説明

関節炎状態を特徴づけるための組成物および方法

本発明は、14−3−3タンパク質に対する自己抗体またはその循環免疫複合体および関節炎状態の診断および予後のためのそれらの検出に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、14−3−3に対する自己抗体および関節炎状態を評価するためのその使用方法が記載される。
【背景技術】
【0002】
関節炎または関節痛は一般に、身体の関節の炎症性疾患を示し、通常、疼痛、腫脹およびこわばりを伴う。関節炎は、感染、外傷、変性疾患、代謝疾患もしくは障害または他の未知の病因を含むいくつかの原因のいずれかに起因し得る。変形性関節炎(OA)は関節への外傷や関節の感染に続いて、または単に老化の結果として起こりえる非炎症性関節炎一般的な型である。変形性関節炎はまた、変性関節疾患としても知られている。関節リウマチ(RA)は、伝統的に、免疫系が関節を攻撃する慢性の炎症性自己免疫疾患であると考えられている。それは、身体障害性の、有痛性の炎症状態であり、疼痛および関節破壊のために可動性の実質的な損失に至る可能性がある。強直性脊椎炎(AS)は、主に脊椎および仙腸関節に影響し、最終的に脊椎融合を引き起こす慢性かつ有痛性の変性炎症性関節炎である。
【0003】
身体の関節は滑膜関節と呼ばれ、各滑膜関節は一般に2つの隣接する骨の対向端を含む。骨の端は軟骨組織に包まれ、一方、全体の関節領域は、滑液膜を含む滑膜と呼ばれる保護軟組織に包まれている。滑液膜は潤滑にする滑液を産生し、関節内の腔中に放出する。正常な関節では、滑液の量はかなり少ない。その潤滑機能の他に、滑液はまた、溶質および少量の休止単核および滑膜細胞のための貯蔵庫として機能する。
【0004】
滑膜は関節炎を促進すると考えられる多くの傷害、例えば関節に対する外傷および/または身体の免疫系の機能不全に応じて刺激され、肥厚する可能性がある。そのような傷害の結果としては、滑液の関節内への過剰産生および放出が挙げられ、これにより、関節領域内、またはその周りで腫脹が引き起こされる。容積の増加は典型的には、線維芽細胞様滑膜細胞(FLS細胞)、炎症促進性サイトカイン例えばインターロイキン−1(IL−1)および腫瘍壊死因子(TNF−α)、ヒスタミンタンパク質およびペプチド、ならびに分解酵素、例えばマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の滑液中の濃度の増加を伴う。FLS細胞は、正常滑液中の滑膜細胞の約3分の2を占め、明確な分泌系を有し、外傷または炎症の状態下では、通常、大量のMMP、とりわけ、MMP−1、3、8、9、10、11および13を滑液中に分泌する。MMP−1およびMMP−3は、関節を構成する軟骨および軟骨下骨組織の進行性の構造損傷に対して重要な役割を果たすと考えられる。FLS細胞を活性化させてMMP−1およびMMP−3を産生させる公知の因子としては、IL−1およびTNF−αが挙げられる。
【0005】
RA、ASおよびOAに対する原因因子は現在のところ明確になっていない。しかしながら、疾患の進行と関連する生理学的事象、関節内での過剰の滑液の蓄積により引き起こされる長期間の腫脹および炎症に始まり、分解酵素活性による軟骨および軟骨下骨組織の分解および変質を経て、永久的な構造損傷に至る随伴する骨内へのFLS細胞増殖は明らかにされている。十分早期に検出された場合、適当な理学療法および医学療法を用いることにより、疾患の長期悪影響は逆転させること、あるいは少なくとも最小限に抑えることができる。したがって、関節炎の早期同定のための好適なバイオマーカーの同定にかなりの努力がなされている。この目的を達成するために、Kilaniら(2007,J.Rheum.34:1650−1657;WO2007/128132)は、14−3−3タンパク質ファミリーの2つのメンバー、特に、14−3−3ηおよび14−3−3γが、関節炎患者の滑液および血清内に存在し、これらのアイソフォームが滑液および血清中のMMP−1およびMMP−3のレベルと直接相関することを報告している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、生体試料中の14−3−3タンパク質(単数または複数)に対する自己抗体の存在が、関節炎状態の診断および/または予後と相関するという所見に関する。そのような自己抗体と関節炎状態との間の強い相関により、対象由来の生体試料中の、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との循環免疫複合体をアッセイすることにより、関節炎状態の診断および/または予後診断が可能になる。好ましい実施形態において、14−3−3タンパク質(単数または複数)はηおよび/またはγアイソフォームを含む。
【0007】
したがって、本明細書には、対象由来の生体試料を少なくとも1つの14−3−3タンパク質またはその断片と接触させ、14−3−3タンパク質またはその断片に対する自己抗体を検出することを含み、少なくとも1つの14−3−3タンパク質またはその断片に対する自己抗体の存在/量が対象における関節炎状態の存在および/または状況を示す、哺乳類対象において関節炎状態を評価するおよび/または特徴づける方法が記載される。本明細書にはまた、対象由来の生体試料において自己抗体と少なくとも1つの14−3−3タンパク質との間の循環免疫複合体を検出することを含み、試料中に存在する免疫複合体の存在/量が、対象における関節炎状態の存在および/または状況を示す、哺乳類対象において関節炎状態を評価するおよび/または特徴づける方法が記載される。
【0008】
14−3−3タンパク質またはその断片は、複数の14−3−3タンパク質アイソフォームの間で共有されるエピトープを含むことができ、または14−3−3タンパク質アイソフォームの1つまたはサブセットに特有のエピトープを含むことができる。好ましい実施形態において、14−3−3タンパク質またはその断片は14−3−3ηおよび/またはγエピトープを含む。1つの実施形態において、14−3−3タンパク質またはその断片は、少なくとも1つの他の14−3−3アイソフォーム、例えば14−3−3γにより共有される14−3−3ηエピトープを含む。別の実施形態において、14−3−3ηエピトープは14−3−3ηに特有である。
【0009】
1つの実施形態において、検出工程は、対照試料と比較するために、生体試料中の14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体のレベルを定量/測定することを含む。したがって、対象において関節炎状態を評価するための本発明の方法は、予後ならびに診断の判定を実現することができる。
【0010】
1つの態様では、対照試料は正常な対照であり、比較は関節炎診断を示す。1つの実施形態では、生体試料中の14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体の、正常な対照試料(例えば、関節炎状態を有しない別の対象由来)と比較したレベルの増加は、対象における関節炎状態の診断指標となる。
【0011】
したがって、いくつかの実施形態では、対象由来の生体試料中の14−3−3タンパク質に対する自己抗体または14−3−3タンパク質との免疫複合体の存在、および/または正常な(すなわち、関節炎ではない)対照試料におけるそのような自己抗体または免疫複合体のレベルに対する、対象由来の生体試料におけるそのような自己抗体または免疫複合体のレベル増加の存在は、対象が関節炎状態を有するという診断を実現する。
【0012】
1つの態様では、対照試料は哺乳類対象由来の以前の生体試料であり、比較は、疾患進行および/または治療計画の有効性を示す。1つの実施形態では、以前の試料(例えば、対象由来のベースライン生体試料)と比較した試料中の14−3−3に対する自己抗体または14−3−3との循環免疫複合体のレベルの減少は、進行中の治療計画の有効性を示す。
【0013】
したがって、いくつかの実施形態では、対象由来の生体試料において検出される14−3−3もしくはその断片に対する自己抗体または14−3−3もしくはその断片との免疫複合体の、同じ対象由来のベースライン生体試料中に存在する自己抗体または複合体のレベルと比較した相対レベルは、関節炎状態の予後診断を実現し、または、治療計画の有効性を示す。
