説明

閾値下の心房ペーシングを識別するための逆行性心房感知

心臓サイクルの間に心房にペーシングパルスを供給するためのシステム。逆行性P波は閾値下の心房ペーシングを示す心臓サイクルの間に識別可能である。心房へのペーシングパルスの供給は、逆行性P波の識別に応答して後続の心臓サイクルにおいて調節可能である。ペーシングパルスの供給を調節することは、心房捕捉閾値試験を開始し、ペーシングパルス振幅とパルス幅の一方もしくは両方を一時的に増大させ、および/またはペーシングパルス振幅とパルス幅の一方もしくは両方を再評価することを含みうる。さらに、ペーシングパルスの供給を調節することは、スケジューリングされた心房捕捉閾値試験のタイミングを変更することを含みうる。心房捕捉閾値試験の間、心房捕捉閾値試験の間に感知された心房非捕捉に応答して逆行性P波テンプレートが生成され、後続の逆行性P波を識別するために利用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植込み型医療器具に関し、より詳しくは、心房の非捕捉を識別するために逆行性心房感知を利用する心臓用システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓は、正常に機能している状態において律動収縮を生じ、身体全体を通じて効率的に血液をポンピング(送出)することができる。しかし、疾患や損傷のため、心臓の律動が不規則となり、ポンピング効率が低下することがある。
【0003】
不整脈とは、各種の身体的状態および疾患過程から生ずる心臓律動の不規則性を表す一般的な用語である。重篤な不整脈を患う患者を効果的に治療するため、植込み型ペースメーカーや心臓除細動器などの心調律管理システムが利用されている。これらのシステムは一般的に心臓からの電気信号を感知する回路と、電気刺激パルスを心臓に供給するパルス発生器とを含む。患者の心臓内に延出するリードは、心臓の電気信号を感知し、各種治療に応じて刺激パルスを心臓に供給するための、心筋に接触する電極に接続されている。
【0004】
心調律管理システムは、組織の収縮を発生するため、電極に隣接する心臓組織を刺激すべく動作する。ペースメーカーは、心臓ポンプ効率を維持する収縮律動を発生する際に心臓を補助すべくタイミング調節される、一連の低エネルギーペーシングパルスを供給する心調律管理システムである。ペーシングパルスは患者の要求に応じて間欠的パルスもしくは連続的パルスとすることができる。1つ以上の心腔を感知・ペーシングするための各種モードを備えた多くの種類のペースメーカー装置が存在する。
【0005】
ペーシングパルスにより心臓組織の収縮が生ずると、収縮に伴う電気的心臓信号は捕捉された反応(CR)として示される。捕捉された反応は、電極と組織のインタフェースにおける残留ポストペーシング分極に関連する重畳信号と共に、心臓収縮に関連する、誘発された反応信号を示す電気信号を含むことが可能である。
【0006】
収縮を発生するためには、ペーシングパルスは、最小エネルギー値すなわち捕捉閾値を上回る必要がある。ペーシングパルスは、捕捉閾値を相当上回るエネルギーを消費することなく心臓捕捉を刺激するために十分なエネルギーを有することが望ましい。従って、捕捉閾値の正確な決定が、効果的なペーシングエネルギー管理のために必要となることがある。ペーシングパルスエネルギーが低すぎると、ペーシングパルスは心臓の収縮反応を確実に発生させることができず、非効果的なペーシングにつながる。ペーシングパルスエネルギーが高すぎると、患者は不快感を覚え、装置の電池寿命が短くなることがある。
【0007】
逆行伝導は、例えばペーシングパルスもしくは内因性活性化により心室内で開始された脱分極波が心房に戻り、逆行性P波を生ずることで発生することがある。逆行性P波は効果的な心房ペーシングを阻止することがある。心房に供給されるペーシングパルスは、逆行性P波により心房組織が不応性である場合、捕捉を生じない。さらに、心房への逆行伝導によりペースメーカーを介した頻脈が発生することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ペーシングパルスによる心房捕捉の有無を確実に決定する方法およびシステムのための技術が求められている。さらに、心房の逆行性管理を提供する方法およびシステムが求められている。本発明は、上記およびその他の要求を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、閾値下の心房ペーシングを検出する心臓用システムに関する。本願明細書に記載される1つ以上の特徴は、前述のごとき心臓用システムに含めることができるが、各種特徴は排除されてもよく、またはオプションとみなしてもよい。本発明の心臓用システムでは、本願明細書に記載される特徴の各種組み合わせを含んでもよく、排除してもよく、あるいはオプションとしてもよい。
【0010】
本発明の実施形態は、心臓信号の感知および患者への心臓ペーシングパルスの供給のうち1つ以上のために構成された植込み型電極を有する心臓用システムに関する。ハウジングは患者への植込み用に構成可能であり、コントローラを収容可能である。コントローラは植込み型電極と結合可能であり、心臓サイクルの間ペーシングパルスを患者の心臓の心房に供給し、心臓サイクルの間の閾値下の心房ペーシングを示す逆行性P波を特定し、逆行性P波の特定に応答して後続の心臓サイクルにおける心房へのペーシングパルスの供給を調節すべく構成可能である。
【0011】
各種実施形態に従って、コントローラは逆行性P波の特定に応答して心房捕捉閾値試験を開始すべく構成可能である。コントローラは、逆行性P波の識別のみに基づいて、捕捉閾値試験スケジュールと無関係に心房捕捉閾値試験を開始すべく構成可能である。
【0012】
各種実施形態において、コントローラは、逆行性P波の特定に応答してペーシングパルス振幅およびペーシングパルス幅の一方もしくは両方を再評価すべく構成可能である。コントローラは、ペーシングパルスの供給の調節に先立って逆行性P波の存在を確認すべく構成可能である。
【0013】
各種実施形態において、コントローラは、逆行性P波の特定に応答してペーシングパルス振幅およびペーシングパルス幅の一方もしくは両方を一時的に増大させるべく構成可能である。
