説明

防曇フィルム及び防曇ガラス

【課題】防曇機能の維持性に優れ、柔軟性の高い防曇フィルム及びそれを用いた防曇ガラスを提供する。
【解決手段】透明樹脂フィルム上に、無機酸化物粒子と、反応性官能基を有するポリマーと、該反応性官能基と反応する架橋剤とを含有する微細空隙層を有する防曇フィルムにおいて、該微細空隙層は、ブリストー法による接触時間が0.8秒における吸水量が5ml/m以上、50ml/m以下であることを特徴とする防曇フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜の柔軟性が高く、ガラス等への張り付け作業が容易で、防曇維持性に優れた、微細空隙層を有する防曇フィルムと、それを用いた防曇ガラスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な窓ガラスや自動車ガラス、浴室用ミラー等の曇りを防止するための防曇技術としては、ガラス表面に熱線を配したり、温風を吹き付けたりして、ガラス表面を露点温度以上に加熱して結露を防止する方法が知られている。しかしながら、これらの方法では電源設備が必要となり、また湿度の高い環境では、特に漏電等の危険性を孕んでいる。
【0003】
他の方法としては、界面活性剤や光触媒酸化チタンを表面に塗布して、親水性を付与し、ウレタン等の共重合ポリマーを塗布して水分を吸収する方法などが知られている。しかしながら、界面活性剤を塗布する方法では、界面活性剤が徐々に水に溶解するため、親水性を維持することができない。光触媒酸化チタンを塗布する方法では、光が届かない場所や夜間では効果が長続きしないだけでなく、触媒活性によりバインダー樹脂等が劣化し、塗膜の接着性が悪くなり、着色や透明性が劣化してしまう。さらに、水分吸収性のポリマーを塗布する方法では、ポリマーの膨潤による膜破壊やゆがみが生じてしまう、という様々な課題を抱えている。
【0004】
これらの課題に対し、多孔質膜を形成して水分を吸収させる方法として、金属アルコキシド、酸化微粒子及び水溶性有機高分子で膜を形成した後、水または水とアルコールの混合溶液で水溶性有機高分子を洗い出し、その後、高温焼成することで、多孔質構造を有する防曇性薄膜を形成する方法(例えば、特許文献1参照。)や、ポリオルガノシロキサン、酸化物微粒子及び親水性有機溶媒を含有した塗布液を用いて、多孔質膜を形成する方法(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの特許文献に記載された方法では、膜を硬化させるためには高温で長時間焼成する必要があり、適用することのできる支持体としては、ガラスのような高温耐性のある基材に限定され、窓等を一度取り付けた後に追加加工するため、一般的なフィルム基材上に加工することは困難である。
【0006】
更に、高温耐性を持ったフィルム上に形成しても、形成された膜の柔軟性が乏しいため、ガラス等に張り付ける際の作業性が悪く、均一に張り付けることが難しいのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−295835号公報
【特許文献2】特開2004−292754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、防曇機能の維持性に優れ、柔軟性の高い防曇フィルム及びそれを用いた防曇ガラスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0010】
1.透明樹脂フィルム上に、無機酸化物粒子と、反応性官能基を有するポリマーと、該反応性官能基と反応する架橋剤とを含有する微細空隙層を有する防曇フィルムにおいて、該微細空隙層は、ブリストー法による接触時間が0.8秒における吸水量が5ml/m以上、50ml/m以下であることを特徴とする防曇フィルム。
【0011】
2.前記反応性官能基を有するポリマーの重量平均分子量が、5万以上、50万以下であることを特徴とする前記1に記載の防曇フィルム。
【0012】
3.前記微細空隙層が、下記一般式(1)で表される無機ポリマーを含有することを特徴とする前記1または2に記載の防曇フィルム。
【0013】
一般式(1)
(M(O)(OR(OR(X)(Y)
〔式中、iおよびjは各々0または1であり、kは2以上の整数であり、l、m、nは各々0〜2の整数であり、l+m+n=2である。Mはアルミニウム原子、ジルコニル原子またはハーフニウム原子を表す。RおよびRは各々アルキル基、アシル基または水素原子を表し、同一でも異なってもよい。XおよびYは、各々OH、ハロゲン原子、NO、SO、CO、RCOOまたはHOを表し、Rはアルキル基または水素原子を表す。〕
4.前記一般式(1)で表される無機ポリマーが、下記一般式(2)または(3)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする前記3に記載の防曇フィルム。
【0014】
【化1】

【0015】
