説明

防寒衣服

【課題】消費電力が小さい新規な発熱手段を組み込んだ防寒衣服を提供することを目的とする。
【解決手段】寒さなどの外気から着用者を保護する防寒衣服本体の所定箇所に、その発熱上限温度をあらかじめ設定した半導体発熱素子からなる局所ヒータを配置し、この局所ヒータを電源(二次電池)に接続する。この防寒衣服によれば、新規な半導体発熱素子で形成した局所ヒータを使用するので構造の簡略化とともに小型軽量化を図ることができ、日常業務などにも全く支障なく長時間に亘って簡便に使用することができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防寒衣服に関するものであり、一層詳細には、新規な発熱手段を組み込んだ防寒衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、寒さなどの外気から人体(着用者)を保護するために使用されている防寒衣服としては、外気に接する表地と人体側に配される裏地との間に、例えば、羽毛(ダウン)、コットンとウールを混紡した詰めワタ、さらにはポリエステル、アクリルなどの合成繊維ワタなどの中ワタを挿入してキルティング縫製することにより厚めの保温層を形成した防寒ジャケットが広範に使用されている。
【0003】
特に、中ワタに羽毛(ダウン)を使用したものは軽くしかも優れた保温性を有するので防寒ジャケットとして最も好ましいが、高価であるばかりでなく着膨れするため動作が緩慢になりがちで作業性も低下することから日常の業務などに着用すると支障をきたすことがある。
そこで、あまり嵩張らない廉価なジャケットと使い捨てカイロなどを組み合わせて寒さに対処するなどその使用に工夫を凝らしているが、カイロは消耗品のため補充が必要となり、使い方によっては低温火傷をすることがあり、また、稀には電気ヒータを使用した形式のジャケットも提案されてはいるが、消費電力が大きくサーモスタットなどの温度制御機構も必要になるため実用性の点で問題があった。
【0004】
一方、ポリプロピレンなどを素材とする合成樹脂製の不織布やフィルムで形成した表地と、同様の合成樹脂製不織布からなる裏地との間に、例えば、古紙を原料とする解繊パルプを中ワタとして使用した軽量で嵩張らない防寒衣服(特許文献1)なども提案されているが、この防寒衣服はあまりにも簡便なため厳しい寒気などから着用者を充分保護できないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】 特開2001−89918号公報
【0006】
このような事情から、軽量で作業性に富むだけでなく寒さに対しても着用者を充分に保護することのできる防寒衣服の登場が待望されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、発明者は、酸化錫と、酸化鉛と塩化鉛との混合物を有機溶剤で溶解した溶解物とを還元剤を使用して混合加熱後冷却し、得られた発熱機能混合物を、例えば、フィルムなどの基材に付着させることにより、熱交換率が90%以上と極めて大きく、しかも利用範囲や自由度も高い新規な半導体発熱素子の開発に成功している。
【0008】
そして、この半導体発熱素子は、従来のPTC材料(Positive Temperature Coefficient 半導体材料からなる伝熱交換材料)が通電負荷が高くて耐用寿命が短く、使用時に電流が急変したり、キュリー温度が低いため温度上昇が制約を受けるなど実用面で種々の問題が指摘されているのに対し、消費電力が小さいだけでなく耐用寿命も長く、短時間で昇温が可能であり、さらには錫と鉛の混合割合を調整することにより発熱上限温度をあらかじめ設定できるなど多くの優れた点が確認されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本願の請求項1に係る発明では寒さなどの外気から人体を保護するための防寒衣服における衣服本体の所定箇所に新規に開発した半導体発熱素子からなる局所ヒータを配置し、この局所ヒータを電源装置に接続して使用するよう構成することを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に係る発明では、局所ヒータとして、酸化錫と、酸化鉛と塩化鉛との混合物を有機溶剤で溶解した溶解物とを還元剤を使用して混合加熱後冷却し、得られた半導体発熱素子(発熱機能混合物)を耐熱性フィルムに付着しさらにこれを支持シートに取着することにより形成した面状発熱体を使用することを特徴とするものである。
【0011】
一方、請求項3に係る発明では、局所ヒータの発熱上限温度を70℃に設定することを特徴とするものである。
【0012】
さらに、請求項4に係る発明では、局所ヒータを衣服本体に対して着脱自在に構成することを特徴とするものである。
【0013】
