説明

防曇用途において用いるために適するイオノマー組成物

帯電防止特性、強化されたガス透過特性および吸収特性ならびに防曇特性の特有の組み合わせを有する有機酸塩変性カリウムイオノマー性コポリマーが開示されている。これらの組成物を含むフィルムおよび積層体構造は、優れたガス(例えば、酸素、水蒸気など)吸収特性および透過特性ならびに汚染防止(静電荷による低い微粒子接着性および低い曇り性を含む)特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2003年11月11日出願の米国特許出願第10/704,934号明細書および2004年5月12日出願の米国仮特許出願第60/570,547号明細書の利益を請求する。
【0002】
本発明は、防曇特性を有する有機酸塩変性カリウムイオノマー性コポリマーに関する。本発明は、こうしたイオノマーを含む積層体および単層構造体または多層構造体にも関連する。
【背景技術】
【0003】
一般に、高分子材料よりなる溶融二次加工物品は、静電的に帯電されることになることが可能であり、こうした物品の表面は空気中のダストの接着のゆえに汚染されることが多く、こうした接着は貯蔵、輸送および使用の段階で起きる。こうした二次加工物品が例えば粉末を含むための袋である時、袋の外観は袋の内面への内容物の接着を通して損なわれ、商品価値は低下しうる。ダストまたは粉末のこうした接着を防ぐために、表面静電荷の蓄積を防ぐ種々のアプローチは今までに提案され、実用化されてきた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様は、
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマー[式中、Eはエチレンであり、XはC3〜C8α,βエチレン系不飽和カルボン酸であり、Yは、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(ここで、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有する)から選択された軟化用コモノマーである]であって、XがE/X/Yコポリマーの約2〜30重量%であり、YがE/X/Yコポリマーの約0〜40重量%であるE/X/Yコポリマーと、
(ii)1種以上の有機酸またはその塩と
を含むブレンドを含む組成物であって、前記ブレンド中のすべての成分中の組み合わせカルボン酸官能基がカリウムによって少なくとも部分的に中和されている組成物である。
【0005】
本発明の第2の態様は上述した組成物を含む物品である。例えば、表面層と中間層の両方を含む少なくとも3層を含む層状構造を含む積層体であって、前記表面層の1層が上述した組成物よりなる積層体。
【0006】
本発明の物品のもう1つの例は、表面層と中間層の両方を含む少なくとも3層を含む層構造を含む多層容器であって、前記表面層の1層が上述した組成物よりなる多層容器である。
【0007】
本発明の物品のもう1つの例は本発明の組成物を含む単層フィルムまたは多層フィルムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書で開示されたすべての参考文献を引用して援用する。
【0009】
「コポリマー」は2種以上の異なるモノマーを含むポリマーを意味する。「ジポリマー」および「ターポリマー」という用語は、それぞれ2種および3種の異なるモノマーのみを含むポリマーを意味する。「種々のモノマーのコポリマー」という言葉は、種々のモノマーから単位が誘導されているコポリマーを意味する。
【0010】
イオノマー樹脂(イオノマー)は、エチレンなどのオレフィンとアクリル酸、メタクリル酸またはマレイン酸などの不飽和カルボン酸の金属塩と任意に軟化用コモノマーとのイオン性コポリマーである。リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたは亜鉛などの少なくとも1種のアルカリ金属カチオン、遷移金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンあるいはこうしたカチオンの組み合わせは、コポリマー中の酸性基の多少の部分を中和するために用いられ、強化された特性を示す熱可塑性樹脂をもたらす。