説明

防水手袋および防水手袋の製造方法

【課題】防水性の手袋本体の開口縁を外側且つ指先側に折り返して使用することができ、この際に水が手袋本体の内側に進入することを的確に防止できる防水手袋を提供する。
【解決手段】防水性を有し、袖部分が開口方向に漸次拡径する弾性材料製の手袋本体1と、少なくとも周方向の伸縮性を持った筒状部3を有する伸縮部材とを備え、この筒状部3の一方の端縁部分7aが手袋本体1の開口縁部分に伸状態で接合され、他方の端縁部分5aが手袋本体1の内面のうち開口縁1aから内方位置に伸状態で接合され、筒状部3の長さが手袋本体1の上記開口縁部分及び内方位置の長さ方向距離より大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水手袋およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗い物などの作業においてはゴム手袋等の防水手袋が用いられている。この防水手袋は、洗い物をしている際に食器を持ち上げたり、手を上げると、防水手袋の表面の水滴が表面を流れて、装着者の洋服の袖を濡らしてしまうことがある。かかる問題を解決しようと、防水性の手袋本体の開口縁を外側且つ指先側に折り返して、この折り返した部位に腕を覆うカバーを縫製して取り付けた防水手袋が提案されている(特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
しかし、上記従来の防水手袋では折り返した部位が十分に外側方向に開口しておらず、折り返した部位と手袋本体との空間が狭いので、折り返した部位が作業中に手袋本体に密着してしまうことがあり、このため、折り返した部位が水垂れ防止としての機能を十分に発揮しえない。
【0004】
また、折り返した部位に縫製のミシン目が位置しているため、このミシン目から水が染み入る可能性がある。つまり、手を上げた際に、手袋本体の表面を流れた水滴が折り返した部位に溜まり、この溜まった水滴が折り返した部位のミシン目を介して手袋本体の内側に進入して、装着者の洋服の袖を濡らす可能性がある。
【0005】
【特許文献1】実登3064777号公報
【特許文献2】実登3061395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これらの不都合に鑑みてなされたものであり、防水性の手袋本体の開口縁を外側且つ指先側に折り返して使用することができ、この際に水が手袋本体の内側に進入することを的確に防止できる防水手袋およびその製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
防水性を有し、袖部分が開口方向に漸次拡径する弾性材料製の手袋本体と、
少なくとも周方向の伸縮性を有する筒状部を具備する伸縮部材と
を備え、
この筒状部の一方の端縁部分が手袋本体の開口縁部分に伸状態で接合され、
筒状部の他方の端縁部分が手袋本体の内面のうち開口縁から内方位置に伸状態で接合され、
筒状部の長さが手袋本体の上記開口縁部分及び内方位置の長さ方向距離より大きい防水手袋である。
【0008】
当該防水手袋は、手袋本体を装着者の手に嵌めた使用時に際して、筒状部の中央部分を手袋本体の外側に引き出して手袋本体の開口縁部分を外側且つ指先側に折り返した状態とすることによって、手袋本体の表面の水が装着者の袖側に流れても、手袋本体の折り返された部分で水を止めることができ、装着者の袖が水で濡れることを的確に防止することができる。しかも、当該防水手袋は、手袋本体の表面を袖側に流れた水滴が手袋本体の折り返された部分に溜まっても、この部分には筒状部と手袋本体との接合箇所が存在しないので、水滴が手袋本体の内部に進入する可能性が極めて低い。
また、当該防水手袋は、筒状部が周方向に伸縮性を有するので、上述のように装着した際に、装着者の手首に筒状部がフィットしやすい。
さらに、開口縁部分に筒状部が伸状態で接合されているので、開口縁部分の各部分に縮径方向に力が作用し、この力が釣り合うことにより、開口縁部分は、略円形の形状を保つとともに、装着者の手側に倒れにくく、対向する手袋本体の表面との空間を十分に保った状態を維持できる。
