説明

間接活線用張線装置

【課題】間接活線工法による配電線工事が主流になりつつあることを考慮して、非活線用のベルト式張線器と取り違いを生じやすい直接活線用張線器を廃止して、代わりに間接活線用工法に適した張線装置を提供する。
【解決手段】間接活線用張線装置は、張線器1と掴線器40とを有して構成され、張線器1は、ベルト4を介して相互に遠近可能に連結された張線器本体2及び掴線器取付部3と、柱状立設体Pに固定して張線器本体2を柱状立設体Pに支持するための固定部15と、ベルト4の張弛調整をする張弛調整機構7とを備え、ベルト4は絶縁性の帯状部材であると共に、張弛調整機構7の軸部8の端部にラチェットレンチ20を装着するための六角ボルト19が設けられ、六角ボルト19が回転することによりベルト4の張弛の調整が行われると共に、張線器本体2には共用操作棒24が取り付け可能な受け部23が設けられたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、間接活線工法による架空線の取り付け・取り外し・張緩度調整の工事に適した張線器及び掴線器から成る張線装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の張線装置としては、例えば特許文献1等に示されるような、架空線を掴むための掴線器(チャックやカムラーとも称する。以下、同じ。)と、架空線を電柱側に引っ張るための張線器(シメラーとも称する。以下、同じ。)と、電柱に巻き付けて張線器を固定するための尻手ワイヤとを有し、掴線器は張線器の掴線器取付部に取り付けられており、この掴線器取付部は張線器の本体部と牽引部材を介して連結され、牽引部材は張線器の本体部に設けられた張弛調整機構により張弛が調整される構成のものが公知になっている。
【0003】
そして、本願の図8に示されるように、従来の直接活線工法による配電線工事に用いられる直接活線用張線器100は、牽引部材には、掴線器を架空線に接続した際に牽引部材が金属のワイヤであるとワイヤが充電することから、ワイヤの代わりにベルト101が用いられている。更に、直接活線用張線器100は、本願の図8に示されるように、張線器の本体部102とフック103との間、及び、張線器の本体部102と掴線器取付部104との間に絶縁部分105、106が配置されたものとなっている。そして、直接活線用工法で用いるのでハンドル107も有している。
【0004】
一方で、直接活線用張線器について上記のように絶縁手袋を装着した作業員がハンドル107を握ってベルト101の捲きと戻しの操作をする構造となっているのに対し、非活線作業でも使用される張線器においても、例えば特許文献2及び図9に示されるように、牽引部材としてワイヤの代わりにベルト111を用いたベルト式張線器110が存在し、この非活線用のベルト式張線器110もハンドル112によりベルト111の捲きと戻しとの操作をする構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−103513号公報
【特許文献2】実開平6−5313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、本願の図8に示される直接活線用張線器100と特許文献3及び図9に示される非活線用のベルト式張線器110とは、直接活線用張線器100も作業員が絶縁手袋を装着して手作業で操作することから、その形態が絶縁部分105、106の有無以外において近似しており、直接活線工法による配電線工事において、誤って本願の図9に示される非活線用のベルト式張線器110が使用されてしまう可能性がある。
【0007】
そして、直接活線工法による配電線工事でこの非活線用のベルト式張線器110が使用されると、本願の図9に示されるように、非活線用のベルト式張線器110の本体113は絶縁部分105、106を有さず全て金属製なので、本願の図10に示されるように、張線器110のベルト111を緩めた際に、高圧耐張碍子116の金属部分116aに張線器110の本体113や金属製のフック114が接して、張線器110の本体113が経路となって高圧耐張碍子116の両側に位置する架空線117、118同士が本願の図10の破線の矢印に示されるように、地絡してしまう事故を発生させ、配電線の故障を招くおそれがあるとの不具合があった。
【0008】
また、直接活線用張線器は、取扱いに熟練を必要とするものであり、特定の者しか使用することができないので、作業の汎用性に欠けるという問題があり、しかも作業員が充電状態の架空線に近接して作業をするので、広範囲にわたって感電防止用の防具の設置が必要であると共に、直接活線用張線器のハンドルの回転操作時にハンドルが防具に誤って当たって防具が外れてしまい、作業員が感電したり、地絡が生じたりするおそれもあった。
