説明

防曇性表面処理剤及び防曇性樹脂シート

【課題】防曇性に優れる防曇処理剤及び防曇性樹脂シートを得る。
【解決手段】防曇性表面処理剤は、(A)C8−30脂肪酸アルカノールアミドなどの脂肪酸アミドと、(B)ビニルピロリドン系重合体などの水溶性高分子とで構成されたベース組成物100重量部に対して、(C)ショ糖脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤0.1〜400重量部及び/又は(D)アルカンスルホン酸塩などのアニオン性界面活性剤0.1〜200重量部とを含む。表面処理剤をスチレン系樹脂シートの少なくとも一方の面に塗布することにより、深絞り容器成形に適した防曇性樹脂シートを製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートなどの表面に防曇性を付与するのに有用な防曇性表面処理剤(防曇処理剤)、この防曇処理剤で樹脂シートが処理された防曇性樹脂シートとその製造方法、並びに防曇性が付与された容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品などの包装容器に利用されているスチレン系樹脂シートなどの疎水性合成樹脂シートは防曇性が低い。このような樹脂シートで形成された容器に食品などを収容すると、気温、湿度の変化により水蒸気が容器の表面に微小水滴として付着し、曇りが生じ、透明性を低下させる。そのため、内容物の視認性が低下する。
【0003】
そこで、脂肪酸エステル類などを用いて樹脂シートに防曇性を付与する方法が提案されている。例えば、特公昭63−62538号公報(特許文献1)には、ショ糖脂肪酸エステル、重合度800以下の無変性ポリビニルアルコール、およびシリコーンエマルジョンを特定の割合で含む水溶液を、スチレン系樹脂フィルムに塗布する方法が開示されている。特開平10−309785号公報(特許文献2)には、片面がショ糖脂肪酸エステルとメチルセルロースとの混合物で被覆されているとともに、さらにこの被覆層がシリコーンオイルで被覆され、他方の面がシリコーンオイルで被覆されているスチレン系樹脂シートが開示されている。特許第3241797号明細書(特許文献3)には、ショ糖脂肪酸エステルと、シリコーンエマルジョンと、多糖類及び/又は親水性高分子(ポリビニルアルコールを除く)とを含む表面処理剤を、ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に塗布することが開示されている。特開2003−201355号公報(特許文献4)には、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの多価アルコール型非イオン性界面活性剤とポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤との混合物で表面が被覆された防曇性樹脂シートが開示されている。また、特開2004−238614号公報(特許文献5)には、多価アルコール脂肪酸エステルと、ポリビニルアルコールを除く非エーテル系親水性高分子と、少なくともオキシエチレン単位を有するエーテル系親水性高分子と、シリコーンオイルとで構成された表面処理剤で被覆した防曇シートが開示されている。
【0004】
しかし、これらの従来の防曇性シートでは、防曇性が不十分である。すなわち、前記防曇性シートは、例えば、容器内に高温の内容物を収容したとき、内容物から発生する水蒸気に対する防曇性(高温防曇性)、特に、容器内に水分を含む内容物(食品など)を収容して低温で保存するとき、水蒸気又は結露に対する防曇性(低温防曇性)が低い。さらに、シートの巻き取りや容器成形により防曇性が大きく低下する。すなわち、容器成形に供される樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)は、例えば、樹脂を溶融混練し、シート状に押出成形し、生成したシートを二軸延伸した後、防曇剤を塗布し、乾燥してロール状に巻き取られる。そして、容器成形においては、ロールから樹脂シートを繰り出して熱成形により容器を成形している。しかし、前記樹脂シートの巻き取りに伴って、防曇剤が樹脂シートの非防曇処理面と接触して転移(転写・移行)して裏移りし、防曇性が低下するとともに、シートの白化により外観を低下させる。特にロール状に巻き取られたシートの巻き芯部には大きな圧力が作用するため、巻き芯部のシートでは前記性能の低下が顕著にみられる。さらに、容器成形過程においても、熱板などの加熱体との接触により防曇剤が転移するためか、樹脂シートや容器の防曇性や耐ブロッキング性が大きく低下し、防曇剤によって成形機が汚染される。また、通常、深絞り成形により容器成形すると、防曇性が大きく低下する。そのため、防曇剤を多量に塗布する必要があるが、防曇剤の塗布量を多くすると、前述の防曇剤の転移による裏移りや成形機の汚染が生じる。さらに、前記防曇性シートの離型性を高めるためには、比較的多くのシリコーンオイルを必要とする。
【0005】
特開2001−171052号公報(特許文献6)には、脂肪酸アミドとポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体とを特定の割合で含む帯電防止剤を少なくとも一方の面に塗布量2〜30mg/mで塗布したスチレン系樹脂シートが開示されている。この文献には、帯電防止剤にさらにシリコーンオイルを含有させ、シリコーンオイルの被覆量を1〜25mg/mとすることも記載されている。特開2002−12686号公報(特許文献7)には、脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、シリコーンオイル及び水溶性青色着色剤で構成されたコーティング組成物を、少なくとも一方の面に特定の量的関係で塗布した樹脂シートが開示され、前記脂肪酸アミド及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体が帯電防止組成物を構成している。
【0006】
しかし、これらの文献には、防曇性に関する記載はない。また、上記シートでは、帯電防止性はある程度改善されているものの、脂肪酸アミドの割合が多いため、透明性が低下する。また、シートの離型性を高めるためには、比較的多量のシリコーンオイルを必要とする。さらに、樹脂シートの面に前記帯電防止剤(又はコーティング剤)を塗布し、乾燥し、ロールを利用して巻き取ると、塗布成分の一部が付着又は堆積してロール(金属ロールなど)が汚染され、防曇性が低下する。また、付着物又は堆積物がシートに再転写し、シートの外観も損なわれる。
【0007】
特開2000−178370号公報(特許文献8)には、陰イオン界面活性剤10〜90重量%と親水性高分子90〜10重量%とを含有する防曇剤であって、防曇剤中の陰イオン界面活性剤の30重量%以上が硫酸エステル塩である防曇剤でスチレン系透明樹脂シートを表面処理し、防曇性シートを得ることが開示されている。この文献には、親水性高分子として、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが例示されている。特開2003−26833号公報(特許文献9)及び特開2005−356572号公報(特許文献10)には、ショ糖脂肪酸エステル76〜99.9質量%と未反応ビニルピロリドンの量が1000ppm以下のポリビニルピロリドン系(共)重合体0.1〜24質量%とを含む防曇剤でゴム変性スチレン系樹脂シート又はスチレン系透明樹脂シートを表面処理し、防曇性シートを得ることが開示されている。
【0008】
しかし、これらの防曇剤を塗布した樹脂シートを容器成形(特に深絞り成形)すると、防曇性が大きく低下する。特に、塗布量を低減すると、容器成形(特に深絞り成形)により防曇性が著しく低下し、高い防曇性を発現させることが困難である。
【特許文献1】特公昭63−62538号公報
【特許文献2】特開平10−309785号公報
【特許文献3】特許第3241797号明細書
【特許文献4】特開2003−201355号公報(請求項1及び段落番号[0005])
【特許文献5】特開2004−238614号公報(請求項1及び段落番号[0001])
【特許文献6】特開2001−171052号公報
【特許文献7】特開2002−12686号公報
【特許文献8】特開2000−178370号公報(特許請求の範囲)
【特許文献9】特開2003−26833号公報(特許請求の範囲)
【特許文献10】特開2005−356572号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、高温防曇性及び低温防曇性を含め、高い防曇性を発揮する防曇性表面処理剤(又は防曇性組成物)、及びその用途(防曇性樹脂シート及びその製造方法、並びに前記防曇性樹脂シートを用いた容器など)を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、塗布量が少なくても極めて高い防曇性が得られ、容器成形(特に深絞り成形など)に供しても高い防曇性を維持できる防曇性表面処理剤(又は防曇性組成物)、及びその用途を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、樹脂シートに塗布乾燥して巻き取ってもロール(特に金属ロール)を汚染することがなく、高品質の外観を維持できる防曇性表面処理剤及びその用途を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、樹脂シートに塗布し、ロール状に巻き取っても、巻き芯部においても裏移りすることがなく、高い防曇性及び高品質の外観を維持できる防曇性表面処理剤及びその用途を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、巻き取りや熱成形に供しても高い防曇性を維持できるとともに、高い離型性(又は耐ブロッキング性)が得られる防曇性表面処理剤及びその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、脂肪酸アミドと、水溶性高分子(ポリビニルピロリドン系重合体など)と、非イオン性界面活性剤(ショ糖脂肪酸エステルなど)及び/又はアニオン性界面活性剤(スルホン酸塩など)とを組み合わせると、塗布量が少なくても極めて高い防曇性が得られ、容器成形(特に深絞り成形など)に供しても高い防曇性を維持できること、樹脂シートに塗布乾燥して巻き取ってもロール(特に金属ロール)を汚染することがなく、ロール状に巻き取った巻き芯部においても裏移りすることがないことを見いだし、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の防曇性表面処理剤(防曇処理剤)は、(A)脂肪酸アミドと、(B)水溶性高分子と、(C)非イオン性界面活性剤及び/又は(D)アニオン性界面活性剤とを含む。前記(A)脂肪酸アミドは、(A-1)C8−30脂肪酸アミド又はそのC2−4アルキレンオキサイド付加体、および(A-2)C8−30脂肪酸モノ又はジアルカノールアミド又はそのC2−4アルキレンオキサイド付加体から選択された少なくとも一種であってもよい。また、(B)水溶性高分子は、60℃以上の融点、軟化点又はガラス転移温度を有していてもよい。(B)水溶性高分子には、ビニルピロリドン系重合体、ビニルアルコール系重合体、セルロースエーテル類、アルキレンエーテル系重合体、アルギン酸又はその塩などが含まれ、これらの水溶性高分子の少なくとも一種を使用してもよい。(C)非イオン性界面活性剤は、50℃以上の融点、軟化点又はガラス転移温度を有していてもよい。(C)非イオン性界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルから選択された少なくとも一種で構成してもよい。(D)アニオン性界面活性剤は、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、カルボン酸塩、リン酸塩又はリン酸エステル塩などであってもよく、これらのアニオン性界面活性剤の少なくとも一種を使用してもよい。さらに、(D)アニオン性界面活性剤は、アルカンスルホン酸塩及びアルキル硫酸エステル塩から選択された少なくとも一種で構成してもよい。