【0014】
各種実施形態において、コントローラは、逆行性P波テンプレートを利用して逆行性P波を識別すべく構成可能である。例えば、コントローラは、心房捕捉閾値試験を実施し、心房捕捉閾値試験の際に識別される心房非捕捉に応答して逆行性P波テンプレートを生成し、生成された逆行性P波テンプレートを、逆行性P波を識別するために使用すべく構成可能である。
【0015】
各種実施形態によれば、コントローラは、周波数成分(frequency content)、振幅、立ち上がり速度(slew rate)、心房反応のタイミングのうち1つ以上に基づいて逆行性P波を識別すべく構成可能である。
【0016】
各種実施形態において、コントローラは、ポスト心室心房不応期間に逆行性P波を感知すべく構成可能である。コントローラは、心室ペーシング後約50ミリ秒〜約300ミリ秒以内に心房反応を感知することにより逆行性P波を識別すべく構成可能である。
【0017】
各種実施形態において、コントローラは、スケジューリングされた心房捕捉閾値試験のタイミングを変更することでペーシングパルスの供給を調節すべく構成可能である。
【0018】
各種実施形態によれば、コントローラは、患者の逆行性P波伝導を認識するよう訓練される(trained)べく構成されたデジタル信号プロセッサ(DSP)を含むことが可能である。例えば、DSPは、患者のペーシング閾値より下で行われる捕捉閾値試験の間、患者の逆行性P波伝導を認識すべく訓練可能である。DSPは、捕捉閾値試験の間に決定される情報に基づいて逆行性P波伝導の1つ以上のテンプレートを生成すべく構成可能である。
【0019】
各種実施形態において、コントローラは、検出されたP波のピークのタイミングに基づいて逆行伝導を感知すべく構成されるピーク検出回路を含むことが可能である。コントローラは、P波のピークの検出に応答して捕捉閾値試験を開始することが可能である。
【0020】
各種実施形態において、コントローラは、後続の捕捉閾値試験が発生するまで、逆行性P波伝導の検出に応答してペーシングパルス振幅の一時的な増大を開始することが可能である。コントローラは、後続の捕捉閾値試験が発生するまで、逆行性P波伝導の検出に応答してペーシングパルス幅に対する一時的変更を開始することが可能である。捕捉閾値試験は、例えばスケジューリングされた捕捉閾値試験とすることができる。
【0021】
さらに、本発明の実施形態は、心臓サイクルの間、心房へペーシングパルスを供給することに関連する。逆行性P波は心臓サイクルの間に特定可能であり、逆行性P波は閾値下の心房ペーシングを示す。ペーシングパルスの心房への供給は、逆行性P波の特定に応答して後続の心臓サイクルにおいて調節可能である。
【0022】
例えば、ペーシングパルスの供給を調節することは、心房捕捉閾値試験を開始すること、ペーシングパルス振幅とパルス幅の一方もしくは両方を一時的に増大させること、および/またはペーシングパルス振幅とパルス幅の一方もしくは両方を再評価することを伴うことが可能である。ペーシングパルスの供給を調節することは、スケジューリングされた心房捕捉閾値試験のタイミングを変更することを伴うことが可能である。心房捕捉閾値試験の際、心房捕捉閾値試験の際に感知される心房非捕捉に応答して逆行性P波テンプレートが生成され、後続の逆行性P波を識別するために使用されることができる。
【0023】
逆行性P波を識別することは、周波数成分、振幅、立ち上がり速度、ペーシングパルスに対する心臓反応のタイミングのうち1つ以上を決定することを伴うことが可能である。逆行性P波の存在は、ペーシングパルスの供給の調節に先立って確認可能である。逆行性P波は、心室ペーシング後約200ミリ秒〜約300ミリ秒などのポスト心房不応期間とすることができる。
【0024】
本発明の前述の概要は、本発明の各実施の形態または各実施態様の説明を意図するものではない。添付の図面に関連する以下の詳細な説明および請求の範囲を参照することにより、本発明の利点および達成点が明らかになって理解され、本発明がより完全に理解されるであろう。
【0025】
本発明は種々の変更物や代わりの形態を生じうるが、本発明の詳細を図面に例として示し、以下に詳細に説明する。しかし、本発明を、記載する特定の実施の形態に限定する意図はないことが理解されよう。反対に、本発明は、添付の請求の範囲によって定義された本発明の範囲内に入る変更物、同等物および代替物を全て含むように意図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
例示する実施の形態の下記の説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照する。これらの図面には、本発明を実施することのできる種々の実施の形態が例として示されている。他の実施の形態を用いてもよく、構造上および機能上の変更が本発明の趣旨を逸脱しない範囲で可能であることが理解されよう。
【0027】
心腔へのペーシングパルスの供給後、ペーシングパルスに対する各種心臓の反応が可能となる。1つのシナリオ(想定)では、ペーシングパルスは心腔収縮を生ずる脱分極の伝搬波面を発生することが可能である。このシナリオでは、ペーシングパルスは心腔を捕捉したとみなされる。心腔の捕捉は、ペーシングパルスが十分なエネルギーを有し、非不応期間に供給される場合に発生する。ペーシングパルスが心腔の収縮を発生しない場合、心臓反応は非捕捉(non-captureもしくはloss of capture)と称される。非捕捉は、例えば、ペーシングパルスエネルギーが低すぎ、および/またはペーシングパルスが心臓組織の不応期に供給される場合に発生しうる。
【0028】
本発明に従った方法は、逆行性心房伝導の感知、および閾値下の心房ペーシングの識別に利用可能である。捕捉を発生させる最小ペーシングエネルギーを捕捉閾値と称する。ペーシングパルスが、捕捉閾値を上回る過度のエネルギー消費を行うことなく心臓を捕捉する十分なエネルギーを有することが望ましい。
【0029】
