説明

防水層改修方法及び防水構造

【課題】防水下地を傷めずに、改修防水シートを安定して着実に固定できるようにする。
【解決手段】防水下地2上に固定された防水シート固定金具3の上面に接着材で防水シート4を固定してある防水層P1を改修する防水層改修方法であって、防水シート4の固定部上で防水シート固定具3と重なる位置に、改修防水シート9の固定用プレート10を載置し、防水シート固定金具3と固定用プレート10とを機械的に連結し、固定用プレート10の上面に接着材で改修防水シート9を固定して新防水層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
防水下地上に固定された防水シート固定金具の上面に接着材で防水シートを固定してある防水層を改修する防水層改修方法及び防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防水層を改修するのに、図8に示すように、既設の防水シート4上で複数の防水シート固定部間に、新設防水シート固定金具3を配置して、防水シート4を貫通するビスで新設防水シート固定金具3を防水下地2に固定し、新設防水シート固定金具3の上面に接着材で改修防水シート9を固定して新防水層を形成する防水層改修方法が採られていた。
しかし、この方法の場合、防水下地2にさらにビスを取り付けるための穴を開ける事になり、防水下地2の強度に悪影響を与える虞があり、他の方法が望まれている。
そこで、図9に示すように、防水シート4の固定部の外周に切れ目を入れて切り抜き、切り抜き部分の防水シート4を防水シート固定金具3から取り除いた後、防水シート固定金具3上面に、ホットメルト接着用シート8を配置した状態で、改修用の改修防水シート9を敷設しその改修防水シート9の上方から電磁加熱によって、防水シート固定金具3を加熱することによって、ホットメルト接着用シート8を融かして改修防水シート9を防水シート固定金具3に接着して新防水層を形成する方法(特許文献1参照)が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−88986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の改修方法では、防水シート固定金具3から切り抜き部分の防水シート4を取り除く際に、防水シート固定金具3上の接着材の種類によっては全てきれいに取り除くことは困難で、防水シート固定金具3上面が凹凸になりやすく、ホットメルト接着用シート8を介しての改修防水シート9の固定に不備が生じる虞があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、防水下地を傷めずに、改修防水シートを安定して着実に固定できる改修方法及びその改修方法を使った防水構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の改修方法の第1の特徴構成は、防水下地上に固定された防水シート固定金具の上面に接着材で防水シートを固定してある防水層を改修する防水層改修方法であって、
前記防水シートの固定部上で前記防水シート固定具と重なる位置に、改修防水シートの固定用プレートを載置し、
前記防水シート固定金具と前記固定用プレートとを機械的に連結し、
前記固定用プレートの上面に接着材で前記改修防水シートを固定して新防水層を形成するところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、防水下地に既に固定されている防水シート固定金具と防水シート上に載置した固定用プレートとを機械的に連結することにより、固定用プレートは、防水下地に新たにビスなどの固定のための穴を開けることなく、安定的に防水シート固定金具に固定される。
そして、防水シート固定金具と一体となった固定用プレートの上面に接着材で改修防水シートを固定して新防水層を形成することにより、既設の防水シートを取り除いて廃棄処分する必要なく防水層の改修ができ、産廃処理などのコストを要することなく経済的に施工できる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、防水下地上に固定された防水シート固定金具の上面に接着材で防水シートを固定してある防水層を改修する防水層改修方法であって、前記防水シート上に改修防水シートを重ね、前記改修防水シート上で前記防水シート固定金具と重なる位置に、前記改修防水シートの固定用プレートを載置し、前記防水シート固定金具と前記固定用プレートとを機械的に連結し、前記固定用プレートをその径方向の外側まで覆う防水カバーを、前記固定用プレート上に載置し、前記固定用プレートの全外周に沿って前記防水カバーと前記改修防水シートとを接着して新防水層を形成するところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、防水下地に既に固定されている防水シート固定金具と改修防水シート上に載置した固定用プレートとを機械的に連結することにより、固定用プレートは、防水下地に新たにビスなどの固定のための穴を開けることなく、安定的に防水シート固定金具に固定されると同時に、固定用プレートで改修防水シートが固定される。
