関節装置
【課題】1関節に2自由度を有し、確実な動作を実現するスリムな関節装置を提供する。
【解決手段】関節装置10は、アーム1の端部とアーム2の端部とが互いに可動自在に連結する。そして、第2交差歯車4と第5及び第6歯車43・44を備える。第2交差歯車4は、関節部1jに配置される。又、第2交差歯車4は、第1非円形歯車41と第2非円形歯車42が輪郭中心を共有する。第1及び第2非円形歯車41・42は、非円形の平歯車となっている。第1非円形歯車41と第2非円形歯車42とは、十字状に交差している。第1非円形歯車41と噛み合う第5歯車43がアーム1に設けられる。第2非円形歯車42と噛み合う第6歯車44がアーム2に設けられる。第5歯車43を回転するとアーム2に対して、アーム1を可動できる。第6歯車44を回転するとアーム1に対して、アーム2を可動できる。
【解決手段】関節装置10は、アーム1の端部とアーム2の端部とが互いに可動自在に連結する。そして、第2交差歯車4と第5及び第6歯車43・44を備える。第2交差歯車4は、関節部1jに配置される。又、第2交差歯車4は、第1非円形歯車41と第2非円形歯車42が輪郭中心を共有する。第1及び第2非円形歯車41・42は、非円形の平歯車となっている。第1非円形歯車41と第2非円形歯車42とは、十字状に交差している。第1非円形歯車41と噛み合う第5歯車43がアーム1に設けられる。第2非円形歯車42と噛み合う第6歯車44がアーム2に設けられる。第5歯車43を回転するとアーム2に対して、アーム1を可動できる。第6歯車44を回転するとアーム1に対して、アーム2を可動できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節装置に関する。特に、ロボット、又はマニピュレーターなどに用いられる関節装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットは、人間に類似した動作や形態を有し、コンピュータ制御により複雑な動作を自動化している。産業用ロボットは、物品を搬送又は移載することを主用途としており、多関節型、円筒・極座標型、直交座標型などに分類されている。この内、関節装置を連設した多関節型の産業用ロボットは、動作範囲が大きいという利点があるため、広く利用されている。
【0003】
上述した産業用ロボットの関節装置としては、固定アームと従動アームが関節部で連結されており、固定アームに対して従動アームが屈折するように回動する産業用ロボットの関節装置が発明されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1による関節装置は、関節部にハイポイドギア(食違い歯車)と波動歯車装置(調和減速機)を配置しており、固定アームに内蔵されたモータを駆動すると、ハイポイドギアの原動歯車(小歯車)が従動歯車(大歯車)に回転を伝達し、更に波動歯車装置で減速されて、従動アームを回動するように構成している。
【0005】
特許文献1は、ハイポイドギアの原動歯車に回転軸を両端支持しているので、精度と信頼性が高い産業用ロボットの関節装置を提供できると、している。又、特許文献1は、「このような関節装置は、モジュール化されているので、各種の組み合わせが可能である。」と記載している。すなわち、この関節装置を連設して多関節型の産業用ロボットを実現できることを示唆している。
【0006】
一方、マニピュレーターは、人間の手の構造を模した機械を遠隔から操作して、人間の代わりに作業ができる。マニピュレーターは、人間が立ち入ることが困難な放射線下、又は高温下での作業を可能としている。
【0007】
例えば、関節装置をモジュール化したモジュール型マニピュレーターは、人間が接近困難な宇宙空間での作業を容易とする。モジュール型マニピュレーターに設けられた複数の関節装置を協調的に動作させ、これらの関節装置を自律分散的に制御すれば、宇宙空間での複雑な変化に柔軟に対応できる。
【0008】
上述したモジュール型マニピュレーターとしては、関節部において旋回と斜行の2自由度をもつ関節装置が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0009】
非特許文献1による関節装置は、一方のアームの端部と他方のアームの端部が関節部において、傾斜して連結している。一方のアームの端部と他方のアームの端部は、一対の中空の半球体同士が球体を形成するように関節部を覆っている。
【0010】
この球体には、一方のアームの半球体に固定された波動歯車装置付きモータを内蔵している。そして、他方のアームの半球体に固定された傾斜軸(ロータ)を前記モータが回転できるように構成されている。この傾斜軸は、他方のアームの軸中心に対して傾斜しているので、前記モータを駆動すると、他方のアームの端末を旋回できる。つまり、この関節装置は、円筒・極座標型のロボットとなっている。
【0011】
又、他方のアームは、二重管構造となっており、内管に固定された波動歯車装置付きモータが外管を回転させる構造となっている。そして、一方のアームの端末とこの他方のアームの端末を接続して関節装置を連設すれば、複雑な動作が可能なモジュール型マニピュレーターを実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭59−201787号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】木村 真一(Shinichi Kimura)他3名共著、「Fault Adaptive Kinematic Control Using Multiprocessor System and its Verification Using Hyper−redundant Manipulator」、Journal of Robotics Mechatronics、Vol.13 No.5、2001、p540−542、Fig2、Fig3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1による関節装置は、一対のアームの回動角度を精度よく動作できるという利点がある。しかし、特許文献1による関節装置は、1関節に1自由度しか有しておらず、関節装置を連設して多関節装置を構成しても、いたずらに多関節装置を長くするだけであり、限られた空間で複雑で多様な動作を実現することは困難である。
【0015】
1関節に2自由度を有する関節装置を連設して多関節装置を構成すれば、全体として自由度が倍増し、限られた空間で障害物を迂回するなど、複雑で多様な動作を実現することも容易である。
【0016】
非特許文献1による関節装置は、1関節に2自由度を有しており、この関節装置を利用したモジュール型マニピュレーターは、全体として自由度が多く、複雑で多様な動作を実現できる。又、アームに内蔵されたモータを制御することにより、一対のアームの回動角度を精度よく動作できる。
【0017】
しかし、非特許文献1による関節装置は、関節部にモータを内蔵しており、このモータがダイレクトにアームを旋回しているので、アームを旋回させるために大きなトクルが必要となれば、必然的にモータの外形が大きくなり、全体として胴径の小さいスリムなモジュール型マニピュレーターを実現することは、困難である。スリムなモジュール型マニピュレーターを実現できれば、限られた空間で障害物を迂回するなど、複雑で多様な動作を実現することも容易である。つまり、スリムなモジュール型マニピュレーターを実現可能な関節装置が望まれる。
【0018】
例えば、消化管の内部検査に使用される内視鏡は、スリムで自由度の多い多関節装置を実現している。しかし、この内視鏡は、先端部に設けられたレンズで拡大された対象部の画像をモニターで確認しながら、手許操作部で動作させているので、動作を正確に制御できないという問題がある。
【0019】
又、上述した関節装置は、例えば、瞬断などで動作が停止したときに、出力側からの外力で一対のアームの停止時の姿勢が保持できないという問題もある。出力側からの外力で一対のアームの停止時の姿勢が保持できれば、つまり、出力側からの動力が入力側に伝達することなく維持される不可逆な機構を備える関節装置が実現できれば、リセットすることなく動作を再開できる。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0020】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、1関節に2自由度を有し、確実な動作を実現するスリムな関節装置を提供することを目的とする。又、本発明は、前述の関節装置が出力側からの動力が入力側に伝達することなく、停止時の姿勢が保持される不可逆な機構を備える関節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、一対の歯車を十字状に交差した交差歯車を関節部に配置し、この交差歯車に第1及び第2アームに設けられた各歯車が噛み合って自走するように構成し、更に、各歯車に不可逆な伝動装置を設けることにより、上記の課題が解決可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな関節装置を発明するに至った。
【0022】
(1) 一方のアームの端部と他方のアームの端部とが互いに可動自在に連結する関節装置であって、関節部に配置する第1交差歯車であって、第1円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第1歯車と第2円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第2歯車とが中心を共有し、かつ前記第1円周を含む第1平面と前記第2円周を含む第2平面とが直交する第1交差歯車と、前記一方のアームに設けられて前記第1歯車と噛み合う第3歯車と、前記他方のアームに設けられて前記第2歯車と噛み合う第4歯車と、を備える関節装置。
【0023】
(1)の発明による関節装置は、一方のアームの端部と他方のアームの端部とが互いに可動自在に連結している。そして、第1交差歯車と第3及び第4歯車を備えている。第1交差歯車は、関節部に配置されている。又、第1交差歯車は、第1歯車と第2歯車とが中心を共有している。第1歯車は、第1円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。第2歯車は、第2円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。更に、第1円周を含む第1平面と第2円周を含む第2平面とが直交している。
【0024】
又、(1)の発明による関節装置は、第3歯車が一方のアームに設けられており、第1歯車と噛み合っている。第4歯車が他方のアームに設けられており、第2歯車と噛み合っている。
【0025】
ここで、第1から第4歯車は、軸に対して歯筋が平行な平歯車であってよく、歯形が円の伸開線となるインボリュート(involute)歯車であってもよい。又、第1から第4歯車は、歯面が螺旋曲面で形成された「はすば歯車(helical gear)」であってよく、インボリュートはすば歯車であってよく、歯幅の中央で歯筋の向きを反対に変えた「やまば歯車(herringbone gear)」、又はダブルヘリカルギア(double helical gear)であってもよい。やまば歯車は、大きな動力を効率よく静粛に伝達するのに適している。
【0026】
第1及び第2円周は、ピッチ円であってよく、歯先円であってもよく、歯元円であってもよい。第1及び第2円周に歯筋が直交する場合は、平歯車となりえる。第1及び第2円周に歯筋が斜交する場合は、「はすば歯車」、又は「やまば歯車」となりえる。第1円周と第2円周は、同じであってよく、異なってもよい。
【0027】
第1歯車は第1円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設けるとは、第1円周の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設けることを必ずしも意味しない。第1歯車は、第3歯車と噛み合って機能するが、後述するように第3歯車の運動は、実態として限定される。したがって、例えば、第1歯車は、第1円周の略半周に亘り、等間隔に限定的に複数の歯を設けてもよい。この場合、半月状の第1歯車の半円弧外周の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよく、半月状の第1歯車の円弧外周に、180度以下に開角する劣弧の範囲で等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよい。円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける歯車は、(1)の発明による第1歯車に全て含まれる。
【0028】
同様に、第2歯車は第2円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設けるとは、第2円周の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設けることを必ずしも意味しない。第2歯車は、第4歯車と噛み合って機能するが、後述するように第4歯車の運動は、実態として限定される。したがって、例えば、第2歯車は、第2円周の略半周に亘り、等間隔に限定的に複数の歯を設けてもよい。この場合、半月状の第2歯車の半円弧外周の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよく、半月状の第2歯車の円弧外周に、180度以下に開角する劣弧の範囲で等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよい。円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける歯車は、(1)の発明による第2歯車に全て含まれる。
【0029】
第1歯車と第2歯車とは、一方の歯車が大歯車であって他方の歯車が小歯車であってよく、同じであってもよい。第1歯車と第2歯車とは、円周ピッチ(ピッチ円上で測った隣接する歯の間の距離)が同じであってよく、異なってもよい。第1歯車の歯と第2歯車の歯とが重なり合う部位は、いずれか一方の歯が形成されてよく、双方の歯が形成されなくてもよい。
【0030】
一般に、歯車とは、組をなす歯車伝動装置を意味しているが、交差歯車(第1交差歯車及び後述する第2交差歯車を含む)は、歯車伝動装置を意味しない、新たな概念により規定される単体であり、機械要素である。交差歯車は、2軸が相交わる歯車の組み合わせである「交差軸歯車」とは異なっている。ここで、交差歯車は、カム装置における球面カムのように機能し、相手側歯車の軌跡を規定する。
【0031】
第1歯車と第3歯車は、歯車伝動装置を構成している。第3歯車を回転させる力が付与されることにより、第1歯車と第3歯車が相対移動する。この場合、第1歯車が固定歯車となり、第3歯車が可動歯車となり、第3歯車が第1歯車に噛み合って自走する。ここで、第3歯車の中心は、第1歯車の軸中心を中心とする公転軌跡を描くことができる。
【0032】
同様に、第2歯車と第4歯車は、歯車伝動装置を構成している。第4歯車を回転させる力が付与されることにより、第2歯車と第4歯車が相対移動する。この場合、第2歯車が固定歯車となり、第4歯車が可動歯車となり、第4歯車が第2歯車に噛み合って自走する。ここで、第4歯車の中心は、第2歯車の軸中心を中心とする公転軌跡を描くことができる。
【0033】
第1歯車と第3歯車は、一方の歯車が大歯車であって他方の歯車が小歯車であってよく、同じであってもよい。第1歯車を大歯車とし、第3歯車を小歯車に設定すれば、一方のアームを低いトルクで回動できる。
【0034】
同様に、第2歯車と第4歯車は、一方の歯車が大歯車であって他方の歯車が小歯車であってよく、同じであってもよい。第2歯車を大歯車とし、第4歯車を小歯車に設定すれば、他方のアームを低いトルクで回動できる。
【0035】
(1)の発明による関節装置は、一方のアームの伸長方向と他方のアームの伸長方向とが直交配置されてよく、第3歯車を回転すれば、他方のアームに対して、一方のアームを可動できる。第4歯車を回転すれば、一方のアームに対して、他方のアームを可動できる。第3及び第4歯車に適宜な方向変換機構を連結すれば、一方のアームの伸長方向と他方のアームの伸長方向とを同軸上に配置することもできる。このように、(1)の発明による関節装置は、1関節に2自由度を有する関節装置を実現できる。
【0036】
周知のとおり、歯車伝動装置は、歯面同士のすべり接触によって確実な伝動を得ることができる。一般に、歯車伝動装置は、原動車(入力)が従動車(出力)に回転を伝動するが、(1)の発明による関節装置は、第3歯車又は第4歯車の自転(入力)運動が第1交差歯車で規定される公転(出力)運動に変換される。この場合、公転軌跡は、歯車の噛み合いにより、確実に移動することができる。すなわち、(1)の発明による関節装置は、確実な動作を実現できる。
【0037】
又、(1)の発明による関節装置は、関節部にモータを備えていないので、スリムな関節装置を実現できる。第1交差歯車は、理論的には無限に小さくでき、一方のアームの端部と他方のアームの端部が交差する関節部に内蔵することも可能であり、少なくとも関節部を膨張させる必然性はない。第3歯車又は第4歯車を回転させるアクチュエータの大きさ如何によっては、極細の関節装置も実現できると考えられる。
【0038】
(2) 前記一方のアームは、前記第3歯車と同軸上に配列する第1ウォーム歯車と、この第1ウォーム歯車と噛み合う第1ウォームと、を有し、前記他方のアームは、前記第4歯車と同軸上に配列する第2ウォーム歯車と、この第2ウォーム歯車と噛み合う第2ウォームと、を有する(1)記載の関節装置。
【0039】
(2)の発明による関節装置は、一方のアームが第1ウォーム歯車と第1ウォームを有している。又、他方のアームが第2ウォーム歯車と第2ウォームを有している。第1ウォーム歯車は、第3歯車と同軸上に配列している。第1ウォームは、第1ウォーム歯車と噛み合っている。第2ウォーム歯車は、第4歯車と同軸上に配列している。第2ウォームは、第2ウォーム歯車と噛み合っている。
【0040】
