説明

防水シート継ぎ目構造

【課題】防水層の重ね継ぎ部を、良好な防水性能を維持しながら、防水下地に対して無理なく確実に固定できるようにする。
【解決手段】一対の防水シートSの端縁部どうしが突き合わさる状態に配置され、それら突合せ端縁部の下面にわたって、端縁部長手方向に沿った帯状の継ぎ目用防水シートS3が接着されて一連の防水層Wの重ね継ぎ部1が構成してあり、重ね継ぎ部1の下方に位置する防水下地G部分に、継ぎ目用防水シートS3の厚み寸法と同じ深さの堀込部3が設けてあり、その堀込部3内に、重ね継ぎ部1の継ぎ目用防水シートS3部分が納められ、防水層Wは、ディスク固定板Mと、そのディスク固定板Mの中央部を防水下地Gに固定する固定ネジとによって防水下地Gに固定してあり、固定ネジは、堀込部3の防水下地G部分とそれに隣接する隣接防水下地G部分との境目に挿通する状態に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水下地上に所定幅の重ね継ぎ部を介して隣接する一対の防水シートの端縁部どうしが水密状態に連結してある防水シート継ぎ目構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の防水シート継ぎ目構造としては、図5に示すように、面一の防水下地Gの上に敷設された一方の防水シートS1の端縁部に、他方の防水シートS2の端縁部を上から重ねて接着し、その両防水シートの重なり部分で前記重ね継ぎ部1を構成してあるものがあった(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−332524号公報(図4)
【特許文献2】特許1703169号公報(図2)
【特許文献3】特開昭63−89766号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の防水シート継ぎ目構造によれば、重ね継ぎ部そのものは、防水下地上に二枚の防水シートが重なっているから、他の部分に比べて盛り上がった状態となっており、例えば、歩行の障害となったり、防水層上に載置される載置物(例えば、ウッドデッキの脚部や、装置の接地部等)のガタツキの原因になる問題があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、防水シートどうしの重ね継ぎ部が、他物に対する障害となり難い防水シート継ぎ目構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
防水下地上に所定幅の重ね継ぎ部を介して隣接する一対の防水シートの端縁部どうしが水密状態に連結してある防水シート継ぎ目構造において、前記一対の防水シートの端縁部どうしが突き合わさる状態に配置され、それら突合せ端縁部の下面にわたって、端縁部長手方向に沿った帯状の継ぎ目用防水シートが接着されて前記重ね継ぎ部が構成してあり、前記重ね継ぎ部の下方に位置する前記防水下地部分に、前記継ぎ目用防水シートの厚み寸法と同じ深さの堀込部が設けてあり、その堀込部内に、前記重ね継ぎ部の継ぎ目用防水シート部分が納められていてもよい。
【0007】
その構成によれば、前記一対の防水シートの端縁部どうしが突き合わさる状態に配置され、それら突合せ端縁部の下面にわたって、端縁部長手方向に沿った帯状の継ぎ目用防水シートが接着されて前記重ね継ぎ部が構成してあり、前記重ね継ぎ部の下方に位置する前記防水下地部分に、前記継ぎ目用防水シートの厚み寸法と同じ深さの堀込部が設けてあり、その堀込部内に、前記重ね継ぎ部の継ぎ目用防水シート部分が納められているから、一対の防水シートどうしは、前記継ぎ目用防水シートを介して突合せ状態で連結されて一体の防水層を構成できる。そして、前記堀込部を形成してあることで、その内部に継ぎ目用防水シートが納まり、重ね継ぎ部の上面を、他の防水シート部分と面一の状態に保つことが可能となる。
従って、前記重ね継ぎ部が、例えば、歩行の障害となったり、防水層上に載置される載置物(例えば、ウッドデッキの脚部や、装置の接地部等)のガタツキの原因になるのを未然に防止することが可能となる。
更には、一対の防水シートも前記継ぎ目用防水シートも、それぞれが形成された時の自然の形状、即ち、平面形状を保った状態で連結されているから、従来のように、上に被さる防水シートの局部が折れ曲がった状態になることが無く、より防水層の耐久性を向上させることが可能となる。
【0008】
また、前記継ぎ目用防水シートは、前記防水下地の前記堀込部上に接着してあってもよい。
【0009】
その構成によれば、上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、前記継ぎ目用防水シート本来の役割である前記一対の防水シートどうしの連結作用に加えて、防水下地に対する防水層の固定をも叶えることができ、より安定した状態に防水層を構成することができる。
更には、例えば、昼夜の温度変化等による膨張収縮の繰り返しで、特に、前記一対の防水シート間に引っ張り力が作用する場合に、その応力が、両防水シートどうしの突合せ部の前記継ぎ目用防水シート部分に集中して作用し易いが、堀込部と継ぎ目用防水シートとが一体に接着されていることで、その応力集中を防水下地に分散して負担させることが可能となり、継ぎ目用防水シートが寸断することを防止し易くなる。
その結果、防水層全体とした耐久性の向上を図ることが可能となる。
