織布生地を製造する間に、溶融ポリマーに活性物質を溶融付加する方法;最終製品の作製に使用される布に「面性(sidedness)」を付与するあるいは付与しない局所的塗布方法;プラズマ処理、静電気付加、例えばUV、ガンマ線若しくは電子ビーム放射線源などを使用した放射線表面グラフト共重縮合、化学開始剤を使用して抗微生物活性を有するグラフト共重縮合表面を作成する方法などの他の非標準的な方法が含まれる。
【0027】
これらの抗微生物材料には、これに限定されないが、殺菌剤及び殺生物剤が含まれる。ベースシートに使用される抗微生物材料は、広範囲の病原体を破壊及び無力化することが望ましい。広範囲の病原体には、最小のグラム陽性及びグラム陰性バクテリア並びにそれらの耐性菌が含まれ、例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus:MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin resistant Enterococcus:VRE)、ペニシリン耐性肺炎球菌(penicillin resistant Streptococcus pneumoniae:PRSP)などが含まれる。抗微生物材料は、全てのバクテリア(グラム陽性、グラム陰性、抗酸性菌)及び酵母菌(例えばカンジダアルビカンスなど)を破壊または無力化することが望ましい。抗微生物材料は、全ての細菌(グラム陽性、グラム陰性、抗酸性菌)、酵母(カンジダ菌)、並びに、エンベロープ型ウイルス及び裸のウイルス(例えば、ヒトインフルエンザ、ライノウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、肝炎、HIV、単純ヘルペス、SARS、鳥インフルエンザ)を破壊または無力化することがさらにより望ましい。このことにより、処理された表面に生存している病原体の数が未処理の表面よりもより少なくなり、病原体の接触伝播を防止または最小限に抑えることができるであろう。
【0028】
使用される殺菌性組成物は、1つまたは複数の殺菌性試薬である。これらの試薬は、それ自体が有効なものもあるし、複数の試薬を組み合わせることにより、個々の試薬の効果を加算した以上の相乗効果を発揮するものもある。これらの殺菌性試薬は、加工助剤、及び/または組成物に機能的特性を提供するその他の材料とさらに組み合わせることもできる。典型的な殺菌性組成物は、例えば第四級アンモニウム化合物及び高分子ビグアニド、アルコール、並びに界面活性剤などのカチオンポリマーをベースにし得る。第四級アンモニウム化合物(例えば第四級アンモニウムセルロース及び第四級アンモニウムシロキサン)、高分子ビグアニド、界面活性剤、アルコール及び有機酸(例えば酢酸、クエン酸及び安息香酸)などのカチオンポリマーを組み合わせることによって、広範囲の病原体に対して有効な、個々の試薬の効果を加算した以上の相乗作用が得られる。他の殺菌性組成物や界面活性剤と組み合わせると、高分子ビグアニド単独で処理した場合よりも、高分子ビグアニドの殺菌効果が向上するように見える。必須ではないが、殺菌性化合物は、人間にとって無臭であることが望ましい。すなわち、殺菌性化合物は、人間の嗅覚系に検出されないことが望ましい。
【0029】
ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)塩酸塩は典型的なカチオンビグアニドであり、殺菌性表面で覆われたアセンブリを提供するのに有用である。
【0030】
Cosmocil CQ(20重量%のPHMB水溶液)またはVantocil(約3,000(g/mol)の分子量を有する、PHMBのヘテロ分散混合物)の商標名で市販されているPHMBは、グラム陽性及びグラム陰性のバクテリアに対して活性であるが、殺胞子性ではない。
【0031】
さらなる活性的殺菌性物質には、第四級アンモニウム化合物、第四級アンモニウムシロキサン、ポリ第四級アミン;金属含有種及びそれらの酸化物(粒子形態である、あるいは、支持マトリックス若しくはポリマーに組み込まれる);ハロゲン、ハロゲン放出剤若しくはハロゲン含有ポリマー、臭素化合物、二酸化塩素、チアゾール、チオシネート、イソチアゾリン、シアノブタン、ジチオカーボネート、チオン、トリクロサン、アルキルスルフォサクシネート、アルキル−アミノ−アルキルグリシン、ジアルキル−ジメチル−ホスホニウム塩、セトリミド、過酸化水素、1−アルキル−1,5−ジアゾペンタン、または塩化セチルピリジウムが含まれる。
