説明

防水パン用支持脚

【課題】広い範囲で高さ調節可能であり、現場で簡便に取付作業を行うことができる防水パン用支持脚を提供する。
【解決手段】面積の異なる面6,7,8から成る直方体状のブロック体3と、ブロック体3に螺合する調節ボルト4とを有し、ブロック体3は、取付部13,17,21と、これらが形成された面と対向する面6b,7b,8bに、それぞれ調節ボルト4が出没量調節自在に螺合するボルト穴16,20,24を形成して、ブロック体3の立てる向きを三通りに変更自在とし、それぞれの立て向きにおいて調節ボルト4の出没量を調節することができるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水パンを高さ調節可能に支持する防水パン用支持脚に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ユニットバス等の防水パンは、高さ調節可能に構成された防水パン用支持脚により高さ調節された状態で、設置面上に設置される。防水パンの設置場所である設置面は通常は平坦であるが、傾斜していたり段があったりする場合もある。また、防水パンは、それ自体の底面にも傾斜が形成されていたり、段が形成されていたりする場合がある。そのため、防水パンと設置面との間の適宜の部位に、高さ調節が可能な防水パン用支持脚が配設され、防水パンの斜度や設置面からの距離が適宜調節できるように構成されている。
【0003】
従来、この種の防水パン用支持脚は、特許文献1に開示されているように、支柱状の部材の外周面に雄ねじが形成された高さ調整用ボルトと、この高さ調整用ボルトを螺合するボルト穴が形成された支脚本体と、この支脚本体に設けられ、支脚本体を防水パンの底面に固定するための取付け部とから構成され、支脚本体のボルト穴に対する高さ調整用ボルトの出没量を調節することによって、防水パンを所要の高さに調整することができる。
【特許文献1】特開平8−132033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防水パン用支持脚では、高さ調整用ボルトの長さにより高さ調整することができる範囲が規定され、高さ調整用ボルトの長さは支脚本体の高さにより規定されるため、調節可能範囲が狭いという問題があった。このため、防水パンや防水パンの設置場所によっては一種類の防水パン用支持脚では対応し切れず、数種類の大きさの防水パン用支持脚を必要とすることがあり、製造コストや在庫コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、単純な構造で広い範囲で高さ調節可能であり、現場で簡便に調整作業を行うことができる防水パン用支持脚を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、防水パンの底面の支持脚取付位置に取り付けられる防水パン用支持脚であって、直方体状の支持脚本体と、この支持脚本体に螺合する調節ボルトとを有し、支持脚本体は、対向しない二面または三面に設けられ調節ボルトが出没量調節自在に螺合するボルト穴と、ボルト穴を備えた面と対向する面に設けられ、防水パンの底面の支持脚取付位置に取り付けられる取付部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
取付部は、支持脚本体の面の端縁から張り出したフランジを含んで構成されることが望ましい。
【0008】
支持脚本体は、面材とこの面材に立設されたリブとから構成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防水パン用支持脚が、直方体状の支持脚本体とこの支持脚本体に螺合する調節ボルトとを有し、取付部が形成された面と対向する面にそれぞれ調節ボルトを出没自在に螺合するボルト穴を形成したことにより、支持脚本体の立て向きにより高さを調節し、かつ調節ボルトの出没量を調節することでも高さを調節することができるから、高さ調節可能範囲を著しく広範化させることができる。
【0010】
取付部が、支持脚本体の面の端縁から張り出したフランジを有することにより、このフランジを防水パンに螺着することで簡便に取り付けることができる。
【0011】