また、内方位置においても筒状部は伸状態で接合されているので、この内方位置における手袋本体を縮径するため、上記開口縁部分とこれに対向する手袋本体の空間がより大きくなる。このため、水洗い等の作業時に不用意に手袋本体の開口縁に他方の手等が当接しても、手袋本体の開口縁とこれに対向する手袋本体とが接触しづらく、この部分から水が装着者の袖に流れることを防止できる。
【0009】
なお、上記手袋本体と筒状部との接合は、縫製や接着など種々の手段を採用することができる。但し、接合手段として縫製を採用することが好ましく、これにより、伸状態の筒状部であっても、十分な接合強度で、しかも容易に手袋本体に接合することかできる。また、このように縫製によって他方の端縁部分と手袋本体とを接合した場合、この縫製箇所の表面側に防水層を設けることが好ましい。これにより、上記縫製箇所には縫い目が存在するものの、その外面には防水層が位置するため、手袋本体の表面の水が縫い目から進入することを防止できる。さらに、上記縫い目に対して破断するような力が作用しても、この縫い目の位置に設けられた防水層によって上記力を手袋本体の他の部位に分散させることができ、縫い目からの手袋本体の破断を防止することができる。なお、上記縫製による場合には、伸縮性の効果を高めるために千鳥縫いによることが好ましい。
【0010】
また、本発明において、伸縮部材が筒状部のみからなる構造であっても、筒状部の他方の端縁部分よりも手袋本体の内方に延出した延出部を有する構造のものであっても良い。
つまり、例えば、上記延出部として、筒状部の他方の端縁部分よりも手袋本体の内方に延出した筒状の部位を有するものも本発明の意図する範囲内である。さらには、上記延出部が、手袋状をなし、手袋本体のインナーとして機能する構造を採用することも可能である。
一方、伸縮部材が筒状部のみからなる構成を採用した場合、筒状部の他方の端縁部分と手袋本体との接合に関しては、他方の端縁部分の端縁(先端)から約5mm程度筒状部の中央側に位置した箇所で、両者を接合することが好ましい。これにより、両者の接合を容易且つ確実に行うことができる。
【0011】
また、上記筒状部が編物部材から構成されることが好ましく、これにより、容易に周方向に伸縮性を持たせることができる。さらに、この編物部材は、撥水性を有することが好ましく、これにより、使用時に水が筒状部まで飛散しても、筒状部に水が染み込みにくいので、装着者の袖を濡らすことを的確に防止できる。
【0012】
また、手袋本体の開口縁を覆うように取り付けた縁シートをさらに備え、この縁シートが、上記手袋本体よりも硬質の部材から構成されていることが好ましい。これにより、使用時において外側且つ指先側に折り返した際に突出する箇所に手袋本体よりも硬質の縁シートが存在するので、この使用状態の形態をより維持しやすい。このように縁シートを備える場合には、縁シートは、手袋本体の開口縁及び筒状部の端縁を覆うように、縫製によって手袋本体及び筒状部に取り付けられていることが好ましい。これにより、縁シートは手袋本体のみならず筒状部にも縫製によって取り付けられるため、縁シートの取り付け強度が高まる利点を有する。
【0013】
さらに、上記縁シートを採用した場合には縁シートは防水性を有することが好ましい。これにより、使用時に水が縁シートまで飛散しても、縁シートに染み込みにくい為、水が染み込むことによる重量変化によって縁シートが手袋本体側に倒れることを防止でき、対向する手袋本体の表面との空間を十分に保った状態を維持できる。
【0014】
また、当該防水手袋にあっては、筒状部の一方の端縁部分の端縁と手袋本体の開口縁とが略揃えられ、且つ、上記一方の端縁部分が、上記手袋本体の開口縁部分に、上記他方の端縁部分が接合される手袋本体の面と同一面側に重ねあわされた状態で、上記一方の端縁部分が手袋本体に接合されていることが好ましい。これにより、不使用時において手袋本体を手の形状に沿った状態(開口縁部分が折り返されていない状態)とすると、筒状部は両端部が手袋本体の内面側に接合されていることになるので、筒状部を手袋本体の内面側に収容することができる。このため、不使用時において、例えば指先を洗濯バサミなどで挟んで、開口縁部分側を下にして吊り下げても、手袋本体の表面の水によって筒状部が濡れることを防止できる利点を有する。一方、使用時においては、上述のように筒状部の中央部分を外側に引き出して、手袋本体の開口縁部分を外側且つ指先側に折り返すことで当該防水手袋の利点を奏することができる。
【0015】
また、本発明の防水手袋の製造方法は、
少なくとも周方向の伸縮性を有する筒状部を具備する伸縮部材を、防水性を有するとともに袖部分が開口方向に漸次拡径する弾性材料製の手袋本体に取り付けるために、
筒状部の一方の端縁部分を、筒状部の伸状態で、手袋本体の開口縁部分に接合する第一接合工程と、
筒状部の他方の端縁部分を、筒状部の伸状態で、手袋本体の内面のうち開口縁よりも内方位置に接合する第二接合工程と
を有し、
上記筒状部の長さより、手袋本体の上記開口縁部分及び内方位置の長さ方向距離が小さくなるように、手袋本体に筒状部を接合する方法である。
【0016】
当該製造方法によれば、上述のように水が内部に進入しにくい当該防水手袋を製造することができる。なお、当該方法においては、第一接合工程と第二接合工程との順番は特に限定されるものではないが、第二接合工程の後に第一接合工程を行うことが好ましい。これにより、筒状部が邪魔になることなく容易且つ確実に第一接合工程及び第二接合工程が行い得る。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の防水手袋は、防水性の手袋本体の開口縁を外側且つ指先側に折り返した状態で使用することができ、この際に水が手袋本体の内側に進入することを的確に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る防水手袋を示す概略的斜視図であって、使用状態を示す概略的斜視図である。
【図2】図1の防水手袋の不使用状態を示す概略的斜視図である。
【図3】図1の防水手袋の要部(袖部分付近)を拡大した概略的端面図であって、使用状態を示す概略的端面図である。
【図4】図1の防水手袋の不使用状態の要部(袖部分付近)を拡大した概略的端面図であって、不使用状態を示す概略的端面図である。
【図5】図1の防水手袋の製造工程を説明するための要部(袖部分付近)を拡大した概略的端面図で、(a)は第二接合工程完了時、(b)は折り返し工程完了時の図面である。
【図6】図1の防水手袋の製造工程を説明するための要部(袖部分付近)を拡大した概略的端面図で、(a)は第一接合工程完了時、(b)は縁シート付設工程完了時の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。
【0020】
図1の防水手袋は、装着者の手に装着すべく設けられた防水性の手袋本体1と、この手袋本体1の裾部分に接合された筒状部材3(筒状部)とを備える。この筒状部材3は、一方の端縁部分7aが手袋本体1の開口縁部分に接合され、他方の端縁部分5aが手袋本体1の内面のうち開口縁1aから内方位置に接合されている。ここで、筒状部材3は、いずれの端縁部分5a,7aにおいても伸状態で手袋本体1に接合されている。なお、本実施形態においては、本発明の「伸縮部材」は、「筒状部」である筒状部材3のみから構成している。
【0021】
手袋本体1は、従来周知の樹脂製の薄手の手袋から構成されており、防水性を有し、袖部分が開口方向に漸次拡径する弾性材料製のものからなる。なお、手袋本体1は、内面に植毛の施されたポリ塩化ビニル樹脂製手袋(商品名:ナイスハンドデリートさらっとタッチ、ショーワグローブ株式会社製)を用いることができる。また、手袋本体1は、表面にすべり止め等のための凹凸模様(図示省略)が形成されたものが好適に用いられる。
【0022】
上記筒状部材3は、周方向に伸縮性を有するように編まれた編物部材から構成されていることが好ましく、この編物部材は、撥水性及び撥油性を有していることが好ましい。なお、例えば、本実施形態においては、筒状部材3は、その高さ(母線方向の長さ)は約20cmのものを用いることができる。ここで、筒状部材3は、リブ編みによって編まれた幅方向(周方向)に伸縮性のある生地を撥水処理および撥油処理を施して、この生地を筒状に縫製したものを用いている。なお、ポリウレタン弾性糸のように伸縮性のある糸を、単独または他の糸と混合して筒状に編むことによって、筒状部材3を構成することも可能である。
【0023】