〔式中、bおよびcは各々0または1である。M、R、R、XおよびYは、各々一般式(1)におけるそれらと同義である。実線は共有結合を表し、破線は配位結合、イオン結合または共有結合を表す。〕
5.ガラス基材表面に、前記1から4のいずれか1項に記載の防曇フィルムを張り合わせたことを特徴とする防曇ガラス。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、防曇機能の維持性に優れ、柔軟性の高い防曇フィルム及びそれを用いた防曇ガラスを提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、透明樹脂フィルム上に、無機酸化物粒子と、反応性官能基を有するポリマーと、該反応性官能基と反応する架橋剤とを含有する微細空隙層を有する防曇フィルムにおいて、該微細空隙層は、ブリストー法による接触時間が0.8秒における吸水量が5ml/m以上、50ml/m以下であることを特徴とする防曇フィルムにより、防曇機能の維持性に優れ、柔軟性の高い防曇フィルムを実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0019】
すなわち、本発明者らが鋭意検討する過程において、無機酸化物粒子と反応性官能基を有するポリマーと前記反応性官能基と反応する架橋剤で微細空隙層を形成し、ブリストー法による接触時間0.8秒における水の吸水量が5ml/m以上、50ml/m以下とすることにより、防曇機能を維持したまま、柔軟性が高く、張り付け作業がしやすい防曇フィルムが得られることを見出した。
【0020】
また、微細空隙層に一般式(1)で表される無機ポリマーを含有することにより、無機酸化物粒子の分散性が向上し、より均一な空隙層が形成出来ることにより、柔軟性がより高い防曇フィルムが得られることを見出した。
【0021】
以下、本発明の防曇フィルムの構成要素について、詳細な説明をする。
【0022】
《防曇フィルム》
〔吸水量〕
本発明の防曇フィルムは、透明樹脂フィルム上に無機酸化物粒子、反応性官能基を有するポリマー及び該反応性官能基と反応する架橋剤を含有する微細空隙層を有し、該微細空隙層のブリストー法により測定した、接触時間0.8秒における水の吸水量が5ml/m以上、50ml/m以下であることを特徴とし、好ましくは15ml/m以上、45ml/m以下である。接触時間0.8秒における水の吸水量が5ml/m以上であれば、十分な防曇性能を発現することができ、50ml/m以下であれば耐久性、持続性に優れた防曇性能を実現することができる。
【0023】
本発明において、ブリストー法による接触時間0.8秒における水の吸水量を本発明で規定する範囲に制御する方法としては、無機酸化物粒子(F)と反応性官能基を有するポリマー(B)との比率F/Bを制御する方法、あるいはポリマーの反応性官能基と反応する架橋剤の種類及び添加量を適宜調整することにより、達成することができる。
【0024】
本発明における吸水量とは、短時間での吸水性材料の液体吸収挙動を測定する方法であり、詳しくは、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87紙又は板紙の液体吸収性試験方法(ブリストー法)に準じて測定し、接触時間0.8秒における吸水量(ml/m)で表される。なお、上記の測定方法では、測定に純水(イオン交換水)が使用されているが、測定面積の判別を容易にするために、本発明においては、2%未満の水溶性染料を含有させてもよい。
【0025】
具体的な測定方法の一例を、以下に説明する。
【0026】
吸水量の測定法としては、微細空隙層を有する防曇フィルムを25℃、50%RHの雰囲気下で12時間以上放置した後、例えば、熊谷理機工業株式会社製の液体動的吸収性試験機であるBristow試験機II型(加圧式)を用いて測定する。本発明では、接触時間0.8秒間における純水転移量(ml/m)を吸水量とした。
【0027】
〔透明樹脂フィルム〕
本発明の防曇フィルムに適用する透明樹脂フィルムとしては、特に制限はなく、種々の透明樹脂フィルムを用いることができ、例えば、ポリオレフィンフィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルム(以降、ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。
【0028】
これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。更には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
【0029】
本発明に係る透明樹脂フィルムの厚みは、10〜300μmであることが好ましく、更には20〜150μmであることが好ましい。
【0030】
〔無機酸化物粒子〕
本発明に係る微細空隙層においては、反応性官能基を有するポリマーと、反応性官能基と反応する架橋剤と共に、無機酸化物粒子を含有することを特徴とする。
【0031】