【0016】
さらに、表面処理剤(防曇剤又は防曇性組成物)は、(A-1)C8−26脂肪酸アミド又はそのエチレンオキサイド付加体、及び(A-2)C8−26脂肪酸モノ又はジアルカノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加体から選択された少なくとも一種で構成された(A)脂肪酸アミドと、ビニルピロリドン系重合体で構成された(B)水溶性高分子と、(C)非イオン性界面活性剤及び(D)アニオン性界面活性剤のうち少なくとも(C)非イオン性界面活性剤とを含み、(C)非イオン性界面活性剤が少なくともショ糖脂肪酸エステルで構成されていてもよい。
【0017】
各成分の割合は、例えば、(A)脂肪酸アミドと(B)水溶性高分子とを前者/後者=1/99〜99/1(重量比)の割合で含むベース組成物100重量部に対して、(C)非イオン性界面活性剤0.1〜400重量部及び/又は(D)アニオン性界面活性剤0.1〜200重量部程度であってもよい。
【0018】
より具体的には、表面処理剤(防曇剤又は防曇性組成物)は、(A)脂肪酸アミドが(A-2)C8−20脂肪酸モノ又はジアルカノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加体から選択された少なくとも一種で構成され、(B)水溶性高分子が、ビニルピロリドン系重合体、ビニルアルコール系重合体、セルロースエーテル類から選択された少なくとも一種で構成され、かつ62℃以上の融点、軟化点又はガラス転移温度を有しており、(C)非イオン性界面活性剤が53℃以上の融点、軟化点又はガラス転移温度を有するショ糖脂肪酸エステルで構成され、(D)アニオン性界面活性剤が、アルカンスルホン酸塩及びアルキル硫酸エステル塩から選択された少なくとも一種で構成され、(A)脂肪酸アミドと(B)水溶性高分子とを前者/後者=10/90〜90/10(重量比)の割合で含むベース組成物100重量部に対して、(C)非イオン性界面活性剤1〜380重量部及び/又は(D)アニオン性界面活性剤1〜150重量部を含んでいてもよい。
【0019】
本発明の表面処理剤(防曇剤又は防曇性組成物)は、樹脂シートの少なくとも一方の面に前記表面処理剤で構成された防曇層が形成された防曇性樹脂シートを形成するのに有用である。防曇性樹脂シートにおいて、樹脂シートがコロナ放電処理され、コロナ放電処理面に防曇層が形成されていてもよい。また、樹脂シートの一方の面に防曇層が形成され、他方の面に離型層が形成されていてもよい。さらに、樹脂シートはスチレン系樹脂シートであってもよい。
【0020】
このような防曇性樹脂シートは、樹脂シートの少なくとも一方の面に、前記表面処理剤を塗布することにより製造できる。この製造方法において、樹脂シートに表面処理剤を塗布した後、ロール状に巻き取ってもよい。
【0021】
本発明は、樹脂製容器の少なくとも一部の表面に前記表面処理剤で構成された防曇層が形成されている容器、前記防曇性樹脂シートで形成された容器、樹脂シートの少なくとも一方の面に前記表面処理剤が塗布量5〜50mg/mで塗布され、かつ容器成形(例えば、深絞り成形)されている防曇性容器も包含する。
【0022】
本明細書において「シート」とは、二次元的な構造物、例えば、フィルム、プレートなどを含む意味に用いる。また、「融点、軟化点又はガラス転移温度」を単に「融点」と総称する場合がある。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、(A)脂肪酸アミドと(B)水溶性高分子と(C)非イオン性界面活性剤及び/又は(D)アニオン性界面活性剤とを組み合わせているため、高温防曇性及び低温防曇性を含め、高い防曇性を発揮する防曇性が得られる。特に、塗布量が少なくても極めて高い防曇性が得られ、容器成形(特に深絞り成形など)に供しても高い防曇性を維持できる。さらに、樹脂シートに塗布乾燥して巻き取ってもロール(特に金属ロール)を汚染することがなく、高品質の外観を維持できる。さらには、樹脂シートに塗布し、ロール状に巻き取っても、巻き芯部においても裏移りすることがなく、高い防曇性及び高品質の外観を維持できる。また、巻き取りや熱成形に供しても高い防曇性を維持できるとともに、高い離型性(又は耐ブロッキング性)が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[表面処理剤]
本発明の防曇性表面処理剤(防曇剤又は防曇性組成物)は、(A)脂肪酸アミドと(B)水溶性高分子と(C)非イオン性界面活性剤及び/又は(D)アニオン性界面活性剤とで構成されている。
【0025】
(A)脂肪酸アミド
脂肪酸アミド(A)は、アミン類(アミン又はアンモニア)の水素原子を脂肪酸(脂肪族カルボン酸)に対応する酸基で置換した化合物であり、脂肪酸とアミン類とのアミドとして表すことができる。脂肪酸アミド(A)には、脂肪酸アミドのアルキレンオキサイド付加体(例えば、エチレンオキサイド付加体、プロピレンオキサイド付加体などのC2−4アルキレンオキサイド付加体)も含まれる。脂肪酸アミド(アルキレンオキサイド付加体を含む)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0026】
脂肪酸アミドを構成する脂肪酸は、モノカルボン酸及び多価カルボン酸のいずれであってもよいがモノカルボン酸である場合が多い。また、脂肪酸は、飽和又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。脂肪酸は、C6−40脂肪酸、好ましくはC8−30脂肪酸(例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、エルカ酸などの不飽和脂肪酸などのC8−26脂肪酸)、さらに好ましくはC10−22脂肪酸(例えば、C10−20脂肪酸)、特にC10−18脂肪酸(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸)などであってもよい。脂肪酸は単一の脂肪酸に限らず複数の脂肪酸の混合物(例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸などの混合物(ヤシ油脂肪酸など)など)であってもよい。すなわち、脂肪酸アミドは混合脂肪酸アミドであってもよい。
【0027】
脂肪酸アミドを構成する前記アミンは、アンモニア、第1級アミン(又はN−モノ置換アミン)又は第2級アミン(又はN,N−二置換アミン)であってもよく、モノアミン又はポリアミンであってもよい。前記第1級アミン及び第2級アミンは、脂環式アミンや芳香族アミンであってもよいが、脂肪族アミンである場合が多い。前記脂肪族第1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどのモノアルキルアミン類(モノC1−6アルキルアミン類など)、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、ブタノールアミンなどのモノアルカノールアミン類(C1−6アルカノールアミン類、特にC2−4アルカノールアミン類)、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ブチレンジアミンなどのアルキレンジアミン類(C2−6アルキレンジアミン類など)などが例示できる。脂肪族第2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどのジアルキルアミン類(ジC1−6アルキルアミン類など)、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどのジアルカノールアミン類(ジC1−6アルカノールアミン類、特にジC2−4アルカノールアミン類)、メチルエタノールアミン、エチルエタノールアミンなどのアルキルアルカノールアミン類(C1−6アルキルC1−6アルカノールアミン類、特にC1−4アルキルC2−4アルカノールアミン類)などが例示できる。なお、脂肪酸アミドは、モノアミド及びポリアミドのいずれであってもよい。
【0028】
脂肪酸アミドの具体例としては、飽和又は不飽和脂肪酸アミド、例えば、アルカンカルボン酸アミド(カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、モンタン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミドなどのC8−30アルカンカルボン酸アミドなど)、アルケンカルボン酸アミド(オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどのC8−30アルケンカルボン酸アミドなど)、N−置換C8−30脂肪酸アミド[N−置換飽和又は不飽和脂肪酸アミド、例えば、N−アルキル−アルカンカルボン酸アミド(例えば、N−メチルラウリン酸アミド、N−メチルパルミチン酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N,N−ジメチルステアリン酸アミドなどのN−C1−26アルキル−C8−30アルカンカルボン酸アミド(好ましくはN−C1−20アルキル−C8−30アルカンカルボン酸アミド)など)、N−アルキル−アルケンカルボン酸アミド(例えば、N−メチルオレイン酸アミドなどのN−C1−26アルキル−C8−30アルケンカルボン酸アミド(好ましくはN−C1−20アルキル−C8−30アルケンカルボン酸アミドなど);N−アルケニル−アルカンカルボン酸アミド(N−オレイルパルミチン酸アミドなどのN−C2−26アルケニル−C8−30アルカンカルボン酸アミド(好ましくはN−C2−20アルケニル−C8−30アルカンカルボン酸アミド);N−アルケニル−アルケンカルボン酸アミド(N−オレイルオレイン酸アミドなどのN−C2−26アルケニル−C8−30アルケンカルボン酸アミド(好ましくはN−C2−20アルケニル−C8−30アルケンカルボン酸アミド);モノ又はジアルカノールアミンとアルカンカルボン酸とのアミド(N−メチロールラウリン酸アミド、カプリン酸エタノールアミド、ラウリン酸エタノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、ミリスチン酸エタノールアミド、ヤシ油脂肪酸エタノールアミドなどのN−(ヒドロキシC1−4アルキル)−C8−30アルカンカルボン酸アミド(好ましくはN−(ヒドロキシC2−3アルキル)−C8−30アルカンカルボン酸アミド;カプリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドなどのジC1−4アルカノールアミン(好ましくはジC2−3アルカノールアミン)とC8−30アルカンカルボン酸とのアミド);モノ又はジアルカノールアミンとアルケンカルボン酸とのアミド(オレイン酸エタノールアミドなどのN−(ヒドロキシC1−4アルキル)−C8−30アルケンカルボン酸アミド;オレイン酸ジエタノールアミドなどのジC1−4アルカノールアミン(好ましくはジC2−3アルカノールアミン)とC8−30アルケンカルボン酸とのアミド);N−アミノアルキル−アルカンカルボン酸アミド(N−(アミノメチル)−ラウリン酸アミド、N−(アミノエチル)−ラウリン酸アミドなどのN−(アミノC1−26アルキル)−C8−30アルカンカルボン酸アミド(好ましくはN−(アミノC1−20アルキル)−C8−30アルカンカルボン酸アミド)など);N−アミノアルキル−アルケンカルボン酸アミド(N−(アミノエチル)−オレイン酸アミドなどのN−(アミノC1−26アルキル)−C8−30アルケンカルボン酸アミド(N−(アミノC1−20アルキル)−C8−30アルケンカルボン酸アミドなど)など]、アルキレンビスアミド[N,N’−メチレンビス(ラウリン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(ラウリン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(ミリスチン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(ステアリン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(オレイン酸アミド)などのN,N’−C2−6アルキレン(又はアルキリデン)ビス(C8−30アルカンカルボン酸アミド)など]などが挙げられる。
【0029】
脂肪酸アミドのアルキレンオキサイド付加体は、ポリアルキレンオキサイド単位(ポリC2−4アルキレンオキサイド単位など)を有していればよく、脂肪酸アミドにアルキレンオキサイドが付加した化合物だけでなく、脂肪酸アミドとポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレンなどのポリオキシC2−4アルキレン)との縮合物も含む。このようなアルキレンオキサイド付加体(ポリオキシアルキレン脂肪酸アミドなど)としては、前記脂肪酸アミドのアルキレンオキサイド付加体、例えば、ポリオキシエチレンカプリン酸アミド、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシプロピレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンミリスチン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミドなどのポリオキシC2−4アルキレンC8−30アルカンカルボン酸アミド;ポリオキシエチレンカプリン酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリン酸エタノールアミド、ポリオキシプロピレンラウリン酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリン酸イソプロパノールアミド、ポリオキシエチレンミリスチン酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンオレイン酸エタノールアミドなどのポリオキシC2−4アルキレンN−(ヒドロキシC1−4アルキル)−C8−30アルカンカルボン酸アミド;ポリオキシエチレンラウリン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエタノールアミドなどのジC1−4アルカノールアミンとC8−30アルカンカルボン酸とのアミドのC2−4アルキレンオキサイド付加体などが例示できる。
【0030】
上記アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドの付加モル数(又は平均付加モル数)は、特に制限されず、脂肪酸アミド1モルに対して、例えば、1〜50モル、好ましくは2〜30モル、さらに好ましくは2〜20モル(例えば、2〜10モル)程度であってもよい。
【0031】
好ましい脂肪酸アミドは、C8−30脂肪酸(例えば、C8−26脂肪酸など)のアミド又はそのC2−4アルキレンオキサイド付加体、例えば、(A)脂肪酸アミドは、(A-1)C8−30脂肪酸(例えば、C8−26脂肪酸)のアミド又はそのC2−4アルキレンオキサイド付加体、(A-2)C8−30脂肪酸(例えば、C8−26脂肪酸)のモノ又はジアルカノールアミド又はそのC2−4アルキレンオキサイド付加体である。特に好ましい脂肪酸アミドは、(A-2)C8−20脂肪酸のモノ又はジアルカノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加体である。このような脂肪酸アミドとしては、例えば、C8−30脂肪酸(例えば、C8−26脂肪酸)とアルカノールアミン類[例えば、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンなどのC1−4アルカノールアミン類(特に、モノ又はジC2−3アルカノールアミン類)など]との脂肪酸アミド[例えば、N−(ヒドロキシC1−4アルキル)−C8−26脂肪酸アミド(特に、N−(ヒドロキシC2−3アルキル)−C8−26脂肪酸アミド)、ジC1−4アルカノールアミンとC8−26脂肪酸とのアミド(すなわち、N,N−ジ(ヒドロキシC1−4アルキル)−C8−26脂肪酸アミド(特に、N,N−ジ(ヒドロキシC2−3アルキル)−C8−26脂肪酸アミド))など]、又はそのC2−4アルキレンオキサイド付加体(エチレンオキサイド付加体などのC2−3アルキレンオキサイド付加体など)などが挙げられる。脂肪酸アミドのうち、特に、C8−20飽和脂肪酸(カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ヤシ油脂肪酸などのC10−16飽和脂肪酸など)とモノ又はジC1−4アルカノールアミンとの脂肪酸アミド、もしくはそのエチレンオキサイド付加体が好ましい。
【0032】
脂肪酸アミドは、室温(15〜25℃)で液状であってもよく、室温で固体、例えば、40℃程度以下の「融点」を有していてもよい。
【0033】
なお、脂肪酸とアミン類(アンモニアも含む)とのモル比は、脂肪酸のカルボキシル基の個数及びアミン類の活性水素原子の個数などに応じて、適宜選択でき、例えば、脂肪酸/アミン類=1/5〜5/1、好ましくは1/3〜3/1、さらに好ましくは1/2〜2/1程度であってもよい。例えば、脂肪酸とジアルカノールアミンとのアミド(及びそのアルキレンオキサイド付加体)には、脂肪酸と、モノアルカノールアミン又はジアルカノールアミンとを、前者/後者(モル比)=1/2の割合で用いた1:2型アミド(又はそのアルキレンオキサイド付加体)、及び前者/後者(モル比)=1/1の割合で用いた1:1型アミド(又はそのアルキレンオキサイド付加体)などが含まれ、いずれの型のアミドも本発明における脂肪酸アミドとして利用できる。
【0034】
(B)水溶性高分子
水溶性高分子には、親水性基又はユニット(カルボキシル基又はその塩、スルホン酸基又はその塩、ヒドロキシル基、アミド基、塩基性窒素原子含有基、ビニルエーテルユニット、オキシエチレンユニットなど)を有するポリマー、セルロース誘導体、天然高分子多糖類(アルギン酸類など)などが含まれる。水溶性高分子は、水溶性、水分散性及び水膨潤性高分子のいずれであってもよい。
【0035】
水溶性高分子としては、例えば、カルボキシル基又はその塩を有する重合体[例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有する単量体の単独又は共重合体((メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、カルボン酸ビニルエステル(酢酸ビニルなど)などの他の共重合性単量体との共重合体も含む)、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸−ビニルスルホン酸共重合体、(メタ)アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体などの(メタ)アクリル酸系重合体)又はその塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩など)など]、スルホン酸基又はその塩を有する重合体[例えば、エチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体の単独又は共重合体(前記他の共重合性単量体との共重合体も含む)又はその塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩など)など]、ヒドロキシル基含有重合体[例えば、ヒドロキシル基含有単量体(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート、これらに対応するヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど)の単独又は共重合体(前記他の共重合性単量体との共重合体も含む)、ビニルアルコール系重合体など]、アミド基含有重合体[例えば、(メタ)アクリルアミドなどのアミド基を有する単量体の単独又は共重合体(前記他の共重合性単量体との共重合体も含む)など]、塩基性窒素原子含有重合体[例えば、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−ジエチルアミノエチルアクリレートやこれらに対応するメタクリレート、ビニルピロリドンなどの塩基性窒素原子を有する単量体の単独又は共重合体(前記他の共重合性単量体との共重合体も含む)など]、ビニルエーテル系重合体[例えば、ビニルエーテル系単量体(ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類など)の単独又は共重合体(例えば、ポリメチルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体などの共重合性単量体(前記カルボキシル基を有する単量体、前記例示の他の共重合性単量体など)との共重合体など)など]、アルキレンエーテル系重合体、セルロース誘導体[例えば、アルキルセルロース(メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロースなどのC1−6アルキルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロースなど)、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース(ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキル−C1−6アルキルセルロースなど)、カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースなどのカルボキシC1−6アルキルセルロースなど)などのセルロースエーテル類;可溶性セルロースアセテートなど]、水溶性ポリエステル、天然高分子多糖類[例えば、アルギン酸又はその塩、ペクチン、デンプン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コンドロイチンヘパリン、寒天、アラビアゴム、デキストリンなど]などが挙げられる。これらの水溶性高分子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0036】
