説明

防水床パンの防振支持構造

【目的】 ゴムブロック等の弾性部材の機能を最大限に発揮させ、振動吸収、緩衝作用に優れ、防水床パンの振動防止機能に優れるとともに、ゴムブロック等の弾性部材の躯体床面への設置の容易化、ゴムブロック等を傷つけることのない防水床パンの防振支持構造を提供する。
【構成】 支持脚10の下部に弾性部材18を備え、更にこの弾性部材18の底面18bを断面L型のリング状部材からなる保持座20で囲い、この保持座20を建築躯体床面8に当接するように構成したことを特徴とする防水床パンの防振支持構造。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、浴槽、洗い場等の床面を構成する防水床パンの防振支持構造の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】浴槽、洗い場等の床面を構成する防水床パンを、ゴム等の弾性部材を介して建築躯体床面に支持し、防振を図った技術は従来から実用に供されている。図6は従来例の支持脚下半部の正面図、図7は従来例の他の例の支持脚下半部の正面図であり、図6はボルト等の支持脚51の下端部にゴムブロック52を固設し、ゴムブロック52の底面53を建築躯体床面54上に載置し、ゴムブロック52の下部周を接着剤55で建築躯体床面54に固着したものである。図7は、上記ゴムブロック52の下端面に上面の平板状の支持板56と同様の支持板57を貼設、固定し、支持板57を建築躯体床面54上に載置し、支持板57周を含むゴムブロック52の下部周を接着剤55で躯体床面54に固着したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】以上の従来技術は、図6R>6のタイプのものでは、粗面の建築躯体床面54にゴムブロック52の底面53が直接載置されるので据わりが悪く、床パンの荷重がかかるので、ゴムブロック52の底面53が傷つき易く、ゴムブロック52の耐久性の低下等の虞があること、特にゴムブロック52の底面、下端周のコーナー部が裸のため、コーナー部が傷み易く、この部分に傷が発生し易く、傷が大きくなってゴムブロック全体が傷む等の不都合がある。図7のタイプでも、基本的には同様の不都合があり、支持板57を粗面やレベルが一定しない躯体床面54に載置するので、躯体床面54の支持脚当たり面を平滑に、略々水平に研磨することが好ましく、これは図6も同様で、支持脚51は複数設けられており、躯体床面54の多くの当たり面を研磨するのでは、設置に際し、工数が多くなり、又研磨作業が面倒で、施工上好ましくなく、施工コストがアップする等の不都合がある。
【0004】本発明は、かかる課題を解決すべくなされたもので、その目的とする処は、ゴムブロック等の弾性部材の機能を最大限に発揮させ、振動吸収、緩衝作用に優れ、防水床パンの振動防止機能に優れるとともに、ゴムブロック等の弾性部材の躯体床面への設置の容易化、ゴムブロック等を傷つけることのない、又構造が簡素な防水床パンの防振支持構造を提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するための手段は、防水床パンの底面に複数本の支持脚を垂下、設置し、支持脚と建築躯体床面との間に、ゴム等の弾性部材を介設した防水床パンの防振支持構造において、前記支持脚は、下部に弾性部材を備え、更にこの弾性部材の底面を断面L型のリング状部材からなる保持座で囲い、この保持座を建築躯体床面に当接するように構成したことを特徴とする。
【0006】前記支持脚下部に設けられる弾性部材は、軸方向が短い円柱状ゴムブロックで構成され、前記保持座は、建築躯体床面上に載置、固着された断面L型の円形リング状部材で構成され、円柱状ゴムブロックの下部周、底面周辺部を保持座で嵌着、載置して保持するようにする。
【0007】前記支持脚は、防水床パン底面に垂下され、上下方向に長さが調節可能であってもよい。
【0008】
【作用】弾性部材の底面をリング状の保持座で囲うことによりゴム等の弾性部材を直接床面に当てないようにする。
【0009】弾性部材を軸方向が短い円柱状ゴムブロックで構成して安定を良くする。
【0010】支持脚を長さ可変にして座面の凹凸や傾斜に対応させ、防水床パンのレベルを良好に保つ。
【0011】