第1及び第2ウォームは、小歯車であってよく、ねじ歯車であってよく、大歯車である第1及び第2ウォーム歯車に噛み合うウォーム歯車装置を構成する。ウォーム歯車装置は、2軸が互いに平行でもなく、又相交わることもしない、食違い歯車に分類されている。ウォーム歯車装置は、2軸が空間上に直交しているが交わらない。
【0041】
ウォーム歯車装置は、ウォームを原動車としてよく、従動車であるウォーム歯車の回転がウォームに伝動しない不可逆な機構となっている。そして、ウォーム歯車装置に代わる不可逆な機構は、(2)の発明に全て含まれる。
【0042】
第1ウォームを回転すると、第1ウォームの回転が第1ウォーム歯車に伝動される。第3歯車は、第1ウォーム歯車の回転に同期して回転してよく、第1交差歯車に従動されて、他方のアームに対して一方のアームを移動させる。第1ウォームを回転停止すると、第1ウォームと第1ウォーム歯車とは、相互にロックされる。すなわち、第1ウォーム歯車からの動力が第1ウォームに伝達することなく、一対のアームの停止時の姿勢が保持される。
【0043】
同様に、第2ウォームを回転すると、第2ウォームの回転が第2ウォーム歯車に伝動される。第4歯車は、第2ウォーム歯車の回転に同期して回転してよく、第1交差歯車に従動されて、一方のアームに対して他方のアームを移動させる。第2ウォームを回転停止すると、第2ウォームと第2ウォーム歯車とは、相互にロックされる。すなわち、第2ウォーム歯車からの動力が第2ウォームに伝達することなく一対のアームの停止時の姿勢が保持される。
【0044】
(2)の発明による関節装置は、出力側からの動力が入力側に伝達することなく、停止時の姿勢が保持される不可逆な機構を備える関節装置を提供できる。
【0045】
(3) 前記一方のアームは、前記第1ウォームを回転する第1モータを有し、前記他方のアームは、前記第2ウォームを回転する第2モータを有する(2)記載の関節装置。
【0046】
第1及び第2モータは、ステップ角度が細分化でき、確実な角運動ができるステッピングモータが好ましい。
【0047】
(4) 前記第1交差歯車は、前記第1歯車の中心軸方向に延びて前記第2歯車の両翼に外在する第1回動軸と、前記第2歯車の中心軸方向に延びて前記第1歯車の両翼に外在する第2回動軸と、を有し、前記一方のアームは、前記第1回動軸の両端部を回動可能に支持する第1支持端末を有し、前記他方のアームは、前記第2回動軸の両端部を回動可能に支持する第2支持端末を有する(1)から(3)のいずれかに記載の関節装置。
【0048】
一方のアーム又は他方のアームは、筒状に形成されることが好ましく、丸パイプを含んでよく、角パイプを含んでよい。アーム内に部品(要素)を実装するために、パイプを分割(半割)してもよく、部品を実装した後に分割されたパイプを結合してもよい。
【0049】
(5) 一方のアームの端部と他方のアームの端部とが互いに可動自在に連結する関節装置であって、関節部に配置する第2交差歯車であって、所定の閉曲線からなる第1ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第1非円形歯車と所定の閉曲線からなる第2ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第2非円形歯車とが輪郭中心を共有し、かつ第1ピッチ曲線を含む第3平面と前記第2ピッチ曲線を含む第4平面とが直交する第2交差歯車と、前記一方のアームに設けられて前記第1非円形歯車と噛み合う第5歯車と、前記他方のアームに設けられて前記第2非円形歯車と噛み合う第6歯車と、を備える関節装置。
【0050】
(5)の発明による関節装置は、一方のアームの端部と他方のアームの端部とが互いに可動自在に連結している。そして、第2交差歯車と第5及び第6歯車を備えている。第2交差歯車は、関節部に配置されている。又、第2交差歯車は、第1非円形歯車と第2非円形歯車とが輪郭中心を共有している。
【0051】
第1非円形歯車は、所定の閉曲線からなる第1ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。第2非円形歯車は、所定の閉曲線からなる第2ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。更に、第1ピッチ曲線を含む第3平面と第2ピッチ曲線を含む第4平面とが直交している。
【0052】
又、(5)の発明による関節装置は、第5歯車が一方のアームに設けられており、第1非円形歯車と噛み合っている。第6歯車が他方のアームに設けられており、第2非円形歯車と噛み合っている。
【0053】
(1)の発明において、第1歯車と第1歯車に噛み合う第3歯車の速比r13(第1歯車の角速度ω1/第3歯車の角速度ω3)は、一定である。同様に、第2歯車と第2歯車に噛み合う第4歯車の速比r24(第2歯車の角速度ω2/第4歯車の角速度ω4)は、一定である。このように、両歯車の速比が一定の場合は、両歯車のピッチ円の中心間距離は不変(一定)である。
【0054】
例えば、楕円又は対数螺旋の輪郭がピッチ曲線となる変位歯車を通常の歯車と噛み合わせれば、両歯車の中心間距離が回転中に変化する(速比が変化する)不定速歯車を実現できる。この場合は、特別な場合を除いて、ピッチ曲線又は外形が円形を成さないので、「非円形歯車」と、呼ばれている。ピッチ曲線又は外形が円形を成す歯車は、「円形歯車」とは呼ばれず、単に「歯車」と呼ばれている。
【0055】
すなわち、(5)の発明による関節装置は、第1交差歯車の第1歯車及び第2歯車を第1非円形歯車及び第2非円形歯車に代えている。ここで、第1及び第2非円形歯車は、例えば、楕円の外径をピッチ曲線としてよく、楕円の短半径と長半径の交点を第1非円形歯車及び第2非円形歯車の輪郭中心とすることができる。
【0056】
この楕円形状の第1及び第2非円形歯車は、短半径同士が交差してよく、長半径同士が交差してよく、短半径と長半径が交差してよく、いずれの場合も(5)の発明による第2交差歯車に含まれる。
【0057】
第1及び第2非円形歯車は、楕円又は対数螺旋の輪郭がピッチ曲線となる非円形歯車に限定されない。ピッチ円周の特定の劣弧が凹凸状になる板カムの輪郭をピッチ曲線とする非円形歯車も(5)の発明に含まれる。この板カム状の非円形歯車の優弧のピッチ円周の中心を輪郭中心とすることができる。
【0058】
ここで、第5及び第6歯車は、軸に対して歯筋が平行な平歯車が好ましく、第1及び第2非円形歯車より歯数が同じ又は少ない小歯車が好ましい。
【0059】
第1非円形歯車は、所定の閉曲線からなる第1ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けるとは、第1ピッチ曲線の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設けることを必ずしも意味しない。第1非円形歯車は、第5歯車と噛み合って機能するが、第3歯車と同様に第5歯車の運動は、実態として限定される。
【0060】
したがって、例えば、第1非円形歯車は、第1ピッチ曲線の略半周に亘り、等間隔に限定的に複数の歯を設けてもよい。この場合、半月状の第1非円形歯車の半曲面外周の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよく、半月状の第1非円形歯車の曲面外周に、180度以下に開角する劣弧の範囲で等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよい。非円形のピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける非円形歯車は、(5)の発明による第1非円形歯車に全て含まれる。
【0061】
同様に、第2非円形歯車は、所定の閉曲線からなる第2ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けるとは、第2ピッチ曲線の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設けることを必ずしも意味しない。第2非円形歯車は、第6歯車と噛み合って機能するが、第4歯車と同様に第6歯車の運動は、実態として限定される。
【0062】
したがって、例えば、第2非円形歯車は、第2ピッチ曲線の略半周に亘り、等間隔に限定的に複数の歯を設けてもよい。この場合、半月状の第2非円形歯車の半曲面外周の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよく、半月状の第2非円形歯車の曲面外周に、180度以下に開角する劣弧の範囲で等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよい。非円形のピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける非円形歯車は、(5)の発明による第2非円形歯車に全て含まれる。
【0063】
第1非円形歯車と第5歯車は、歯車伝動装置を構成している。第5歯車を回転させる力が付与されることにより、第1非円形歯車と第5歯車が相対移動する。この場合、第1非円形歯車が固定歯車となり、第5歯車が可動歯車となり、第5歯車が第1非円形歯車に噛み合って自走する。ここで、第5歯車の中心は、第1非円形歯車の第1ピッチ曲線に倣う(追従する)公転軌跡を描くことができる。
【0064】
同様に、第2非円形歯車と第6歯車は、歯車伝動装置を構成している。第6歯車を回転させる力が付与されることにより、第2非円形歯車と第6歯車が相対移動する。この場合、第2非円形歯車が固定歯車となり、第6歯車が可動歯車となり、第6歯車が第2非円形歯車に噛み合って自走する。ここで、第6歯車の中心は、第2非円形歯車の第2ピッチ曲線に倣う(追従する)公転軌跡を描くことができる。
【0065】
(5)の発明による関節装置は、一方のアームの伸長方向と他方のアームの伸長方向とが直交配置されてよく、第5歯車を回転すれば、他方のアームに対して、一方のアームを可動できる。第6歯車を回転すれば、一方のアームに対して、他方のアームを可動できる。第5及び第6歯車に適宜な方向変換機構を連結すれば、一方のアームの伸長方向と他方のアームの伸長方向とを同軸上に配置することもできる。このように、(5)の発明による関節装置は、1関節に2自由度を有する関節装置を実現できる。
【0066】
(5)の発明による関節装置は、第1及び第2非円形歯車と第5及び第6歯車とは、カム装置を構成しているということもできる。ここで、カム曲線を有する第1及び第2非円形歯車が従動節であってよく、カム曲線に接触して転動する第5及び第6歯車が動節であってよく、(5)の発明による関節装置は、動節と従動節の関係が反対になった「反対カム」を構成しているということもできる。
【0067】
周知のとおり、カム装置は、カム曲線に追従する従動節の位置(瞬間中心)を変えること、及び従動節の速度又は加速度を変えることができる。つまり、従動節の位置、速度、又は加速度はカム曲線に依存している。一方で、第2交差歯車は、歯車伝動装置を構成しているので、例えば、(5)の発明による関節装置は、一方のアームと他方のアームとが鈍角から閉じるときは、駆動車となる第5及び第6歯車が低いトルクで駆動でき、一方のアームと他方のアームとが鈍角から開くときは、駆動車となる第5及び第6歯車を高いトルクで駆動する関節装置を実現できる。
【0068】
(6) 前記一方のアームは、前記第5歯車と同軸上に配列する第1ウォーム歯車と、この第1ウォーム歯車と噛み合う第1ウォームと、を有し、前記他方のアームは、前記第6歯車と同軸上に配列する第2ウォーム歯車と、この第2ウォーム歯車と噛み合う第2ウォームと、を有する(5)記載の関節装置。
【0069】
(6)の発明による関節装置は、一方のアームが第1ウォーム歯車と第1ウォームを有している。又、他方のアームが第2ウォーム歯車と第2ウォームを有している。第1ウォーム歯車は、第5歯車と同軸上に配列している。第1ウォームは、第1ウォーム歯車と噛み合っている。第2ウォーム歯車は、第5歯車と同軸上に配列している。第2ウォームは、第2ウォーム歯車と噛み合っている。
【0070】
第1及び第2ウォームは、小歯車であってよく、ねじ歯車であってよく、大歯車である第1及び第2ウォーム歯車に噛み合うウォーム歯車装置を構成する。ウォーム歯車装置は、2軸が互いに平行でもなく、又相交わることもしない、食違い歯車に分類されている。ウォーム歯車装置は、2軸が空間上に直交しているが交わらない。
【0071】
ウォーム歯車装置は、ウォームを原動車としてよく、従動車であるウォーム歯車の回転がウォームに伝動しない不可逆な機構となっている。そして、ウォーム歯車装置に代わる不可逆な機構は、(6)の発明に全て含まれる。
【0072】
第1ウォームを回転すると、第1ウォームの回転が第1ウォーム歯車に伝動される。第5歯車は、第1ウォーム歯車の回転に同期して回転してよく、第2交差歯車に従動されて、他方のアームに対して一方のアームを移動させる。第1ウォームを回転停止すると、第1ウォームと第1ウォーム歯車とは、相互にロックされる。すなわち、第1ウォーム歯車からの動力が第1ウォームに伝達することなく、一対のアームの停止時の姿勢が保持される。
【0073】
同様に、第2ウォームを回転すると、第2ウォームの回転が第2ウォーム歯車に伝動される。第6歯車は、第2ウォーム歯車の回転に同期して回転してよく、第2交差歯車に従動されて、一方のアームに対して他方のアームを移動させる。第2ウォームを回転停止すると、第2ウォームと第2ウォーム歯車とは、相互にロックされる。すなわち、第2ウォーム歯車からの動力が第2ウォームに伝達することなく一対のアームの停止時の姿勢が保持される。
【0074】
(6)の発明による関節装置は、出力側からの動力が入力側に伝達することなく、停止時の姿勢が保持される不可逆な機構を備える関節装置を提供できる。
【0075】
(7) 前記一方のアームは、前記第1ウォームを回転する第1モータを有し、前記他方のアームは、前記第2ウォームを回転する第2モータを有する(6)記載の関節装置。
【0076】
(8) 前記第2交差歯車は、前記第1非円形歯車の輪郭中心軸方向に延びて前記第2非円形歯車の両翼に外在する第3回動軸と、前記第2非円形歯車の輪郭中心軸方向に延びて前記第1非円形歯車の両翼に外在する第4回動軸と、を有し、前記一方のアームは、前記第3回動軸の両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第3支持端末を有し、前記他方のアームは、前記第4回動軸の両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第4支持端末を有する(5)から(7)のいずれかに記載の関節装置。
【0077】
(8)の発明による関節装置は、第2交差歯車が第3回動軸と第4回動軸とを有している。第3回動軸は、第1非円形歯車の輪郭中心軸方向に延びて、第2非円形歯車の両翼に外在している。第4回動軸は、第2非円形歯車の輪郭中心軸方向に延びて、第1非円形歯車の両翼に外在している。そして、一方のアームは、第3回動軸の両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第3支持端末を有している。他方のアームは、第4回動軸の両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第4支持端末をしている。
【0078】
第3及び第4回動軸の両端部を離間が困難に支持する手段は、後述する付勢部材であってよく、付勢部材に並列に後述する衝撃吸収部材を設けてもよい。
【0079】
(9) 前記第2交差歯車は、前記第5歯車及び前記第6歯車の歯面を前記第1非円形歯車及び前記第2非円形歯車の歯面に当接する力を付勢する付勢部材を備える(5)から(8)のいずれかに記載の関節装置。
【0080】
第5歯車及び第6歯車と第1非円形歯車及び第2非円形歯車との組み合わせをカム装置として捉えると、第5歯車及び第6歯車の歯面と第1非円形歯車及び第2非円形歯車の歯面の接触は機構学的には、拘束されていない。したがって、第5歯車及び第6歯車の歯面を第1非円形歯車及び第2非円形歯車の歯面に当接する力を付勢する付勢部材を設けることにより、第5歯車及び第6歯車の運動に確実性をもたせることができる。
【0081】
(10) 前記付勢部材は、引張りコイルばねからなり、前記第2交差歯車は、前記第5歯車及び前記第6歯車の歯面を前記第1非円形歯車及び前記第2非円形歯車の歯面に円滑に追従させる衝撃吸収部材を備える(9)記載の関節装置。
【0082】
衝撃吸収部材は、例えばショックアブソーバであってよく、引張りコイルばねの不要なダンピングを防止できる。
【0083】
(11) 前記第2交差歯車は、前記第1非円形歯車又は前記第2非円形歯車のいずれか一方が第3円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第7歯車からなる(5)から(10)のいずれかに記載の関節装置。
【0084】
(12) (1)から(11)のいずかに記載の関節装置を連設する多関節装置。
【0085】
(13) (1)から(11)のいずかに記載の関節装置を備えるロボット。
【0086】
(14) (12)記載の多関節装置を備えるロボット。
【0087】
(15) 第3ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第1固定歯車、及び第4ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第2固定歯車を有する交差固定歯車であって、前記第3ピッチ曲線を含むX平面と前記第4ピッチ曲線を含むY平面とが直交するように交差する交差固定歯車と、前記第1固定歯車と噛み合って前記X平面に第1回転中心が所定の軌跡を描く第1自走歯車と、前記第2固定歯車と噛み合って前記Y平面に第2回転中心が所定の軌跡を描く第2自走歯車と、を備える交差歯車装置。
【0088】
(15)の発明による交差歯車装置は、交差固定歯車と第1自走歯車及び第2自走歯車を備えている。交差固定歯車は、第1固定歯車と第2固定歯車を有している。第1固定歯車は、第3ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。第2固定歯車は、第4ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。そして、第3ピッチ曲線を含むX平面と第4ピッチ曲線を含むY平面とが直交するように交差している。
【0089】