【0014】
1つの態様では、対照試料は関節炎対照であり、比較は疾患の予後を示す。1つの実施形態では、関節炎対照試料(例えば、明確な関節炎状態を有する別の対象由来)と比較した、14−3−3に対する自己抗体または14−3−3との免疫複合体の相対レベルは、関節炎の予後指標となる。
【0015】
したがって、いくつかの実施形態では、関節炎状態を有する対象は、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体および/または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との循環免疫複合体のレベルに検出可能な差異を有し、これらの差異は予後に関連する。1つの例では、別の患者などにおいて、関節炎状態の経過を通して、例えば、治療前、治療中、治療後に存在することが予め決定されているレベルと比較して、対象において検出される自己抗体の相対レベルに基づき、特定の病期または関節炎状態の病理組織学的表現型を決定するために使用することができる方法が、本明細書に開示されている。別の例では、本明細書で開示される方法を使用して、対照試料(例えば、データベースに保存され得る)と比較した、生体試料において検出される自己抗体の相対レベルに基づき、関節炎状態の発現の危険性が高い対象由来ものであるとして、生体試料を分類することができる。
【0016】
別の態様では、本明細書で開示される方法を使用して、例えば、治療計画による治療が成功した第2の対象由来の第2の生体試料の対照試料と比較した、対象由来の生体試料において検出された自己抗体の相対レベルに基づき、治療計画への対象の応答性を予測することができる。
【0017】
したがって、いくつかの実施形態では、第1の対象由来の生体試料中の、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体の相対レベルが、治療に対する応答能力が知られている対象由来の生体試料中の、14−3−3に対する自己抗体または14−3−3との免疫複合体のレベルと比較され、そのような比較によって、第1の対象の治療に対する応答の可能性を決定する。治療計画に対する対象の感度の決定は、関節炎状態を有する対象を治療する方法に関する情報を与えるために使用され得る。例えば、本明細書には、対象由来の生体試料において14−3−3に対する自己抗体のレベルを測定すること(例えば、自己抗体/14−3−3免疫複合体形成レベルを測定することによる)、14−3−3に対する自己抗体または14−3−3との免疫複合体のレベルを、治療計画に対する対象の感度に相関させること、ならびに治療計画を対象に提供することを含む、関節炎状態を有する対象を治療する方法が記載される。1つの態様では、本発明は、患者試料中の少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体のレベルを決定すること、および治療を受けている患者中の14−3−3が関連する自己抗体/免疫複合体のレベルをモニタすることを含む、関節炎状態の治療をモニタするための方法を提供する。
【0018】
別の態様では、本明細書には、患者において関節炎のサブタイプを決定および/または区別するための方法が記載される。この態様では、第1の対象由来の生体試料中の、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体の相対レベルは、その関節炎のサブタイプが知られている、および/または以前に確立されている1以上の他の対象由来の生体試料中の、14−3−3に対する自己抗体または14−3−3との免疫複合体のレベルと比較され、第1の対象に対する関節炎のサブタイプを決定する。
【0019】
第1の対象由来の生体試料中の、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体のレベルが、その関節炎のサブタイプが知られている、および/または以前に確立されている他の対象由来の生体試料中の、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体のレベルと類似することの決定は、第1の対象が他の対象と同じサブタイプの関節炎を有することを示し得る。例えば、第1の対象由来の生体試料中および炎症性関節炎、例えば関節リウマチを有することが知られている別の対象の生体試料中の各々に含まれる、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体のレベルが同様であれば、第1の対象もまた、炎症性関節炎、例えば関節リウマチを有すると決定し得る。
【0020】
さらに、第1の対象由来の生体試料中の、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体のレベルが、その関節炎のサブタイプが知られている、および/または以前に確立されている別の対象由来の生体試料中の、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体のレベルと異なっていることの決定は、第1の対象が他の対象と異なるサブタイプの関節炎を有することを示し得る。例えば、第1の対象由来の生体試料中および非炎症性関節炎、例えば変形性関節炎を有することが知られている他の対象の生体試料中の各々に含まれる、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体のレベルが異なれば、第1の対象は、炎症性関節炎、例えば関節リウマチを有すると決定し得る。
【0021】
1つの実施形態では、検出工程は、免疫学に基づく技術、例えば、免疫沈降、ELISA、ウエスタンブロット分析、免疫組織化学的検査、免疫蛍光法、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫放射定量測定法、ゲル内拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ、沈降反応、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、タンパク質Aアッセイ、免疫電気泳動アッセイ、蛍光標識細胞分取(FACS)分析、ラジオイムノアッセイ、などを含む。
【0022】
本明細書に記載される方法に従う、14−3−3タンパク質またはその断片に対する自己抗体の検出および/または測定は、試料中の自己抗体と14−3−3もしくはその断片との間の免疫複合体の形成を観察することにより、または、試料中に存在する自己抗体/14−3−3複合体の存在を決定することにより実施され得る。1つの実施形態では、形成は、検出可能に標識された14−3−3タンパク質(単数または複数)またはその断片(単数または複数)により検出され得る。別の実施形態では、複合体は、自己抗体/14−3−3複合体と、免疫グロブリン、例えば自己抗体の免疫グロブリンバックボーンに結合する検出可能に標識された二次抗体との間の第2の免疫複合体を形成させることにより検出され得る。
【0023】
1つの実施形態では、方法は、患者の血液、滑液、血漿、血清または組織(例えば、滑膜関節、損傷関節組織など)中の、14−3−3に対する自己抗体またはその循環免疫複合体を検出することを含む。1つの実施形態では、検出は、14−3−3タンパク質またはその断片を用いた、血液、滑液、血漿、血清または組織からの14−3−3に対する自己抗体の免疫沈降により実施される。1つの実施形態では、検出は、ELISAの使用を含む。1つの実施形態では、検出は、患者由来の滑液、血漿または血清を含む試料のウエスタンブロット分析を含む。1つの実施形態では、検出は、ラジオイムノアッセイの使用を含む。1つの実施形態では、検出は、ストリップ試験の使用を含む。1つの実施形態では、検出は、ポイントオブケア検査の使用を含む。1つの実施形態では、14−3−3に対する自己抗体またはその循環免疫複合体の検出は、関節炎の別のマーカー(例えば、MMP、抗CCP、抗RFおよび/またはCRP)の検出と組み合わされる。
【0024】