上記筒状部材3は、屈曲部3aで折り返されており、この屈曲部3aによって第一部材5と第二部材7とに区分される。この第一部材5及び第二部材7は、不使用時の形態において、図2及び図4に示すように、屈曲部3aから手袋本体1の開口縁1a側に延出するように設けられている。また、第二部材7は、不使用時の形態において第一部材5よりも内側に位置し、且つ第一部材5よりも母線方向の長さが長くなるように設けられている。具体的には、第一部材5は母線方向の長さが約7.5cmで、第二部材7は母線方向の長さ約12.5cmとしている。
【0024】
この第一部材5の端縁部分5aは上述のように手袋本体の内方位置に接合されるが、この第一部材5の端縁部分5a(筒状部材3の上記他方の端縁部分5a)が接合される手袋本体1の接合箇所は、手袋本体1の開口縁1aから約5cm指先側の位置(内方位置)としている。
なお、第一部材5の端縁部分5aの接合箇所は、手袋本体1の開口縁1aからの距離(長さ方向の距離)が1cm以上であることが好ましく、より好ましくは、2cm以上である。これよりも短い場合には、後述するように開口縁1aを外側且つ指先側に折り返した際に、手袋本体1の表面を袖側に流れた水を的確に止めることができないおそれがある。このため、上記長さ以上とすることで、装着者の袖が水で濡れることを的確に防止することができる。
また、第一部材5の端縁部分5aの接合箇所は、手袋本体1の開口縁1aからの距離(長さ方向の距離)が8cm以下であることが好ましく、より好ましくは、6cm以下である。これよりも長い場合には、開口縁1aを外側且つ指先側に折り返した状態で使用する際に、この折り返し部分が水作業等の作業の邪魔になり、また、接合が難しくなるなどのおそれがある。このため、上記長さ以下とすることで、使用時において折り返した部分が邪魔にならないという利点を有する。
【0025】
なお、本実施形態では、第一部材5は、第一部材5の端縁(先端)が指先側に向いた状態で手袋本体1に接合されており、この接合部位5aよりも開口縁1a側の第二の屈曲部3bで指先側に折り返されて指先側に延出している。なお、第一部材5を、その端縁が開口縁1a側に向いた状態で手袋本体1に接合することも可能である。
【0026】
また、上記第一部材5の端縁部分5aと手袋本体1との接合は、第一部材5の端縁部分5aの端縁(先端)から約5mm程度筒状部材3の中央側(第二部材7側)に位置した箇所でなされており、これにより両者1,5aの接合を容易且つ確実に行うことができる。
【0027】
また、上記第一部材5の接合部位5aは、上記手袋本体1に、縫製によって接合されている。この縫製は、伸縮性の効果を高めるために千鳥縫いとすることが好ましい。なお、後述する第二部材7の接合部位7aにおける縫製も千鳥縫いとすることが好ましい。
さらに、この接合部位5aと手袋本体1との縫製箇所には、上記手袋本体1の表面側に防水層9が設けられていることが好ましい。ここで、防水層9は、防水テープから構成することができ、例えば、防水テープ9は、熱溶融性の粘着層(図示せず)を裏面に有しており、この粘着層を上記手袋本体1の表面に接触させた状態で熱風を吹きかけることにより、手袋本体1に防水テープ9が固着することができる。また、防水テープに変えて、縫い目を埋めるように縫い目の箇所に樹脂を塗布して、この樹脂層から上記防水層を構成することも可能である。
【0028】
上記第二部材7の端縁部分7a(上記筒状部材3の一方の端縁部分)は、手袋本体1の開口縁部分に、手袋本体1の内面(他方の端縁部分5aが接合される手袋本体1の面と同一面側)に重ねあわされた状態で接合されている。具体的には、第二部材7の端縁が手袋本体1の開口縁1aと揃えられた状態でこの端縁部分7aが縫製されることにより、両者は接合されている。
【0029】
また、本実施形態の防水手袋は、手袋本体1の開口縁1aおよび筒状部材3の第二部材7の端縁を覆うように取り付けられた縁シート11をさらに備えている。この縁シート11は、防水性を有し且つ上記手袋本体1よりも伸縮変形しにくい硬質の部材から構成されている。この縁シート11は、例えば、一般にバイアステープと言われるものを用いることができ、表面にウレタン樹脂や塩化ビニル樹脂がコートされたものが好ましく用いられる。ここで、縁シート11は、ウレタン製バイアステープで、帯状シートから構成することができる。
【0030】
上記縁シート11は縫製によって取り付けられており、具体的には、この縁シート11は、上述のように手袋本体1の開口縁1a及び第二部材7の端縁(先端)を覆うとともに上記第二部材7の接合部分7aをも覆うように配された状態で、この縁シート11の両側縁が、上記接合部位7aよりも指先側で且つ接合部位7aに近接した位置において、手袋本体1及び第二部材7に縫製されて取り付けられている。
