説明

開閉装置

【課題】 直列接続された真空バルブの電圧分担を均等化する。
【解決手段】 接離自在の一対の接点を有する真空バルブ2の周りを絶縁材料でモールド
して第1の絶縁層3を形成させた第1の開閉部1aと、真空バルブ9の周りを絶縁材料で
モールドして第3の絶縁層10を形成させた第2の開閉部1bと、前記第1の開閉部1a
および前記第2の開閉部1bを直列接続する接続導体16の周りを絶縁材料でモールドし
て第5の絶縁層17を形成させた接続導体部1cと、前記第1の開閉部1aおよび前記第
2の開閉部1bにそれぞれ連結された操作機構7、14とを具備し、前記接続導体部1c
が対地間とで形成される静電容量を、前記第1の開閉部1aおよび前記第2の開閉部1b
よりも小さくしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列接続されたそれぞれの真空バルブの電圧分担を改善し得る開閉装置に関
する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の開閉装置は、接離自在の一対の接点を有する真空バルブを2本直列接続
し、開閉装置の定格電圧を向上させたものがある。そして、それぞれの真空バルブの電圧
分担を均等にするため、コンデンサを並列接続したものが知られている(例えば、特許文
献1参照。)。
【0003】
また、これらの真空バルブを気中絶縁で構成すると全体形状が大型化するため、これら
を絶縁材料でモールドし、全体形状の縮小化を図ったものが知られている(例えば、特許
文献2参照。)。
【特許文献1】特開平10−12459号公報 (第4〜5ページ、図9)
【特許文献2】特開2002−152930号公報 (第9ページ、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の開閉装置においては、次のような問題がある。
【0005】
真空バルブを直列接続すると、その接続点は、主回路電位(100%)と接地電位(0
%)との中間の中間電位となる。この中間電位は、それぞれの真空バルブで形成される静
電容量比で決まり、50%未満となる。これは、負荷側(接地側)の真空バルブの静電容
量が、対地静電容量が加わって電源側よりも大きくなるためである。これにより、電源側
の真空バルブの分担電圧は大きくなる。特に、真空バルブの周りに絶縁材料をモールドし
たものでは、静電容量比が大きくなる傾向にあり、電源側の真空バルブの分担電圧が大き
くなる。
【0006】
このため、電源側の真空バルブでは、接点間距離を大きくするなど大型化させて絶縁性
能を高くしなければならなかった。
【0007】
一方、真空バルブにコンデンサを並列接続したものでは、静電容量を上記の静電容量比
に左右されない大容量としなくてはならず、コンデンサ自体が大型化し、それに伴って開
閉装置の全体形状が大型化していた。
【0008】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、直列接続された真空バルブの電圧
分担を均等にし、全体形状を小型にし得る開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の開閉装置は、接離自在の一対の接点を有する真空
バルブの周りを絶縁材料でモールドして第1の絶縁層を形成させた第1の開閉部と、前記
真空バルブと同様の真空バルブの周りを絶縁材料でモールドして第3の絶縁層を形成させ
た第2の開閉部と、前記第1の開閉部および前記第2の開閉部を直列接続する接続導体の
周りを絶縁材料でモールドして第5の絶縁層を形成させた接続導体部と、前記第1の開閉
部および前記第2の開閉部にそれぞれ連結された操作機構とを具備し、前記接続導体部が
対地間とで形成される静電容量を、前記第1の開閉部および前記第2の開閉部よりも小さ
くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、互いの開閉部を直列接続する接続導体部が対地間とで形成する静電容
量を、開閉部よりも小さくしているので、それぞれの開閉部の分担電圧を均等化すること
ができ、開閉装置の全体形状を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0012】
先ず、本発明の実施例1に係る開閉装置を図1を参照して説明する。図1は、本発明の
実施例1に係る開閉装置の構成を示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、開閉装置は、第1の開閉部1a、第2の開閉部1b、および第1の
開閉部1aと第2の開閉部1bとを直列接続する固定側接続導体部1cで構成されている

【0014】