本明細書にはまた、対象において関節炎状態を評価するための試薬を含むキットであって、試薬が14−3−3タンパク質またはその断片に対する自己抗体を特異的に認識するキットも記載される。1つの実施形態では、試薬は、検出可能に標識された14−3−3タンパク質またはその断片を含むことができ、これを固体支持体に固定させてもよい。14−3−3タンパク質またはその断片は、複数の14−3−3タンパク質アイソフォーム間で共有されるエピトープを含むことができ、または14−3−3タンパク質アイソフォームの1つまたはサブセットに特有のエピトープを含むことができる。好ましい実施形態では、14−3−3タンパク質またはその断片は、14−3−3ηおよび/またはγエピトープを含む。1つの実施形態では、14−3−3タンパク質またはその断片は、少なくとも1つの他の14−3−3アイソフォーム、例えば、14−3−3γにより共有される14−3−3ηエピトープを含む。別の実施形態では、14−3−3ηエピトープは、14−3−3ηに特有である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】関節リウマチと診断された患者由来の血清の段階希釈を用いた組換え14−3−3ηのウエスタンブロット(試料3323)を示す図である。
【図2】関節リウマチと診断された患者由来の血清の段階希釈を用いた組換え14−3−3ηのウエスタンブロット(試料3365)を示す図である。
【図3】関節リウマチと診断されていない患者由来の血清の段階希釈を用いた組換え14−3−3ηのウエスタンブロット(試料40)を示す図である。
【図4】関節リウマチと診断されていない患者由来の血清の段階希釈を用いた組換え14−3−3ηのウエスタンブロット(試料39)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
「対象」および「患者」は同じ意味で使用され、別段に規定する場合を除き、哺乳動物、例えばヒトおよび非ヒト霊長類、ならびにウサギ、ラット、マウス、ヤギ、ブタおよびその他の哺乳動物種を示す。
【0027】
「関節炎状態」、「関節炎」および「関節痛」は同じ意味で使用され、別段に規定する場合を除き、一般的に、身体の関節の炎症性疾患を示す。疼痛、腫脹、こわばり、および運動困難がしばしば、関節炎状態と関連する。関節炎は100を超える様々な病状から構成される。これらは、比較的軽度の形態のものから重度の全身形態となり得、例えば、www.arthritis.ca/types%20of%20arthritis/default.asp?s=1を参照されたい。関節炎状態は、感染、外傷、変性疾患、代謝疾患もしくは障害、または他の未知の病因を含むいくつかの原因のいずれかに起因する可能性がある。関節炎状態はサブタイプ、例えば、関節リウマチ、混合性結合組織病(MCTD)、結晶誘発性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、変形性関節炎、サルコイドーシス、回帰性リウマチ、外傷後関節炎、悪性腫瘍関連関節炎、敗血症関節炎、ライム病関節炎、変形性関節炎、細菌性、感染性関節炎などにより、さらに特定的に説明され得る。関節炎はさらに、他の同定された障害、例えば、痛風、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、乾癬などを伴い得る。明確に規定された関節炎状態は、関節炎の型およびその段階、例えば、発症、寛解、再発などに関する知見が参照される。
【0028】
「自己抗体」は特異的に自己抗原、すなわち正常な組織成分に結合する内在性抗体である。自己抗体は自己抗体を産生する同じ身体の天然由来の抗原に応答して産生される。
【0029】
「免疫学的結合」および「免疫複合体の形成」は同じ意味で使用され、これとの関連において、一般的に、抗体、例えば自己抗体と、その抗体に特異的な抗原との間に起こる型の非共有結合性相互作用を示す。免疫学的結合相互作用の強度または親和性は、相互作用の解離定数(Kd)の観点から表すことができ、Kdが小さいほど、高い親和性が示される。免疫学的結合特性は、当技術分野でよく知られた方法を使用して定量することができる。例えば、Davies等(1990),Annual Rev.Biochem.59:439−473を参照されたい。抗体またはその抗原結合性断片は、検出可能なレベルで(例えば、ELISAアッセイにおいて)リガンドと反応し、同様の条件下で、関係ないリガンドとは検出可能に反応しない場合、「特異的に結合する」、「免疫学的に結合する」および/または「免疫学的に反応性がある」と言われる。
【0030】
「抗体」は、対応する抗原に特異的に結合するタンパク質を含む組成物を示し、免疫グロブリンの共通の一般構造を有する。抗体という用語は、それらが所望の生物活性を示す限り、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二量体、多量体、多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)および抗体断片に及ぶ。抗体は、マウス、ヒト、ヒト化、キメラまたは他の種から誘導されたものであってもよい。典型的には、抗体はジスルフィド結合により相互連結された少なくとも2つの重鎖および2つの軽鎖を含み、これらが結合されると、抗原と相互作用する結合ドメインを形成する。各重鎖は重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)から構成される。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3から構成され、μ、δ、γ、αまたはεアイソタイプであり得る。同様に、軽鎖は軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)から構成される。軽鎖定常領域は1つのドメインCLから構成され、κまたはλアイソタイプであり得る。VHおよびVL領域はさらに、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域に細分化され、より保存的で、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が組み入れられている。各VHおよびVLは3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで下記の順で配列される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含む宿主組織または因子への結合を媒介し得る。重鎖定常領域は、免疫グロブリンの宿主組織または宿主因子への、特に、Fc受容体などの細胞受容体(例えば、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、など)による結合を媒介する。本明細書では、抗体はまた、抗原に結合する能力を保持する免疫グロブリンの抗原結合部分を含む。例として、これらは、F(ab)、VLCLおよびVHCH抗体ドメインの一価断片;ならびにF(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片を含む。抗体という用語はまた、組換え一本鎖Fv断片(scFv)および二重特異性分子、たとえば、二重特異性抗体、三重特異性抗体および四重特異性抗体も含む(例えば、米国特許第5,844,094号を参照されたい)。
【0031】
「抗原」は広く解釈されるべきであり、抗体に特異的に結合することができる任意の分子、組成物または粒子を示す。抗原は、抗体と相互作用する1つ以上のエピトープを有することができるが、必ずしもその抗体の産生を誘発しない。
【0032】
したがって、「14−3−3に対する自己抗体」および「抗14−3−3自己抗体」は同じ意味で使用され、宿主由来の14−3−3タンパク質またはその断片に特異的に結合する、哺乳類対象により産生される内在性抗体を示す。
【0033】