例えば、「エチレン/(メタ)アクリル酸(略してE/(M)AA)」はエチレン(略してE)/アクリル酸(略してAA)および/またはエチレン/メタクリル酸(略してMAA)のコポリマーを意味する。その後、それらを少なくとも1種のアルカリ金属カチオン、遷移金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和して、イオノマーを形成することが可能である。カリウムカチオンで少なくとも部分的に中和されたイオノマーは特に注目に値する。ターポリマーも、エチレンなどのオレフィン、不飽和カルボン酸および中和してより柔らかいイオノマーを形成させることが可能である「より柔らかい」樹脂を提供するアルキル(メタ)アクリレートなどの他のコモノマーから製造することが可能である。イオノマーは有機酸またはその塩の導入によって変性することも可能である。
【0011】
帯電防止組成物
上述したように、本発明の第1の態様は、
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマー[式中、Eはエチレンであり、XはC3〜C8α,βエチレン系不飽和カルボン酸であり、Yは、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(ここで、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有する)から選択された軟化用コモノマーである]であって、XがE/X/Yコポリマーの約2〜30重量%であり、YがE/X/Yコポリマーの約0〜40重量%であるE/X/Yコポリマーと、
(ii)1種以上の有機酸またはその塩と
を含むブレンドを含む組成物であって、前記ブレンド中のすべての成分中の組み合わせカルボン酸官能基がカリウムによって少なくとも部分的に中和されている組成物である。
【0012】
本発明において有用なイオノマーは、カリウムによって少なくとも部分的に中和されている約80,000〜約500,000の重量平均分子量を有する、約2〜約30重量%の(M)AAを有するE/(M)AAジポリマーを含む。
【0013】
中和は、最初にE/(M)AAコポリマーを製造し、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンまたは遷移金属カチオンを有する無機塩基で前記コポリマーを処理することにより行うことが可能である。本発明の組成物はカリウムによって少なくとも部分的に中和されるが、他のカチオン(例えば、ナトリウム、マグネシウムまたは亜鉛)も本発明の最終組成物中に存在してもよい。他のカチオンは、この段階でこうしたカチオンでE/(M)AAコポリマーを中和することにより組成物に最も便利に導入される。コポリマーからイオノマーを調製する方法は技術上知られている。コポリマーは、エチレンとC3〜C8α,βエチレン系不飽和カルボン酸の少なくとも部分的に中和された溶融加工性コポリマーである。
【0014】
上で示したように、エチレン酸イオノマーは他のイオノマーまたはポリマーと溶融ブレンドすることが可能であり、および/または有機酸またはその塩の導入によって変性することが可能である。従って、本発明の組成物は、有機酸またはその塩、特に6〜36個の炭素原子を有する脂肪族一官能性有機酸またはその塩と溶融ブレンドされた上のコポリマーに関連する。好ましくは、有機酸は、36個より少ない炭素原子を有する1種以上の少なくとも部分的に中和された脂肪族一官能性有機酸またはその塩である。好ましくは、ブレンド中のすべての酸成分の80%より多くは中和され、より好ましくは、90%より多くは中和されている。最も好ましくは、ブレンド中のすべての酸成分の100%は中和されている。上で示したように、本発明の組成物中の酸成分はカリウムによって少なくとも部分的に中和される。本発明において用いられる有機酸は、特に不揮発性で非移行性であるものである。有機酸または有機酸塩は好ましい。脂肪酸の非限定的で例示的な例は、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸およびベヘン酸である。ステアリン酸およびオレイン酸は好ましい。
【0015】