本発明で用いることのできる無機酸化物粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
【0032】
無機微粒子としては、表面がアニオン性で染料に対して定着性を有しない無機微粒子および染料に対して定着性を有する表面がカチオン性の無機微粒子のいずれも使用することができる。
【0033】
表面がアニオン性である無機微粒子を使用する場合には、通常カチオン性ポリマーを併用するが、表面がアニオン性の無機微粒子にカチオン性ポリマーを添加した場合、カチオン性ポリマーが無機微粒子表面に留まって不動化し、その不動化されたカチオン性ポリマーに定着されて染料が不動化するものと推定される。
【0034】
本発明においては、低コストであることや高い反射濃度が得られる低屈折率の微粒子であること等から、表面がアニオン性の無機微粒子としては気相法で合成されたシリカまたはコロイダルシリカが好ましい。
【0035】
上記表面がカチオン性の無機微粒子には、特開平8−34160号公報に記載されているような、第4級アンモニウム塩基を有するシランカップリング剤を無機微粒子の表面にカップリングさせて表面電荷をカチオン性に変換した無機微粒子も含まれる。
【0036】
本発明の無機微粒子としては、低屈折率で平均粒径の小さな微粒子が好ましく、例えば、シリカ、コロイダルシリカ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、ベーマイト水酸化アルミニウムまたはその水和物等の微粒子が挙げられるが、好ましくはシリカ微粒子である。
【0037】
なお、該微粒子が気相法により合成されたシリカ微粒子である場合には、その一次平均粒径が、6〜20nmであることが好ましい。
【0038】
シリカ微粒子の製造方法は乾式法(気相法)と湿式法に大別され、乾式法としてはハロゲン化珪素の高温での気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、及びケイ砂とコークスを電気炉でアークにより加熱還元気化しこれを空気酸化する方法(アーク法)が知られている。また湿式法としては珪酸塩の酸分解により活性シリカを生成した後、過度に重合させて凝集・沈殿させる方法が知られている。
【0039】
本発明においてはシリカ微粒子の中でも気相法により合成されたシリカが最も好ましい。
【0040】
気相法により合成された微粒子シリカは通常、四塩化珪素を水素及び酸素と共に高温で燃焼して得られる平均1次粒子径が5〜500nmのシリカ粉末であるが、本発明では特に30nm以下の平均1次粒子径を有するものが光沢性の点で好ましい。
【0041】
該気相法シリカとして現在市販されているものとしては日本アエロジル社の各種のアエロジルが該当する。
【0042】
本発明で好ましく用いられるコロイダルシリカは、珪酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、このコロイダルシリカをインクジェット記録用紙に使用することは、例えば、特開昭57−14091号公報、同60−219083号公報、同60−219084号公報、同61−20792号公報、同61−188183号公報、同63−17807号公報、特開平4−93284号公報、同5−278324号公報、同6−92011号公報、同6−183134号公報、同6−297830号公報、同7−81214号公報、同7−101142号公報、同7−179029号公報、同7−137431号公報、及び国際特許公開WO94/26530号公報などに記載されている。
【0043】
コロイダルシリカの好ましい平均粒子径は通常は5〜100nmであるが特に7〜30nmの平均粒子径が好ましい。
【0044】
気相法により合成されたシリカ及びコロイダルシリカは、その表面をカチオン変成されたものであってもよく、また、Al、Ca、Mg及びBa等で処理された物であってもよい。
【0045】
〔反応性官能基を有するポリマー〕
本発明で用いることのできる反応性官能基を有するポリマーとしては、後で述べる架橋剤と反応する官能基を持ったポリマーであれば特に制限されない。
【0046】
ここで反応性の官能基とは水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、イソシアネート基、有機ハロゲン基、エポキシ基、オキセタニル基、アルコキシド基、ビニル基、アルデヒド基等を上げることが出来るが、このなかで好ましくは水酸基またはカルボキシル基である。これらの官能基を有するポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(およびその塩)、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、糖類、ゼラチン等が挙げられる。その他としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等を主骨格として、上記反応性官能基を導入したポリマー、または反応性官能基を持つモノマーとの共重合ポリマーでもよい。
【0047】
