説明

開閉式噴出ヘッド

【課題】全高が低く抑えられて見栄えが良く、使い易い新規な開閉式噴出ヘッドを提供する。
【解決手段】容器20の内側に配置したポンプPに連結されるジョイント2に対して、上下動可能に連結されポンプPを駆動させる本体3を有し、本体3の内側に横向きに配置したノズル4の内側に先端開口4eを開閉するピン7を摺動可能に配置し、このピン7の開閉動作を本体3の押し下げ及び復帰に応じて生起させる梃子機構Mをジョイント2と本体3との間に介在させたものであって、機構Mは、ピン7と本体3との間に配置されピン7が注出口4eを閉じるように当該ピン7を付勢する弾性部材8と、ジョイント2に対して揺動可能に起立するレバー9を有し、レバー9の先端を、ピン7の後端に、当該ピン7の開閉動作を許容するように連結すると共に、当該レバー9の前面に、本体3の押し下げにより当該本体3と接触してレバー9の後傾を生起させる傾斜面9cを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の内側に配置したポンプを駆動させる操作片として機能すると共に、そのポンプ動作に伴う内容物の注出を可能とし、併せて、注出後における内容物の垂れや詰まりを生じにくい開閉式噴出ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
噴出ヘッドには、液切れの悪さや内容物の固化を防止することを目的として、ポンプにジョイントを連結すると共に、このジョイントに対してヘッド本体を上下動可能に連結する一方、このヘッド本体の内側に当該ヘッド本体の注出口を開閉するピン部材を摺動可能に横向きに配置し、このピン部材の開閉動作をヘッド本体の押し下げ及び復帰に応じて生起させる梃子機構をジョイントとヘッド本体との間に介在させた開閉式の噴出ヘッド(以下、「開閉式噴出ヘッド」という)が存在する(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2008−6410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の開閉式噴出ヘッドは、ピン部材の開閉動作を生起させる機構が、ジョイントとヘッド本体との間に揺動可能に保持された「く」の字形のレバーを用いた梃子機構であるため、当該レバーには、ヘッド本体の押し下げに伴いジョイントに押し付けられてレバーの揺動を生起させる脚部が必要となるため、噴出ヘッド全体の高さが高くなりがちで、見栄えの点で改善の余地がある。
【0004】
また、噴出ヘッド全高が高い場合には、指を引っ掛け難いことがあることから、使い易さの点でも改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的とするところは、全高が低く抑えられて見栄えが良く、使い易い新規な開閉式噴出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器の内側に配置したポンプに連結されるジョイントと、このジョイントに対して上下動可能に連結され、その押し下げ及び復帰によりポンプを駆動させるヘッド本体とを有し、このヘッド本体の内側に当該ヘッド本体の注出口を開閉するピン部材を摺動可能に横向きに配置し、このピン部材の開閉動作をヘッド本体の押し下げ及び復帰に応じて生起させる機構をジョイントとヘッド本体との間に介在させた開閉式噴出ヘッドであって、
前記機構は、ピン部材とヘッド本体との間に配置され、ピン部材が注出口を閉じるように当該ピン部材を付勢する弾性部材と、ジョイントに対して揺動可能に起立するレバーを有し、
このレバーの先端を、ピン部材の後端に、当該ピン部材の開閉動作を許容するように連結すると共に、
当該レバーの前面に、ヘッド本体と接触してその押し下げにより、当該ヘッド本体と接触してレバーの後傾を生起させる傾斜面を形成してなることを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、ヘッド本体がレバーの前面に接触する部位を、ピン部材を配置する空間と前記機構を配置する空間とを仕切る隔壁とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ジョイントに対して揺動可能に起立させたレバーの先端に、ピン部材の開閉動作を許容するように当該ピン部材の後端を連結する一方、レバーの前面に、ヘッド本体がその押し下げにより接触して当該レバーの後傾を生起させる傾斜面に形成したことで、従来必要とされていた、ジョイントに押し付けられてレバーの揺動を生起させるための脚部が不要となる。このため、噴出ヘッドの全高を低く抑えることができる。