有機酸またはその塩は、非変性コポリマーに比べてコポリマーの帯電防止特性、ガス透過特性および防曇特性を強化するのに十分な量で添加される。好ましくは、有機酸または塩は、コポリマーおよび有機酸の全量の少なくとも約5%(重量基準)の量で添加される。より好ましくは、有機酸またはその塩は、少なくとも約15%、なおより好ましくは少なくとも約30%の量で添加される。好ましくは、有機酸は、コポリマーおよび有機酸の全量を基準にして約50%(重量基準)以下の量で添加される。有機酸またはその塩が約45%以下の量で添加される組成物は注目に値する。有機酸またはその塩が約40%以下の量で添加される組成物も注目に値する。
【0016】
酸コポリマーはポリマーの結晶を壊す第3の「軟化用」モノマーを任意に含んでもよい。これらの酸コポリマーは、アルファオレフィンがエチレンである時、E/X/Yコポリマー(式中、Eはエチレンであり、Xはα,βエチレン系不飽和カルボン酸、特にアクリル酸およびメタクリル酸であり、Yは軟化用コモノマーである)として表現することが可能である。好ましい軟化用コモノマーは、C1〜C8アルキルアクリレートエステルまたはメタクリレートエステルである。XおよびYは、広い%範囲で存在することが可能であり、Xはポリマーの典型的には約35重量%(wt.%)以下であり、Yはポリマーの典型的には約50重量%以下である。
【0017】
上述した溶融加工性イオノマーを調製するアルファオレフィン、C3〜C8α,βエチレン系不飽和カルボン酸および軟化用モノマーのコポリマーは技術上知られている方法によって製造することが可能である。コポリマーには、エチレン/(メタ)アクリル酸/n−ブチル(メタ)アクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/イソブチル(メタ)アクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレートおよびエチレン/(メタ)アクリル酸/エチル(メタ)アクリレートターポリマー、特にエチレン/(メタ)アクル酸/ブチル(メタ)アクリレートコポリマーなどのエチレン酸コポリマーが挙げられる。
【0018】
高い酸(X)レベルのエチレン酸コポリマーは、モノマー−ポリマー相分離のゆえに連続重合において調製することが難しい。しかし、この困難は米国特許第5,028,674号明細書に記載された「共溶媒技術」の使用によって、または酸がより少ないコポリマーを調製できる圧力より多少高い圧力を用いることにより回避することが可能である。
【0019】
有機酸(塩)変性のための方法は技術上知られている。特に、本発明の変性され高度に中和された酸コポリマーイオノマーは、
(a)(1)軟化用モノマーの任意の添加によってまたは他の手段によって結晶を壊されたエチレンα,βエチレン系不飽和C3〜C8カルボン酸コポリマーまたはその溶融加工性イオノマーを(2)十分な不揮発性で非移行性の有機酸と溶融ブレンドする工程、および同時にまたは後で
(b)添加された水の存在下で十分な量のカチオン源(カリウムカチオンから少なくとも部分的になる)を添加して、すべての酸部分(酸コポリマーおよび不揮発性で非移行性の有機酸中の酸部分を含む)の所望する中和レベルを達成する工程、
によって製造することが可能である。
【0020】
本発明のイオノマーと有機酸のブレンドは、有機酸(またはその塩)を別個に製造された溶融加工性イオノマーと溶融ブレンドし、その後、同じまたは異なるカチオンで任意に更に中和して、イオノマーと有機酸の得られたブレンドの所望する中和レベルを達成することにより製造することが可能である。好ましくは、中和されなかったターポリマーおよび有機酸は溶融ブレンドされ、その後、現場(in−situ)で中和される。この場合、所望する中和レベルは1工程で達成することが可能である。
【0021】
例えば、(メタ)アクリル酸を含むエチレンコポリマーは、ステアリン酸カリウム(または他の有機酸のカリウム塩)または代案としてステアリン酸(または他の有機酸)のいずれかと溶融ブレンドすることが可能であり、カリウムカチオン源により現場(in−situ)で中和して、100%を含む種々の中和度の有機酸変性カリウムイオノマーに有機酸変性コポリマーを転化することが可能である。
【0022】
混合イオンを有する組成物は、既に部分的に中和されたイオノマー(またはそのブレンド)を過剰の代替カチオン源で処理することにより調製することができよう。例えば、ナトリウムによって少なくとも部分的に中和されたイオノマーブレンドは、ナトリウムイオンとカリウムイオンの混合物で残りの酸官能基をイオノマーに中和するのに十分な量の水酸化カリウムと合わせて溶融加工することにより変性することが可能である。