【0032】
ベースシートに組み込まれ得る殺菌剤に使用可能な様々な殺生物剤及び加工助剤を表1に示す。表1には、殺生物剤及び加工助剤の一般的な化学名及び市販名も記載されている。AEGISTMAEM 5700(DOW CORNING, MIDLAND, ML)及びCRODACEL QM(CRODA, INC., PARSIPPANY, NJ)の名称で市販されている第四級アンモニウム化合物を、Glucopon 220 UP(Cognis Corp, Ambler, PA)の名称で市販されているアルキル−ポリグリコシドなどの界面活性剤、並びに、Hydagen CMF及びHydagen HCMF(Cognis Corp., Cincinnati, OH)の名称で市販されているグリコール酸キトサンと共に使用すると、PHMBの殺菌効果を、相乗的に著しく向上させることができる。本明細書中に記載された殺生物剤の多くは、単独でまたは組み合わせて、抗微生物作用が大幅に異なる様々な製品に使用することができることに留意されたい。
【表1】

【0033】
*内部溶解添加剤として使用する。典型的には、これらの添加剤を熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレン(PP))と混合して濃縮液を作り、作成された濃縮液をバージン樹脂と乾燥混合させ、その後に共押出しすることにより、前記添加剤を含む繊維及びウエブが作製される。前記添加剤は一般的に繊維のバルク全体に分散させられ、繊維の表面に十分な量の添加剤を存在させることにより抗微生物活性が付与される。繊維の表面に存在する添加剤の濃度は、樹脂の主要部または樹脂の種類に関係する溶融物中の添加剤濃度、処理条件及び熱履歴、樹脂の結晶化度、並びに樹脂と添加剤との相対的な熱力学的相溶性などのいくつかの要因に依存する。添加剤は、加工性のために溶解物中で熱可塑性樹脂と相溶性を持たなければならないことを理解されたい。さらに、添加剤は、熱可塑性繊維の表面へある程度広がることができるように、大気条件下では前記樹脂との相溶性が低いことが望ましい。非晶質化合物などの加工助剤は、添加剤の繊維表面への広がりを容易にするために、樹脂の主要部に加えることができる。PHMBなどの他の活性剤を、様々な他の熱可塑性樹脂と組み合わせる及び共押出しできることも理解されたい。
【0034】
図1〜3を再び参照すると、ドレープは、手術部位の上方に位置する開口部120を含み得、開口部120を介して手術処置を行うことができる。前記開口部は、任意の所望の形状及び寸法を有し得る。前記開口部は、接続要素50によって塞がれる若しくは部分的に塞がれることが望ましい。
【0035】
中央領域60は、ベースシート80の開口部120の周辺を含み得る。前記中央領域は、図示するように、開口部120を取り囲み得るか、あるいは、開口部120の1つ若しくは複数の側部に沿って配置され得る。前記中央領域は、ベースシート80と同一の材料から作製され得るか、ベースシートと異なる材料から作製され得るか、あるいは、ベースシートの材料と異なる材料とを含み得る。例えば、中央領域は、吸収性の多層構造の不織布であり得る。前記多層の1つまたは複数は、膜であり得る。ベースシートは、親水性または疎水性であり得、所望の吸収性を得るために化学的に処理され得る。中央領域は、不浸透膜の裏地層に取り付けられたメルトブローン材料の中間層にさらに取り付けられたスパンボンド層であり得る。この構造は、開口部の周辺領域の補強を可能とし、液体吸収を提供し、かつ、液体の不浸透バリアを確実にする。さらに、中央領域は、ベースシートにシーム(継ぎ目)を形成して接続される、またはシームレス(継ぎ目なく)で接続される。この点に関して、シームまたはシームレスの接続部は、ベースシート上における、ベースシートと中央領域との1つ以上の境目(transition points)240に位置する。シームまたはシームレスの接続部による接続に加えて、中央領域は、締結手段を利用してベースシートに接続され得る。締結手段の非限定的な例には、特許文献1(その全体を引用することを以って本明細書の一部となす)に記載されているフックアンドループ構造が含まれる。この点に関して、フック材料を中央領域の縁部の境目240に配置し、ループ材料をベースシートの境目に配置することができる。もちろん、それとは反対に、ループ材料を中央領域の縁部の境目240に配置し、フック材料をベースシートの境目に配置することも考えられる。