当業者は、捕捉閾値試験手順を参照することは左心房、右心房、左心室、および右心室のうち1つ以上における捕捉閾値の決定方法を示すことを理解するであろう。こうした手順において、ペースメーカーは、自動的にもしくは指令に応じて、選択された心腔の捕捉閾値の検索を開始する。捕捉閾値は常に心臓を捕捉する最も低いペーシングエネルギーとして定義される。
【0030】
捕捉閾値試験の一例において、ペースメーカーは一連のペーシングパルスを心臓に供給し、ペーシングパルスに対する心臓の反応を検出する。ペーシングパルスのエネルギーは所定数の非捕捉反応が発生するまで離散的な段階で減少しうる。ペースメーカーは、捕捉閾値を確認するために所定数の捕捉反応が発生するまで離散的な段階で刺激エネルギーを増大しうる。捕捉閾値試験は、本発明に従った心臓反応分類方法を利用して実施可能である。
【0031】
捕捉閾値試験を実施するためにその他の手順を用いることもできる。1つの例において、ペーシングエネルギーは、捕捉が検出されるまで離散的な段階で増大しうる。別の例において、ペーシングエネルギーは2項検索パターンに従って調節可能である。
【0032】
本発明の実施形態は心房ペーシングパルスによる心房捕捉の成否を決定する方法およびシステムに関する。非捕捉の決定は、心房へ戻る心室脱分極波すなわち逆行伝導の検出に基づいて行うことができる。この逆行性脱分極波は感知され、本発明に従って閾値下の心房ペーシングを検出するために使用可能である。
【0033】
内因的に、あるいは心室ペーシングの結果として心室脱分極が発生すると、心房組織が不応期にない場合は脱分極波面は心房に向けて移動可能である。心房の心筋組織が不応性でない場合、すなわち内因性P波が存在しない場合、あるいは心房が心室脱分極に先だって心房ペーシングパルスにより捕捉されない場合、心室脱分極により開始される波面が逆行伝導され、逆行性P波として心房内で感知される傾向が高まる。従って、逆行性P波を感知することは、心房ペーシングパルスが心房を捕捉しないことを示す。
【0034】
自動閾値アルゴリズムはペーシング閾値を決定するために周期的に試験を実施するが、拍動毎の捕捉を検証しない場合もある。ペーシングパルスが試験と試験の間に心臓を確実に捕捉するため、大きなペーシングマージンが使用される。これらのアルゴリズムの1つの弱点は、ペーシング刺激により心腔が捕捉されない後続の試験の間に閾値が上昇した場合に明らかとなる。この点を考慮しなければ、閾値下のペーシング期間を延長することが可能である。
【0035】
心房閾値がペーシング電圧よりも高くなり、心房ペーシングによって心房が捕捉されない場合、後続の心室ペーシング(もしくは感知)は心房に逆行し、心房感知として現出することがある。これらの逆行性感知はペースメーカー起因の頻拍事象を生ずることがある。
【0036】
正常な房室伝導を行っている患者では、装置が心房ペーシング閾値下であることを示すものとして本発明による逆行性信号を利用可能である。これらの逆行事象の検出は、例えば新たな心房閾値試験を実行し、心房ペーシング振幅を増大させるための信号として利用可能である。逆行伝導の検出は、システム堅牢性を高めるため、閾値下のペーシングが軽減前に発生していることを検証する検証アルゴリズムを開始するために利用可能である。
【0037】
本発明の実施形態による植込み型心臓装置はいくつかの方法で閾値下のペーシングの検出に応答する。既存のハードウェアは、検出されたP波のピークのタイミングに基づいて逆行伝導を感知するために使用できるピーク検出回路を含むことが可能である。これにより、試験が規則的に行われるようスケジューリングされている場合に、通常の順序に従わずに試験が開始されることがある。逆行伝導を検出することで、検出する度に閾値試験を開始することができ、あるいは次のスケジューリングされた閾値試験が行われるまで、逆行伝導の検出によりペーシング振幅、パルス幅、もしくは振幅とパルス幅の両方の一時的な増大を開始することが可能である。
【0038】
心室不応期の外側の逆行性心房感知により、軽減しない場合にペースメーカー起因頻拍が発生することがある。閾値試験および/またはペーシング振幅および/またはパルス幅の一時的な上昇は、例えばペースメーカー起因頻脈を軽減する。
【0039】
植込み型心臓装置がデジタル信号プロセッサ(DSP)などのパルス発生器内における信号処理能力を含む場合、DSPは逆行伝導を検出すべく利用可能である。DSPは、ペーシングに対する心臓反応を分析する際に、周波数成分、振幅、立ち上がり速度、タイミング、もしくはこれらのパラメータの組み合わせのうち1つ以上を利用して逆行伝導を識別可能である。さらに、DSPは逆行伝導を認識すべく訓練可能である。例えば、標準的な閾値試験の間、ペーシングは意図的に閾値より上あるいは閾値より下で行われる。閾値より下のペーシングに対する反応は、個々の患者における逆行伝導を認識するようDSPを訓練すべく利用可能である。DSPは閾値試験の間に決定される情報を利用して逆行伝導の1つ以上のテンプレートを作成可能である。
【0040】
逆行伝導の検出を組み込んだ植込み型心臓装置は、エネルギー節約のため減少されたペーシングマージンを利用可能である。逆行伝導の検出は、閾値試験間において閾値を変更することの影響を軽減するために利用でき、閾値より上のより小さいマージンを利用可能とする。さらに、植込み型心臓装置は閾値試験の規則的なスケジューリングを不要とすることができ、逆行伝導の検出を利用して、必要なときのみ閾値試験を開始することができる。
【0041】
図1Aは本発明の実施形態に従って閾値下のペーシングを識別するために逆行伝導を利用する方法を示すグラフである。この方法は、例えばデュアル心腔装置において利用可能である。心房の非捕捉が発生するとAV同期性の混乱が発生し、房室遅延が終了し心房パルスが低下した後、心室パルスが発生しうる。心室は心房よりも前に活性化されるため、励起は逆行伝導として心房を活性化させるべく移動可能である。
【0042】
図1Aのグラフでは、心房を捕捉する心房ペーシングパルス110の後にP波114と、QRS群である内因性心室反応112が続く。ポスト心房不応期(PVARP)140は内因性心室反応112の後に示されている。これは、内因性心室反応を伴う心房ペーシングされた心拍である。
【0043】