【0031】
上記構成からなる本実施形態の防水手袋は以下のように用いられる。
【0032】
使用に際して、手袋本体1を手に装着して、筒状部材3の第二部材7を外側に引き出して、図1及び図3に示すように、手袋本体1の開口縁1aを外側且つ指先側に折り返すことによって、装着者の袖が水で濡れることを的確に防止することができる。つまり、手袋本体1の表面の水が表面を装着者の袖側に流れても、手袋本体1の折り返された部分Aで水を止めることができ、装着者の袖が水で濡れることを的確に防止することができる。しかも、この手袋本体1の折り返された部分Aに水滴が溜まっても、この部分Aには筒状部材3と手袋本体1との接合箇所が存在しないので、水滴が手袋本体1の内部に進入する可能性が極めて低い。
【0033】
また、上述のような使用時において、筒状部材3が伸状態で接合された開口縁部分には各部分に縮径方向に力が作用し、この力が釣り合うことにより、開口縁部分が、略円形の形状を保つとともに、装着者の手側に倒れにくく、対向する手袋本体1の表面と隙間をもった状態を維持できる。また、内方位置においても筒状部材3が伸状態で接合されているので、この内方位置における手袋本体1を縮径するため、上記開口縁部分とこれに対向する手袋本体1との隙間がより大きくなる。このため、水洗い等の作業時に不用意に手袋本体の開口縁に他方の手等が当接しても、手袋本体の開口縁とこれに対向する手袋本体とが接触しづらく、この部分から水が装着者の袖に流れることを防止できる。
【0034】
また、この縁シート11を一方の手で把持して引っ張ることで、容易に他方の手に装着することができる。特に、縁シート11は、手袋本体1とともに筒状部材3にも縫着されており、十分な強度で取り付けられているので、上述のように把持して引っ張られても縁シート11が不用意に離脱するおそれが少ない。
なお、上述の説明において、手袋本体1を手に嵌めた後に筒状部材3を外側に引き出す使用例を説明したが、手に嵌める前に筒状部材3を外側に引き出して手袋本体1の開口縁1aを外側且つ指先側に折り返した状態としておき、その後、手袋本体1を手に嵌めて使用することも可能である。
【0035】
また、手袋本体1の開口縁1aの位置に手袋本体1よりも硬質の縁シート11が存在するので、この使用状態における折り返した形態を維持しやすい。
【0036】
また、第一部材5の接合部位5aの接合箇所に縫い目が存在するものの、その外面には防水層9が設けられているので、手袋本体1の表面の水が上記縫い目から進入することを防止できる。さらに、上記縫い目に対して破断するような力が作用しても、この縫い目の位置に設けられた防水層9によって上記力を手袋本体1の他の部位に分散させることができ、縫い目からの手袋本体1の破断を防止することができる。
【0037】
さらに、筒状部材3は、使用時に一部(第二部位7)が外部に露出するものの、使用時に水が筒状部材3まで飛散しても、この水は撥水性を有する筒状部材3に染み込みにくいので、装着者の袖を濡らすことを的確に防止できる。また、油が飛散しても、撥油性を有するので、筒状部材3に染み込みにくい。
【0038】
また、筒状部材3は周方向に伸縮性を有するので、装着者の手にフィットする。このため、激しく水洗い等を行っても、筒状部材3と手との間から水が侵入することを防止できる。
【0039】
一方、不使用時において、第二部材7を手袋本体1内に押し込んで、筒状部材3を手袋本体1内に収容することができる(図2及び図4参照)。このため、不使用時において、例えば指先を洗濯バサミなどで挟んで、開口縁1a側を下にして吊り下げても、手袋本体1の表面の水によって筒状部材3が濡れることを防止できる利点を有する。
なお、本発明において、上述のように筒状部材3を手袋本体1内に収容でき且つ使用時に筒状部材3の一部を引き出すことのできる構成は必須の構成要件ではなく、筒状部材3が手袋本体1に収容されないものも本発明の意図する範囲内である。つまり、例えば、手袋本体1の開口縁1aが外側且つ指先側に折り返された形態で、且つ、筒状部材3の一部が外側に露出したままのものであっても、本発明の意図する範囲内である。
【0040】
