説明

開放循環式複合冷却施設及びその運転方法

【課題】開放循環式の冷却施設が一区域内に複数設置されている場合において、補給水量及びブロー水量を低減すると共に、循環水に添加される薬剤の使用量が少なくてすみ、該薬剤添加の制御も容易な開放循環式複合冷却施設及びその運転方法を提供する。
【解決手段】本発明の開放循環式複合冷却施設は、複数の開放循環式の冷却施設が一区域内に複数設置されており、各該冷却施設に同じ補給水を供給した場合の濃縮度が各該冷却施設ごとに異なっており、より高い濃縮度となる第1冷却施設10のブロー水が、より低い濃縮度となる第2冷却施設20の補給水として供給されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は開放循環式の冷却施設が一区域内に複数設置されている開放循環式複合冷却施設、及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の工業用冷却施設では、製造工程内の製造装置や冷却装置等を循環する冷却水を冷却塔によって外気と接触させ、気化熱を奪って冷却する開放循環式冷却施設が広く利用されている、例えば、石油化学工業では複数の大型冷却塔を設置して、循環水量数千トン〜2万トン/時の大容量の循環水を冷却している。
【0003】
開放循環式冷却施設では、冷却塔における水の一部蒸発によって循環水は濃縮され、循環水中に含まれる塩類等の固形分濃度が上昇する。このため、循環水の一部を強制ブロー水として排出し、循環水の固形分濃度の上昇を抑制している。また、冷却塔における水の一部蒸発による循環水の損失を補うために、補給水として清水(工業用水等)を注入している。
【0004】
(循環水のCa硬度)/(補給水のCa硬度)の値は濃縮度と称されており、開放循環式冷却施設は、濃縮度が所定の範囲となるように、補給水量と強制ブロー水量の調節を行いながら運転されている(ここで、Ca硬度とは、水中に含まれるカルシウムイオンの重量を、それに対応する炭酸カルシウムの重量に変換した値をいう。以下同様)。このように、濃縮度に基づいて開放循環式冷却施設の制御を行うのは、以下の理由による。
【0005】
すなわち、開放循環式冷却施設において濃縮度が高くなると、循環水中に含まれるカルシウムイオンや重炭酸イオンの濃度が高くなり、循環水のpHが上昇し、炭酸カルシウムが析出し易くなる。こうして析出した炭酸カルシウムが金属表面にスケールを形成し、これが金属表面の保護皮膜として金属の腐食を抑制する。このため、濃縮度はある程度以上にすることが防食上必要となる。しかし、過度の濃縮度の上昇は熱交換器等の伝熱面への炭酸カルシウムスケール付着及び炭酸カルシウムを含むスケールの付着を引き起こし、伝熱阻害などの障害を引き起こす。
【0006】
一方、濃縮度が低すぎる場合には、防食成分である炭酸カルシウムやシリカの濃度が低くなり、配管の腐蝕防止が不充分となる。また、濃縮度が低い値で運転する場合には、補給水量や強制ブロー水量が大きくなり、補給水コスト及び強制ブロー水の水処理コストが嵩むこととなる。また、ブロー水には強制ブロー水以外に、冷水塔からの飛散で失われる飛散ロス水、及び循環水系の配管中での漏水等で失われるプラントブロー水がある。強制ブロー水に応じて水処理剤が添加されるため、濃縮度が低い場合には水処理剤の使用量も増え、水処理剤に要するコストも増加する。このため、濃縮度はある程度以上の値に設定する必要がある。
【0007】
また、開放循環式冷却施設の濃縮度の大小に関わりなく、循環冷却施設の配管や熱交換器に使用されている炭素鋼や銅、銅合金等の金属の腐食を防止する目的でリン酸塩、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、亜鉛塩、モリブデン酸塩などの腐食防止剤や重合リン酸塩、ホスホン酸塩、カルボン酸系高分子化合物などのスケール防止剤が循環水に添加されている。これらの腐食防止剤やスケール防止剤は、循環水のブローにより排出され、廃水処理を受けた後、河川、湖沼や海域へと排出される。ブローにより排出される腐食防止剤やスケール防止剤は、強制ブロー水、飛散ロス水、及びプラントブロー水の総量に比例し、ブロー水の総量が少ないほど、その損出は少ない。開放循環式冷却施設に用いられる腐食防止剤の有効成分である亜鉛塩やモリブデン酸塩は重金属塩であり、それらを含む排水は水棲生物に対して悪影響を与えるおそれがある。また、腐食防止剤やスケール防止剤の有効成分であるリン含有排水は毒性が低いものの、湖沼、内海などの閉鎖水域において、富栄養化の問題を生じることから、リン含有薬品の周辺環境への排出量は、少ないほど好ましい。
