説明

防水層構造及び防水層形成方法

【課題】繊維補強布に樹脂組成物が含浸されて形成された繊維強化樹脂層を含む防水層構造において、樹脂組成物として揮発性成分を含まない樹脂組成物を用いた防水層構造、及び、この防水層構造を得るための防水層形成方法を得る。
【解決手段】下地と、下地の上に形成された防水層と、を有する防水層構造であって、防水層は、チョップドストランド状の繊維補強布に、水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材が含浸されて形成された繊維強化樹脂層を含む。また、チョップドストランド状の繊維補強布は、ガラスチョップドストランドマット状、または、ビニロンチョップドストランドマット状の繊維補強布である。さらに、下地の上に水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材を塗布して含浸下塗りとし、含浸下塗りの上にチョップドストランド状の繊維補強布を敷き、繊維補強布の上に水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材を塗布して繊維強化樹脂層を形成する工程を含む防水層形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維補強布に樹脂組成物が含浸されて形成された繊維強化樹脂層を含む防水層構造に関し、詳しくは、樹脂組成物として揮発性成分を含まない樹脂組成物を用いた防水層構造、及び、この防水層構造を得るための防水層形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、繊維強化樹脂層を含む防水構造の従来例が記載されている。この防水構造は、鉄筋コンクリートや綱板パネル等の上にモルタルが打設されてなる基体の上に、ポリウレタン樹脂からなる塗膜防水層が形成され、さらに、この塗膜防水層の上に、FRPが無機原料繊維に不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂等が含浸されてなる繊維強化熱硬化性樹脂からなる防水保護層が形成されて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−222983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の従来例の防水構造においては、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂に含まれるスチレンモノマーが揮発と臭気とを伴うため、作業時や施工後の環境が悪化するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、繊維補強布に樹脂組成物が含浸されて形成された繊維強化樹脂層を含む防水層構造において、樹脂組成物として揮発性成分を含まない樹脂組成物を用いた防水層構造、及び、この防水層構造を得るための防水層形成方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の請求項1に記載の発明は、下地と、下地の上に形成された防水層と、を有する防水層構造であって、防水層は、チョップドストランド状の繊維補強布に、水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材が含浸されて形成された繊維強化樹脂層を含むことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、チョップドストランド状の繊維補強布は、ガラスチョップドストランドマット状、または、ビニロンチョップドストランドマット状の繊維補強布である請求項1に記載の防水層構造である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、下地の上に水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材を塗布して含浸下塗りとし、この含浸下塗りの上にチョップドストランド状の繊維補強布を敷き、さらに、この繊維補強布の上に水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材を塗布して繊維強化樹脂層を形成する工程を含む防水層形成方法である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、チョップドストランド状の繊維補強布は、ガラスチョップドストランドマット状、または、ビニロンチョップドストランドマット状の繊維補強布である請求項3に記載の防水層形成方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明になる防水層構造は、繊維強化樹脂層には、揮発成分を有しない水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材が使用されているので、使用にあたっての環境保全を図ることができる。また、繊維補強布としてチョップドストランド状の繊維補強布、特にガラスチョップドストランドマット状、または、ビニロンチョップドストランドマット状の繊維補強布が用いられていることにより、耐衝撃性及び表面硬度が非常に優れるものである。