この中でも好ましいのは、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸であり、特に好ましいのは工業的にも安価であり、反応制御しやすい水酸基を持つため、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0048】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0049】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0050】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0051】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0052】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0053】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0054】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0055】
本発明に係る反応性官能基を有するポリマーの分子量は、GPC測定によるスチレン換算値で、重量平均分子量として50,000以上、500,000以下が好ましい。より好ましくは、重量平均分子量100,000以上、250,000以下が良い。50,000以上であれば、架橋剤と反応し強度が高く水に膨潤し難い微細空隙層を形成しやすく、500,000以下であれば、微細空隙層の塗工液の粘度向上を抑えられる傾向にある点から好ましい。また、分子量の異なる2種以上を混合して用いてもよい。
【0056】
本発明の微細空隙層における反応性官能基を有するポリマーと無機酸化物粒子の比率は質量比で概ね1:10〜1:3が好ましい。反応性官能基を有するポリマーと無機酸化物粒子の比率が1:3以上であれば、微細空隙層が均一に形成することができ、ブリストー法による接触時間0.8秒の時の水の吸水量が5ml/m以上となり、所望の防曇性能が得られる。反応性官能基を有するポリマーと無機酸化物粒子の比率が1:10以下であれば、微細空隙層の強度を維持する観点から好ましい。
【0057】
〔架橋剤〕
本発明で用いることのできる硬化剤としては、ポリマーの反応性官能基と硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には反応性官能基を有するポリマーと反応し得る基を有する化合物あるいは反応性官能基を有するポリマーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、反応性官能基を有するポリマーの種類に応じて適宜選択して用いられる。本発明に適用可能な架橋剤においては、反応性官能基を有するポリマーがポリビニルアルコールの場合には、ホウ酸及びその塩やエポキシ系硬化剤が好ましい。
【0058】
硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(例えば、ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(例えば、2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(例えば、1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
【0059】
ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0060】
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
【0061】
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することが出来ないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化する事が出来る。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることが出来る利点がある。
【0062】
上記硬化剤の総使用量は、本発明に係る反応性官能基を有するポリマー1g当たり1〜600mgが好ましい。
【0063】
〔無機ポリマー〕
本発明に係る微細空隙層が、下記一般式(1)で表される無機ポリマーを含有することが好ましい。本発明では、バインダーとして下記一般式(1)で表される無機ポリマーを用いることにより、吸水性や耐久性が向上する観点から好ましい。
【0064】
一般式(1)
(M(O)(OR(OR(X)(Y)
上記一般式(1)において、iおよびjは各々0または1であり、kは2以上の整数であり、l、m、nは各々0〜2の整数であり、l+m+n=2である。Mはアルミニウム原子、ジルコニル原子またはハーフニウム原子を表す。RおよびRは各々アルキル基、アシル基または水素原子を表し、同一でも異なってもよい。XおよびYは、各々OH、ハロゲン原子、NO、SO、CO、RCOOまたはHOを表し、Rはアルキル基または水素原子を表す。
