説明

防水パン及びこの防水パンを有した浴室ユニット

【課題】 本発明は、強度を保ちながらも、より軽量な防水パン、及び、この防水パンを用いた浴室ユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】 板体と、この板体の裏面に固着される3本以上の脚とを備え、上記板体がその裏面に上記脚により形成される内部領域の1点と各脚とを結ぶリブAと、上記1点を中心としリブA間を結ぶ相似形のリブBとを有する防水パン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室ユニットにて使用される防水パンに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室ユニットは、在来工法に比較し、工期を大幅に短くすることを目的として考え出されたもので、浴室を形成する部材を予め作成し、これら部材を施工現場に組み立てるようにしている。
【0003】
図1は、浴室ユニットを示す概略透視斜視図である。浴室ユニット1は、底面を防水パン2、側面を壁パネル3、上面を天井パネル4として閉空間を形成している。浴室ユニット1の内部には、防水パン2の上に載置された浴槽5、洗い場正面に設置されたカウンター6、このカウンター6に付設させた水栓7、壁パネル3に固着させた鏡8、室内を照らす灯具9等があり、これらを短時間にて施工することができる。
防水パン2は、浴槽5を載置する浴槽載置防水パンと、洗い場を形成する洗い場防水パンとが、一体成形されたものと、分割されたものとがあり、分割されたものは、施工現場にて2つの防水パンを水密的に結合して使用する。
【0004】
図2は、図1に示す防水パン2(洗い場防水パン)の拡大斜視図であり、(a)は表面を示し、(b)は裏面を示す。
防水パン2は、耐食性を考え、SMC(シート・モールディング・コンパンウンド)等の合成樹脂材料を用いて成形されるものが多いが、単なる平板状の単板では強度が確保できず、裏面に多くのリブを設けるようにしている。
防水パン2の構造を簡単に説明すると、表側は、排水枡10が設けられ、床板11が排水枡10へ下り勾配を有するようになっている。防水パン2の裏面は、四隅に脚架台12を配置し、更に、直交する多数のリブ13を立てている。
防水パン2のたわみは、合成樹脂をガラス繊維により補強し、曲げ強度を大きくするようにしている。
【特許文献1】特開平11−247252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、防水パンは、曲げ強度を大きくするために、直交するリブの間隔を狭くすること、リブ高さを高くすること、を行っており、これにより防水パンの重量が増加してしまうとの課題がある。
【0006】
本発明は、強度を保ちながらも、より軽量な防水パン、及び、この防水パンを用いた浴室ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のものに関する。
(1)板体と、この板体の裏面に固着される3本以上の脚とを備え、上記板体がその裏面に上記脚により形成される内部領域の1点と各脚とを結ぶリブAと、上記1点を中心としリブA間を結ぶ相似形のリブBとを有する防水パン。
(2)項1において、内部領域の1点が内部領域または板体の重心である防水パン。
(3)項1において、リブAがすべて等間隔である防水パン。
(4)項(1)乃至(3)の何れかにおいて、リブAの高さとリブBの高さが等しい防水パン。
(5)項(1)乃至(4)の何れかにおいて、板体とリブとの境界辺がR形状である防水パン。
(6)項(1)乃至(5)の何れかに記載の防水パンを有する浴室ユニット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、裏面に直交するリブを有した防水パンに比較し、脚により規定される内部領域の1点に作用した荷重が、リブBからリブAを経由して脚に伝達される迄の距離が短縮される。リブのたわみ量は、荷重の作用点から脚までの距離の3乗に比例するため、伝達距離が短くなることにより、直交リブを有した防水パンと同等のたわみ強度を確保する場合は、リブの高さを低くすることができる。更には、リブの総延長も短くすることができるので、防水パンの強度を維持したまま、防水パンの軽量化を図ることができる。
即ち、本発明によれば、防水パン成形時の使用樹脂量を減量化でき、輸送コストを抑え、廃棄物も減量することができ、環境負荷を減らすことができる。
内部領域の1点を板体の重心として規定した場合は、板体自重が均等に脚に分配されるためリブAの高さを最も低くすることができる。
リブAを等角度間隔とした場合は、内部領域の1点より同心円状にあるリブA上の点間を結ぶリブBの長さが同じとなるため、当該リブ高さを同じにすることができ、金型製造コストを抑えることができる。
リブAとリブBの高さを等しくした場合は、リブAとリブBの接合部に段差が無くなり、SMC成形等において樹脂流動が均一化される。これにより、成形不良に起因するひび割れを防止することができる。
板体とリブとの境界辺をR形状とした場合は、SMC成形等において樹脂およびガラス繊維のリブへの充填効率が高くなり、防水パンの強度を増すことができる。
