説明

防振アクチュエータ

【課題】容易に小型化することができる防振アクチュエータを提供する。
【解決手段】本発明は、防振アクチュエータ(20)であって、固定部(22)と、像振れ防止用レンズ(26)が取り付けられた可動部(24)と、この可動部を、光軸に直交する平面内で移動可能に支持する可動部支持手段(46)と、可動部を第1、第2の方向に駆動する駆動手段と、を有し、駆動手段は、駆動用磁石(52a, 52b)と、駆動用磁石の磁場により駆動力を発生する2組の駆動用コイルと、を有し、第1の方向の駆動力を発生する第1の組の駆動用コイル(48a, 48b)は、光軸に直交する同一平面上に隣接して配置され、第2の方向の駆動力を発生する第2の組の駆動用コイル(50a, 50b)は、光軸に直交する別の同一平面上に隣接して配置され、第1、第2の組の駆動用コイルは、光軸方向の投影において、重なるように配置されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振アクチュエータに関し、特に、像振れ防止用レンズを移動させるための防振アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2007−293125号公報(特許文献1)には、撮像装置が記載されている。この撮像装置は、像振れ補正用レンズが取り付けられたレンズホルダを、光軸に垂直な平面内で駆動する手ぶれ防止機構を備えている。この手ぶれ防止機構は、レンズホルダの像振れ補正用レンズの両側に取り付けられたコイルと、これらのコイルに対向するように夫々配置されたマグネットと、を備えている。また、レンズホルダは、補正用レンズの光軸に平行に、この光軸に対して対称に配置された4本の直線状のワイヤによって支持されている。また、コイルに電流を流すことにより駆動力が発生し、レンズホルダが光軸に垂直な平面内で移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−293125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2007−293125号公報記載の撮像装置においては、レンズホルダを駆動するためのコイル及びマグネットが補正用レンズの両側に配置されているので、補正用レンズの駆動機構を小型化することが難しいという問題がある。特に、このような駆動機構は、光軸が途中で90゜折り曲げられる薄型のコンパクトカメラや、携帯電話に内蔵されるカメラに組み込むことが難しいという問題がある。
【0005】
従って、本発明は、容易に小型化することができる防振アクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、像振れ防止用レンズを移動させるための防振アクチュエータであって、筐体に固定された固定部と、像振れ防止用レンズが取り付けられた可動部と、この可動部を、像振れ防止用レンズの光軸に直交する平面内で、固定部に対して移動可能に支持する可動部支持手段と、可動部を、光軸に直交する平面内で、第1の方向、及びこの第1の方向とは異なる第2の方向に駆動する駆動手段と、を有し、駆動手段は、固定部又は可動部の何れか一方に取り付けられた駆動用磁石と、固定部及び可動部のうちの駆動用磁石が取り付けられていない方に取り付けられ、駆動用磁石により形成された磁場との相互作用により駆動力を発生する2組の駆動用コイルと、を有し、駆動用コイルのうちの第1の組の駆動用コイルは、第1の方向の駆動力を発生するように、光軸に直交する同一平面上に隣接して配置され、駆動用コイルのうちの第2の組の駆動用コイルは、第2の方向の駆動力を発生するように、第1の組の駆動用コイルが配置されている平面とは異なる光軸に直交する同一平面上に隣接して配置され、第1の組の駆動用コイルと第2の組の駆動用コイルは、光軸方向の投影において、重なるように配置されていることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明においては、像振れ防止用レンズが取り付けられた可動部が、可動部支持手段によって、像振れ防止用レンズの光軸に直交する平面内で固定部に対して移動可能に支持される。駆動手段は、可動部を、光軸に直交する平面内で、第1の方向及び第2の方向に駆動する。駆動手段は、駆動用磁石と、駆動用磁石による磁場との相互作用により駆動力を発生する2組の駆動用コイルと、を有する。各組の駆動用コイルは光軸に直交する同一平面上に隣接して配置されると共に、光軸方向の投影において、重なるように配置されている。
【0008】