【0065】
更には、耐久性がより一層向上する観点から、上記一般式(1)で表される無機ポリマーが、下記一般式(2)または(3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0066】
【化2】

【0067】
上記一般式(2)及び一般式(3)において、bおよびcは各々0または1である。M、R、R、XおよびYは、各々一般式(1)におけるそれらと同義である。実線は共有結合を表し、破線は配位結合、イオン結合または共有結合を表す。
【0068】
本発明に係る無機ポリマーにおいては、一般式(2)、(3)において、X、Y、bおよびcが異なった複数種の繰り返し単位を有していてもよい。
【0069】
上記一般式(1)〜(3)において、Mはジルコニル原子またはアルミニウム原子であることが好ましい。
【0070】
前記一般式(2)において、Mはジルコニル原子であることが好ましく、Rは水素原子であることが好ましく、XはOHであることが好ましい。
【0071】
前記一般式(3)において、Mはアルミニウム原子であることが好ましく、RおよびRは各々水素原子であることが好ましく、XはHOであることが好ましい。
【0072】
前記一般式(1)〜(3)のジルコニル原子を含む無機ポリマーの具体例としては、例えば、二フッ化ジルコニル、三フッ化ジルコニル、四フッ化ジルコニル、ヘキサフルオロジルコニル酸塩(例えば、カリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニル酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩やアンモニウム塩)、オクタフルオロジルコニル酸塩(例えば、リチウム塩)、フッ化酸化ジルコニル、二塩化ジルコニル、三塩化ジルコニル、四塩化ジルコニル、ヘキサクロロジルコニル酸塩(例えば、ナトリウム塩やカリウム塩)、酸塩化ジルコニル(塩化ジルコニル)、二臭化ジルコニル、三臭化ジルコニル、四臭化ジルコニル、臭化酸化ジルコニル、三ヨウ化ジルコニル、四ヨウ化ジルコニル、過酸化ジルコニル、水酸化ジルコニル、硫化ジルコニル、硫酸ジルコニル、p−トルエンスルホン酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硫酸ジルコニルカリウム、セレン酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、リン酸ジルコニル、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニル、ジルコニルイソプロピレート、ジルコニルブチレート、ジルコニルアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニルブチレート、ステアリン酸ジルコニルブチレート、ジルコニルアセテート、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロジルコニル、トリス(アセチルアセトナト)クロロジルコニル等が挙げられる。
【0073】
これらの化合物の中でも、塩化ジルコニル、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硝酸ジルコニル、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、ステアリン酸ジルコニルが好ましく、更に好ましくは、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、塩化ジルコニルであり、特に好ましくは、炭酸ジルコニルアンモニウム、塩化ジルコニル、酢酸ジルコニルである。上記化合物の具体的商品名としては、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZA−20(酢酸ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZC−2(塩化ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZN(硝酸ジルコニル)等が挙げられる。
【0074】
上記ジルコニル原子を含む無機ポリマーの内の代表的な化合物の構造式を下記に示す。
【0075】
【化3】

【0076】
ただし、s、tは1以上の整数を表す。
【0077】
ジルコニル原子を含む無機ポリマーは、単独で用いても良いし、異なる2種類以上の化合物を併用してもよい。
【0078】