【実施例】以下に本発明の一実施例を添付した図面に従って詳述する。なお、図面は符号の向きに見ものとする。図1は本発明に係る防水床パンの防振支持構造の全体を示す側面図、図2は支持脚の一部を断面とした拡大正面図、図3は支持脚下半部の外観を示す正面図、図4は図3の底面図、図5は支持脚の他の例を示した拡大正面図である。
【0012】図1において1は防水床パンを示し、床パン1は、例えば、図1の左半部が浴槽設置床パン部2、右半部が洗い場床パン部3を構成し、実施例では、合成樹脂で両床パン部2,3が一体に形成されている。なお、両床パン部2,3は夫々別体に成形した後に一体化しても良い。浴槽設置床パン部2の底面には、例えばボックス状のリブ4…が垂下、突設されており、洗い場床パン部3の底面には、底面視格子状のリブ5…が垂下、突設されている。両床パン部2,3の底面境界部には、排水部6が下方に垂下されるように形成され、両床パン部2,3の上端部には、壁パネル等を立設、支持するL型フランジ部7が囲橈するように設けられている。
【0013】床パン1の底面1aは、浴槽設置床パン部2の底面1bが低く、洗い場床パン部3の底面1cがこれより高位であり、かかる底面1aは支持脚10…,30…で建築躯体床面8上に所定高さで固定、支持される。支持脚10…,30…は浴槽設置床パン部2の底面1bと、洗い場床パン部3の底面1cとでは、基本構造は共通するも、若干異なる構造を採用し、これは、支持脚10…,30…で支持される部位が、各底面1b,1cのリブ4,5であって、リブ形状が異なるためである。
【0014】図2は、浴槽設置床パン部2の底面1bの支持脚10…を示している。支持脚10は、底面1cに垂下、突設されたリブ4の底面部4aに逆凹型のキャップ状受け部11の上面11aを当接させて載置する支持脚上部材15(以下「上部材15」と略す)を備え、上部材15の受け部11の下面には下部を絞った筒部12が固設、垂下され、筒部12の下部には筒状ナット部材13が内装固設されている。14はロック用ナットである。
【0015】支持脚下部材16(以下「下部材16」と略す)は、上記上部材15のナット部材13に下から螺合、螺通するボルト17を備え、ボルト軸17aは長く設定され、上記ナット部材13に螺合、螺通し、ボルト頭17bは、防振弾性部材をなすゴムブロック18の上面の平板部19中央部上に溶接等で一体的に接合、固着されている。ゴムブロック18は、軸方向に短い中実円柱状をなし、上面が平板部19に焼き付け等で接合、固着され、一体化されている。従って、ゴムブロック18は、これの上端部に平板部19を介してボルト17が直立するように設置され、ゴムブロック18、平板部19、ボルト17で一体の下部材16を構成する。
【0016】更にゴムブロック18の下部に、次に説明する保持座20を嵌合する。保持座20は、図2、図3R>3、図4で示すように断面L型のリング状をなし、中間部に円形の大きな開口部21を備える座部22、該座部22の外端部から直角に起設された円形リング状の起立片23からなる。
【0017】図3に示すゴムブロック18は、可撓性を備えるので、保持座20の起立片23の内径を、ゴムブロック18の外径よりも若干小さく設定しておき、ゴムブロック18の下部18aを保持座20に強篏、軽圧入させ、ゴムブロック18下部に保持座20を嵌装、取付、保持させ、保持座20を一体取付けできる。ゴムブロック18の下部18a(図2参照)の外周は、起立片23内径部に圧接し、底面18bの周辺部が座部22上面に当接した状態で、保持座20はゴムブロック18にセットされ、一体化される。
【0018】以上のようにゴムブロック18下部に保持座20を嵌装、セットした下部材16(ロック用ナット14は予め捩じ込んでおく。)を上部材15のナット部材13に下から螺合、螺通させ、保持座20を躯体床面8上に着座させ、床パン1の底面を支持する支持脚10を躯体床面8上に載置、支持させる。この際、支持脚10の躯体床面8上に当接、載置される部分は、保持座20であり、保持座20は、上記したように座部22が細幅のリング状なので、躯体床面8に大きな面で全面的に接触することがなく、リング状当接面が小さく、躯体床面8の粗面に影響されることが少なく、据わりが良い据え付けが行えることとなる。