【0023】
溶融ブレンディングの非限定的な例をここで記載する。Werner & Pfleiderer(W&P)製の二軸スクリュー押出機を用いて、酸コポリマーおよび有機酸中の酸の目標量を中和(公称%中和)するために必要とされるコンセントレートの形を取った化学量論量の水酸化カリウムをペレットブレンドとして酸コポリマーと前もってブレンドする。ペレットブレンドを有機酸と溶融混合し、添加された水の存在下でW&P二軸スクリュー押出機内で中和する。
【0024】
本発明において用いられる有機酸は、特に6〜36個の炭素原子を有する脂肪族一官能性(飽和、不飽和または多不飽和)有機酸を含む。これらの有機酸の塩も用いてよい。脂肪酸または脂肪酸塩は好ましい。本発明において有用な特定の有機酸には、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸およびリノール酸が挙げられる。2−メチルステアリン酸およびその塩ならびに2−メチルオレイン酸およびその塩などのステアリン酸および/またはオレイン酸の分岐異性体の使用も注目に値する。12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシル−酸も本明細書で用いるために好ましい。好ましくは、これらの酸のカリウム塩が用いられる。
【0025】
防曇組成物を有機酸塩変性カリウムイオノマーのみから構成してよいけれども、組成物またはその積層物あるいは共押出物の有用性に悪影響を及ぼさない限り、もう1種の熱可塑性ポリマーを組成物にブレンドしてもよい。
【0026】
コポリマーは1種以上の従来のイオノマー性コポリマー(例えば、ジコポリマー、ターポリマーなど)と更にブレンドすることが可能である。コポリマーは1種以上の熱可塑性樹脂とブレンドすることが可能である。本発明のイオノマーは非イオン性熱可塑性樹脂ともブレンドして、製品特性を操作することができよう。非限定的で例証的な例として、非イオン性熱可塑性樹脂には、ポリウレタン、ポリエーテルエステル、ポリアミドエーテル、ポリエーテルウレア、PEBAX(ポリエーテルブロックアミドに基づくブロックコポリマーのファミリー、Atochemによって商業的に供給されている)などの熱可塑性エラストマー、スチレンブタジエンスチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン(エチレンブタジエン)スチレンブロックコポリマーなど、ポリアミド(オリゴマーおよびポリマー)、ポリエステル、ポリビニルアルコール;、PE、PP、E/Pコポリマーなどを含むポリオレフィン;、酢酸ビニル、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、エポキシ官能化モノマー、CO、ビニルアルコールなどの種々のコモノマーとのエチレンコポリマー、無水マレイン酸グラフト化、エポキシ化などを有する官能化ポリマー、EPDMなどのエラストマー、メタロセン触媒PEおよびコポリマー、熱硬化性エラストマーの粉砕された粉末などが挙げられる。
【0027】
ブレンドされた熱可塑性ポリマーの量は、全カリウムイオノマー組成物の好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、特に好ましくは60重量%以下である。換言すると、カリウムイオノマーが全組成物の5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、特に好ましくは40重量%以上を占めることが好ましい。
【0028】
以下で記載するものなどの、積層体の表面層のために用いることができる高分子材料から選択された熱可塑性ポリマーは注目に値する。これらの材料の内、オレフィン系ポリマー、特にエチレンホモポリマー、エチレンと3個以上の炭素原子を有するα−オレフィンのコポリマーおよび酢酸ビニルおよび不飽和カルボン酸エステルなどの不飽和エステルとエチレンのコポリマーから選択されたエチレン系ポリマーの使用は好ましい。エチレン系ポリマーなどのバージン材料を用いる必要はない。例えば、エチレン系ポリマーを表面層のために用いる時、成形中に形成された耳などの規格外製品または成形廃物を再循環してもよい。
【0029】