さらにまた、請求項5に係る発明において防寒衣服はインナージャケットとして好適に構成され、この場合、局所ヒータを着用者の腰部と頸部に対応する位置に配設することを特徴とするものである。
【0014】
なお、請求項6に係る発明では、電源装置として二次電池を使用することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る防寒衣服によれば;
(1)発熱手段として、消費電力が小さくしかも熱効率の高い新規な半導体発熱素子で形成した局所ヒータを使用するので、構造の簡略化とともに小型軽量化を図ることができ、さらには日常業務などにも全く支障なく長時間の使用が可能で汎用性の拡大を図ることができる。
(2)電子のぶつかり合いにより発熱する半導体発熱素子によって局所ヒータを形成したので電磁波が発生せず、速やかな昇温と安定した発熱が得られ、電気エネルギーを効率よく利用することができる。
(3)半導体発熱素子における錫と鉛の混合割合を調整してその発熱上限温度をあらかじめ設定するので、温度制御機器が不要で安心して使用することができ、従来のように制御機器手段の不調や使用法による低温火傷などの惧れがない。
(4)衣服本体から局所ヒータを取り外せるのでクリーニングなどのメンテナンスを簡便に行うことができ、また、着用者の頸部と腰部に当接する位置に局所ヒータを配設したのでツボへの刺激による心地良い暖さかを得ることができ、さらには電源として充電可能な二次電池を使用するのでいつでもどこでも簡便に使用することができる、
など種々の優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明に係る防寒衣服の最良の実施の形態としてインナージャケットを例示し、図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1及び図2において、本発明に係る防寒衣服としてのインナージャケット10は、例えば、綿繊維とポリエステル繊維を混紡した織布で表地12を形成するとともに裏地14には肌触りの良いポリエステル繊維を100%使用した織布で形成したベスト形のジャケット本体16を備え、このジャケット本体16に半導体発熱素子18からなる局所ヒータ20a、20bを配置し、さらにこれらの局所ヒータ20a、20bを背裏ポケット22内に収容した電源装置24に接続することにより基本的に構成されている。
なおこの場合、ジャケット本体16の左右前身頃はファスナー26により自由に開閉できるように形成されており、また、袖繰り部28、28は局所ヒータ20a、20bによって発生した熱をできるだけ外部へ逃がさないように普通のジャケットに比べて小さめに形成されている。
【0017】
また、局所ヒータ20a、20bは、酸化錫からなる主成分と、酸化鉛と塩化鉛との混合物をエチルアルコールなどの有機溶剤で溶解した溶解物とを適宜の還元剤を使用して混合したのち200℃程度に加熱し、さらにこの加熱混合物に、例えば、ナイロン系樹脂、シリコン系樹脂等の合成樹脂を素材とするバインダーを混合して加熱したのち冷却して得られた発熱機能混合物(半導体発熱素子18)を、例えば、熱可塑性のポリイミド樹脂フィルムに塗布してラミネートし、さらに前記半導体発熱素子18からリード線30を導出した状態で、例えば、ゲルマニウムおよびセレンなどを含有しかつ波長が10μm程度の遠赤外線を放射する鉱物質素材を塗布することにより含ませた支持布32に取着することにより柔軟な面状発熱体として構成されている(図3参照)。
なお、本実施の形態において半導体発熱素子18は、酸化錫と鉛混合物との混合比を所定の割合に調整することにより、環境温度が20℃、電圧3.6Vで使用した場合の発熱上限温度が70℃となるように設定されている。
【0018】
前記インナージャケット10の後身頃を形成する裏地14の背面にはコ字形のポケット34、34を縫製によって形成し、これらのポケット34、34に局所ヒータ20a、20bを所望により着脱し得るように収容配置する(図4参照)。なお、コ字形ポケット34、34を設けるについては、インナージャケット10を着用した際に、着用者の頸部(第7頸椎下部のツボである大椎)が局所ヒータ20aに、また腰部(第2腰椎近傍のツボである志室、三焦愈)が局所ヒータ20bに当接するように位置決めして縫製するのが好適である(図2参照)。
【0019】
一方、局所ヒータ20a、20bの半導体発熱素子18から導出されたリード線30は、本実施の形態においては、非水溶媒を使用することにより電源電圧を高くとることが可能なリチウムイオン2次電池36をその内部に収納した電源装置24にコネクタ38を介して接続されており、この電源装置24には電源スイッチ40、ACアダプター42、ヒータ切替スイッチ44、さらにはリモコンスイッチ46などが装備されている。なお、ヒータ切替スイッチ44およびリモコンスイッチ46は、電源装置24から局所ヒータ20a、20bへの給電を適宜選択(20aまたは20b、20aと20b)することにより寒暖の変化などに応じて発熱温度を調整できるように構成されている。