このように構成された本発明によれば、各組の駆動用コイルが光軸に直交する各同一平面上に隣接して配置されると共に、光軸方向の投影において重なるように配置されているので、駆動手段をコンパクトに構成することができ、防振アクチュエータを小型化することができる。これにより、光軸が途中で90゜折り曲げられた光学系を用いた薄型の撮像装置用に、本発明の防振アクチュエータを採用することが可能になる。また、各組の駆動用コイルが、光軸方向の投影において重なるように配置されているので、駆動用磁石による単一の磁場により、第1の方向及び第2の方向の駆動力を生成することが可能になる。
【0009】
本発明において、好ましくは、可動部支持手段は、固定部と可動部との間に、光軸方向に延びる4本の弾性部材を含み、これら4本の弾性部材は、第1の組の駆動用コイルの間に延びる第2の方向の直線、及び第2の組の駆動用コイルの間に延びる第1の方向の直線に対して対称な位置に配置されている。
【0010】
このように構成された本発明によれば、4本の弾性部材が、第1の方向の直線及び第2の方向の直線に対して対称な位置に配置されているので、各弾性部材による復元力がバランス良く作用して、第1、第2の組の駆動用コイルにより生成される駆動力によるモーメントの発生が抑制される。このため、第1、第2の組の駆動用コイルによって生成される駆動力により、可動部は、ほぼ第1、第2の方向に並進移動される。
【0011】
本発明において、好ましくは、4本の弾性部材は導電性材料により構成され、これら4本の弾性部材は、2組の駆動用コイルに流す電流の導体として使用されている。
【0012】
このように構成された本発明によれば、弾性部材が駆動用コイルに流す電流の導体として使用されるので、電流を導くための導体を別に設ける必要がなく、部品点数を削減し、防振アクチュエータの組み立て性を向上させることができる。また、電流を導くための導体を別に設けることによって生じる、可動部の移動に対する外乱を除去することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、4本の弾性部材は非磁性材料により構成されている。
このように構成された本発明によれば、4本の弾性部材が非磁性材料により構成されているので、各弾性部材が駆動用磁石による磁力を受け、可動部の移動に対する外乱となるのを防止することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、第1の組の駆動用コイルは概ね長方形状の同形の2つの駆動用コイルから構成され、第2の組の駆動用コイルは概ね長方形状の同形の2つの駆動用コイルから構成され、第1の組の駆動用コイルの長辺の長さは第2の組の駆動用コイルの短辺の長さのほぼ2倍であり、第2の組の駆動用コイルの長辺の長さは第1の組の駆動用コイルの短辺の長さのほぼ2倍である。
【0015】
このように構成された本発明によれば、同一の光軸方向の投影面積の中に、最大の駆動用コイルを配置することができ、専有面積の少ない駆動用コイルにより、大きな駆動力を発生させることが可能になる。
【0016】
本発明において、好ましくは、第1の組の駆動用コイルには、隣接する巻線部分に同一方向の電流が流れるように互いに逆回りの電流が流され、第2の組の駆動用コイルには、隣接する巻線部分に同一方向の電流が流れるように互いに逆回りの電流が流され、駆動用磁石は、第1の組及び第2の組の駆動用コイルの、同一方向の電流が流れる巻線部分に磁場を形成する。
【0017】
このように構成された本発明によれば、駆動用磁石により、同一方向の電流が流れる巻線部分に磁場が形成されるので、駆動力を効率良く生成することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、駆動用磁石は光軸方向に向かい合うように2つ設けられ、これらの駆動用磁石の間に、第1の組の駆動用コイル及び第2の組の駆動用コイルが配置されている。
【0019】
このように構成された本発明によれば、第1の組の駆動用コイル及び第2の組の駆動用コイルに作用する磁場を強くすることができる。これにより、各駆動用コイルや駆動用磁石を小型に構成することができ、防振アクチュエータを、より小型化することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、防振アクチュエータを、容易に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態による防振アクチュエータを内蔵した撮像装置の正面断面図である。
【図2】本発明の実施形態による防振アクチュエータを内蔵した撮像装置の側面断面図である。
【図3】本発明の実施形態による防振アクチュエータの斜視図である。
【図4】本発明の実施形態による防振アクチュエータの分解斜視図である。
【図5】本発明の実施形態による防振アクチュエータの可動部の分解斜視図である。
【図6】図1のvi−vi線に沿う防振アクチュエータの断面図である。