本発明の防水パン用支持脚の支持脚本体を、面材とこの面材に立設されたリブとから構成することによって、軽量でありながら強固な防水パン用支持脚を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図1〜図4を参照しながら詳細に説明する。第一の実施形態に係る防水パン用支持脚1は、防水パンの底面に形成される支持脚取付位置であるボス部2(図2参照)に防水パン用支持脚1を取り付けて、防水パンを高さ調節可能に支持するものである。
【0013】
防水パン用支持脚1は、図1に示すように、三辺の長さの異なる直方体状の支持脚本体としてのブロック体3と、このブロック体3に出没量調節可能に螺合する調節ボルト4とを備え、四本のねじ5により防水パンのボス部2に固設される。ボス部2は、底面が正方形状に形成され、この正方形状の底面の四つ角近傍部位には、図2に示すように、それぞれねじ孔9が形成されて構成される。なお、ねじ5は、図1において二本のみを図示し、他の二本を図示省略する。
【0014】
ブロック体3は、長さの異なる三つの辺部、すなわち短辺部10と、この短辺部10より長い中辺部11と、長辺部12とを有する直方体形状をなしている。各辺部は、四本ずつあり、それぞれ面取り処理がなされている。中辺部11の長さは、短辺部10の長さと調節ボルト4の長さとを足し合わせた長さより若干短めに設定される。また、長辺部12の長さは、中辺部11の長さと調節ボルト4の長さとを足し合わせた長さより若干短めに設定される。ブロック体3の各面を大面6,中面7,小面8とする。各面は一対ずつあり、取付部が形成された面を第一の大面6a,第一の中面7a,第一の小面8aとし、これらに対向する面であってボルト穴を備えた面を第二の大面6b,第二の中面7b,第二の小面8bとする。
【0015】
ブロック体3は、第一の大面6aの中央部に、第一の取付部13を有する。第一の取付部13は、防水パンのボス部2に防水パン用支持脚1を取り付けるための構造であって、ブロック体3の第一の大面6aの中央部において、防水パンのボス部2のねじ孔9に対応する部位に貫通した四つのねじ孔14と、このねじ孔14を含む、防水パンのボス部2に対応する正方形領域とから構成される。これらの四つのねじ孔14の直下部には、それぞれ下面側からねじ孔14に向かってテーパ状に窄まったガイド穴15が形成される。
【0016】
第一の大面6aに対向する第二の大面6bの中央部には、第一のボルト穴16が形成される。この第一のボルト穴16は、内周面に雌ねじが形成され、調節ボルト4を出没自在に螺合することができるように構成される。短辺部10の長さが調節ボルト4の長さと同等であるため、第一のボルト穴16は、第一の大面6aにおける第一の取付部13の中央部まで貫通している。
【0017】
図3に示すように、ブロック体3は、第一の中面7aの中央部に、第二の取付部17を有する。この第二の取付部17は正方形領域であり、ブロック体3の第一の中面7aのほぼ中央部の端縁から張り出したフランジ18を含んで構成される。このフランジ18の隅部には、それぞれねじ孔19が形成される。すなわち、第二の取付部17は、フランジ18を含む正方形領域と、この正方形領域の角部に貫穿される四つのねじ孔19とによって構成される。この四つのねじ孔19の形成位置は、防水パンのボス部2の底面に形成されるねじ孔9の位置に対応する。
【0018】
図4に示すように、第一の中面7aに対向する第二の中面7bのほぼ中央部には、第二のボルト穴20が形成される。この第二のボルト穴20は、内周面に雌ねじが形成され、調節ボルト4が出没量調整自在に螺合するように構成される。第二のボルト穴20の深さは調節ボルト4の軸部の長さと同等以上である。
【0019】
ブロック体3は、第一の小面8aの中央部に、第三の取付部21を有する。この第三の取付部21は正方形領域であり、第一の小面8aの端縁から張り出したフランジ22を含んで構成される。このフランジ22の角部には、それぞれねじ孔23が形成される。すなわち、第三の取付部21は、フランジ22を含む正方形領域と、この角部に貫穿される四つのねじ孔23とによって構成される。この四つのねじ孔23の形成位置は、防水パンのボス部2の底面に形成されるねじ孔9の位置に対応する。
【0020】