第1の開閉部1aには、接離自在の一対の接点を有する真空バルブ2が設けられている
。また、真空バルブ2の周りには、例えばエポキシ樹脂のような絶縁材料をモールドして
形成した第1の絶縁層3が設けられている。真空バルブ2の図示下方の可動側には、第1
の外部導体4を摺動接触する接触導体5、絶縁操作ロッド6、および電磁アクチュエータ
のような操作機構7が連結されており、前記一対の接点の開閉が行われるようになってい
る。
【0015】
なお、一方の主回路となる第1の外部導体4には、例えばエポキシ樹脂のような絶縁材
料をモールドして形成した第2の絶縁層8が設けられている。第2の絶縁層8の一方は、
第1の絶縁層3と図示しない可撓性絶縁体を介して界面接続され、他方は、操作機構7側
に固定されている。
【0016】
第2の開閉部1bには、第1の開閉部1aの真空バルブ2と直径、軸方向長さなどが同
様な接離自在の一対の接点を有する真空バルブ9が設けられている。また、真空バルブ9
の周りには、例えばエポキシ樹脂のような絶縁材料をモールドして形成した第3の絶縁層
10が設けられている。真空バルブ9の図示下方の可動側には、第2の外部導体11を摺
動接触する接触導体12、絶縁操作ロッド13、および電磁アクチュエータのような操作
機構14が連結されており、前記一対の接点の開閉が行われるようになっている。
【0017】
なお、他方の主回路となる第2の外部導体11には、例えばエポキシ樹脂のような絶縁
材料をモールドして形成した第4の絶縁層15が設けられている。第4の絶縁層15の一
方は、第3の絶縁層10と図示しない可撓性絶縁体を介して界面接続され、他方は、操作
機構14側に固定されている。
【0018】
固定側接続導体部1cには、それぞれの真空バルブ2、9の図示上方の固定側を接続す
るコ字状で断面円状の固定側接続導体16が設けられている。また、固定側接続導体16
の周りには、例えばエポキシ樹脂のような絶縁材料をモールドして形成した第5の絶縁層
17が設けられている。そして、両端主回路は、それぞれ第1の開閉部1a、第2の開閉
部1bと図示しない可撓性絶縁体を介して界面接続されている。なお、第5の絶縁層17
の絶縁厚さは、定格電圧に耐え得る所定の厚さとなっている。
【0019】
ここで、第5の絶縁層17は、第1の絶縁層3および第3の絶縁層10よりも誘電率が
小さい絶縁材料で形成されている。即ち、エポキシ樹脂に充填する例えば水和アルミナの
ような充填剤の充填量を低減させている。一般的には、エポキシ樹脂の誘電率εがε=5
〜6であるのに対し、充填剤の充填量を低減させると、ε=3〜4にすることができる。
【0020】
このため、固定側接続導体部1cが対地間とで形成する静電容量は、第1の開閉部1a
および第2の開閉部1bよりも小さくなる。なお、第2の絶縁層8、第4の絶縁層15は
、第1の絶縁層3などと同様の絶縁材料で形成されている。
【0021】
そして、第1の外部導体4を電源側、第2の外部導体11を負荷側とし、両真空バルブ
2、9を開路した場合、固定側接続導体部1cの静電容量が、第1の開閉部1aおよび第
2の開閉部1bよりも小さくなるため、第1の開閉部1aと第2の開閉部1bとの分担電
圧を均等化することができる。即ち、固定側接続導体16の電位が50%に近づき、両真
空バルブ2、9の接点間に加わる分担電圧を均等化することができる。また、両真空バル
ブ2、9の絶縁性能を同様とすることができる。
【0022】
なお、第1の外部導体4を負荷側、第2の外部導体11を電源側とした場合においても
、同様に両真空バルブ2、9の接点間に加わる分担電圧を均等化することができる。
【0023】
上記実施例1の開閉装置によれば、第1の開閉部1aと第2の開閉部1bとを直列接続
する固定側接続導体部1cの静電容量を第1の開閉部1aおよび第2の開閉部1bよりも
小さくしているので、両真空バルブ2、9を開路したときのそれぞれの接点間に加わる分
担電圧を均等化することができ、全体形状を小型化することができる。
【0024】
なお、上記実施例1では、第1の絶縁層3、第3の絶縁層10および第5の絶縁層17
をエポキシ樹脂でモールドして形成したが、第5の絶縁層17をエポキシ樹脂よりも誘電
率の小さいシリコンゴムのような可撓性材料で全体をモールドして形成してもよい。この
場合、界面接続するための、可撓性絶縁体が不要となる。
【0025】
また、第5の絶縁層17を所定の絶縁厚さ以上の厚さにしてもよい。これにより、固定
側接続導体部1cが形成する静電容量を小さくすることができる。
【実施例2】
【0026】
次に、本発明の実施例2に係る開閉装置を図2を参照して説明する。図2は、本発明の
実施例2に係る開閉装置の固定側接続導体部を示す断面図である。なお、この実施例2が