【図7】図7は各駆動用コイル及び駆動用磁石の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
まず、図1乃至図7を参照して、本発明の実施形態による防振アクチュエータを内蔵した撮像装置を説明する。図1は本発明の実施形態による防振アクチュエータを内蔵した撮像装置の正面断面図であり、図2は撮像装置の側面断面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態による防振アクチュエータを内蔵した撮像装置1は、筐体2と、プリズム4と、撮像用レンズである第1レンズ6、第2レンズ8、第3レンズ10、第4レンズ12、及び第5レンズ14と、シャッターユニット16と、撮像素子18と、防振アクチュエータ20と、を有する。また、防振アクチュエータ20には、像振れ防止用レンズ26が取り付けられている。筐体2には、撮像装置1の振れを検出する振れ検出手段であるジャイロ56が取り付けられている。なお、図1及び図2においては、第1乃至第5レンズ、及び像振れ防止用レンズ26は、各々1枚のレンズとして示されているが、これらのレンズは、複数枚のレンズを組み合わせたレンズ群であっても良い。
【0024】
第1レンズ6に入射した光は、プリズム4により90゜折り曲げられた後、像振れ防止用レンズ26の光軸Aに沿って、第2レンズ8、シャッターユニット16、像振れ防止用レンズ26、第3レンズ10、第4レンズ12、及び第5レンズ14を透過して、撮像素子18上に合焦される。また、第2レンズ8及び第4レンズ12は、光軸Aに沿って移動可能に配置されており、これにより、画角調整、及びピント調整を可能としている。
【0025】
撮像装置1は、ジャイロ56によって振動を検出し、検出された振動に基づいて防振アクチュエータ20を作動させて像振れ防止用レンズ26を移動させ、撮像素子18に合焦される画像を安定化させている。本実施形態においては、ジャイロ56として、圧電振動ジャイロを使用している。
【0026】
次に、図3乃至図7を参照して、本発明の実施形態による防振アクチュエータ20を説明する。図3は、本発明の実施形態の防振アクチュエータの斜視図である。図4は防振アクチュエータ20の分解斜視図である。図5は防振アクチュエータ20の可動部の分解斜視図である。図6は、図1のvi−vi線に沿う防振アクチュエータ20の断面図である。図7は各駆動用コイル及び駆動用磁石の配置を示す図である。
【0027】
図3乃至図5に示すように、防振アクチュエータ20は、筐体2に固定されたベース部材22と、像振れ防止用レンズ26が取り付けられた可動部24と、を有し、可動部24は、像振れ防止用レンズ26の光軸Aに直交する平面内で、ベース部材22に対して移動可能に構成されている。
【0028】
また、ベース部材22には、L字型のカバー28と、フレキシブル基板30と、4つの吸着用ヨーク44と、2つの駆動用磁石52a、52bと、駆動磁石ヨーク54が取り付けられている。さらに、フレキシブル基板30には、位置検出手段である2つのホール素子32が取り付けられている。なお、本実施形態において、ベース部材22、カバー28、及びフレキシブル基板30は、筐体2に取り付けられた固定部を構成する。
【0029】
一方、可動部24には、像振れ防止用レンズ26と、4つのバックヨーク34と、4つの吸着用磁石36と、2つの位置検出用磁石38a、38bと、2つの位置検出用ヨーク40と、第1の組の駆動用コイル48a、48bと、第2の組の駆動用コイル50a、50bが取り付けられている。
【0030】
また、ベース部材22と可動部24との間には、3つの支持ボール42が挟持されている。さらに、ベース部材22に取り付けられたフレキシブル基板30と可動部24との間は、弾性部材である4本のコイルバネ46により連結されている。これらの支持ボール42及びコイルバネ46は、夫々、可動部24を像振れ防止用レンズ26の光軸Aに直交する平面内で、ベース部材22に対して移動可能に支持する可動部支持手段として機能する。
【0031】
図4に示すように、ベース部材22は、概ねL字型に形成された樹脂製の部材である。ベース部材22には、可動部24に取り付けられた像振れ防止用レンズ26と整合する位置に、円形の開口部22aが設けられている。この円形の開口部22aの周囲には、支持ボール42を夫々配置するための円形の凹部22bが、3つ形成されている。また、ベース部材22の裏面側には吸着用ヨーク44を夫々埋め込むための4つの円形の凹部(図示せず)が設けられている。さらに、ベース部材22には、駆動磁石ヨーク54を嵌め込むための2つの切取部22cが設けられている。
【0032】
