説明

開繊分級装置

【課題】開繊品及び未開繊品の分級精度を向上させ得るとともに、開繊品の回収率を向上させることができる開繊分級装置を提供する。
【解決手段】本装置は、開繊した繊維体B1、B2を質量差による飛距離差によって分級する開繊分級装置1であって、回転可能な開繊シリンダ2と、開繊シリンダの回転により飛ばされる繊維体を回収する第1回収部3及び第2回収部4と、を備え、第2回収部は、第1回収部に吸引回収される繊維体より重い繊維体を回収するための回収部であり、第1回収部と第2回収部との間には、開繊シリンダの回転により飛ばされる繊維体を第2回収部に向かって搬送する搬送手段(コンベア5)が設けられ、搬送手段の側方に立設される側壁21bには空気吸入孔23が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開繊分級装置に関し、更に詳しくは、開繊品及び未開繊品の分級精度を向上させ得るとともに、開繊品の回収率を向上させることができる開繊分級装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の開繊分級装置として、開繊した繊維体を質量差による飛距離差によって分級するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、例えば、図6に示すように、回転可能な開繊シリンダ102と、この開繊シリンダ102の回転により飛ばされる繊維体B1,B2を吸引回収する第1回収部103及び第2回収部104と、を備え、第1回収部103で開繊状態が十分で比較的軽く飛距離が短い繊維体B1(即ち、開繊品)を吸引回収し、第2回収部104で開繊状態が不十分で比較的重く飛距離が長い繊維体B2(即ち、未開繊品)を吸引回収する開繊分級装置101が開示されている。そして、第1及び第2回収部103,104の各開口部103b,104bは近接して配置され、これら各開口部103b,104bの間には、各回収部103,104に回収される繊維体量を調整するための仕切板105が傾動可能に設けられている。この開繊分級装置101によると、人手により開繊した繊維体を分級する方法に比べて、生産性が飛躍的に向上し、工数低減もでき低コスト化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−138328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記開繊分級装置101では、第1及び第2開口部103b,104bは近接して配置され、これら各開口部103b,104bの間に仕切板105が設けられているので、仕切板105に繊維体B2が引っ掛かり易く、第1回収部103に未開繊品である繊維体B2が混入して分級精度が低下してしまう恐れがある。その結果、回収された繊維体をマット等の製品製造工程に供給すると、設備故障が発生したり、製品の品質不具合が発生したりする原因となる。一方、第1回収部103への繊維体B2(未開繊品)の混入を抑えるために、第1回収部103内で生じる吸引気流の風速を弱めることが考えられるが、この場合、第1回収部103への繊維体B1(開繊品)の回収率が低下してしまう。その結果、処理能力を確保するために大型の開繊シリンダを使用する必要があり、設備投資が増加してしまう。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、開繊品及び未開繊品の分級精度を向上させ得るとともに、開繊品の回収率を向上させることができる開繊分級装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、開繊した繊維体を質量差による飛距離差によって分級する開繊分級装置であって、回転可能な開繊シリンダと、前記開繊シリンダの回転により飛ばされる前記繊維体を回収する第1回収部及び第2回収部と、を備え、前記第2回収部は、前記第1回収部に吸引回収される繊維体より重い繊維体を回収するための回収部であり、前記第1回収部と前記第2回収部との間には、前記開繊シリンダの回転により飛ばされる前記繊維体を該第2回収部に向かって搬送する搬送手段が設けられ、前記搬送手段の側方に立設される側壁には空気吸入孔が形成されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記第1回収部の開口部は、前記搬送手段の上面から上方に所定高さ離れて配置され、前記空気吸入孔は、前記搬送手段の上面から上方に所定高さ離れて配置されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記空気吸入孔の開口率を調整するための開口率調整手段を更に備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の開繊分級装置によると、開繊シリンダの回転により飛ばされる繊維体のうちで、主に開繊状態が十分で比較的軽く且つ飛距離が短い繊維体(即ち、開繊品)は、第1回収部に直接的に吸引回収され、主に開繊状態が不十分で比較的重く且つ飛距離が長い繊維体(即ち、未開繊品)は、第2回収部に直接的に回収されるか、又は搬送手段により第2回収部に向かって強制的に搬送され第2回収部に回収される。そして、第1及び第2回収部の間に搬送手段が設けられ、第1及び第2回収部の各開口部は十分に離間して配置されるので、第1及び第2回収部の間での繊維体の引っ掛かりが抑制される。さらに、搬送手段の側方に立設される側壁には空気吸入孔が形成されているので、空気吸入孔から空気を取り込むことにより、第1回収部で生じる吸引気流の風速を十分に維持したまま、搬送手段の上面近傍に作用する吸引気流の風速が弱められて弱風ゾーンが形成される。これにより、搬送手段の上面に落下した未開繊品である繊維体は、第1回収部に吸引回収され難く第2回収部まで搬送されて回収される。その結果、開繊品及び未開繊品の分級精度を向上させ得るとともに、開繊品の回収率を向上させることができる。