【0011】
本発明の防水層形成方法によれば、繊維強化樹脂層を形成するに際し、揮発成分を有しない水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材を用いるので、形成作業時における環境保全を図ることができる。また、繊維補強布にこの防水材を確実に含浸させることができるとともに、乾燥性も良好であり、さらに、この方法により得られる防水層は、耐衝撃性及び表面硬度に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の防水層構造における下地は、一般の建築構造物の下地、例えば、不燃板、合板、ケイ酸カルシウム板、モルタル、コンクリートである。
【0013】
繊維強化樹脂層を構成する繊維補強布としては、チョップドストランド状のものが用いられ、市販のガラスチョップドストランドマット状、または、ビニロンチョップドストランドマット状の繊維補強布が使用に供される。
【0014】
水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材としては、例えば、1液型防水材MYルーファー(三菱化学産資株式会社製、商品名)が使用に供される。または、水性アクリル樹脂組成物を主成分とするリカボンドES−650(中央理化工業株式会社製、商品名)に炭酸カルシウム、及び、水を混合してなる防水材が使用に供される。後者の防水材の配合比率は、防水材100重量%において、リカボンドES−650を15〜20重量%、炭酸カルシウムを45〜55重量%、及び、水を25〜30重量%とする。なお、以下、この水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材を、単に防水材と記載する場合がある。
【0015】
これら防水材は、JIS K 5601−1−2:1999(塗料成分試験方法−第1部:通則−第2節:加熱残分)に準じて測定した固形分が50〜85重量%、BM回転粘度計(No.3またはNo.4、60rpm)を用いることが好ましく、さらに、JIS
K 5600−2−3:1999[塗料一般試験方法−第2部:塗料の性状・安定性−第3節:粘度(コーン・プレート粘度計法)]に準じて測定した23℃雰囲気下における粘度が0.5〜7.0Pa・s、及び、TI値が1.0〜7.0の範囲にあるものを用いることが好ましい。
【0016】
前述の固形分は、これを50重量%以上とすることにより、施工作業時における乾燥性が良好となり、少ない工程数で、短時間で施工することができる。またさらに、乾燥後の寸法変化を小さくさせることができる。また、85重量%以下とすることにより、流動性や分散性、沈降性といった樹脂の安定性を確保することができる。また、粘度を0.5〜7.0Pa・s、及び、TI値を1.0〜7.0の範囲とすることにより、防水材の繊維補強布への含浸性、及び、作業性に優れるものとなる。
【0017】
さらに、成膜後の水性アクリル樹脂組成物の伸び率は、40%以上であることが好ましい。伸び率を40%以上とすることにより、材料自体や下地による寸法変化、ひび割れ、外的荷重等の応力を緩和させることができ、微細な亀裂・破損の発生を防止することができる。
【0018】
水性アクリル樹脂組成物の使用量は、繊維強化樹脂層100重量%に対し、20〜65重量%とすることが好ましい。この割合は、塗膜厚さや耐衝撃性等の必要性質に応じて適宜決定されるものである。
【0019】
次に、防水層の形成にあたっては、下地と繊維強化樹脂層との密着を良好にするため、下地の汚れ、付着物、脆弱な表面層等を除去する前処理を必要に応じて行い、またその後、下地の水分による塗膜の膨れや密着不良抑止を目的として、必要に応じて、プライマー層を形成する。前処理は、例えば、ショットブラスト、サンドペーパー等により、下地の表面の不陸を調整・研掃することにより行う。また、プライマー層の形成は、市販の水性エポキシ樹脂系プライマーを下地に0.1〜0.2kg/m程度塗布し、乾燥させることにより、行う。
【0020】
なお、プライマー層の形成後、下地と、この下地に対する繊維強化樹脂層の追従性をよくさせるため、繊維強化樹脂層を形成する前に、防水材を下地に0.1〜2.0kg/m塗布し、乾燥させる処理を行ってもよい。