カバー28は、概ねL字型に折り曲げられた金属板であり、折り曲げられた一方の面がベース部材22の一部と重なり、他方の面がベース部材22の一部と対向するように、ベース部材22に取り付けられている。また、カバー28の、像振れ防止用レンズ26と整合する位置には円形の開口部28aが設けられ、駆動磁石ヨーク54が取り付けられる位置には切取部28bが設けられている。
【0033】
フレキシブル基板30は、柔軟性のある細長い基板であり、カバー28の裏面側に取り付けられている。また、カバー28と同様に、円形の開口部30a及び切取部30bが設けられている。さらに、フレキシブル基板30の裏面側には、2つのホール素子32a、32bが取り付けられている。各ホール素子32a、32bによる検出信号は、フレキシブル基板30に設けられた基板パターン(図示せず)により制御部(図示せず)に伝えられるようになっている。また、フレキシブル基板30には、4本のコイルバネ46がハンダ付けされており、フレキシブル基板30の基板パターンを通って供給された電流が、各コイルバネ46を介して各駆動用コイルに供給されるようになっている。
【0034】
可動部24は、概ね長方形状の樹脂製の部材であり、その中央部に開口部24aが設けられ、ここに像振れ防止用レンズ26が取り付けられている。また、可動部24の裏面側には、開口部24a周囲に3つの円形の凹部(図示せず)が設けられている。これらの凹部は、ベース部材22の凹部22bと向かい合う位置に設けられ、夫々支持ボール42を受け入れている。これにより、各支持ボール42は、ベース部材22と可動部24の間に保持されると共に、各凹部の中で転がることにより、可動部24を光軸Aに直交する平面内で移動可能に支持する。なお、本実施形態においては、各支持ボール42は、ステンレス製の球体である。
【0035】
一方、可動部24の表側には、開口部24a周囲4箇所に、吸着用磁石36とバックヨーク34が、重ねて埋め込まれている。これらの吸着用磁石36及びバックヨーク34は、夫々、ベース部材22に埋め込まれた吸着用ヨーク44と整合する位置に埋め込まれている。これにより、各吸着用磁石36が対応する吸着用ヨーク44を引き付けて、各支持ボール42を可動部24とベース部材22の間に挟持し、可動部24はベース部材22に対して平行に維持される。
【0036】
また、可動部24の表側の一方の端部には、位置検出用磁石38aと位置検出用ヨーク40、位置検出用磁石38bと位置検出用ヨーク40が夫々重ねて取り付けられている。位置検出用磁石38aはフレキシブル基板30に取り付けられたホール素子32aと対向するように配置され、位置検出用磁石38bはフレキシブル基板30に取り付けられたホール素子32bと対向するように配置されている。位置検出用磁石38aは、その着磁境界線Cが可動部24の長手方向に向くように着磁されている。このため、可動部24が長手方向に直角な方向に変位されると、ホール素子32aによって検知される磁気が変化し、この方向の可動部24の位置変位を検出することができる。また、位置検出用磁石38bは、その着磁境界線Cが可動部24の短辺の方向に向くように着磁されている。このため、可動部24が長手の方向に変位されると、ホール素子32bによって検知される磁気が変化し、この方向の可動部24の位置変位を検出することができる。
【0037】
さらに、可動部24の、位置検出用磁石とは反対側の端部には、第1の組の駆動用コイル48a、48b、及び第2の組の駆動用コイル50a、50bが、光軸Aの方向に重ねて取り付けられている。これら第1及び第2の組の駆動用コイルは、ベース部材22に取り付けられた駆動用磁石52a、52b及び駆動磁石ヨーク54と共に、駆動手段を構成する。この駆動手段は、光軸Aに直交する平面内で可動部24を第1の方向及び第2の方向に駆動する。このように、本実施形態の防振アクチュエータ20においては、像振れ防止用レンズ26の一方の側に、駆動手段が集約して配置される。
【0038】
第1の組の駆動用コイル48a及び48bは、各々、角の丸い長方形状に巻線が巻かれたコイルであり、駆動用コイル48aと駆動用コイル48bは同一の形状を有している。また、駆動用コイル48a及び48bは、光軸Aに直交する同一の平面上に隣接して配置されている。駆動用コイル48aと駆動用コイル48bの間を通る直線L2(図7)は、可動部24の長手方向に向けられており、第1の組の駆動用コイル48a、48bに電流が流れると、第1の方向(図7における直線L1の方向)である可動部24の短辺の方向の駆動力が発生する。
【0039】
第2の組の駆動用コイル50a及び50bは、各々、角の丸い長方形状に巻線が巻かれたコイルであり、駆動用コイル50aと駆動用コイル50bは同一の形状を有している。また、駆動用コイル50a及び50bは、光軸Aに直交する同一の平面上に隣接して配置されている。駆動用コイル50aと駆動用コイル50bの間を通る直線L1(図7)は、可動部24の短辺の方向に向けられており、第2の組の駆動用コイル50a、50bに電流が流れると、第2の方向(図7における直線L2の方向)である可動部24の長手方向の駆動力が発生する。