実施例1と異なる点は、絶縁層である。図2において、実施例1と同様の構成部分におい
ては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0027】
図2に示すように、固定側接続導体16の周りには、例えばエポキシ樹脂を空気中もし
くは絶縁ガス中で加熱発泡させて形成した第6の絶縁層20が設けられている。発泡させ
る割合は、1.5倍としており、実施例1に比べて絶縁厚さを発泡した割合だけ厚くして
いる。
【0028】
発泡させる割合が、1.2倍以下では、固定側接続導体部1cが対地間とで形成する静
電容量を大きく低減することができず、また、3倍以上では、第6の絶縁層20の絶縁耐
力が大きく低下するので好ましくない。
【0029】
これにより、第6の絶縁層20の誘電率が小さく、更に絶縁厚さが厚くなるので、固定
側接続導体部1cが対地間とで形成する静電容量を小さくすることができる。
【0030】
上記実施例2の開閉装置によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0031】
次に、本発明の実施例3に係る開閉装置を図3を参照して説明する。図3は、本発明の
実施例3に係る開閉装置の固定側接続導体部を示す断面図である。なお、この実施例3が
実施例1と異なる点は、固定側接続導体の形状である。図3において、実施例1と同様の
構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0032】
図3に示すように、固定側接続導体21は、断面正方形状としている。固定側接続導体
21の断面積を一定として、一辺と他辺の長さを変化させてみると、一辺と他辺とが同等
長さの断面正方形状において表面積が最も小さくなる。これにより、通電容量を変えるこ
となく、固定側接続導体21の表面積を小さくできるので、固定側接続導体部1cが対地
間とで形成される静電容量を小さくすることができる。なお、角部には、モールド時の応
力緩和のため、僅かな曲率を持たせている。
【0033】
上記実施例3の開閉装置によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0034】
次に、本発明の実施例4に係る開閉装置を図4を参照して説明する。図4は、本発明の
実施例4に係る開閉装置の固定側接続導体部を示す断面図である。なお、この実施例4が
実施例1と異なる点は、固定側接続導体の形状である。図4において、実施例1と同様の
構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0035】
図4に示すように、固定側接続導体22は、複数の導体を束ねた構成としている。導体
の断面形状は、丸形状、多角形状のいずれでもよい。これにより、表皮効果で通電電流を
有効に流すことができるので、単線のものよりも断面積とともに表面積を小さくすること
ができる。
【0036】
上記実施例4の開閉装置によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例5】
【0037】
次に、本発明の実施例5に係る開閉装置を図5を参照して説明する。図5は、本発明の
実施例5に係る開閉装置の構成を示す断面図である。なお、この実施例5が実施例1と異
なる点は、接続導体の取り付け位置である。図5において、実施例1と同様の構成部分に
おいては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0038】
図5に示すように、開閉装置は、第1の開閉部1a、第2の開閉部1b、および第1の
開閉部1aと第2の開閉部1bとを図示下方の可動側間で直列接続する可動側接続導体部
1dで構成されている。
【0039】
可動側接続導体部1dには、互いの接触導体5、12が摺動接触する可動側接続導体2
3が設けられている。可動側接続導体23の周りには、第1の絶縁層3、第3の絶縁層1
0よりも誘電率の小さい例えばエポキシ樹脂のような絶縁材料をモールドして形成した第
7の絶縁層24が設けられている。可動側接続導体部1dの主回路の両端は、それぞれ第
1の開閉部1a、第2の開閉部1bと図示しない可撓性絶縁体を介して界面接続されてい
る。
【0040】
また、第1の開閉部1aおよび第2の開閉部1bの図示上方の固定側には、第1の絶縁
層3や第3の絶縁層10と同種の絶縁材料でモールドされた一方の主回路となる第3の外
部導体25、および他方の主回路となる第4の外部導体26が界面接続されて設けられて
いる。
【0041】
これにより、可動側接続導体部1dが対地間とで形成する静電容量が小さくなり、第1
の開閉部1aと第2の開閉部1bとの分担電圧を均等化することができる。なお、第7の