【0021】
以上のように下地に対して、必要に応じて前述の前処理、プライマー層形成等を行った後、下地の上に防水材を塗布し、含浸下塗りとする。次いで、この含浸下塗りの上に前述のチョップドストランド状の繊維補強布を敷き、さらに、この繊維補強布の上に、防水材を塗布し、脱泡することにより、繊維補強布に防水材を含浸させ、繊維強化樹脂層を形成する。この繊維強化樹脂層は、塗布量が1.0〜3.0kg/mで形成されることが好ましく、乾燥時間、耐衝撃性等の必要性質に応じて適宜決定される。
【0022】
この繊維強化樹脂層は、厚さが0.8〜3.0mmとなるよう形成するとよい。すなわち、厚みを0.8mm以上とすることにより、十分な耐衝撃性や耐水性を確保することができ、3.0mm以下とすることにより、防水層を少ない工程で容易に形成することができる。
【0023】
繊維強化樹脂層の形成後、必要に応じて、この繊維強化樹脂層の上にトップコート樹脂層を形成する。このトップコート樹脂層は、一般のトップコート処理でよく、例えば、水性アクリルウレタン樹脂系塗料ネオグロスU−200(亜細亜工業株式会社製、商品名)や水性アクリル樹脂系合成樹脂エマルジョンペイント(RFコート)等、市販の水性アクリル系樹脂に、必要に応じて顔料等を添加、着色したものを、繊維強化樹脂層に対して、塗布量は0.1〜0.4kg/mで塗布し、乾燥させて形成する。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明の防水層構造及び防水層形成方法を実施例により説明する。
【0025】
(実施例1)
下地として合板を用意し、この合板の上に、水性2液性エポキシ樹脂系プライマーJEX−110A及びJEX−110B(共にアイカ工業株式会社製、商品名)を1:3で配合したものを0.2kg/m塗布して乾燥させ、プライマー層を形成した。
【0026】
次いで、このプライマー層の上に、防水材として前述のMYルーファー(固形分72%、粘度−BM、No.3、60rpm、3.31Pa・s、TI値2.40)を0.5kg/m塗布し、含浸下塗りとした。続いて、この含浸下塗りの上に、チョップドストランド状の繊維補強布としてガラスチョップドストランドマット状繊維補強布JR−98KM(アイカ工業株式会社製、商品名、目付け量0.45kg/m)を敷き、この繊維補強布の上に、防水材として前述のMYルーファーを1.0kg/m塗布し乾燥させて、繊維強化樹脂層を形成した。
【0027】
そして、この繊維強化樹脂層の上に、水性1液アクリルウレタン樹脂系塗料ネオグロスU−200(亜細亜工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m塗布し、トップコート樹脂層を形成した。
【0028】
(実施例2)
実施例1において、チョップドストランド状の繊維補強布として、前述のJR−98KMに代えて、ガラスチョップドストランドマット状繊維補強布ECM450−501(セントラル硝子株式会社製、商品名、目付け量0.45kg/m)を用いた以外は同じ条件で形成した。
【0029】
(実施例3)
実施例2において、防水材として前述のMYルーファーに代えて、前述のリカボンドES−650(固形分50%、粘度−BM、No.3、60rpm、5.21Pa・s、TI値3.24)、炭酸カルシウム、及び、水を混合させ、さらにこれに添加剤を混和させた防水材を用いた以外は同じ条件で形成した。なお、この防水材の各成分の配合割合は、この防水材の添加剤を除いた重量を100重量%とするとき、リカボンドES−650を20重量%、炭酸カルシウムを50重量%、及び、水を30重量%とした。
【0030】
(実施例4)
実施例1において、チョップドストランド状の繊維補強布として、前述のJR−98KMに代えてビニロンチョップドストランドマット状繊維補強布VM−110(日本バイリーン株式会社製、商品名、目付け量0.11kg/m)を用いた以外は同じ条件で形成した。
【0031】
(比較例1)
比較例1は、繊維補強布としてガラスチョップドストランド状のものを用い、これに含浸させる樹脂組成物として、揮発成分を含むものを用いる例である。具体的には、下地として合板を用意し、この合板の上に、溶剤1液ウレタン樹脂系プライマーJU−1270(アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m塗布して乾燥させてプライマー層を形成した。
【0032】
次いで、このプライマー層の上に溶剤2液不飽和ポリエステル樹脂JE−2006(アイカ工業株式会社製、商品名)を0.5kg/m塗布し、含浸下塗りとした。続いて、この含浸下塗りの上に前述のJR−98KM(目付け量0.45kg/m)を敷き、この上に前述のJE−2006を1.0kg/m塗布して硬化させ、繊維強化樹脂層を形成した。
