説明

防水パンの据付方法

【目的】 防水パンを所定位置に正確かつ容易に据え付けることのできる据付方法の提供を目的とする。
【構成】 下面側に複数本の高さ調節ボルト14,14と、上面側の所定位置に複数のプラットホーム15,15を備えたフレーム10を、レベル調節して据付面Pに固設し、このフレーム10上に、底面の所定位置に複数の受プレート5,8を備えた防水パン1を配置し、各プラットホーム15,15と各受プレート5,8とを接着剤を介し接着させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ユニットバスルーム等の底面部を構成する防水パンの据付方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその課題】従来、防水パンは、例えば図7に示すように、防水パン54の底面には一体状にフレーム55が設けられており、このフレーム55に排水管等を先付けしておき、その状態で防水パン54を反転させて、図7のように据付面53上にモルタル等を介し据え付けており、防水パン54を裏返しにする際に防水パン周辺の建築構造材に排水管が当り、排水管を損傷したりする不具合が生ずることがあり、また防水パン54を基礎51上に配設された土台52のレベルに対応させて所定高さにレベル調節する際に、フレーム55の先端等に設けられたアジャストボルト56は上方側からは見えにくい位置にあり、専用に形成された専用工具57を用いて、アジャストボルト56を適宜回動操作してレベル調節する必要があり、レベル調節作業が困難なものであった。
【0003】また、このような専用工具57が入らないような場合には、図8に示すように、防水パン54の周縁の水切り部54aに貫通状に穴を開けて、この穴内に専用工具57を差し込んでアジャストボルト56のレベル調節が行われており、レベル調節作業が極めて困難になるという問題点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、レベル調節作業等が容易で施工性が良好な防水パンの据付方法を提供せんことを目的とし、その第1の要旨は、下面側に複数本の高さ調節ボルトを有し、上面側の所定位置に複数のプラットホームを備えたフレームを、前記高さ調節ボルトを介しレベル調節して据付面に固設し、該フレーム上に、底面側の所定位置に複数の受プレートを備えた防水パンを載置し、前記各プラットホームと前記各受プレートを接着剤を介し接着させることである。
【0005】また第2の要旨は、上面側の所定位置に複数の係合孔を形成してなるフレームをレベル調節して据付面に固設し、防水パンの底面から垂設された複数の係入突起を前記各係合孔に係合させて前記フレーム上に防水パンを据え付けることである。
【0006】
【作用】前記第1の要旨において、防水パンと別体で形成したフレームを、高さ調節ボルトを調節して所定位置に固設しておき、この上に防水パンを載置させて防水パンの底面の受プレートを、フレーム上面に設けられたプラットホームに接着させることにより、フレーム上に強固かつ正確な位置に防水パンを据え付けることができ、施工性が良好なものとなる。
【0007】また第2の要旨において、レベル調節して所定位置に固設されたフレームの係合孔に対し、防水パンの底面から垂設された係入突起を係合させることにより、防水パンを所定位置に容易に据え付けることができる。
【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本例では、据え付けが困難とされる段付防水パン1の据付方法に関し説明する。図1に段付防水パン1の裏面からの斜視図を示し、この段付防水パン1は、洗い場を形成する洗い場部分1Bと、風呂釜が取付けられる風呂部分1Aが段差を形成してFRPにより一体形成されたものであり、風呂部分1Aの洗い場部分1B側には排水口1Cが形成されている。また、風呂部分1Aおよび洗い場部分1Bの底面には、縦方向および横方向に格子状に交わるリブ2,2,2が一体形成されたものとなっており、このリブ2,2,2の交差点において、ボス部3が形成されたものとなっており、風呂部分Aの底面の各コーナー側に4個のボス部3,3,3,3が配置形成されており、同様に洗い場部分1Bの各コーナー側にもそれぞれ4個のボス部3,3,3,3が一体形成されたものとなっており、風呂部分Aのボス部3,3と洗い場部分1Bのボス部3,3は段付防水パン1の長手方向に沿って一列状に形成されたものとなっている。