【0009】
従って、本発明によれば、全高が低く抑えられて見栄えが良く、使い易い新規な開閉式噴出ヘッドを提供することができる。
【0010】
特に、本発明において、ヘッド本体がレバーの前面に接触する部位を、ピン部材を配置する空間と前記機構を配置する空間とを仕切る隔壁とすれば、既存の構成を流用しつつ開閉式噴出ヘッドの全高を低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の第一の形態である開閉式噴出ヘッド1の初期状態を側面から示す縦断面図である。また、図2及び図3はそれぞれ、図1のX−X断面図及び図2のY−Y断面図である。更に、図4は、同ヘッド1の注出状態を側面から示す要部縦断面図であり、図5は、同形態に係るレバーを示す斜視図である。
【0013】
図1にて、符号2は、容器20の内側に配置したポンプPに連結されるジョイントである。ジョイント2は、ステムSを介してポンプPに通じる通路が形成され、軸線OYに沿って起立する上筒部2aを有する。ポンプPは、容器20の内側に配置される既存のプランジャポンプであり、ステムSの押し下げ及び復帰の繰り返しにより、容器20の内容物を圧送する。なお、ポンプPは、容器20の口部21にリングキャップ30を介して固定されている。
【0014】
符号3は、ジョイント2の上筒部2aに連結され、その押し下げ及び復帰によりポンプPを駆動させるヘッド本体である。ヘッド本体3は、その外観形状が、使用者が押し下げの際に使用する天壁3aと、この天壁3aの外縁から垂下する外周部3bとで形作られている。
【0015】
また、ヘッド本体3は、その内側に、天壁3aから垂下する隔壁3cと、この隔壁3cから前方に向かって延在し外周部3bに繋がる隔壁3dとを有し、これら隔壁3c,3dで取り囲まれた領域内に、ヘッド本体3の前方に開口する筒状の凹部をなす流路空間3eが形成されている。
【0016】
また、隔壁3cは、ヘッド本体3の外周部3bとの間に、後述の梃子機構Mの配置空間たる副室3fを形成する。副室3fは、隔壁3cに形成された貫通孔3gを通して流路空間3eに通じる。
【0017】
また、ヘッド本体3は、隔壁3dから垂下する下筒部3hを有し、この下筒部3hの内側には、流路空間3eに通じる通路が形成されている。また、下筒部3hの内側には、ジョイント2の上筒部2aを摺動可能に嵌合させることができる。これにより、ヘッド本体3は、その下筒部3hとジョイント2の上筒部2aとの間の密閉状態を維持しつつ、ジョイント2の上筒部2aに対して軸線OYに沿って上下方向に摺動させることができる。
【0018】
符号4は、流路空間3e内に横向きに配置されるノズル(注出筒)である。ノズル4は、周壁4aを有し、その内側に貫通孔としてなる注出路4bを形作る。
【0019】
符号5は、ヘッド本体3の流路空間3eを形作る内周面である。この内周面5には、その前側に、ヘッド本体3の軸線OX周りに沿って形成される環状の凹部5aが設けられている。この凹部5aは、ノズル4の外周面4gに形成された環状突起4hと嵌合し、ヘッド本体3にノズル4を抜け止め保持すると共に、全周に亘って密着させることで、当該外周面4gを密閉保持している。なお、ノズル4に形成される環状突起4hは、必ずしも連続して形成する必要はなく、断続的に形成される突起又はリブに置き換えることも可能であり、さらにはヘッド本体3とノズル4とに形成される上述した凹凸関係を逆転して配置することも可能である。
【0020】
ノズル4の外周面4gは、その後端側に、軸線OX周りに沿って突出する環状の隆起部4cを形成し、この隆起部4cを、ヘッド本体3の内周面5に全周に亘って密着させることで当該外周面4gの後端側を密閉保持されている。これにより、ヘッド本体3とノズル4との間に形成される内容物の通路は、実質、仕切られた流路空間3eとなる。
【0021】
符号6は、隔壁3cから軸線OXに沿って注出口4eに向かって一体に延在する周壁である。この周壁6は、その外周面6aがノズル4の内周面4fのうち、その後端側に対して全周に亘って密着して当該内周面4fの後端側を密閉保持する。これにより、ノズル4の内周面4f及び外周面4gは、ヘッド本体3の内周面5及び周壁6の外周面6aで密閉保持されることになる。
【0022】