また、前記一般式(1)〜(3)のアルミニウム原子を含む無機ポリマーの具体例としては、フッ化アルミニウム、ヘキサフルオロアルミン酸(例えば、カリウム塩)、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム(例えば、ポリ塩化アルミニウム)、テトラクロロアルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、臭化アルミニウム、テトラブロモアルミン酸塩(例えば、カリウム塩)、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)、塩素酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸珪酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等を挙げることができる。
【0079】
これらの中でも、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硫酸珪酸アルミニウムが好ましく、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウムが最も好ましい。上記化合物の具体的商品名としては、多木化学製のタキバイン#1500等が挙げられる。
【0080】
下記に、タキバイン#1500の構造式を示す。
【0081】
【化4】

【0082】
ただし、s、t、uは1以上の整数を表す。
【0083】
前記無機ポリマーの添加量は、無機酸化物粒子100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、2〜50質量部が更に好ましい。
【0084】
〔その他の添加剤〕
本発明に係る微細空隙層には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることが出来る。
【0085】
例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0086】
〔微細空隙層の製造方法〕
本発明の防曇フィルムは、支持体上に微細空隙層を塗布、乾燥して形成する。
【0087】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0088】
複数の層を同時重層塗布する際の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0089】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0090】
なお、本発明における粘度は、例えば、東京計器社製のB型粘度計BLを用いて測定することができる。
【0091】
塗布および乾燥方法としては、塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0092】
《防曇フィルムの応用用途》
本発明の防曇フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の窓や自動車の窓、洗面所や浴室の鏡、冷凍ショーケースの窓ガラスなどに接着剤を介して貼り合せて、曇りを防止する目的で用いられる。本発明においては、特に、本発明の防曇フィルムをガラス基材表面に張り合わせて、防曇ガラスを構成することを特徴とする。
【0093】
本発明で用いられるガラス基材としては、高い光透過性を有していればそれ以外に特に制限はなく、その原料、製法、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、石英ガラス、ソーダライムガラス、ケイ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、フツリン酸塩ガラス等を用いることができる。
【0094】
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
【0095】
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系及びエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
【0096】
なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0098】
実施例1
《防曇フィルムの作製》
〔試料1の作製〕
無機酸化物粒子として、平均粒径7nmのシリカ粒子(日本アエロジル社製)13.5gを、ホウ酸を2.4%と四ホウ酸ナトリウム(硼砂)を1.9%含有する架橋剤水溶液100mlに添加して高速ホモジナイザーで分散して、シリカ分散液を調製した。次いで、シリカ分散液を高速ホモジナイザーで分散しているところに、重量平均分子量20万のポリビニルアルコールの5%水溶液45mlを徐々に添加して、塗布液1を調製した。
【0099】
次いで、上記調製した塗布液1を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、湿潤膜厚200μmで塗布し、5℃で15秒間冷却した後、40℃で乾燥し、試料1を作製した。
【0100】
〔試料2の作製〕