【0040】
また、第1の組の駆動用コイル48a、48bは、第2の組の駆動用コイル50a、50bの図4における上側に重ねて配置されている。即ち、第1の組の駆動用コイル48a、48bと第2の組の駆動用コイル50a、50bは、光軸Aの方向に重ねて配置されており、第1の組の駆動用コイル48a、48bと第2の組の駆動用コイル50a、50bは、光軸A方向の投影において、重なるように配置されている。
【0041】
さらに、第1の組の駆動用コイル48a、48bの長辺の長さは、第2の組の駆動用コイル50a、50bの短辺の長さのほぼ2倍である。また、第2の組の駆動用コイル50a、50bの長辺の長さは、第1の組の駆動用コイル48a、48bの短辺の長さのほぼ2倍である。従って、隣接して配置された第1の組の駆動用コイル48a、48bを囲む長方形と、隣接して配置された第2の組の駆動用コイル50a、50bを囲む長方形は、ほぼ同一の形状となり、光軸A方向の投影において、第1の組の駆動用コイルと第2の組の駆動用コイルは、ほぼ完全に重なっている。
【0042】
図4に示すように、駆動磁石ヨーク54は、概ねU字形に曲げられた金属製の板であり、側方が開放されるように、横向きにベース部材22に取り付けられている。この駆動磁石ヨーク54のU字形の開放部には、可動部24の端部に取り付けられた第1及び第2の組の駆動用コイルが配置される。
【0043】
図4及び図6に示すように、駆動用磁石52a、52bは、夫々、直方体状の磁石であり、駆動磁石ヨーク54のU字形の内側に、光軸Aの方向に互いに向かい合うように取り付けられている。また、図6における上側に配置された駆動用磁石52aは、上面側がS極、下面側がN極となるように着磁され、下側に配置された駆動用磁石52bは、上面側がS極、下面側がN極となるように着磁されている。これにより、駆動用磁石52aと駆動用磁石52bの間に配置された第1及び第2の組の駆動用コイルには、図4における上側から下側に向かう磁力線が通過する。
【0044】
また、図7に太い矢印C1で示すように、第1の組の駆動用コイル48aと48bには、互いに逆回りの電流が流される。このため、第1の組の駆動用コイル48a、48bの隣接する巻線部分には常に同一の方向の電流が流れる。同様に、図7に細い矢印C2で示すように、第2の組の駆動用コイル50aと50bにも、互いに逆回りの電流が流される。このため、第2の組の駆動用コイル50a、50bの隣接する巻線部分には常に同一の方向の電流が流れる。
【0045】
一方、図7に想像線で示すように、駆動用磁石52a、52bは、第1及び第2の組の駆動用コイルにおける同一の方向の電流が流れる巻線部分と向かい合うように配置されており、主に、この巻線部分に磁場を形成する。第1の組の駆動用コイル48a、48bは、可動部24の長手方向に向けられた第2の方向の直線L2の両側に配置されている。このため、第1の組の駆動用コイル48a、48bの隣接する巻線部分に電流が流れると、第2の方向に対して直角な第1の方向の直線L1に沿った駆動力が生成される。一方、第2の組の駆動用コイル50a、50bは、可動部24の短辺の方向に向けられた第1の方向の直線L1の両側に配置されている。このため、第2の組の駆動用コイル50a、50bの隣接する巻線部分に電流が流れると、第1の方向に対して直角な第2の方向の直線L2に沿った駆動力が生成される。
【0046】
次に、図5乃至7に示すように、弾性部材である4本のコイルバネ46は、光軸Aの方向に延びるように設けられ、カバー28に取り付けられたフレキシブル基板30と可動部24とを連結している。即ち、コイルバネ46は、可動部24を、光軸Aに直交する平面内でベース部材22に対して移動可能に支持する可動部支持手段として機能する。これらのコイルバネ46は、非常に細い非磁性材料の金属製の素線によって巻かれた細長いコイルバネであり、小さな力で曲げられ、伸縮されるので、コイルバネ46によりフレキシブル基板30と可動部24が連結されていても、可動部24を小さな力で移動させることができる。
【0047】
また、コイルバネ46の復元力による可動部24を初期位置へ復帰させる力も小さなものとなる。さらに、各コイルバネ46等の寸法精度や、取り付け精度に誤差がある場合でも、各コイルバネ46による復元力自体が小さいので、各コイルバネ46の復元力のバラツキによる悪影響を最小限に抑制することができる。また、コイルバネ46は、非磁性材料で構成されているため、近傍に配置されている駆動用磁石52a、52bの磁気により吸着されることがなく、駆動用磁石から受ける磁力による外乱を回避することができる。このように、本実施形態においては、可動部を支持する弾性体として細いコイルバネを使用しているので、同じ太さのワイヤー等を使用した場合に比して、極めて小さな力で可動部を移動させることができる。