(B)水溶性高分子の「融点」は、60℃以上(例えば、60〜350℃程度)、好ましくは62℃以上(例えば、65〜320℃程度)、さらに好ましくは65℃以上(例えば、65〜310℃程度)、特に70℃以上(例えば、70〜300℃程度)であり、100〜300℃(例えば、130〜250℃)や150〜200℃程度であってもよい。なお、(メタ)アクリル系単量体を主成分とする(メタ)アクリル系重合体の「融点」は60〜110℃(例えば、75〜105℃)程度であってもよく、(メタ)アクリルアミド系単量体を主成分とする樹脂の「融点」は100〜200℃(例えば、150〜190℃)程度であってもよく、ビニルエーテル系重合体の「融点」は100〜180℃(例えば、120〜160℃)程度であってもよい。なお、融点、軟化点又はガラス転移温度は慣用の熱分析(熱走査熱量計などを用いる熱分析)により測定できる。
【0037】
水溶性高分子のうち、ビニルピロリドン系重合体、ビニルアルコール系重合体、セルロースエーテル類、アルキレンエーテル系重合体、天然高分子多糖類[特にアルギン酸又はその塩]が好ましい。特に、水溶性高分子は、ビニルピロリドン系重合体、ビニルアルコール系重合体、セルロースエーテル類から選択された少なくとも一種(なかでも、少なくともビニルピロリドン系重合体)で構成するのが好ましい。
【0038】
ビニルピロリドン系重合体には、ビニルピロリドン又はその誘導体の単独又は共重合体、例えば、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと共重合性単量体との共重合体(例えば、前記(メタ)アクリル系単量体、酢酸ビニル、ビニルイミダゾール、及び/又はビニルカプロラクタムなどの共重合性単量体との共重合体など)などが含まれる。ビニルピロリドン系重合体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ビニルピロリドン系重合体におけるビニルピロリドン又はその誘導体の割合は、例えば、30〜100重量%、好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは60〜90重量%程度であってもよい。ビニルピロリドン又はその誘導体の割合が、30重量%以上では、防曇性の点で有利である。
【0039】
ビニルピロリドン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば、55〜200℃、好ましくは60〜190℃(例えば、65〜185℃)、さらに好ましくは70〜180℃(例えば、75〜170℃)程度であってもよい。また、ビニルピロリドン系重合体の分子量は特に制限されず、例えば、重量平均分子量1×10〜500×10、好ましくは5×10〜300×10、さらに好ましくは10×10〜250×10程度であってもよい。
【0040】
ビニルアルコール系重合体としては、脂肪酸ビニルエステル系重合体(単独又は共重合体)のケン化物、例えば、ポリビニルアルコール(完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール)、部分アセタール化ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール−エチレンスルホン酸共重合体、ビニルアルコール−マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0041】
ビニルアルコール系重合体の鹸化度は、特に制限されないが、例えば、60〜100モル%、好ましくは70〜100モル%(例えば、80〜99モル%)、さらに好ましくは85〜100モル%程度であってもよい。ビニルアルコール系重合体の「融点」は、130〜250℃、好ましくは150〜240℃、さらに好ましくは170〜230℃(例えば、180〜220℃)程度であってもよい。ビニルアルコール系重合体の重合度(又は平均重合度)は、例えば、100以上(例えば、100〜5000)、好ましくは200〜4000、さらに好ましくは500〜3000程度であってもよい。
【0042】
前記セルロースエーテル類のうち、メチルセルロースなどのC1−4アルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−3アルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシC2−3アルキル−C1−4アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシC1−4アルキルセルロースなどが好ましい。
【0043】
セルロースエーテル類の「融点」は、150〜350℃(例えば、200〜320℃、好ましくは220〜300℃)程度であってもよい。なお、セルロースエーテル類は融点を示さず分解する場合がある。このような場合、分解温度を融点とすることができる。セルロースエーテル類の重合度(又は平均重合度)は、通常、100以上(例えば、100〜2000)、好ましくは150〜1000、さらに好ましくは200〜800程度であってもよい。
【0044】
アルキレンエーテル系重合体としては、ポリオキシエチレン(又はポリエチレングリコール)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体(以下、単にPOE−POPブロック共重合体と称する場合がある)などのオキシエチレンユニットを有するポリマーが例示できる。POE−POPブロック共重合体中のエチレンオキサイド鎖の含有率は、10〜99重量%、好ましくは15〜95重量%、さらに好ましくは20〜95重量%、特に30〜90重量%程度であってもよい。上記ブロック共重合体のブロック構造は特に制限されず、ジブロック構造、オキシプロピレンブロックの両端にオキシエチレンブロックが結合したトリブロック構造などであってもよい。
【0045】
アルキレンエーテル系重合体の融点は、60〜90℃(例えば、65〜85℃)程度であってもよい。アルキレンエーテル系重合体(POE−POPブロック共重合体など)の重量平均分子量は特に制限されず、1,000〜1,000,000(例えば、1,000〜800,000)、好ましくは1,500〜600,000(例えば、1,500〜500,000)、さらに好ましくは2,000〜400,000(例えば、2,000〜300,000)程度であってもよい。なお、融点の低いPOE−POPブロック共重合体を含む防曇剤組成物は、樹脂シートに塗布し乾燥後、塗布面がロール(特に金属ロール)と接触すると、ロールを汚染し、防曇剤成分がロールに付着・堆積しやすい。そのため、アルキレンエーテル系重合体としては、ポリオキシエチレン(又はポリエチレングリコール)を用いるのが有利である。
【0046】
アルギン酸は、コンブ、ワカメ、カジメなどの褐藻類植物からの抽出等により得られる直鎖型の高分子多糖類であり、D−マンヌロン酸とL−グルロン酸とを構成ユニットとして含むヘテロポリマーである。アルギン酸の塩としては、アルギン酸と無機塩基との塩が挙げられ、具体的には、アンモニウム塩;カリウム塩、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;銀塩、銅塩などの遷移金属塩などが挙げられる。これらの塩のうち、アンモニウム塩の他、一価金属塩(アルカリ金属塩など)などが好ましい。
【0047】
アルギン酸などの天然高分子多糖類の「融点」はセルロースエーテル類の「融点」と同様であってもよい。天然高分子多糖類(アルギン酸又はその塩など)の重合度(又は平均重合度)は、通常、20以上(例えば、20〜2000)、好ましくは50〜1500、さらに好ましくは70〜1300程度であってもよい。
【0048】
(A)脂肪酸アミドと(B)水溶性高分子とを用い、ベース組成物を構成できる。(A)脂肪酸アミドと(B)水溶性高分子との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=1/99〜99/1(例えば、5/95〜95/5)、好ましくは10/90〜90/10(例えば、15/85〜85/15)、さらに好ましくは20/80〜80/20(例えば、25/75〜75/25)、特に30/70〜70/30(例えば、40/60〜60/40)程度であってもよい。
【0049】
(A)脂肪酸アミドと(B)水溶性高分子とで構成されたベース組成物に対して、(C)非イオン性界面活性剤及び(D)アニオン性界面活性剤のうち少なくとも一方の界面活性剤を添加すると、水溶性高分子(特に「融点」の高い水溶性高分子)を含む表面処理剤の防曇層を樹脂シートに形成し、容器成形(特に深絞り成形)しても、水溶性高分子を可塑化し、成形に追従して均一な防曇層が形成されるためか、高い防曇性を確保できる。また、表面処理剤の塗布量が少なくても、高い防曇性を確保できる。
【0050】
(C)非イオン性界面活性剤
非イオン性界面活性剤には、多価アルコール脂肪酸エステルと、活性水素原子を有する疎水性化合物の活性水素原子にエチレンオキサイドが付加した付加体とに大別できる。
【0051】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−12アルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール;グリセリン、重合度2〜20程度のポリグリセリン(ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリンなど)、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、糖類(ショ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ソルビタン、オリゴ糖など)などのポリヒドロキシ化合物(多価アルコール類)などが例示できる。これらの多価アルコールは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0052】
脂肪酸としては、前記脂肪酸アミドの項目で記載の脂肪酸が例示でき、通常、高級脂肪酸、例えば、C8−30脂肪酸(例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、エルカ酸などの不飽和脂肪酸などのC8−26脂肪酸)、好ましくはC10−22脂肪酸(例えば、C10−20脂肪酸)、特にC10−18脂肪酸(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸)が好ましい。脂肪酸は、飽和脂肪酸である場合が多い。
【0053】