【0009】
そこで、間接活線工法を利用して配電線工事を行う方が直接活線用工法より安全であり、且つ近年において間接活線工法による配電線工事が主流になりつつあることを考慮し、非活線用のベルト式張線器と取り違いを生じやすく取扱いに熟練を必要とする直接活線用張線器を廃止し、代替品として新たに間接活線用張線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る間接活線用張線装置は、一方が自由端となっている架空線の前記自由端側部位を掴むための掴線器と前記架空線を不動態の柱状立設体側に引っ張るための張線器とで構成された間接活線用張線装置において、前記張線器は、牽引部材を介して相互に遠近可能な状態で連結された張線器本体及び掴線器取付部と、前記柱状立設体に固定して前記張線器本体を前記柱状立設体に支持するための固定部と、前記牽引部材の張弛の調整をするための張弛調整機構とを備え、前記牽引部材は絶縁性の帯状部材であると共に、前記張弛調整機構の軸部の端部に間接活線用工具を装着するための装着部が設けられ、前記装着部が回転することにより牽引部材の張弛の調整が行われることを特徴としている(請求項1)。ここで、架空線としては、例えば電線等が挙げられる。不動態の柱状立設体とは、電柱等が挙げられる。張弛調整機構の装着部とは、例えば張弛調整機構の軸部からこの軸部の軸方向に突出した六角ボルトであり、装着部に装着される間接活線用工具としては、例えば六角形の穴を有する間接ラチェット工具等の先端工具が挙げられる。張線器には直接活線用張線器や非活線用ベルト式張線器のような張弛調整機構を回転させるためのハンドルが連結されていない構成となっている。張線器の固定部は、例えば柱状立設体に引き掛けるためのフックや柱状立設体に巻き付けるための尻手ワイヤ等を装着することができるものである。
【0011】
そして、この発明に係る間接活線用張線装置では、前記張線器本体には間接活線用の共用操作棒が取り付け可能な受け部が設けられていることを特徴としている(請求項2)。この受け部は、直接活線用張線器や非活線用ベルト式張線器にない構成である。
【0012】
これらにより、張線器本体の受け部に間接活線用の共用操作棒を取り付けて張線器を下方から支持しつつ、張弛調整機構の装着部に間接活線用工具を装着して装着部を所定方向に回転させることにより張弛調整機構による牽引部材の張弛の調整を行うという間接活線工法を用いることが可能である。そして、間接活線用張線装置は、張弛調整機構に連結されたハンドルがなかったり、共用操作棒を取り付け可能な受け部を張線器本体に有していたりする形態的な特徴を有することにより、直接活線用張線器や非活線用ベルト式張線器と容易に区別することができ、取り違いを生じない。
【0013】
また、この発明に係る間接活線用張線装置では、前記張弛調整機構には間接活線用工具で把持することが可能な2つの把持部が設けられ、一方の把持部を把持して操作することで牽引部材の捲き動作が可能となり、他方の把持部を操作することで牽引部材の引き出し動作が可能となることを特徴としている(請求項3)。
【0014】
これにより、張弛調整機構の切り換え操作も絶縁ヤットコ等の間接活線用工具を利用して行うことができるので、作業全体として間接活線工法の採用が可能である。
【0015】
更に、この発明に係る間接活線用張線装置において、前記掴線器は、掴線器本体、作動部材、連結部材及び可動側掴線部を有して構成され、前記掴線器本体は、前記可動側掴線部が遠近して前記架空線を掴む固定側掴線部と前記連結部材を挿通させるガイド部とを有しており、前記連結部材の動きが前記作動部材を介して前記可動側掴線部の前記固定側掴線部に対する遠近に伝達される構成となっていると共に、前記第ガイド部と前記連結部材とには、間接活線用工具の相対的に遠近可能に動く把持部が取り付け可能な把持部取付部が設けられていることを特徴としている(請求項4)。
【0016】
これにより、掴線器で架空線を掴む操作も絶縁ヤットコ等の間接活線用工具を利用して行うことができるので、この点でも作業全体として間接活線工法の採用が可能である。
【0017】
更にまた、この発明に係る間接活線用張線装置において、前記張線器本体は、前記張弛調整機構を有する部位と前記受け部を有する部位との間に絶縁部分を有することを特徴としている(請求項5)。
【0018】