次の心拍は心房を捕捉する心房ペーシングパルス120と共に開始される。心房ペーシングパルス120の後にP波124が続く。心室を捕捉する心室ペーシングパルス125が供給され、ペーシングされたQRS群122を生成する。ペーシングされたQRS群122は内因性心室反応112よりも広いQRS群を示す。PVARP140は心室ペーシングパルス125に続いて示されている。
【0044】
図1Aの最終心拍は心房逆行伝導を示す。心房ペーシングパルス130は心房を捕捉せず、従って心房誘発反応は感知されない。心房ペーシングパルス130の後には、房室遅延後、心室ペーシングパルス135、およびペーシングされたQRS群132が続き、内因性心室反応112よりも広いQRS群を示す。PVARP140は心室パルス135に続いて示される。心房P波134は心室パルス135に続いてPVARP140内で示されている。逆行性P波は心室パルス135により開始され、心房に伝導される脱分極波面により生成される。逆行伝導がスケジューリングされた心房ペーシングパルスの近傍で発生する場合、心房の捕捉は、パルスが捕捉閾値よりも高いか否かと関わりなく、発生しない。
【0045】
図1Bおよび図1Cは、本発明の実施形態に従った閾値下の心房ペーシングの検出を示すフローチャートである。図1Bのフローチャートは、感知された逆行性P波に基づいた心房非捕捉検出方法101を示す。ペーシングパルスは心臓サイクルの間に心房に供給される(102)。システムは逆行性P波が内因性心室励起もしくは心室ペーシングによるものであるか否かを識別する(103)。
【0046】
(103)で逆行性P波が識別されると、心房非捕捉が決定され、一時的に振幅および/またはパルス幅を増大させ、閾値試験を開始し、あるいは前述したその他の動作により、軽減が実施される(107)。(103)で逆行性P波が識別されない場合、システムは心臓ペーシングに対する心臓反応を捕捉された反応として分類する(109)。
【0047】
図1Cのフローチャートは本発明の実施形態に従った閾値下のペーシングを検出する方法150を示す。心房ペーシングは閾値検出試験(153)の一部として患者の心臓に供給される(151)。心臓信号はペーシング(151)に応答して感知される(152)。捕捉閾値試験153は捕捉閾値より上もしくは下のペーシングレベルに関して実行され、テンプレートが作成される(154)。テンプレート(154)は逆行伝導に対応する。
【0048】
後続のペーシング(155)が供給され、システムはテンプレート(154)を利用して逆行性P波が発生したか否かを識別する(156)。逆行性P波が識別されると(156)、心房非捕捉が決定され、一時的に振幅および/またはパルス幅を増大させ、別の閾値試験(153)を開始し、もしくは前述したその他の動作により軽減(158)を実行する。逆行性P波が識別されない場合(156)、軽減(157)は不要であり、システムは現行の設定でペーシング(155)を継続する。
【0049】
本願明細書に記載される本システムの実施形態は、当該技術で知られている数多くのペーシングモードで動作可能な植込み型心臓ペースメーカー/除細動器(PD)において実施されるものとして一般的に記載されている。各種タイプの単一および多数の心腔植込み型心臓除細動器は当該技術で知られており、本発明に従った心房非捕捉の検出と関連して利用可能である。本発明の方法は、デュアル心腔ペースメーカー、除細動器、心臓除細動器、両心室ペースメーカー、心臓再同期装置などを含む各種植込み型もしくは患者外部の心調律管理装置において実施されることができる。
【0050】
本システムは、マイクロプロセッサベースの構造を有する植込み型心臓除細動器に関連して記載されているが、植込み型除細動器(または他のデバイス)を必要に応じていずれの論理ベースの集積回路構造にも実施できることが理解されるであろう。
【0051】
図2を参照すると、本発明による心房非捕捉検出の実施に用いることのできる心調律管理システムが示されている。図2の心調律管理(CRM)システムはPD200を含み、このPD200はリードシステム202に電気的および物理的に結合されている。PD200のハウジングおよび/またはヘッダは、電気刺激エネルギーを心臓に提供し心臓の電気活動を感知するために使用される1つ以上の電極208、209を組み込むことができる。PD200の全てまたは一部を缶型電極209として用いることができる。PD200は、例えばPD200のヘッダもしくはハウジング上に配置された中立電極208を含むことが可能である。PD200が缶型電極209および中立電極208の両方を含む場合、一般に電極208および209は互いに絶縁されている。
【0052】
リードシステム202は、心臓201によって生じた電気心臓信号を検出し、ある所定の状態の心臓201に電気エネルギーを提供して心不整脈を治療するように使用される。リードシステム202は、ペーシング、感知および/または除細動に使用される1つ以上の電極を含むことが可能である。図2に示す実施の形態では、リードシステム202は、心腔内右心室(RV)リードシステム204、心腔内右心房(RA)リードシステム205、心腔内左心室(LV)リードシステム206および心外左心房(LA)リードシステム210を含む。図2のリードシステム202は、本明細書に述べた多心腔捕捉検出方法に関連して用いることのできる1つの実施の形態を示している。これらに加え、またはこれらの代わりに、他のリードおよび/または電極を用いてもよい。
【0053】
リードシステム202は、人体に植え込む心腔内リード204、205および206を含むことができ、心腔内リード204、205および206の一部は心臓290に挿入されている。心腔内リード204、205および206は、心臓の電気活動を感知し、例えばペーシングパルスや除細動ショックなどの電気刺激エネルギーを心臓に送って心臓の種々の不整脈を治療する、心臓内に配置可能な種々の電極を含む。
【0054】
図2に示すように、リードシステム202は、心臓の外側の位置に配置されて1つ以上の心腔の感知およびペーシングを行う心外膜電極などの電極を有する1つ以上の心外リード210を含むことが可能である。
【0055】