【0033】
そして、繊維強化樹脂層の上に、2液溶剤不飽和ポリエステル樹脂塗料JE−2080(アイカ工業株式会社製、商品名)を0.4kg/m塗布してトップコート樹脂層を形成した。
【0034】
(比較例2)
比較例2は、繊維補強布としてガラスメッシュ状のものを用い、これに含浸させる樹脂組成物として、有機溶剤系のものを用いた例である。具体的には、下地として合板を用意し、この合板の上に溶剤1液ウレタン樹脂系プライマー(宇部興産社製、ユーテックスプライマー、商品名)を0.2kg/m塗布し、硬化させ、プライマー層を形成した。
【0035】
次いで、プライマー層の上に、溶剤2液ウレタン樹脂系防水材ユーテックス(宇部興産社製、商品名)を0.3kg/m塗布し、含浸下塗りとした。続いて、この上に繊維補
強布としてガラスメッシュ状繊維補強布ユーテックスクロス(宇部興産社製、商品名、目付け量0.3kg/m)を敷き、含浸上塗りとして、前述のユーテックスを1.2kg/m塗布し乾燥させ、繊維強化樹脂層を形成した。
【0036】
さらに、繊維強化樹脂層の上に、溶剤2液アクリルウレタン樹脂系トップコート材ユーテックスコート(宇部興産社製、商品名)を0.3kg/m塗布し、トップコート樹脂
層を形成した。
【0037】
(比較例3)
比較例3は、繊維補強布としてポリエステル繊維補強布を用い、これに含浸させる樹脂組成物として、水性アクリル樹脂組成物を用いた例である。具体的には、実施例1において、繊維補強布として前述のJR−98KMに代えて、ポリエステル繊維補強布4120P(東洋紡績株式会社製、商品名、目付け量0.12kg/m)を用いた以外は実施例1と同じ条件で形成した。
【0038】
(比較例4)
比較例4は、下地の上に防水層を形成するに、繊維強化樹脂層を形成しない例である。具体的には、下地として合板を用意し、この合板の上に、前述のJEX−110A及びJEX−110Bを1:3で配合したものを0.2kg/m塗布し、乾燥させてプライマ
ー層を形成し、このプライマー層の上に前述のリカボンドES-650を1.5kg/m塗布し、乾燥させた。
【0039】
次に、以上述べた各実施例及び比較例の特性を下記により評価した。
【0040】
(引張性能)
JIS A6021(建築用塗膜防水材)に準じて、各実施例及び比較例の施工方法に基づく試験片を作成し、この試験片の引っ張り試験を行い、引張強さ(N/mm)、伸び率(%)、及び、抗張積(N/mm)を算出した。
(1)試験体
JIS A6021に準じて前述の実施例1〜4、及び、比較例1〜4の条件(ただし、すべて、前述のプライマー層の形成はしないこととする)で実施例1〜4及び比較例1〜4の試験体を作成し、これをJIS K6251に規定するダンベル状2号形に打ち抜き、試験片を作成した。
【0041】
次いで、各試験片を下記条件により、それぞれ養生した。
樹脂組成物が1液乾燥型のもの(実施例1〜4、比較例3及び4)
23±2℃、50%(RH)で24時間標準静置後40℃72時間乾燥を行い、その後23±2℃、50%(RH)で7時間以上静置する。
樹脂組成物が2液反応型のもの(比較例1及び2)
23±2℃、50%(RH)で168時間静置する。
【0042】
(2)試験方法
インストロン万能試験機を用いて、JIS A6021に準じて各試験片の引っ張り試験を行い、引張強さ、伸び率、及び、抗張積を算出した。
【0043】
(耐水性試験)
前述の引張性能の試験で用いたものと同じ条件で試験片を用意し、これら試験片を水面下30mmの位置で、20℃24時間の条件で水中浸漬させた。浸漬後、前述と同じ引っ張り試験を行い、引張強さを算出し、浸漬後の引張強さの、同条件の試験片の浸漬前の引張強さ(すなわち、前述の引っ張り試験における引張強さ)に対する割合により、下記の通り、評価した。
○ :浸漬後の試験片が3体とも、浸漬前の引張強さに対して80%以上を保持している。
△○:浸漬後の試験片のうち1体または2体が、浸漬前の引張強さに対して引張強さ80%以上を保持している。
△ :浸漬後の試験片が3体とも、浸漬前の引張強さに対して60%以上80%未満を保持している。
×△:浸漬後の試験片のうち1体または2体が、浸漬前の引張強さに対して引張強さ60%以上80%未満を保持している。
× :浸漬後の試験片が3体とも、浸漬前の引張強さに対して60%未満である。
【0044】
(へこみ試験)
日本建築学会制定のJASS 8(防水工事)に規定のメンブレン防水層の性能評価試験方法のへこみ試験に準じて行った。
【0045】