【0008】
そこで、腐食防止剤やスケール防止剤の使用量を低減しながら十分な効果を得る方法が種々提案されている。例えば、補給水の硬度成分を除去し、500(mg−CaCO3/L)以上の高アルカリ度、pHが9以上という条件で運転する防食・防スケール方法(特許文献1参照)や、導電率計とフロートスイッチによって濃縮度の管理を行う冷却水管理装置(特許文献2参照)等が挙げられる。
【特許文献1】特開平9−94598号公報
【特許文献2】特開平11−248394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、開放循環式の冷却施設における蒸発能力の差や、循環水の漏れの程度等が施設ごとに異なるため、各冷却施設に固形分濃度が等しい補給水を供給したとしても、濃縮度は各冷却施設毎に異なった値となる。このため、一区域内に複数の開放循環式冷却施設が存在する場合には、個々の開放循環式冷却施設の特性や濃縮度に応じて、強制ブロー水もそれぞれ個別の管理下で排出制御されるため、強制ブロー水の総量も多くなり、強制ブロー水の処理コストが高いものとなっていた。また、個々の開放循環式冷却施設の特性や濃縮度に応じて循環水のpH、カルシウム硬度や全硬度が異なるため、使用する防食剤、スケール防止剤及びスライムコントロール剤等の薬剤の種類が各冷却施設毎に異なるようになる。また、例え同一の防食剤、同一のスケール防止剤及び同一のスライムコントロール剤等を使用していても、開放循環式冷却施設の特性に応じた添加量となるように薬剤添加を制御することは、管理が煩雑となり作業性が悪い。
【0010】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、開放循環式の冷却施設が一区域内に複数設置されている場合において、補給水量及び強制ブロー水量を低減すると共に、循環水に添加される薬剤の使用量の低減が可能で、薬剤添加制御や薬剤の管理が容易な開放循環式複合冷却施設及びその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の開放循環式複合冷却施設は、開放循環式の冷却施設が複数設置されており、同じ水質の補給水を供給した場合の濃縮度が各該冷却施設ごとに異なっており、より高い濃縮度となる第1の冷却施設の強制ブロー水が、より低い濃縮度となる第2の冷却施設の補給水として供給されるようになっていることを特徴とする。
【0012】
本発明の開放循環式複合冷却施設では、より高い濃縮度となる第1の冷却施設の強制ブロー水が、より低い濃縮度となる第2の冷却施設の補給水として再利用されるため、排水処理装置へ送られる強制ブロー水の量が減少し、強制ブロー水の処理コストも低廉となる。また、強制ブロー水を再利用した分、工業用水等の外部から供給される補給水の量も少なくなる。
【0013】
また、本発明の開放循環式複合冷却施設では、開放循環式の冷却施設が複数設置されており、各該冷却施設に同じ水質の補給水を供給した場合の濃縮度が各該冷却施設ごとに異なっている。しかしながら、より高い濃縮度となる第1の冷却施設の強制ブロー水が、より低い濃縮度となる第2の冷却施設の補給水として導入されるようになっていため、第2の冷却施設へ供給される補給水は、第1の冷却施設への補給水と異なり、防食効果を有する炭酸カルシウム、スケール成分を抑制するスケール防止剤や防食剤、場合によってはスライムコントロール剤などが含まれている。このため、各冷却施設の循環水の水質の差が小さくなり、両冷却施設の水質及び濃縮度は近い値となり、防食剤やスケール防止剤、場合によってはスライムコントロール剤などの種類最適な添加量は近いものとなる。このため、各冷却施設毎に異なる最適な添加量となるように管理しなくても、同一の管理値で添加すれば、最適な条件に近い状態となる。
【0014】
さらには、第1の冷却施設の循環水に添加している腐食抑制剤、スケールコントロール剤等の循環水系への添加薬剤が、強制ブロー水と共に第2の冷却施設の循環水となり、再利用されるため、これらの薬品代の節減、使用薬品の統一、ブロー水排水の処理費の節減、管理負担の低減をもたらす。
【0015】