そして、固定用プレートを改修防水シートと接着した防水カバーで径方向の外側まで覆うことにより、固定用プレートを防水シート固定金具に機械的に連結する部分の防水が可能となる。そのために、既設の防水シートを取り除いて廃棄処分する必要なく防水層の改修ができ、産廃処理などのコストを要することなく経済的に施工できる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記第1または2の改修方法において、防水シート固定金具と固定用プレートとを、リベットで機械的に連結するところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、リベットにより防水シート固定金具と固定用プレートとを、強固に固定できる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記第1または2の改修方法において、防水シート固定金具と固定用プレートとを、タッピンネジで機械的に連結するところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、防水シート固定金具と固定用プレートとを、タッピンネジで簡単に連結でき、施工性が向上する。
【0014】
本発明の第5の特徴構成における防水構造は、防水下地上に固定された防水シート固定金具の上面に接着材で第1防水シートを固定し、前記第1防水シートの固定部上で前記防水シート固定具と重なる位置に、第2防水シートの固定用プレートを載置した状態で、前記防水シート固定金具と前記固定用プレートとを機械的に連結してあり、前記固定用プレートの上面に接着材で前記第2防水シートを固定してあるところにある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、第1防水シートの上に第2防水シートが重なり、その第2防水シートが第1防水シートを固定する防水シート固定金具に機械的に連結した固定プレートにより接着材で固定されているために、2重防水構造で、より防水性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】防水層の形成状況を示す斜視図である。
【図2】防水シート固定金具を示す斜視図である。
【図3】防水シート固定金具の断面図である。
【図4】防水層の形成状況を示す断面図である。
【図5】防水層の改修状況を示す断面図である。
【図6】別実施例の防水層の改修状況を示す断面図である。
【図7】別実施例の防水層の改修状況を示す断面図である。
【図8】従来の防水層の改修状況を示す断面図である。
【図9】別の従来の防水層の改修状況を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の防水層改修方法を実施する前の建物の屋上スラブ1を示す斜視図で、鉄筋コンクリート製のスラブ本体(防水下地に相当)2上に、防水シート固定金具3を介して防水シート4を接着して防水層P1を形成してある状況を示すものである。
【0019】
前記スラブ本体2は、当該実施形態においては、上述のように屋上部分のスラブに該当し、鉄筋コンクリート構造のスラブの他、ALC板を敷き並べて形成したスラブや、デッキプレートや金属折板とコンクリートを組み合わせて形成したスラブや、更には、それらの上に断熱層を積層させたもの等、様々な実施形態が挙げられる。
そして、スラブ本体2は、前記防水シート固定金具3を固定するためのビスBを、樹脂プラグ等のホールインアンカー17を介して抜け止め状態に支持できるものであることが好ましい。
【0020】
前記防水シート固定金具3は、例えば、図2・3に示すように、直径50〜100mm程度のステンレス鋼製円板の上面に、防水シートに対する接着材としてポリエステル樹脂等の溶けて接着性を発揮する熱可塑性合成樹脂からなるホットメルト接着層Hを被覆したワッシャ本体3Aによって構成してある。
また、ワッシャ本体3Aはその中心にビス固定用の座繰り凹部5A、及び、その底部分に固定用ビスBの取付孔6が形成され、ワッシャ本体3Aの上面は、座繰り凹部5Aの周りに所定幅隔てて環状凹部5Bが形成されている。
尚、ワッシャ本体3Aは、板金をプレス加工して図のような起伏形状に成形されており、前記座繰り凹部5Aや環状凹部5B等の凹部5を形成してあることによって、平板のままより断面二次モーメントが増加し、薄板であっても強度の高いワッシャ本体を構成することが可能となっている。
また、前記ワッシャ本体3Aの上面は、上述のホットメルト接着層Hを被覆して接着部7として構成してある。
そして、ワッシャ本体3Aは、スラブ本体2上に、縦横に所定の間隔を開けた各位置に配置され、前記取付孔6を通してビス止めしてある。
【0021】
前記防水シート4は、例えば、PVCシートによって構成してあり、工場で所定幅寸法の長尺体防水シートを巻き取ってロール体を形成しておき、そのロール体を現場で広げながら配置し、隣接する各防水シート4相互の側縁部どうしを接着することで大面積の防水シートとすることができる。勿論、予め、敷設する対象面積に合わせて一体品の防水シートを形成しておくものであってもよいし、また、素材に関しても、PVC以外にも、ゴムやTPE(サーモ・プラスチック・エラストマ)製のシート、又は、その他の素材からなる防水シートであってもよい。
【0022】
そして、スラブ本体2への防水シート4の固定は、ワッシャ本体3Aの上に被さった防水シート4部分上方に磁気加熱装置をセットして、ワッシャ本体3Aを磁気加熱することによって、前記ホットメルト接着層Hを溶かし、ワッシャ本体3Aと防水シート4とを接着することができる(図1・4参照)。
【0023】
以上のような防水層P1も、耐久年が経過するに伴って、改修する必要があり、図5は、本発明の防水層改修方法を実施した後の屋上スラブ1を示す断面図である。
【0024】
つまり、防水下地2上に固定された防水シート固定金具3の上面に接着材で既設の防水シート4として第1防水シートが固定してあり、その第1防水シート4の固定部上で防水シート固定金具3と重なる位置に、改修防水シート9の固定用プレート10を載置した状態で、防水シート固定金具3と固定用プレート10とを、リベット11で機械的に連結してあり、固定用プレート10の上面に接着材で改修防水シートとして第1防水シート4と同材質の第2防水シート9を固定して新防水層を形成してある。
【0025】