次に、上記構成からなる本実施形態の防水手袋の製造方法について概説するが、本発明の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0041】
本実施形態の製造方法は、防水性を有し、袖部分が開口方向に漸次拡径する弾性材料製の手袋本体1と、周方向に伸縮性を有する編物部材から構成された筒状部材3とが用意されて、以下の工程がなされる。上記筒状部材3の一方の端縁部分7aを、筒状部材3の伸状態で、手袋本体1の開口縁部分に接合する第一接合工程と、手袋本体1の他方の端縁部分5aを、筒状部材3の伸状態で、手袋本体1の内面のうち開口縁1aよりも内方位置に接合する第二接合工程と、第一部材5と第二部材7とに区分けするように筒状部材3を屈曲部3aで折り返す折り返し工程と、硬質な縁シート11を取り付ける縁シート付設工程と、上記第二接合工程により接合された接合箇所(縫製箇所)において手袋本体1の外面側に防水層9を形成する被覆工程とがなされる。本実施形態においては、第二接合工程、折り返し工程、第一接合工程、縁シート付設工程、被覆工程の順になされる。
【0042】
第二接合工程においては、図5(a)に示すように、手袋本体1の開口縁1aよりも内方位置に、筒状部材3の端縁部分5aを縫製によって手袋本体1に接合している。このように、本実施形態では、縫製により容易且つ確実に接合部位5aの接合を行うことができる。なお、本実施形態においては、上記筒状部材3の端縁(先端)が指先側に向いた状態で接合されている。
【0043】
また、折り返し工程では、図5(b)に示すように、第二部材7が第一部材5よりも内側に位置し且つ第一部材5よりも母線方向の長さが長くなるように折り返される。なお、第一部材5は、接合部位5aよりも開口縁1a側の第二の屈曲部3bで指先側に折り返されている。また、この折り返し工程では、具体的には、第二部材7の端縁(先端)が手袋本体1の開口縁1aに近接するように折り返されている。
なお、折り返し工程は、上記第二接合工程の前に予め行うことも可能であり、また、第二接合工程又は第一接合工程と同時に行うことも可能である。ただし、第一接合工程及び折り返し工程の後、第二接合工程を行う場合には、第一部材5を接合する際、既に接合された筒状部材3が邪魔になりやすい。このため、第二接合工程の後に、第一接合工程を行うことが好ましく、これにより、容易且つ確実に接合作業を行うことができる。
【0044】
また、第一接合工程では、図6(a)に示すように、手袋本体1の開口縁部分に、筒状部材3の端縁部分7aを縫製によって手袋本体1に接合している。このように、本実施形態では縫製により容易且つ確実に接合部位7aの接合を行うことができる。より具体的には、第二部材7の端縁と手袋本体1の開口縁1aとが揃えられ、第二部材7の端縁部分7aが開口縁部分に重ねあわされた状態で、端縁部分7aを開口縁部分に縫着している。
【0045】
また、上記縁シート付設工程では、図6(b)に示すように、縁シート11が手袋本体1の開口縁1a、第二部材7の端縁(先端)及び接合部位7aを覆うように、縁シート11を第二部材7及び手袋本体1に縫製によって取り付けている。なお、上記実施形態では第二部材7の接合部位7aの接合工程の後に別途縁シート付設工程を行うものについて説明したが、第一接合工程と縁シート付設工程とを一の工程で行うことも可能である。つまり、縁シート11の縫製による取り付けによって、第二部材7の端縁部分7aの接合がなされるように設けることも可能である。具体的には、例えば、いまだ接合されていない第二部材7の端縁と手袋本体1の開口縁1aを揃えた状態として、この端縁及び開口縁1aを覆うように縁シート11を位置せしめて、この縁シート11を縫製することにより、縁シート11、手袋本体1及び第二部材7を固定することも可能である。
【0046】
なお、上記第一接合工程及び第二接合工程によれば、上述のように第一部材5及び第二部材7が指先側の屈曲部3aで折り返された状態で接合されるため、筒状部材3の長さは各接合部位5a,7aが接合される上記手袋本体1の長さ方向の距離よりも長くなる。
【0047】