第1自走歯車は、第1固定歯車と噛み合って、X平面に第1自走歯車の第1回転中心が所定の軌跡を描くことができる。第2自走歯車は、第2固定歯車と噛み合って、Y平面に第2自走歯車の第2回転中心が所定の軌跡を描くことができる。
【0090】
例えば、歯車列とは、複数の歯車を順次に噛み合わせて、これらの回転軸をリンクで適宜に連結したものと、定義されている。歯車列は、動力の伝達又は回転数の増減などに用いられている。一般的な歯車列は、全ての歯車が平面運動をするが、複数のかさ歯車を立体的に組み合わせて、動力の伝達又は回転数の増減する自動車の差動歯車装置なども、歯車列の範疇に含まれるとされている。
【0091】
一組の歯車列に注目すると、一般的な歯車列は、一組の歯車の回転中心が空間に固定され、一方の歯車が原動車であり、他方の歯車が従動車となるように構成されている。又、一般的な歯車列と異なる別の歯車列としては、一方の歯車が空間に固定され、他方の歯車を原動車として、他方の歯車の回転中心が運動するように構成している。
【0092】
(15)の発明による交差歯車装置は、後者の一組の歯車列を含んでおり、第1固定歯車が空間に固定され、第1自走歯車の回転中心が運動するように構成している。又、第2固定歯車が空間に固定され、第2自走歯車の回転中心が運動するように構成している。
【0093】
ところで、(15)の発明による交差歯車装置は、第1ピッチ曲線を含むX平面と第2ピッチ曲線を含むY平面とが直交するように交差する構成が一般的な歯車列と異なっている。(15)の発明による交差歯車装置は、一般的な歯車列の範疇に含まれない特殊歯車列を構成している、ということもできる。
【0094】
(15)の発明による交差歯車装置は、前述したかさ歯車を使用する差動歯車装置とも異なっている。差動歯車装置は、従動車が遊星歯車であるのに対し、交差歯車装置は、原動車が遊星歯車になっている。差動歯車装置は、原動車によって駆動される一対の従動車の内、一方の従動車を停止しても他方の従動車を原動車から駆動できる。交差歯車装置は、交差固定歯車に対して駆動する一対の原動車がそれぞれ独立して運動できる。
【0095】
ここで、第1固定歯車の第3ピッチ曲線は、第1歯車のピッチ円周、又は第1非円形歯車の第1ピッチ曲線のいずれか一方を含むことができる。又、第2固定歯車の第4ピッチ曲線は、第2歯車のピッチ円周、又は第2非円形歯車の第2ピッチ曲線のいずれか一方を含むことができる。X平面は、第1平面又は第3平面のいずれか一方を含むことができる。Y平面は、第2平面又は第4平面のいずれか一方を含むことができる。
【0096】
第1固定歯車が第1歯車であって、第2固定歯車が第2歯車であって、第1歯車と第2歯車が中心を共有してよく、更に、第1自走歯車及び第2自走歯車が第3歯車及び第4歯車であってよく、(1)の発明による関節装置を実現できる。
【0097】
又、第1固定歯車が第1非円形歯車であって、第2固定歯車が第2非円形歯車であって、第1非円形歯車と第2非円形歯車が輪郭中心を共有してよく、更に、第1自走歯車及び第2自走歯車が第5歯車及び第6歯車であってよく、(5)の発明による関節装置を実現できる。
【0098】
(15)の発明による交差歯車装置は、第1固定歯車と第2固定歯車が中心又は輪郭中心を共有することに限定されない。第1固定歯車の輪郭中心に対して第2固定歯車の輪郭中心が偏心してよく、第2固定歯車の輪郭中心に対して第1固定歯車の輪郭中心が偏心してよく、交差歯車装置を利用して、関節装置以外にも様々な応用が展開されると考えられる。
【0099】
(16) 前記第1固定歯車及び前記第2固定歯車は、円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける固定歯車からなる(15)記載の交差歯車装置。
【0100】
(17) 前記第1固定歯車及び前記第2固定歯車は、所定の閉曲線からなるピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける非円形固定歯車からなる(15)記載の交差歯車装置。
【0101】
(17)の発明による交差歯車装置は、第1自走歯車と第2自走歯車とが相互に独立して、所要の軌跡を描いて運動する新たな装置が展開されると期待される。
【発明の効果】
【0102】
本発明による関節装置は、1関節に2自由度を有し、確実な動作を実現するスリムな関節装置を提供できる。又、本発明による関節装置は、出力側からの動力が入力側に伝達することなく維持される不可逆な機構を備える関節装置が実現できる。本発明による関節装置を応用した多関節装置は、複雑で多様な動作を実現することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明による関節装置の一実施形態を示す要部の斜視図である。
【図2】前記実施形態による関節装置を示す要部の正面図である。
【図3】前記実施形態による関節装置に備わる第1交差歯車の正面図である。
【図4】前記実施形態による関節装置に備わる第1交差歯車の斜視外観図である。
【図5】前記実施形態による関節装置の斜視外観図である。
【図6】前記実施形態による関節装置の平面図である。
【図7】前記実施形態による関節装置の縦断面図である。
【図8】前記実施形態による関節装置の縦断面図であり、他方のアームが傾斜した状態を想像線で示している。
【図9】前記実施形態による関節装置の縦断面図であり、一方のアームが傾斜した状態を想像線で示している。
【図10】別の実施形態による関節装置の一実施形態を示す要部の正面図であり、第2交差歯車に備わる第1及び第2非円形歯車が楕円形状となっている。
【図11】別の実施形態による関節装置の一実施形態を示す要部の正面図であり、第2交差歯車に備わる第1及び第2非円形歯車が板カム状となっている。
【図12】図10に示された第1非円形歯車の正面図である。
【図13】図11に示された第1非円形歯車の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0105】
図1は、本発明による関節装置の一実施形態を示す要部の斜視図である。図2は、前記実施形態による関節装置を示す要部の正面図である。図3は、前記実施形態による関節装置に備わる第1交差歯車の正面図である。図4は、前記実施形態による関節装置に備わる第1交差歯車の斜視外観図である。
【0106】
図5は、前記実施形態による関節装置の斜視外観図である。図6は、前記実施形態による関節装置の平面図である。図7は、前記実施形態による関節装置の縦断面図である。図8は、前記実施形態による関節装置の縦断面図であり、他方のアームが傾斜した状態を想像線で示している。図9は、前記実施形態による関節装置の縦断面図であり、一方のアームが傾斜した状態を想像線で示している。
【0107】
図10は、別の実施形態による関節装置の一実施形態を示す要部の正面図であり、第2交差歯車に備わる第1及び第2非円形歯車が楕円形状となっている。図11は、別の実施形態による関節装置の一実施形態を示す要部の正面図であり、第2交差歯車に備わる第1及び第2非円形歯車が板カム状となっている。図12は、図10に示された第1非円形歯車の正面図である。図13は、図11に示された第1非円形歯車の正面図である。
【0108】
最初に、本発明の実施形態による関節装置の構成を説明する。図5から図7において、関節装置10は、一方のアーム1の端部と他方のアーム2の端部とが互いに可動自在に連結している。関節装置10は、第1交差歯車3と第3及び第4歯車13・14を備えている。第1交差歯車3は、関節部1jに配置されている。
【0109】
図1に示されるように、第1交差歯車3は、第1歯車31と第2歯車32とが中心を共有している。第1歯車31は、ピッチ円となる第1円周に等間隔に複数の歯31aを設けている。第2歯車32は、ピッチ円となる第2円周に等間隔に複数の歯32aを設けている。第1円周を含む仮想の第1平面A1と、第2円周を含む仮想の第2平面A2とが直交している(図4参照)。
【0110】
図5から図7に示されるように、第3歯車13は、アーム1に設けられている。第4歯車14は、アーム2に設けられている。第3歯車13は、第1歯車31と噛み合っている。第4歯車14は、第2歯車32と噛み合っている。
【0111】
又、図5から図7において、アーム1は、第1ウォーム歯車15と第1ウォーム16を有している。アーム2は、第2ウォーム歯車17と第2ウォーム18を有している。第1ウォーム歯車15は、第3歯車13と同軸上に配列している。第1ウォーム16は、第1ウォーム歯車15と噛み合っている。第2ウォーム歯車17は、第4歯車14と同軸上に配列している。第2ウォーム18は、第2ウォーム歯車17と噛み合っている。
【0112】
図5から図7において、アーム1は、第1モータ1mを有している。第1モータ1mの出力軸は、第1ウォーム16に直結している。第1モータ1mを駆動すると、第1ウォーム16を回転できる。アーム1は、第1モータ1mの制御する制御回路(実体としてプリント基板)1cを収容している。
【0113】
図5から図7において、アーム2は、第2モータ2mを有している。第2モータ2mの出力軸は、第2ウォーム18に直結している。第2モータ2mを駆動すると、第2ウォーム18を回転できる。アーム2は、第2モータ2mの制御する制御回路(実体としてプリント基板)2cを収容している。
【0114】
図5から図7において、第1交差歯車3は、第1回動軸31sと第2回動軸32sを有している。第1回動軸31sは、第1歯車31の中心軸方向に延びて、第2歯車32の両翼に外在している。第2回動軸32sは、第2歯車32の中心軸方向に延びて、第1歯車31の両翼に外在している。なお、図1から図4において、第1及び第2回動軸31s・32sは、図示を省略している。
【0115】
図5から図7において、アーム1は、外管1aと内管1bで構成された二重管となっている。同様に、アーム2は、外管2aと内管2bで構成された二重管となっている。そして、内管1bは、第1回動軸31sの両端部を回動可能に支持する一対の第1支持端末1d・1dを有している。内管2bは、第2回動軸32sの両端部を回動可能に支持する一対の第1支持端末2d・2dを有している(図9参照)。
【0116】
次に、本発明の実施形態による関節装置の構成を補足しながら、作用を説明する。図示の実施形態では、第1及び第2歯車31・32と第3及び第4歯車13・14は、最も一般的な平歯車を使用したが、「はすば歯車」であってもよく、「やまば歯車」であってもよい。
【0117】
図1に示されるように、第1歯車31と第3歯車13とは、歯車伝動装置を構成している。同様に、第2歯車32と第4歯車14とは、歯車伝動装置を構成している。図3及び図4に示された実施形態では、第1歯車31と第2歯車32とは、ピッチ円と円周ピッチが同一の平歯車を示している。第1歯車31の歯31aと第2歯車32の歯32aとが重なり合う部位は、第2歯車32の歯32aが形成されているが、この実施形態に限定されない。
【0118】
図1において、第1歯車31が固定歯車であって、第3歯車13が可動歯車である。第3歯車13を回転させる力が付与されることにより、第1歯車31と第3歯車13が相対移動する。この場合、第3歯車13が第1歯車31に噛み合って自走する。ここで、第3歯車13の中心Q1は、第1歯車31の軸中心を中心とする公転軌跡K1を描くことができる(図2参照)。
【0119】
同様に、図1において、第2歯車32が固定歯車であって、第4歯車14が可動歯車である。第4歯車14を回転させる力が付与されることにより、第2歯車32と第4歯車114が相対移動する。この場合、第4歯車14が第2歯車32に噛み合って自走する。ここで、第4歯車13の中心Q2は、第1歯車31の軸中心を中心とする公転軌跡(図示せず)を描くことができる。
【0120】
ここで、本発明の実施形態による第1交差歯車は、新規な伝動機構の概念を提供する。一般に、歯車とは、組をなす歯車伝動装置を意味しており、原動車の回転及び動力が従動車に伝動されるが、この第1交差歯車と平歯車の組み合わせは、原動車である平歯車の回転及び動力が第1交差歯車で規定されて自走する(運動)する。自走可能な歯車伝動装置としては、ラックピニオンが考えられるが、ラックによって規定されるピニオンの自走運動は、直線運動に限定される。この第1交差歯車と平歯車の組み合わせは、平歯車の自走による円弧軌跡を描くことができる。
【0121】
図1において、アーム1の中心軸を第3歯車13の中心Q1と同軸となるように配置し、アーム2の中心軸を第3歯車14の中心Q2と同軸となるように配置すれば、アーム1の伸長方向とアーム2の伸長方向とが直交配置される関節装置も可能である。
【0122】
前述の場合、アーム1の中心軸を第3歯車13の中心Q1と同軸となるように配置し、アーム2の中心軸を第3歯車14の中心Q2と直交する方向と同軸となるように配置し、かつ、アーム1の中心軸とアーム2の中心軸が同一平面上に存在するように直交配置すれば、人体の体躯と上腕をつなぐ肩関節に類似した、鋭角に屈折可能な関節装置10も実現できる。このような、一方のアームと他方のアームとが鋭角に屈折可能な関節装置を適宜に組み合わせれば、従来には無い効果的なロボットも実現でき、第1交差歯車が広く応用されることが期待できる。
【0123】
図示の実施形態で示された関節装置10は、アーム1の伸長方向とアーム2の伸長方向が同軸上に配置している。関節装置10は、第3歯車13を回転すれば、アーム2に対して、アーム1を可動できる(図9参照)。第4歯車14を回転すれば、アーム1に対して、アーム2を可動できる(図8参照)。このように、本発明による関節装置10は、1関節に2自由度を有する関節装置を実現できる。
【0124】
又、発明による関節装置10は、第3歯車13又は第4歯車14の自転運動が第1交差歯車3で規定される公転運動に変換される。この場合、公転軌跡は、歯車の噛み合いにより、確実に移動することができるので、関節装置10は、確実な動作を実現できる。
【0125】
次に、発明による関節装置の動作を説明する。図5において、第1ウォーム16を回転すると、第1ウォーム16の回転が第1ウォーム歯車15に伝動される。第3歯車13は、第1ウォーム歯車15の回転に同期して回転する。そして、第3歯車13は、第1交差歯車3の第1歯車31に従動されて、アーム2に対してアーム1を移動させる(図9参照)。
【0126】
図5において、モータ1mの回転を停止すると、第1ウォーム16と第1ウォーム歯車15とは、相互にロックされる。すなわち、第1ウォーム歯車15からの動力が第1ウォーム16に伝達することなく、一対のアーム1・2の停止時の姿勢が保持される(図9参照)。
【0127】
同様に、図5において、第2ウォーム18を回転すると、第2ウォーム18の回転が第2ウォーム歯車17に伝動される。第4歯車14は、第2ウォーム歯車17の回転に同期して回転する。そして、第4歯車14は、第1交差歯車3の第2歯車32に従動されて、アーム1に対してアーム2を移動させる(図8参照)。
【0128】
図5において、モータ2mの回転を停止すると、第2ウォーム18と第2ウォーム歯車17とは、相互にロックされる。すなわち、第2ウォーム歯車17からの動力が第2ウォーム18に伝達することなく、一対のアーム1・2の停止時の姿勢が保持される(図8参照)。
【0129】
このように、本発明による関節装置は、出力側からの動力が入力側に伝達することなく、停止時の姿勢が保持される不可逆な機構を備え、リセットすることなく動作を再開可能な関節装置を提供できる。
【0130】
又、本発明による関節装置10は、関節部1jにモータを備えていないので、スリムな関節装置を実現できる。第1交差歯車3は、理論的には無限に小さくでき、一方のアームの端部と他方のアームの端部が交差する関節部に内蔵することも可能であり、少なくとも関節部を膨張させる必然性はない。図7に示された実施形態では、伸縮性のカバー1hで関節部1jを覆っているが、防塵や保護のためであり、環境によってはカバー1hを取り除くことも可能である。
【0131】
本発明の実施形態による関節装置10は、第3歯車又は第4歯車を回転させるアクチュエータの大きさ如何によっては、極細の関節装置も実現できると考えられる。
【0132】
次に、本発明の別の実施形態による関節装置の構成を説明する。図5から図7において、関節装置10は、一方のアーム1の端部と他方のアーム2の端部とが互いに可動自在に連結している。図10において、別の実施形態による関節装置10は、第2交差歯車4と第5歯車43及び第6歯車44(図示せず)を備えている。第2交差歯車4は、関節部1jに配置されている(図5参照)。図11において、別の実施形態による関節装置10は、第2交差歯車5と第5歯車43及び第6歯車44(図示せず)を備えている。第2交差歯車5は、関節部1jに配置されている(図5参照)。
【0133】
図10に示されるように、第2交差歯車4は、第1非円形歯車41と第2非円形歯車42とが輪郭中心を共有している。第1非円形歯車41は、楕円の閉曲線からなる第1ピッチ曲線に等間隔に複数の歯41aを設けている。第2非円形歯車42は、楕円の閉曲線からなる第2ピッチ曲線に等間隔に複数の歯42aを設けている。第1ピッチ曲線を含む仮想の第3平面A3と、第2ピッチ曲線を含む仮想の第4平面A4とが直交している。
【0134】
図11に示されるように、第2交差歯車5は、第1非円形歯車51と第2非円形歯車52とが輪郭中心を共有している。第1非円形歯車51は、所定の閉曲線からなる第1ピッチ曲線に等間隔に複数の歯51aを設けている。第2非円形歯車52は、所定の閉曲線からなる第2ピッチ曲線に等間隔に複数の歯52aを設けている。第1ピッチ曲線を含む仮想の第3平B3と、第2ピッチ曲線を含む仮想の第4平面B4とが直交している。
【0135】
図10において、第5歯車43は、第1非円形歯車41と噛み合っている。又、図示されない第6歯車44は、第2非円形歯車42と噛み合っている。図5を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車4に置き換えて、第5歯車43をアーム1に設けることができる。同様に、第6歯車44をアーム2に設けることができる。
【0136】
図11において、第5歯車43は、第1非円形歯車51と噛み合っている。又、図示されない第6歯車44は、第2非円形歯車52と噛み合っている。図5を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車5に置き換えて、第5歯車43をアーム1に設けることができる。同様に、第6歯車44をアーム2に設けることができる。