「14−3−3」および「14−3−3タンパク質」は同じ意味で使用され、真核生物において広範に発現される保存細胞内調節分子の14−3−3ファミリーの少なくとも1つのメンバーを示す。14−3−3タンパク質は、多数の機能的に様々なシグナルタンパク質、例えば、キナーゼ、ホスファターゼ、および膜貫通受容体に結合する能力を有する。実際、100を超えるシグナルタンパク質が14−3−3リガンドとして報告されている。14−3−3タンパク質は、テトラトリコペプチド反復スーパーファミリーの進化したメンバーであると考えてもよい。それらは一般に、9または10個のαへリックスを有し、通常、アミノ末端へリックスに沿ってホモおよび/またはヘテロ二量体相互作用を形成する。これらのタンパク質は、多くの公知のドメイン、例えば、二価カチオン相互作用、リン酸化およびアセチル化、ならびにタンパク質分解性切断などの領域を含む。哺乳類で発現されることが知られている14−3−3タンパク質の7つの別個の遺伝的にコードされたアイソフォームが存在し、各アイソフォーム242〜255のアミノ酸を含む。7つの14−3−3タンパク質アイソフォームは、14−3−3α/β(アルファ/ベータ)、14−3−3δ/ξ(デルタ/ゼータ)、14−3−3ε(イプシロン)、14−3−3γ(ガンマ)、14−3−3η(エータ)、14−3−3τ/θ(タウ/シータ)、および14−3−3σ(シグマ/ストラチフィン)と呼ばれる。14−3−3タンパク質は、高度の配列類似性を有し、翻訳後プロセシング、例えば、リン酸化、シトルリン化などを受けることが知られている。例えば、Megidish等(1998),J.Biol.Chem.273:21834−45を参照されたい。結果として、抗14−3−3自己抗体は1を超える14−3−3タンパク質アイソフォームに特異的に結合し、および/またはそれらを認識することができ、あるいは、ただ1つのアイソフォーム(例えば、14−3−3η)に特異的に結合し、および/またはそれらを認識することができる。さらに、抗14−3−3抗体は、例えば、自然(例えば、翻訳後)または化学プロセスにより修飾された14−3−3タンパク質に結合し、および/またはそれらを認識することができる。
【0034】
「特異結合」または「特異的に結合する」という用語は、抗体とタンパク質またはペプチドとの相互作用に関して使用される場合、相互作用がタンパク質の特定の構造(すなわち、エピトープ)に依存する;言い換えれば、抗体が一般なタンパク質ではなく特定のタンパク質構造を認識し、結合することを意味する。
【0035】
エピトープは一般に分子表面に存在し、抗体との相互作用に利用される化学的特徴である。典型的化学的特徴は、三次元構造特性ならびに電荷、親水性および親油性を含む化学的性質を有するアミノ酸および糖部分である。コンフォメーショナルエピトープは、基本的な化学構造の変化を伴わない分子の空間構成要素の変化後の抗体との反応性の損失により、ノンコンフォメーショナルエピトープから区別される。したがって、「エピトープ」という用語は、14−3−3タンパク質または特定の異性体に関して使用される場合、一般に、抗体、例えば自己抗体に結合することができるタンパク質、例えば、修飾された14−3−3タンパク質の決定因子を示す。本明細書には、関節炎、特に関節リウマチと診断された患者の自己抗体により認識される14−3−3エピトープ、そのようなエピトープを使用して、対象における関節炎状態を評価および/または特徴づける方法、ならびに、そのようなエピトープを含むキットが記載される。
【0036】
14−3−3タンパク質またはその断片は、複数の14−3−3タンパク質アイソフォーム間で共有されるエピトープを含み得、あるいは14−3−3タンパク質アイソフォームの1つまたはサブセットに特有のエピトープを含み得る。本明細書で用いられる「共有される」という表現は、2つ以上の14−3−3タンパク質アイソフォーム間で共通の断片またはエピトープを示す。好ましい実施形態では、14−3−3タンパク質またはその断片は14−3−3ηおよび/またはγエピトープを含む。1つの実施形態では、14−3−3タンパク質またはその断片は、少なくとも1つの他の14−3−3アイソフォーム、例えば14−3−3γにより共有される14−3−3ηエピトープを含む。別の実施形態では、14−3−3ηエピトープは14−3−3ηに特有である。14−3−3ηに対し共通して認識されるエピトープの具体例が下記表1に示される。
【0037】
【表1】

【0038】
診断、予後および治療法ならびに治療モニタリング
1つの態様では、本発明は、14−3−3に対する自己抗体を含む疾患および病状を診断するための方法を提供する。一般に、関節炎状態の存在の有無、または患者予後は、(a)哺乳類対象から入手した生体試料を少なくとも1つの14−3−3タンパク質またはその断片と接触させ;(b)試料中の14−3−3タンパク質またはその断片に特異的に結合した自己抗体のレベルを決定し;(c)そのような抗体のレベルを適当な対照と比較することにより決定し得る。
【0039】
本発明の方法は、少なくとも1つの14−3−3タンパク質またはその断片を使用して、そのタンパク質に対する自己抗体を検出することを含む。タンパク質を使用して試料中の抗体を検出するための、当業者に知られている様々なアッセイ型式が存在する。例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照されたい。非制限的例として、14−3−3に対する自己抗体の検出は、よく知られた方法またはアッセイ、例えば免疫沈降、ELISA、ウエスタンブロット分析、免疫組織化学的検査、免疫蛍光法、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫放射定量測定法、ゲル内拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ、沈降反応、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、タンパク質Aアッセイ、免疫電気泳動アッセイ、蛍光標識細胞分取(FACS)分析、ラジオイムノアッセイ、ストリップ試験、ポイントオブケア検査、などを用いて実施され得る。当業者であれば、これらの方法はまた、生体試料中の14−3−3タンパク質に対する自己抗体または14−3−3タンパク質との免疫複合体のレベルを測定するために使用され得ることを認識するであろう。
【0040】
いくつかの実施形態では、自動検出アッセイが使用される。イムノアッセイの自動化のための方法としては、米国特許第5,885,530号、同第4,981,785号、同第6,159,750号、および同第5,358,691号(それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる)において記載されているものが挙げられる。いくつかの実施形態では、分析および結果提示もまた自動化される。例えば、いくつかの実施形態では、関節炎状態に対応する一連のタンパク質、例えば14−3−3タンパク質の存在の有無に基づき予後を作成するソフトウエアが使用される。
【0041】
1つの実施形態では、アッセイは、試料の残りから14−3−3タンパク質(単数または複数)に特異的に結合する自己抗体に結合して該自己抗体を捕獲する、固体支持体に固定された少なくとも1つの14−3−3タンパク質またはその断片の使用を含む。結合された自己抗体はその後、レポーター基を含み、抗体/タンパク質複合体に特異的に結合する検出試薬を用いて検出され得る。そのような検出試薬は、例えば、自己抗体に特異的に結合する結合剤、例えば抗ヒト抗体を含み得る。
【0042】
固体支持体は当業者に知られている任意の材料とすることができる。例えば、固体支持体はマイクロタイタープレート中の試験ウェル、またはニトロセルロースあるいは他の好適な膜とすることができる。また、支持体はビーズまたはディスク、例えばガラス、ガラス繊維、ラテックスまたはプラスチック材料、例えばポリスチレンもしくはポリ塩化ビニルとすることができる。支持体はまた、磁気粒子または光ファイバーセンサ、例えば、米国特許第5,359,681号に開示されているものなどとすることができる。14−3−3タンパク質またはその断片は、当業者に知られている様々な技術(特許および科学文献において十分に記載されている)を使用して、固体支持体上に固定され得る。本発明の状況では、「固定」という用語は、非共有結合性会合、例えば吸着、および共有結合性付着(抗体と支持体上の官能基との間の直接結合であり得、または架橋剤による架橋であり得る)の両方を示す。マイクロタイタープレート中のウェルまたは膜への吸着による固定が好ましい。そのような場合、吸着は好適な緩衝液中の抗体を固体支持体と好適な時間の間接触させることにより達成され得る。接触時間は、温度と共に変化するが、典型的には1時間〜約1日の間である。1つの実施形態では、ストレプトアビジンでコートされたマイクロタイタープレートがビオチン化14−3−3タンパク質またはその断片とともに使用される。