防曇組成物において、2個以上のアルコールヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物も特性を改善するためにブレンドすることが可能である。こうした化合物の特定の例には、種々の分子量を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール;、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、グリセロール、ヘキサントリオール、ペンタエリトリトールおよびソルビトールならびにそれらのエチレンオキシド付加体などの多価アルコール、多価アミンとアルキレンオキシドの付加体が挙げられる。ポリヒドロキシ化合物の効果的なブレンド比は、有機酸塩変性カリウムイオノマーの量を基準にして15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以下である。
【0030】
本発明の有機酸塩変性カリウムイオノマーは有用な防曇特性も示す。普通の非変性イオノマーから調製された物品(例えば、フィルムまたはシート)は低い表面親水性を有する。高水分条件において、非変性イオノマーの表面上に凝縮した水分は、光を散乱するとともにフィルムの光学的透明性を落とす(すなわち「曇り性」)小さい水ビードを形成する。それに反して、本発明の有機酸塩変性カリウムイオノマー組成物の二次加工されたフィルムまたはシート(ブローフィルム、押出キャスティング、射出成形などによって調製されたもの)は、高水分条件に供された時、水分凝縮が表面を効果的に濡らして光を散乱しない表面被膜を形成する十分な表面親水性を示す。従って、ステアリン酸カリウム(または他の有機酸のカリウム塩)変性イオノマーは非変性イオノマーと比較して新たな防曇特性を示す。
【0031】
本発明の有機酸塩変性カリウムイオノマーは、有用なガス透過特性および高い水蒸気透過率ならびに吸収も示す。本発明の組成物の強化された酸素透過率は、高酸素含有率の存在が(肉などの)内容物の外観を改善するか、または(新鮮なシーフードなどの)内容物の無酸素腐敗を抑制する食品包装用途のために特に有用である。高い水透過率および蒸気透過率は、例えば、液体を吸収し、その後、後で液体をもう1つの材料に移送するために用いることが可能である物品を調製するために有用である。これらの特性は、おしめ、衣料、保護シート、医療用途および建物構造における快適さのために乾燥を維持するなどの水性液および水溶液または水蒸気の除去がそれらの機能に対して重要である用途のためにも有用である。
【0032】
本発明の組成物は単層構造または多層構造において用いて、これらの構造に防曇特性を付与することが可能である。例えば、本発明の組成物は他の透過性材料と(例えば、積層または共押出によって)組み合わせて、肉および魚の包装ならびにおしめライナーなどの酸素および/または水分を吸収するとともに透過することができる構造を形成することが可能である。本発明の組成物は非吸収性バリア材料と(例えば、積層または共押出によって)組み合わせて、構造の一方側からの水分を吸収することができるが、水分が構造の他方側から排出しないようにする構造を形成することが可能である。こうした構造は、食品用の包装フィルムおよび/または加工フィルムならびに拭取り布において有用である。場合によって、本発明の組成物を他の吸収性材料および不透過性材料と組み合わせて、(例えば、包装、おしめまたは拭取り布の)構造からの水分透過を許さない吸収性構造を形成することが望ましい。本発明の組成物は、フィルム、容器、蓋などの包装用途において、および組成物の防曇特性が望ましい可能性がある農業フィルムにおいても有用であることが可能である。
【0033】
不飽和カルボン酸の例には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどが挙げられる。アクリル酸および/またはメタクリル酸は特に好ましい。共重合成分として機能することが可能である極性モノマーの例には、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、メチルメタクリレート、マレイン酸ジメチルおよびマレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボンエステル、一酸化炭素などが挙げられる。特に、不飽和カルボン酸エステルは適する重合成分である。
【0034】