【0036】
中央領域は、手術用若しくは医療処置用器具に適合するように、様々な形状または構造を有することが望ましい。そのような形状または構造には、チューブ状の形状に限定されず、ソックスのような形状、細長いマクラカバーのような形状、円筒状チャンネル、長方形または正方形が含まれる。
【0037】
ドレープの中央領域は、器具の操作がベースシートの材料よりも容易となる、1つまたはそれ以上の柔軟材料から作製されることが望ましい。この点に関して、より柔軟にすると、触感がより良くなり、中央領域により取り囲まれた例えば気管内チューブ30などの器具の操作がより容易になる。もちろん、柔軟性が低い材料も使用し得ると考えられる。中央領域に好適な材料の非限定的な例には、プラスチック膜が含まれる。必須ではないが、プラスチック膜は、透明であることが望ましい。
【0038】
ドレープは、ベースシート80の中央領域60に組み込まれる接続要素50を含む。図ではオス型嵌合が図示されているが、接続要素50は、気管内チューブ30などの医療器具のコネクタ40にオス型嵌合またはメス型嵌合するように構成することができる。
【0039】
本発明のサージカルドレープは、体外に延在するチューブまたはチューブ様構造を含む任意の医療器具への使用に好適であると考えられる。医療器具の非限定的な例としては、気管支鏡、気管内チューブ、気管切開チューブ、血管カテーテル、泌尿器カテーテルなどが挙げられる。
【0040】
図1では、気管内チューブ30のコネクタ40は、中央領域60に組み込まれた接続要素50に接続されている。接続されたときは、中央領域は、気管内チューブ30を完全に取り囲む。このことにより、外部環境からの病原体が気管内チューブ30の表面に付着するのが防止されると共に、気管内チューブの表面に既に存在する病原体が医療従事者の手に伝播し、医療若しくは手術部位をさらに汚染することを防止する。医療処置中、医療従事者は医療器具の位置を操作する必要があるので、医療器具をこのように覆うことは重要である。医療器具の操作は、医療器具から医療従事者へ、あるいは医療従事者から医療器具へ、病原体が伝播する機会を創出するからである。
【0041】
接続要素に医療器具を接続したときは、医療従事者が、医療器具を直接触らずに操作できることが望ましい。この点に関して、医療処理を実施する際、医療従事者は、医療器具自体の表面には触らずに、中央領域の上面220だけを触って操作する。医療従事者は、その手で中央領域の外面を介して器具を操作することができる。このとき、中央領域の下面230が医療器具と直接接触する。
【0042】
したがって、医療器具を接続要素に接続すると、中央領域の下面230及び中央領域の上面220によって、医療従事者の手が医療器具から隔てられる。このことにより、医療器具から医療従事者への、または医療従事者から医療器具への病原体の伝播が防止される。さらに、このことにより、空中浮遊病原体の医療器具の表面への伝播が防止される。空中浮遊病原体が医療器具の表面に存在すると、手術若しくは医療処置部位において病原体が医療器具を伝って患者の体内に侵入するので、このことは重要である。
【0043】
接続要素は、一般的に、標準サイズである。標準サイズは、一般的に、約10〜20mmであり、より望ましくは15mmである。しかしながら、サイズは、接続要素に接続される器具に応じて、大きく異なり得る。したがって、接続要素及び開口部は、医療処置に必要とされる医療器具の種類に適合するようなサイズであり得る。
【0044】
図2及び3に示すように、接続要素の上部には、随意的に、外側メス型ポート90、あるいは、外側オス型ポート190が設置される。メス型ポート90及び/またはオス型ポートは、ドレープを取り除くことなく、さらなる医療器具の接続を可能とする。このことにより、中央領域により形成された滅菌野が維持される。例えば、気管内チューブを触ってまたはドレープを持ち上げたり移動させたりすることにより滅菌野を汚染することなく、Yコネクタまたは換気装置を気管内チューブに接続することができる。
【0045】