【0043】
14−3−3タンパク質またはその断片の固体支持体への共有結合性付着は、最初に支持体を、支持体および14−3−3タンパク質またはその断片の両方と反応する二官能性試薬と反応させることにより、一般に達成され得る。捕獲された自己抗体はその後、自己抗体に対する標識されたリガンドが洗浄された固相に曝露される非競合的「サンドイッチ」技術を用いて検出することができる。また、競合的型式は、標識抗体の試料への事前の導入に依存し、そのため、標識および非標識形態は固相への結合のために競合する。そのようなアッセイ技術はよく知られており、特許および科学文献の両方において十分記載されている。例えば、米国特許第3,791,932号;同第3,817,837号;同第3,839,153号;同第3,850,752号;同第3,850,578号;同第3,853,987号;同第3,867,517号;同第3,879,262号;同第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,533号;同第3,996,345号;同第4,034,074号;および同第4,098,876号を参照されたい。酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)が、米国特許第3,791,932号;同第3,839,153号;同第3,850,752号;3,879,262号;および同第4,034,074号において詳細に記載されている。ELISAアッセイは、非常に低い力価の自己抗体を検出する。
【0044】
自己抗体はまた、固相ラジオイムノアッセイ(RIA)により検出することもできる。固相は、固定されたリガンドへの結合に対し競合する放射標識された抗体の存在下、血清試料に曝露される。このアッセイでは、固相に結合された放射標識の量が、血清試料中に最初に存在する自己抗体の量に反比例する。固相の分離後、非特異的に結合した放射標識が洗浄により除去され、固相に結合した放射標識の量が決定される。結合した放射標識の量は、試料中に最初に存在する自己抗体に相関する。
【0045】
1つの実施形態では、アッセイはフロースルーまたはストリップ試験型式で実施され、ここで、14−3−3タンパク質またはその断片は膜、例えばニトロセルロース上に固定される。フロースルー試験では、試料内の14−3−3タンパク質に対する自己抗体は、試料が膜に接触すると、固定された14−3−3タンパク質またはその断片に結合する。第2の結合剤を含む溶液が膜と接触すると、第2の標識された結合剤が、免疫複合体に結合する。その後、結合した第2の結合剤の検出は、上記で記載されるように実施され得る。ストリップ試験型式では、14−3−3タンパク質またはその断片が結合される膜の一端が、試料を含む溶液に浸漬される。試料は膜に沿って、第2の結合剤を含む領域を通って、例えば、自己抗体まで、および固定された14−3−3タンパク質またはその断片の領域まで移動する。固定された14−3−3タンパク質またはその断片の領域での第2の結合剤の濃度は、関節炎状態の存在、または患者予後、などを示す。典型的には、その部位の第2の結合剤の濃度は、視覚的に読み取ることができるパターン、例えば線を生成する。そのようなパターンがないことは、否定的な結果を示す。一般に、膜上に固定された結合剤の量は、上記型式では、生体試料がアッセイにおいて肯定的なシグナルを生成するのに十分なレベルの自己抗体を含む場合、視覚的に認識できるパターンを生成するように選択される。そのようなアッセイにおいて使用するのに好ましい結合剤は4−3−3タンパク質およびその断片である。そのような試験は、典型的には、非常に少量の生体試料を用いて、治療時点で実施することができ、数量化も可能である。
【0046】
試料中の自己抗体の存在を検出することに加えて、多くの方法を使用して自己抗体のレベルを定量的に測定することができる。いくつかの方法では、抗原は液相中の自己抗体と反応し、自己抗体は免疫沈降技術により定量的に測定される。例えば、14−3−3タンパク質またはその断片(すなわち、全長異性体または抗原断片)は(例えば、同位体または酵素で)検出可能に標識され得る。ポリペプチドは合成中に(例えば、35S−メチオニンをin vitro翻訳系または細胞発現系に添加することにより)あるいは合成後に標識させることができる。検出可能な抗原は液体生体試料(例えば、血清)に直接添加され、免疫複合体を形成する。免疫複合体は、ポリエチレングリコールにより沈降させることができる。免疫複合体はまた、固体支持体(例えば、アガロースまたはセファロースビーズ)に結合する二次抗体(例えば、ヤギ抗ヒト免疫グロブリン)または他の種類の結合分子(例えば、タンパク質Aもしくはタンパク質G)を用いて単離することができる。免疫沈降物は、液体試料から分離された後、数回洗浄され、検出可能なレベル(例えば、放射活性)の強度が調べられる。試料中に存在するいずれの自己抗体もこのように、検出し、定量することができる。任意で、標識されていないポリペプチドもまた、添加し、自己抗体への結合に対し、標識されたポリペプチドと競合させることができる。
【0047】
本発明の診断方法はまた、対象において、14−3−3タンパク質と自己抗体との間で形成された循環免疫複合体を検出することに関する。上記方法はそのような免疫複合体の検出のために容易に改良することができる。例えば、固定された結合分子(例えば、ビーズに結合されたタンパク質Aまたはタンパク質G)を液体生体試料に添加することができる。液相から分離した後、結合分子により捕獲された免疫複合体はSDS−PAGEを用いて分析し、14−3−3タンパク質に対する様々な抗体を用いて精査することができる。捕獲された抗原はまた、直接アミノ酸配列分析に対する対象となり得る。免疫複合体のアイデンティテイはこのように明らかにすることができる。多くのアッセイが、例えば、Tomimori−Yamashita等,Lepr Rev,70(3):261−71,1999(抗体に基づく酵素結合免疫吸着測定法);Krapf等,J Clin Lab Immunol,21(4):183−7,1986(蛍光結合免疫吸着測定法);Kazeem等,East Afr Med J,67(6):396−403,1990(レーザ免疫比濁法);およびRodrick等,J Clin Lab Immunol,7(3):193−8,1982(タンパク質A−ガラス繊維フィルターアッセイ、PA−GFF、およびポリエチレングリコール不溶化アッセイ)において記載されるように、ごく普通に実施され、対象中の循環免疫複合体が検出される。これらのよく知られたアッセイの各々が、本発明の方法のための循環免疫複合体を検出するために使用され得る。
【0048】
臨床感度を改善するために、一定の試料内で複数のマーカーをアッセイすることができる。特に、1つ以上の関節炎の他のマーカー、例えば予後指標などを、14−3−3タンパク質に対する自己抗体と共にアッセイすることができる。これらの他のマーカーは、タンパク質または核酸であり得る。好ましい実施形態では、1つ以上の他のマーカーはMMPタンパク質もしくは核酸または関節炎に対する指標として普通に使用される他の因子、例えば、抗CCP、抗RF、CRP、SAA、IL−6、SIOO、オステオポンチン、RF、MMP−I、MMP−3、ヒアルロン酸、sCD14、血管新生マーカーおよび骨、軟骨または滑膜代謝産物(例えば、CTX−IおよびCTX−II)、などである。患者試料内の対象タンパク質を検出するための方法のように、参照配列に基づき核酸を単離し、アッセイするための方法は当技術分野においてよく知られている。
【0049】
アッセイの組み合わせは同時に、または連続して実施され得る。マーカーの選択は、最適感度が得られる組み合わせを決定するための日常的な実験に基づくものとすることができる。
【0050】