第一の小面8aに対向する第二の小面8bのほぼ中央部には、適宜の深さで穿設された第三のボルト穴24が形成される。この第三のボルト穴24は、内周面に雌ねじが形成され、調節ボルト4が出没量調整自在に螺合するように構成される。第三のボルト穴24の深さは調節ボルト4の軸部の長さと同等以上である。
【0021】
第一実施形態の防水パン用支持脚1は、第一の取付部13を防水パンのボス部2に取り付けて使用したり、図3(a)に示すように、第二の取付部17を上方に向けて防水パンのボス部2に取り付けて使用したり、或いは、図3(b)に示すように、第三の取付部21を上方に向けて防水パンのボス部2に取り付けて使用することができる。
【0022】
第一の取付部13を防水パンのボス部2に取り付けて使用する場合には、第一の取付部13をボス部2の正方形状の底部に合わせて当接させ、互いのねじ孔9,14を位置合わせしつつ、下方からねじ5を螺合して、防水パン用支持脚1をボス部2に固設する。この状態を図2に示す。防水パン用支持脚1をボス部2に固設した状態で、防水パン用支持脚1の第二の大面6bの第一のボルト穴16に調節ボルト4を螺合する。防水パンの設置時には、防水パン用支持脚1の出没量を調節して防水パンの高さ位置を調整する。この際、防水パン用支持脚1の高さ調節範囲は、短辺部10の長さから、短辺部10の長さと調節ボルト4の長さとを足し合わせた程度の長さまでの範囲になる。
【0023】
第二の取付部17を防水パンのボス部2に取り付けて使用する場合には、第二の取付部17をボス部2の正方形状の底部に合わせて当接させ、互いのねじ孔9,19を位置合わせしつつ、下方からねじ5を螺合して、防水パン用支持脚1をボス部2に固設する。防水パン用支持脚1をボス部2に固設した状態で、防水パン用支持脚1の第二の中面7bの第二のボルト穴20に調節ボルト4を螺合する。防水パンの設置時には、防水パン用支持脚1の出没量を調節して防水パンの高さ位置を調整する。この際、防水パン用支持脚1の高さ調節範囲は、中辺部11の長さから、中辺部11の長さと調節ボルト4の長さとを足し合わせた程度の長さまでの範囲になる。
【0024】
第三の取付部21を防水パンのボス部2に取り付けて使用する場合には、第三の取付部21をボス部2の正方形状の底部に合わせて当接させ、互いのねじ孔9,23を位置合わせしつつ、下方からねじ5を螺合して、防水パン用支持脚1をボス部2に固設する。防水パン用支持脚1をボス部2に固設した状態で、防水パン用支持脚1の第二の小面8bの第三のボルト穴24に調節ボルト4を螺合する。防水パンの設置時には、防水パン用支持脚1の出没量を調節して防水パンの高さ位置を調整する。この際、防水パン用支持脚1の高さ調節範囲は、長辺部12の長さから、長辺部12の長さと調節ボルト4の長さとを足し合わせた程度の長さまでの範囲になる。
【0025】
以上のように、第一実施形態の防水パン用支持脚1の高さ調節範囲は、短辺部10の長さから、短辺部10の長さと調節ボルト4の長さとを足し合わせた長さまでの範囲と、中辺部11の長さから、中辺部11の長さと調節ボルト4の長さとを足し合わせた長さまでの範囲と、長辺部12の長さから、長辺部12の長さと調節ボルト4の長さとを足し合わせた長さまでの範囲の三つの長さ範囲となる。ここで、中辺部11の長さが、短辺部10の長さと調節ボルト4の長さとを足し合わせた長さより若干短めに設定され、長辺部12の長さが、中辺部11の長さと調節ボルト4の長さとを足し合わせた長さより若干短めに設定されることから、防水パン用支持脚1によれば、短辺部10の長さから長辺部12の長さに調節ボルト4の長さを足し合わせた程度の長さまでの範囲で、任意の高さに調節することができる。
【0026】
以上説明したように、本発明の防水パン用支持脚は、長さの異なる三辺10,11,12を有する直方体状の支持脚本体としてのブロック体3と、このブロック体3に螺合する調節ボルト4とを有し、ブロック体3は、大中小の面6b,7b,8bずつにそれぞれ取付部13,17,21が形成され、これらと対向する面に、それぞれ調節ボルト4を出没自在に螺合するボルト穴16,20,24を形成して、ブロック体3の立てる向きを三通りに変更自在とし、それぞれの立て向きにおいて調節ボルト4の出没量を調節することができるように構成したものであって、その主旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。