本発明の開放循環式複合冷却施設は、次のようにして運転される。すなわち、本発明の開放循環式複合冷却施設の運転方法は、開放循環式の冷却施設が複数設置されており、同じ水質の補給水を供給した場合の濃縮度が各該冷却施設ごとに異なっており、より高い濃縮度となる第1の冷却施設の強制ブロー水を、より低い濃縮度となる第2の冷却施設の補給水として用いることを特徴とする。
【0016】
開放循環式複合冷却施設の循環水系へのスケールコントロール剤等の水処理薬品は、飛散ロス水、プラントブロー水及び強制ブロー水の総量に比例して添加される。複数の開放循環式冷却施設をそれぞれ単独で運転していた場合には、各開放循環式冷却施設からそれぞれ強制ブロー水が発生し、それぞれを排水として水処理しなければならない。これに対し、本発明の開放循環式複合冷却施設の運転方法によれば、すでに水処理剤が添加された状態の第1の冷却施設の強制ブロー水を、より低い濃縮度となる第2の冷却施設の補給水として用いるため、水処理剤が少なくても、確実に十分な防食効果及びスケール防止効果をえることができる。また、補給水量も減らすことができる。
【0017】
本発明において、第1の冷却施設の循環水の濃縮度が、第2の冷却施設の濃縮度よりも高ければ、本発明の効果が得られる。特に、第1の冷却施設の循環水の濃縮度が第2の冷却施設の濃縮度よりも1以上大である開放循環式複合冷却施設で本発明の運転方法を行えば、補給水の節減、強制ブロー水の低減、水処理薬品の節減及び循環水水質管理が簡略化される効果が得られるため、好適である。さらに第1の冷却施設の循環水の濃縮度が第2の冷却施設の濃縮度よりも1以上大きく、且つ第1の冷却施設の循環水の濃縮度が5以上、7未満であれば、特に強制ブロー水の低減が大きくなり、水処理薬品の節減及び循環水水質管理がより一層簡略化される効果が得られるため、より好適である。
また、第2の冷却施設の循環水の低濃縮度がプラントブロー水や飛散ロス水等によるロスが大きいことに起因して、少量の強制ブロー水あるいは強制ブローを行わない状態で運転している場合には、本発明の運転方法を適用して、第1の冷却施設の循環水の高濃縮度の強制ブロー水を第2の冷却施設の補給水に使用することにより、第1の冷却施設の強制ブロー水の排水処理を行なわなくてもすみ、第1の冷却施設に添加した添加水処理薬品が第2の冷却施設で有効に再利用でき、さらには、異なる2以上の冷却設備の循環水の水質が近似することにより、両者の循環水の水質管理が一括でできるように簡素化され、好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、河川、湖水、地下水、雨水等から工業用水、水道水、井水などを取り入れて使用される開放循環式冷却施設に適用することができる。このような開放循環式冷却施設として、例えば石油精製工業、石油化学工業、紙パルプ製造業、繊維工業、塗料工業、合成ゴムラテックス工業などの各種製造業、発電プラント、空調システム等における開放循環式冷却施設が挙げられる。
【0019】
開放循環式冷却施設の諸特性は特に限定されるものではないが、一般的には保有水量は約500トン〜約5,000トン、循環水量は約300トン/時〜約20,000トン/時、ΔTは約2℃〜約12℃、補給水量は約60トン/時〜約100トン/時、ブロー水量は約10トン/時〜約50トン/時、濃縮度は約2〜約7である。飛散ロス水量は、開放循環式冷却施設固有の量であるが、通常、循環水量の約0.1wt%〜0.2wt%である。プラントブロー水量は開放循環式冷却施設固有の値でそれぞれの開放循環式冷却施設により異なる。プラントブロー水量は、冷却塔から送り出される循環開始時の水量と当該冷却塔へ戻ってくる時の回収時の水量の差で算出される。強制ブロー水量は目的とする循環水の水質、濃縮度に応じて調整される。また、開放循環式冷却施設の補給水には、自然にある河川、湖水からの工業用水、水道水などが使用される。
【0020】
以下、本発明をさらに具体化した実施例1及び比較例1について図面を参照しつつ詳述する。
(実施例1)
実施例1の開放循環式複合冷却施設は、図1に示すように、開放循環式の第1冷却施設10と、開放循環式の第2冷却施設20の2つの冷却施設からなる。第1冷却施設10は、保有水量が2400t、循環水量が7000tであり、単独運転をした場合、濃縮度が6倍となる。一方、第2冷却施設20は、保有水量が2300t、循環水量が10000tであり、単独運転をした場合、飛散ロス、プラントブロー(すなわち循環水のプラントでの漏れ)や施設能力の都合や運転状況の都合等で一時的に強制ブローを行うことがあるものの通常、強制ブロー水量が0の状態で運転されていた。そのため、第2冷却施設20での濃縮度は約4.1倍までしか上昇させることができない。