また、前記第1回収部の開口部が、前記搬送手段の上面から上方に所定高さ離れて配置され、前記空気吸入孔が、前記搬送手段の上面から上方に所定高さ離れて配置されている場合は、搬送手段の上面と第1回収部の開口部との間に上下方向の段差部が形成されるとともに、搬送手段の上面と空気吸入孔との間に壁面が存在する。この壁面の存在により、搬送手段の上面近傍から段差部を乗り越えて第1回収部の開口部に向かう吸引気流が減少され、搬送手段の上面に落下した未開繊品である繊維体が段差部を乗り越えて第1回収部の開口部に到ることが抑制される。
さらに、開口率調整手段を更に備える場合は、開口率調整手段により、開繊する繊維加工品の目付け量等に応じて最適な分級条件となるように、空気吸入孔の開口率を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例1に係る開繊分級装置を示す模式図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】上記開繊分級装置の内部構造を示す斜視図である。
【図4】上記開繊分級装置及び比較例に係る開繊分級装置のそれぞれの吸引気流の状態を説明するための説明図であり、(a)は上記開繊分級装置の吸引気流の状態を示し、(b)は比較例の開繊分級装置の吸引気流の状態を示す。
【図5】実施例2に係る開繊分級装置を示す模式図である。
【図6】従来の開繊分級装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
1.開繊分級装置
本実施形態1.に係る開繊分級装置は、開繊した繊維体を質量差による飛距離差によって分級する開繊分級装置(1、31)であって、回転可能な開繊シリンダ(2)と、開繊シリンダの回転により飛ばされる前記繊維体を回収する第1回収部(3、33)及び第2回収部(4、34)と、を備え、第2回収部は、第1回収部に吸引回収される繊維体(B1)より重い繊維体(B2)を回収するための回収部であり、第1回収部と第2回収部との間には、開繊シリンダの回転により飛ばされる繊維体を第2回収部に向かって搬送する搬送手段(5、35)が設けられ、搬送手段の側方に立設される側壁(21b、38b)には空気吸入孔(23、40)が形成されていることを特徴とする(例えば、図1及び図5等参照)。
【0011】
なお、上記「開繊した繊維体」とは、開繊状態が十分な繊維体(即ち、開繊品)の他に、開繊状態が不十分な繊維体(即ち、未開繊品)を含むものとする。また、上記「搬送手段の側方」とは、搬送手段の搬送方向と交差する方向を意図する。さらに、上記第1回収部は、通常、その内部に吸引気流が作用して繊維体を吸引回収する。
【0012】
本実施形態1.に係る開繊分級装置としては、例えば、上記第1回収部(3)の開口部(3b)は、搬送手段(5)の上面から上方に所定高さ(h1)離れて配置され、上記空気吸入孔(23)は、搬送手段の上面から上方に所定高さ(h2)離れて配置されている形態A(例えば、図2等参照)を挙げることができる。この場合、例えば、上記第1回収部の開口部の所定高さ(h1)は、上記空気吸入孔の所定高さ(h2)より大きな値に設定されていることができる。これにより、搬送手段の上面と空気吸引孔との間に形成される壁面(26)により、搬送手段の上面近傍から段差部(16)を乗り越えて第1回収部の開口部に向かう吸引気流の風速が効果的に弱められる。
【0013】
上述の形態Aの場合、例えば、上記第1回収部(3)の開口部(3b)は、繊維体の飛ぶ方向側の開繊シリンダ(2)の端部から垂直に引いた接線(D1)よりも飛ぶ方向側と逆側の位置で且つ開繊シリンダよりも下側の位置に配置されていることができる(例えば、図2等参照)。これにより、第1回収部の開口部からの未開繊品である繊維体の吸引回収が更に抑制される。この場合、例えば、上記第1回収部の開口部は、上記接線(D1)と開繊シリンダの軸心を通る垂線(D2)との間の位置で横向きに開口して配置されていることができる(例えば、図2等参照)。これにより、第1回収部の開口部から開繊品である繊維体を効果的に回収できる。なお、上記第1回収部の開口部は、例えば、開繊シリンダの下側で且つ開繊シリンダの直径の範囲内に配置されていることができる。
【0014】
上述の形態Aの場合、例えば、上記第1回収部(3)の開口部(3b)と搬送手段(5)の上面との間には上下方向の段差部(16)が設けられ、段差部には、段差高さを調整するための高さ調整手段(17)が設けられていることができる(例えば、図2及び図3等参照)。この高さ調整手段により、開繊する繊維加工品の目付け量等に応じて最適な分級条件となるように、段差部の高さを調整することができる。
【0015】