【0010】
また、前記防水下地は、その表層部が不燃ボードで構成してあり、前記堀込部は、隣接範囲と別の帯状の堀込部用不燃ボードで構成してあり、堀込部用不燃ボード上面に前記継ぎ目用防水シートが接着一体化してあってもよい。
【0011】
その構成によれば、上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、防水層設置対象部の不燃性を向上させることができる。
また、通常の厚みの不燃ボードに、溝加工等を施して堀込部を形成するのに比べて、極めて簡単に堀込部を構成することが可能となり、下地形成作業の工期短縮と共にコストダウンをも叶えることができる。
即ち、重ね継ぎ部に隣接する一般部分の不燃ボード間に、前記継ぎ目用防水シートの厚み寸法だけ薄く形成した堀込部用不燃ボードを位置させるだけの簡単な作業で、重ね継ぎ部の堀込部を形成することができる。そして、予め、堀込部用不燃ボードの上面に継ぎ目用防水シートを接着しておいたり、又は、一般部分の不燃ボード間に配置した堀込部用不燃ボードの上面に継ぎ目用防水シートを接着すると、重ね継ぎ部がその他の部分と面一状態となり、その上に敷設する防水シートの重ね継ぎ部分も、平坦な状態に仕上げることが可能となる。
【0012】
本発明の第1の特徴構成は、防水下地上に所定幅の重ね継ぎ部を介して隣接する一対の防水シートの端縁部どうしが水密状態に連結してある防水シート継ぎ目構造であって、
前記一対の防水シートの端縁部どうしが突き合わさる状態に配置され、それら突合せ端縁部の下面にわたって、端縁部長手方向に沿った帯状の継ぎ目用防水シートが接着されて一連の防水層の前記重ね継ぎ部が構成してあり、前記重ね継ぎ部の下方に位置する前記防水下地部分に、前記継ぎ目用防水シートの厚み寸法と同じ深さの堀込部が設けてあり、その堀込部内に、前記重ね継ぎ部の継ぎ目用防水シート部分が納められ、前記防水層は、ディスク固定板と、そのディスク固定板の中央部を前記防水下地に固定する固定ネジとによって前記防水下地に固定してあり、前記固定ネジは、前記堀込部の防水下地部分とそれに隣接する隣接防水下地部分との境目に挿通する状態に設けられているところにある。
【0013】
本発明の第2の特徴構成は、前記ディスク固定板は、前記防水シートと前記継ぎ目用防水シートとの間に介在させてあるところにある。
【0014】
本発明の第3の特徴構成は、前記ディスク固定板は、その上面部に前記防水シートの下面が接着されているところにある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】防水シート継ぎ目構造を示す要部斜視図
【図2】防水シート継ぎ目構造を示す要部断面図
【図3】別実施形態の防水シート継ぎ目構造を示す要部断面図
【図4】別実施形態の防水シート継ぎ目構造を示す要部断面図
【図5】従来の防水シート継ぎ目構造を示す要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0017】
図1〜2は、本発明の防水シート継ぎ目構造の一実施形態を示すもので、防水下地G上に所定幅の重ね継ぎ部1を介して隣接する一対の防水シートSの端縁部どうしが水密状態に連結してあり、一連の防水層Wが構成されている。
【0018】
前記防水下地Gは、当該実施形態の場合、ALC板G1上に多孔質断熱板G2が敷設され、その上の表層部G3には不燃ボード2が敷設されて構成されている。
【0019】
また、前記防水シートSは、例えば、塩化ビニル製のものが使用され、所定幅のロール状に巻いた防水シートSを、前記防水下地G上に置いた状態で巻き戻しながら広げ、隣接させる防水シートSの端縁部が突き合う状態に配置させて、後述する継ぎ目用防水シートS3を介して連結することで一連の防水層Wを構成する。
【0020】
尚、防水下地Gへの防水層Wの固定は、重ね継ぎ部1においては前記継ぎ目用防水シートS3を介した接着によって、その他の一般部においては、予め防水下地Gに間隔をあけて固定した金属製の複数のディスク固定板Mを介した接着によって実施されている。
因みに、このディスク固定板Mは、例えば、ステンレス鋼等の金属で構成することができ、中央部が防水下地Gへネジ固定されている。そして、このディスク固定板Mのディスク上面部には、ホットメルト接着層M1が形成されている(図2参照)。従って、ディスク固定板M上に被る状態に配置した防水シートSの上から、磁気誘導加熱装置でこのディスク固定板Mの金属部分を加熱することで前記ホットメルト接着層M1が溶融し、ディスク固定板Mと防水シートSとを接着することができる。
【0021】
次に、前記重ね継ぎ部1について詳しく説明する。
重ね継ぎ部1においては、一対の防水シートS1,S2の端縁部どうしが突き合わさる状態に配置され、それら突合せ端縁部の下面にわたって、端縁部長手方向に沿った帯状の継ぎ目用防水シートS3が接着されており、前記重ね継ぎ部1の下方に位置する前記防水下地G部分に、前記継ぎ目用防水シートS3の厚み寸法と同じ深さの堀込部3が設けてある。そして、その堀込部3内に、前記継ぎ目用防水シートS3部分が納められている。
従って、前記一対の防水シートS1,S2は、全域において面一状態に設置されている。
因みに、継ぎ目用防水シートS3も、前記一対の防水シートS1,S2と全く同じ厚み寸法のもので構成され、材質に関しても同様である。
【0022】
