説明

防水型発熱体ユニット

【目的】 水中絶縁性に優れた防水型発熱体ユニットを提供する。
【構成】 熱可塑性樹脂にカーボンブラックを分散した半導電性組成物の芯層上に熱可塑性樹脂の被覆層を共押出成形してなる電気式線状発熱体結線部に外層が架橋ポリエチレン収縮チューブ、内層が接着性樹脂である防水絶縁材料による被覆及び結線部のリード線の2股引出し口に接着性樹脂を施してなることを特徴とする防水型発熱体ユニット。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、融雪,暖房,乾燥装置等に使用される電気式線状発熱体ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】電気部品等の防水方法としては、■ブチルラバーテープを各防水部に螺旋状に隙間無く巻き、その上を保護する為に塩化ビニルテープ及び収縮チューブで被覆する方法がある。この方法の欠点としては、人手に頼る所が多い、機械による効率化がはかりにくい、複雑な構造特に凹凸が大きい部分の防水が困難であり製品の防水性能のばらつきが大きく歩留りが悪い点が挙げられる。
■エポキシ系の接着剤を用いる方法もあるが、2液混合式が主流である為工程が複雑になる、硬化後に可撓性が無くなる等の欠点がある。
【0003】従来より市販されている防水型絶縁収縮チューブがあるが、端末結線部にリード線の並列結線(2股引出し)が施される場合、絶縁性能の確保が不十分であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、検討の結果、電気式線状発熱体の結線部の防水被覆を施す場合、各部品相互の接着の不足,2股引出し部の谷の部分から水が侵入していることを見出し、本発明に至ったもので本発明は、前記の種々の欠点を改良し防水性に優れた発熱体ユニットを提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、熱可塑性樹脂にカーボンブラックを分散した半導電性組成物の芯層上に熱可塑性樹脂の被覆層を共押出成形してなる電気式線状発熱体結線部に外層が架橋ポリエチレン収縮チューブ,内層が接着性樹脂である防水被覆を施し水中絶縁性2000MΩ以上となる防水型発熱体ユニットである。ここで用いる外層が架橋ポリエチレン収縮チューブ,内層が接着性樹脂からなる接着性樹脂内装熱収縮チューブは、図1に示す様な2層構造になっており必ずしも内層と外層が一体でなくてもよく、外層は、電子線により架橋されたポリエチレン収縮チューブで必要に応じて難燃性が付与される。
【0006】内層の接着性樹脂としては、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA),または、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA),エチレンメチルメタクリレート共重合体(EMMA),ポリエステル共重合体,ナイロン共重合体などの各ホットメルト組成のものがあり、加工温度,吸水率の点でEVAホットメルト組組成のものが好ましい。本発明で用いる結線部リード線,例えばビニル電線の2股引き出し口に充填する接着性樹脂は、EVA,EEA,EMMA,ポリエステル共重合体、ナイロン共重合体などの各ホットメルト組成のものが挙げられ、溶融粘度2000〜15000cps(180℃)程度のものが好ましい。なお、チューブの内層である接着性樹脂と2股引き出し口に充填する接着性樹脂とは同一でも異なっていてもよい。
【0007】上記の接着性樹脂は、それ自体に接着性を有しているが、防水性を高める為には、ホットメルト組成で用いることが好ましい。ホットメルトは、流動性が高く細部の空隙に充填される。又ホットメルトには粘着付与剤,その他の添加剤を併用することが出来る。ホットメルトの充填方法としては、ガンによる注入法,金型使用による圧注入法のいずれでもよい。本発明で、用いる電気式線状発熱体の被覆層に用いられる熱可塑性樹脂は、ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)などが挙げられ、これに添加する接着性樹脂は、EVA,EEA,EMMA,マレイン酸変性PE及びPP,アオイオノマーのうち一種類又は二種類以上のものが併用される。添加量は、物性低下を考慮して3〜15重量%程度が好ましい。