多価アルコール脂肪酸エステルは、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルから選択される場合が多い。このような多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル(例えば、ショ糖ラウリン酸エステル(ショ糖モノ乃至ペンタラウリン酸エステルなど)、ショ糖パルミチン酸エステル(ショ糖モノ乃至ペンタパルミチン酸エステルなど)、ショ糖ステアリン酸エステル(ショ糖モノ乃至ペンタステアリン酸エステルなど)、ショ糖ベヘン酸エステル(ショ糖モノ乃至ペンタベヘン酸エステルなど)、ショ糖オレイン酸エステル(ショ糖モノ乃至ペンタオレイン酸エステルなど)などのショ糖C8−24飽和又は不飽和脂肪酸エステル(モノ乃至ヘキサエステル類など)、特にショ糖C8−24飽和又は不飽和脂肪酸エステル(モノ乃至テトラエステル類など)など);ポリグリセリン脂肪酸エステル(重合度2〜16程度のポリグリセリンとC8−24飽和又は不飽和脂肪酸とのエステル類、例えば、デカグリセリンカプリル酸エステル(デカグリセリンモノ乃至デカカプリル酸エステルなど)、ヘキサグリセリンラウリン酸エステル(ヘキサグリセリンモノ乃至ペンタラウリン酸エステルなど)、デカグリセリンラウリン酸エステル(デカグリセリンモノ乃至デカラウリン酸エステルなど)、デカグリセリンステアリン酸エステル(デカグリセリンモノ乃至デカステアリン酸エステルなど)、デカグリセリンオレイン酸エステル(デカグリセリンモノ乃至デカオレイン酸エステルなど)など);グリセリン脂肪酸エステル(グリセリンとC8−24飽和又は不飽和脂肪酸とのエステル類、例えば、グリセリンカプリル酸エステル(グリセリンモノ乃至ジカプリル酸エステルなど)、グリセリンラウリン酸エステル(グリセリンモノ乃至ジラウリン酸エステルなど)、グリセリンステアリン酸エステル(グリセリンモノ乃至ジステアリン酸エステルなど)、グリセリンベヘン酸エステル(グリセリンモノ乃至ジベヘン酸エステルなど)、グリセリンオレイン酸エステル(グリセリンモノ乃至ジオレイン酸エステルなど)など);ソルビトール脂肪酸エステル(ソルビトールとC8−24飽和又は不飽和脂肪酸とのエステル類、例えば、ソルビトールカプリル酸エステル(ソルビトールモノ乃至ペンタカプリル酸エステルなど)、ソルビトールラウリン酸エステル(ソルビトールモノ乃至ペンタラウリン酸エステルなど)、ソルビトールパルミチン酸エステル(ソルビトールモノ乃至ペンタパルミチン酸エステルなど)、ソルビトールステアリン酸エステル(ソルビトールモノ乃至ペンタステアリン酸エステルなど)、ソルビトールオレイン酸エステル(ソルビトールモノ乃至ペンタオレイン酸エステルなど)など)、これらの脂肪酸エステルに対応するソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの脂肪酸エステルは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0054】
好ましい多価アルコール脂肪酸エステルは、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、特に少なくともショ糖脂肪酸エステルである。
【0055】
エチレンオキサイド付加体において、活性水素原子を有する疎水性化合物としては、例えば、高級アルコール(ラウリルアルコールなど)、芳香族ヒドロキシ化合物(フェノール類、アルキルフェノール類など)、ヒドロキシル基を有する多価アルコール脂肪酸エステル、ヒドロキシル基を有する油脂(ヒマシ油、硬化ひまし油など)などが例示できる。
【0056】
エチレンオキサイド付加体としては、例えば、高級アルコールのエチレンオキサイド付加体(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテルなどのポリオキシエチレンC8−26アルキルエーテル(好ましくはC10−20アルキルエーテル)など)、芳香族ヒドロキシ化合物のエチレンオキサイド付加体[例えば、ポリオキシエチレンフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル(好ましくはポリオキシエチレンC6−10アリールエーテルなど);ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル(好ましくはポリオキシエチレンC4−26アルキルフェニルエーテルなど)など]、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加体[ポリオキシエチレングリセリンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールステアリン酸エステルなどのポリオキシエチレン鎖を有するC8−26脂肪酸エステル(好ましくはポリオキシエチレン鎖を有するC10−20脂肪酸エステルなど)など]、油脂のエチレンオキサイド付加体(ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヤシ油などのヒドロキシル基含有油脂のエチレンオキサイド付加体など)などが含まれる。脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加体であっても、前記(A)脂肪酸アミドと異なるエチレンオキサイド付加体であれば、(C)非イオン性界面活性剤として使用してもよい。前記ポリオキシエチレン付加体の数平均分子量は、例えば、150以上(例えば、150〜35,000)、好ましくは200〜30,000、さらに好ましくは200〜20,000程度である。
【0057】
前記エチレンオキサイド付加体において、オキシエチレン単位の平均付加モル数は、例えば、2〜100、好ましくは2〜50、さらに好ましくは3〜30程度であってもよく、2〜10モル程度であってもよい。
【0058】
なお、多価アルコール脂肪酸エステル及びそのエチレンオキサイド付加体において、脂肪酸は単一の脂肪酸に限らず複数の脂肪酸エステル(混合脂肪酸エステル)であってもよい。
【0059】
前記(C)非イオン性界面活性剤は単独で構成してもよく複数(同種又は異種)の界面活性剤を組み合わせて構成してもよい。(C)非イオン性界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル(C10−20アルキルエーテルなど)から選択された少なくとも一種の成分、特に少なくともショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ラウリン酸エステルなどのショ糖C10−20脂肪酸エステルなど)で構成するのが好ましい。
【0060】
(C)非イオン性界面活性剤は常温(20〜25℃)で固体であるのが好ましい。非イオン性界面活性剤の「融点」は、50℃以上(例えば、50〜120℃程度)、好ましくは53℃以上(例えば、53〜115℃)、さらに好ましくは55〜110℃(例えば、60〜105℃)、特に65〜100℃(例えば、70〜95℃)程度である。常温で液状又は低融点の非イオン性界面活性剤を用いると、防曇性が低下しやすくなるとともに、ロール(特に金属ロール)への転移・付着や裏移りが生じやすくなる。
【0061】
(C)非イオン性界面活性剤の使用量は、(D)アニオン性界面活性剤の使用の有無及び使用量などに応じて選択でき、(C)非イオン性界面活性剤を使用する場合、ベース組成物((A)脂肪酸アミド及び(B)水溶性高分子の総量)100重量部に対して、0.1〜400重量部(例えば、1〜380重量部)、好ましくは5〜360重量部(例えば、10〜350重量部)、さらに好ましくは25〜250重量部(例えば、50〜200重量部)程度であり、通常、30〜170重量部(例えば、50〜150重量部)程度である。
【0062】
(D)アニオン性界面活性剤
(D)アニオン性界面活性剤は、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、カルボン酸塩、リン酸塩又はリン酸エステル塩などであってもよい。
【0063】
スルホン酸塩としては、アルカンスルホン酸塩(ラウリル硫酸塩などのC10−20アルカンスルホン酸塩)、アレーンスルホン酸塩(ベンゼンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩などのC6−10アレーンスルホン酸塩)、アルキルアレーンスルホン酸塩(オクチルベンゼンスルホン酸塩、ウンデシルナフタリンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などのC4−20アルキルC6−10アレーンスルホン酸塩)、アルキルスルホコハク酸塩(ジ−(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸塩などのジC6−20アルキルスルホコハク酸塩)、α−オレフィンスルホン酸塩などが例できる。
【0064】
硫酸エステル塩としては、アルキル硫酸エステル塩又はアルケニル硫酸エステル塩(高級アルコール硫酸エステル塩)[ラウリル硫酸エステル塩、オクタデシル硫酸エステル塩などのC10−20アルキル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩などのC10−20アルケニル硫酸エステル塩]、アルキルエーテル硫酸エステル塩[ポリオキシエチレン・C10−20アルキルエーテル硫酸エステル塩など]などが例示できる。
【0065】
カルボン酸塩としては、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩などのC8−26脂肪酸塩(例えば、C8−20脂肪酸塩)などが例示できる。
【0066】
リン酸塩又はリン酸エステル塩としては、モノ又はジアルキルリン酸塩(オクチルリン酸エステル塩、ドデシルリン酸エステル塩などのC8−20アルキルリン酸エステル塩など)、ポリオキシエチレン・アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレン・アルキルアリールリン酸エステル塩などのモノ又はジアルキルリン酸塩などが例示できる。
【0067】
塩を構成する塩基性物質としては、無機塩基[アンモニア、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)など]、有機塩基[低級アルキルアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなど)、アルカノールアミン(エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなど)など]などが例示できる。塩は、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム、カリウムなど)、アルキルアミン塩やアルカノールアミン塩である場合が多い。
【0068】
これらのアニオン性界面活性剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの(D)アニオン性界面活性剤のうち、スルホン酸塩(アルカンスルホン酸塩など)、硫酸エステル塩(アルキル硫酸エステル塩など)が好ましい。
【0069】
(D)アニオン性界面活性剤は常温(20〜25℃)で固体であるのが好ましい。アニオン性界面活性剤の「融点」は、50℃以上(例えば、50〜150℃程度)、好ましくは55℃以上(例えば、55〜130℃)、さらに好ましくは60〜110℃(例えば、65〜100℃)程度である。常温で液状又は低融点のアニオン性界面活性剤を用いると、防曇性が低下するとともに、ロール(特に金属ロール)への転移・付着や裏移りが生じやすくなる。