具体的には、前述の各実施例1〜4及び比較例1〜4により形成された防水層構造、温度20℃の状態で1時間養生させたのち、各実施例及び比較例の表面の上に荷重を24時間載荷した。荷重は、5kg、15kg、及び、25kgとし、各荷重をそれぞれ24時間、各荷重点を変えて載荷した。そして、荷重から24時間経過した後、表面の穴あきの有無、及び、表面の形状変化を目視で確認し、下記の通り評価した。
○ :表面に穴あきが無い。25kg荷重でへこみ・割れが認められない。
△○:表面に穴あきが無い。25kg荷重でへこみ・割れが認められる。15kg荷重でへこみ・割れが認められない。
△ :表面に穴あきが無い。15kg荷重でへこみ・割れが認められる。
×△:表面に穴あきが無い。15kgでへこみ・割れが認められる。5kg荷重でへこみ・割れが認められない。
× :表面に穴あきが有る。5kg荷重でへこみ・割れが認められる。
【0046】
(耐衝撃性試験)
前述のJASS 8に規定の耐衝撃性試験に準じて、行った。具体的には、前述の各実施例1〜4及び比較例1〜4により形成された防水層構造を温度20℃の状態で1時間養生させたのち、その表面から0.5m上、1.0m上、及び、1.5m上から0.5kgのおもりを、それぞれ、落下点を変えて落下させた。次いで、落下点の穴あきの有無、及び、形状変化を目視で確認した。本評価結果は、下記の様に区分評価した。
◎ :高さ1.5mからの落下で表面に異常が認められない。
○ :高さ1.5mからの落下で表面に穴あきが無く、へこみが認められる。
△○:高さ1.0mからの落下で表面に穴あき無く、へこみが認められる。
△ :高さ1.0mからの落下で表面に穴あきが有る。
×△:高さ0.5mからの落下で表面に穴あきが無く、へこみが認められる。
× :高さ0.5mからの落下で表面に穴あきが有る。
【0047】
(乾燥時間の測定)
寸法約24×345mmの板ガラスを8枚用意し、各板ガラスに対して、23℃、60%(RH)雰囲気下で、前述の実施例1〜4、及び、比較例1〜4のぞれぞれと同じ条件(ただし、プライマー層及びトップコート層の形成はしない)で繊維強化樹脂層を厚みが約1mmとなるよう形成した。そして、ドライニングレコーダー(太佑機材株式会社製、ドライニング・タイム・レコーダー)を用い、各板ガラスの塗膜の乾燥時間を測定した。
【0048】
(臭気試験)
前述の実施例1〜4、及び、比較例1〜4を施工する際に、施工作業者の嗅覚により、臭気の程度を判定した。判定基準は下記の通りとした。
○:臭気が気にならない。
△:臭気がわずかに気になる。
×:非常に強い臭気を感じる。
【0049】
表1に以上の結果を示す。
【表1】

【0050】
この結果からわかるように、各実施例は、引張性能、耐水性、へこみ性、耐衝撃性、及び、臭気の有無において優れた性状を有することが確認された。乾燥時間においても、作業上、問題ないレベルであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地と、前記下地の上に形成された防水層と、を有する防水層構造であって、前記防水層は、チョップドストランド状の繊維補強布に、水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材が含浸されて形成された繊維強化樹脂層を含むことを特徴とする防水層構造。
【請求項2】
前記チョップドストランド状の繊維補強布は、ガラスチョップドストランドマット状、または、ビニロンチョップドストランドマット状の繊維補強布であることを特徴とする請求項1に記載の防水層構造。
【請求項3】
下地の上に水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材を塗布して含浸下塗りとし、前記含浸下塗りの上にチョップドストランド状の繊維補強布を敷き、さらに、前記繊維補強布の上に前記水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材を塗布して繊維強化樹脂層を形成する工程を含むことを特徴とする防水層形成方法。
【請求項4】
前記チョップドストランド状の繊維補強布は、ガラスチョップドストランドマット状、または、ビニロンチョップドストランドマット状の繊維補強布であることを特徴とする請求項3に記載の防水層形成方法。

【公開番号】特開2012−154173(P2012−154173A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115743(P2012−115743)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2006−112124(P2006−112124)の分割
【原出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)