本実施形態1.に係る開繊分級装置としては、例えば、上記空気吸入孔(23、40)の開口率を調整するための開口率調整手段(24、41)を更に備える形態(例えば、図1及び図5等参照)を挙げることができる。この開口率調整手段は、例えば、空気吸入孔の上下方向の開口量を調整することができる。これにより、最適な分級条件となるように空気吸入孔の開口率を容易に調整できる。
【0016】
本実施形態1.に係る開繊分級装置としては、例えば、上記搬送手段はコンベア(5)である形態(例えば、図1及び図5等参照)を挙げることができる。これにより、繊維体を第2回収部まで確実且つ円滑に強制的に搬送できる。この場合、例えば、上記空気吸入孔(23、40)は、コンベアの搬送方向の略全長にわたって延びていることができる。これにより、コンベアの上面近傍における第1回収部の開口部側及び第2回収部の開口部側にわたって吸引気流の風速を弱めることができる(例えば、図4(a)等参照)。なお、上記コンベアとしては、例えば、ベルトコンベア、チェーンコンベア、ローラコンベア等を挙げることができる。これらのうち、繊維体の搬送性といった観点から、ベルトコンベアであることが好ましい。
【0017】
本実施形態1.に係る開繊分級装置としては、例えば、上記開繊シリンダに材料を供給する材料供給手段(7)を更に備え、上記第2回収部の一端側は材料供給手段に開口していることができる(例えば、図1等参照)。これにより、第2回収部から回収された未開繊品である繊維体を材料供給手段に戻して再度開繊させ得る。上記材料供給手段は、例えば、コンベアであることができる。このコンベアとしては、例えば、ベルトコンベア、チェーンコンベア、ローラコンベア等を挙げることができる。これらのうち、繊維体の搬送性といった観点から、ベルトコンベアであることが好ましい。
【0018】
本実施形態1.に係る開繊分級装置としては、例えば、上記第1回収部(3、33)の開口部(3b、33b)は、開繊シリンダ(2)の近傍に配置され、上記第2回収部(4、34)の開口部(4b、34b)は、第1回収部の開口部から開繊シリンダの遠心方向に離間して配置され、これら第1及び第2回収部のそれぞれの開口部の間に上記搬送手段(5、35)が配置されていることができる(例えば、図1及び図5等参照)。これにより、第1及び第2開口部が十分に離間して配置されるため、第1開口部への未開繊品である繊維体の混入を更に確実に抑制できる。
【0019】
本実施形態1.に係る開繊分級装置としては、例えば、上記開繊シリンダ(2)の下流側(即ち、繊維体の飛ぶ方向側)には、第1回収部(3、33)の開口部(3b、33b)及び第2回収部(4、34)の開口部(4b、34b)のそれぞれが接続される回収室(20、37)が設けられ、この回収室を構成するケーシング(21、38)は、上記搬送手段(5、35)の上面により構成される底部(21a、38a)と、搬送手段の側方に立設され且つケーシングの外部に開口する上記空気吸入孔(23、40)が形成された側壁(21b、38b)と、を備える形態(例えば、図1及び図5等参照)を挙げることができる。これにより、装置全体を簡易且つ小型な構造とすることができる。
【0020】
本実施形態1.に係る開繊分級装置としては、例えば、シート状の繊維加工品を複数重ね合わせてなる繊維加工品積層体を開繊する形態を挙げることができる。これにより、繊維加工品積層体を再利用することができる。このような繊維加工品積層体を再利用して開繊する場合には未開繊品である繊維体の発生が比較的多くなるが、本装置によると、第1回収部への未開繊品である繊維体の混入を効果的に抑制できる。
【0021】
なお、上記繊維加工品積層体は、例えば、マット状の単一種類の繊維加工品を積層したものであってもよいし、異なる種類の繊維加工品を積層したものであってもよい。繊維加工品としては、例えば、不織布、織物、編物等が挙げられる。また、繊維加工品を構成する繊維も特に限定されないが、例えば、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、針葉樹(杉、檜等)、広葉樹及び綿花などの各種の植物が有する繊維や、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン/プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂などの熱可塑性樹脂を用いてなる繊維、熱硬化性樹脂を用いてなる繊維等が挙げられる。これらの繊維は、1種のみ用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
2.開繊分級方法
本実施形態2.に係る開繊分級方法は、上記実施形態1.の開繊分級装置を用いる開繊分級方法であって、上記開繊シリンダの回転により飛ばされる繊維体のうちで、開繊品である繊維体を第1回収部で吸引回収する一方、未開繊品である繊維体を上記搬送手段により第2回収部に向かって強制的に搬送して第2回収部に回収することを特徴とする。これにより、開繊品及び未開繊品の分級精度を向上させ得るとともに、開繊品の回収率を向上させることができる。
【実施例】
【0023】
以下、図面を用いて実施例1及び2により本発明を具体的に説明する。
【0024】
<実施例1>
(1)開繊分級装置の構成