【0048】
また、図7に示すように、4本のコイルバネ46は、夫々、第1、第2の組の駆動用コイルを取り囲む長方形の頂点に位置するように配置されている。この4本のコイルバネ46によって形成される長方形の中心は、第1の組の駆動用コイル48aと48bの間に延びる直線L2と、第2の組の駆動用コイル50aと50bの間に延びる直線L1との交点と一致している。従って、4本のコイルバネ46は、夫々、直線L1に対して対称の位置に配置されると共に、直線L2に対しても対称の位置に配置されている。これにより、第1、第2の組の駆動用コイルにより生成される駆動力と、各コイルバネ46による復元力がバランス良く作用する。このため、第1の組の駆動用コイル48a、48bに電流が流れ、第1の方向の駆動力が生成されると、可動部24は、ほぼ第1の方向に並進移動される。同様に、第2の組の駆動用コイル50a、50bに電流が流れ、第2の方向の駆動力が生成されると、可動部24は、ほぼ第2の方向に並進移動される。
【0049】
次に、本発明の実施形態による防振アクチュエータ20を内蔵した撮像装置1の作用を説明する。
まず、撮像装置1が起動されると、筐体2に備えられたジャイロ56は、撮像装置1の振れを検出する。撮像装置1に内蔵されたコントローラ(図示せず)は、ジャイロ56により検出された振れ角速度に基づいて、撮像素子18に形成される像の振れを抑制するために移動させるべき像振れ防止用レンズ26の指令位置を計算する。一方、フレキシブル基板30に取り付けられたホール素子32aは、可動部24に取り付けられた位置検出用磁石38aの、第1の方向(直線L1の方向)の変位を検出し、像振れ防止用レンズ26の第1の方向の位置を検出する。同様に、ホール素子32bは、位置検出用磁石38bの、第2の方向(直線L2の方向)の変位を検出し、像振れ防止用レンズ26の第2の方向の位置を検出する。
【0050】
ホール素子32a、32bにより検出された像振れ防止用レンズ26の位置は、コントローラ(図示せず)に送られ、ジャイロ56の検出信号に基づいて計算された指令位置と比較される。コントローラは、検出された像振れ防止用レンズ26の位置が、指令位置に近づくように、第1の方向及び第2の方向の駆動力を夫々発生させる。即ち、コントローラは、フレキシブル基板30、コイルバネ46を介して第1の組の駆動用コイル48a、48bに電流を流して、第1の方向の駆動力を発生させる。同様に、コントローラは、フレキシブル基板30、コイルバネ46を介して第2の組の駆動用コイル50a、50bに電流を流して、第2の方向の駆動力を発生させる。
【0051】
本実施形態においては、第1の組の駆動用コイル48a、48bに、図7に矢印C1で示す方向の電流(駆動用コイル48aには時計回り、駆動用コイル48bには反時計回りの電流)が流れると、第1の組の駆動用コイルには、図7における上方向の駆動力が作用し、像振れ防止用レンズ26は上方に移動される。また、矢印C1とは反対の方向の電流(駆動用コイル48aには反時計回り、駆動用コイル48bには時計回りの電流)が流れると、像振れ防止用レンズ26は図7における下方に移動される。
【0052】
さらに、第2の組の駆動用コイル50a、50bに、図7に矢印C2で示す方向の電流(駆動用コイル50aには時計回り、駆動用コイル50bには反時計回りの電流)が流れると、第2の組の駆動用コイルには、図7における左方向の駆動力が作用し、像振れ防止用レンズ26は左方に移動される。また、矢印C2とは反対の方向の電流(駆動用コイル50aには反時計回り、駆動用コイル50bには時計回りの電流)が流れると、像振れ防止用レンズ26は図7における右方に移動される。
【0053】
このように、各組の隣接して配置された駆動用コイルには、常に逆回りの電流が流され、駆動用コイルの隣接する巻線部分には常に同一の方向の電流が流される。また、各組の駆動用コイルにおいて、隣接していない巻線部分には反対方向の電流が流れているが、これらの巻線部分には駆動用磁石52a、52bが対向されていないため、これらの巻線部分に作用する磁場は弱く、発生する電磁力も小さなものとなる。なお、防振アクチュエータ20の実使用時における変位量は微少であるため、可動部24が移動された場合でも、隣接していない巻線部分に強い磁場が作用することはない。
【0054】
以上のように生成される駆動力により、可動部24及びこれに取り付けられた像振れ防止用レンズ26は、常に指令位置に追従するように移動され、撮像素子18上に合焦される像の振れが抑制される。
【0055】