【0027】
例えば、ブロック体3は、必ずしも三辺の長さが異なる直方体でなければならないという訳ではなく、二辺の長さが異なる直方体としてもよい。また、直方体状のブロック体103は、中空で構成したり、或いは、図4に示す第二実施形態の防水パン用支持脚101におけるブロック体103のように、複数の面材と、これらの面材106,107,108に立設された幾つかのリブ122とによって構成することも可能であり、全体として、直方体状に形成されるものであればよい。図4に示す防水パン用支持脚101は、適宜の面の端縁から張り出したフランジ118が個々に略正方形状に形成され、各取付部113,117,121は略長方形の領域と、この略長方形の領域の各頂点部位に形成されるねじ孔114とから構成される。その機能及び使用方法については第一実施形態の防水パン用支持脚1と同様であるから説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る防水パン用支持脚の構成を示す斜視図であり、第一の取付部を上方に向けて配置した状態を斜め上方から見た図である。
【図2】上記実施形態の防水パン用支持脚の第一の取付部を防水パンのボス部に当接させている状態を、図1のA−A断面の方向から見た断面図である。
【図3】(a)は、図1の防水パン用支持脚の第二の取付部を上方に向けて配置した状態を斜め上方から見た斜視図であり、(b)は、当該防水用支持脚の第三の取付部を上方に向けて配置した状態を斜め上方から見た斜視図である。
【図4】本発明の一変形例の防水パン用支持脚の構成を示す斜視図であり、(a)は、第一の取付部を上方に向けて配置した状態を斜め上方から見た斜視図であり、(b)は、当該防水パン用支持脚の第二の取付部を上方に向けて配置した状態を斜め上方から見た斜視図であり、(c)は、当該防水用支持脚の第三の取付部を上方に向けて配置した状態を斜め上方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 防水パン用支持脚
2 ボス部
3 ブロック体
4 調節ボルト
5 ねじ
6,6a,6b 大面
7,7a,7b 中面
8,8a,8b 小面
9 ねじ孔
10 短辺部
11 中辺部
12 長辺部
13 第一の取付部
14 ねじ孔
15 ガイド穴
16 第一のボルト穴
17 第二の取付部
18 フランジ
19 ねじ孔
20 第二のボルト穴
21 第三の取付部
22 フランジ
23 ねじ孔
24 第三のボルト穴
101 防水パン用支持脚
103 ブロック体
106,107,108 面材
113 取付部
114 ねじ孔
117 取付部
118 フランジ
121 取付部
122 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水パンの底面の支持脚取付位置に取り付けられる防水パン用支持脚であって、
直方体状の支持脚本体と、この支持脚本体に螺合する調節ボルトとを有し、
上記支持脚本体は、対向しない二面または三面に設けられ上記調節ボルトが出没量調節自在に螺合するボルト穴と、上記ボルト穴を備えた面と対向する面に設けられ防水パンの底面の支持脚取付位置に取り付けられる取付部とを備えたことを特徴とする、防水パン用支持脚。
【請求項2】
前記取付部は、前記支持脚本体の面の縁部からこの面と面一に張り出したフランジを含むことを特徴とする、請求項1に記載の防水パン用支持脚。
【請求項3】
前記支持脚本体は、面材とこの面材に立設されたリブとから構成されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の防水パン用支持脚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−24626(P2010−24626A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183777(P2008−183777)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(392008529)ヤマハリビングテック株式会社 (349)
【Fターム(参考)】