絶縁層24を実施例2のような発泡絶縁としてもよく、また、可動側接続導体23を実施
例3のような断面正方形状、および実施例4のような複数の導体を束ねた構成としてもよ
い。
【0042】
上記実施例5の開閉装置によれば、真空バルブ2、9の互いの可動側を接続するものに
おいても実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲
で、種々変形して実施することができる。上記実施例では、主回路機器に絶縁材料をモー
ルドして絶縁層のみを形成させて説明したが、絶縁層の表面に接地層を設けたものにおい
ても、互いの真空バルブ2、9を接続する接続導体部の静電容量を小さくすれば、分担電
圧を均等化することができる。
【0044】
また、第1の絶縁層3および第3の絶縁層10内に、真空バルブ2、9と並列接続され
るコンデンサを埋め込んだものにおいても、接続導体部の静電容量を小さくすれば、分担
電圧を均等化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例1に係る開閉装置の構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施例2に係る開閉装置の固定側接続導体部を示す断面図。
【図3】本発明の実施例3に係る開閉装置の固定側接続導体部を示す断面図。
【図4】本発明の実施例4に係る開閉装置の固定側接続導体部を示す断面図。
【図5】本発明の実施例5に係る開閉装置の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0046】
1a 第1の開閉部
1b 第2の開閉部
1c 固定側接続導体部
1d 可動側接続導体部
2、9 真空バルブ
3 第1の絶縁層
4 第1の外部導体
5、12 接触導体
6、13 絶縁操作ロッド
7、14 操作機構
8 第2の絶縁層
10 第3の絶縁層
11 第2の外部導体
15 第4の絶縁層
16、21、22 固定側接続導体
17 第5の絶縁層
20 第6の絶縁層
23 可動側接続導体
24 第7の絶縁層
25 第3の外部導体
26 第4の外部導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接離自在の一対の接点を有する真空バルブの周りを絶縁材料でモールドして第1の絶縁
層を形成させた第1の開閉部と、
前記真空バルブと同様の真空バルブの周りを絶縁材料でモールドして第3の絶縁層を形成
させた第2の開閉部と、
前記第1の開閉部および前記第2の開閉部を直列接続する接続導体の周りを絶縁材料でモ
ールドして第5の絶縁層を形成させた接続導体部と、
前記第1の開閉部および前記第2の開閉部にそれぞれ連結された操作機構とを具備し、
前記接続導体部が対地間とで形成される静電容量を、前記第1の開閉部および前記第2の
開閉部よりも小さくしたことを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記第5の絶縁層の誘電率を、前記第1の絶縁層および前記第3の絶縁層よりも小さく
したことを特徴とする請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記第5の絶縁層は、発泡絶縁からなり、発泡させた割合だけ絶縁厚さを厚くしたこと
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の開閉装置。
【請求項4】
前記第5の絶縁層内に埋め込まれる接続導体を、断面正方形状としたことを特徴とする
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項5】
前記第5の絶縁層内に埋め込まれる接続導体を、複数の導体を束ねて構成したことを特
徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項6】
前記接続導体部は、前記第1の開閉部および前記第2の開閉部の固定側に設けられるこ
とを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項7】
前記接続導体部は、前記第1の開閉部および前記第2の開閉部の可動側に設けられるこ
とを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−5118(P2007−5118A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183236(P2005−183236)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】