亜鉛イオノマーの基ポリマーとしてのエチレン−不飽和カルボン酸コポリマーとして、約1〜約25重量%、特に約5〜約20重量%の不飽和カルボン酸含有率を有するコポリマーが好ましい。重合することができる極性モノマーの含有率は、例えば約40重量%以下、好ましくは約30%以下である。約10〜約90%、特に約15〜約80%の中和度を有する亜鉛イオノマーは好ましい。加工性および実用的物理特性を考慮する時、190℃および2160gの荷重で測定して約0.1〜約100g/10分、好ましくは約0.2〜約50g/10分のメルトフローインデックスを有するイオノマーの使用は好ましい。
【0035】
本発明の積層体は、好ましくは押出塗布、共押出成形またはブロー成形によって個々の層を積層することにより製造することが可能である。全積層体の厚さは任意であり、その用途に応じて異なるけれども、厚さは、好ましくは約10〜約3000μm、特に例えば約20〜約1000μmである。本発明の積層体において、少なくとも1層の表面層は、20秒以下、好ましくは10秒以下、より好ましくは1秒以下の10%減衰時間(電位が+5000Vの印加電圧から+500Vに減衰するまでに要する時間)を有する。10%減衰時間は相対湿度50%の雰囲気下で23℃で測定される。この目的のために、中間層が5μm以上、好ましくは10μm以上の厚さを有し、上で示された減衰特性を有する表面層の厚さが表面層の厚さの観点で、あるいは回収層または接着剤層が形成される場合、表面層および追加の層の全厚さの観点で500μm以下、特に300μm以下であることが好ましい。更に、実用的性能を考慮する時、表面層の厚さ(あるいは回収層または接着剤層が形成される時)、表面層および追加の層の全厚さ対中間層の厚さの比は、好ましくは約0.1〜約100μm、より好ましくは約0.5〜約50μmである。
【0036】
個々の層に必要に応じて種々の添加剤を導入してもよい。添加剤の例には、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、潤滑剤、粘着防止剤、無機充填剤、発泡剤などが挙げられる。例えば、層を構成するポリマー成分100重量部当たり約0.1〜約10重量部の比率でアゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンジアミン、スルホニルヒドラジド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなどの有機化学発泡剤または無機化学発泡剤を導入することが可能である。
【0037】
本発明の積層フィルムは次の通り共押出によって調製することが可能である。種々の成分の粒状物を適する押出機内で溶融させ、加工技術を用いてフィルムに加工する。共押出のために、溶融ポリマーをダイまたはダイのセットに通して、層流として加工される溶融ポリマーの層を形成し、その後、層状構造を形成するために冷却する。本発明のフィルムは、共押出し、その後、1層以上の他の層上への積層によって製造してもよい。適する加工技術には、ブローフィルム押出、キャストフィルム押出、キャストシート押出および押出塗布が挙げられる。好ましくは、本発明のフィルムはブローフィルム押出を通して得られるブローフィルムである。
【0038】
本発明のフィルムは、フィルムの即時の冷却またはキャスティングの後に更に配向させることが可能である。一般的条件において、本方法は溶融ポリマーの多層の層流を共押出する工程、共押出物を冷却する工程および冷却された共押出物を少なくとも1つの方向に配向させる工程を含む。フィルムを一軸配向させてもよいが、好ましくは、フィルムの平面において2つの互いに垂直の方向に引っ張ることにより二軸に配向させて、機械的特性と物理的特性の満足な組み合わせを達成する。
【0039】
一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムに対する配向および延伸装置は技術上知られており、本発明のフィルムを製造するために当業者によって適合させてもよい。こうした装置および方法の例は、例えば、米国特許第3,278,663号明細書、第3,337,665号明細書、第3,456,044号明細書、第4,590,106号明細書、第4,760,116号明細書、第4,769,421号明細書、第4,797,235号明細書および第4,886,634号明細書で開示されている装置および方法を含むと考えられる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、フィルムは、押出後に第一チューブを冷却し、再加熱し、その後、内部ガス圧によって広げて横配向を誘発し、縦配向を誘発する速度で差速ニップまたは搬送ロールによって引っ張られる第一チューブを押し出すことにより同時二軸配向を行ってもよいダブルバブル押出法を通して配向される。