【0070】
(D)アニオン性界面活性剤の使用量は、(C)非イオン性界面活性剤の使用の有無及び使用量などに応じて選択でき、(D)アニオン性界面活性剤を使用する場合、ベース組成物100重量部に対して、0.1〜200重量部(例えば、1〜150重量部)、好ましくは2〜130重量部(例えば、3〜125重量部)、さらに好ましくは5〜120重量部(例えば、7〜120重量部)程度であり、通常、10〜100重量部程度である。
【0071】
なお、表面処理剤は、(C)非イオン性界面活性剤及び(D)アニオン性界面活性剤のうち少なくとも一方の成分を含んでいればよいが、より高い防曇性を樹脂シートに付与するためには、少なくとも(C)非イオン性界面活性剤、特に(C)非イオン性界面活性剤及び(D)アニオン性界面活性剤の双方の成分を含むのが好ましい。
【0072】
(E)シリコーンオイル
表面処理剤はシリコーンオイルを含有してもよい。シリコーンオイルを用いると、表面処理剤を適用した樹脂シート(防曇性樹脂シート)のブロッキング防止性又は離型性を改善できる。シリコーンオイルの種類は特に制限されず、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、トリフルオロプロピルポリシロキサンなどのアルキルポリシロキサン;ジフェニルポリシロキサンなどのアリールポリシロキサン;メチルフェニルポリシロキサンなどのアルキルアリールポリシロキサンなどが挙げられる。シリコーンオイルは、鎖状ポリシロキサンであってもよく、環状ポリシロキサンであってもよい。
【0073】
さらに、シリコーンオイルは、変性シリコーンオイル、例えば、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシエチル基などのヒドロキシC2−4アルキル基など)、ポリオキシアルキレン基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、グリシジル基又はエポキシ基、重合性基(ビニル基、(メタ)アクリロイル基など)などを有するシリコーンオイルであってもよい。
【0074】
シリコーンオイルは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。シリコーンオイルのうち、通常、汎用性の高いジメチルポリシロキサンが使用される。シリコーンオイルは、種々の形態で使用できるが、通常、シリコーンエマルジョンの形態(シリコーンオイルを乳化分散させたエマルジョン)で使用する場合が多い。
【0075】
シリコーンオイルの粘度は特に制限されず、例えば、室温(15〜25℃)でのオストワルド粘度50〜50000cSt(センチストークス)(0.5×10−4〜500×10−4/s)、好ましくは100〜30000cSt(1×10−4〜300×10−4/s)、さらに好ましくは150〜25000cSt(1.5×10−4〜250×10−4/s)程度であってもよい。
【0076】
シリコーンオイルは必ずしも必要できなく、シリコーンオイルの使用量は、例えば、前記ベース組成物100重量部に対して、0〜50重量部程度の範囲から選択でき、0.1〜40重量部、好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは5〜25重量部程度であってもよい。
【0077】
表面処理剤は、種々の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤などを含んでいてもよい。また、表面処理剤は、通常、塗布液や含浸液の形態で使用でき、有機溶媒を溶媒とする非水性液状組成物であってもよいが、通常、水性組成物として利用される。なお、水性組成物において、溶媒は水単独であってもよく、水と親水性溶媒(特に水混和性溶媒)[例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、ケトン類(アセトンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類など]との混合溶媒であってもよい。
【0078】
前記表面処理剤は、慣用の混合撹拌機や混合分散機を用いて調製することができ、調製に伴って前記シリコーンオイルを分散させてもよい。表面処理剤の固形分濃度は、例えば、0.1〜10重量%程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜2重量%、好ましくは0.3〜1.8重量%、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%程度である。表面処理剤の粘度は、塗布性を損わない範囲で適当に選択でき、定常流粘度測定法により測定したとき、例えば、温度20℃で、10cps(=0.01Pa・s)以下、好ましくは1.1〜5cps(例えば、1.2〜3cps)、さらに好ましくは1.3〜2cps程度であってもよい。
【0079】
[防曇性樹脂シート及びその製造方法]
本発明の防曇性樹脂シートは、樹脂シートと、この樹脂シートの少なくとも一方の面(片面又は両面)に形成された防曇層(被覆層又はコーティング層)とで構成されており、前記防曇層は、前記表面処理剤で構成されている。
【0080】
樹脂シートは、フィルム又はシート成形性を有する種々の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン系樹脂(ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマーなど)、ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体など)、ポリ−4−メチルペンテン−1などのオレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系樹脂;ポリ塩化ビニルなどの塩化ビニル系樹脂;スチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのアルキレンアリーレート単位を有するホモ又はコポリエステル系樹脂;ナイロン又はポリアミド系樹脂;ポリアクリロニトリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリフェニレンオキシド系樹脂;ポリスルホン系樹脂;セルロース誘導体などで形成できる。これらの樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、樹脂シートは単層シートであってもよく、複数の樹脂層が積層された積層シートであってもよい。樹脂シートの厚みは、用途に応じて適当に選択でき、例えば、10μm〜5mm、好ましくは25μm〜1mm程度である。容器成形に利用する場合、樹脂シートの厚みは、例えば、50μm〜2mm、好ましくは50〜1000μm(例えば、100〜1000μm)、さらに好ましくは120〜500μm程度であってもよい。
【0081】
好ましい樹脂シートは、成形加工性を有するシート、特に疎水性合成樹脂シート、例えば、オレフィン系樹脂(特にポリプロピレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂(特にポリエチレンテレフタレート系樹脂)、スチレン系樹脂で構成できる。特に、成形加工性の高い樹脂シート、例えば、スチレン系樹脂シートが好ましい。
【0082】
スチレン系樹脂には、芳香族ビニル単量体(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなど)を構成成分として含む単独重合体、芳香族ビニル単量体と共重合性単量体との共重合体およびこれらの混合物が含まれる。より具体的には、スチレン系樹脂としては、例えば、非ゴム強化スチレン系樹脂[一般用ポリスチレン(GPPS)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体など]、ゴム含有スチレン系樹脂[ゴム強化ポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン:HIPS)、スチレン−ジエンブロック共重合体又はその水素添加物(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体など)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ゴム成分X(アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)にアクリロニトリルAとスチレンSとがグラフト重合したAXS樹脂など]が例示される。これらのスチレン系樹脂は単独で又は二種以上混合して使用できる。なお、スチレン系樹脂シートは、透明性の高いスチレン系樹脂シート(例えば、GPPSなどの非ゴム強化スチレン系樹脂で構成された非ゴム強化スチレン系樹脂シート、スチレン系樹脂とスチレン−ジエンブロック共重合体又はその水素添加物とで構成されたスチレン系樹脂シート)であってもよく、ゴム強化スチレン系樹脂シートであってもよい。
【0083】
樹脂シートは、種々の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、帯電防止剤、結晶核成長剤、炭化水素系重合体、可塑剤、ミネラルオイル、充填剤、着色剤などを含んでいてもよい。
【0084】
樹脂シートは、慣用の方法、例えば、T−ダイ法またはインフレーション法などの慣用の成膜方法で得ることができる。樹脂シートは、未延伸であってもよいが、延伸されているのが好ましい。延伸フィルムは、一軸延伸フィルムであってもよいが、二軸延伸フィルムであるのが好ましい。また、必要に応じて、延伸フィルムは熱処理(熱固定処理)してもよい。延伸法としては、慣用の延伸法、例えば、ロール延伸、圧延延伸、ベルト延伸、テンター延伸、チューブ延伸や、これらを組合せた延伸法などが挙げられる。延伸倍率は、所望するシートの特性に応じて適宜設定でき、例えば1.2〜20倍、好ましくは1.5〜15倍、さらに好ましくは2〜10倍程度であってもよい。
【0085】
樹脂シートの表面には、慣用の表面処理、例えば、コロナ放電処理、高周波処理などを施してもよい。特に、樹脂シートを、コロナ放電処理し、コロナ放電処理面に防曇層を形成するのが好ましい。なお、樹脂シートの表面張力は、シートの種類により異なるので一概に決定できないが、JIS K−6768「ポリエチレン及びポリプロピレンフィルムのぬれ試験方法」に準拠して測定したとき、30〜65dyn/cm(30×10−5〜65×10−5N/cm)程度である。スチレン系樹脂シートの場合、表面張力は40〜62dyn/cm(40×10−5〜62×10−5N/cm)、好ましくは42〜62dyn/cm(42×10−5〜62×10−5N/cm)、さらに好ましくは45〜60dyn/cm(45×10−5〜60×10−5N/cm)程度である。
【0086】
シート表面の表面張力が高すぎると、シート表面が活性化され過ぎるためか、ブロッキングし易くなる。そのため、ロール状に巻いたシートを巻き戻すのが困難となったり、成形した複数の容器を積み重ねて打ち抜くと、容器同士が密着し、容器を剥離して内容物を収納する作業効率が低下し易い。
【0087】