1つの実施形態では、本発明は、関節炎状態を診断するための方法を提供する。一般に、関節炎状態は患者の滑液、滑膜関節、血液、血漿または血清中の14−3−3に対する自己抗体の存在に基づき、患者において検出することができる。言い換えれば、14−3−3タンパク質に対する自己抗体は、関節炎を示すマーカーとして使用され得る。
【0051】
さらに、14−3−3タンパク質またはその断片を使用して決定される14−3−3に対する自己抗体の存在、または、14−3−3に対する自己抗体の相対レベルは、衰弱状態まで進行する前に、早期関節炎の予後指標となり得る。早期の予後または診断の利点は、治療計画の早期実行である。
【0052】
対象における関節炎状態の存在の有無を決定するために、対象由来の生体試料中の14−3−3に対する自己抗体または14−3−3との免疫複合体のレベルは、一般に、正常対照に対応する自己抗体/免疫複合体のレベルと比較され得る。1つの好ましい実施形態では、正常対照は、関節炎を有しない患者由来の試料中の14−3−3に対する自己抗体または14−3−3との免疫複合体の平均レベルから確立される。別の実施形態では、正常対照値は、受診者動作曲線(Receiver Operator Curve)を用いて決定され得、例えば、Sackett等,Clinical Epidemiology:A Basic Science for Clinical Medicine、Little Brown and Co.,1985、p.106−7の方法を参照されたい。簡単に言うと、この実施形態では、対照値は、診断試験結果の各々の可能な判断値に対応する真陽性率(すなわち、感度)および偽陽性率(100%−特異度)の対のプロットから決定され得る。左上隅に最も近いプロット上の対照値(すなわち、最も大きな面積を囲む値)は、最も正確な値を提供し、本方法により決定される値よりも高いシグナルを発生させる試料は、陽性であると考えられ得る。また、対照値は、プロットに沿って左にシフトさせ、偽陽性率を最小に抑えることができ、または右にシフトさせ、偽陰性率を最小に抑えることができる。一般に、この方法により決定される対照値より高いシグナルを発生させる試料は関節炎に対し陽性であると考えられる。
【0053】
1つの態様では、本発明は、関節炎のサブタイプ同士を区別するための方法を提供する。1つの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体のレベルを決定することを含む。好ましい実施形態では、患者中の14−3−3に対する自己抗体/免疫複合体のレベルは、関節炎のサブタイプが知られており、および/または以前に確立されている対象由来の試料のものと比較される。
【0054】
1つの態様では、本発明は、関節炎に向けられた治療の患者の応答可能性を決定するための方法を提供する。1つの実施形態では、本発明の方法は、患者試料において、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体のレベルを決定することを含む。好ましい実施形態では、患者試料中の14−3−3に対する自己抗体/14−3−3との免疫複合体のレベルは、治療に応答する可能性がわかっている対象由来の試料のものと比較される。非炎症性対象由来の試料および/または別の炎症性患者由来の試料と比較した場合の、第1の患者試料中の14−3−3に対する自己抗体/14−3−3との免疫複合体のかなり高いレベルは、第1の患者がよく知られた治療、例えば、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)療法、例えば抗TNF、メトトレキサート、ミノサイクリン、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、アザチプリン、抗IL−1、抗IL−6r、などの好ましい候補であることを示し得る。逆に、別の炎症性患者由来の試料と比較した場合の、第1の患者試料中の14−3−3に対する自己抗体/免疫複合体のかなり低いレベルは、とりわけ、そのレベルが、非炎症性対象由来の試料のものに近い場合、第1の患者がよく知られた治療の好ましい候補ではないことを示し得る。
【0055】
様々な型の関節炎のための治療計画が当技術分野において知られている。例えば、関節リウマチと診断された患者は、不快感を緩和し、炎症を減少させるために、最初に非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が処方される。他の治療計画としては、例えば、ステロイド系抗炎症薬(SAID、例えば、コルチゾール、プレドニゾン)、シクロオキシゲナーゼ−2阻害薬(CSI)、グルココルチコイド、および/または標準疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)例えば、抗TNF-α中和剤、免疫抑制薬(例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、シクロホスファミド)、抗生物質、抗マラリア薬および細胞傷害性薬物(例えば、メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド)が挙げられる。治療計画はまた、有利に14−3−3タンパク質を直接標的するものを含み、例えば、PCT/CA2008/002154を参照されたい。特定の薬物の用量または例についての詳細は、当業者に知られており、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine,第15版,BRAUNWALD等編,McGraw−Hillまたは「The Pharmacological basis of therapeutics」第10版,5 HARDMAN HG.,LIMBIRD LE.編,McGraw−Hill,New York,および「Clinical Oncology」第3版,Churchill Livingstone/Elsevier Press,2004.ABELOFF,MD.編において見出され得る。
【0056】
1つの態様では、本発明は、関節炎の治療をモニタするための方法を提供する。1つの実施形態では、本発明の方法は、患者試料中の、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体のレベルを決定すること、および治療を受けている患者中の14−3−3に対する自己抗体/14−3−3との免疫複合体のレベルをモニタすることを含む。
【0057】
14−3−3に対する自己抗体/14−3−3との免疫複合体の存在または相対レベルは、患者における関節炎状態と関連することが知られている他のタンパク質の存在または相対レベルと相関し得る。関節炎状態と関連することがよく知られているタンパク質の非制限的例としては、炎症性サイトカイン、例えば腫瘍壊死因子、14−3−3タンパク質、およびマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、例えばMMP−1またはMMP−3、などが挙げられる。少なくとも25の異なるMMPが同定されている。患者試料中での、14−3−3に対する自己抗体の検出を、少なくとも1つの炎症性サイトカインおよび/またはMMPの検出と組み合わせて使用し、関節炎を診断することができる。さらに、患者試料中での14−3−3に対する自己抗体/免疫複合体の存在または相対レベルは、少なくとも1つの14−3−3アイソフォーム、少なくとも1つのMMPおよび/または少なくとも1つの炎症性サイトカインと組み合わせて、衰弱状態まで進行する前に、早期関節炎の予後指標として使用することができる。
【0058】
本明細書には、関節炎状態を評価するためのキットも記載されている。そのようなキットは典型的には、診断および/または予後アッセイを実施するために必要な2つ以上の構成要素を含む。構成要素は、化合物、試薬、容器、説明書および/または機器とすることができる。例えば、キット内の1つの容器は、14−3−3タンパク質またはその断片を含み得る。そのようなキットはまた、抗体結合の直接または間接検出に好適なレポーター基を含む上記検出試薬を含み得る。
【0059】