【0021】
第1冷却施設10は、誘引通風向流接触型の冷却塔11及び熱交換器12が配管13によって接続されており、配管13の途中に設置された循環ポンプ14によって配管13内を循環水が循環可能とされている。腐食防止剤は循環水系に対して一定濃度(例えば、腐食防止剤として10mg/Lになるように添加する。)を維持するように添加される。そのため、全ブロー水に対して10mg/L濃度となる腐食防止剤量が補給水に添加される。同様にスライムコントロール剤の場合も、循環水系に対して一定濃度(例えば、スライムコントロール剤として2mg/Lになるように添加する。)を維持するように添加される。腐食防止剤、スライムコントロール剤はそれぞれ注入装置16及び注入装置17によって冷却塔11のピットに添加される。また、補給水には工業用水が用いられ、供給配管15により冷却塔11のピットに供給される。冷却塔11と循環ポンプ14の間の配管13にはバルブ18が設けられており、強制ブロー水をブロワーポンプ30及び強制ブロー水供給配管31を介して第2冷却施設20の冷却塔21のピットに導入されるようになっている。
【0022】
第2冷却施設20には、誘引通風向流接触型の冷却塔21及び熱交換器22が配管23によって接続されており、配管23の途中に設置された循環ポンプ24によって配管23内を循環水が循環可能とされている。また、補給水は供給配管25により冷却塔21のピットに供給される。腐食防止剤として、アクリル酸−アクリルアミドスルフォン酸共重合体を循環水系に対して一定濃度(例えば、腐食防止剤として10mg/Lになるように添加する。)を維持するように添加される。そのため、全ブロー水に対して10mg/L濃度となる腐食防止剤量が補給水に添加される。同様にスライムコントロール剤として次亜塩素酸ナトリウム(2〜12重量%水溶液)を循環水系に対して一定濃度(例えば、スライムコントロール剤として2mg/Lになるように添加する。)を維持するように添加される。それぞれ注入装置26及び注入装置27によって冷却塔21のピットに添加されるようになっている。第2冷却施設20から排出される強制ブロー水は、バルブ28及び強制ブロー水供給配管29を介して、図示しない排水処理施設に送られる。
【0023】
以上のように構成された開放循環式複合冷却施設では、第1冷却施設10の配管13内の循環水が熱交換器12で熱交換され、温度が上昇する。そして、循環ポンプ14の駆動によって冷却塔11へ送られ、冷却される。このとき、循環水の一部は蒸発によって持ち去られるため、固形分濃度が上昇する。こうして濃縮度が上昇した循環水の一部は、強制ブロー水としてブロワーポンプ30の駆動により、強制ブロー水供給配管31を介して第2冷却施設20の配管23に全量補給水として再利用される。そして第2冷却施設20においても、第1冷却施設10と同様な循環水の濃縮が起こり、濃縮度が上昇した水の一部が、バルブ28の駆動により、強制ブロー水供給配管29を介して排水処理施設に送られる。
【0024】
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同じ開放循環式複合冷却施設を用いた。ただし、バルブ18は第2冷却施設20への水の供給を閉状態とし、ブロワーポンプ30も停止した。そして、第1冷却施設10及び第2冷却施設20をそれぞれ単独運転とし、ブロワーポンプ19によって第1冷却施設10から強制ブロー水を抜き、バルブ28によって、第2冷却施設20からも強制ブロー水を抜いた。第1冷却施設10及び第2冷却施設20をそれぞれ単独運転とした場合、循環水質が異なるために第1冷却施設10では、腐食防止剤としてアクリル酸−アクリルアミドスルフォン酸共重合体を用い、スライムコントロール剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いている。一方、第2冷却施設20では、腐食防止剤としてアクリル酸−ホスフォン酸共重合体を用い、スライムコントロール剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いてそれぞれ個々に管理をした。
【0025】
(評価結果)
表1に、第1冷却施設の強制ブロー水を第2冷却施設の補給水として利用した、実施例1の開放循環式複合冷却施設、及びそれぞれの冷却施設を単独で駆動した比較例1についての試験結果を示す。
【表1】

【0026】