図2に示す右心室リードシステム204は、SVCコイル216、RVコイル214、RVリング電極211およびRV先端電極212を含む。右心室リードシステム204は、右心房220を通って右心室219内に延びる。特に、RV先端電極212、RVリング電極211およびRVコイル電極214は、感知を行って電気刺激パルスを心臓に送るように右心室内の適切な位置に配置されている。SVCコイル216は、心臓290の右心房室内、または心臓290の右心房室に通じる主葉脈内の適切な位置に配置される。
【0056】
1つの構成では、缶形電極(can electrode)209と関連するRV先端電極212を用いて右心室内の単極ペーシングおよび/または感知を実施することができる。RV先端電極212およびRVリング電極211を用いて右心室内の双極ペーシングおよび/または感知を実施してもよい。更に別の構成では、RVリング電極211を必要に応じて省略し、例えばRV先端電極212およびRVコイル214を用いて双極ペーシングおよび/または感知を行ってもよい。RVコイル214およびSVCコイル216は除細動電極である。
【0057】
左心室リード206は、左心室のペーシングおよび/または感知を行うように左心室の中または周りの適切な位置に配置されたLV遠位電極213およびLV近位電極217を含む。左心室リード206を、上大静脈経由で心臓の右心房に導くことができる。右心房から、冠静脈洞入口部、即ち冠静脈洞の開口内に左心室リード206を配置することができる。リード206を、冠静脈洞を通って左心室の冠静脈に導くことができる。この静脈は、心臓の右側から直接アクセスすることができない左心室の表面にリードが達するためのアクセス経路として用いられる。左心室リード206のリード配置は、鎖骨下静脈にアクセスし、LV電極213および217を左心室に隣接して挿入するように予め形成されたガイディングカテーテルによって可能になる。
【0058】
例えば、缶形電極209に関連するLV遠位電極213を用いて左心室内の単極ペーシングおよび/または感知を実施することができる。LV遠位電極213およびLV近位電極217を左心室用の双極感知電極および/またはペーシング電極として併用することができる。心室をほぼ同時に、または段階的に連続してペーシングし、慢性心不全を患う患者の心臓ポンプ効率を高めるように、左心室リード206および右心室リード204をPD200と併用して心臓再同期療法を提供することができる。
【0059】
右心房リード205は、右心房の感知およびペーシングを行うように右心房内の適切な位置に配置されたRA先端電極(RA−tip electrode)256およびRAリング電極254を含む。1つの構成では、例えば、缶形電極209に関連するRA先端256を用いて右心房220内の単極ペーシングおよび/または感知を提供することができる。他の構成では、RA先端電極256およびRAリング電極254を用いて双極ペーシングおよび/または感知を提供することができる。
【0060】
心房に伝導される右心室信号の検出は、RA先端電極256および/またはRAリング電極254などの電極、あるいはLV遠位電極213および/またはLV近位電極217などの他のリードにより検出可能である。同様に、心房への左心室逆行性信号の検出は、右心室リードシステム204もしくは他のリードにより検出可能である。
【0061】
図2は、左心房リードシステム210の1つの実施の形態を示している。この例では、左心房リード210は、左心房の感知およびペーシングを行うように心臓201の外側の適切な位置に配置されたLA遠位電極218およびLA近位電極215を有する心外リードとして実施される。例えば、LA遠位電極218−缶形電極209のペーシングベクトルを用いて左心房の単極ペーシングおよび/または感知を行うことができる。LA遠位電極218およびLA近位電極215を併用して左心房の双極ペーシングおよび/または感知を実施することができる。
【0062】
ここで図3を参照すると、本発明の心房非捕捉の検出の実施に好適な心臓ペースメーカー/除細動器300のブロック図が示されている。図3は、機能ブロックに分けられた心臓ペースメーカー/除細動器を示している。これらの機能ブロックを配置することのできる構成が多くあることが当業者によって理解される。図3に示す例は、実施可能な1つの機能構成である。他の構成も可能である。例えば、更に多い数の機能ブロック、更に少ない数の機能ブロックまたは異なる機能ブロックを用いて、本発明による方法の実施に好適な心臓ペースメーカー/除細動器を記述することができる。また、図3に示す心臓ペースメーカー/除細動器300はプログラム可能なマイクロプロセッサベースの論理回路の使用を考慮しているが、他の回路の実施態様を用いてもよい。
【0063】
図3に示す心臓ペースメーカー/除細動器300は、心臓から心臓信号を受け取り、ペーシングパルスまたは除細動ショックの形で電気刺激エネルギーを心臓に送る回路を含む。1つの実施の形態では、心臓ペースメーカー/除細動器300の回路は人体への植込みに好適なハウジング301に入っており、これに密閉されている。心臓ペースメーカー/除細動器300への電力は、電気化学電池380によって供給される。リードシステムの導線を心臓ペースメーカー/除細動器300の回路に物理的および電気的に取り付けることができるように、コネクタブロック(図示せず)が心臓ペースメーカー/除細動器300のハウジング301に取り付けられている。
【0064】
心臓ペースメーカー/除細動器300は、制御システム320およびメモリ370を含むプログラム可能なマイクロプロセッサベースのシステムとして構成することができる。メモリ370は、他のパラメータと共に種々のペーシングモード、除細動モードおよび感知モードのパラメータを記憶することができる。また、メモリ370は、心臓ペースメーカー/除細動器300の他の構成要素によって受け取られた心臓信号を示すデータを記憶することができる。メモリ370は、例えば、それまでのEGMおよび治療データを記憶するために使用可能である。履歴データの記憶としては、例えば、トレンドの目的および/または他の診断目的で用いられる、患者の長期モニタから得られたデータを含むことが可能である。他の情報と同様に、履歴データを、必要に応じてまたは要望どおりに外部プログラマユニット390に送信することができる。