上記試料1の作製において、塗布液1の調製に用いた架橋剤水溶液に、無機ポリマーとして、多木化学製タキバイン#1500(前記例示化合物−6)を1.8g添加し、重量平均分子量4.5万のポリビニルアルコールを用いた以外は同様にして、試料2を作製した。
【0101】
〔試料3〜6の作製〕
上記試料2の作製において、ポリビニルアルコールの重量平均分子量を、表1に記載のように変更した以外は同様にして、試料3〜6を作製した。
【0102】
〔試料7〜10の作製〕
上記試料5の作製において、シリカ粒子の添加量を、表1に記載されている無機粒子とポリマーの比率(F/B)となるように適宜調整した以外は同様にして、試料7〜10を作製した。
【0103】
〔試料11、12の作製〕
前記試料5の作製において、反応性官能基を有するポリマーとして、ポリビニルアルコール(重量平均分子量20万)を、表1に記載の各ポリマーに変更し、架橋剤としてデナコールEX−313(ナガセケムテック社製)を用い、その添加量を4.3%に変更した以外は同様にして、試料11、12を作製した。
【0104】
〔試料13、14の作製〕
前記試料5の作製において、無機酸化物粒子として、シリカ粒子(日本アエロジル社製)に代えて、それぞれアルミナ粒子Alu−C(日本アエロジル製)、ジルコニア粒子ナノユースZR30−AR(日産化学社製)を用いた以外は同様にして、試料13、14を作製した。
【0105】
〔試料15、16の作製〕
前記試料5の作製において、架橋剤を、ホウ酸と四ホウ酸ナトリウム(硼砂)に代えて、それぞれデナコールEX−313(ナガセケムテック社製)、タケネートWD720(三井化学社製)を用いた以外は同様にして、試料15、16を作製した。
【0106】
〔試料17、18の作製〕
前記試料5の作製において、無機ポリマーとして、タキバイン#1500に代えて、それぞれジルコゾールZC−2(第一稀元素化学工業製、例示化合物−5)、HAS−1(コルコート製、テトラエトキシシランの部分縮合物の部分加水分解物であり一般式(1)〜(3)に該当しない化合物)を用いた以外は同様にして、試料17、18を作製した。
【0107】
〔試料19の作製〕
前記試料5の作製において、架橋剤を添加しなかった以外は同様にして、試料19を作製した。
【0108】
〔試料20の作製〕
前記試料5の作製において、シリカの添加量を変化させて、無機酸化物粒子とポリマーの比率(F/B)が2.5:1になるように変更した以外は同様にして、試料20を作製した。
【0109】
〔試料21の作製〕
重量平均分子量が4000のポリエチレングリコール(PEG4000)を5%含有するイソプロピルアルコールと純水のモル比が10:50の水溶液に、アルミナゾル−10A(川研ファインケミカル社製)、リン酸トリエチル、ケイ酸エチルをモル比で0.5:0.5:1になるように添加して、塗布液21を調製した。
【0110】
次いで、上記調製した塗布液21を、厚さ2mmのガラス板上に塗布したのち、150℃で30分乾燥した。次いで、エチルアルコールと純水1:1の混合物に5分間浸漬し、40℃で乾燥した後、690℃で4分間加熱処理して、試料21を作製した。
【0111】
〔試料22の作製〕
70%のメタノール水溶液100gに、40gのHN(CHHN(CHSi(OCHを20分間かけて、攪拌しながら添加した。次いで、オイルバス中で、60℃で1時間保持した後、放冷して、約140gのポリオルガノシロキサン溶液(濃度約21質量%)を調製した。
【0112】
56gのイソプロピルアルコールに、上記調製したポリオルガノシロキサン溶液の4gを攪拌しながら添加した後、スノーテックスCM(日産化学工業製、コロイダルシリカ)の20gを加え、2時間攪拌して、塗布液22を調製した。
【0113】
調製した塗布液22を、厚さ2mmのガラス基板上に、引き上げ速度40mm/分でディップコーティングした後、120℃で1時間熱処理して、試料22を作製した。
【0114】
〔試料23の作製〕
前記試料22の作製において、ガラス基板を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに変更し、塗布後の熱処理温度を80℃に変更した以外は同様にして、試料23を作製した。
【0115】
【表1】

【0116】
《防曇フィルムの評価》
下記の方法に従って、上記作製した防曇フィルムの特性値測定及び性能評価を行った。
【0117】
〔防曇フィルムの吸水量測定〕
J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87紙又は板紙の液体吸収性試験方法(ブリストウ法)に準じたブリストー試験機(東洋精機製)を用いて、接触時間0.8秒の時の純水の吸水量(ml/m)を測定した。
【0118】
〔防曇性能1の評価〕
20℃、相対湿度50%の環境下で1時間放置した各防曇フィルムを、40℃の温水浴上に翳し、曇りが認められるまでの時間(防曇時間、分)を測定した。
【0119】
上記評価における防曇性能1としては、実用上は0.3分以上の防曇時間が必要であり、1分以上であることが更に好ましく、2分以上がより好ましい。