一方、重ね継ぎ部1の箇所における防水下地Gは、表層部G3の不燃ボード2が分割された構成となっている。
具体的には、重ね継ぎ部1直下に配置されている堀込部用不燃ボード2Bと、その両側方に隣接させて配置されている一般部の標準不燃ボード2Aとを備えて構成されている。
前記堀込部用不燃ボード2Bは、その厚み寸法が、前記継ぎ目用防水シートS3の厚み寸法分、標準不燃ボード2Aより薄く設定されている。
従って、不燃ボードからなる表層部G3全体に着目すれば、堀込部用不燃ボード2B部分が堀込部3となる。
そして、堀込部用不燃ボード2Bの上面には、前記継ぎ目用防水シートS3が接着されている。
尚、当該実施形態においては、一部の前記ディスク固定板Mが、標準不燃ボード2Aと堀込部用不燃ボード2Bとの境目に固定ネジが挿通する状態に設置されている。
【0023】
また、前記一対の防水シートS1,S2は、それら端縁部を、前記継ぎ目用防水シートS3上で突き合わさる状態に配置され、継ぎ目用防水シートS3、及び、ディスク固定板Mに接着されている。
そして、両防水シートS1,S2の突合せ端部間の隙間には、シール材4が充填され、重ね継ぎ部1の防水性の向上が図られている。
【0024】
本実施形態の防水シート継ぎ目構造によれば、重ね継ぎ部1の上面を、他の防水シートS部分と面一の状態に保つことが可能となり、例えば、歩行の障害となったり、防水層W上に載置される載置物(例えば、ウッドデッキの脚部や、装置の接地部等)のガタツキの原因になるのを未然に防止することが可能となる。
更には、一対の防水シートS1,S2や、継ぎ目用防水シートS3が、平面形状を保った状態で連結されているから、従来のように、防水シートの局部が折れ曲がった状態になることが無く、より防水層Wの耐久性を向上させることが可能となる。
そして、表層部G3に堀込部3を形成するにあたり、分割した前記堀込部用不燃ボード2Bを、標準不燃ボード2A間に介在させるだけの手間で簡単に行え、防水層形成作業の効率向上やコストダウンを図ることが可能となる。
【0025】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0026】
〈1〉 前記防水下地Gは、先の実施形態で説明した構成に限るものではなく、いかなる構成であっても、防水層の下地となりうる構成であればよく、それを総称して防水下地という。
そして、先の実施形態のように、重ね継ぎ部1の下方のみ分割した下地を備えた構造を説明したが、例えば、図3に示すように、一体の下地に堀込部3を形成してあったり、図4に示すように、重ね継ぎ部1の中間部に分割部が形成された下地であってもよい。
〈2〉 前記継ぎ目用防水シートS3は、先の実施形態で説明した一般部分に用いた防水シートS1,S2と同様のものに限るものではなく、例えば、物性や、厚み寸法を異ならせたものを使用するものであってもよい。
〈3〉 上述の各記載の中の『接着』とは、対応するもの同士を合わさる状態にくっつけることを言い、例えば、粘着材を介在させてくっつけたり、接着材を介在させてくっつけたり、他の公知の手法をも広く採用することができる。また、接着のメカニズムも、溶着や融着によるものであってもよい。
【0027】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 重ね継ぎ部
3 堀込部
G 防水下地
M ディスク固定板
S 防水シート
S3 継ぎ目用防水シート
W 防水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地上に所定幅の重ね継ぎ部を介して隣接する一対の防水シートの端縁部どうしが水密状態に連結してある防水シート継ぎ目構造であって、
前記一対の防水シートの端縁部どうしが突き合わさる状態に配置され、それら突合せ端縁部の下面にわたって、端縁部長手方向に沿った帯状の継ぎ目用防水シートが接着されて一連の防水層の前記重ね継ぎ部が構成してあり、前記重ね継ぎ部の下方に位置する前記防水下地部分に、前記継ぎ目用防水シートの厚み寸法と同じ深さの堀込部が設けてあり、その堀込部内に、前記重ね継ぎ部の継ぎ目用防水シート部分が納められ、前記防水層は、ディスク固定板と、そのディスク固定板の中央部を前記防水下地に固定する固定ネジとによって前記防水下地に固定してあり、前記固定ネジは、前記堀込部の防水下地部分とそれに隣接する隣接防水下地部分との境目に挿通する状態に設けられている防水シート継ぎ目構造。
【請求項2】
前記ディスク固定板は、前記防水シートと前記継ぎ目用防水シートとの間に介在させてある請求項1に記載の防水シート継ぎ目構造。
【請求項3】
前記ディスク固定板は、その上面部に前記防水シートの下面が接着されている請求項1又は2に記載の防水シート継ぎ目構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−140860(P2012−140860A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−101000(P2012−101000)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【分割の表示】特願2007−31885(P2007−31885)の分割
【原出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000178619)アーキヤマデ株式会社 (39)