【0065】
制御システム320は、心臓ペースメーカー/除細動器300の他の構成要素と協働して心臓ペースメーカー/除細動器300の動作を制御することができる。1つの例において、心臓ペースメーカー/除細動器300は患者の血行力学的要求を決定するためのセンサを組み込むことができる。センサからの出力は患者の活動レベルに適した速度でペーシングを供給すべく制御システム320によって利用可能である。実施態様によっては、心臓ペースメーカー/除細動器300は、患者の活動レベルおよび/または呼吸速度を決定するための加速度計および/または経胸腔的インピーダンスセンサの構成要素を含むことが可能である。
【0066】
図3に示す制御システム320は、本発明の各種実施形態に従ったペーシング刺激に対する心臓の反応を決定するための心臓反応分類プロセッサ325を組み込んでいる。制御システム320は、ペースメーカー制御回路322、不整脈検出器321、テンプレートプロセッサ324、ならびに心臓ペースメーカー/除細動器300の動作を制御するためのその他の構成要素を含む追加の機能的構成要素を含むことが可能である。
【0067】
遠隔測定回路360を備えて、心臓ペースメーカー/除細動器300と外部プログラマユニット390との間の通信を提供することができる。1つの実施の形態では、遠隔測定回路360およびプログラマユニット330は、当該技術分野で公知のようにワイヤループアンテナおよび無線周波遠隔測定リンクを用いて通信し、プログラマユニット390と遠隔測定回路360との間で信号およびデータの送受信を行う。このようにして、プログラム指令および他の情報を、植込み時と植込み後にプログラマユニット390から心臓ペースメーカー/除細動器300の制御システム320に転送することができる。また、例えば捕捉閾値、捕捉検出および/または心臓反応分類に関する記憶された心臓データを、他のデータと共に心臓ペースメーカー/除細動器300からプログラマユニット290に転送することができる。
【0068】
図3に示す心臓ペースメーカー/除細動器300の実施の形態では、RA先端電極256、RAリング電極254、RV先端電極212、RVリング電極211、RVコイル電極214、SVCコイル電極216、LV遠位電極213、LV近位電極217、LA遠位電極218、中立電極208および缶形電極209がスイッチングマトリックス310を介して感知回路331乃至337に結合されている。
【0069】
右心房感知回路331は、心臓の右心房からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。例えば、RA先端256と缶形電極209との間で発生した電圧を感知することにより、右心房内の双極感知を実施することができる。例えば、RA先端256と缶形電極209との間で発生した電圧を感知することにより、単極感知を実施することができる。右心房感知回路からの出力は制御システム320に結合されている。
【0070】
右心室感知回路332は、心臓の右心室からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。RV先端電極212の使用によって感知される右心室の心臓信号は右心室近距離場信号であり、RV心拍数チャネル信号と示す。双極のRV心拍数チャネル信号を、RV先端212とRVリング211との間で発生した電圧として感知することができる。あるいは、RV先端電極212およびRVコイル214を用いて、右心室内の双極感知を実施することができる。例えば、RV先端212と缶形電極209との間で発生した電圧を感知することにより、右心室内の単極の心拍数チャネル感知を実施することができる。
【0071】
除細動電極の使用によって感知される右心室の心臓信号は遠距離場信号(far−field signal)であり、RV形態チャネル信号またはRVショックチャネル信号とも呼ばれる。より具体的に言うと、右心室ショックチャネル信号を、RVコイル214とSVCコイル216との間で発生した電圧として検出することができる。また、右心室ショックチャネル信号を、RVコイル214と缶形電極209との間で発生した電圧として検出することができる。他の構成では、缶形電極209およびSVCコイル電極216を電気的に短絡させ、RVショックチャネル信号をRVコイル214と缶形電極209/SVCコイル216の組み合わせとの間で発生した電圧として検出することができる。
【0072】
心外膜電極として構成可能な1つ以上の左心房電極215および218の使用により、左心房の心臓信号を感知することができる。左心房感知回路335は、心臓の左心房からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。例えば、LA遠位電極218およびLA近位電極215を用いて左心房内の双極感知および/またはペーシングを実施することができる。例えば、LA遠位電極218から缶形電極209へ向かうベクトルまたはLA近位電極215から缶形電極209へ向かうベクトルを用いて、左心房の単極感知および/またはペーシングを行うことができる。
【0073】
左心室感知回路336は、心臓の左心室からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。例えば、LV遠位電極213とLV近位電極217との間で発生した電圧を感知することにより、左心室内の双極感知を実施することができる。例えば、LV遠位電極213またはLV近位電極217と缶形電極209との間で発生した電圧を感知することにより、単極感知を実施することができる。
【0074】
必要に応じて、冠静脈洞など、患者の左心に隣接する心血管系にLVコイル電極(図示せず)を挿入することができる。LV電極213および217、LVコイル電極(図示せず)ならびに/または缶形電極209の組み合わせを用いて検出された信号を左心室感知回路336によって感知し、増幅させることができる。左心室感知回路336の出力は制御システム320に結合されている。
【0075】