【0019】ところで、躯体床面8の状態、床パン1の状態等で、床パン1の躯体床面8からの高さや、レベルの調節は予め見当をつけて行っておくが、実際には躯体床面8との関係で高さの微調整等の高さ調節作業を行う必要があり、かかる調節作業は、保持座20を含むゴムブロック18を回動させ、ボルト17とナット部材13の螺合作用で上部材15が上下に昇降し、高さの調整がなされる。この際、躯体床面8への直接の接触が保持座20であり、保持座20のリング状底面の躯体床面8との接触面積が小さいこともあって、躯体床面8との間に抵抗が少なく、従って容易に回動させることができ、容易に高さ調節作業が行えることとなる。高さ調整後に、ロック用ナット14を強く捩って、ナット部材13とボルト17との間の弛み防止を図る。
【0020】以上のように躯体床面8上に保持座20を載置、据え付けた後、保持座20の起立片23外周部と床面との間に接着剤9(図2参照)を注入し、保持座20を床面8上に据え付け、固着する。尚、接着後に高さ調節する必要が発生した場合には、下部材16のボルト頭部17bを介してゴムブロック18を含む支持脚下部材16は回動可能であり、保持座20の床面8への据え付け、接着、固定後の高さ微調整は、容易に可能である。
【0021】図5は洗い場床パン部3の支持脚30の構造を示し、上部材31は、リブ5の底部に垂下、接合したスティ32に垂下するように取り付けられた下向きC型チャンネル部33と、これの上下面に同軸に設けられたナット34,35とで構成されている。下部材16は上記と全く同様の構造で、下部材16は、長いボルト17、ボルト頭17b下面に固着された平板部19、ゴムブロック18からなり、洗い場床パン部3の底面1cが浴槽設置床パン部2の底面1bよりも高位に構成されているので、ボルト17の長さが上記よりも長く、ボルト軸17aの上半部にネジを形成し、下半部を平滑な軸部に構成しただけで、実質上の差異は無い。
【0022】かかる支持脚30の下部材16も、上記と同様にゴムブロック18の下部に保持座20を嵌装、保持させ、ナット34,35にボルト軸17aを螺合、螺通し、床面8上に載置、据え付け、保持座20を接着剤9で床面8に据え付け、固着する。上記と同様に保持座20の固着以前に、又固着後に下部材16を回動させて高さ調節を行うことができる。従って、実質的に支持脚30は上記支持脚10と全く同様の構造である。
【0023】以上のように、床パン1を支持脚10…,30…で支持し、支持脚10…,30…と躯体床面8との間に弾性部材であるゴムブロック18…を介装させるに際し、ゴムブロック18は躯体床面8に直接接触することがなく、保持座20を介して据え付けられ、保持座20もリング状であるので、粗面や凹凸面のままの躯体床面8に据わりが良く、躯体床面8の据え付け面の研磨等を必要とすることなく弾性部材を容易に、確実に据え付けることができる。そして、ゴムブロック18は、躯体床面8に直接接着されることがなく、保持座20で嵌着、保持されるので、ゴムブロック18の振動吸収、緩衝機能は阻害されることが一切無く、ゴムブロック18固有の、それ自身の振動吸収、緩衝機能を充分に、確実に発揮し、高性能な防振支持構造を得ることができる。更にゴムブロック18は、床面8に直接接着されないので、ゴムブロック18下端周部分が振動による揺動等で接着剤界面に傷が付いたり、割れたり、裂けたり、底面が粗面の床面8に接触していないので傷ついたり、割れたり、亀裂が発生したりすること等の床面直接接着による弊害が一切無く、寿命、耐久性に優れた防水床パンの防振支持構造が得られる。
【0024】尚、図3で説明した支持脚下部材16(ボルト17,ゴムブロック18,保持座20の組合体)は次の製法で製造してもよい。保持座20を図示せぬゴム金型にセットし、この金型にゴムを流し込み、ゴムの固化する際に保持座20がゴムブロック18に接着して、一体化される。なお、開口部21には適当なスペーサを入れておいて開口部21にゴムが流れ込まないようにしておく。
【0025】