本実施例に係る開繊分級装置1は、積層体Aを開繊するとともに、開繊した繊維体B1、B2を質量差による飛距離差によって分級する装置である。この開繊分級装置1は、図1に示すように、回転可能な開繊シリンダ2と、この開繊シリンダ2の回転により飛ばされる繊維体B1、B2を回収する第1回収部3及び第2回収部4と、これら第1及び第2回収部3、4の間に設けられるコンベア5(本発明に係る「搬送手段」として例示する。)と、を備えている。
【0025】
上記開繊シリンダ2の外周面には、表面に多数の突起が形成されたガーネットワイヤ2aが巻き付けられている。この開繊シリンダ2の上流側(即ち、繊維体B1,B2の飛ぶ方向と反対側)には、積層体Aを開繊シリンダ2に向かって供給するフィードコンベア7が配設されている。このフィードコンベア7の一端側と開繊シリンダ2の外周面との間には、上下一対のフィードローラ8,8が設けられている。これら各フィードローラ8,8は、フィードコンベア7により搬送される積層体Aを挟持して送り出し、開繊シリンダ2の外周面に押し当てる。
【0026】
そして、上記開繊シリンダ2は、その軸周りに回転することにより、フィードローラ8,8から送り出された積層体Aを、ガーネットワイヤ2aの突起で引っ掻くようにして開繊する。また、開繊シリンダ2は、外周面に付着した開繊処理物をその回転方向に搬送する。その搬送される開繊処理物は、後述のストリッパーローラを通過した位置で、開繊シリンダ2の回転による遠心力により繊維体B1、B2として飛ばされる。この飛ばされる繊維体B1、B2のうちで、主に開繊状態が十分で比較的軽い繊維体B1(即ち、開繊品)は、図1中に破線矢印C1で示す方向に飛ばされる。一方、主に開繊状態が不十分で比較的重い繊維体B2(即ち、未開繊品)は、図1中に破線矢印C2で示す方向に飛ばされる。
【0027】
なお、上記開繊シリンダ2は、フィードローラ8,8の送り速度に比して十分に速い周速となるように回転する。また、開繊シリンダ2の外周面とフィードローラ8,8の外周面との間隔は、積層体Aの厚さと比較して小さく設定されている。また、本実施例では、上記積層体Aとして、基材となるケナフ等の植物性繊維と、バインダとなる熱可塑性樹脂繊維と、を含有するシート状の不織布を積層してなる繊維加工品積層体を例示する。この積層体Aは、型取りされて加熱圧縮成形が施されることにより車両等の内装材として用いられるものであるが、製品A’の型取り時に発生する端材A"を回収して開繊処理を施す場合を例示する。
【0028】
上記開繊シリンダ2の外周に沿ってウォーカローラ9及びストリッパーローラ10が配設されている。これらウォーカローラ9及びストリッパーローラ10は、開繊シリンダ2と同様に、その外周面にガーネットワイヤ9a,10aが巻き付けられたローラである。ウォーカローラ9は、開繊シリンダ2の回転方向とは反対の方向に回転するとともに、開繊シリンダ2の周速よりも十分に遅い周速となるように回転する。これにより、開繊シリンダ2により搬送される開繊処理物を開繊シリンダ2とウォーカローラ9との間を通過させて更に開繊処理を施す。また、ストリッパーローラ10は、ウォーカローラ9の外周面に付着した開繊処理物を剥離する。このストリッパーローラ10は、ウォーカローラ9に隣接するように設けられているとともに、ウォーカローラ9と同じ方向に回転するように設けられている。
【0029】
上記第1回収部3は、図1に示すように、開繊シリンダ2で飛ばされた繊維体B1を回収するための回収部である。この第1回収部3は、吸引気流が作用する回収通路を形成する第1ダクト3aと、この第1ダクト3aの一端側に形成された第1開口部3bと、を有している。この第1開口部3bは、図2に示すように、繊維体B1の飛ぶ方向側の開繊シリンダ2の端部から垂直に引いた接線D1よりも飛ぶ方向側と逆側の位置で且つ開繊シリンダ2よりも下側の位置に配置されている。より詳細には、第1開口部3bは、上記接線D1と開繊シリンダ2の軸心を通る垂線D2との間の位置で横向きに開口して配置されている。また、第1開口部3bは、開繊シリンダ2の軸長さと略同じ長さの横幅を有する正面矩形状に形成されている(図3参照)。なお、上記第1ダクト3aの他端側は繊維体B1の回収容器(図示省略)に連絡されている。
【0030】
上記第2回収部4は、図1に示すように、開繊シリンダ2で飛ばされた繊維体B2を回収するための回収部である。この第2回収部4は、吸引気流が作用する回収通路を形成する第2ダクト4aと、この第2ダクト4aの一端側に形成された第2開口部4bと、を有している。この第2開口部4bは、第1開口部3bから開繊シリンダ2の遠心方向に離間し且つ横向きに開口して配置されている。また、第2開口部4bは、開繊シリンダ2の軸長さと略同じ長さの横幅を有する正面矩形状に形成されている。また、第2ダクト4aの他端側は、フィードコンベア7の上面に向かって開口している。なお、上記第2ダクト4aには、その途中に吸引気流を発生させるファン13が設けられ、その他端側に空気を分離するためのサイクロンセパレータ14が設けられている。
【0031】