本発明の防水パンを用いた浴室ユニットでは、全体の施工時間を短縮することができると共に、施工業者の作業負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明にて述べる板体とは、防水パンを形成する面材を意味し、浴室ユニット内では床面として使用される。板体には、排水口を設けることが好ましく、この排水口に向かって下り傾斜を設けることがより好ましい。
板体は、その形状、材質を特定されるものではないが、形状としては、平面視長方形又は正方形の方形であることが、一般的な住宅に設置する際に好ましく、材質としては、水場で使用することから、錆の発生しない合成樹脂、特に熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。また、熱硬化性樹脂には、補強のために、ガラス繊維を含浸させて用いることができる。
板体の成形方法は、特に限定されないが、ハンドレイアップ成形、注型成形、プレス成形等を用いることができ、後述するリブと一体成形が容易にできる注型成形、プレス成形であることが好ましく、中でも製造時間の短いプレス成形が特に好ましい。
【0010】
本発明にて述べる脚とは、板体の裏面に固着されるものであり、板体にかかる荷重を地面又は他の構造物へと伝達させる。
脚は、板体を水平設置可能な3本以上を必須とし、好ましくは4本用いる。
脚の材質は、特に限定されるものではないが、使用者の体重及び浴室ユニット構造物の重量、浴槽内水の重量を支えることから、高強度のものが好ましく、具体的には、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金等の金属、又は、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリアセタール等の樹脂を用いたボルトを用いることができる。
また、脚には、防水パンを水平設置するために、高さ調整機能を付加することが好ましく、具体的には、板体裏面にナットを配置し、脚をボルトとすることができる。
【0011】
本発明にて述べる内部領域とは、先に述べた脚により形成されるものであり、隣接する脚同士を線で結んだ形状の面積に相当する部分を意味する。
図3は、内部領域を示す概念図であり、図3(a)では、脚14が3本である場合の内部領域を斜線にて示し、図3(b)では、脚14が4本である場合の内部領域を斜線にて示している。
また、内部領域の1点は、内部領域内であれば、どの部位に規定してもよく、好ましくは、内部領域の重心、又は、板体の重心とする。
但し、板体の重心が、内部領域にない場合は、これを用いることができない。このような防水パンでは、脚位置が悪く安定性にかける。
【0012】
本発明にて述べるリブAは、先に述べた内部領域の1点と、各脚とを、直線状に結ぶリブを意味する。また、リブAは、内部領域の1点と各脚とを結び、更に、内部領域の1点と板体の周縁とを結ぶように、内部領域の1点から放射状に設けることもできる。
リブAは、荷重がより均一に分散されることから、等間隔(内部領域の1点を中心として等角度間隔)で設けられることが好ましい。板体を長方形とし、この四隅に脚を設けた場合は、リブAとして内部領域の1点と脚とを結んだ直線部分だけではリブAを等間隔にて配置することはできない。この場合は、既にある4本のリブAをそのままに、内部領域の1点から板体の周縁へと放射状に、且つ、リブ同士が等間隔となるように、補助のリブAを設けるようにする。
【0013】
本発明にて述べるリブBは、先に述べたリブAとリブAとの間を結ぶリブであり、内部領域の1点から、板体の周縁に向かい、相似形の形状が並ぶようにする。
より具体的に述べると、リブAが4本設けられた場合は、リブBにより形成される形状が四角形となり、内部領域の1点から板体の周縁に向かい、小さな四角形から徐々に大きな四角形のリブが形成される。即ち、リブAの本数をn本とすると、リブBにより形成される相似形の形状は、n角形となる。
【0014】
リブAとリブBとは、強度が増すことから、板体と一体成形されることが好ましく、リブAとリブBとを板体から立ち上げる部分の角を排除し、R形状とすることがより好ましい。
また、リブAとリブBとは、密着力を上げるため、板体と同様の材質にて形成されることが好ましい。
更に、リブAとリブBとのリブ高さは、等しくすることが好ましい。
【0015】
本発明にて述べる浴室ユニットは、先に述べた本発明の防水パンを用いるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、防水パンと、この防水パンの周囲に立設する壁パネルと、この壁パネルの上部を接続する天井パネルとを備え、防水パンの上に浴槽を配置し、必用に応じてカウンター、鏡、灯具、棚等を配置することができる。
また、浴室内を断熱するために、防水パン、壁パネル、天井パネルの裏面に断熱パネルを配置することもできる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
本発明の実施例に用いた防水パンは、株式会社日立ハウステック社製SMC成形品であり、その主たる成分は、不飽和ポリエステル樹脂、炭酸カルシウム、シランカップリング剤等であり、これらをガラス繊維に含浸させシート状にしたSMCを金型にて加熱・加圧成形したものである。
【0017】
図4は、本発明の1実施例を示す防水パンの裏面斜視図である。防水パン2は、一辺が900mmの正方形の板体15に対し、四隅の各々に亜鉛めっき鋼製の脚14を設けている。