【0137】
図10において、第1ウォーム歯車15は、第5歯車43と同軸上に配列している。第1ウォーム16は、第1ウォーム歯車15と噛み合っている。図示されない第2ウォーム歯車17は、第6歯車44と同軸上に配列している。図示されない第2ウォーム18は、第2ウォーム歯車17と噛み合っている。図5を参照すると、第1ウォーム歯車15と第1ウォーム16をアーム1に設けることができる。同様に、第2ウォーム歯車17と第2ウォーム18をアーム2に設けることができる。
【0138】
図11において、第1ウォーム歯車15は、第5歯車43と同軸上に配列している。第1ウォーム16は、第1ウォーム歯車15と噛み合っている。図示されない第2ウォーム歯車17は、第6歯車44と同軸上に配列している。図示されない第2ウォーム18は、第2ウォーム歯車17と噛み合っている。図5を参照すると、第1ウォーム歯車15と第1ウォーム16をアーム1に設けることができる。同様に、第2ウォーム歯車17と第2ウォーム18をアーム2に設けることができる。
【0139】
図5を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車4に置き換えて、第1ウォーム16を回転する第1モータ1mをアーム1に設けることができる。又、第2ウォーム18を回転する第2モータ2mをアーム2に設けることができる。
【0140】
図5を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車5に置き換えて、第1ウォーム16を回転する第1モータ1mをアーム1に設けることができる。又、第2ウォーム18を回転する第2モータ2mをアーム2に設けることができる。
【0141】
図12において、第2交差歯車4は、第5歯車43の歯面を第1非円形歯車41の歯面41aに当接する力を付勢する付勢部材となる引張りコイルばね6を備えている。第5歯車43を回転させる力が付与されることにより、第1非円形歯車41と第5歯車43が相対移動する。この場合、第1非円形歯車41が固定歯車となり、第5歯車43が可動歯車となり、第5歯車43が第1非円形歯車41に噛み合って自走する。ここで、第5歯車43の中心Q3は、第1非円形歯車41の第1ピッチ曲線(楕円)に倣う公転軌跡K3を描くことができる。
【0142】
又、図示されていないが、第2交差歯車4は、第6歯車44の歯面を第2非円形歯車42の歯面42aに当接する力を付勢する引張りコイルばね6を備えている。第6歯車44の中心は、第2非円形歯車42の第2ピッチ曲線(楕円)に倣う公転軌跡を描くことができる。
【0143】
図13において、第2交差歯車5は、第5歯車43の歯面を第1非円形歯車51の歯面に当接する力を付勢する付勢部材となる引張りコイルばね6を備えている。第5歯車43を回転させる力が付与されることにより、第1非円形歯車51と第5歯車43が相対移動する。この場合、第1非円形歯車51が固定歯車となり、第5歯車43が可動歯車となり、第5歯車43が第1非円形歯車51に噛み合って自走する。ここで、第5歯車43の中心Q4は、第1非円形歯車51の所定の第2ピッチ曲線に倣う公転軌跡K4を描くことができる。
【0144】
又、図示されていないが、第2交差歯車5は、第6歯車44の歯面を第2非円形歯車52の歯面に当接する力を付勢する引張りコイルばね6を備えている。第6歯車44の中心は、第2非円形歯車52の所定の第2ピッチ曲線に倣う公転軌跡を描くことができる。
【0145】
図12において、第2交差歯車4は、第5歯車43の歯面を第1非円形歯車41の歯面41aに円滑に追従させる衝撃吸収部材となるショックアブソーバ7を備えている。ショックアブソーバ7は、引張りコイルばね6の不要なダンピングを防止できる。又、図示されていないが、第2交差歯車4は、第6歯車44の歯面を第2非円形歯車42の歯面42aに円滑に追従させるショックアブソーバ7を備えている。
【0146】
図13において、第2交差歯車5は、第5歯車43の歯面を第1非円形歯車51の歯面に円滑に追従させる衝撃吸収部材となるショックアブソーバ7を備えている。ショックアブソーバ7は、引張りコイルばね6の不要なダンピングを防止できる。又、図示されていないが、第2交差歯車5は、第6歯車44の歯面を第2非円形歯車52の歯面に円滑に追従させるショックアブソーバ7を備えている。
【0147】
図10において、第2交差歯車4は、一対の第3回動軸41s・41sと一対の第4回動軸42s・42sとを有している。一対の第3回動軸41s・41sは、第1非円形歯車41の輪郭中心軸方向に延びて、第2非円形歯車42の両翼に外在している。一対の第4回動軸42s・42sは、第2非円形歯車42の輪郭中心軸方向に延びて、第1非円形歯車41の両翼に外在している。
【0148】
図6を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車4に置き換えて、アーム1には、一対の第3回動軸41s・41sの両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第3支持端末を設けることができる。図7を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車4に置き換えて、アーム2には、一対の第4回動軸42s・42sの両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第4支持端末を設けることができる。
【0149】
図11において、第2交差歯車5は、一対の第3回動軸51s・51sと一対の第4回動軸52s・52sとを有している。一対の第3回動軸51s・51sは、第1非円形歯車51の輪郭中心軸方向に延びて、第2非円形歯車52の両翼に外在している。一対の第4回動軸52s・52sは、第2非円形歯車52の輪郭中心軸方向に延びて、第1非円形歯車51の両翼に外在している。
【0150】
図6を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車5に置き換えて、アーム1には、一対の第3回動軸51s・51sの両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第3支持端末を設けることができる。図7を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車5に置き換えて、アーム2には、一対の第4回動軸52s・52sの両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第4支持端末を設けることができる。
【0151】
次に、本発明の別の実施形態による関節装置の構成を補足しながら、作用を説明する。別の実施形態では、第1及び第2非円形歯車41・42と第5及び第6歯車43・44は、平歯車を用いることが好ましい(図10参照)。第1及び第2非円形歯車51・52と第5及び第6歯車43・44は、平歯車を用いることが好ましい(図11参照)。
【0152】
図10において、第5及び第6歯車43・44は、第1及び第2非円形歯車41・42より歯数が同じ又は少ない小歯車を用いることが好ましい。図11において、第5及び第6歯車43・44は、第1及び第2非円形歯車51・52より歯数が同じ又は少ない小歯車を用いることが好ましい。
【0153】
図10において、第1及び第2非円形歯車41・42は、楕円の外径をピッチ曲線としている。そして、楕円の短半径と長半径の交点を第1非円形歯車41及び第2非円形歯車42の輪郭中心としている。楕円形状の第1及び第2非円形歯車41・42は、短半径同士が交差しているが、長半径同士が交差してよく、短半径と長半径が交差してもよい。
【0154】
図11において、第1及び第2非円形歯車51・52は、ピッチ円周の特定の劣弧が凹凸状になる板カムの輪郭をピッチ曲線としている。この板カム状の非円形歯車の優弧のピッチ円周の中心を輪郭中心とすることができる。
【0155】
図12において、第1非円形歯車41と第5歯車43は、歯車伝動装置を構成している。第5歯車43を回転させる力が付与されることにより、第1非円形歯車41と第5歯車43が相対移動する。この場合、第1非円形歯車41が固定歯車となり、第5歯車43が可動歯車となり、第5歯車43が第1非円形歯車41に噛み合って自走する。ここで、第5歯車43の中心Q3は、第1非円形歯車41の第1ピッチ曲線に追従する公転軌跡K3を描くことができる。
【0156】
同様に、図10において、第2非円形歯車42と第6歯車44は、歯車伝動装置を構成できる。第6歯車44を回転させる力が付与されることにより、第2非円形歯車42と第6歯車44が相対移動する。この場合、第2非円形歯車42が固定歯車となり、第6歯車44が可動歯車となり、第6歯車44が第2非円形歯車42に噛み合って自走する。ここで、第6歯車44の中心は、第2非円形歯車42の第2ピッチ曲線に追従する公転軌跡を描くことができる。
【0157】
図13において、第1非円形歯車51と第5歯車43は、歯車伝動装置を構成している。第5歯車43を回転させる力が付与されることにより、第1非円形歯車51と第5歯車43が相対移動する。この場合、第1非円形歯車51が固定歯車となり、第5歯車43が可動歯車となり、第5歯車43が第1非円形歯車51に噛み合って自走する。ここで、第5歯車43の中心Q4は、第1非円形歯車51の第1ピッチ曲線に追従する公転軌跡K4を描くことができる。
【0158】
同様に、図11において、第2非円形歯車52と第6歯車44は、歯車伝動装置を構成できる。第6歯車44を回転させる力が付与されることにより、第2非円形歯車52と第6歯車44が相対移動する。この場合、第2非円形歯車52が固定歯車となり、第6歯車44が可動歯車となり、第6歯車44が第2非円形歯車52に噛み合って自走する。ここで、第6歯車44の中心は、第2非円形歯車52の第2ピッチ曲線に追従する公転軌跡を描くことができる。
【0159】
別の実施形態による関節装置は、図1から図3に示された第1交差歯車3の第1歯車31及び第2歯車32を第1非円形歯車41及び第2非円形歯車42に代えている(図10参照)。又、第1交差歯車3の第1歯車31及び第2歯車32を第1非円形歯車51及び第2非円形歯車52に代えることもできる。
【0160】
図5から図9を参照すると、別の実施形態による関節装置は、アーム1の伸長方向とアーム2の伸長方向とが直交配置されてよく、第5歯車43を回転すれば、アーム2に対して、アーム1を可動できる。第6歯車44を回転すれば、アーム1に対して、アーム2を可動できる。第5及び第6歯車43・44に適宜な方向変換機構を連結すれば、アーム1の伸長方向とアーム2の伸長方向とを同軸上に配置することもできる。このように、別の実施形態による関節装置は、1関節に2自由度を有する関節装置を実現できる。
【0161】
図10を参照すると、別の実施形態による関節装置は、第1及び第2非円形歯車41・42と第5及び第6歯車43・44とは、カム装置を構成しているということもできる。ここで、カム曲線を有する第1及び第2非円形歯車41・42が従動節であってよく、カム曲線に接触して転動する第5及び第6歯車43・44が動節であってよく、別の実施形態による関節装置は、動節と従動節の関係が反対になった「反対カム」を構成しているということもできる。
【0162】
図11を参照すると、別の実施形態による関節装置は、第1及び第2非円形歯車51・52と第5及び第6歯車43・44とは、カム装置を構成しているということもできる。ここで、カム曲線を有する第1及び第2非円形歯車51・52が従動節であってよく、カム曲線に接触して転動する第5及び第6歯車43・44が動節であってよく、別の実施形態による関節装置は、動節と従動節の関係が反対になった「反対カム」を構成しているということもできる。
【0163】
周知のとおり、カム装置は、カム曲線に追従する従動節の位置(瞬間中心)を変えること、及び従動節の速度又は加速度を変えることができる。つまり、従動節の位置、速度、又は加速度はカム曲線に依存している。一方で、第2交差歯車4・5は、歯車伝動装置を構成しているので、例えば、別の実施形態による関節装置は、アーム1とアーム2とが鈍角から閉じるときは、駆動車となる第5及び第6歯車43・44が低いトルクで駆動でき、アーム1とアーム2とが鈍角から開くときは、駆動車となる第5及び第6歯車を高いトルクで駆動する関節装置を実現できる(図5から図9参照)。
【0164】
なお、図10に示された第2非円形歯車42を第2歯車32に代えてもよく(図1から図3参照)、図11に示された第2非円形歯車52を第2歯車32に代えてもよく(図1から図3参照)、第1非円形歯車41を第1歯車31に代えてもよく、第1非円形歯車51を第1歯車31に代えてもよい。
【0165】
本発明による関節装置10を連設して多関節装置を構成すれば、全体として自由度が増化し、限られた空間で障害物を迂回するなど、複雑で多様な動作を実現することも容易である。本発明による関節装置10を連設して多関節型の産業用ロボットを実現できる。
【0166】
本発明による関節装置10を連設して、従来には無いモジュール型マニピュレーターを実現できる。このモジュール型マニピュレーターに設けられた複数の関節装置を協調的に動作させ、これらの関節装置を自律分散的に制御すれば、例えば、関節装置10に設けられた制御回路1c・2cを通信で自律分散的に制御すれば、宇宙空間での複雑な変化に柔軟に対応できる。
【0167】
第1交差歯車3又は第2交差歯車4を利用して、上述した関節装置以外の交差歯車装置を考えることができる。この場合、交差歯車装置は、交差固定歯車と第1自走歯車及び第2自走歯車を備えてよく、交差固定歯車は、第1固定歯車と第2固定歯車を有している。
【0168】
第1固定歯車は、第3ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。第2固定歯車は、第4ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。そして、第3ピッチ曲線を含むX平面と第4ピッチ曲線を含むY平面とが直交するように交差している。
【0169】
第1自走歯車は、第1固定歯車と噛み合って、X平面に第1自走歯車の第1回転中心が所定の軌跡を描くことができる。第2自走歯車は、第2固定歯車と噛み合って、Y平面に第2自走歯車の第2回転中心が所定の軌跡を描くことができる。
【0170】
ここで、第1固定歯車の第3ピッチ曲線は、第1歯車31のピッチ円周、又は第1非円形歯車41の第1ピッチ曲線のいずれか一方を含むことができる。又、第2固定歯車の第4ピッチ曲線は、第2歯車32のピッチ円周、又は第2非円形歯車42の第2ピッチ曲線のいずれか一方を含むことができる。X平面は、第1平面A1又は第3平面A3のいずれか一方を含むことができる。Y平面は、第2平面A2又は第4平面A4のいずれか一方を含むことができる。
【0171】
第1固定歯車が第1歯車31であって、第2固定歯車が第2歯車32であって、第1歯車31と第2歯車32が中心を共有してよく、更に、第1自走歯車及び第2自走歯車が第3歯車13及び第4歯車14であってよく、実施の形態による関節装置10を実現できる。
【0172】
又、第1固定歯車が第1非円形歯車41であって、第2固定歯車が第2非円形歯車42であって、第1非円形歯車41と第2非円形歯車42が輪郭中心を共有してよく、更に、第1自走歯車及び第2自走歯車が第5歯車43及び第6歯車44であってよく、別の実施の形態による関節装置を実現できる。
【0173】
交差歯車装置は、第1固定歯車と第2固定歯車が中心又は輪郭中心を共有することに限定されない。第1固定歯車の輪郭中心に対して第2固定歯車の輪郭中心が偏心してよく、第2固定歯車の輪郭中心に対して第1固定歯車の輪郭中心が偏心してよく、交差歯車装置を利用して、関節装置以外にも様々な応用が展開されると考えられる。
【符号の説明】
【0174】
1 アーム(一方のアーム)
1j 関節部
2 アーム(他方のアーム)
4 第2交差歯車
10 関節装置
41 第1非円形歯車
42 第2非円形歯車
43 第5歯車
44 第6歯車
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節装置に関する。特に、ロボット、又はマニピュレーターなどに用いられる関節装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットは、人間に類似した動作や形態を有し、コンピュータ制御により複雑な動作を自動化している。産業用ロボットは、物品を搬送又は移載することを主用途としており、多関節型、円筒・極座標型、直交座標型などに分類されている。この内、関節装置を連設した多関節型の産業用ロボットは、動作範囲が大きいという利点があるため、広く利用されている。
【0003】
上述した産業用ロボットの関節装置としては、固定アームと従動アームが関節部で連結されており、固定アームに対して従動アームが屈折するように回動する産業用ロボットの関節装置が発明されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1による関節装置は、関節部にハイポイドギア(食違い歯車)と波動歯車装置(調和減速機)を配置しており、固定アームに内蔵されたモータを駆動すると、ハイポイドギアの原動歯車(小歯車)が従動歯車(大歯車)に回転を伝達し、更に波動歯車装置で減速されて、従動アームを回動するように構成している。
【0005】
特許文献1は、ハイポイドギアの原動歯車に回転軸を両端支持しているので、精度と信頼性が高い産業用ロボットの関節装置を提供できると、している。又、特許文献1は、「このような関節装置は、モジュール化されているので、各種の組み合わせが可能である。」と記載している。すなわち、この関節装置を連設して多関節型の産業用ロボットを実現できることを示唆している。
【0006】
一方、マニピュレーターは、人間の手の構造を模した機械を遠隔から操作して、人間の代わりに作業ができる。マニピュレーターは、人間が立ち入ることが困難な放射線下、又は高温下での作業を可能としている。
【0007】
例えば、関節装置をモジュール化したモジュール型マニピュレーターは、人間が接近困難な宇宙空間での作業を容易とする。モジュール型マニピュレーターに設けられた複数の関節装置を協調的に動作させ、これらの関節装置を自律分散的に制御すれば、宇宙空間での複雑な変化に柔軟に対応できる。