上記コンベア5は、図2及び図3に示すように、第1開口部3bの下側で略水平方向に延びて配置されている。このコンベア5は、主に繊維体B2を第2開口部4bに向かって搬送する周回可能なベルト5aを有している。ここで、第1開口部3bは、コンベア5の上面から上方に所定高さh1(例えば、約250mm)離れて配置されている。よって、コンベア5の上面と第1開口部3bの下端との間には略垂直に延びる壁状の段差部16が形成されている。この段差部16には、段差部16の高さを調整するための高さ調整板17(本発明に係る「高さ調整手段」として例示する。)が設けられている。この高さ調整板17には上下方向に延びる長孔17aが形成されている。そして、高さ調整板17は、段差部16に対して上下位置を調整可能なように長孔17aを介してボルト18止めされている。
【0032】
上記開繊シリンダ2の下流側(即ち、繊維体B1、B2の飛ぶ方向側)には、図1に示すように、第1開口部3b及び第2開口部4bが接続される回収室20が設けられている。この回収室20を構成するケーシング21は、図2及び図3に示すように、コンベア5の上面により一部が構成される底部21aと、コンベア5の両側方に立設される左右の側壁21bと、各側壁21bの上端に連なる天井壁21c(図1参照)と、を備えている。これら左右の側壁21b及び天井壁21cのそれぞれには、ケーシング21外部に開口する平面略矩形状の空気吸入孔22、23が形成されている。これら各空気吸入孔22、23は、金属メッシュで覆われている。
【0033】
上記空気吸入孔23は、図2及び図3に示すように、コンベア5の搬送方向の略全長にわたって延びている。この空気吸入孔23は、コンベア5の上面から上方に所定高さh2(例えば、約100mm)離れて配置されている。よって、空気吸入孔23とコンベア5の上面との間には壁面26が存在している。また、空気吸入孔23の周囲壁面には、永久磁石からなる開口率調整板24(本発明に係る「開口率調整手段」として例示する。)が空気吸入孔23の一部を塞ぐように貼着されている。この開口率調整板24は複数枚用意されており、使用する枚数や大きさ等を適宜選択することで空気吸入孔23の上下方向の開口量を調整することができる。
【0034】
(2)開繊分級装置の作用
次に、上記構成の開繊分級装置1の作用について説明する。積層体Aをフィードコンベア7上に載置して開繊シリンダ2に供給する。この積層体Aは、フィードローラ8,8の間に挟まれつつ開繊シリンダ2に押し付けられガーネットワイヤ2aにより開繊される。この開繊処理物のうちで開繊が不十分なものはウォーカローラ9で再度開繊され、ストリッパーローラ10により開繊シリンダ2に戻される。その後、開繊処理物は、開繊シリンダ2の回転による遠心力で開繊シリンダ2の外周から剥がれて繊維体B1、B2として飛ばされる。
【0035】
ここで、上記繊維体B1、B2は、その質量(密度)の違いにより、その飛び方(速度、距離等)が変わるため、その落下位置の差により分別することができる。よって、主に開繊品である繊維体B1の殆どは、吸引気流により第1開口部3bから第1回収部3に直接的に吸引回収される。また、コンベア5上に落下した繊維体B1は、比較的軽いため吸引気流により段差部16を容易に乗り越えて第1開口部3bから第1回収部3に吸引回収される。一方、未開繊品である繊維体B2は、第2開口部4bから第2回収部4に直接的に吸引回収されるか、又はコンベア5上に落下してコンベア5により第2開口部4bに向かって強制的に搬送され第2開口部4bから第2回収部4に吸引回収される。このコンベア5上に落下した繊維体B2は、比較的重いため段差部16を乗り越えて第1開口部3bに侵入しない。
【0036】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例の開繊分級装置1によると、開繊シリンダ2の回転により飛ばされる繊維体B1、B2のうちで、主に開繊品である繊維体B1は、第1回収部3に直接的に吸引回収され、主に未開繊品である繊維体B2は、第2回収部4に直接的に吸引回収されるか、又はコンベア5により第2回収部4に向かって強制的に搬送され第2回収部4に回収される。そして、第1及び第2回収部3、4の間にコンベア5が設けられ、第1及び第2回収部3、4の各開口部3b、4bは十分に離間して配置されるので、第1及び第2回収部3、4の間での繊維体B1、B2の引っ掛かりが抑制される。さらに、図4(a)に示すように、コンベア5の側方に立設される側壁21bには空気吸入孔23が形成されているので、空気吸入孔23から空気を取り込むことにより、第1回収部3で生じる吸引気流の風速を十分に維持したまま、コンベア5の上面近傍に作用する吸引気流の風速が弱められて弱風ゾーンE1が形成される。これにより、コンベア5の上面に落下した未開繊品である繊維体B2は、第1回収部3に吸引回収され難く第2回収部4まで搬送されて回収される。その結果、開繊品及び未開繊品の分級精度を向上させ得るとともに、開繊品の回収率を向上させることができる。これに対して、図4(b)に示すように、比較例の開繊分級装置1’では、コンベア5’の側方に立設される側壁21b’に空気吸入孔23’が形成されておらず、第1回収部3’からの吸引気流がコンベア5’上に伝達して、コンベア5’の上面近傍で第1回収部3’に向かう吸引気流の風速が強められて強風ゾーンE2が形成される。よって、コンベア5’の上面に落下した未開繊品である繊維体B2は、第1回収部3’に吸引回収されてしまい易い。
【0037】
特に、本実施例の開繊分級装置1によると、開繊した繊維体B1、B2を質量差による飛距離差によって自動分級するので、人手により開繊した繊維体を分級する方法に比べて、生産性が飛躍的に向上し、工数低減もでき低コスト化を図ることができる。さらに、開繊直後に分別しているので、繊維体B1、B2同士が絡みつき難く、開繊品である繊維体B1の回収率が高められる。