更に、ノズル4の周壁4aには、その軸線OX周りに間隔を空けて複数の開孔4dが形成されている。これにより、ノズル4の内側に形成された注出路4bは、開孔4dを通してヘッド本体3の突起5aとノズル4の隆起部4cとに仕切られた流路空間3eに通じる。なお、開孔4dは、必ずしも複数形成する必要はなく、少なくとも1つ形成されていればよい。
【0023】
符号7は、注出路4b内に配置され、ノズル4の先端開口たる注出口4eを開閉するノズルピン(ピン部材)である。ノズルピン7は、ノズルピン7と一体に設けられた、摺動部位たる環状のピストン7aを有し、このピストン7aを介して注出路4b内に摺動可能に保持されている。
【0024】
符号Mは、ヘッド本体3の押し下げ及び復帰に応じてノズルピン4の開閉動作を生起させる梃子機構である。梃子機構Mは、基本的に、弾性部材と片側支持のレバーとからなる。
【0025】
符号8は、ピストン7aと隔壁3cとの間に配置され、梃子機構Mを構成するスプリング(弾性部材)である。スプリング8は、ノズルピン7が注出口4eを閉じるように当該ノズルピン7を前方に付勢する。これにより、ノズルピン7は、スプリング8の付勢力(弾性力)により、図1に示すように、注出口4eを閉じた状態を初期位置とする一方、スプリング8の付勢力(弾性力)に抗して移動させることで、図4に示すように、注出口4eを開放することができる。
【0026】
符号9は、梃子機構Mを構成し、ノズルピン4の開閉動作をヘッド本体3の押し下げ及び復帰に同期させるレバーである。レバー9は、ジョイント2から起立する保持部2bに形成された軸受け凹部2cに回転可能に保持される軸部9aを有し、図1等に示すように、ヘッド本体3の隔壁3d下側にて、ジョイント2に対して揺動可能に保持されている。なお、軸受け凹部2cを形成した保持部2bをジョイント2と別体として形成しヘッド本体3に組み付けて構成することも可能であるが、部品点数を考慮した場合、上述のジョイント2と一体設する構成が好ましい。
【0027】
レバー9は、ヘッド本体3の副室3f内に配置され、その先端には、貫通孔3gを通して突出したノズルピン7の後端7bを、自由度をもって嵌合させる切欠9bが形成されている。これにより、ノズルピン7の後端7bは、レバー9の先端に対し、その開閉動作が許容されるように連結される。
【0028】
加えて、レバー9の前面には、軸部9aから先端に向かって先細るように傾斜する傾斜面9cが形成されている。本形態では、レバー9を、その傾斜面9cが隔壁3c(又は、隔壁3cと隔壁3dとの連結部(以下、同様))の下側に位置するように配置する。
【0029】
かかる構成によれば、ヘッド本体3の隔壁3cは、当該ヘッド本体3を押し下げることでレバー9の傾斜面9cに接触し、更にヘッド本体3の押し下げが進むと、レバー9の傾斜面9cに沿って当該レバー9を後方に押し退ける。即ち、ヘッド本体3を押し下げると、レバー9は、図4に示すように軸部9a周りを後向きに傾くように揺動する。
【0030】
これにより、ヘッド本体3の押し下げる前の状態にあっては、ノズルピン7は、スプリング8の付勢力によって依然、注出口4eを密閉しているが、ヘッド本体3が押し下げられると、レバー9が軸部9aを基点に後傾することで、スプリング8の付勢力に抗してノズルピン7を後退させ、注出口4eを外界に開放する。
【0031】
これに対し、ヘッド本体3の押し下げを解除すると、スプリング8の付勢力によってノズルピン7が注出口4eに向かって前進するため、レバー9も軸部9aを基点に初期位置に復帰するように前傾するため、レバー9の立ち上がりによってヘッド本体3を押し上げる。即ち、ヘッド本体3の押し下げを解除すると、ノズルピン7が初期位置に復帰することで、注出口4eを再度密閉すると共に、ヘッド本体3も、ジョイント2に対して初期位置に復帰する。
【0032】
従って、ジョイント2とヘッド本体3との間に梃子機構Mを介在させることによって、ヘッド本体3の押し下げ及び復帰に応じてノズルピン7の開閉動作を生起させることができる。
【0033】
本発明では、ジョイント2に対して揺動可能に起立させたレバー9の先端に、ノズルピン7の開閉動作を許容するようにその後端7bを連結する一方、レバー9の前面に、ヘッド本体3がその押し下げにより接触して当該レバー9の後傾を生起させる傾斜面9cを形成したことで、従来必要とされていた、ジョイント2に押し付けられてレバーの揺動を生起させるための脚部が不要となる。
【0034】