【0009】風呂部分1Aにおける各ボス部3,3,3,3は図2に示すように、内側に六角形状の嵌入穴3aが形成されており、この嵌入穴3a内には六角柱状の高ナット4を嵌合できるものとなっており、高ナット4を嵌入穴3a内に固定させて、高ナット4上に四角形状の受プレート5を載置させ、この受プレート5の中央部の貫通孔5a内に、上方よりボルト6を差し込んで、ボルト6を高ナット4に螺合させて固定することができ、ボルト6の上端には半球状に突出した係入突起6aが一体形成されている。このように予め風呂部分1Aの各ボス部3,3,3,3には高ナット4を介し、受プレート5とボルト6を取付けておくことができる。
【0010】また、さらに前記洗い場部分1Bにおける各ボス部3,3,3,3には、図3に示すように筒状の筒脚7が外嵌される。筒脚7は金属製で形成されており、その下端部外周にはリブ2,2,2,2が嵌まり込む切欠スリット7a,7a,7a,7aが形成されており、またビス孔7bが所定間隔で形成されている。また、筒脚7の上端には、溶接により平板四角形状の受プレート8が固設されており、さらに受プレート8の上面中央部には、上方に突出して半球状の係入突起8aが溶接により固設されている。ボス部3の嵌入穴3a外周に上方より筒脚7の切欠スリット7a部分を嵌入させて、外周側よりビス9をビス孔7bにねじ込んでボス部3に筒脚7を固定状に立設させることができる。このように洗い場部分1Bの各ボス部3,3,3,3には予め筒脚7をそれぞれ固定させておくことができる。
【0011】一方、防水パン1とは別体でフレーム10を別途形成させておき、フレーム10は図6に示すような構造となっており、2本の長尺角パイプ11,11間にクロス状に短尺パイプ12,12を介装させて、フレーム10が枠組み形成されており、フレーム10を構成する前記各長尺角パイプ11,11の下面側には、それぞれ所定間隔で3本の高さ調節ボルト14,14,14が垂設されている。すなわち、長尺角パイプ11には長手方向に沿って所定間隔でボルト孔11a,11a,11aが上下に貫通状に穿設されており、各ボルト孔11aの下面には固定ナット13が溶接により固設されており、この固定ナット13に下方よりそれぞれ高さ調節ボルト14が螺合されたものとなっている。
【0012】また、各長尺角パイプ11,11の上面側には、所定間隔で係合孔11b,11b,11b,11bが穿設形成されており、各長尺角パイプ11,11の両端側の係合孔11b,11bの上面には方形平状の鉄板からなるプラットホーム15,15がそれぞれ溶接等により固定されている。各プラットホーム15,15の中央部には係合孔15aが上下に貫通して穿設形成されており、係合孔15aは長尺角パイプ11の係合孔11bに整合したものとなっている。この各プラットホーム15,15,15,15により、広い面積の水平面が形成され、各プラットホーム15,15,15,15は、前述した防水パン1の底面に形成されている長手方向両端側ボス部3,3,3,3の位置に対応させた所定位置に配設されたものであり、前記係合孔11b,11b,11b,11bはそれぞれボス部3,3,3,3の配置位置に整合する位置に形成されたものである。なお、予めフレーム10には排水トラップ16と、この排水トラップ16に連通する排水管17が固定状に取付けられる。
【0013】防水パン1の据付工事においては、まず図4R>4に示すように、基礎20,20間の床面にモルタルMにより据付面Pを形成させておき、この据付面P上の所定位置に前記フレーム10を置き、フレーム10の各高さ調節ボルト14,14,14を適宜調節して、基礎20の上面に配置された土台21,21を基準レベルとしてレベル調節を行い、フレーム10の上面が所定高さとなった後に、各高さ調節ボルト14の下端の頭部14aの周囲にモルタル19等の接着剤を塗布して、高さ調節ボルト14,14,14を据付面P上の所定位置に固定させる。これによりフレーム10は所定位置及び所定高さに固定されることとなる。
【0014】その後に前記ボルト6および筒脚7を底面に取付けた状態の段付防水パン1を裏返して、ボルト6および筒脚7を防水パン1の底面から垂設させた状態として、前記フレーム10上に載置する。この際、予めフレーム10の各プラットホーム15,15,15,15の上面および防水パン1側の各受プレート5,5,5,5、8,8,8,8の下面にそれぞれ接着剤18を塗布しておく。
【0015】防水パン1を載置させるに際し、フレーム10の各プラットホーム15,15,15,15上に防水パン1側の前記ボルト6および筒脚7の下端を仮置きし、この状態で図5に示すように、防水パン1を水平面内で前後左右に移動させて、フレーム10の係合孔11b,15a内にそれぞれ防水パン1側の係入突起6a,8aを係合させる。各係入突起6a,8aがそれぞれ係合孔11b,15a内に落とし込まれることにより、防水パン1の位置合わせが良好に行われ、この時に各プラットホーム15,15,15,15の上面に受プレート5,8の下面がそれぞれ当接することとなり、接着剤18を介し各プラットホーム15,15,15,15と各受プレート5,8が強固に接着されて、フレーム10上に防水パン1が接合固定される。