電極211、212、213、214、216、217、218、254および256のうち選択された組み合わせを誘発反応感知回路337に結合するように、スイッチングマトリックス310の出力を操作することができる。誘発反応感知回路337は、本発明の実施の形態によるペーシングに対する種々の心臓反応の区別のために、種々の電極の組み合わせを用いて発生した信号を感知し、増幅させるように機能する。
【0076】
以下に説明する実施形態では、ペーシングパルスの後にペーシング電極および感知電極の種々の組み合わせをペーシングおよび心臓信号の感知に関連して利用し、ペーシングパルスに対する心臓の反応を分類することができる。例えば、ある実施形態において、第一の電極の組み合わせを心腔のペーシングに利用し、第二の電極の組み合わせをペーシングに引き続いて行われる心臓信号の感知に利用する。別の実施形態では、同じ電極の組み合わせをペーシングと感知の両方に利用できる。
【0077】
ペースメーカー制御回路322は、左心房、右心房、左心室、および右心室用ペーシング回路と組み合わせて実施可能であり、選択的にペーシングパルスを生成し、各種電極の組み合わせを用いてペーシングパルスを心臓へ供給することができる。ペーシング電極の組み合わせは、前述したように、心腔の双極ペーシングもしくは単極ペーシングを実施するために利用可能である。
【0078】
前述のように、双極ペーシングパルスもしくは単極ペーシングパルスは、上述のペーシングベクトルの1つを用いて心腔に供給可能である。ペーシングパルスの供給に伴う電気信号は、スイッチングマトリクス310を介して心臓反応分類プロセッサ325に接続される各種感知ベクトルを通じて感知され、ペーシングに対する心臓反応を分類すべく利用可能である。
【0079】
スイッチングマトリクス310は、各種構成のペーシングおよび除細動電極への接続を提供すべく構成可能である。スイッチングマトリクス310からの出力は、電極の選択された組み合わせの間で検出される心臓信号を感知し増幅する役目を果たす誘発反応(ER)感知回路337に結合可能である。検出された信号はER増幅器337を介して心臓反応分類プロセッサ325に結合される。心臓反応分類プロセッサ325はペーシング刺激に対する心臓反応を決定すべく構成された回路を含む。誘発反応の存否は、振幅、ピーク値、ピークタイミング、および/または本発明の実施形態に従ってペーシングパルスに続いて感知された心臓信号のその他の形態学的特徴に基づいて決定できる。
【0080】
ある実施態様において、心臓ペースメーカー/除細動器300は、本願明細書に記載したように、心房誘発反応(AER)を感知するために誘発反応チャネル337を利用可能である。心臓ペースメーカー/除細動器300は、右心房の逆行性P波を感知するために右心房感知チャネル331を利用可能である。心臓ペースメーカー/除細動器300は、左心房の逆行性P波を感知するために左心房感知チャネル335を利用可能である。
【0081】
本発明の患者植込み型医療用具(PIMD)は、高性能患者管理(APM)システムの構成において利用可能である。APMを利用して、医師は心臓機能、呼吸機能、ならびに患者のその他の状態を遠隔的に、自動的にモニタリングすることができる。1つの例において、心臓ペースメーカー、除細動器、もしくは再同期装置として実施されるPIMDは、データ収集、診断および患者の治療を可能とする各種電気通信および情報技術を備えることができる。本願明細書中に示すPIMDの各種実施形態は高性能患者管理と共に利用可能である。一般的なAPMシステムは、PIMDおよび1つ以上のネットワークサーバと通信するインタフェースを含む。これらのサーバはPIMDにより取得されたデータを記憶・分析する。医師、臨床医および患者は、APMシステムへのユーザインタフェースを介して患者に関する情報およびPIMDからのデータにアクセスできる。
【0082】
本願明細書中に示す数多くの例は、本発明の実施形態による協調的モニタリング、診断および/または治療機能に利用される機能的ブロックを示すブロック図に関連する。これらの機能的ブロックを配置し実施する数多くの可能な構成が存在することは当業者には明白である。前述の例は、本発明の方式を実施するために用いられる可能な機能的構成の例を示す。
【0083】
図面に示され説明された構成要素および機能は、ハードウェア、ソフトウェア、もしくはハードウェアとソフトウェアの組み合わせにおいて実施可能であることが理解されよう。さらに、図面中で別々のすなわち連続しないブロック/要素として説明された構成要素および機能は、一般的にその他の構成要素および機能と組み合わせて実施可能であり、個々の形態もしくは集合的形態におけるこのような構成要素および機能の説明は、説明の簡略化を意図して示されたものであり、本発明を制限するものではない。
【0084】
本発明の範囲を逸脱せずに前述した好適な実施形態に各種変更および追加を行うことができる。従って、本発明の範囲は前述した特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1A】本発明の実施形態に従った心房の非捕捉を示すグラフである。
【図1B】本発明の実施形態に従った閾値下の心房ペーシング検出方法を示すフローチャートである。
【図1C】本発明の別の実施形態に従った閾値下の心房ペーシング検出方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態に従った閾値下の心房ペーシング検出方法に関連して使用される植込み型心調律管理システムを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に従った、閾値下の心房ペーシングを検出し心房逆行伝導を管理すべく使用される植込み型医療器具のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓信号の感知および患者への心臓ペーシングパルスの供給のうち一方もしくは両方を行うべく構成された複数の植込み型電極と、
患者への植込み用に構成されたハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、前記複数の植込み型電極と結合されるコントローラであって、該コントローラは心臓サイクルの間ペーシングパルスを患者の心臓の心房に供給し、前記心臓サイクルの間の閾値下の心房ペーシングを示す逆行性P波を特定し、前記逆行性P波の特定に応答して後続の心臓サイクルにおける前記心房への前記ペーシングパルスの供給を調節すべく構成された、コントローラと、