接続要素と同様に、外側メス型ポートまたは外側オスポートは、一般的に、標準サイズである。標準サイズは、一般的に、約10〜20mmであり、より望ましくは15mmである。しかしながら、サイズは、外側ポートに接続される器具に応じて、大きく異なり得る。したがって、外側ポートは、医療処置に必要とされる医療器具の種類に適合するようなサイズであり得る。
【0046】
図4に示すように、気管内チューブをコネクタに接続するときに、医療または手術処置部位において気管チューブまたは他のチューブ状医療器具のシャフトを包囲する(受容する)ための中央領域60を画定する中央ダクト70を形成するように、ドレープは事前に形作られるまたは事前に折り畳まれる。
【0047】
図5に示すように、ドレープは、医療従事者がドレープの角端部110を引っ張ったときに、ドレープが患者及び手術部位を覆うように広がるように折り畳まれる。広げられたドレープは、実施される医療若しくは手術処置の種類に応じて、患者の身体を部分的にまたは完全に覆う。一般的に言えば、ドレープは、折り畳んだ状態で中央領域の接続要素を医療器具のコネクタに対して位置させることができ、その後、ドレープの角端部110を引くことによりドレープを広げることができるような任意の形状に予め折り畳まれ得る。特に、ドレープは、アコーディオン様の形状に折り畳まれることが望ましい。
【0048】
図6を参照して、予め折り畳まれたドレープは、保管若しくは出荷パッケージ130に収納され得る。パッケージは、任意の材料から作製され得るが、例えばプラスチックなどの柔軟性を有する材料であることが望ましい。パッケージは、底部140及び上部160を含み得る。底部140及び上部160は、互いに共同して予め折り畳まれたドレープを密閉すると共に、1つまたは複数の密閉端部で互いに連結される。密閉端部は、その一端が強制的に取り除かれるまで、パッケージの底部140及び上部160が予め折り畳まれたドレープを密閉することを可能にする任意の材料を含み得る。底部140及び上部160は、密閉端部150で、ミシン目または接着剤によって互いに結合されることが望ましい。
【0049】
例えば気管処置などの手術処置の前に、気管チューブが患者の気管に挿入され得る。パッケージの底部140を剥がして接続要素を露出させ、露出させた接続要素を気管チューブのコネクタに接続させる。その後、上部160を取り除き、予め折り畳まれたドレープの角端部110を横方向に引っ張ってドレープを広げ、患者の身体を覆う。もちろん、ドレープの中央領域が医療用若しくは手術用器具を外気から遮断することができ、かつ、医療従事者が医療用若しくは手術用器具を直接触らずに操作できる任意の手順によって、患者にドレープをかけてもよい。
【0050】
図7を参照して、予め折り畳まれたドレープを密閉するのに、トレイ170を使用することも考えられる。予め折り畳まれたドレープは、トレイから取り出され、その後、患者を覆うのに使用される。トレイは、その後、患者の身体の上に配置され、注射器やクリーニングスワブなどの手術処置中に使用される器具を収容する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処置に際して患者を覆うためのドレープであって、
上面、下面、複数の縁部及び中央領域を備えると共に、前記中央領域に画定され医療処置部位の上方に位置するように適合された開口部を有するベースシートと、
医療器具のコネクタとオス型若しくはメス型嵌合可能に構成され、かつ前記ドレープを貫通すると共に前記開口部を塞ぐように構成された接続要素とを含むことを特徴とするドレープ。
【請求項2】
請求項1に記載のドレープであって、
前記接続要素が、前記中央領域の上面の上方及び前記中央領域の下面の下方に部分的に延在することを特徴とするドレープ。
【請求項3】
請求項1に記載のドレープであって、
前記ベースシートの少なくとも一部が、液体吸収材料層をさらに含むことを特徴とするドレープ。
【請求項4】
請求項1に記載のドレープであって、
前記ベースシートの少なくとも一部が、バリア繊維をさらに含むことを特徴とするドレープ。
【請求項5】
請求項1に記載のドレープであって、
前記開口部を画定する前記ベースシートの前記中央領域が、前記医療器具の前記コネクタに前記接続要素を挿入したときに前記医療器具を取り囲むように構成され、かつ、前記医療器具を直接触らずに操作できるように構成されていることを特徴とするドレープ。