これにより、張線器の牽引部材を緩めた際に、高圧耐張碍子の金属部分に張線器本体が接しても、張線器本体の全体が金属製でなく絶縁部分を有するので張線器本体が経路となって地絡が生ずることが抑制される。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、請求項1から請求項5に記載の発明によれば、間接活線用張線装置を構成する掴線器による架空線を掴む操作、間接活線用張線装置を構成する張線器の張弛機構における牽引部材の張弛操作、更には牽引部材の捲きと引き出しとの切り換え操作について、間接活線用工具を利用して行う間接活線工法が可能である。すなわち、架空線から離れた位置で作業員は作業を行うことができるので、作業員の安全を確保することができると共に必要最小限の防具の配置で足りるので作業の効率化・迅速化を図ることもできる。
【0020】
そして、直接活線用張線器が廃止されることから、取扱いに熟練を必要とする直接活線用張線器を不可避的に使用する必要がなくなるので、張線器を使っての配電線工事の作業の汎用性を高めることができ、且つ間接活線用張線装置は、ハンドルがなく且つ共用操作棒を装着するための受け部が設けられているという形態的な特徴を張線器本体に有するので、非活線用のベルト式張線器と取り違えることがない。このため、直接活線用張線器と形態的に近似した非活線用のベルト式張線器を誤って直接活線用工法で使用してしまうというようなヒューマンエラーを本発明ではなくすことも可能となり、この点でも配電線工事の安全性を向上させることができる。
【0021】
特に請求項5に記載の発明によれば、張線器の牽引部材を緩めた際に、高圧耐張碍子の金属部分に張線器本体の金属部分が接しても、張線器本体に絶縁部分を有するので張線器本体が経路となることがなく、このため、高圧耐張碍子の両側に位置する架空線同士が地絡してしまう事故の発生、ひいては、配電線の故障の発生を抑止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、この発明に係る間接活線用張線装置の張線器の構成を示すための説明図であり、図1(a)は張線器の側面図、図1(b)は張線器の底面図である。
【図2】図2は、張線器のベルトの張緩調整機構の軸部から突出した六角ボルトに間接活線用工具のラチェットレンチ等の先端工具が装着される様子を示している。
【図3】図3は、張線器の装着部に間接活線用工具の共用操作棒が装着される様子を示している。
【図4】図4は、この発明に係る間接活線用張線装置の掴線器の構成を示すための説明図である。
【図5】図5は、掴線器の把持部取付部に絶縁ヤットコの把持部を装着した状態を示す説明図である。
【図6】図6は、張線器の本体を間接活線用工具の共用操作棒で下方から支持しつつ間接活線用工具の絶縁ヤットコで掴線器を操作して架空線を掴む作業を示した説明図である。
【図7】図7は、張線器の本体を間接活線用工具の共用操作棒で下方から支持しつつ先端工具としてラチェットレンチが取り付けられた間接活線用工具で張緩調整機構の軸部から突出した六角ボルトを回転させる作業を示した説明図である。
【図8】図8は、直接活線用張線器の構成例を示す説明図である。
【図9】図9は、非活線用ベルト式張線器の一例を示すと共に誤ってこの非活線用ベルト式張線器を直接活線用工法に使用した状態を示す説明図である。
【図10】図10は、非活線用ベルト式張線器を直接活線用工法に誤って使用したために地絡が生じた状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1及び図2において、この発明に係る間接活線用張線装置を構成する張線器1の一例が示されており、この張線器1は、張線器本体2と掴線器取付部3とにより基本的に成っている。
【0025】
このうち、張線器本体2は、図1に示されるように、牽引部材たるベルト4が捲回された円柱状のドラム5と、このドラム5と一体に回転する複数の歯6aを有するギア6とで形成されたベルト4の張緩調整機構7を備えている。ドラム5とギア6とは軸部8を介して連結されている。ドラム5は、この実施例では2枚のプレート9、10間に配置されていると共に、ギア6は、この実施例ではプレート9の外面側に配置されている。そして、ギア6は、係合部11の爪部12、13により、所定方向にのみ回転するように規制される。
【0026】
張線器本体2のベルト4の引き出し方向と反対側には、ジョイントボルト14が装着された固定部15が設けられている。この固定部15は、フックや尻手ワイヤ等の固定手段が取り付けられるようになっている。
【0027】