【0038】
また、本実施例では、第1回収部3の開口部3bが、コンベア5の上面から上方に所定高さh1離れて配置され、空気吸入孔23が、コンベア5の上面から上方に所定高さh2離れて配置されているので、コンベア5の上面と第1回収部3の開口部3bとの間に上下方向の段差部16が形成されるとともに、コンベア5の上面と空気吸入孔23との間に壁面26が存在する。この壁面26の存在により、コンベア5の上面近傍から段差部16を乗り越えて第1回収部3の開口部3bに向かう吸引気流が減少され、コンベア5の上面に落下した未開繊品である繊維体B2が段差部16を乗り越えて第1回収部3の開口部3bに到ることが抑制される。
【0039】
また、本実施例では、第1回収部3の開口部3bは、繊維体B1、B2の飛ぶ方向側の開繊シリンダ2の端部から垂直に引いた接線D1よりも飛ぶ方向側と逆側の位置で且つ開繊シリンダ2よりも下側の位置に配置されているので、第1回収部3の開口部3bからの未開繊品である繊維体B2の吸引回収が更に抑制される。特に、本実施例では、第1開口部3bは、上記接線D1と開繊シリンダ2の軸心を通る垂線D2との間の位置で横向きに開口して配置されているので、第1開口部3bから開繊品である繊維体B1を効果的に回収することができる。
【0040】
また、本実施例では、第1回収部3の開口部3bとコンベア5の上面との間には上下方向の段差部16が設けられ、段差部16には、段差高さを調整するための高さ調整板17が設けられているので、高さ調整板17により、開繊する繊維加工品の目付け量等に応じて最適な分級条件となるように、段差部16の高さを調整することができる。
【0041】
また、本実施例では、開口率調整板24を更に備えるので、開口率調整板24により、開繊する繊維加工品の目付け量等に応じて最適な分級条件となるように、空気吸入孔23の開口率を調整することができる。特に、本実施例では、開口率調整板24により、空気吸入孔23の上下方向の開口量を調整するようにしたので、最適な分級条件となるように空気吸入孔23の開口率を容易に調整できる。
【0042】
また、本実施例では、搬送手段としてコンベア5を採用したので、繊維体B2を第2回収部4まで確実且つ円滑に強制的に搬送できる。特に、本実施例では、空気吸入孔23は、コンベア5の搬送方向の略全長にわたって延びているので、コンベア5の上面近傍における第1回収部3の開口部3b側及び第2回収部4の開口部4b側にわたって吸引気流の風速を弱めることができる。
【0043】
また、本実施例では、開繊シリンダ2に材料を供給するフィードコンベア7を更に備え、第2回収部4の一端側はフィードコンベア7の上面に向かって開口しているので、第2回収部4から回収された未開繊品である繊維体B2をサイクロンセパレータ14を介してフィードコンベア7に戻して再度開繊させることができる。
【0044】
また、本実施例では、第1回収部3の開口部3bは、開繊シリンダ2の近傍に配置され、第2回収部4の開口部4bは、第1回収部3の開口部3bから開繊シリンダ2の遠心方向に離間して配置され、これら第1及び第2回収部3、4のそれぞれの開口部3b、4bの間にコンベア5が配置されているので、第1及び第2開口部3b、4bが十分に離間して配置されるため、第1開口部3bへの未開繊品である繊維体B2の混入を更に確実に抑制できる。
【0045】
また、本実施例では、開繊シリンダ2の下流側(即ち、繊維体B1、B2の飛ぶ方向側)には、第1回収部3の開口部3b及び第2回収部4の開口部4bのそれぞれが接続される回収室20が設けられ、回収室20を構成するケーシング21は、コンベア5の上面により構成される底部21aと、コンベア5の側方に立設され且つケーシング21の外部に開口する上記空気吸入孔23が形成された側壁21bと、を備えるので、装置全体を簡易且つ小型な構造とすることができる。
【0046】
さらに、本実施例では、積層体Aとして、シート状の繊維加工品を複数重ね合わせてなる繊維加工品積層体を採用したので、繊維加工品積層体を再利用することができる。このような繊維加工品積層体を再利用して開繊する場合には未開繊品である繊維体の発生が比較的多くなるが、本装置によると、第1回収部への未開繊品である繊維体の混入を効果的に抑制できる。
【0047】
<実施例2>
次に、実施例2に係る開繊分級装置の構成について説明する。なお、本実施例2の開繊分級装置において、上記実施例1の開繊分級装置1と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略する。
【0048】
(1)開繊分級装置の構成
本実施例に係る開繊分級装置31は、図5に示すように、開繊シリンダ2と、この開繊シリンダ2の回転により飛ばされる繊維体B1、B2を回収する第1回収部33及び第2回収部34と、これら第1及び第2回収部33、34の間に設けられるコンベア35(本発明に係る「搬送手段」として例示する。)と、を備えている。
【0049】