【発明の効果】以上で明らかなように本発明によれば、請求項1では、支持脚の下端部に設けられ、建築躯体床面と支持脚間に介装される弾性部材は、躯体床面に載置、固定されるリング状保持座に嵌合等されて嵌着保持されるので、弾性部材は躯体床面に直接固定されることが無く、弾性体は保持座に強篏、圧入等されて支持脚と躯体床面との間に介装されるので、弾性体を躯体床面に固定された場合にように弾性体の機能の阻害要因が無く、かかる従来技術に比し、弾性体固有の、それ自身の振動吸収、緩衝機能を全面的に発揮させることができ、振動吸収効果、緩衝効果の極めて高い、実用性に優れた防水床パンの振動防止構造を得ることができる。又躯体床面には、リング状の保持座が当接、載置、固定されるので、床面との接触面積が小さくなり、据わりが良く、躯体床面が粗面であったり、凹凸面であっても、床面の研磨等の作業を必要とすることなく、安定して据え付けることができ、据え付け作業が極めて容易化し、施工性が著しく向上し、現場施工上極めて有利である。更にゴムブロック等の弾性体を床面に直接接着剤等で固定しないので、弾性体の端縁部等を傷つけることが無く、又弾性体の底面が粗面の床面に直接接触し、負荷がかかるようなことが無いのでこれもまたゴムブロック等を傷つけることが無く、弾性体の寿命、耐久性が従来に比し、著しく向上し、長期に亘り優れた振動吸収効果、緩衝効果を得ることができる。
【0026】請求項2では、上記に加え、ゴムブロックで弾性体を構成するので、充分で合理的な容量の弾性部材、振動吸収機能、緩衝機能に優れた弾性部材が得られ、しかも躯体床面に固定されないので、ゴムブロック固有の、それ自身の振動吸収機能、緩衝機能を全面的に発揮するので、床面に接着、固定されたゴムブロックに比し、容量、外形をコンパクト化しつつ必要とする振動吸収効果を発揮することができる。又ゴムブロックに、L型リング状保持座を下から嵌着し、躯体床面に着座させ、保持座を床面に接着等して固定するので、剛体を接着すれば良く、固定作業も容易化し、作業性が向上し、施工が容易化する。
【0027】請求項3では、支持脚は高さ調節が可能で、従って、躯体床面の水平度等に問題があっても、防水床パンを設定高さ、レベルに容易に調節が可能である。特に床面への据え付け後の高さ微調整においては、床面と直接接触する保持座がリング状で、床面との接触面積が小さいので、従来のようにゴムブロック底面が全面的に躯体床面に接触する抵抗が高い状態下での回動、調節に比し、本発明では、抵抗が極めて少なく、回動させることで高さ調節を行う場合には、回動が従来に比し極めて容易に行え、高さ微調整作業が容易化し、高さ調節を含む施工性が著しく向上し、施工上極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る防水床パンの防振支持構造の全体を示す側面図
【図2】本発明に係る支持脚の一部を断面とした拡大正面図
【図3】本発明に係る支持脚下半部の外観を示す正面図
【図4】上記図3の底面図
【図5】本発明に係る支持脚の他の例を示した拡大正面図
【図6】従来例の支持脚下半部の正面図
【図7】図7は従来例の他の例の支持脚下半部の正面図
【符号の説明】
1…防水床パン、10,30…支持脚、13…ナット部材、14…ロック用ナット、17…ボルト、18…弾性部材であるゴムブロック、18a…ゴムブロックの下部、18b…ゴムブロックの底面、20…保持座、21…開口部、22…座部、23…起立片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 防水床パンの底面に複数本の支持脚を垂下、設置し、支持脚と建築躯体床面との間に、ゴム等の弾性部材を介設した防水床パンの防振支持構造において、前記支持脚は、下部に弾性部材を備え、更にこの弾性部材の底面を断面L型のリング状部材からなる保持座で囲い、この保持座を建築躯体床面に当接するように構成したことを特徴とする防水床パンの防振支持構造。
【請求項2】 前記支持脚下部に設けられる弾性部材は、軸方向が短い円柱状ゴムブロックで構成され、前記保持座は、建築躯体床面上に載置、固着された断面L型の円形リング状部材で構成され、円柱状ゴムブロックの下部周、底面周辺部を保持座で嵌着、載置して保持するようにしたことを特徴とする請求項1記載の防水床パンの防振支持構造。
【請求項3】 前記支持脚は、防水床パン底面に垂下され、上下方向に長さが調節可能であることを特徴とする請求項1記載の防水床パンの防振支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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