また、掴線器取付部3は、牽引部材たるベルト4が接する円柱状のドラム16と、下記する掴線器40が取り付けられる固定部17とで構成されており、固定部17には掴線器40が連結されるジョイントボルト18が装着されている。
【0028】
ところで、張線器本体2は、張緩調整機構7のギア6から軸部8の軸方向に沿って突出した六角ボルト19を有しており、この六角ボルト19は、図2に示されるように間接活線用の共用操作棒24(図3に示す。)の先端工具として取り付けられたラチェットレンチ20で回すことができるように、ラチェットレンチ20の穴部21にてガタツキなく外挿可能な外径寸法とギア6からの突出寸法を有している。これにより、ラチェットレンチ20を回転させることで、軸部8を介してドラム5が回転し、ベルト4をドラム5側に捲き取ったりドラム5から引き出したりすることが可能である。
【0029】
尚、六角ボルト19は、図示しないが軸部8に対してギア6側とは反対側(プレート10側)に突出形成させても良い。これにより、張緩調整機構7のギア6側では既存の構成を用いることができ、例えば緊急用・非常用等のために作業員が手で回転させるハンドル(図示せず。)を撤去せずに保持することも可能である。
【0030】
また、張線器本体2は、係合部11を有する部位に対して張緩調整機構7側とは反対側に絶縁部分22を延設し、この絶縁部分に受け部23を設けたものとなっている。
【0031】
受け部23は、図3に示されるように、間接活線用の共用操作棒24の接続部25と相互に接続するためのものであり、六角ボルト19とは例えば90度等、所定の角度でずれるように張線器本体2に設けられている。
【0032】
このうち、共用操作棒24の接続部25は、それ自体は公知のもので、頭部26の頂部から突出した突起部27と頭部26の側面から対象な位置となるように突出した2つの側方突起部28とで構成されている。29はロックナットで、このロックナット29を所定方向に回転させることで受け部23と強固に締結し合うようにすることができる。
【0033】
これに対し、受け部23は、共用操作棒24の接続部25を構成する頭部26を挿入可能な有底の孔部30がその下端側から軸方向に沿って形成されている。そして、孔部30は、当該孔部30の中心を基準として略対象となるように位置に2つのスリット31(但し、その一方は図示しない。)が形成されている。これらのスリット31は、孔部30の開口端から当該孔部30の軸方向に沿ってその途中(接続部25の下端から突起部28までと同じ寸法)まで延びた後に当該孔部30の径方向の両側に向って延びる略T字状の形状をなしている。すなわち、スリット31は、孔部30の軸方向に沿って延びるスリット部31aと孔部30の径方向に沿って延びるスリット部31bとから構成されている。
【0034】
このような張線器本体2の受け部23と共用操作棒24の接続部25との構成により、側方突起部28をスリット31のスリット部31aに通すようにして共用操作棒24のスリット31に接続部25の頭部26を押入れ、共用操作棒24或いは接続部25の一方を回転させることにより、頭部26の側方突起部28が受け部23のスリット部31bの窪み部に収まり、共用操作棒24と接続部25と接続状態となる。
【0035】
しかるに、張線器本体2のギア6を有する部位と固定部15との距離が延びるように絶縁部分22を設けることにより、張線器本体2のギア6を有する側と充電された架空線等との距離が離れ、且つ張線器本体2全体が地絡経路となることがないので、張線器1のベルト4を緩めた際に、図示しない高圧耐張碍子の金属部分に張線器本体2が接するおそれが少なくなり、仮に張線器本体2が接しても絶縁部分22を有するので張線器1の張線器本体2が地絡経路となって高圧耐張碍子の両側に位置する架空線L同士が地絡する等の地絡事故を発生させることがない。
【0036】
また、張線器本体2に共用操作棒24を装着可能な受け部23を設けることにより、六角ボルト19にラチェットレンチ20を装着して回転させ、ベルト4の捲き付けや引き出しを行う際に、受け部23に共用操作棒24の接続部25を接続させて、この共用操作棒24のグリップを把持することにより、張線器本体2を下方から支持することが可能となる。
【0037】
ここで、張線器本体2に対して張緩調整機構7から離れた位置に絶縁部分22を設けてこの絶縁部分22に受け部23を設ける構成を図示して説明したが必ずしもこれに限定されず、図示しないが、張線器本体2に対して張緩調整機構7と同じ位置に受け部23を設けるようにしても良い。この構成によれば、六角ボルト19にラチェットレンチ20を装着して回転させる際に共用操作棒24で張線器本体2を安定性良く下方から支持することが可能となる。
【0038】