前記防水層P1の改修手順について説明する(図5参照)。
1.第1防水シート4の上面に、新防水層を形成するために、第2防水シート9を重ねて固定するに、第2防水シート9中の可塑剤が第1防水シート4に移行しないように、絶縁シート12を載置し、第1防水シート4の固定部上で防水シート固定具3と重なる位置に、第2防水シート9の固定用プレート10を載置する。なお、固定用プレート10は、防水シート固定金具3を上方から覆うことができる大きさの金属製の円盤に、リベット11の軸部を挿通させるための貫通孔13を形成した座繰り部14を、円周方向に3箇所設け、その上面には、接着材として熱可塑性合成樹脂からなるホットメルト接着層15を被覆してある。
2. 防水シート固定金具3と固定用プレート10とを、機械的に連結するために、固定用プレート10の貫通孔13に対応させて、絶縁シート12と第1防水シート4及び防水シート固定金具3にドリルでリベット挿通用の孔16を穿ち、それらの孔16及び貫通孔13にリベット11を挿通させた後、リベット専用工具でリベット11を加締めにより座屈変形させて防水シート固定金具3に固定用プレート10を一体連結する。
3.絶縁シート12と第1防水シート4及び固定用プレート10の上に重なるように、新しい改修防水シートとしての第2防水シート9を載置する。
4.固定用プレート10を電磁誘導加熱機で、発熱昇温させ、固定用プレート10の上面に設けたホットメルト接着層15を融かし、第2防水シート9をホットメルト接着層15を介して固定して新防水層を形成する。
【0026】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0027】
〈1〉 第1防水シート4をスラブ本体2に固定するのに、円盤状の防水シート固定金具3に代えて、図6に示すように、長尺板状の防水シート固定金具3を使用する場合であっても良く、この場合は、固定用プレート10も防水シート固定金具3に対応した長さのフラットバー状のプレートに形成してあるものを使用する。
〈2〉 新防水層を形成するのに、図7に示すように防水シート4上に、絶縁シート12及び改修防水シート9を重ね、改修防水シート9上で防水シート固定金具3と重なる位置に、改修防水シート9の固定用プレート10を載置し、防水シート固定金具3と固定用プレート10とを機械的にリベット等で連結し、固定用プレート10をその径方向の外側まで覆う防水カバー18を、固定用プレート10上に載置し、固定用プレート10の全外周に沿って防水カバー18と改修防水シート9とを接着してもよい。この場合、改修防水シート9はその上から固定用プレート10で確実に固定される。
〈3〉 防水シート固定金具3と固定用プレート10との連結は、リベット11に代えて、タッピンネジを使用して一体に連結するようにしてあっても良い。
〈4〉 前記接着材としては、ホットメルト接着材に代えて、防水シートと同様の樹脂からなる塩ビ系接着材などの合成樹脂系接着材の他、ゴム系の接着材を使用してもよい。
〈5〉 防水下地は、コンクリートスラブの他に、木下地や金属パネルからなる下地を含み、それら防水下地へのビスBの固定は、各下地に応じて適宜選択できる。
【0028】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
2 防水下地
3 防水シート固定金具
4 防水シート(第1防水シート)
9 改修防水シート(第2防水シート)
10 固定用プレート
11 リベット
P1 防水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地上に固定された防水シート固定金具の上面に接着材で防水シートを固定してある防水層を改修する防水層改修方法であって、
前記防水シートの固定部上で前記防水シート固定具と重なる位置に、改修防水シートの固定用プレートを載置し、
前記防水シート固定金具と前記固定用プレートとを機械的に連結し、
前記固定用プレートの上面に接着材で前記改修防水シートを固定して新防水層を形成する防水層改修方法。
【請求項2】
防水下地上に固定された防水シート固定金具の上面に接着材で防水シートを固定してある防水層を改修する防水層改修方法であって、
前記防水シート上に改修防水シートを重ね、前記改修防水シート上で前記防水シート固定金具と重なる位置に、前記改修防水シートの固定用プレートを載置し、
前記防水シート固定金具と前記固定用プレートとを機械的に連結し、
前記固定用プレートをその径方向の外側まで覆う防水カバーを、前記固定用プレート上に載置し、
前記固定用プレートの全外周に沿って前記防水カバーと前記改修防水シートとを接着して新防水層を形成する防水層改修方法。
【請求項3】
防水シート固定金具と固定用プレートとを、リベットで機械的に連結する請求項1または2に記載の防水層改修方法。
【請求項4】
防水シート固定金具と固定用プレートとを、タッピンネジで機械的に連結する請求項1または2に記載の防水層改修方法。
【請求項5】
防水下地上に固定された防水シート固定金具の上面に接着材で第1防水シートを固定し、
前記第1防水シートの固定部上で前記防水シート固定具と重なる位置に、第2防水シートの固定用プレートを載置した状態で、前記防水シート固定金具と前記固定用プレートとを機械的に連結してあり、
前記固定用プレートの上面に接着材で前記第2防水シートを固定してある防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−80212(P2011−80212A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231784(P2009−231784)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000178619)アーキヤマデ株式会社 (39)