【0020】
なお、図2において、参照符号48は表地12の両腰部分にゴム織りされたタック部であり、これらのタック部48はインナージャケット10を着用した際に、局所ヒータ20bが着用者の腰部に柔らかく押圧されるようにするためのものである。
【0021】
このように構成した本実施の形態に係るインナージャケット10を使用するに際しては、商用電源に差込んだACアダプター42を電源装置24に接続してリチウムイオン2次電池36の充電を行って局所ヒータ20a、20bに接続した電源装置24を背裏ポケット22内に収納し、次いでインナージャケット10を着用して適宜電源スイッチ40を入れ、切替スイッチ44(またはリモコンスイッチ46)を操作して局所ヒータ20aおよび/または20bに通電すれば良い。
【0022】
なお、局所ヒータ20aおよび/または20bに通電すると、半導体発熱素子18(発熱機能混合物)内において電子のぶつかり合いが生じて即座に面としての発熱が始まり、設定された上限温度に達するとこの温度を自己保持する。そして局所ヒータ20aおよび/または20b(半導体発熱素子18)で発生した熱が支持布32および裏地14を介して着用者に伝達すると適温となり頸部および/または腰部を暖める。
この場合、局所ヒータ20aおよび/または20b(半導体発熱素子18)で発生した熱は支持布32から生じる遠赤外線による血行促進作用とツボ刺激による相乗効果によって着用者の体をやわらかく暖め、寒気などから好適に保護することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る防寒衣服は、寒冷地での日常業務用途、高齢者の室内用や外出用、寒い時期などの農作業や海上業務用、フィッシングやライダーさらにはスポーツ観戦などのレジャー用など種々の用途に広く使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る防寒衣服の実施の形態としてのインナージャケットを示す正面説明図である。
【図2】図1に示すインナージャケットの左右前身頃を開けた状態の正面説明図である。
【図3】図1に示すインナージャケットに使用される局所ヒータと電源装置との関係を示す概略説明図である。
【図4】局所ヒータと防寒衣本体との関係を示す図2のA−A線拡大断面説明図である。
【符号の説明】
【0025】
10 インナージャケット
12 表地
14 裏地
16 ジャケット本体
18 半導体発熱素子
20 局所ヒータ
22 背裏ポケット
24 電源装置
26 ファスナー
28 袖繰り部
30 リード線
32 支持布
34 コ字形ポケット
36 リチウムイオン2次電池
38 コネクタ
40 電源スイッチ
42 ACアダプター
44 ヒータ切替スイッチ
46 リモコンスイッチ
48 タック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒さなどの外気から着用者を保護する防寒衣服であって、衣服本体の所定箇所に半導体発熱素子からなる局所ヒータを配置し、この局所ヒータを電源に接続して使用することを特徴とする防寒衣服。
【請求項2】
局所ヒータは、酸化錫と、酸化鉛と塩化鉛との混合物を有機溶剤で溶解した溶解物とを還元剤を使用して混合加熱後冷却し、得られた半導体発熱素子を耐熱性フィルムに付着しさらにこれを支持シートに取着することにより形成してなる請求項1に記載の防寒衣服。
【請求項3】
局所ヒータの発熱上限温度を70℃に設定してなる請求項1または2に記載の防寒衣服。
【請求項4】
衣服本体に配置される局所ヒータを着脱自在に構成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防寒衣服。
【請求項5】
防寒衣服はインナージャケットとして形成され、局所ヒータを着用者の頸部と腰部に当接し得るように配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防寒衣服。
【請求項6】
電源として二次電池を使用することからなる請求項1〜5のいずれかに記載の防寒衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−207099(P2006−207099A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43031(P2005−43031)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(503372521)共創有限会社 (3)
【Fターム(参考)】