したがって、本明細書には、患者試料において、14−3−3に対する自己抗体/14−3−3との免疫複合体の存在および任意で他のマーカー、例えばMMPを検出するためのキットが記載され、キットは、様々な関節炎状態を診断し、または区別するのに好適な診断または予後結果を提供するのに有用である。14−3−3タンパク質および/または自己抗体の存在が関係し得る別の適応症としては、例えば、心血管障害および/または神経変性疾患が挙げられる。キットは、14−3−3タンパク質またはその断片を含み得、これは任意で、例えば、放射性標識、ルミネセンス標識、蛍光標識、酵素、などで、検出可能に標識され得る。タンパク質を検出可能に標識するための方法は当技術分野においてよく知られている。そのようなキットはさらに、関節炎の他のマーカー、例えば、抗CCP、抗RF、CRP、SAA、IL−6、SIOO、オステオポンチン、RF、MMP−I、MMP−3、ヒアルロン酸、sCD14、血管新生マーカーおよび骨、軟骨または滑膜代謝産物(例えば、CTX−IおよびCTX−II)、などに対して特異的な検出試薬を含み得る。キットはさらに、14−3−3に対する自己抗体を免疫学的に検出するために必要な他の第2の試薬、例えば標識二次抗体(例えば、抗ヒト抗体)、発色性または蛍光発生試薬、重合剤などを含み得る。特定の疾患状態の状況においてそのような自己抗体のレベルを定量および/または評価するための適当な比較標準を含む、診断または予後目的でキットを使用するための説明書はまた、印刷された形態で、および/または好適な媒体に記録されて有利に提供され得る。
【実施例】
【0060】
実施例1:ヒト血清を用いた組換え14−3−3ηの検出
組換え14−3−3ηタンパク質(Augurex,North Vancouver,BC,Canada)をSDS−PAGEゲルにかけ、ニトロセルロース膜に転写させた。関節リウマチと診断されていない対象(Biochemed,Winchester,VA)由来または関節リウマチと診断された対象(Biochemed,Suffolk County,NY)由来のヒト血清を膜と共にインキュベートし、血清中の14−3−3ηに対する自己抗体を検出し、特性決定した。自己抗体をHRPにコンジュゲートさせた抗ヒト二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,West Grove,PA)を用いて検出し、化学ルミネセンスにより可視化した。
【0061】
特に、2μgの組換え14−3−3ηタンパク質を含む試料緩衝液(62.5mM Tris酸,2%SDS,10%グリセロール,0.01%ブロモフェノールブルー,5%β−メルカプトエタノール)を15%SDS−PAGEゲルにかけた。SDS−PAGEゲルを泳動用緩衝液(2.5mM Tris塩基,19.2mMグリシン,0.1%SDS)を用いて、70ボルトで30分間、その後140ボルトで染料前方がゲル底に到達するまで泳動させた。その後、タンパク質を、氷上で、転写緩衝液(2.5mM Tris塩基,19.2mMグリシン,20%メタノール)を用い、400mAhの間ニトロセルロース膜に転写させた。転写効率を、ポンソーS染料を用いて、膜上でタンパク質を可視化して確認した。その後、膜をブロッキング緩衝液(5%脱脂粉乳を含むTBS−T(10mM Tris,pH7.5,150mM NaCl,0.05%Tween20))中に入れ、振盪機上で1時間、室温でインキュベートした。ブロッキング緩衝液を除去し、ブロッキング緩衝液(1:5,1:10,1:20,1:50,1:100,v/v)で希釈したヒト血清を添加し、膜を切断した。膜を、振盪機上で、一晩中4℃でインキュベートした。膜をその後、3回それぞれ、5分間、TBS−Tで洗浄した。その後、抗ヒトHRP抗体(0.1μg/ml)を含むブロッキング緩衝液を添加し、振盪機上で1時間、室温でインキュベートした。その後、膜を6回それぞれ、5分間、TBS−Tで洗浄した。自己抗体をSuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate(Pierce,Rockford,II)を用いて可視化し、フィルム上に記録した。
【0062】
図1および2に示した代表的なデータは、免疫ブロット分析による組換え14−3−3ηの可視化により証明されるように、関節炎患者から入手したヒト血清は、14−3−3ηに特異的な抗体を含有することを示す。
【0063】
これらの自己抗体は、正常な健康個体から入手した血清中では検出されない、またはより低いレベルで検出されたので(図3および4)、これらの自己抗体の存在は関節炎のような炎症状態における特異的な現象であると考えられる。
【0064】
自然の防御機構の一部として、免疫系は、遭遇した異質粒子/病原体を破壊するための手段として抗体を生成する。関節炎の場合、14−3−3タンパク質、主に14−3−3ηおよびγが滑液および血清中で検出可能であることが十分に確立されている。現在、滑液および血清中の14−3−3タンパク質および/または14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体のレベルは、関節組織損傷に直接相関しており、そのような相関は本明細書で記載される方法において使用され得ると考えられている。例えば、14−3−3に対する自己抗体のレベルの増加は、14−3−3タンパク質を減少させる可能性があり、関節組織損傷のレベルまたは危険の低下と相関する。
【0065】
免疫系が、14−3−3を標的にし、それを血清から除去するための抗体応答を特異的に発生させることにより、14−3−3の存在に対抗するまたは応答するかどうかを決定するために、本試験を実施した。これらの自己抗体の存在は、さらに、これらのタンパク質が、細胞外間隙に通常存在していないことを証明する。というのも、それらが通常存在するのであれば、身体はそのような応答を開始しないであろうからである。
【0066】
データから、関節炎の場合、14−3−3を標的とする自己抗体が正常な健康の個体由来の血清と比べて、高いレベルで存在することが明確に証明される。したがって、正常な健康の個体と比較したこれらの抗体の発現差異は、関節炎の診断の観点から有益であり得る。さらに、発現差異は、疾患の予後ならびに患者に投与する療法の規定および一定の療法に対する患者の応答のモニタリングにおいて有用であり得る。
【0067】
実施例2:抗14−3−3抗体の力価またはレベルを測定するためのアッセイの開発
自己抗体により最も良く認識されている14−3−3エピトープをマッピングするために、14−3−3ηペプチドの全配列を表す、重複15−残基ペプチドを、スポット合成を使用してセルロース紙上で直接合成する。システインの存在により引き起こされる化学的な問題を減少させるために、システイン残基をセリンで置き換える。ポリエチレングリコールおよびFmoc−保護アミノ酸で修飾されたセルロース膜をAbimed(Lagenfeld,Germany)から購入する。β−アラニンスペーサをカップリングすることにより膜上でアレイを作製し、既に記載されるように(Molina等(1996),Peptide Research 9:151−155;Frank等(1992),Tetrahedron 48:9217−9232)、標準DIC(ジイソプロピルカルボジイミド)/HOBt(ヒドロキシベンゾトリアゾール)カップリング化学を用いてペプチドを合成する。
【0068】
活性化アミノ酸をAbimed ASP 222ロボットを使用して滴下する。洗浄および脱保護工程を、手動で実施し、最終合成サイクル後、ペプチドをN−末端でアセチル化させる。ペプチド合成後、膜をメタノール中で10分間、およびブロッカー(例えば、TBST(0.1%(v/v)Tween.TM.20を含有するTris−緩衝生理食塩水)および1%(w/v)カゼイン)中で洗浄する。洗浄後、膜を、関節リウマチと診断された患者から入手した血清と共に、穏やかに振盪させながらインキュベートする。ブロッカーで3度洗浄した後、膜をHRP−標識二次抗体と共にインキュベートする。膜を、10分間で3回、それぞれブロッカーで、10分間を2回、それぞれTBSTで洗浄する。結合抗体をSuperSignal(商標)West試薬(Pierce)およびデジタルカメラを(Αnanotech Fluoromager)を用いて可視化する。
【0069】