【0008】
上述したモジュール型マニピュレーターとしては、関節部において旋回と斜行の2自由度をもつ関節装置が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0009】
非特許文献1による関節装置は、一方のアームの端部と他方のアームの端部が関節部において、傾斜して連結している。一方のアームの端部と他方のアームの端部は、一対の中空の半球体同士が球体を形成するように関節部を覆っている。
【0010】
この球体には、一方のアームの半球体に固定された波動歯車装置付きモータを内蔵している。そして、他方のアームの半球体に固定された傾斜軸(ロータ)を前記モータが回転できるように構成されている。この傾斜軸は、他方のアームの軸中心に対して傾斜しているので、前記モータを駆動すると、他方のアームの端末を旋回できる。つまり、この関節装置は、円筒・極座標型のロボットとなっている。
【0011】
又、他方のアームは、二重管構造となっており、内管に固定された波動歯車装置付きモータが外管を回転させる構造となっている。そして、一方のアームの端末とこの他方のアームの端末を接続して関節装置を連設すれば、複雑な動作が可能なモジュール型マニピュレーターを実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭59−201787号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】木村 真一(Shinichi Kimura)他3名共著、「Fault Adaptive Kinematic Control Using Multiprocessor System and its Verification Using Hyper−redundant Manipulator」、Journal of Robotics Mechatronics、Vol.13 No.5、2001、p540−542、Fig2、Fig3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1による関節装置は、一対のアームの回動角度を精度よく動作できるという利点がある。しかし、特許文献1による関節装置は、1関節に1自由度しか有しておらず、関節装置を連設して多関節装置を構成しても、いたずらに多関節装置を長くするだけであり、限られた空間で複雑で多様な動作を実現することは困難である。
【0015】
1関節に2自由度を有する関節装置を連設して多関節装置を構成すれば、全体として自由度が倍増し、限られた空間で障害物を迂回するなど、複雑で多様な動作を実現することも容易である。
【0016】
非特許文献1による関節装置は、1関節に2自由度を有しており、この関節装置を利用したモジュール型マニピュレーターは、全体として自由度が多く、複雑で多様な動作を実現できる。又、アームに内蔵されたモータを制御することにより、一対のアームの回動角度を精度よく動作できる。
【0017】
しかし、非特許文献1による関節装置は、関節部にモータを内蔵しており、このモータがダイレクトにアームを旋回しているので、アームを旋回させるために大きなトクルが必要となれば、必然的にモータの外形が大きくなり、全体として胴径の小さいスリムなモジュール型マニピュレーターを実現することは、困難である。スリムなモジュール型マニピュレーターを実現できれば、限られた空間で障害物を迂回するなど、複雑で多様な動作を実現することも容易である。つまり、スリムなモジュール型マニピュレーターを実現可能な関節装置が望まれる。
【0018】
例えば、消化管の内部検査に使用される内視鏡は、スリムで自由度の多い多関節装置を実現している。しかし、この内視鏡は、先端部に設けられたレンズで拡大された対象部の画像をモニターで確認しながら、手許操作部で動作させているので、動作を正確に制御できないという問題がある。
【0019】
又、上述した関節装置は、例えば、瞬断などで動作が停止したときに、出力側からの外力で一対のアームの停止時の姿勢が保持できないという問題もある。出力側からの外力で一対のアームの停止時の姿勢が保持できれば、つまり、出力側からの動力が入力側に伝達することなく維持される不可逆な機構を備える関節装置が実現できれば、リセットすることなく動作を再開できる。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0020】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、1関節に2自由度を有し、確実な動作を実現するスリムな関節装置を提供することを目的とする。又、本発明は、前述の関節装置が出力側からの動力が入力側に伝達することなく、停止時の姿勢が保持される不可逆な機構を備える関節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、一対の歯車を十字状に交差した交差歯車を関節部に配置し、この交差歯車に第1及び第2アームに設けられた各歯車が噛み合って自走するように構成し、更に、各歯車に不可逆な伝動装置を設けることにより、上記の課題が解決可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな関節装置を発明するに至った。
【0022】
(1) 一方のアームの端部と他方のアームの端部とが互いに可動自在に連結する関節装置であって、関節部に配置する第1交差歯車であって、第1円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第1歯車と第2円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第2歯車とが中心を共有し、かつ前記第1円周を含む第1平面と前記第2円周を含む第2平面とが直交する第1交差歯車と、前記一方のアームに設けられて前記第1歯車と噛み合う第3歯車と、前記他方のアームに設けられて前記第2歯車と噛み合う第4歯車と、を備える関節装置。
【0023】
(1)の発明による関節装置は、一方のアームの端部と他方のアームの端部とが互いに可動自在に連結している。そして、第1交差歯車と第3及び第4歯車を備えている。第1交差歯車は、関節部に配置されている。又、第1交差歯車は、第1歯車と第2歯車とが中心を共有している。第1歯車は、第1円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。第2歯車は、第2円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。更に、第1円周を含む第1平面と第2円周を含む第2平面とが直交している。
【0024】
又、(1)の発明による関節装置は、第3歯車が一方のアームに設けられており、第1歯車と噛み合っている。第4歯車が他方のアームに設けられており、第2歯車と噛み合っている。
【0025】
ここで、第1から第4歯車は、軸に対して歯筋が平行な平歯車であってよく、歯形が円の伸開線となるインボリュート(involute)歯車であってもよい。又、第1から第4歯車は、歯面が螺旋曲面で形成された「はすば歯車(helical gear)」であってよく、インボリュートはすば歯車であってよく、歯幅の中央で歯筋の向きを反対に変えた「やまば歯車(herringbone gear)」、又はダブルヘリカルギア(double helical gear)であってもよい。やまば歯車は、大きな動力を効率よく静粛に伝達するのに適している。
【0026】
第1及び第2円周は、ピッチ円であってよく、歯先円であってもよく、歯元円であってもよい。第1及び第2円周に歯筋が直交する場合は、平歯車となりえる。第1及び第2円周に歯筋が斜交する場合は、「はすば歯車」、又は「やまば歯車」となりえる。第1円周と第2円周は、同じであってよく、異なってもよい。
【0027】
第1歯車は第1円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設けるとは、第1円周の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設けることを必ずしも意味しない。第1歯車は、第3歯車と噛み合って機能するが、後述するように第3歯車の運動は、実態として限定される。したがって、例えば、第1歯車は、第1円周の略半周に亘り、等間隔に限定的に複数の歯を設けてもよい。この場合、半月状の第1歯車の半円弧外周の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよく、半月状の第1歯車の円弧外周に、180度以下に開角する劣弧の範囲で等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよい。円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける歯車は、(1)の発明による第1歯車に全て含まれる。
【0028】
同様に、第2歯車は第2円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設けるとは、第2円周の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設けることを必ずしも意味しない。第2歯車は、第4歯車と噛み合って機能するが、後述するように第4歯車の運動は、実態として限定される。したがって、例えば、第2歯車は、第2円周の略半周に亘り、等間隔に限定的に複数の歯を設けてもよい。この場合、半月状の第2歯車の半円弧外周の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよく、半月状の第2歯車の円弧外周に、180度以下に開角する劣弧の範囲で等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよい。円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける歯車は、(1)の発明による第2歯車に全て含まれる。
【0029】
第1歯車と第2歯車とは、一方の歯車が大歯車であって他方の歯車が小歯車であってよく、同じであってもよい。第1歯車と第2歯車とは、円周ピッチ(ピッチ円上で測った隣接する歯の間の距離)が同じであってよく、異なってもよい。第1歯車の歯と第2歯車の歯とが重なり合う部位は、いずれか一方の歯が形成されてよく、双方の歯が形成されなくてもよい。
【0030】
一般に、歯車とは、組をなす歯車伝動装置を意味しているが、交差歯車(第1交差歯車及び後述する第2交差歯車を含む)は、歯車伝動装置を意味しない、新たな概念により規定される単体であり、機械要素である。交差歯車は、2軸が相交わる歯車の組み合わせである「交差軸歯車」とは異なっている。ここで、交差歯車は、カム装置における球面カムのように機能し、相手側歯車の軌跡を規定する。
【0031】
第1歯車と第3歯車は、歯車伝動装置を構成している。第3歯車を回転させる力が付与されることにより、第1歯車と第3歯車が相対移動する。この場合、第1歯車が固定歯車となり、第3歯車が可動歯車となり、第3歯車が第1歯車に噛み合って自走する。ここで、第3歯車の中心は、第1歯車の軸中心を中心とする公転軌跡を描くことができる。
【0032】
同様に、第2歯車と第4歯車は、歯車伝動装置を構成している。第4歯車を回転させる力が付与されることにより、第2歯車と第4歯車が相対移動する。この場合、第2歯車が固定歯車となり、第4歯車が可動歯車となり、第4歯車が第2歯車に噛み合って自走する。ここで、第4歯車の中心は、第2歯車の軸中心を中心とする公転軌跡を描くことができる。
【0033】
第1歯車と第3歯車は、一方の歯車が大歯車であって他方の歯車が小歯車であってよく、同じであってもよい。第1歯車を大歯車とし、第3歯車を小歯車に設定すれば、一方のアームを低いトルクで回動できる。
【0034】
同様に、第2歯車と第4歯車は、一方の歯車が大歯車であって他方の歯車が小歯車であってよく、同じであってもよい。第2歯車を大歯車とし、第4歯車を小歯車に設定すれば、他方のアームを低いトルクで回動できる。
【0035】
(1)の発明による関節装置は、一方のアームの伸長方向と他方のアームの伸長方向とが直交配置されてよく、第3歯車を回転すれば、他方のアームに対して、一方のアームを可動できる。第4歯車を回転すれば、一方のアームに対して、他方のアームを可動できる。第3及び第4歯車に適宜な方向変換機構を連結すれば、一方のアームの伸長方向と他方のアームの伸長方向とを同軸上に配置することもできる。このように、(1)の発明による関節装置は、1関節に2自由度を有する関節装置を実現できる。
【0036】
周知のとおり、歯車伝動装置は、歯面同士のすべり接触によって確実な伝動を得ることができる。一般に、歯車伝動装置は、原動車(入力)が従動車(出力)に回転を伝動するが、(1)の発明による関節装置は、第3歯車又は第4歯車の自転(入力)運動が第1交差歯車で規定される公転(出力)運動に変換される。この場合、公転軌跡は、歯車の噛み合いにより、確実に移動することができる。すなわち、(1)の発明による関節装置は、確実な動作を実現できる。
【0037】
又、(1)の発明による関節装置は、関節部にモータを備えていないので、スリムな関節装置を実現できる。第1交差歯車は、理論的には無限に小さくでき、一方のアームの端部と他方のアームの端部が交差する関節部に内蔵することも可能であり、少なくとも関節部を膨張させる必然性はない。第3歯車又は第4歯車を回転させるアクチュエータの大きさ如何によっては、極細の関節装置も実現できると考えられる。
【0038】
(2) 前記一方のアームは、前記第3歯車と同軸上に配列する第1ウォーム歯車と、この第1ウォーム歯車と噛み合う第1ウォームと、を有し、前記他方のアームは、前記第4歯車と同軸上に配列する第2ウォーム歯車と、この第2ウォーム歯車と噛み合う第2ウォームと、を有する(1)記載の関節装置。
【0039】
(2)の発明による関節装置は、一方のアームが第1ウォーム歯車と第1ウォームを有している。又、他方のアームが第2ウォーム歯車と第2ウォームを有している。第1ウォーム歯車は、第3歯車と同軸上に配列している。第1ウォームは、第1ウォーム歯車と噛み合っている。第2ウォーム歯車は、第4歯車と同軸上に配列している。第2ウォームは、第2ウォーム歯車と噛み合っている。
【0040】
第1及び第2ウォームは、小歯車であってよく、ねじ歯車であってよく、大歯車である第1及び第2ウォーム歯車に噛み合うウォーム歯車装置を構成する。ウォーム歯車装置は、2軸が互いに平行でもなく、又相交わることもしない、食違い歯車に分類されている。ウォーム歯車装置は、2軸が空間上に直交しているが交わらない。
【0041】
ウォーム歯車装置は、ウォームを原動車としてよく、従動車であるウォーム歯車の回転がウォームに伝動しない不可逆な機構となっている。そして、ウォーム歯車装置に代わる不可逆な機構は、(2)の発明に全て含まれる。
【0042】
第1ウォームを回転すると、第1ウォームの回転が第1ウォーム歯車に伝動される。第3歯車は、第1ウォーム歯車の回転に同期して回転してよく、第1交差歯車に従動されて、他方のアームに対して一方のアームを移動させる。第1ウォームを回転停止すると、第1ウォームと第1ウォーム歯車とは、相互にロックされる。すなわち、第1ウォーム歯車からの動力が第1ウォームに伝達することなく、一対のアームの停止時の姿勢が保持される。
【0043】
同様に、第2ウォームを回転すると、第2ウォームの回転が第2ウォーム歯車に伝動される。第4歯車は、第2ウォーム歯車の回転に同期して回転してよく、第1交差歯車に従動されて、一方のアームに対して他方のアームを移動させる。第2ウォームを回転停止すると、第2ウォームと第2ウォーム歯車とは、相互にロックされる。すなわち、第2ウォーム歯車からの動力が第2ウォームに伝達することなく一対のアームの停止時の姿勢が保持される。
【0044】
(2)の発明による関節装置は、出力側からの動力が入力側に伝達することなく、停止時の姿勢が保持される不可逆な機構を備える関節装置を提供できる。
【0045】
(3) 前記一方のアームは、前記第1ウォームを回転する第1モータを有し、前記他方のアームは、前記第2ウォームを回転する第2モータを有する(2)記載の関節装置。
【0046】
第1及び第2モータは、ステップ角度が細分化でき、確実な角運動ができるステッピングモータが好ましい。
【0047】
(4) 前記第1交差歯車は、前記第1歯車の中心軸方向に延びて前記第2歯車の両翼に外在する第1回動軸と、前記第2歯車の中心軸方向に延びて前記第1歯車の両翼に外在する第2回動軸と、を有し、前記一方のアームは、前記第1回動軸の両端部を回動可能に支持する第1支持端末を有し、前記他方のアームは、前記第2回動軸の両端部を回動可能に支持する第2支持端末を有する(1)から(3)のいずれかに記載の関節装置。
【0048】
一方のアーム又は他方のアームは、筒状に形成されることが好ましく、丸パイプを含んでよく、角パイプを含んでよい。アーム内に部品(要素)を実装するために、パイプを分割(半割)してもよく、部品を実装した後に分割されたパイプを結合してもよい。
【0049】
(5) 一方のアームの端部と他方のアームの端部とが互いに可動自在に連結する関節装置であって、関節部に配置する第2交差歯車であって、所定の閉曲線からなる第1ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第1非円形歯車と所定の閉曲線からなる第2ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第2非円形歯車とが輪郭中心を共有し、かつ第1ピッチ曲線を含む第3平面と前記第2ピッチ曲線を含む第4平面とが直交する第2交差歯車と、前記一方のアームに設けられて前記第1非円形歯車と噛み合う第5歯車と、前記他方のアームに設けられて前記第2非円形歯車と噛み合う第6歯車と、を備える関節装置。
【0050】
(5)の発明による関節装置は、一方のアームの端部と他方のアームの端部とが互いに可動自在に連結している。そして、第2交差歯車と第5及び第6歯車を備えている。第2交差歯車は、関節部に配置されている。又、第2交差歯車は、第1非円形歯車と第2非円形歯車とが輪郭中心を共有している。
【0051】