上記第1回収部33は、開繊シリンダ2で飛ばされた繊維体B1を回収するための回収部である。この第1回収部33は、吸引気流が作用する回収通路を形成する第1ダクト33aと、この第1ダクト33aの一端側に形成された第1開口部33bと、を有している。この第1開口部33bは、開繊シリンダ2の近傍で上向きに開口して配置されている。また、第1開口部33bは、開繊シリンダ2の軸長さと略同じ長さの横幅を有する正面矩形状に形成されている。なお、上記第1ダクト33aの他端側は繊維体B1の回収容器(図示省略)に連絡されている。
【0050】
上記第2回収部34は、開繊シリンダ2で飛ばされた繊維体B2を回収するための回収部である。この第2回収部34は、吸引気流が作用する回収通路を形成する第2ダクト34aと、この第2ダクト34aの一端側に形成された第2開口部34bと、を有している。この第2開口部34bは、第1開口部33bから開繊シリンダ2の遠心方向に離間して上向きに開口して配置されている。また、第2開口部34bは、開繊シリンダ2の軸長さと略同じ長さの横幅を有する正面矩形状に形成されている。なお、上記第2ダクト34aの他端側は、実施例1の開繊分級装置1と略同様にしてフィードコンベア(図示省略)の上面に向かって開口している。
【0051】
上記コンベア35は、第1及び第2開口部33b、34bの間に略水平方向に沿って配置されている。このコンベア35は、主に繊維体B2を第1開口部33bから第2開口部34bに向かって搬送する周回可能なベルト35aを有している。
【0052】
上記開繊シリンダ2の下流側(即ち、繊維体B1、B2の飛ぶ方向側)には、第1開口部33b及び第2開口部34bが接続される回収室37が設けられている。この回収室37を構成するケーシング38は、コンベア35の上面により一部が構成される底部38aと、コンベア35の両側方に立設される左右の側壁38bと、側壁38bの上端に連なる天井壁38cと、を備えている。これら左右の側壁38b及び天井壁38cのそれぞれには、ケーシング38外部に開口する平面略矩形状の空気吸入孔39、40が形成されている。これら各空気吸入孔39、40は、金属メッシュで覆われている。
【0053】
上記空気吸入孔40は、コンベア35の搬送方向の略全長にわたって延びている。この空気吸入孔40の周囲壁面には、永久磁石からなる開口率調整板41(本発明に係る「開口率調整手段」として例示する。)が空気吸入孔40の一部を塞ぐように貼着されている。この開口率調整板41は複数枚用意されており、使用する枚数や大きさ等を適宜選択することで空気吸入孔40の上下方向の開口量を調整することができる。
【0054】
(2)開繊分級装置の作用・効果
次に、上記構成の開繊分級装置31の作用・効果について説明する。本実施例の開繊分級装置31によると、上記実施例1の開繊分級装置1と略同様の作用・効果を奏する。すなわち、開繊シリンダ2の回転による遠心力で飛ばされる繊維体B1、B2のうちで、開繊品である繊維体B1は、第1回収部33に直接的に吸引回収される。一方、未開繊品である繊維体B2は、第2回収部34に直接的に吸引回収されるか、又はコンベア35により第2回収部34に向かって強制的に搬送され第2回収部34に吸引回収される。
【0055】
以上より、本実施例の開繊分級装置31によると、第1及び第2回収部33、34の間にコンベア35が設けられ、第1及び第2回収部33、34の各開口部33b、34bは十分に離間して配置されるので、第1及び第2回収部33、34の間での繊維体B1、B2の引っ掛かりが抑制される。さらに、コンベア35の側方に立設される側壁38bには空気吸入孔40が形成されているので、空気吸入孔40から空気を取り込むことにより、第1回収部33で生じる吸引気流の風速を十分に維持したまま、コンベア35の上面近傍に作用する吸引気流の風速が弱められて弱風ゾーンが形成される。これにより、コンベア35の上面に落下した未開繊品である繊維体B2は、第1回収部33に吸引回収され難く第2回収部35まで搬送されて回収される。その結果、開繊品及び未開繊品の分級精度を向上させ得るとともに、開繊品の回収率を向上させることができる。
【0056】
尚、本発明においては、上記実施例1及び2に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更することができる。即ち、上記実施例1及び2では、コンベア5、35の略全長に沿って延びる単一の空気吸入孔23、40を例示したが、これに限定されず、コンベア5、35の略全長に沿って所定間隔で配設される複数の空気吸入孔としてもよい。また、コンベア5、35の少なくとも第1回収部3、33側のみに沿って延びる1又は2以上の空気吸引孔を採用してもよい。
【0057】
さらに、上記実施例1及び2では、回収室20、37内の負圧によりケーシング21、38の外部から空気を取り込む空気吸入孔23、40を例示したが、これに限定されず、例えば、回収室20、37内に積極的に空気を送風する空気吸入孔を採用してもよい。
【0058】