本発明の実施形態の防振アクチュエータ20によれば、第1の組の駆動用コイル48a、48b及び第2の組の駆動用コイル50a、50bが光軸Aに直交する各同一平面上に隣接して配置されると共に、光軸A方向の投影において重なるように配置されている(図5)ので、駆動手段をコンパクトに構成することができ、防振アクチュエータ20を小型化することができる。これにより、図1、2に示すような、光軸Aが途中で90゜折り曲げられた光学系を用いた薄型の撮像装置1用に、本実施形態の防振アクチュエータ20を採用することが可能になる。また、各組の駆動用コイルが、光軸A方向の投影において重なるように配置されている(図7)ので、駆動用磁石52a、52bによる単一の磁場により、第1の方向L1及び第2の方向L2の駆動力を生成することが可能になる。
【0056】
また、本実施形態の防振アクチュエータ20によれば、4本のコイルバネ46が、第1の方向の直線L1及び第2の方向の直線L2に対して対称な位置に配置されている(図7)ので、各コイルバネ46による復元力がバランス良く作用し、第1、第2の組の駆動用コイルにより生成される駆動力によるモーメントの発生を抑制される。このため、第1、第2の組の駆動用コイルによって生成される駆動力により、可動部24は、ほぼ第1、第2の方向に並進移動される。
【0057】
さらに、本実施形態の防振アクチュエータ20によれば、コイルバネ46が各駆動用コイルに流す電流の導体として使用されるので、電流を導くための導体を別に設ける必要がなく、部品点数を削減し、防振アクチュエータ20の組み立て性を向上させることができる。また、電流を導くための導体を別に設けることによって生じる、可動部24の移動に対する外乱を除去することができる。
【0058】
また、本実施形態の防振アクチュエータ20によれば、4本のコイルバネ46が非磁性材料により構成されているので、各コイルバネ46が駆動用磁石52a、52bによる磁力を受け、可動部24の移動に対する外乱となるのを防止することができる。
【0059】
さらに、本実施形態の防振アクチュエータ20においては、第1の組の駆動用コイルは概ね長方形状の同形の2つの駆動用コイル48a、48bから構成され、第2の組の駆動用コイルは概ね長方形状の同形の2つの駆動用コイル50a、50bから構成され、第1の組の駆動用コイル48a、48bの長辺の長さは第2の組の駆動用コイル50a、50bの短辺の長さのほぼ2倍であり、第2の組の駆動用コイル50a、50bの長辺の長さは第1の組の駆動用コイル48a、48bの短辺の長さのほぼ2倍に構成されている(図7)。この構成により、同一の光軸A方向の投影面積の中に、最大の駆動用コイルを配置することができ、専有面積の少ない第1、第2の組の駆動用コイルにより、大きな駆動力を発生させることが可能になる。
【0060】
また、本実施形態の防振アクチュエータ20においては、第1の組の駆動用コイル48a、48bには、隣接する巻線部分に同一方向の電流が流れるように互いに逆回りの電流が流され、第2の組の駆動用コイル50a、50bには、隣接する巻線部分に同一方向の電流が流れるように互いに逆回りの電流が流され、駆動用磁石52a、52bは、第1の組及び第2の組の駆動用コイルの、同一方向の電流が流れる巻線部分に磁場を形成する(図7)。この構成により、駆動用磁石52a、52bによって、主に、同一方向の電流が流れる巻線部分に磁場が形成されるので、駆動力を効率良く生成することができる。
【0061】
さらに、本実施形態の防振アクチュエータ20においては、駆動用磁石52a、52bは光軸A方向に向かい合うように2つ設けられ、これらの駆動用磁石52a、52bの間に、第1の組の駆動用コイル48a、48b及び第2の組の駆動用コイル50a、50bが配置されている。この構成により、第1の組の駆動用コイル48a、48b及び第2の組の駆動用コイル50a、50bに作用する磁場を強くすることができる。これにより、各駆動用コイルや駆動用磁石52a、52bを小型に構成することができ、防振アクチュエータ20を、より小型化することができる。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、可動部に駆動用コイルが取り付けられ、ベース部材に駆動用磁石が取り付けられていたが、可動部に駆動用磁石を取り付け、固定側に駆動用コイルを取り付けるように、本発明を構成することもできる。
【0063】
また、上述した実施形態においては、2つの駆動用磁石が、各組の駆動用コイルと夫々向かい合うように配置されていたが、駆動用磁石は1つでも良い。また、駆動用磁石は、必ずしも駆動用コイルと向かい合うように配置されている必要はなく、磁場がヨークにより駆動用コイルに導かれるように、本発明を構成することもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 撮像装置