また、上記被覆工程では、第一部材5と手袋本体1との縫製箇所において、上記手袋本体1の表面側に防水テープを固着して、防水層9を設けている。具体的には、例えば、熱溶融性の粘着層(図示せず)を裏面に有する防水テープ9を手袋本体1の表面に取り付けて、これに熱風を吹きかけることにより、手袋本体1に防水テープ9を固着することができる。この熱風の吹きかけは目張り用ヒートシーラー(QHP−908、クインライト電子精工株式会社製)を用いることができる。
【0048】
尚、本発明は上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0049】
つまり、上記実施形態においては、「伸縮部材」として、「筒状部」である筒状部材3のみから構成したものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施形態のような筒状部材3から内方に延出した延出部を有し、この延出部が手袋状に設けられ手袋本体のインナーとして機能するものも本発明の意図する範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明の防水手袋は、防水性の手袋本体の開口縁を外側且つ指先側に折り返して使用することができ、この際に水が手袋本体の内側に進入することを的確に防止することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 手袋本体
1a 開口縁
3 筒状部材(筒状部)
3a 屈曲部
5 第一部材
5a 端縁部分(接合部位)
7 第二部材
7a 端縁部分(接合部位)
9 防水層(防水テープ)
11 縁シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水性を有し、袖部分が開口方向に漸次拡径する弾性材料製の手袋本体と、
少なくとも周方向の伸縮性を有する筒状部を具備する伸縮部材と
を備え、
この筒状部の一方の端縁部分が手袋本体の開口縁部分に伸状態で接合され、
筒状部の他方の端縁部分が手袋本体の内面のうち開口縁から内方位置に伸状態で接合され、
筒状部の長さが手袋本体の上記開口縁部分及び内方位置の長さ方向距離より大きい防水手袋。
【請求項2】
上記筒状部の他方の端縁部分が、上記手袋本体に縫製によって接合されており、
この他方の端縁部分と手袋本体との縫製箇所の表面側に、防水層が設けられている請求項1に記載の防水手袋。
【請求項3】
上記筒状部が、撥水性を有する編物部材から構成されている請求項1又は請求項2に記載の防水手袋。
【請求項4】
上記手袋本体の開口縁部分及び筒状部の端縁を覆うように取り付けられた帯状の縁シートをさらに備え、
上記縁シートが、上記手袋本体よりも硬質の部材から構成されている請求項1、請求項2又は請求項3に記載の防水手袋。
【請求項5】
上記縁シートが、防水性を有する請求項4記載の防水手袋。
【請求項6】
上記筒状部の一方の端縁部分の端縁と上記手袋本体の開口縁とが略揃えられ、且つ、上記一方の端縁部分が、上記手袋本体の開口縁部分に、上記他方の端縁部分が接合される手袋本体の面と同一面側に重ねあわされた状態で、上記一方の端縁部分が手袋本体に接合されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の防水手袋。
【請求項7】
少なくとも周方向の伸縮性を有する筒状部を具備する伸縮部材を、防水性を有するとともに袖部分が開口方向に漸次拡径する弾性材料製の手袋本体に取り付けるために、
筒状部の一方の端縁部分を、筒状部の伸状態で、手袋本体の開口縁部分に接合する第一接合工程と、
筒状部の他方の端縁部分を、筒状部の伸状態で、手袋本体の内面のうち開口縁よりも内方位置に接合する第二接合工程と
を有し、
上記筒状部の長さより、手袋本体の上記開口縁部分及び内方位置の長さ方向距離が小さくなるように、手袋本体に筒状部を接合する防水手袋の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−26051(P2012−26051A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165359(P2010−165359)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(591161900)ショーワグローブ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】