4本の脚14にて形成される内部領域であり、且つ、板体15の重心である点16からは、各脚14に対しリブA17が形成されており、その高さを60mmとしている。更に、リブA17とリブA17とを結ぶリブB18は、小さな正方形から順次大きな正方形へと変化する相似形のものを4つ設けてあり、その高さを40mmとしている。
【0018】
図5は、本発明の別の実施例を示す防水パンの裏面斜視図である。防水パン2は、長辺1,870mm、短辺1,070mmの長方形の板体15に対し、四隅の各々に亜鉛めっき鋼製の脚14を設けている。
また、板体15には、一方の長辺中央に排水枡10を設けてあり、図示を省略する防水パン2の表面側にて、排水枡10へ向かう下り勾配となっている。
4本の脚14にて形成される内部領域であり、且つ、板体15の重心である点16からは、各脚14に対しリブA17が形成されており、その高さを61mmとしている。
リブA17は、点16から各脚14へ向かう4本以外に、点16から隣接するリブA17同士のなす角度が30度となるように、8本を配置してあり、合計で12本ある。
リブB18は、リブA17とリブA17とを結ぶように設けられ、リブB18の描く形状が正12角形の相似形状としてある。リブB18の高さは、リブA17の高さと同じく61mmとしている。
【0019】
図4及び図5に示す防水パンは、防水パンの強度を維持させたまま、成形時の樹脂使用料を抑えて軽量化することができ、実使用においても問題なく使用することができた。
また、図4及び図5に示す防水パンを使用した浴室ユニットは、防水パンが軽量であることから、施工が容易で、より短時間にて組立を行うことができた。
【0020】
図6(a)は、従来構造である直交リブを備えた防水パンの裏面平面図を示す。長辺1,600mm、短辺1,000mmで形成される内部領域には、縦横に100mm間隔で高さ70mmのリブが配置されている。
図6(b)は、本発明を適用したリブ構造を備えた防水パンの裏面平面図を示す。(a)と同様に長辺1,600mm、短辺1,000mmで形成される内部領域には、当該内部領域重心より30°間隔で高さ61mmのリブが放射状に配置され、当該リブ間を100mm間隔で同じく高さ61mmのリブが、内部領域重心より正12角形の相似図形を形成して配置されている。
図6(a)(b)において内部領域内の同位置にある点Xから、脚架台A、Bまでの距離を比較すると、(a)に較べて(b)は約13%短縮されている。
【0021】
図7(a)は、AB間を長さLの梁とし、当該梁上の点Xに荷重Pが作用し、たわみyが生じたときの概念図を示す。
また、図7(b)は、当該梁の高さをH、幅をbと仮定したときの断面を示す。
図7(a)(b)において、たわみyはL/Hの3乗に比例することが知られている。このとき、図6(a)の場合に較べ、図6(b)の場合はLが13%短いため、同じたわみ強度を有する場合は、Hも13%小さくすることができる。
これにより、AB間のリブ体積を約24%少なくすることができる。
以上、本実施例により、防水パンのたわみ強度を確保したまま、図2に示した裏面に直交リブを有する防水パンに比べ、リブの形成に要する材料を約24%削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の浴室ユニットを示す概略透視斜視図である。
【図2】図1に示す防水パンの拡大斜視図であり、(a)は表面側を示し、(b)は裏面側を示す。
【図3】本発明の内部領域を説明する概念図である。
【図4】本発明の1実施例を示す防水パンの裏面斜視図である。
【図5】本発明の他の1実施例を示す防水パンの裏面斜視図である。
【図6】防水パンの裏面平面図であり、(a)は本発明の1実施例を示し、(b)は従来例を示す。
【図7】図6に示す防水パンのリブに作用する荷重およびたわみを示した概念図である。
【符号の説明】
【0023】
1…浴室ユニット、2…防水パン、3…壁パネル、4…天井パネル、5…浴槽、6…カウンター、7…水栓、8…鏡、9…灯具、10…排水枡、11…床板、12…脚架台、13…リブ、14…脚、15…板体、16…点、17…リブA、18…リブB。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板体と、この板体の裏面に固着される3本以上の脚とを備え、上記板体がその裏面に上記脚により形成される内部領域の1点と各脚とを結ぶリブAと、上記1点を中心としリブA間を結ぶ相似形のリブBとを有する防水パン。
【請求項2】
請求項1において、内部領域の1点が内部領域または板体の重心である防水パン。
【請求項3】
請求項1において、リブAがすべて等間隔である防水パン。
【請求項4】
請求項1及至3の何れかにおいて、リブAの高さとリブBの高さが等しい防水パン。
【請求項5】
請求項1及至4の何れかにおいて、板体とリブとの境界辺がR形状である防水パン。
【請求項6】
請求項1及至5の何れかに記載の防水パンを有する浴室ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−285889(P2008−285889A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131571(P2007−131571)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【Fターム(参考)】