言い換えれば、従来の梃子機構は、力点に対して作用点が支点よりも遠い位置にあるのに対し、本発明では、力点に対して作用点が支点よりも近い位置に存在する。このため、本発明によれば、噴出ヘッドの全高を低く抑えることができる。
【0035】
従って、本発明によれば、全高が低く抑えられて見栄えが良く、使い易い新規な開閉式噴出ヘッドを提供することができる。
【0036】
特に、本形態の如く、ヘッド本体3がレバー9の傾斜面9cに接触する部位を、隔壁3c(又は、隔壁3cと隔壁3dとの連結部)とすれば、既存の構成を流用しつつ開閉式噴出ヘッドの全高を低く抑えることができる。
【0037】
図6は、本発明の第二の形態である開閉式噴出ヘッド1の変形例を、その初期状態で側面から示す要部縦断面図である。なお、以下の説明において、第一の形態と同一部分は、同一符号をもって、その説明を省略する。
【0038】
本形態では、ノズルピン7の内側に、その後端に開口する凹部7cを形成し、この凹部7cにスプリング8を配している。これにより、ノズルピン7は、同図に示すように、スプリング8を介してヘッド本体3の後端側内周面3b1に弾支されている。
【0039】
上述したところは、本発明の好適な形態を示したものであるが、用途に応じて様々に設計変更することができる。例えば、本発明である開閉式噴出ヘッドは、本形態のような手動式ポンプを備えた容器に限らず、エアゾール容器にも適用することができる。加えて、各形態に採用された各構成はそれぞれ、互いに適宜組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、シャンプーやリンス、液体石鹸、化粧料等の内容物を入れる容器は勿論のこと、内容物を入れた様々な容器に適用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第一の形態である開閉式噴出ヘッドの初期状態を側面から示す縦断面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】図2のY−Y断面図である。
【図4】同形態の注出状態を側面から示す要部縦断面図である。
【図5】同形態に係るレバーを示す斜視図である。
【図6】本発明の第二の形態である開閉式噴出ヘッドの初期状態を側面から示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 開閉式噴出ヘッド
2 ジョイント
3 ヘッド本体
4 ノズル(注出筒)
5 ヘッド本体内でノズルを配置する空間を形作る内周面
6 周壁
7 ノズルピン
8 スプリング(弾性部材)
9 レバー
9a 軸部
9b 切欠
9c 傾斜面
M 梃子機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内側に配置したポンプに連結されるジョイントと、このジョイントに対して上下動可能に連結され、その押し下げ及び復帰によりポンプを駆動させるヘッド本体とを有し、このヘッド本体の内側に当該ヘッド本体の注出口を開閉するピン部材を摺動可能に横向きに配置し、このピン部材の開閉動作をヘッド本体の押し下げ及び復帰に応じて生起させる機構をジョイントとヘッド本体との間に介在させた開閉式噴出ヘッドであって、
前記機構は、ピン部材とヘッド本体との間に配置され、ピン部材が注出口を閉じるように当該ピン部材を付勢する弾性部材と、ジョイントに対して揺動可能に起立するレバーを有し、
このレバーの先端を、ピン部材の後端に、当該ピン部材の開閉動作を許容するように連結すると共に、
当該レバーの前面に、ヘッド本体の押し下げにより、当該ヘッド本体と接触してレバーの後傾を生起させる傾斜面を形成してなることを特徴とする開閉式噴出ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、ヘッド本体がレバーの前面に接触する部位を、ピン部材を配置する空間と前記機構を配置する空間とを仕切る隔壁としたことを特徴とする開閉式噴出ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−104926(P2010−104926A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280391(P2008−280391)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】