第1非円形歯車は、所定の閉曲線からなる第1ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。第2非円形歯車は、所定の閉曲線からなる第2ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。更に、第1ピッチ曲線を含む第3平面と第2ピッチ曲線を含む第4平面とが直交している。
【0052】
又、(5)の発明による関節装置は、第5歯車が一方のアームに設けられており、第1非円形歯車と噛み合っている。第6歯車が他方のアームに設けられており、第2非円形歯車と噛み合っている。
【0053】
(1)の発明において、第1歯車と第1歯車に噛み合う第3歯車の速比r13(第1歯車の角速度ω1/第3歯車の角速度ω3)は、一定である。同様に、第2歯車と第2歯車に噛み合う第4歯車の速比r24(第2歯車の角速度ω2/第4歯車の角速度ω4)は、一定である。このように、両歯車の速比が一定の場合は、両歯車のピッチ円の中心間距離は不変(一定)である。
【0054】
例えば、楕円又は対数螺旋の輪郭がピッチ曲線となる変位歯車を通常の歯車と噛み合わせれば、両歯車の中心間距離が回転中に変化する(速比が変化する)不定速歯車を実現できる。この場合は、特別な場合を除いて、ピッチ曲線又は外形が円形を成さないので、「非円形歯車」と、呼ばれている。ピッチ曲線又は外形が円形を成す歯車は、「円形歯車」とは呼ばれず、単に「歯車」と呼ばれている。
【0055】
すなわち、(5)の発明による関節装置は、第1交差歯車の第1歯車及び第2歯車を第1非円形歯車及び第2非円形歯車に代えている。ここで、第1及び第2非円形歯車は、例えば、楕円の外径をピッチ曲線としてよく、楕円の短半径と長半径の交点を第1非円形歯車及び第2非円形歯車の輪郭中心とすることができる。
【0056】
この楕円形状の第1及び第2非円形歯車は、短半径同士が交差してよく、長半径同士が交差してよく、短半径と長半径が交差してよく、いずれの場合も(5)の発明による第2交差歯車に含まれる。
【0057】
第1及び第2非円形歯車は、楕円又は対数螺旋の輪郭がピッチ曲線となる非円形歯車に限定されない。ピッチ円周の特定の劣弧が凹凸状になる板カムの輪郭をピッチ曲線とする非円形歯車も(5)の発明に含まれる。この板カム状の非円形歯車の優弧のピッチ円周の中心を輪郭中心とすることができる。
【0058】
ここで、第5及び第6歯車は、軸に対して歯筋が平行な平歯車が好ましく、第1及び第2非円形歯車より歯数が同じ又は少ない小歯車が好ましい。
【0059】
第1非円形歯車は、所定の閉曲線からなる第1ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けるとは、第1ピッチ曲線の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設けることを必ずしも意味しない。第1非円形歯車は、第5歯車と噛み合って機能するが、第3歯車と同様に第5歯車の運動は、実態として限定される。
【0060】
したがって、例えば、第1非円形歯車は、第1ピッチ曲線の略半周に亘り、等間隔に限定的に複数の歯を設けてもよい。この場合、半月状の第1非円形歯車の半曲面外周の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよく、半月状の第1非円形歯車の曲面外周に、180度以下に開角する劣弧の範囲で等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよい。非円形のピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける非円形歯車は、(5)の発明による第1非円形歯車に全て含まれる。
【0061】
同様に、第2非円形歯車は、所定の閉曲線からなる第2ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けるとは、第2ピッチ曲線の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設けることを必ずしも意味しない。第2非円形歯車は、第6歯車と噛み合って機能するが、第4歯車と同様に第6歯車の運動は、実態として限定される。
【0062】
したがって、例えば、第2非円形歯車は、第2ピッチ曲線の略半周に亘り、等間隔に限定的に複数の歯を設けてもよい。この場合、半月状の第2非円形歯車の半曲面外周の全てに亘り、等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよく、半月状の第2非円形歯車の曲面外周に、180度以下に開角する劣弧の範囲で等間隔に複数の歯を設ける態様を含んでよい。非円形のピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける非円形歯車は、(5)の発明による第2非円形歯車に全て含まれる。
【0063】
第1非円形歯車と第5歯車は、歯車伝動装置を構成している。第5歯車を回転させる力が付与されることにより、第1非円形歯車と第5歯車が相対移動する。この場合、第1非円形歯車が固定歯車となり、第5歯車が可動歯車となり、第5歯車が第1非円形歯車に噛み合って自走する。ここで、第5歯車の中心は、第1非円形歯車の第1ピッチ曲線に倣う(追従する)公転軌跡を描くことができる。
【0064】
同様に、第2非円形歯車と第6歯車は、歯車伝動装置を構成している。第6歯車を回転させる力が付与されることにより、第2非円形歯車と第6歯車が相対移動する。この場合、第2非円形歯車が固定歯車となり、第6歯車が可動歯車となり、第6歯車が第2非円形歯車に噛み合って自走する。ここで、第6歯車の中心は、第2非円形歯車の第2ピッチ曲線に倣う(追従する)公転軌跡を描くことができる。
【0065】
(5)の発明による関節装置は、一方のアームの伸長方向と他方のアームの伸長方向とが直交配置されてよく、第5歯車を回転すれば、他方のアームに対して、一方のアームを可動できる。第6歯車を回転すれば、一方のアームに対して、他方のアームを可動できる。第5及び第6歯車に適宜な方向変換機構を連結すれば、一方のアームの伸長方向と他方のアームの伸長方向とを同軸上に配置することもできる。このように、(5)の発明による関節装置は、1関節に2自由度を有する関節装置を実現できる。
【0066】
(5)の発明による関節装置は、第1及び第2非円形歯車と第5及び第6歯車とは、カム装置を構成しているということもできる。ここで、カム曲線を有する第1及び第2非円形歯車が従動節であってよく、カム曲線に接触して転動する第5及び第6歯車が動節であってよく、(5)の発明による関節装置は、動節と従動節の関係が反対になった「反対カム」を構成しているということもできる。
【0067】
周知のとおり、カム装置は、カム曲線に追従する従動節の位置(瞬間中心)を変えること、及び従動節の速度又は加速度を変えることができる。つまり、従動節の位置、速度、又は加速度はカム曲線に依存している。一方で、第2交差歯車は、歯車伝動装置を構成しているので、例えば、(5)の発明による関節装置は、一方のアームと他方のアームとが鈍角から閉じるときは、駆動車となる第5及び第6歯車が低いトルクで駆動でき、一方のアームと他方のアームとが鈍角から開くときは、駆動車となる第5及び第6歯車を高いトルクで駆動する関節装置を実現できる。
【0068】
(6) 前記一方のアームは、前記第5歯車と同軸上に配列する第1ウォーム歯車と、この第1ウォーム歯車と噛み合う第1ウォームと、を有し、前記他方のアームは、前記第6歯車と同軸上に配列する第2ウォーム歯車と、この第2ウォーム歯車と噛み合う第2ウォームと、を有する(5)記載の関節装置。
【0069】
(6)の発明による関節装置は、一方のアームが第1ウォーム歯車と第1ウォームを有している。又、他方のアームが第2ウォーム歯車と第2ウォームを有している。第1ウォーム歯車は、第5歯車と同軸上に配列している。第1ウォームは、第1ウォーム歯車と噛み合っている。第2ウォーム歯車は、第5歯車と同軸上に配列している。第2ウォームは、第2ウォーム歯車と噛み合っている。
【0070】
第1及び第2ウォームは、小歯車であってよく、ねじ歯車であってよく、大歯車である第1及び第2ウォーム歯車に噛み合うウォーム歯車装置を構成する。ウォーム歯車装置は、2軸が互いに平行でもなく、又相交わることもしない、食違い歯車に分類されている。ウォーム歯車装置は、2軸が空間上に直交しているが交わらない。
【0071】
ウォーム歯車装置は、ウォームを原動車としてよく、従動車であるウォーム歯車の回転がウォームに伝動しない不可逆な機構となっている。そして、ウォーム歯車装置に代わる不可逆な機構は、(6)の発明に全て含まれる。
【0072】
第1ウォームを回転すると、第1ウォームの回転が第1ウォーム歯車に伝動される。第5歯車は、第1ウォーム歯車の回転に同期して回転してよく、第2交差歯車に従動されて、他方のアームに対して一方のアームを移動させる。第1ウォームを回転停止すると、第1ウォームと第1ウォーム歯車とは、相互にロックされる。すなわち、第1ウォーム歯車からの動力が第1ウォームに伝達することなく、一対のアームの停止時の姿勢が保持される。
【0073】
同様に、第2ウォームを回転すると、第2ウォームの回転が第2ウォーム歯車に伝動される。第6歯車は、第2ウォーム歯車の回転に同期して回転してよく、第2交差歯車に従動されて、一方のアームに対して他方のアームを移動させる。第2ウォームを回転停止すると、第2ウォームと第2ウォーム歯車とは、相互にロックされる。すなわち、第2ウォーム歯車からの動力が第2ウォームに伝達することなく一対のアームの停止時の姿勢が保持される。
【0074】
(6)の発明による関節装置は、出力側からの動力が入力側に伝達することなく、停止時の姿勢が保持される不可逆な機構を備える関節装置を提供できる。
【0075】
(7) 前記一方のアームは、前記第1ウォームを回転する第1モータを有し、前記他方のアームは、前記第2ウォームを回転する第2モータを有する(6)記載の関節装置。
【0076】
(8) 前記第2交差歯車は、前記第1非円形歯車の輪郭中心軸方向に延びて前記第2非円形歯車の両翼に外在する第3回動軸と、前記第2非円形歯車の輪郭中心軸方向に延びて前記第1非円形歯車の両翼に外在する第4回動軸と、を有し、前記一方のアームは、前記第3回動軸の両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第3支持端末を有し、前記他方のアームは、前記第4回動軸の両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第4支持端末を有する(5)から(7)のいずれかに記載の関節装置。
【0077】
(8)の発明による関節装置は、第2交差歯車が第3回動軸と第4回動軸とを有している。第3回動軸は、第1非円形歯車の輪郭中心軸方向に延びて、第2非円形歯車の両翼に外在している。第4回動軸は、第2非円形歯車の輪郭中心軸方向に延びて、第1非円形歯車の両翼に外在している。そして、一方のアームは、第3回動軸の両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第3支持端末を有している。他方のアームは、第4回動軸の両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第4支持端末をしている。
【0078】
第3及び第4回動軸の両端部を離間が困難に支持する手段は、後述する付勢部材であってよく、付勢部材に並列に後述する衝撃吸収部材を設けてもよい。
【0079】
(9) 前記第2交差歯車は、前記第5歯車及び前記第6歯車の歯面を前記第1非円形歯車及び前記第2非円形歯車の歯面に当接する力を付勢する付勢部材を備える(5)から(8)のいずれかに記載の関節装置。
【0080】
第5歯車及び第6歯車と第1非円形歯車及び第2非円形歯車との組み合わせをカム装置として捉えると、第5歯車及び第6歯車の歯面と第1非円形歯車及び第2非円形歯車の歯面の接触は機構学的には、拘束されていない。したがって、第5歯車及び第6歯車の歯面を第1非円形歯車及び第2非円形歯車の歯面に当接する力を付勢する付勢部材を設けることにより、第5歯車及び第6歯車の運動に確実性をもたせることができる。
【0081】
(10) 前記付勢部材は、引張りコイルばねからなり、前記第2交差歯車は、前記第5歯車及び前記第6歯車の歯面を前記第1非円形歯車及び前記第2非円形歯車の歯面に円滑に追従させる衝撃吸収部材を備える(9)記載の関節装置。
【0082】
衝撃吸収部材は、例えばショックアブソーバであってよく、引張りコイルばねの不要なダンピングを防止できる。
【0083】
(11) 前記第2交差歯車は、前記第1非円形歯車又は前記第2非円形歯車のいずれか一方が第3円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第7歯車からなる(5)から(10)のいずれかに記載の関節装置。
【0084】
(12) (1)から(11)のいずかに記載の関節装置を連設する多関節装置。
【0085】
(13) (1)から(11)のいずかに記載の関節装置を備えるロボット。
【0086】
(14) (12)記載の多関節装置を備えるロボット。
【0087】
(15) 第3ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第1固定歯車、及び第4ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第2固定歯車を有する交差固定歯車であって、前記第3ピッチ曲線を含むX平面と前記第4ピッチ曲線を含むY平面とが直交するように交差する交差固定歯車と、前記第1固定歯車と噛み合って前記X平面に第1回転中心が所定の軌跡を描く第1自走歯車と、前記第2固定歯車と噛み合って前記Y平面に第2回転中心が所定の軌跡を描く第2自走歯車と、を備える交差歯車装置。
【0088】
(15)の発明による交差歯車装置は、交差固定歯車と第1自走歯車及び第2自走歯車を備えている。交差固定歯車は、第1固定歯車と第2固定歯車を有している。第1固定歯車は、第3ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。第2固定歯車は、第4ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。そして、第3ピッチ曲線を含むX平面と第4ピッチ曲線を含むY平面とが直交するように交差している。
【0089】
第1自走歯車は、第1固定歯車と噛み合って、X平面に第1自走歯車の第1回転中心が所定の軌跡を描くことができる。第2自走歯車は、第2固定歯車と噛み合って、Y平面に第2自走歯車の第2回転中心が所定の軌跡を描くことができる。
【0090】
例えば、歯車列とは、複数の歯車を順次に噛み合わせて、これらの回転軸をリンクで適宜に連結したものと、定義されている。歯車列は、動力の伝達又は回転数の増減などに用いられている。一般的な歯車列は、全ての歯車が平面運動をするが、複数のかさ歯車を立体的に組み合わせて、動力の伝達又は回転数の増減する自動車の差動歯車装置なども、歯車列の範疇に含まれるとされている。
【0091】
一組の歯車列に注目すると、一般的な歯車列は、一組の歯車の回転中心が空間に固定され、一方の歯車が原動車であり、他方の歯車が従動車となるように構成されている。又、一般的な歯車列と異なる別の歯車列としては、一方の歯車が空間に固定され、他方の歯車を原動車として、他方の歯車の回転中心が運動するように構成している。
【0092】
(15)の発明による交差歯車装置は、後者の一組の歯車列を含んでおり、第1固定歯車が空間に固定され、第1自走歯車の回転中心が運動するように構成している。又、第2固定歯車が空間に固定され、第2自走歯車の回転中心が運動するように構成している。
【0093】
ところで、(15)の発明による交差歯車装置は、第1ピッチ曲線を含むX平面と第2ピッチ曲線を含むY平面とが直交するように交差する構成が一般的な歯車列と異なっている。(15)の発明による交差歯車装置は、一般的な歯車列の範疇に含まれない特殊歯車列を構成している、ということもできる。
【0094】
(15)の発明による交差歯車装置は、前述したかさ歯車を使用する差動歯車装置とも異なっている。差動歯車装置は、従動車が遊星歯車であるのに対し、交差歯車装置は、原動車が遊星歯車になっている。差動歯車装置は、原動車によって駆動される一対の従動車の内、一方の従動車を停止しても他方の従動車を原動車から駆動できる。交差歯車装置は、交差固定歯車に対して駆動する一対の原動車がそれぞれ独立して運動できる。
【0095】
ここで、第1固定歯車の第3ピッチ曲線は、第1歯車のピッチ円周、又は第1非円形歯車の第1ピッチ曲線のいずれか一方を含むことができる。又、第2固定歯車の第4ピッチ曲線は、第2歯車のピッチ円周、又は第2非円形歯車の第2ピッチ曲線のいずれか一方を含むことができる。X平面は、第1平面又は第3平面のいずれか一方を含むことができる。Y平面は、第2平面又は第4平面のいずれか一方を含むことができる。
【0096】
第1固定歯車が第1歯車であって、第2固定歯車が第2歯車であって、第1歯車と第2歯車が中心を共有してよく、更に、第1自走歯車及び第2自走歯車が第3歯車及び第4歯車であってよく、(1)の発明による関節装置を実現できる。
【0097】
又、第1固定歯車が第1非円形歯車であって、第2固定歯車が第2非円形歯車であって、第1非円形歯車と第2非円形歯車が輪郭中心を共有してよく、更に、第1自走歯車及び第2自走歯車が第5歯車及び第6歯車であってよく、(5)の発明による関節装置を実現できる。
【0098】
(15)の発明による交差歯車装置は、第1固定歯車と第2固定歯車が中心又は輪郭中心を共有することに限定されない。第1固定歯車の輪郭中心に対して第2固定歯車の輪郭中心が偏心してよく、第2固定歯車の輪郭中心に対して第1固定歯車の輪郭中心が偏心してよく、交差歯車装置を利用して、関節装置以外にも様々な応用が展開されると考えられる。
【0099】
(16) 前記第1固定歯車及び前記第2固定歯車は、円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける固定歯車からなる(15)記載の交差歯車装置。
【0100】
(17) 前記第1固定歯車及び前記第2固定歯車は、所定の閉曲線からなるピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける非円形固定歯車からなる(15)記載の交差歯車装置。