【0016】なお、各プラットホーム15,15,15,15が設けられているため、防水パン1の下端部を良好に仮置きすることができ、防水パン1を移動させて係入突起6a,8aを係合孔11b,15a内に落とし込む作業は容易に行うことができ、これにより正確な位置に防水パン1を位置決めして固設でき、従来のように防水パン1の上面側からレベル調節を行う必要がなく、レベル調節は別体のフレーム10の据付時に容易に行うことができ、据え付けの施工性が良好なものとなる。フレーム10上に防水パン1が固定された時には、防水パン1の排水口1Cはフレーム10側の排水トラップ16と良好に整合することとなる。
【0017】
【発明の効果】本発明の防水パンの据付方法は、下面側に複数本の高さ調節ボルトを有し、上面側の所定位置に複数のプラットホームを備えたフレームを、前記高さ調節ボルトを介しレベル調節して据付面に固設し、該フレーム上に、底面側の所定位置に複数の受プレートを備えた防水パンを載置し、前記各プラットホームと前記各受プレートを接着剤を介し接着させることとしたため、別体で形成したフレームを高さ調節ボルトを調節することにより正確にレベル調節して設置することができ、そのフレーム上に防水パンを固定させる際に、フレーム側のプラットホームと防水パン側の受プレートを接着剤を介し接着させて防水パンを正確な位置に固定させることができ、従来の据付方法に比べて施工性が極めて良好なものとなり、施工コストが低減する。
【0018】また、上面側の所定位置に複数の係合孔を形成してなるフレームをレベル調節して据付面に固設し、防水パンの底面から垂設された複数の係入突起を前記各係合孔に係合させて前記フレーム上に防水パンを据え付けることとしたため、係入突起を係合孔に係合させることにより、フレーム上に正確かつ容易に防水パンを設置することができ、施工性が極めて良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】防水パンの裏側からの斜視構成図である。
【図2】防水パンの風呂部分のボス部に取付けられる部材の分解斜視図である。
【図3】防水パンの洗い場部分のボス部に取付けられる筒脚の分解斜視図である。
【図4】据付面上にフレームを固定させ、さらにその上方より防水パンを載置させる状態の作業説明図である。
【図5】防水パンをフレーム上に仮置きした後に、フレーム上で防水パンを横移動させる状態の要部作業説明図である。
【図6】フレームの斜視構成図である。
【図7】従来の防水パンのレベル調節作業を示す要部斜視構成図である。
【図8】さらに異なる従来のレベル調節作業を示す要部斜視構成図である。
【符号の説明】
1 防水パン
1A 風呂部分
1B 洗い場部分
1C 排水口
2 リブ
3 ボス部
3a 嵌入穴
4 高ナット
5 受プレート
6 ボルト
6a 係入突起
7 筒脚
8 受プレート
8a 係入突起
10 フレーム
11 長尺角パイプ
11a ボルト孔
11b 係合孔
13 固定ナット
14 高さ調節ボルト
15 プラットホーム
15a 係合孔
18 接着剤
P 据付面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下面側に複数本の高さ調節ボルトを有し、上面側の所定位置に複数のプラットホームを備えたフレームを、前記高さ調節ボルトを介しレベル調節して据付面に固設し、該フレーム上に、底面側の所定位置に複数の受プレートを備えた防水パンを載置し、前記各プラットホームと前記各受プレートを接着剤を介し接着させることを特徴とする防水パンの据付方法。
【請求項2】 上面側の所定位置に複数の係合孔を形成してなるフレームをレベル調節して据付面に固設し、防水パンの底面から垂設された複数の係入突起を前記各係合孔に係合させて前記フレーム上に防水パンを据え付けることを特徴とする防水パンの据付方法。

【図1】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平6−42023
【公開日】平成6年(1994)2月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−218532
【出願日】平成4年(1992)7月24日
【出願人】(000000479)株式会社イナックス (1,429)