本発明の防曇性樹脂シートは、透明性及び表面外観(光沢など)に優れ、ロール状に巻き取り後又は成形加工後(例えば、深絞り成形加工後)にも高い防曇性を有する。さらに、防曇剤による成形機の汚れも低減できる。
【0088】
表面処理剤は、塗布量が少なくても高い防曇性を発揮する。そのため、表面処理剤の塗布量(乾燥後の塗布量)は、例えば、2〜150mg/m(例えば、3〜100mg/m)程度の広い範囲から選択でき、通常、5〜60mg/m(例えば、7〜50mg/m)、好ましくは10〜40mg/m程度であってもよい。本発明では、表面処理剤の乾燥後の塗布量が5〜50mg/m(例えば、10〜40mg/m)程度であっても、樹脂シートを容器成形(例えば、深絞り成形)しても高い防曇性を維持する。
【0089】
本発明の防曇性樹脂シートでは、樹脂シートの少なくとも一方の面を表面処理剤で処理すればよく、一方の面を表面処理剤で処理(又は塗布処理)し、他方の面を、種々の処理剤(例えば、耐ブロッキング性を向上させるためのブロッキング防止剤、帯電防止性や滑り性を高めるための帯電防止剤や滑剤を含むコーティング剤など)で処理(又は塗布処理)してもよい。特に、樹脂シートの一方の面(コロナ放電処理面など)に表面処理剤の被覆層を形成し、他方の面(コロナ放電処理されていてもよい面など)に離型層(又はブロッキング防止層)を形成してもよい。
【0090】
離型層(又はブロッキング防止層)は、種々の離型剤(又はブロッキング防止剤)、例えば、ワックス(鉱物系ワックス、植物系ワックス、合成ワックスなどを含む)などで構成してもよいが、少なくともシリコーンオイルで構成するのが好ましい。さらに、好ましい離型層は、少なくとも、オキシエチレン単位を有するエーテル系親水性高分子と、シリコーンオイルとで構成できる。なお、シリコーンオイルとしては、前記と同様のシリコーンオイル(ジメチルポリシロキサンなど)が使用できる。また、オキシエチレン単位を有するエーテル系親水性高分子としては、ノニオン系界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、オキシエチレン単位を有するノニオン系界面活性剤などが使用できる。
【0091】
好ましい態様において、シリコーンオイルは、前記と同様に、エマルジョン(水性エマルジョン)の形態で使用できる。また、エーテル系親水性高分子は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、およびオキシエチレン単位を有するノニオン系界面活性剤から選択された少なくとも一種で構成すればよいが、通常、少なくとも前記ブロック共重合体で構成する場合が多い。
【0092】
離型剤において、エーテル系親水性高分子の割合は、防曇性や耐ブロッキング性を損なわない範囲で選択でき、シリコーンオイル100重量部に対して0〜1000重量部程度の範囲から選択でき、通常、10〜500重量部、好ましくは20〜200重量部(例えば、50〜150重量部)、さらに好ましくは30〜100重量部(例えば、50〜100重量部)程度であってもよい。
【0093】
なお、離型剤などの処理剤は、種々の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤などを含んでいてもよい。また、処理剤は、通常、塗布液や含浸液の形態で使用でき、有機溶媒を溶媒とする非水性液状組成物であってもよいが、通常、水性組成物として利用される。なお、水性組成物において、溶媒は水単独であってもよく、水と前記例示の親水性溶媒(特に水混和性溶媒)との混合溶媒であってもよい。
【0094】
離型剤などの処理剤の塗布量(乾燥後の塗布量)は、処理剤の種類などに応じて1〜200mg/m(例えば、5〜100mg/m)程度の広い範囲から選択でき、通常、2〜100mg/m、好ましくは3〜50mg/m(例えば、5〜30mg/m)、さらに好ましくは5〜25mg/m程度であってもよい。
【0095】
防曇性樹脂シートは、樹脂シートの少なくとも一方の面に前記表面処理剤(又は防曇剤)を塗布することにより製造できる。また、前記樹脂シートの一方の面に前記表面処理剤を塗布し、他方の面に前記処理剤(例えば、離型剤やブロッキング防止剤など)を塗布することにより防曇性樹脂シートを製造してもよい。前記表面処理剤(又は処理剤)の塗布には、慣用の塗布手段、例えば、スプレー、ロールコーター、グラビアロールコーター、ナイフコーター、ディップコーターなどが利用できる。なお、必要であれば、前記表面処理剤(又は処理剤)は複数回に亘り塗布してもよい。前記表面処理剤(及び処理剤)を樹脂シートに塗布した後、通常、塗布層を乾燥することにより防曇層や処理層(離型層など)を形成できる。
【0096】
防曇性樹脂シートは、後処理工程(容器成形工程など)に連続的に供してもよいが、通常、ロール状に巻き取り、後処理工程に供する場合が多い。樹脂シートを巻き取った巻き取りロールにおいて、巻き芯部の樹脂シートにおいても、防曇成分の転移(裏移り)を大きく抑制でき、高温防曇性のみならず低温防曇性に優れるだけでなく、長期間に亘り高い防曇性を維持できる。また、白化を抑制でき、樹脂シートの透明性、光沢などを損うことがない。そのため、種々の用途、例えば、カバーシート(又はフィルム)、食品包装などの包装用シート(又はフィルム)などに利用できる。成形性の高い樹脂シートを用いた被覆樹脂シートは、二次成形性が高く、容器などの成形加工に適している。
【0097】
[容器及びその製造方法]
本発明の容器(防曇性容器)は、樹脂製容器と、この容器の少なくとも一部の表面(例えば、容器本体の内面又は外面、蓋体の内面又は外面などの少なくとも一つの面)に形成された防曇層(前記表面処理剤で構成された防曇層)とで構成されていればよく、樹脂製容器の表面に前記塗布方法(噴霧など)により表面処理剤を塗布することにより得られる容器であってもよく、前記防曇性樹脂シートで形成された容器(防曇性樹脂シートを成形加工することにより得られる容器など)などであってもよい。このような容器は、防曇性及び透明性に優れるため、食品包装用容器などの水分を含有する収容物を収容するための容器などとして有用である。なお、前者の容器において、樹脂製容器を構成する樹脂としては、前記樹脂シートの項で例示の樹脂が使用できる。
【0098】
容器は、通常、食品などの収容物を収容するための少なくとも容器本体を有しており、容器本体の開口部はラッピングフィルムで覆ってもよい。また、容器は、容器本体と、ヒンジ部を介して、前記容器本体の開口部を覆う蓋体とで構成してもよい。なお、蓋体を有する成形品では蓋体の内面も前記表面処理剤で処理してもよい。
【0099】
防曇性樹脂シートで形成された容器は、前記防曇性樹脂シートを、慣用の熱成形法により容器を成形する場合が多い。熱成形法(又は二次成形加工)としては、例えば、吹き込み成形法、真空成形法、圧空成形法(熱板加熱式圧空成形法、輻射加熱式圧空成形法などの加熱圧空成形法)、真空圧空成形法、プラグアシスト成形法、マッチドモールド成形法などが利用できる。延伸樹脂シートを用いる場合、通常、熱板加熱式圧空成形法を利用する場合が多い。
【0100】
本発明では、このような熱成形(二次成形)に供しても高い防曇性及び透明性を維持できる。特に、防曇性樹脂シートを深絞り成形しても、高温防曇性のみならず低温防曇性に優れ、高い防曇性を維持できる。深絞り容器成形において、絞り比(容器の高さ/開口部の内径の割合)は0.4〜1.5、好ましくは0.5〜1.2(例えば、0.6〜1)程度であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の防曇性表面処理剤は、防曇性に優れるとともに、裏移りを防止できるため、樹脂シートに塗布などにより適用することにより、防曇性樹脂シートを得るのに有用である。また、防曇性表面処理剤は、金属ローラなどに対する付着性が小さく、金属ローラを汚染することがない。そのため、防曇性樹脂シートは、高い透明性及び光沢を有する場合が多い。さらに、防曇性樹脂シートは、二次成形(例えば、熱成形)などに供しても、高い防曇性を維持できる。防曇性表面処理剤で形成された防曇層を表面に有する容器は、防曇性に優れており、収容物(又は内容物)の視認性も高い。そのため、本発明の容器は、種々の収容物(内容物)、特に、水分を含む収容物(食品など)の収容に適しており、結露が生じやすい環境下で使用する容器(例えば、低温で保存する生鮮食料品や調理食品などの他、加熱調理食品などを収容するための容器)としても有用である。
【実施例】
【0102】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0103】
なお、実施例及び比較例では、下記の成分(A)〜(D)を用いた。
【0104】
(A)脂肪酸アミド
(A1)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(三洋化成工業(株)製、プロファンエキストラ128、ヤシ油脂肪酸:ジエタノールアミド=1:1型)
(A2)ラウリン酸ジエタノールアミド(三洋化成工業(株)製、プロファンAA−62EX、ラウリン酸:ジエタノールアミド=1:1型)
(A3)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(三洋化成工業(株)製、プロファンAB−20、ヤシ油脂肪酸:モノエタノールアミド=1:1型)
(A4)ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(三洋化成工業(株)製、プロファンME−20、ヤシ油脂肪酸:モノエタノールアミド=1:1型)
(A5)ラウリン酸モノイソプロパノールアミド(三洋化成工業(株)製、プロファンAD−31、ラウリン酸:モノイソプロパノールアミド=1:1型)
(A6)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(三洋化成工業(株)製、プロファン2012E、ヤシ油脂肪酸:ジエタノールアミド=1:2型)。
【0105】
(B)水溶性高分子
(B1)ポリビニルピロリドン(BASF製、ルビテックK−90、ガラス転移温度180℃、重量平均分子量90×10〜150×10
(B2)ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(BASF製、ルビテックVA64、ガラス転移温度70℃)
(B3)ポリビニルアルコール((株)クラレ製、ポバールPVA117、融点180℃、鹸化度98〜99mol%)
(B4)メチルセルロース(信越化学工業(株)製、メトローズSM100、融点300℃)
(B5)カルボキシメチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、CMCダイセル1260、融点230℃)
(B6)ポリオキシエチレン(明成化学工業(株)製、アルコックスL−11、融点70℃、重量平均分子量11×10)。
【0106】
(C)非イオン性界面活性剤
(C1)ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン(株)製、リケマールA、融点90℃、固形分濃度41重量%の水溶液)
(C2)ポリオキシラウリルエーテル(第一工業製薬(株)製、DKS NL−600、融点54℃)
(C3)グリセリンモノべヘネート(理研ビタミン(株)製、リケマールB−100、融点75〜82℃)。
【0107】