より詳しくは、第一チューブは環状ダイから溶融押出される。この押出された第一チューブは迅速に冷却して壊れる結晶を最少化する。第一チューブは、その後、その配向温度に再び加熱(例えば水浴によって)する。配向ゾーンにおいて、第二チューブをインフレーションによって形成し、それによってフィルムは横方向に迅速に広がり、広がりが好ましくは同時に両方向で起きるような温度で機械方向に引っ張るか、または延伸する。チューブの広がりにはドローポイントで厚さの激しい急減を伴う。その後、ニップロールを通して管状フィルムを再び平らにする。フィルムを再膨張させるとともにアニール工程(熱固定)に通してもよい。熱固定中にフィルムはもう一度加熱して収縮特性を調節する。平らなフィルムを調製するために、管状フィルムをその長さに沿ってスリットすることが可能であり、平らなシートに切り開くことが可能であり、それをロール掛けする、および/または更に処理することが可能である。
【0041】
好ましくは、本発明のフィルムは、50メートル/分(m/min)より高い速度で且つ200m/min以下の速度で製造機械により加工することが可能である。従って、本発明のフィルムは高速機械に適合する。
【0042】
包装材料に加えて、本発明の積層体は、ダイシングテープ、バックグライディングフィルムなどの半導体のための接着剤テープまたは接着剤フィルム、マーキングフィルムなどの電気材料および電子材料、集積回路支持テープおよび電子部品をテーピングするためのテープ、食品を包装するための材料、医療用品、保護フィルム(例えば、ガラス、プラスチックまたは金属のボードおよびレンズのためのガードフィルムまたはガードシート)、スチール−ワイヤ搬送材料、クリーンルームカーテン、壁紙、マット、床材料、可撓性容器のインナーバッグ、容器、シューズ、バッテリーセパレータ、水分透過性フィルム、汚染防止フィルム、防塵フィルム、無PVCフィルム、化粧品、洗剤、シャンプー、リンスなどのためのチューブおよびボトルなどの基材料などの種々の用途のために用いることが可能である。
【0043】
更に綿密に仕上げることなく、前の記述を用いる当業者が本発明をその最も完全な範囲まで利用することが可能であることが考えられる。従って、以下の実施例は単なる例示として解釈されるべきであり、決して開示の限定ではない。用いられた原材料の評価のための方法および以下の実施例および比較例で得られた積層体の防曇性能を以下に示している。
【実施例】
【0044】
用いられた材料
イオノマー1は、エチレン、n−ブチルアクリレート(23.5重量%)およびメタクリル酸(9重量%)を含むターポリマーであり、このターポリマーは水酸化ナトリウムを用いて52%(公称)にナトリウムで中和されており、1のメルトインデックスを有する。
【0045】
イオノマー2は、エチレンおよびメタクリル酸(10重量%)を含むコポリマーであり、このコポリマーは水酸化ナトリウムを用いて55%(公称)にナトリウムで中和されており、1.3のメルトインデックスを有する。
【0046】
イオノマー3は、エチレンおよびメタクリル酸(19重量%)を含むコポリマーであり、このコポリマーは水酸化ナトリウムを用いて37%(公称)にナトリウムで中和されており、2.6のメルトインデックスを有する。
【0047】
エチレン酸コポリマー1(EAC−1)は、10のメルトインデックスを有する、エチレンおよびメタクリル酸(8.7重量%)を含むジポリマーである。
【0048】
エチレン/酢酸ビニルコポリマー1(EVA−1)は、2.5のメルトインデックスを有する、エチレンおよび酢酸ビニル(18重量%)を含むジポリマーである。
【0049】
一般手順
Werner & Pfleiderer製の二軸スクリュー押出機を用いて、イオノマー1を15重量%、30重量%および40重量%でステアリン酸カリウムと溶融ブレンドして、実施例1〜3を提供した。同様に、イオノマー2を15重量%、30重量%および40重量%でステアリン酸カリウムと溶融ブレンドして、実施例4〜6を提供した。その後、実験室規模のブローフィルム装置を用いて、厚さ約10ミルの単層ブローフィルムに組成物を加工した。以下の記載したように凝縮による曇りに耐えるフィルムの能力についてフィルムを試験した。