表1から分かるように、補給水について比較例1では232t/hrであるのに対し、実施例1では223t/hrとなり、9t/hrの節減(約4%の節減)となった。また、強制ブロー水による排水は実施例1において0t/hrになった。水質については、実施例1における第2冷却施設の循環水の水質は、比較例1における第1冷却施設の循環水とほぼ同様の水質となった。
【0027】
以上の結果は、次のように説明される。すなわち、実施例1の開放循環式複合冷却施設では、第1冷却施設10のブロー水が、第2冷却施設20の補給水として再利用されるため、排水処理装置へ送られるブロー水の量が減少し、ブロー水の処理コストも低廉となる。また、ブロー水を再利用した分、工業用水等の外部から供給される補給水の量も少なくなる。
【0028】
また、第1冷却施設10に補給される水は工業用水のみであるのに対し、第2冷却施設20の循環水に補給される水は、工業用水及び第1冷却施設10からのブロー水となり、より高い固形分濃度の水が供給されることとなる。しかし、第1冷却施設10の単独運転での濃縮度は、第2冷却施設20の単独運転での濃縮度よりも高くされているため、その濃縮度の差が、補給される水の固形分濃度の差によって緩和されることとなる。このため、防食剤やスケール防止剤の最適な添加量は近いものとなり、各冷却施設毎に異なる最適な添加量となるように管理しなくても、同一の管理値で添加すれば、最適な条件に近い状態となり、管理が容易となる。例えば、表1に示すように、実施例1では、第1冷却施設と第2冷却施設の水質値(例えばカルシウム硬度)は近い値を示すようになり、実質上、第1冷却施設と第2冷却施設の循環水水質は、同じような管理を行えるようになることが分かる。その結果、2つの冷却施設は共通の水処理薬品類と指標での管理が可能であることが分かる。
【0029】
さらには、第1の冷却施設の循環水に添加している腐食抑制剤、スライムコントロール剤等の循環水系への添加薬剤が、ブロー水と共に第2の冷却施設の循環水となり、再利用されるため、これらの薬品代の節減、使用薬品の統一、ブロー水排水の処理費の節減、管理負担の低減をもたらす。例えば、腐食抑制剤、スライムコントロール剤の添加量について、実施例1では、第1冷却施設10のブロー水が、第2冷却施設20の補給水として再利用されるため、表1の結果から比較例1に対して「9/38=約24」(%)の薬品節減となることが分かる。
【0030】
この発明は、上記発明の実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の開放循環式複合冷却施設及びその運転方法は、開放循環式の冷却施設が一区域内に複数設置されている開放循環式複合冷却施設に利用可能であり、
補給水量及びブロー水量を低減すると共に、循環水に添加される薬剤の使用量が少なくてすみ、該薬剤添加の制御も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1の開放循環式複合冷却施設の模式図である。
【符号の説明】
【0033】
10,20…冷却施設(10…第2冷却施設,20…第1冷却施設)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放循環式の冷却施設が複数設置されており、同じ水質の補給水を供給した場合の濃縮度が各該冷却施設ごとに異なっており、より高い濃縮度となる第1の冷却施設の強制ブロー水が、より低い濃縮度となる第2の冷却施設の補給水として供給されるようになっていることを特徴とする開放循環式複合冷却施設。
【請求項2】
開放循環式の冷却施設が複数設置されており、同じ水質の補給水を供給した場合の濃縮度が各該冷却施設ごとに異なっており、より高い濃縮度となる第1の冷却施設の強制ブロー水を、より低い濃縮度となる第2の冷却施設の補給水として用いることを特徴とする開放循環式複合冷却施設の運転方法。
【請求項3】
前記第1の冷却施設の循環水の濃縮度と前記第2の冷却施設の濃縮度との差が1以上であることを特徴とする開放循環式複合冷却施設の運転方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−162418(P2009−162418A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341571(P2007−341571)
【出願日】平成19年12月30日(2007.12.30)
【出願人】(000234166)伯東株式会社 (135)