を含む心臓用システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記逆行性P波の識別に応答して、心房捕捉閾値試験を開始すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記逆行性P波の識別のみに基づいて、捕捉閾値試験スケジュールと無関係に心房捕捉閾値試験を開始すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記逆行性P波の識別に応答してペーシングパルス振幅を再評価すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記逆行性P波の識別に応答してペーシングパルス幅を再評価すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記ペーシングパルスの供給を調節する前に逆行性P波の存在を確認すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記逆行性P波の識別に応答してペーシングパルス振幅を一時的に増大させるべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記逆行性P波の識別に応答してペーシングパルス幅を一時的に増大させるべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項9】
前記コントローラは、逆行性P波テンプレートを利用して前記逆行性P波を識別すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項10】
前記コントローラは、心房捕捉閾値試験を実施し、前記心房捕捉閾値試験の間に識別された心房非捕捉に応答して逆行性P波テンプレートを生成し、前記逆行性P波を識別するために前記生成された逆行性P波テンプレートを利用すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項11】
前記コントローラは、心房反応の周波数成分に基づいて前記逆行性P波を識別すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項12】
前記コントローラは、心房反応の振幅に基づいて前記逆行性P波を識別すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項13】
前記コントローラは、心房反応の立ち上がり速度に基づいて前記逆行性P波を識別すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項14】
前記コントローラは、心房反応のタイミングに基づいて前記逆行性P波を識別すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項15】
前記コントローラは、ポスト心房不応期間に前記逆行性P波を感知すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項16】
前記コントローラは、心室ペーシング後約50ミリ秒〜約300ミリ秒以内に心房反応を感知することにより前記逆行性P波を識別すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項17】
前記コントローラは、スケジューリングされた心房捕捉閾値試験の前記タイミングを変更することで前記ペーシングパルスの供給を調節すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項18】
前記コントローラは、前記患者の逆行性P波伝導を認識するよう訓練されるべく構成されたデジタル信号プロセッサ(DSP)を含む請求項1記載の心臓用システム。
【請求項19】
前記DSPは、前記患者のペーシング閾値より下で行われる捕捉閾値試験の間、前記患者の逆行性P波伝導を認識すべく訓練される請求項18記載の心臓用システム。
【請求項20】
前記DSPは、前記捕捉閾値試験の間に決定される情報に基づいて逆行性P波伝導の1つ以上のテンプレートを生成すべく構成された請求項19記載の心臓用システム。
【請求項21】
前記コントローラは、検出されたP波のピークのタイミングに基づいて逆行伝導を感知すべく構成されたピーク検出回路を含む請求項1記載の心臓用システム。
【請求項22】
前記コントローラは、前記P波のピークの検出に応答して捕捉閾値試験を開始すべく構成された請求項21記載の心臓用システム。
【請求項23】
前記コントローラは、後続の捕捉閾値試験が起こるまで、逆行性P波伝導の検出に応答してペーシングパルス振幅の一時的な増大を開始すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項24】
前記コントローラは、後続の捕捉閾値試験が起こるまで、逆行性P波伝導の検出に応答してペーシングパルス幅に対する一時的変更を開始すべく構成された請求項1記載の心臓用システム。
【請求項25】
前記捕捉閾値試験はスケジューリングされた捕捉閾値試験である請求項23および24記載の心臓用システム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−541846(P2008−541846A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513532(P2008−513532)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/018810
【国際公開番号】WO2006/127323
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(592245720)カーディアック ペースメーカーズ,インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】