【0101】
(17)の発明による交差歯車装置は、第1自走歯車と第2自走歯車とが相互に独立して、所要の軌跡を描いて運動する新たな装置が展開されると期待される。
【発明の効果】
【0102】
本発明による関節装置は、1関節に2自由度を有し、確実な動作を実現するスリムな関節装置を提供できる。又、本発明による関節装置は、出力側からの動力が入力側に伝達することなく維持される不可逆な機構を備える関節装置が実現できる。本発明による関節装置を応用した多関節装置は、複雑で多様な動作を実現することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明による関節装置の一実施形態を示す要部の斜視図である。
【図2】前記実施形態による関節装置を示す要部の正面図である。
【図3】前記実施形態による関節装置に備わる第1交差歯車の正面図である。
【図4】前記実施形態による関節装置に備わる第1交差歯車の斜視外観図である。
【図5】前記実施形態による関節装置の斜視外観図である。
【図6】前記実施形態による関節装置の平面図である。
【図7】前記実施形態による関節装置の縦断面図である。
【図8】前記実施形態による関節装置の縦断面図であり、他方のアームが傾斜した状態を想像線で示している。
【図9】前記実施形態による関節装置の縦断面図であり、一方のアームが傾斜した状態を想像線で示している。
【図10】別の実施形態による関節装置の一実施形態を示す要部の正面図であり、第2交差歯車に備わる第1及び第2非円形歯車が楕円形状となっている。
【図11】別の実施形態による関節装置の一実施形態を示す要部の正面図であり、第2交差歯車に備わる第1及び第2非円形歯車が板カム状となっている。
【図12】図10に示された第1非円形歯車の正面図である。
【図13】図11に示された第1非円形歯車の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0105】
図1は、本発明による関節装置の一実施形態を示す要部の斜視図である。図2は、前記実施形態による関節装置を示す要部の正面図である。図3は、前記実施形態による関節装置に備わる第1交差歯車の正面図である。図4は、前記実施形態による関節装置に備わる第1交差歯車の斜視外観図である。
【0106】
図5は、前記実施形態による関節装置の斜視外観図である。図6は、前記実施形態による関節装置の平面図である。図7は、前記実施形態による関節装置の縦断面図である。図8は、前記実施形態による関節装置の縦断面図であり、他方のアームが傾斜した状態を想像線で示している。図9は、前記実施形態による関節装置の縦断面図であり、一方のアームが傾斜した状態を想像線で示している。
【0107】
図10は、別の実施形態による関節装置の一実施形態を示す要部の正面図であり、第2交差歯車に備わる第1及び第2非円形歯車が楕円形状となっている。図11は、別の実施形態による関節装置の一実施形態を示す要部の正面図であり、第2交差歯車に備わる第1及び第2非円形歯車が板カム状となっている。図12は、図10に示された第1非円形歯車の正面図である。図13は、図11に示された第1非円形歯車の正面図である。
【0108】
最初に、本発明の実施形態による関節装置の構成を説明する。図5から図7において、関節装置10は、一方のアーム1の端部と他方のアーム2の端部とが互いに可動自在に連結している。関節装置10は、第1交差歯車3と第3及び第4歯車13・14を備えている。第1交差歯車3は、関節部1jに配置されている。
【0109】
図1に示されるように、第1交差歯車3は、第1歯車31と第2歯車32とが中心を共有している。第1歯車31は、ピッチ円となる第1円周に等間隔に複数の歯31aを設けている。第2歯車32は、ピッチ円となる第2円周に等間隔に複数の歯32aを設けている。第1円周を含む仮想の第1平面A1と、第2円周を含む仮想の第2平面A2とが直交している(図4参照)。
【0110】
図5から図7に示されるように、第3歯車13は、アーム1に設けられている。第4歯車14は、アーム2に設けられている。第3歯車13は、第1歯車31と噛み合っている。第4歯車14は、第2歯車32と噛み合っている。
【0111】
又、図5から図7において、アーム1は、第1ウォーム歯車15と第1ウォーム16を有している。アーム2は、第2ウォーム歯車17と第2ウォーム18を有している。第1ウォーム歯車15は、第3歯車13と同軸上に配列している。第1ウォーム16は、第1ウォーム歯車15と噛み合っている。第2ウォーム歯車17は、第4歯車14と同軸上に配列している。第2ウォーム18は、第2ウォーム歯車17と噛み合っている。
【0112】
図5から図7において、アーム1は、第1モータ1mを有している。第1モータ1mの出力軸は、第1ウォーム16に直結している。第1モータ1mを駆動すると、第1ウォーム16を回転できる。アーム1は、第1モータ1mの制御する制御回路(実体としてプリント基板)1cを収容している。
【0113】
図5から図7において、アーム2は、第2モータ2mを有している。第2モータ2mの出力軸は、第2ウォーム18に直結している。第2モータ2mを駆動すると、第2ウォーム18を回転できる。アーム2は、第2モータ2mの制御する制御回路(実体としてプリント基板)2cを収容している。
【0114】
図5から図7において、第1交差歯車3は、第1回動軸31sと第2回動軸32sを有している。第1回動軸31sは、第1歯車31の中心軸方向に延びて、第2歯車32の両翼に外在している。第2回動軸32sは、第2歯車32の中心軸方向に延びて、第1歯車31の両翼に外在している。なお、図1から図4において、第1及び第2回動軸31s・32sは、図示を省略している。
【0115】
図5から図7において、アーム1は、外管1aと内管1bで構成された二重管となっている。同様に、アーム2は、外管2aと内管2bで構成された二重管となっている。そして、内管1bは、第1回動軸31sの両端部を回動可能に支持する一対の第1支持端末1d・1dを有している。内管2bは、第2回動軸32sの両端部を回動可能に支持する一対の第1支持端末2d・2dを有している(図9参照)。
【0116】
次に、本発明の実施形態による関節装置の構成を補足しながら、作用を説明する。図示の実施形態では、第1及び第2歯車31・32と第3及び第4歯車13・14は、最も一般的な平歯車を使用したが、「はすば歯車」であってもよく、「やまば歯車」であってもよい。
【0117】
図1に示されるように、第1歯車31と第3歯車13とは、歯車伝動装置を構成している。同様に、第2歯車32と第4歯車14とは、歯車伝動装置を構成している。図3及び図4に示された実施形態では、第1歯車31と第2歯車32とは、ピッチ円と円周ピッチが同一の平歯車を示している。第1歯車31の歯31aと第2歯車32の歯32aとが重なり合う部位は、第2歯車32の歯32aが形成されているが、この実施形態に限定されない。
【0118】
図1において、第1歯車31が固定歯車であって、第3歯車13が可動歯車である。第3歯車13を回転させる力が付与されることにより、第1歯車31と第3歯車13が相対移動する。この場合、第3歯車13が第1歯車31に噛み合って自走する。ここで、第3歯車13の中心Q1は、第1歯車31の軸中心を中心とする公転軌跡K1を描くことができる(図2参照)。
【0119】
同様に、図1において、第2歯車32が固定歯車であって、第4歯車14が可動歯車である。第4歯車14を回転させる力が付与されることにより、第2歯車32と第4歯車114が相対移動する。この場合、第4歯車14が第2歯車32に噛み合って自走する。ここで、第4歯車13の中心Q2は、第1歯車31の軸中心を中心とする公転軌跡(図示せず)を描くことができる。
【0120】
ここで、本発明の実施形態による第1交差歯車は、新規な伝動機構の概念を提供する。一般に、歯車とは、組をなす歯車伝動装置を意味しており、原動車の回転及び動力が従動車に伝動されるが、この第1交差歯車と平歯車の組み合わせは、原動車である平歯車の回転及び動力が第1交差歯車で規定されて自走する(運動)する。自走可能な歯車伝動装置としては、ラックピニオンが考えられるが、ラックによって規定されるピニオンの自走運動は、直線運動に限定される。この第1交差歯車と平歯車の組み合わせは、平歯車の自走による円弧軌跡を描くことができる。
【0121】
図1において、アーム1の中心軸を第3歯車13の中心Q1と同軸となるように配置し、アーム2の中心軸を第3歯車14の中心Q2と同軸となるように配置すれば、アーム1の伸長方向とアーム2の伸長方向とが直交配置される関節装置も可能である。
【0122】
前述の場合、アーム1の中心軸を第3歯車13の中心Q1と同軸となるように配置し、アーム2の中心軸を第3歯車14の中心Q2と直交する方向と同軸となるように配置し、かつ、アーム1の中心軸とアーム2の中心軸が同一平面上に存在するように直交配置すれば、人体の体躯と上腕をつなぐ肩関節に類似した、鋭角に屈折可能な関節装置10も実現できる。このような、一方のアームと他方のアームとが鋭角に屈折可能な関節装置を適宜に組み合わせれば、従来には無い効果的なロボットも実現でき、第1交差歯車が広く応用されることが期待できる。
【0123】
図示の実施形態で示された関節装置10は、アーム1の伸長方向とアーム2の伸長方向が同軸上に配置している。関節装置10は、第3歯車13を回転すれば、アーム2に対して、アーム1を可動できる(図9参照)。第4歯車14を回転すれば、アーム1に対して、アーム2を可動できる(図8参照)。このように、本発明による関節装置10は、1関節に2自由度を有する関節装置を実現できる。
【0124】
又、発明による関節装置10は、第3歯車13又は第4歯車14の自転運動が第1交差歯車3で規定される公転運動に変換される。この場合、公転軌跡は、歯車の噛み合いにより、確実に移動することができるので、関節装置10は、確実な動作を実現できる。
【0125】
次に、発明による関節装置の動作を説明する。図5において、第1ウォーム16を回転すると、第1ウォーム16の回転が第1ウォーム歯車15に伝動される。第3歯車13は、第1ウォーム歯車15の回転に同期して回転する。そして、第3歯車13は、第1交差歯車3の第1歯車31に従動されて、アーム2に対してアーム1を移動させる(図9参照)。
【0126】
図5において、モータ1mの回転を停止すると、第1ウォーム16と第1ウォーム歯車15とは、相互にロックされる。すなわち、第1ウォーム歯車15からの動力が第1ウォーム16に伝達することなく、一対のアーム1・2の停止時の姿勢が保持される(図9参照)。
【0127】
同様に、図5において、第2ウォーム18を回転すると、第2ウォーム18の回転が第2ウォーム歯車17に伝動される。第4歯車14は、第2ウォーム歯車17の回転に同期して回転する。そして、第4歯車14は、第1交差歯車3の第2歯車32に従動されて、アーム1に対してアーム2を移動させる(図8参照)。
【0128】
図5において、モータ2mの回転を停止すると、第2ウォーム18と第2ウォーム歯車17とは、相互にロックされる。すなわち、第2ウォーム歯車17からの動力が第2ウォーム18に伝達することなく、一対のアーム1・2の停止時の姿勢が保持される(図8参照)。
【0129】
このように、本発明による関節装置は、出力側からの動力が入力側に伝達することなく、停止時の姿勢が保持される不可逆な機構を備え、リセットすることなく動作を再開可能な関節装置を提供できる。
【0130】
又、本発明による関節装置10は、関節部1jにモータを備えていないので、スリムな関節装置を実現できる。第1交差歯車3は、理論的には無限に小さくでき、一方のアームの端部と他方のアームの端部が交差する関節部に内蔵することも可能であり、少なくとも関節部を膨張させる必然性はない。図7に示された実施形態では、伸縮性のカバー1hで関節部1jを覆っているが、防塵や保護のためであり、環境によってはカバー1hを取り除くことも可能である。
【0131】
本発明の実施形態による関節装置10は、第3歯車又は第4歯車を回転させるアクチュエータの大きさ如何によっては、極細の関節装置も実現できると考えられる。
【0132】
次に、本発明の別の実施形態による関節装置の構成を説明する。図5から図7において、関節装置10は、一方のアーム1の端部と他方のアーム2の端部とが互いに可動自在に連結している。図10において、別の実施形態による関節装置10は、第2交差歯車4と第5歯車43及び第6歯車44(図示せず)を備えている。第2交差歯車4は、関節部1jに配置されている(図5参照)。図11において、別の実施形態による関節装置10は、第2交差歯車5と第5歯車43及び第6歯車44(図示せず)を備えている。第2交差歯車5は、関節部1jに配置されている(図5参照)。
【0133】
図10に示されるように、第2交差歯車4は、第1非円形歯車41と第2非円形歯車42とが輪郭中心を共有している。第1非円形歯車41は、楕円の閉曲線からなる第1ピッチ曲線に等間隔に複数の歯41aを設けている。第2非円形歯車42は、楕円の閉曲線からなる第2ピッチ曲線に等間隔に複数の歯42aを設けている。第1ピッチ曲線を含む仮想の第3平面A3と、第2ピッチ曲線を含む仮想の第4平面A4とが直交している。
【0134】
図11に示されるように、第2交差歯車5は、第1非円形歯車51と第2非円形歯車52とが輪郭中心を共有している。第1非円形歯車51は、所定の閉曲線からなる第1ピッチ曲線に等間隔に複数の歯51aを設けている。第2非円形歯車52は、所定の閉曲線からなる第2ピッチ曲線に等間隔に複数の歯52aを設けている。第1ピッチ曲線を含む仮想の第3平B3と、第2ピッチ曲線を含む仮想の第4平面B4とが直交している。
【0135】
図10において、第5歯車43は、第1非円形歯車41と噛み合っている。又、図示されない第6歯車44は、第2非円形歯車42と噛み合っている。図5を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車4に置き換えて、第5歯車43をアーム1に設けることができる。同様に、第6歯車44をアーム2に設けることができる。
【0136】
図11において、第5歯車43は、第1非円形歯車51と噛み合っている。又、図示されない第6歯車44は、第2非円形歯車52と噛み合っている。図5を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車5に置き換えて、第5歯車43をアーム1に設けることができる。同様に、第6歯車44をアーム2に設けることができる。
【0137】
図10において、第1ウォーム歯車15は、第5歯車43と同軸上に配列している。第1ウォーム16は、第1ウォーム歯車15と噛み合っている。図示されない第2ウォーム歯車17は、第6歯車44と同軸上に配列している。図示されない第2ウォーム18は、第2ウォーム歯車17と噛み合っている。図5を参照すると、第1ウォーム歯車15と第1ウォーム16をアーム1に設けることができる。同様に、第2ウォーム歯車17と第2ウォーム18をアーム2に設けることができる。
【0138】
図11において、第1ウォーム歯車15は、第5歯車43と同軸上に配列している。第1ウォーム16は、第1ウォーム歯車15と噛み合っている。図示されない第2ウォーム歯車17は、第6歯車44と同軸上に配列している。図示されない第2ウォーム18は、第2ウォーム歯車17と噛み合っている。図5を参照すると、第1ウォーム歯車15と第1ウォーム16をアーム1に設けることができる。同様に、第2ウォーム歯車17と第2ウォーム18をアーム2に設けることができる。
【0139】
図5を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車4に置き換えて、第1ウォーム16を回転する第1モータ1mをアーム1に設けることができる。又、第2ウォーム18を回転する第2モータ2mをアーム2に設けることができる。
【0140】
図5を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車5に置き換えて、第1ウォーム16を回転する第1モータ1mをアーム1に設けることができる。又、第2ウォーム18を回転する第2モータ2mをアーム2に設けることができる。
【0141】
図12において、第2交差歯車4は、第5歯車43の歯面を第1非円形歯車41の歯面41aに当接する力を付勢する付勢部材となる引張りコイルばね6を備えている。第5歯車43を回転させる力が付与されることにより、第1非円形歯車41と第5歯車43が相対移動する。この場合、第1非円形歯車41が固定歯車となり、第5歯車43が可動歯車となり、第5歯車43が第1非円形歯車41に噛み合って自走する。ここで、第5歯車43の中心Q3は、第1非円形歯車41の第1ピッチ曲線(楕円)に倣う公転軌跡K3を描くことができる。
【0142】
又、図示されていないが、第2交差歯車4は、第6歯車44の歯面を第2非円形歯車42の歯面42aに当接する力を付勢する引張りコイルばね6を備えている。第6歯車44の中心は、第2非円形歯車42の第2ピッチ曲線(楕円)に倣う公転軌跡を描くことができる。
【0143】
図13において、第2交差歯車5は、第5歯車43の歯面を第1非円形歯車51の歯面に当接する力を付勢する付勢部材となる引張りコイルばね6を備えている。第5歯車43を回転させる力が付与されることにより、第1非円形歯車51と第5歯車43が相対移動する。この場合、第1非円形歯車51が固定歯車となり、第5歯車43が可動歯車となり、第5歯車43が第1非円形歯車51に噛み合って自走する。ここで、第5歯車43の中心Q4は、第1非円形歯車51の所定の第2ピッチ曲線に倣う公転軌跡K4を描くことができる。
【0144】
又、図示されていないが、第2交差歯車5は、第6歯車44の歯面を第2非円形歯車52の歯面に当接する力を付勢する引張りコイルばね6を備えている。第6歯車44の中心は、第2非円形歯車52の所定の第2ピッチ曲線に倣う公転軌跡を描くことができる。
【0145】
図12において、第2交差歯車4は、第5歯車43の歯面を第1非円形歯車41の歯面41aに円滑に追従させる衝撃吸収部材となるショックアブソーバ7を備えている。ショックアブソーバ7は、引張りコイルばね6の不要なダンピングを防止できる。又、図示されていないが、第2交差歯車4は、第6歯車44の歯面を第2非円形歯車42の歯面42aに円滑に追従させるショックアブソーバ7を備えている。
【0146】