(D)アニオン性界面活性剤
(D1)アルカンスルホン酸ナトリウム(花王(株)製、ラテムルPS、炭素数15程度のアルカンスルホン酸ナトリウム、融点70℃、固形分濃度40重量%の水溶液)
(D2)ラウリル硫酸ナトリウム(花王(株)製、エマール2FG、融点104℃)。
【0108】
実施例1〜26及び比較例1〜7
各成分の固形分比率(各成分の乾燥後の重量比率)が表に示す割合(重量部)になるように水性表面処理剤(防曇処理剤)を調製した。なお、処理剤の濃度は評価項目により異なるが、処理剤の濃度とは固形分の濃度(重量%)を示す。そして、シート厚み0.25mmの二軸延伸ポリスチレンシートのコロナ放電処理面に水性表面処理剤(防曇処理剤)を、以下の評価特性項目に応じて、所定量塗布し、熱風乾燥機を用いて、80℃で2分間乾燥することにより、防曇層を形成した。
【0109】
得られた防曇性樹脂シートの特性(初期特性)、及び防曇性樹脂シートを積層させてプレスした後のシートの特性(プレス後の特性)について下記に従って評価した。
【0110】
(1)防曇性樹脂シートの初期特性
(1-i)高温防曇性
シート厚み0.25mmの二軸延伸ポリスチレンシートを54dyn/cm以上(54×10−5N/cm以上)にコロナ放電処理し、このコロナ放電処理面に乾燥後の塗布量20mg/mで防曇処理剤(濃度0.7重量%)をNo.5メイヤーバーにて塗布し、乾燥することにより、防曇層を形成した。得られた防曇性樹脂シートを所定サイズ(120mm×120mm)に切り取り、卓上二軸延伸機(岩本製作所(株)製)にて70mm延伸させた。60℃の湯を入れた容器の開口部に、シートの防曇層を向けてシートを載せ、常温環境下で2分間放置した。次いで、シートの蒸気接触部分を、紙に印刷したフォントサイズの異なる文字群「防曇性」の上に載せ、シートの曇りの程度を下記の基準に従って目視にて評価し、5枚のシートについて評価した結果の平均値を算出した。
【0111】
5:フォントサイズ5の「防曇性」の文字がはっきりと読み取れる
4:フォントサイズ10の「防曇性」の文字がはっきりと読み取れる
3:フォントサイズ14の「防曇性」の文字がはっきりと読み取れる
2:フォントサイズ18の「防曇性」の文字がはっきりと読み取れる
1:文字が判別できない。
【0112】
(1-ii)低温防曇性
周囲の温度23℃にて、水(23℃)を入れた容器に、高温防曇性(1-i)の評価で得られた延伸された防曇性樹脂シートの防曇層を容器の開口部に向けてシートを載せ、この状態で、5℃の恒温槽内に入れて、10分間放置した。次いで、取り出した直後のシートの曇りの程度を、防曇性樹脂シートの初期特性における高温防曇性(1-i)の評価と同様にして評価し、5枚のシートについて評価した結果の平均値を算出した。
【0113】
(1-iii)金属に対する転写性
シート厚み0.25mmの二軸延伸ポリスチレンシートを54dyn/cm以上(54×10−5N/cm以上)にコロナ放電処理し、このコロナ放電処理面に乾燥後の塗布量30mg/mで防曇処理剤(濃度1.0重量%)をNo.5メイヤーバーにて塗布し、乾燥することにより、防曇層を形成した。得られた防曇性樹脂シートを所定サイズ(5cm×5cm)に切り取り、同じ大きさのアルミシートと防曇面側を合わせ、ステンレス板(厚み5mm、3cm×5cm)で挟んだ。これを60℃の恒温槽に水平に置き、更に15kgの重りを載せ、1時間放置した。放置後、恒温槽から取出し、常温に冷却した後、防曇面とアルミシートとが接触した面を観察し、接触面積に対し、防曇面がアルミシートに転写されている割合を求めた。5枚のシートで評価し、その平均を求めた。
【0114】
(2)プレス後のシート特性
シート厚み0.25mmの二軸延伸ポリスチレンシートを54dyn/cm以上(54×10−5N/cm以上)にコロナ放電処理し、このコロナ放電処理面に乾燥後の塗布量20mg/mで防曇処理剤(濃度0.7重量%)をNo.5メイヤーバーにて塗布し、乾燥することにより、防曇層を形成した。防曇性樹脂シートを所定サイズ(30cm×30cm)にカットし、10枚重ねた後、温度40℃及び荷重10kgf/cm(≒98N/cm)にて、1時間プレスした後、圧力を開放してシートを1枚ずつ分離し、シートの裏移り性及び高温防曇性について下記に従って評価し、ロール状にシートを巻取った場合のシート特性の指標とした。
【0115】
(2-i)白化
防曇性樹脂シートの加圧前後のヘーズ値(%)を測定し、差を求めた。
【0116】
(2-ii)高温防曇性
プレス後の分離したシートについて、防曇性樹脂シートの初期特性における高温防曇性(1-i)の評価と同様に操作を行い、前記高温防曇性(1-i)の評価と同様に評価し、5枚のシートの平均値を算出した。
【0117】
実施例及び比較例で得られた結果を表1〜表3に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
表から明らかなように、比較例に比べ、実施例の防曇性樹脂シートは、塗布量が少なくても極めて高い防曇性(高温及び低温防曇性)を示し、容器成形(特に深絞り成形など)に供しても高い防曇性を維持できた。また、実施例の防曇性表面処理剤は、ロール状にシートを巻き取っても裏移り性が小さく、金属に対する密着性・転移性も小さかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪酸アミドと、(B)水溶性高分子と、(C)非イオン性界面活性剤及び/又は(D)アニオン性界面活性剤とを含む防曇性表面処理剤。
【請求項2】
(A)脂肪酸アミドが、(A-1)C8−30脂肪酸アミド又はそのC2−4アルキレンオキサイド付加体、(A-2)C8−30脂肪酸モノ又はジアルカノールアミド又はそのC2−4アルキレンオキサイド付加体から選択された少なくとも一種である請求項1記載の表面処理剤。
【請求項3】
(B)水溶性高分子が、60℃以上の融点、軟化点又はガラス転移温度を有する請求項1又は2記載の表面処理剤。
【請求項4】
(B)水溶性高分子が、ビニルピロリドン系重合体、ビニルアルコール系重合体、セルロースエーテル類、アルキレンエーテル系重合体及びアルギン酸又はその塩から選択された少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項5】
(C)非イオン性界面活性剤が、50℃以上の融点、軟化点又はガラス転移温度を有する請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項6】
(C)非イオン性界面活性剤が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルから選択された少なくとも一種で構成されている請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項7】
(D)アニオン性界面活性剤が、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、カルボン酸塩、およびリン酸塩又はリン酸エステル塩から選択された少なくとも一種である請求項1〜6のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項8】
(D)アニオン性界面活性剤が、アルカンスルホン酸塩及びアルキル硫酸エステル塩から選択された少なくとも一種で構成されている請求項1〜7のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項9】
(A-1)C8−26脂肪酸のアミド又はそのエチレンオキサイド付加体、及び(A-2)C8−26脂肪酸のモノ又はジアルカノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加体から選択された少なくとも一種で構成された(A)脂肪酸アミドと、ビニルピロリドン系重合体で構成された(B)水溶性高分子と、(C)非イオン性界面活性剤及び(D)アニオン性界面活性剤のうち少なくとも(C)非イオン性界面活性剤とを含み、(C)非イオン性界面活性剤が少なくともショ糖脂肪酸エステルで構成されている請求項1〜8のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項10】
(A)脂肪酸アミドと(B)水溶性高分子とを前者/後者=1/99〜99/1(重量比)の割合で含むベース組成物100重量部に対して、(C)非イオン性界面活性剤0.1〜400重量部及び/又は(D)アニオン性界面活性剤0.1〜200重量部を含む請求項1〜9のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項11】
(A)脂肪酸アミドが(A-2)C8−20脂肪酸のモノ又はジアルカノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加体から選択された少なくとも一種で構成され、(B)水溶性高分子が、ビニルピロリドン系重合体、ビニルアルコール系重合体、セルロースエーテル類から選択された少なくとも一種で構成され、かつ62℃以上の融点、軟化点又はガラス転移温度を有しており、(C)非イオン性界面活性剤が53℃以上の融点、軟化点又はガラス転移温度を有するショ糖脂肪酸エステルで構成され、(D)アニオン性界面活性剤が、アルカンスルホン酸塩及びアルキル硫酸エステル塩から選択された少なくとも一種で構成され、(A)脂肪酸アミドと(B)水溶性高分子とを前者/後者=10/90〜90/10(重量比)の割合で含むベース組成物100重量部に対して、(C)非イオン性界面活性剤1〜380重量部及び/又は(D)アニオン性界面活性剤1〜150重量部を含む請求項1〜10のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項12】
樹脂シートの少なくとも一方の面に請求項1〜11のいずれかに記載の表面処理剤で構成された防曇層が形成されている防曇性樹脂シート。
【請求項13】
樹脂シートがコロナ放電処理されており、コロナ放電処理面に防曇層が形成されている請求項12記載の防曇性樹脂シート。
【請求項14】
樹脂シートの一方の面に防曇層が形成され、他方の面に離型層が形成されている請求項12又は13記載の防曇性樹脂シート。
【請求項15】
樹脂シートがスチレン系樹脂シートである請求項12〜14のいずれかに記載の防曇性樹脂シート。
【請求項16】
樹脂シートの少なくとも一方の面に、請求項1〜11のいずれかに記載の表面処理剤を塗布する防曇性樹脂シートの製造方法。
【請求項17】
樹脂シートに表面処理剤を塗布した後、ロール状に巻き取る請求項16記載の製造方法。
【請求項18】
樹脂製容器の少なくとも一部の表面に請求項1〜11のいずれかに記載の表面処理剤で構成された防曇層が形成されている容器。
【請求項19】
請求項12〜15のいずれかに記載の防曇性樹脂シートで形成された容器。
【請求項20】
樹脂シートの少なくとも一方の面に請求項1〜11のいずれかに記載の表面処理剤が塗布量5〜50mg/mで塗布され、かつ容器成形されている防曇性容器。

【公開番号】特開2009−249575(P2009−249575A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101723(P2008−101723)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】