更に、張線器本体2の張緩調整機構7に設けられた係合部11は、図1(a)に特に示されるように、把持部32、33を有している。これにより、直接に手で係合部11を操作しなくても、間接活線用工具のヤットコ等で把持部32、33を持って係合部11を操作することが可能となっている。
【0039】
すなわち、把持部33を持って係合部11を回転させ、爪部13がギア6の歯6aと係合するようにすることにより、ドラム5の回転が一方向にのみ可能なように規制されると共にドラム5の回転によりベルト4が捲き取られて架空線Lの自由端が張線器1の本体2側に近接してゆく捲モードとし、把持部32を持って係合部11を先程とは逆方向に回転させ、爪部12がギア6の歯6aと係合するようにすることにより、ドラム5の回転が先程とは逆方向にのみ可能なように規制されると共にドラム5の回転によりベルト4が引き出されて架空線Lの自由端が張線器1の本体2から離れてゆく戻モードとなる。
【0040】
図4及び図5において、この発明に係る間接活線用張線装置を構成する掴線器40の一例が示されている。
【0041】
この掴線器40は、掴線器本体41、作動部材42、連結部材43及び可動側掴線部44を有して構成されている。そして、掴線器本体41には、可動側掴線部44と共に架空線Lを掴むための固定側掴線部45が形成されていると共に、連結部材43を挿通させる通孔(図示せず。)を有するガイド部46が下方に向けて延出している。作動部材42は、鉛直方向に見て上角部、中角部、下角部を有する略三角形状をなしているもので、中角部が掴線器本体41に軸部47を介して回動自在に取り付けられ、下角部に軸部48を介して連結部材43が回動自在に取り付けられていると共に、上角部には、取付ピン49を介して可動側掴線部44が回動自在に取り付けられている。
【0042】
そして、掴線器40は、図4及び図5に示されるように、ガイド部46と連結部材43とに把持部取付部51、52が設けられている。このうち、把持部取付部51は、ガイド部46の通孔内を連結部材43がこの通孔の軸方向に移動するのを妨げない状態でガイド部46に設けられている。そして、把持部取付部51、52は、図5に示されるように、それぞれ内部に下方に開口した空間部53を有しており、この実施例では間接活線用工具である絶縁ヤット54の不動側把持部55の先端部分を把持部取付部51の空間部53に挿入し、可動側把持部56の先端部分を把持部取付部51、52の空間部53に挿入して、これらの把持部55、56を把持部取付部51、52に取り付けることが可能となっている。
【0043】
このような掴線器40の構成とすることにより、把持部取付部51を介して絶縁ヤット54の不動側把持部55でガイド部46を保持した状態にて、絶縁ヤット54を操作して可動側把持部56を不動側把持部55に近接させることで、把持部取付部52を介して連結部材43は図4の細い矢印の方向に動き、更には、作動部材42が図4の白抜き矢印の方向に沿って回動するので、可動側掴線部44を固定側掴線部45から離隔するように動かすことができる。
【0044】
そして、可動側掴線部44が固定側掴線部45から離隔した状態を保持しながら両掴線部44、45の間に図5に示されるように架空線Lを介在させた後、絶縁ヤット54を操作して可動側把持部56を不動側把持部55から離隔させることで、把持部取付部52を介して連結部材43は図4の細い矢印の方向とは逆方向に動き、更には、作動部材42が図4の太い矢印の方向に沿って回動するので、可動側掴線部44を固定側掴線部45に近接するように動かし、両掴線部44、45で架空線Lを掴むことができる。
【0045】
このため、この掴線器40は、間接活線工法で使用することができるのみならず、可動側掴線部44を固定側掴線部45に近接する方向(図4の太い矢印の方向)に作動部材42を掴線器本体41に対し回動付勢させるための弾性機構について、この実施例ではあっても良いが必要不可欠な構成要素とはなっておらず、部品点数の削減も図られている。
【0046】
以上の構成により、この発明に係る間接活線用張線装置を用いた架空線Lの引っ張り作業の一例について図6及び図7を用いて説明する。
【0047】
図6に示されるように、電柱等の不動態の柱状立設体Pに尻手ワイヤ58を巻き付けると共に、張線器本体2の固定部15にフック59を取り付け、掴線器取付部3の固定部17に掴線器40を取り付けておく。次に、張線器本体2の受け部23に共用操作棒24の接続部25を接続し、掴線器40の把持部取付部51、52に絶縁ヤット54の把持部55、56を装着する。更に共用操作棒24を操作して、尻手ワイヤ58の環状部分に張線器本体2のフック59を引き掛けると共に、絶縁ヤット54を操作して掴線器40の可動側掴線部44と固定側掴線部45とで架空線Lを掴む。