2 筐体
4 プリズム
6 第1レンズ(撮像用レンズ)
8 第2レンズ(撮像用レンズ)
10 第3レンズ(撮像用レンズ)
12 第4レンズ(撮像用レンズ)
14 第5レンズ(撮像用レンズ)
16 シャッターユニット
18 撮像素子
20 防振アクチュエータ
22 ベース部材
22a 開口部
22b 凹部
22c 切取部
24 可動部
24a 開口部
26 像振れ防止用レンズ
28 カバー
28a 開口部
28b 切取部
30 フレキシブル基板
30a 開口部
30b 切取部
32a、32b ホール素子(位置検出手段)
34 バックヨーク
36 吸着用磁石
38a、38b 位置検出用磁石
40 位置検出用ヨーク
42 支持ボール(可動部支持手段)
44 吸着用ヨーク
46 コイルバネ(弾性部材、可動部支持手段)
48a、48b 第1の組の駆動用コイル
50a、50b 第2の組の駆動用コイル
52a、52b 駆動用磁石
54 駆動磁石ヨーク
56 ジャイロ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像振れ防止用レンズを移動させるための防振アクチュエータであって、
筐体に固定された固定部と、
上記像振れ防止用レンズが取り付けられた可動部と、
この可動部を、上記像振れ防止用レンズの光軸に直交する平面内で、上記固定部に対して移動可能に支持する可動部支持手段と、
上記可動部を、上記光軸に直交する平面内で、第1の方向、及びこの第1の方向とは異なる第2の方向に駆動する駆動手段と、を有し、
上記駆動手段は、
上記固定部又は上記可動部の何れか一方に取り付けられた駆動用磁石と、
上記固定部及び上記可動部のうちの上記駆動用磁石が取り付けられていない方に取り付けられ、上記駆動用磁石により形成された磁場との相互作用により駆動力を発生する2組の駆動用コイルと、を有し、
上記駆動用コイルのうちの第1の組の駆動用コイルは、上記第1の方向の駆動力を発生するように、上記光軸に直交する同一平面上に隣接して配置され、上記駆動用コイルのうちの第2の組の駆動用コイルは、上記第2の方向の駆動力を発生するように、上記第1の組の駆動用コイルが配置されている平面とは異なる上記光軸に直交する同一平面上に隣接して配置され、上記第1の組の駆動用コイルと上記第2の組の駆動用コイルは、上記光軸方向の投影において、重なるように配置されていることを特徴とする防振アクチュエータ。
【請求項2】
上記可動部支持手段は、上記固定部と上記可動部との間に、上記光軸方向に延びる4本の弾性部材を含み、これら4本の弾性部材は、上記第1の組の駆動用コイルの間に延びる上記第2の方向の直線、及び上記第2の組の駆動用コイルの間に延びる上記第1の方向の直線に対して対称な位置に配置されている請求項1記載の防振アクチュエータ。
【請求項3】
上記4本の弾性部材は導電性材料により構成され、これら4本の弾性部材は、上記2組の駆動用コイルに流す電流の導体として使用されている請求項2記載の防振アクチュエータ。
【請求項4】
上記4本の弾性部材は非磁性材料により構成されている請求項2又は3記載の防振アクチュエータ。
【請求項5】
上記第1の組の駆動用コイルは概ね長方形状の同形の2つの駆動用コイルから構成され、上記第2の組の駆動用コイルは概ね長方形状の同形の2つの駆動用コイルから構成され、上記第1の組の駆動用コイルの長辺の長さは上記第2の組の駆動用コイルの短辺の長さのほぼ2倍であり、上記第2の組の駆動用コイルの長辺の長さは上記第1の組の駆動用コイルの短辺の長さのほぼ2倍である請求項1乃至4の何れか1項に記載の防振アクチュエータ。
【請求項6】
上記第1の組の駆動用コイルには、隣接する巻線部分に同一方向の電流が流れるように互いに逆回りの電流が流され、上記第2の組の駆動用コイルには、隣接する巻線部分に同一方向の電流が流れるように互いに逆回りの電流が流され、上記駆動用磁石は、上記第1の組及び第2の組の駆動用コイルの、同一方向の電流が流れる巻線部分に磁場を形成する請求項1乃至5の何れか1項に記載の防振アクチュエータ。
【請求項7】
上記駆動用磁石は上記光軸方向に向かい合うように2つ設けられ、これらの駆動用磁石の間に、上記第1の組の駆動用コイル及び上記第2の組の駆動用コイルが配置されている請求項1乃至6の何れか1項に記載の防振アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−109248(P2013−109248A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255716(P2011−255716)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)