【0050】
表1

【0051】
Werner & Pfleiderer製の二軸スクリュー押出機を用いて、実施例6の組成物を種々の割合でイオノマー2と溶融ブレンドして、実施例7および8(表2)を提供した。その後、実験室規模のブローフィルム装置を用いて、厚さ約3ミルの単層ブローフィルムに組成物を加工した。以下の記載したように凝縮による曇りに耐えるフィルムの能力についてフィルムを試験した。
【0052】
表2

【0053】
Werner & Pfleiderer製の二軸スクリュー押出機を用いて、EAC−1を20重量%でステアリン酸カリウムと溶融ブレンドして、実施例9(表3)を提供した。実施例9の組成物を種々の割合でEVA−1とブレンドして、実施例11および12を提供した。Werner & Pfleiderer製の二軸スクリュー押出機を用いて、EVA−1を20重量%でステアリン酸カリウムと溶融ブレンドして、実施例10を提供した。実施例10の組成物を追加のEVA−1とブレンドして、実施例13を提供した。実験室規模のブローフィルム装置を用いて、厚さ約3ミルの単層ブローフィルムに組成物を加工した。フィルムの光学的特性を確認するためにフィルムを目視で検査した。イオノマー成分のないフィルムは曇っており、有機酸のカリウム塩が組成物中で均一に分散されていなかったかもしれないことを示していた。以下の記載したように凝縮による曇りに耐えるフィルムの能力についてフィルムを試験した。
【0054】
表3

【0055】
Werner & Pfleiderer製の二軸スクリュー押出機を用いて、イオノマー3を20重量%、30重量%、40重量%および50重量%でイソステアリン酸(Century1115としてArizona Chemicalsから入手できる)と溶融ブレンドし、ブレンド中のすべての酸官能基の100%を中和する化学量論量のKOHの存在下で現場(in−situ)で中和して、実施例15〜18を提供した。それを表4でまとめている。実施例14は、イソステアリン酸カリウム公称10重量%を有する組成物を提供するための実施例15とイオノマー4の50:50ブレンドであった。Werner & Pfleiderer製の二軸スクリュー押出機を用いて、厚さ約3ミルの単層キャストフィルムに組成物を加工した。以下の記載したように凝縮による曇りに耐えるフィルムの能力についてフィルムを試験した。
【0056】
表4

【0057】
曇り試験
スタイロフォームカップに体積の約75%までほぼ沸騰している熱水を充填する。試験フィルムをカップの上に置き、短時間後にフィルムの目視検査により、フィルムが凝縮によって曇ったか否かを決定した。曇らなかったフィルムを「防曇性」として示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1種のE/X/Yコポリマー[式中、Eはエチレンであり、XはC3〜C8α,βエチレン系不飽和カルボン酸であり、Yは、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(ここで、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有する)から選択された軟化用コモノマーである]であって、XがE/X/Yコポリマーの約2〜30重量%であり、YがE/X/Yコポリマーの約0〜40重量%であるE/X/Yコポリマーと、
(ii)1種以上の有機酸またはその塩と
を含むブレンドを含む防曇性フィルムであって、前記ブレンド中のすべての成分中の組み合わせカルボン酸官能基がカリウムによって少なくとも部分的に中和されている防曇性フィルム。

【公表番号】特表2007−537350(P2007−537350A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513450(P2007−513450)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/017016
【国際公開番号】WO2005/113671
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】