【請求項6】
請求項5に記載のドレープであって、
前記開口部を画定する前記ドレープの前記中央領域が、プラスチック膜を含むことを特徴とするドレープ。
【請求項7】
請求項6に記載のドレープであって、
前記プラスチック膜が透明であることを特徴とするドレープ。
【請求項8】
請求項1に記載のドレープであって、
前記接続要素が、メス型ポートを含むことを特徴とするドレープ。
【請求項9】
請求項8に記載のドレープであって、
前記メス型ポートが、前記ベースシートの上面の上方に延在することを特徴とするドレープ。
【請求項10】
請求項1に記載のドレープであって、
前記接続要素が、約10ないし20mmの直径を有するコネクタに対してオス型嵌合可能に構成されたことを特徴とするドレープ。
【請求項11】
請求項1に記載のドレープであって、
前記医療器具が、気管内チューブ、気管切開チューブ、血管カテーテル、気管支鏡、または泌尿器カテーテルであることを特徴とするドレープ。
【請求項12】
請求項1に記載のドレープであって、
前記接続要素が前記医療器具の前記コネクタと接続できるように、該ドレープが予め折り畳まれていることを特徴とするドレープ。
【請求項13】
請求項12に記載のドレープであって、
該ドレープが予め折り畳まれているとき、前記開口部を画定する前記ベースシートの前記中央領域が、前記医療器具及びそのコネクタを受容するように構成された中央ダクトによってさらに画定されることを特徴とするドレープ。
【請求項14】
請求項13に記載のドレープであって、
前記開口部を画定する前記ベースシートの前記中央領域が、前記医療器具の前記コネクタに前記接続要素を挿入したときに前記医療器具を取り囲むように構成され、かつ、前記医療器具を直接触らずに操作できるように構成されていることを特徴とするドレープ。
【請求項15】
請求項1に記載のドレープであって、
前記ベースシートに設けられたトレイをさらに含むことを特徴とするドレープ。
【請求項16】
請求項1に記載のドレープであって、
オス型の外側ポートをさらに含むことを特徴とするドレープ。
【請求項17】
請求項16に記載のドレープであって、
前記オス型の外側ポートが、前記ベースシートの上面の上方に延在することを特徴とするドレープ。
【請求項18】
医療処置に際して患者の周囲に滅菌野を形成する方法であって、
上面、下面、複数の縁部及び開口部を備えると共に、前記開口部を塞ぐ接続要素を有するベースシートを含むドレープを提供するステップと、
前記開口部を、医療処置部位の上方に位置させるステップと、
前記接続要素を医療器具のコネクタに接続するステップと、
前記医療器具を直接触らずに操作するステップとを含む方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記医療器具を直接触らずに操作するステップは、
前記医療器具を前記ベースシートの一部で取り囲むステップと、
前記ベースシートが前記医療器具と接触し、人間が前記医療器具と直接的に接触しないようにして、前記ベースシートを介して前記医療器具を操作するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
気管、気管支鏡、血管または泌尿器処置に際して患者を覆うためのドレープであって、
上面、下面、複数の縁部及び中央領域を備えると共に、前記中央領域に画定され気管若しくは内視鏡的処置部位の上方に位置するように適合された開口部を有するベースシートと、
医療器具のコネクタとオス型若しくはメス型嵌合可能に構成され、かつ前記ドレープを貫通すると共に前記開口部を塞ぐように構成された接続要素とを含むことを特徴とするドレープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−523169(P2010−523169A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500393(P2010−500393)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050261
【国際公開番号】WO2008/120108
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)