【0008】本発明の防水型発熱体ユニットの絶縁部ないし防水部の部分断面図を図1に示す。
【0009】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明をする。
実施例1PPにアセチレンブラックを添加してなる半導電性組成物の芯層及びPEの被覆層を共押出成形した電気式線状発熱体を得た。この発熱体を2100mmに切断し両端に2mm径のドリルで穴を開け圧着端子を打ち込み、600Vビニル絶縁ビニルシース電線 2本を結線し、電線の2股引出し口にEVA系ホットメルト(コニシ社製商品名メルターボール)を充填し、その部分をEVA系ホットメルト内装型熱収縮チューブ(住友電気工業社製スミチューブW5C)で被覆し、熱風発生器(シュタイネル社製ホットエアガン)で2分間加熱した後、防水部を水中に12時間時間以上放置し、電池式絶縁抵抗計(日置電機社製メガオームハイテスター)で、水中絶縁抵抗を測定した結果2000MΩ以上の値が得られた。
【0010】実施例1実施例1において、電気式線状発熱体の被覆層としてPEにEEA12重量%を添加して成形した以外は、実施例1と同様にして発熱体ユニットを作成し、水中絶縁抵抗を測定した結果2000MΩ以上の値が得られ、電気式線状発熱体の被覆層とEVA系ホットメルト内装型熱収縮チューブとの接着性も良好であった。
比較例1PPにアセチレンブラックを添加してなる半導電性組成物の芯層及びPEの被覆層を共押出成形した電気式線状発熱体を得た。この発熱体を2100mmに切断し両端に2mm径のドリルで穴を開け圧着端子を打ち込み、600Vビニル絶縁ビニルシース電線2本を結線し、発熱体部及び,圧着端子部,電線部,各部分をブチルゴムを主成分とした自己融着性絶縁テープ(古河電機工業社製エフコテープ1号)で螺旋状に巻き、その上からポリエチレン基材とブチルゴムを主成分とした粘着層との2層からなる自己融着性絶縁テープ(古河電機工業社製エフコテープ2号)を螺旋状に巻き、さらに保護層として塩化ビニルテープ又は、電子線により架橋された熱収縮チューブ(住友電気工業社製スミチューブC)で被覆し発熱体ユニットを作成した後、実施例1と同様にして水中絶縁抵抗を測定した結果、防水処理箇所100当たり6か所の絶縁不良(2000MΩ以下)が発生し歩留りが悪い。
【0011】比較例1PPにアセチレンブラックを添加してなる半導電性組成物の芯層及びPEの被覆層を共押出成形した電気式線状発熱体を得た。この発熱体を2100mmに切断し両端に2mm径のドリルで穴を開け圧着端子を打ち込み、600Vビニル絶縁ビニルシース電線2本を結線し、その結線部をEVA系ホットメルト内装型熱収縮チューブ(住友電気工業社製スミチューブW5C)又は、EVA内装型熱収縮チューブ(住友電気工業社製スミチューブW)のいずれかを用いて被覆し実施例1と同様に加熱した後、実施例1と同様にして水中絶縁抵抗を測定した結果、いずれの場合も2000MΩ以下となり絶縁不良であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明の一実施態様を示す発熱体ユニットの結線部及び、防水部の部分断面図を示す。
【符号の説明】
1:600Vビニル絶縁ビニルシース電線
2:接着性樹脂
3:接着性樹脂内装熱収縮チューブの外層
4:圧着端子
5:接着性樹脂内装熱収縮チューブの内層
6:電気式線状発熱体半導電層
7:電気式線状発熱体被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱可塑性樹脂にカーボンブラックを分散した半導電性組成物の芯層上に熱可塑性樹脂の被覆層を共押出成形してなる電気式線状発熱体結線部に外層が架橋ポリエチレン収縮チューブ、内層が接着性樹脂である防水絶縁材料による被覆及び結線部のリード線の2股引出し口に接着性樹脂を施してなることを特徴とする防水型発熱体ユニット。
【請求項2】 熱可塑性樹脂の被覆層が、極性官能基を有する接着性樹脂3〜50重量%含有することを特徴とする請求項1記載の防水型発熱体ユニット。

【図1】
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