【0048】
そして、図7に示されるように、絶縁ヤット54の把持部55、56を掴線器40の把持部取付部51、52から外す。また、図7に示されるように、共用操作棒24は、張線器本体2の受け部23に装着した状態を維持することで、張線器1を共用操作棒24で下方から支持するようにする。そして、図7に示されるように、共用操作棒24の先端に取り付けられたラチェットレンチ20を張線器本体2の軸部8と連結された六角ボルト19に装着する。このとき、張緩調整機構7の爪部12がギア6の歯6aと係合する戻モードになっている場合には、把持部33を絶縁ヤット54で持って係合部11を回転させ、張緩調整機構7の爪部13がギア6の歯6aと係合する捲モードに切り換える。そして、ラチェットレンチ20が取り付けられた共用操作棒24を操作してベルト4をドラム5に捲き付けることにより、図6と図7とを対比して判るように、架空線Lの自由端を柱状立設体P側に相対的に引きつけることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 張線器
2 張線器本体
3 掴線器取付部
4 ベルト
5ラム
6 ギア
7 張緩調整機構
8 軸部
11 係合部
12 爪部
13 爪部
19 六角ボルト
20 ラチェットレンチ
23 受け部
24 共用操作棒
32 把持部
33 把持部
40 掴線器
41 掴線器本体
42 作動部材
43 連結部材
44 可動側掴線部
45 固定側掴線部
46 ガイド部
47 軸部
48 軸部
49 取付ピン
51 把持部取付部
52 把持部取付部
54 絶縁ヤット
55 不動側把持部
56 可動側把持部
58 尻手ワイヤ
59 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が自由端となっている架空線の前記自由端側部位を掴むための掴線器と前記架空線を不動態の柱状立設体側に引っ張るための張線器とで構成された間接活線用張線装置において、
前記張線器は、牽引部材を介して相互に遠近可能な状態で連結された張線器本体及び掴線器取付部と、前記柱状立設体に固定して前記張線器本体を前記柱状立設体に支持するための固定部と、前記牽引部材の張弛の調整をするための張弛調整機構とを備え、
前記牽引部材は絶縁性の帯状部材であると共に、前記張弛調整機構の軸部の端部に間接活線用工具を装着するための装着部が設けられ、前記装着部が回転することにより牽引部材の張弛の調整が行われることを特徴とする間接活線用張線装置。
【請求項2】
前記張線器本体には間接活線用の共用操作棒が取り付け可能な受け部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の間接活線用張線装置。
【請求項3】
前記張弛調整機構には間接活線用工具で把持することが可能な2つの把持部が設けられ、一方の把持部を把持して操作することで牽引部材の捲き動作が可能となり、他方の把持部を操作することで牽引部材の引き出し動作が可能となることを特徴とする請求項1又は2に記載の間接活線用張線装置。
【請求項4】
前記掴線器は、掴線器本体、作動部材、連結部材及び可動側掴線部を有して構成され、前記掴線器本体は、前記可動側掴線部が遠近して前記架空線を掴む固定側掴線部と前記連結部材を挿通させるガイド部とを有しており、前記連結部材の動きが前記作動部材を介して前記可動側掴線部の前記固定側掴線部に対する遠近に伝達される構成となっていると共に、
前記第ガイド部と前記連結部材とには、間接活線用工具の相対的に遠近可能に動く把持部が取り付け可能な把持部取付部が設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3のいずれかに記載の間接活線用張線装置。
【請求項5】
前記張線器本体は、前記張弛調整機構を有する部位と前記受け部を有する部位との間に絶縁部分を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の間接活線用張線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−62960(P2013−62960A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200074(P2011−200074)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)