図13において、第2交差歯車5は、第5歯車43の歯面を第1非円形歯車51の歯面に円滑に追従させる衝撃吸収部材となるショックアブソーバ7を備えている。ショックアブソーバ7は、引張りコイルばね6の不要なダンピングを防止できる。又、図示されていないが、第2交差歯車5は、第6歯車44の歯面を第2非円形歯車52の歯面に円滑に追従させるショックアブソーバ7を備えている。
【0147】
図10において、第2交差歯車4は、一対の第3回動軸41s・41sと一対の第4回動軸42s・42sとを有している。一対の第3回動軸41s・41sは、第1非円形歯車41の輪郭中心軸方向に延びて、第2非円形歯車42の両翼に外在している。一対の第4回動軸42s・42sは、第2非円形歯車42の輪郭中心軸方向に延びて、第1非円形歯車41の両翼に外在している。
【0148】
図6を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車4に置き換えて、アーム1には、一対の第3回動軸41s・41sの両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第3支持端末を設けることができる。図7を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車4に置き換えて、アーム2には、一対の第4回動軸42s・42sの両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第4支持端末を設けることができる。
【0149】
図11において、第2交差歯車5は、一対の第3回動軸51s・51sと一対の第4回動軸52s・52sとを有している。一対の第3回動軸51s・51sは、第1非円形歯車51の輪郭中心軸方向に延びて、第2非円形歯車52の両翼に外在している。一対の第4回動軸52s・52sは、第2非円形歯車52の輪郭中心軸方向に延びて、第1非円形歯車51の両翼に外在している。
【0150】
図6を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車5に置き換えて、アーム1には、一対の第3回動軸51s・51sの両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第3支持端末を設けることができる。図7を参照すると、第1交差歯車3を第2交差歯車5に置き換えて、アーム2には、一対の第4回動軸52s・52sの両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第4支持端末を設けることができる。
【0151】
次に、本発明の別の実施形態による関節装置の構成を補足しながら、作用を説明する。別の実施形態では、第1及び第2非円形歯車41・42と第5及び第6歯車43・44は、平歯車を用いることが好ましい(図10参照)。第1及び第2非円形歯車51・52と第5及び第6歯車43・44は、平歯車を用いることが好ましい(図11参照)。
【0152】
図10において、第5及び第6歯車43・44は、第1及び第2非円形歯車41・42より歯数が同じ又は少ない小歯車を用いることが好ましい。図11において、第5及び第6歯車43・44は、第1及び第2非円形歯車51・52より歯数が同じ又は少ない小歯車を用いることが好ましい。
【0153】
図10において、第1及び第2非円形歯車41・42は、楕円の外径をピッチ曲線としている。そして、楕円の短半径と長半径の交点を第1非円形歯車41及び第2非円形歯車42の輪郭中心としている。楕円形状の第1及び第2非円形歯車41・42は、短半径同士が交差しているが、長半径同士が交差してよく、短半径と長半径が交差してもよい。
【0154】
図11において、第1及び第2非円形歯車51・52は、ピッチ円周の特定の劣弧が凹凸状になる板カムの輪郭をピッチ曲線としている。この板カム状の非円形歯車の優弧のピッチ円周の中心を輪郭中心とすることができる。
【0155】
図12において、第1非円形歯車41と第5歯車43は、歯車伝動装置を構成している。第5歯車43を回転させる力が付与されることにより、第1非円形歯車41と第5歯車43が相対移動する。この場合、第1非円形歯車41が固定歯車となり、第5歯車43が可動歯車となり、第5歯車43が第1非円形歯車41に噛み合って自走する。ここで、第5歯車43の中心Q3は、第1非円形歯車41の第1ピッチ曲線に追従する公転軌跡K3を描くことができる。
【0156】
同様に、図10において、第2非円形歯車42と第6歯車44は、歯車伝動装置を構成できる。第6歯車44を回転させる力が付与されることにより、第2非円形歯車42と第6歯車44が相対移動する。この場合、第2非円形歯車42が固定歯車となり、第6歯車44が可動歯車となり、第6歯車44が第2非円形歯車42に噛み合って自走する。ここで、第6歯車44の中心は、第2非円形歯車42の第2ピッチ曲線に追従する公転軌跡を描くことができる。
【0157】
図13において、第1非円形歯車51と第5歯車43は、歯車伝動装置を構成している。第5歯車43を回転させる力が付与されることにより、第1非円形歯車51と第5歯車43が相対移動する。この場合、第1非円形歯車51が固定歯車となり、第5歯車43が可動歯車となり、第5歯車43が第1非円形歯車51に噛み合って自走する。ここで、第5歯車43の中心Q4は、第1非円形歯車51の第1ピッチ曲線に追従する公転軌跡K4を描くことができる。
【0158】
同様に、図11において、第2非円形歯車52と第6歯車44は、歯車伝動装置を構成できる。第6歯車44を回転させる力が付与されることにより、第2非円形歯車52と第6歯車44が相対移動する。この場合、第2非円形歯車52が固定歯車となり、第6歯車44が可動歯車となり、第6歯車44が第2非円形歯車52に噛み合って自走する。ここで、第6歯車44の中心は、第2非円形歯車52の第2ピッチ曲線に追従する公転軌跡を描くことができる。
【0159】
別の実施形態による関節装置は、図1から図3に示された第1交差歯車3の第1歯車31及び第2歯車32を第1非円形歯車41及び第2非円形歯車42に代えている(図10参照)。又、第1交差歯車3の第1歯車31及び第2歯車32を第1非円形歯車51及び第2非円形歯車52に代えることもできる。
【0160】
図5から図9を参照すると、別の実施形態による関節装置は、アーム1の伸長方向とアーム2の伸長方向とが直交配置されてよく、第5歯車43を回転すれば、アーム2に対して、アーム1を可動できる。第6歯車44を回転すれば、アーム1に対して、アーム2を可動できる。第5及び第6歯車43・44に適宜な方向変換機構を連結すれば、アーム1の伸長方向とアーム2の伸長方向とを同軸上に配置することもできる。このように、別の実施形態による関節装置は、1関節に2自由度を有する関節装置を実現できる。
【0161】
図10を参照すると、別の実施形態による関節装置は、第1及び第2非円形歯車41・42と第5及び第6歯車43・44とは、カム装置を構成しているということもできる。ここで、カム曲線を有する第1及び第2非円形歯車41・42が従動節であってよく、カム曲線に接触して転動する第5及び第6歯車43・44が動節であってよく、別の実施形態による関節装置は、動節と従動節の関係が反対になった「反対カム」を構成しているということもできる。
【0162】
図11を参照すると、別の実施形態による関節装置は、第1及び第2非円形歯車51・52と第5及び第6歯車43・44とは、カム装置を構成しているということもできる。ここで、カム曲線を有する第1及び第2非円形歯車51・52が従動節であってよく、カム曲線に接触して転動する第5及び第6歯車43・44が動節であってよく、別の実施形態による関節装置は、動節と従動節の関係が反対になった「反対カム」を構成しているということもできる。
【0163】
周知のとおり、カム装置は、カム曲線に追従する従動節の位置(瞬間中心)を変えること、及び従動節の速度又は加速度を変えることができる。つまり、従動節の位置、速度、又は加速度はカム曲線に依存している。一方で、第2交差歯車4・5は、歯車伝動装置を構成しているので、例えば、別の実施形態による関節装置は、アーム1とアーム2とが鈍角から閉じるときは、駆動車となる第5及び第6歯車43・44が低いトルクで駆動でき、アーム1とアーム2とが鈍角から開くときは、駆動車となる第5及び第6歯車を高いトルクで駆動する関節装置を実現できる(図5から図9参照)。
【0164】
なお、図10に示された第2非円形歯車42を第2歯車32に代えてもよく(図1から図3参照)、図11に示された第2非円形歯車52を第2歯車32に代えてもよく(図1から図3参照)、第1非円形歯車41を第1歯車31に代えてもよく、第1非円形歯車51を第1歯車31に代えてもよい。
【0165】
本発明による関節装置10を連設して多関節装置を構成すれば、全体として自由度が増化し、限られた空間で障害物を迂回するなど、複雑で多様な動作を実現することも容易である。本発明による関節装置10を連設して多関節型の産業用ロボットを実現できる。
【0166】
本発明による関節装置10を連設して、従来には無いモジュール型マニピュレーターを実現できる。このモジュール型マニピュレーターに設けられた複数の関節装置を協調的に動作させ、これらの関節装置を自律分散的に制御すれば、例えば、関節装置10に設けられた制御回路1c・2cを通信で自律分散的に制御すれば、宇宙空間での複雑な変化に柔軟に対応できる。
【0167】
第1交差歯車3又は第2交差歯車4を利用して、上述した関節装置以外の交差歯車装置を考えることができる。この場合、交差歯車装置は、交差固定歯車と第1自走歯車及び第2自走歯車を備えてよく、交差固定歯車は、第1固定歯車と第2固定歯車を有している。
【0168】
第1固定歯車は、第3ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。第2固定歯車は、第4ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設けている。そして、第3ピッチ曲線を含むX平面と第4ピッチ曲線を含むY平面とが直交するように交差している。
【0169】
第1自走歯車は、第1固定歯車と噛み合って、X平面に第1自走歯車の第1回転中心が所定の軌跡を描くことができる。第2自走歯車は、第2固定歯車と噛み合って、Y平面に第2自走歯車の第2回転中心が所定の軌跡を描くことができる。
【0170】
ここで、第1固定歯車の第3ピッチ曲線は、第1歯車31のピッチ円周、又は第1非円形歯車41の第1ピッチ曲線のいずれか一方を含むことができる。又、第2固定歯車の第4ピッチ曲線は、第2歯車32のピッチ円周、又は第2非円形歯車42の第2ピッチ曲線のいずれか一方を含むことができる。X平面は、第1平面A1又は第3平面A3のいずれか一方を含むことができる。Y平面は、第2平面A2又は第4平面A4のいずれか一方を含むことができる。
【0171】
第1固定歯車が第1歯車31であって、第2固定歯車が第2歯車32であって、第1歯車31と第2歯車32が中心を共有してよく、更に、第1自走歯車及び第2自走歯車が第3歯車13及び第4歯車14であってよく、実施の形態による関節装置10を実現できる。
【0172】
又、第1固定歯車が第1非円形歯車41であって、第2固定歯車が第2非円形歯車42であって、第1非円形歯車41と第2非円形歯車42が輪郭中心を共有してよく、更に、第1自走歯車及び第2自走歯車が第5歯車43及び第6歯車44であってよく、別の実施の形態による関節装置を実現できる。
【0173】
交差歯車装置は、第1固定歯車と第2固定歯車が中心又は輪郭中心を共有することに限定されない。第1固定歯車の輪郭中心に対して第2固定歯車の輪郭中心が偏心してよく、第2固定歯車の輪郭中心に対して第1固定歯車の輪郭中心が偏心してよく、交差歯車装置を利用して、関節装置以外にも様々な応用が展開されると考えられる。
【符号の説明】
【0174】
1 アーム(一方のアーム)
1j 関節部
2 アーム(他方のアーム)
4 第2交差歯車
10 関節装置
41 第1非円形歯車
42 第2非円形歯車
43 第5歯車
44 第6歯車
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のアームの端部と他方のアームの端部とが互いに可動自在に連結する関節装置であって、
関節部に配置する第2交差歯車であって、所定の閉曲線からなる第1ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第1非円形歯車と所定の閉曲線からなる第2ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第2非円形歯車とが輪郭中心を共有し、かつ第1ピッチ曲線を含む第3平面と前記第2ピッチ曲線を含む第4平面とが直交する第2交差歯車と、
一方の前記アームに設けられて前記第1非円形歯車と噛み合う第5歯車と、
他方の前記アームに設けられて前記第2非円形歯車と噛み合う第6歯車と、を備える関節装置。
【請求項2】
一方の前記アームは、前記第5歯車と同軸上に配列する第1ウォーム歯車と、この第1ウォーム歯車と噛み合う第1ウォームと、を有し、
他方の前記アームは、前記第6歯車と同軸上に配列する第2ウォーム歯車と、この第2ウォーム歯車と噛み合う第2ウォームと、を有する請求項1記載の関節装置。
【請求項3】
一方の前記アームは、前記第1ウォームを回転する第1モータを有し、
他方の前記アームは、前記第2ウォームを回転する第2モータを有する請求項2記載の関節装置。
【請求項4】
前記第2交差歯車は、前記第1非円形歯車の輪郭中心軸方向に延びて前記第2非円形歯車の両翼に外在する第3回動軸と、前記第2非円形歯車の輪郭中心軸方向に延びて前記第1非円形歯車の両翼に外在する第4回動軸と、を有し、
一方の前記アームは、前記第3回動軸の両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第3支持端末を有し、
他方の前記アームは、前記第4回動軸の両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第4支持端末を有する請求項1から3のいずれかに記載の関節装置。
【請求項5】
前記第2交差歯車は、前記第5歯車及び前記第6歯車の歯面を前記第1非円形歯車及び前記第2非円形歯車の歯面に当接する力を付勢する付勢部材を備える請求項1から4のいずれかに記載の関節装置。
【請求項6】
前記付勢部材は、引張りコイルばねからなり、
前記第2交差歯車は、前記第5歯車及び前記第6歯車の歯面を前記第1非円形歯車及び前記第2非円形歯車の歯面に円滑に追従させる衝撃吸収部材を備える請求項5記載の関節装置。
【請求項7】
前記第2交差歯車は、前記第1非円形歯車又は前記第2非円形歯車のいずれか一方が第3円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第7歯車からなる請求項1から6のいずれかに記載の関節装置。
【請求項1】
一方のアームの端部と他方のアームの端部とが互いに可動自在に連結する関節装置であって、
関節部に配置する第2交差歯車であって、所定の閉曲線からなる第1ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第1非円形歯車と所定の閉曲線からなる第2ピッチ曲線に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第2非円形歯車とが輪郭中心を共有し、かつ第1ピッチ曲線を含む第3平面と前記第2ピッチ曲線を含む第4平面とが直交する第2交差歯車と、
一方の前記アームに設けられて前記第1非円形歯車と噛み合う第5歯車と、
他方の前記アームに設けられて前記第2非円形歯車と噛み合う第6歯車と、を備える関節装置。
【請求項2】
一方の前記アームは、前記第5歯車と同軸上に配列する第1ウォーム歯車と、この第1ウォーム歯車と噛み合う第1ウォームと、を有し、
他方の前記アームは、前記第6歯車と同軸上に配列する第2ウォーム歯車と、この第2ウォーム歯車と噛み合う第2ウォームと、を有する請求項1記載の関節装置。
【請求項3】
一方の前記アームは、前記第1ウォームを回転する第1モータを有し、
他方の前記アームは、前記第2ウォームを回転する第2モータを有する請求項2記載の関節装置。
【請求項4】
前記第2交差歯車は、前記第1非円形歯車の輪郭中心軸方向に延びて前記第2非円形歯車の両翼に外在する第3回動軸と、前記第2非円形歯車の輪郭中心軸方向に延びて前記第1非円形歯車の両翼に外在する第4回動軸と、を有し、
一方の前記アームは、前記第3回動軸の両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第3支持端末を有し、
他方の前記アームは、前記第4回動軸の両端部を回動が可能に、かつ離間が困難に支持する第4支持端末を有する請求項1から3のいずれかに記載の関節装置。
【請求項5】
前記第2交差歯車は、前記第5歯車及び前記第6歯車の歯面を前記第1非円形歯車及び前記第2非円形歯車の歯面に当接する力を付勢する付勢部材を備える請求項1から4のいずれかに記載の関節装置。
【請求項6】
前記付勢部材は、引張りコイルばねからなり、
前記第2交差歯車は、前記第5歯車及び前記第6歯車の歯面を前記第1非円形歯車及び前記第2非円形歯車の歯面に円滑に追従させる衝撃吸収部材を備える請求項5記載の関節装置。
【請求項7】
前記第2交差歯車は、前記第1非円形歯車又は前記第2非円形歯車のいずれか一方が第3円周に等間隔に少なくとも複数の歯を設ける第7歯車からなる請求項1から6のいずれかに記載の関節装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−14004(P2013−14004A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−232950(P2012−232950)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2008−150167(P2008−150167)の分割
【原出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2008−150167(P2008−150167)の分割
【原出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]