【0120】
〔防曇維持性の評価〕
−20℃の環境下で10分間放置した後、25℃、50%RHの環境下で10分間放置するサイクルを1サイクルとし、これを10サイクル繰り返したあとの膜表面の状態を目視観察し、下記の基準に従って防曇持続性を評価した。
【0121】
◎:防曇フィルムの膜状態に変化なく、曇りも観察されない
○:防曇フィルムの膜状態に変化はないが、わずかに曇りが観察される
△:防曇フィルムの膜がやや浮き上がった状態で、曇りも観察される
×:防曇フィルムの膜はがれが生じている
〔柔軟性の評価〕
上記作製した各防曇フィルムについて、JIS K5600−5−1に準拠した屈曲試験法に基づき、屈曲試験機タイプ1(井元製作所社製、型式IMC−AOF2、マンドレル径φ20mm)を用いて、30回の屈曲試験を行った。
【0122】
〈折り曲げ処理後の防曇性能2の評価〉
30回の屈曲試験を行った後の防曇フィルムについて、上記防曇性能1と同様の方法で、曇りが認められるまでの防曇時間を測定し、これを防曇性能2とした。防曇性能が屈曲試験の前後で差異が少ない方ほど、柔軟性が高いことを表す。
【0123】
〈防曇フィルム表面の観察〉
30回の屈曲試験を行った後の防曇フィルム表面を、目視観察し、下記の基準に従って柔軟性を評価した。
【0124】
◎:防曇フィルム表面に、折り曲げ跡やひび割れは観察されない
○:防曇フィルム表面に、わずかに折り曲げ跡が観察される
△:防曇フィルム表面に、微小なひび割れがわずかに観察される
×:防曇フィルム表面に、明らかなひび割れが多数発生している
以上により得られた測定結果、評価結果を、表2に示す。
【0125】
【表2】

【0126】
表2に記載の結果より明らかなように、本発明の防曇フィルムは、防曇性能、防曇持続性能とも良好であり、高温で処理することなく、膜の柔軟性が高いため、繰り返し試験でも膜はがれが生じることもなく、さらに屈曲試験後の防曇性能も変化ないことが分かる。
【0127】
実施例2
《防曇ガラスの作製》
実施例1で作製した防曇フィルム1〜23を、トップ面を研磨してから中性洗剤、水、アルコールで洗浄した3.5mmのフロートガラス(クリア)基板上に、粘着剤としてはアクリル系粘着剤とイソシアネート系硬化剤を用いて密着させて、防曇ガラス1〜23を作製した。
【0128】
《防曇ガラスの評価》
上記作製した各防曇ガラスについて、防曇フィルムの貼り付けの容易性及び貼り付け面の均一性と、実施例1に記載の方法と同様にして、防曇ガラスとしての防曇性能、防曇持続性能を評価した結果、本発明の防曇ガラスは、比較例に対し、貼り付けが容易で、貼り付け時のフィルム面の均一性が高く、かつ防曇性能、防曇持続性能に優れていることを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂フィルム上に、無機酸化物粒子と、反応性官能基を有するポリマーと、該反応性官能基と反応する架橋剤とを含有する微細空隙層を有する防曇フィルムにおいて、該微細空隙層は、ブリストー法による接触時間が0.8秒における吸水量が5ml/m以上、50ml/m以下であることを特徴とする防曇フィルム。
【請求項2】
前記反応性官能基を有するポリマーの重量平均分子量が、5万以上、50万以下であることを特徴とする請求項1に記載の防曇フィルム。
【請求項3】
前記微細空隙層が、下記一般式(1)で表される無機ポリマーを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の防曇フィルム。
一般式(1)
(M(O)(OR(OR(X)(Y)
〔式中、iおよびjは各々0または1であり、kは2以上の整数であり、l、m、nは各々0〜2の整数であり、l+m+n=2である。Mはアルミニウム原子、ジルコニル原子またはハーフニウム原子を表す。RおよびRは各々アルキル基、アシル基または水素原子を表し、同一でも異なってもよい。XおよびYは、各々OH、ハロゲン原子、NO、SO、CO、RCOOまたはHOを表し、Rはアルキル基または水素原子を表す。〕
【請求項4】
前記一般式(1)で表される無機ポリマーが、下記一般式(2)または(3)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項3に記載の防曇フィルム。
【化1】

〔式中、bおよびcは各々0または1である。M、R、R、XおよびYは、各々一般式(1)におけるそれらと同義である。実線は共有結合を表し、破線は配位結合、イオン結合または共有結合を表す。〕
【請求項5】
ガラス基材表面に、請求項1から4のいずれか1項に記載の防曇フィルムを張り合わせたことを特徴とする防曇ガラス。

【公開番号】特開2012−86506(P2012−86506A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237115(P2010−237115)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】