14−3−3ペプチドに対するエピトープマッピングを、関節炎と診断され、抗14−3−3自己抗体を有することが確認されている、少なくとも3人の異なる患者由来の血清を用いて実施し、良く認識されているエピトープを決定する。さらに、エピトープマッピングを、全部ではないが、別の14−3−3アイソフォームを用いて実施し、共通して認識されるエピトープが1つのアイソフォーム、例えば、14−3−3ηに特異的であるか、1、2、3、4、5または6種類の他の14−3−3アイソフォームと共有されるかを決定することができる。
【0070】
少なくとも14−3−3ηの良く認識されているエピトープ(単数または複数)を合成し、他の関節炎サブタイプおよび/または健康な対照群と比較して、関節炎状態、特に関節リウマチを評価および/または特徴化するためにエピトープ(単数または複数)の特異性を評価するために使用する。関節炎状態を評価および/またはキャラクタリゼーションするための特異性を確立した後、良く認識されているエピトープ(複数可)を、患者試料中の14−3−3自己抗体レベルを測定する定量アッセイに発展させる。その後、アッセイを使用して、患者試料中の14−3−3タンパク質に対する自己抗体を検出および/または定量する。
【0071】
本明細書で引用される参考文献および特許は、参照により、その全体が本明細書に明確に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)関節炎状態を有する疑いのある対象由来の試料を準備すること;b)前記試料において、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体の存在を検出することを含み、前記自己抗体または免疫複合体の存在が、前記対象における関節炎状態を示す、対象における関節炎状態を評価するための方法。
【請求項2】
前記検出工程がさらに、前記自己抗体または免疫複合体の量を測定すること、およびそれを正常な対照試料、関節炎対照試料、または同じ対象由来の以前の試料中の自己抗体または免疫複合体の量と比較することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記検出工程が、前記生体試料を少なくとも1つの14−3−3タンパク質またはその断片と接触させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記14−3−3タンパク質が、14−3−3ηもしくは14−3−3γまたはその断片である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記14−3−3タンパク質が、少なくとも1つの14−3−3ηエピトープを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの14−3−3ηエピトープが、少なくとも1つの他の14−3−3タンパク質アイソフォームと共有される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記他の14−3−3タンパク質アイソフォームが14−3−3γである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記14−3−3ηエピトープが14−3−3ηに特有である、請求項5記載の方法。
【請求項9】
前記生体試料が血液、滑液、血漿、血清または組織からなる群より選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記14−3−3タンパク質またはその断片が、放射性標識、ルミネセンス標識および蛍光標識ならびに酵素からなる群より選択される標識で検出可能に標識される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記14−3−3タンパク質またはその断片が固体支持体に結合される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記自己抗体がELISAアッセイにより検出される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記検出が化学ルミネセンスにより起こる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記試料中の少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体のレベルの、正常な対照試料と比較した増加が、前記対象における関節炎の診断指標となる、請求項2記載の方法。
【請求項15】
前記試料中の少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体の、関節炎対照試料と比較した相対レベルが、前記対象における関節炎の予後指標となる、請求項2記載の方法。
【請求項16】
前記試料中の少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体の、同じ対象由来の以前の試料と比較した相対レベルが、治療計画の有効性を示す、請求項2記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの14−3−3タンパク質またはその断片および第2の試薬を含む、試料中の少なくとも1つの14−3−3タンパク質またはその断片に対する自己抗体の存在を検出するためのキット。
【請求項18】
前記少なくとも1つの14−3−3タンパク質またはその断片が固体支持体に結合される、請求項17記載のキット。
【請求項19】
前記少なくとも1つの14−3−3タンパク質が、14−3−3γもしくは14−3−3ηまたはその断片である、請求項17記載のキット。
【請求項20】
前記14−3−3タンパク質またはその断片が、少なくとも1つの14−3−3ηエピトープを含む、請求項17記載のキット。
【請求項21】
前記少なくとも1つの14−3−3ηエピトープが、少なくとも1つの他の14−3−3タンパク質アイソフォームと共有される、請求項20記載のキット。
【請求項22】
前記他の14−3−3タンパク質アイソフォームが14−3−3γである、請求項21記載のキット。
【請求項23】
前記14−3−3ηエピトープが14−3−3ηに特有である、請求項21記載のキット。
【請求項24】
(a)関節炎状態を有する疑いのある対象由来の第1の試料を準備すること;(b)前記試料において、少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片に対する自己抗体または少なくとも1つの14−3−3タンパク質もしくはその断片との免疫複合体の存在を検出すること;(c)前記自己抗体または免疫複合体の量を測定し、それを、関節炎のサブタイプが知られている、および/または前に確立されている第2の対象由来の第2の生体試料中の、14−3−3に対する自己抗体または14−3−3との免疫複合体の量と比較することを含み、前記比較が、第1の対象に対する関節炎のサブタイプを決定する、患者の関節炎のサブタイプを決定する方法。
【請求項25】
前記第1の試料と第2の試料との間の前記自己抗体または免疫複合体の類似する量が、前記第1の対象が前記第2の対象と同じサブタイプの関節炎を有することを示す、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記第1の試料と第2の試料との間の前記自己抗体または免疫複合体の異なる量が、前記第1の対象が前記第2の対象とは異なるサブタイプの関節炎を有することを示す、請求項24記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−519860(P2012−519860A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553240(P2011−553240)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000368
【国際公開番号】WO2010/102412
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(511219526)オ−グレックス ライフ サイエンシズ コーポレイション (1)