また、上記実施例1及び2では、開口率調整板24、41を設けて空気吸入孔23、40の開口率を調整するようにしたが、これに限定されず、例えば、空気吸入孔23、40に対してスライド可能なスライド材を設け、このスライド材のスライドにより空気吸入孔23、40の開口率を調整したり、可撓性のテープ材を設けて空気吸入孔23、40の開口率を調整したりしてもよい。また、上記実施例1及び2では、開口率調整板24、41を磁力により固定するようにしたが、これに限定されず、例えば、開口率調整板24、41をボルト止め、フック止め、接着等により固定するようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施例1及び2では、空気吸入孔23、40の上下方向の開口率を調整するようにしたが、これに限定されず、例えば、空気吸入孔23、40の上下方向に替えて又は加えて、空気吸入孔23、40の前後方向の開口率を調整するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施例1では、高さ調整板17により段差部16の高さを調整するようにしたが、これに限定されず、例えば、コンベア5の高さ位置を変更して段差部16の高さを調整したり、第1開口部3bの高さ位置を変更して段差部16の高さを調整したりしてもよい。
【0061】
また、上記実施例1では、開繊シリンダ2の下側で横向きに開口して配置される第1開口部3bを例示したが、これに限定されず、例えば、開繊シリンダ2の下側で上向き又は下向きに開口する第1開口部としてもよい。
【0062】
また、上記実施例1では、略垂直に延びる壁状の段差部16を例示したが、これに限定されず、例えば、図2中に仮想線で示すように、繊維体B1,B2の飛ぶ方向に向かって傾斜して延びる壁状の段差部16’としてもよい。この場合、水平方向に対して鋭角となる段差部16’により、コンベア5で搬送される未開繊品である繊維体B2の第1開口部3bへの侵入が更に確実に抑制される。
【0063】
また、上記実施例1及び2では、吸引気流が作用する第1回収部3、33及び第2回収部4、34を備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、吸引気流が作用する第1回収部3、33のみを備え、第2回収部を回収容器等で構成するようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施例1及び2では、第2ダクト4b、34bの一端側をフィードコンベア7に連絡し、繊維体B2を開繊シリンダ2に供給するようにしたが、これに限定されず、例えば、第2ダクト4b、34bの一端側を回収容器に連絡し、繊維体B2を回収容器内で回収するようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施例1及び2では、搬送手段としてコンベア5、35を例示したが、これに限定されず、例えば、搬送手段として、回転ローラ、振動プレート等を採用してもよい。
【0066】
また、上記実施例1及び2において、第1回収部3、33及び第2回収部4、34の各ダクト3a,33a、4a、34aの角度、断面積等の寸法や段差部16の高さ(例えば、100〜300mm等)、角度等の寸法、並びに空気吸引孔23、40の大きさ、形状、配設位置、個数等は、使用材料の特性に応じて適宜変更することができる。
【0067】
さらに、上記実施例1及び2では、積層体Aとして、2つのシート状の繊維加工品を積層してなる繊維加工品積層体を例示したが、これに限定されず、例えば、3つ以上の繊維加工品を積層してなる繊維加工品積層体であってもよい。
【0068】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0069】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
開繊した繊維体を分級する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0071】
1,31;開繊分級装置、2;開繊シリンダ、3,33;第1回収部、4,34;第2回収部、5,35;コンベア、23,40;空気吸引孔、21b,38b;側壁、24、41;開口率調整板、B1;開繊品である繊維体、B2;未開繊品である繊維体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開繊した繊維体を質量差による飛距離差によって分級する開繊分級装置であって、
回転可能な開繊シリンダと、
前記開繊シリンダの回転により飛ばされる前記繊維体を回収する第1回収部及び第2回収部と、を備え、
前記第2回収部は、前記第1回収部に吸引回収される繊維体より重い繊維体を回収するための回収部であり、
前記第1回収部と前記第2回収部との間には、前記開繊シリンダの回転により飛ばされる前記繊維体を該第2回収部に向かって搬送する搬送手段が設けられ、
前記搬送手段の側方に立設される側壁には空気吸入孔が形成されていることを特徴とする開繊分級装置。
【請求項2】
前記第1回収部の開口部は、前記搬送手段の上面から上方に所定高さ離れて配置され、前記空気吸入孔は、前記搬送手段の上面から上方に所定高さ離れて配置されている請求項1記載の開繊分級装置。
【請求項3】
前記空気吸入孔の開口率を調整するための開口率調整手段を更に備える請求項1又は2に記載の開繊分級装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−255238(P2012−255238A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129575(P2011−129575)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】